魔界神様への転生   作:ツィール

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久しぶりです!
大学に合格して、新生活にも慣れてきたので久々の投稿です申し訳ありませんでした!
……まぁもう誰も見てないと思いますが(笑)


Ⅳ:再会

 何も、誰も辺りに気配を感じない。

 ただ、自らの足音のみが響く。

 草木の感触が身体に染み渡る。今世初の感覚に、俺は感動していた。

 魔界にこんなにも自然豊かな森は創ってなかったしなぁ。

 

 ──そう、俺は今、魔法の森に来ている。

 我が最愛の娘、アリスちゃんに会うために。

 

「〜〜〜〜〜♪」

 

 鼻歌交じりに森の中を進む。

 森に生息するキノコの瘴気や幻覚は魔法の祖たる俺からしたら何の痛痒も感じない。

 しかもこの森、魔力の促成作用があるっぽい。なるほど確かに、魔法使いからしたらここは最適な住処だろうな。

 

「……ん? お、これは珍しいキノコだな。見たことがない。あっちにもこっちにも。拾っていくか」

 

 珍しいキノコをたくさん広いながら着実に進んでいく。するとすぐ近くに生命反応があることに気がついた。

 この懐かしい反応は……間違いない。アリスだ。──うーん、会いに来たとはいえ、いざ顔を合わせるとなると妙に緊張してしまうな。どういう風に声をかけるべきか……偶然を装うべきか、それとも会いに来た風にするか。想像してみることにする。

 

「久しぶりだな、アリス。幻想郷に住むことになったから会いに来たぞ!」

「え、ママ!? 久しぶり! ……幻想郷に住むの!?」

「あぁ」

「やったー! これでママともいっぱい話せるね。えへへ」

 

 うーん、我が娘ながら想像の中でも可愛いなぁ。

 これで行こうか、ヨシ!(現場猫)

 

 

ーーーーーー

 

 

 

 アリス・マーガトロイドは、外に出ていた。

 特に目的もなく、ぶらぶらと。今日も友人である魔理沙と魔法談義をするという予定がこの後にあるので、その暇つぶしでもあった。

 しかし、しばらく歩いていると己のそれとは別の足音が聞こえた。魔理沙の音でもない。というより、森に歩き慣れていないような音なので、ほぼ確実に森の外から入ってきた者だろう。

 

(珍しいわね。こんなところに外から入ってくるなんて。外来人かしら)

 

 この魔法の森は、茸が幻覚を発したり強い魔力が漂っていたりして、大妖怪レベルの存在や魔法使いなどでない限り気分が悪くなり、耐性がない者は最悪死に至ることすらある魔境。

 故に外から何かが入ってくることはほとんどない。ただ、ごく稀に外来人が入ってくることがあるので、それかなとアリスは推測する。

 

(うーん、でもそこまで慌ててなさそう? じゃあ違うわね。一体……?)

 

 外来人はたまに幻想郷に来るが、その全員がとても慌てていた……らしい。アリス本人も一度だけ魔法の森で外来人を拾ったことがあるが、その慌て具合はひどいものだった。まぁいきなり知らないところに居たら錯乱してしまうのは無理もない。

 そうなると、足音の正体としてアリスの脳裏に思い浮かぶのは妖怪の賢者や、彼女に匹敵する存在である大妖怪。それらに遭遇したら、例え本気を出しても無事に生き残るのは難しい。

 魔法発動の用意をして待機する。そして出てきたのは──

 

 

 ──銀髪の少女だった。見覚えのあるその顔、容姿。

 思考が一瞬停止する。なんたってそれは、間違いなく己の母のもので。

 

「久しぶりだな、アリス!」

「な、なんで、ここに?」

 

 口が震え、声が上擦ってしまう。

 本来神綺という女神は、ほとんど常に魔界にいるのだ。友人に会いにたまーに地獄へ行くくらいがせいぜいであり他の世界に来ることは絶対……とまでは言わないもののほぼ無いと言っていいくらい。

 彼女の存在自体が一種の抑止力のようなものであり、動くとそれだけでありとあらゆる世界が震撼するほどの絶大な影響力を持っているというのに一体どうして……と、アリスは疑問に思う。

 

「まぁ、そうだな……色々苦労したけどな。お前の成長を見たかったんだよ」

「そ、そうなの……」

「ま、こう見るだけでも成長は感じ取れるがな。私よりでっかくなって」

「母さんは魔界の人の中でもかなり小さい方だもんね」

 

 思わず口元が緩んでしまう。

 まさか自分をここまで見てくれようとしていたとは思わなかった。とアリスは思う。

 

「ところでお前が普段どんな生活をしてるか見てみたいんだが、家に行ってもいいか?」

「え、うーん……」

 

 考える。今日は魔理沙が来る。彼女に何も話してない以上、本来なら連れていくのは良くない。

 けど幸いにも、彼女はこの母親のことを知ってる。それに、神綺は魔法の祖。何か、魔理沙の成長を促す教えを与えてくれるかもしれない。

 

