新機動武闘伝 GガンダムSEED Destiny 作:カンナム
それは、どのような方も等しく積んでいくものです。
新たな出会いを得て、別れを得て。
ユニウスセブン落下阻止を成功させ、オーブにカガリを送り届けたミネルバ隊は、しばらくの休息を与えられます。
その間にシンは、思ってもみない相手と邂逅するのです。
それでは、ガンタムファイト!! レディー、ゴー!!
ミネルバは無事にオーブに辿り着いた。
「本当にすまない、心からありがとうと言わせてくれ。地球を救ってくれた、ミネルバにーー」
「アスハ代表のお礼を承るなんて、私達には筋違いです。当然のことをしただけ、ですし。実際にアレを砕いたのはーー」
そこで言葉を切る。
シュバルツのことは、ミネルバのクルー達も、そしてカガリ達も、秘匿にしていたのだ。
あまりに強力な力は争いを産む。
アスランやカガリの言葉を、タリア・グラディスも理解していた。
「本当に、本人に力があるだけで、どうして周りは放って置けないのだろうな」
「それは、力があるから、です。その力を頼もしいと感じるのか、脅威だと感じるのか、それはその人次第です」
シュバルツを知るからこそ、頼もしい力。
しかし、敵に回せば、脅威以外の何物でもない。
「アスハ代表、本当にシュバルツ殿を、我々ミネルバに?」
あれ程の力をみすみす、自国から手放すというのか、と問いかけるタリアに、カガリは笑った。
「彼は、私の護衛を買って出てくれたにすぎない、一客人だ。彼の意思があなた方と行くことを選択したなら、私が言うことではない」
「ーーですが」
あまりに真っ直ぐなカガリの言葉に、タリアは危機感を感じた。
彼女は、力をどう考えているのかーー、と。
力が無ければ、成し遂げることもできない。
過ぎた力だからこそ、手放すことの意味を理解しているのかーー、そう問おうとして、しかしカガリの強い瞳に、口を閉じた。
それを感じ、カガリは微笑を浮かべた。
「ありがとう、タリア艦長。だが、彼にも目的があるように、私にも成し遂げたいものがある。
それは、彼の力を借りてすることじゃない、私の力でやり遂げなければならないことなんだ」
あまりにも、真っ直ぐな、理念だった。
まさに、如何なる時も、オーブは中立であれ、と言う意思を成し遂げたウズミのように。
「ご武運をお祈りします、カガリ代表ーー」
「ああ、ありがとう」
こうして、カガリはミネルバを去った。
ーーーーーー
カガリの意向で、ミネルバ隊は3日間の休暇をオーブで取ることができた。
ある者はショッピングに行き、ある者は娯楽施設に向かい、またある者は艦に残りMSのシミュレーションを、ある者は機体の整備を。
そんな中、1人の少年は、車に乗り、海岸線を走っていた。
シン・アスカである。
車を走らせながら、彼はミネルバで出会ったカガリ・ユラ・アスハ。アスラン・ザラ、シュバルツ・ブルーダーの言葉を思い返していた。
『待ってくれ! シン。お前は、オーブの選んだ道が間違いだと言うのか?』
『戦争はヒーローごっこじゃない!!』
『憎しみは憎しみを呼び、今度はお前が奪う側になる!! その覚悟はあるか!!』
ずっと、考えていた。
奪われたのは、理不尽にあったのは、自分だったんだ。家族だったーー。
いきなり、奪われた命。
そのことに怒りを覚え、同じような人を作らない為に、兵士になったのに。
戦う相手も、そうだと言われた。
大切な者を奪われたのは、自分だけじゃないのか。
自分の家族の命は、アスハに奪われたのに。
アスハも、犠牲者だったーー。
目を見たら分かる、あの時、カガリ・ユラ・アスハは毅然としていながらも、その瞳は泣いていた。
必死に泣きそうになるのを堪えていた目だ。
まるでーーーーーー自分のようだった。
あの時、自分を否定したアスラン・ザラも、自分と同じだったという。
見たこともないガンダムに手も足も出なかった敗北感。
シュバルツ達の言葉。
それらが、頭の中をグルグルと回る。
「ああ、くそ!!」
適当な所に車を停め、空を仰いだ。
自分は、オーブをどう思っていたのだろう?
憎しみは、ある。
だけど、嫌いではないのだろう。だから、カガリが自分と同じ目をしていたのに安心したのだ。
「なあ、マユーー。父さん、母さん。俺、どうしたら良いんだろう?」
空は晴れ、美しい青空が広がっていた。
「ふうーー」
海岸線を見渡すと、以前のオーブには無かった石の塔が立っていた。
「アレはーー」
シンはまるで、吸い寄せられるかのように、その塔にフラフラと近づいていった。
ーーーーーー
「これは、慰霊碑ーー?」
石の塔の周りには、花が添えられていた。
添えられた花以外に、植えられた花もある。
「こんにちは。君も花を添えに来てくれたのかい?」
穏やかな声に振り返ると、其処には茶髪の儚げな青年が花を持って立っていた。
「あ、ーーいや。すみません。初めて来たので、分からなくて。以前は無かったから、なんだろーーって」
申し訳なく頭を下げる自分に青年は、優しい笑顔を向けてきた。
「気にしないで。良かったら、これーー」
そう言いながら、青年はシンに一房の白い花を差し向けた。おずおずと、シンはそれを受け取る。
「あ、ありがとうございます」
青年に倣い、見よう見まねで献花と黙祷を捧げる。祈りを捧げる彼の姿は、何処か神秘的で、まるで牧師のようだった。
(下手な牧師より、ずっと様になってるな)
祈りをすませると、青年はシンに向き直った。
「ひょっとして君は、以前オーブに住んでいたのかな?」
「え? どうして、それを?」
「前は慰霊碑は無かった、て言ってたから。元々は暮らしていたのかな、て」
青年の言葉に納得しながら、雑談混じりに話しはじめた。
自分の家族が戦争に巻き込まれ、亡くなったことも。
オーブを恨んでいたことも。
時折、青年が息を飲むような気配を感じたが、シンはあまり気にせずに、一気に自分のことを語り尽くした。
「君はーー、人を守る為にザフトに入隊したんだね」
「はい。すみません、何だか長話してしまって」
すると、青年はいきなり、こう言ってきた。
「名前、教えてくれないかな? 僕はキラ、キラ・ヤマト」
「シンです、シン・アスカーー」
少し困惑しながらも、きちんと名を名乗るシン。
「そう。ねぇ、シン。この花はね、いつも高波に晒されて潮を被り枯れてしまうんだ」
その度に花を替えたり、手向けたり、キラという青年はいつも、そうしているらしい。
その言葉に、シンは思わず口を開いた。
「……誤魔化せないってことなんですか?」
「ーーえ?」
「いくら、花を植えても、人はまた吹き飛ばす」
どこか、やり切れないような怒りと悲しみを交えた言葉に、キラは正面からシンを見据えた。
「ーーキラさん?」
「もし、何度も吹き飛ばされても、僕はまた花を植えるよーー。それが、僕なりの闘いだから」
その言葉に、シンはようやく思い出す。
「キラ・ヤマトーー? あなたが、オーブのキラ・ヤマト!?」
先の大戦で有名になり、平和になると同時にラクス・クラインと共に姿を眩ませた英雄。
「あんた、何やってんですか!? あんたもラクスも、先の大戦の英雄でしょう!? 花を植えてないで、他にやることーー!!」
「シン、君は凄いね」
シンの怒りに任せた言葉を打ち消す、落ちついた声。
「僕は、自分のしてきたことが正しいと言えなくなっているんだ。自分の存在が、あってはならないものだと分かって、多くの人の命を奪ってきたからーー」
「何を言ってんです? あってはならない、って?」
その言葉を疑問にすると、キラはこれ以上無いほど悲しげで儚い笑顔を向けてきた。
「僕は、友達を守りたかった。だから成り行きで連合に入ってーー。親友のいるザフトと戦うことを選んだ」