「……友達がいるんだけど、彼女に許可取ってからでいい?」

「もちろん。……そうか、友達がいるのか。なら私も挨拶させてもらわないとな」

「え」

「ダメか?」

「うーん……分かった。じゃあとりあえず行こう?」

「そうだな」

 

 そう言って、神綺はアリスの手に自分の手を絡ませる。アリスは顔を熟したリンゴのように真っ赤にして、

 

「ちょ、わざわざ手を繋がなくても」

「む、嫌か? すまん」

「…………別に、嫌じゃないけど」

 

 口を尖らせて言う。そう、アリスは別に嫌ではないのだ。ただ、ちょっとばかし恥ずかしいのと、子ども扱いされているのではないかと不満を感じているだけで。

 ここからアリスの家までは近い。数分歩けばすぐに着くであろう距離。恥ずかしがりながらも、ギュッと神綺の手を強く握った。

 

 

ーーーーーー

 

 

 アリスの家は、こじんまりとした木造建築だった。

 神綺はそれを一目見て呟く。

 

「……ほう。少し壁に触ってもいいか?」

「良いけど……なんで?」

「あぁ、少しな」

 

 ぼかしながら彼女は家の壁に触った。そのまま数秒。

 

「……綺麗な術式だな」

「んぇ?」

「この家にかけられている魔法のことだ」

 

 アリスは驚いた。まさかこんなに短時間で見破られると思っていなかったからだ。

 彼女の言う通りこの家には魔法がかけてある。自分の身を守るために何年も時間をかけて作り上げた、今の自分にとって最高の魔法を。

 更にそれを隠蔽する術式も加えてあるため、並の魔法使いでは魔法の存在にすら気がつかない。現に魔理沙も気がついていない。

 

 それなのにこの母は一瞬で見抜くだけではなく、術式を解析したのだ。もし自分がこの術式を知らなかったら解析に丸三日要すであろう複雑怪奇な術式を、数秒で看破したのだ。

 

(すごい……)

 

 これが魔界神。これが魔法の創造主。

 自分がこの領域にたどり着くまでどれだけかかるのだろうかと、アリスは考えてしまう。

 

「──ぉーい? アリス? どうしたんだ?」

「え、あっ、なんでもないわよ?」

 

 心ここに在らずといった状態でボーッとしていたアリスだったが、神綺の一声でなんとか戻ってくる。

 気を取り直して、神綺に告げた。

 

「じゃあ、ちょっと伝えてくるから。待ってて」

「あぁ、ここで待ってる」

 

 神綺を家の前に待たせて、アリスは自分の家の扉を開ける。

 玄関を駆け足で通り過ぎて、リビングへと向かう。

 そこには既に家の中にいて、椅子に座っている魔理沙が。

 

「お、アリス。帰ってきたのか」

「えぇ、ただいま。じゃなくてね!」

「?」

「驚かないで聞いてね? その──」

 

 アリスはここまでの経緯を話した。魔理沙は椅子から転げ落ちた。

 

「──うぉい! マジかよ! お前の母親が来てるのかよ」

「えぇ、そうね。……いきなりだけど、魔理沙。貴女にも会いたいって母さんが言ってたんだけど……」

「え、私にか!?」

 

 魔理沙は驚き飛び跳ねる。あたふたと慌てて本を落とした。

 

「おいおい、なんで私に……」

「貴女に挨拶したいらしいわよ。……でもいいじゃない?」

「え?」

「だって母さんは魔法を創ったから。魔理沙は、確か今魔法についてで悩んでいることがあるんでしょ? あの人ならわかると思うわ」

「うーん、でもなぁ……それを製作者に聞くのってなんかズルい気がしてこないか? 答えを聞くのはちょっと違うんだよなぁ……」

「じゃあ、ヒントだけでももらえば?」

 

 それなら大丈夫でしょ? とアリス。魔理沙はポン、と手を叩き、

 

「それだ!」

 

 確かにそれくらいなら、今の状況を打破するきっかけにもなるかもしれないと目に見えて上機嫌になる魔理沙。アリスは思わず苦笑いがこぼれる。

 

「……じゃあ、会ってくれるってことでいいのね?」

「おう!」

 

 

 

 

「母さん、入ってきていいわよ」

 

 魔理沙から了承を得たアリスは、一度外に出て神綺を呼び寄せた。神綺は驚いた顔で、

 

「いいのか?」

「えぇ。了承、得られたわよ」

「そうか。それは助かる」

「でも次はちゃんと事前に伝えてね?」

 

 私も暇じゃないんだから、とアリスは不満を漏らす。バツが悪いのか、目を逸らす神綺。

 

「あーその、すまん」

「ふふっ、いいわ。ありがとね、来てくれて」

 

 アリスは小さく笑った。

 

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