「ーーあなたは」
「でも、僕は知らなかった。その末に誰が撃たれ、誰が亡くなるのか。そうなってしまったら、誰が悲しむのかを」
戦争ーー、相容れない正義がぶつかり、勝てば讃えられ、負ければーー
(シュバルツさんの言ってたことじゃないかーー)
キラは優し過ぎた。
あまりにも、優し過ぎたから、彼は歪むしか無かった。
そうでなければ、戦争で仲間が殺されてしまうからーー。だが、敵もそうだった。
シンには、彼の生き方、葛藤、迷いが他人事に見えなかった。
「でも、今のあなたは、罪を滅ぼしてない、ですよ。少なくとも、あなたが本当に奪ってしまった人の命を惜しむなら、ここで花を守り続けることだけが、あなたの役割じゃないはずです」
「分かってるよ、僕は逃げてる。それでも、今、政治や国同士の争いに混じったら、僕はまた同じことをする気がする。今は、できないーー」
瞬間的に、キラの胸ぐらを掴んでいた。
「分かるけど、あなたのいうこと、分かるけど!! じゃあ、何で、俺の家族をあなたは守ってくれなかったんだ!!?」
その頰に伝うのは、何年ぶりであろう涙。
「あなたの、あなた達の選んだ選択で、オーブは戦場になって、マユや父さんや母さんが、死んだんだ!! あなたのフリーダムが戦った、あの場所で!! 俺の目の前で!!!」
「ーーうん、分かってる。だから、名乗ったんだ」
「ーーーーなんでだよ、なんで、父さんや母さんや、マユが死ななきゃいけないんだよ。連合という敵やオーブのせいだって、ずっと思い込んで生きて来たのに!!」
「ーーシン」
「ーーなんでだよ。じゃあ、俺は誰を憎んで生きていけばいいんだよ」
力なく、項垂れ涙するシンをキラは静かに抱き締めた。
「僕を恨んでくれ。だから、自分を責めるのは、もうやめよう、シン」
「ーーあなたを恨んでも、恨む理由がないじゃないか。あなただって、アスハだって。被害者なんだろ」
「それでも、恨む事実はあるよ。僕のせいで、君の家族は亡くなったんだ。それは間違いない」
「それだって、あの時はああするしか無かったんだろ!?そんなことぐらい、俺にだって分かるよ……」
「シンーー」
静かに身を離し、シンは、キラの目を見据えた。
「約束してくれーー。オーブを守るって。アスハの理念を貫くって。でないと、それを信じて亡くなった俺の家族は、犬死にだ」
言ってから、頭を下げ、続ける
「頼む!! あなたが、本当に先の大戦のことを悔やんでくれるなら、俺の家族を悼んでくれるなら、オーブを口先だけの理念だけの国にしないでくれ!!!」
しばらく、無言の時が流れ、その後に、キラは口を開いた。
「わかった、シンーー。僕なりに、やれる事を考えて、やってみるよ」
「ありがとうございます、キラさん」
顔を上げ、キラの目を真っ向から見据える。対するキラもシンと同じ真剣な目で見返してきた。
シンはその目に満足すると、黙礼しその場を離れようとした。
「また、会えるかな? シン」
その背中に、キラは静かに問いかける。
「機会があれば、必ずーー」
振り向かずに、立ち止まり、返すシン。
「そうだね。またね、シン」
キラは、そんな彼の背中を優しく微笑んで見送るのだったーー。
ーーーーーー
少しして、ラクスがキラの元に花を持って現れた。ラクスは静かに、献花しながら、黙祷して、添えられた花が二つに分けられているのに気づく。
「キラーー? 誰かとお話しをしていたんですか?」
「うん。とても大切な友達と、ねーー」
要領を得ずに小首を傾げるラクスに、キラは優しく微笑みかけたのち、シンが去って行った方角に目をやった。
( 君と会えるのが、いつになるかは、分からないけど。僕も動くよ、カガリとこの国を守る為に。亡くなった人達の犠牲を無駄にしない為に。
そしてーー、君のようにオーブを信じる人々のために)
キラの目に強い意志の光が宿ったーー。
「ラクス、僕がオーブ軍に入ると言ったら、カガリやアスランは呆れるかな?」
いきなりの問いに、一瞬、ラクスは顔を上げ、キラに悲しそうな目を向けた。
「あなたは、また。自分の心を犠牲にして、闘うのですか? ここで、わたくしと穏やかに暮らせませんか?」
「ラクス。君の本当にしたいことは、何?」
「キラ、わたくしはーー」
キラの言葉に、眦を釣り上げ、ラクスは強い口調で話そうとして、キラの透明な笑みに黙った。
「ラクス。今まで、僕の傷を癒すために居てくれてありがとう。でも、プラントには君を待ってる人たちがいる。助けを求めている人たちが。ラクスは、その人たちを助けたいんじゃない?」
「わたくしでは、あなたを癒せませんか? わたくしは、助けを求める誰かではなく、キラを癒したい」
切実な表情のラクスに、キラは穏やかな笑みを浮かべた。
「癒されたよ。だから、僕はいま、ここに立っていられる。ラクスやキョウジさんやシュバルツさん。子どもたちに母さん、父さん、アスランにカガリ、マルキオ導師。他にも大勢に、僕は支えられてきた。みんなが、居たから僕はまだ、立って歩けるんだ」
「キラーー、何故、急に軍に入ろうと?」
キラの目に揺るぎない強い意志を、かつて。自分を魅了した、汚れない意志を感じる。
「ずっと考えていた。僕にもできること、ないかって。僕だけが、傷ついてる訳じゃないって。頭では、分かっていたつもりだったけどーー。
今日、本当に理解したんだ。僕には、まだやらなきゃいけないことがある。
誰かに任せて、任せきりにしたら、僕は、きっと後悔する。彼の目を見れなくなる。だからーー」
「だから、わたくしと離れようとーー?」
彼、というのが、誰を指すのか、ラクスには分からない。
だが、キラは甘えない為に自分と離れようとしている。
何故だろう、ひどく寂しい。
キラの言っていることは分かる。自分が考えていた行動も今からなら、取れる。
それは、ラクスにもキラにも、責任が大きくのしかかるが、それでも、先の大戦を経験した彼等がやらなければならないこと、だと感じている。
( 勝手なものですわねーー。キラが傷を癒すまで、離れることはできないと、自分に言い聞かせていたのに。
いざ、キラが立ち直るとーー)
微かに自嘲の笑みを浮かべた後、それを吹っ切るように、キリッと力を瞳に入れ、凛とした気配でキラを見る。
キラも凛々しい目を返してきた。それに満足気味に笑むと、ラクスは語った。
「では、キラーー。あなたに剣を預けます」
「ーーえ? まさか?」
驚くキラの胸に自らを預け、抱きとめさせる。
「キラ、たとえ離れていても、わたくしの思いが、あなたを守りますわーー」
胸の中で、愛しい人に想いを紡ぐ、やがて、夕日に照らされた2人の影は、一つに重なったーー。
ーーーーーー
一方、シュバルツは、キョウジと自分にあてがわれた離れに、アンドリュー・バルドフェルド。マリュー・ラミアスと共にいた。
リビングにあるテーブルの前に座るシュバルツとマリュー。
バルドフェルドは、キッチンで湯を沸かしながら、コーヒー豆を挽いていた。
「そうかーー。私の砕いたコロニーの衝撃波が、それほどの影響を生んでいたのか」
「ーー プラントをほとんど、一人で破壊したらしいな? 流石ラクスにお墨付きをいただくわけだ」
シュバルツの言葉に、コーヒー豆を挽きながら、世間話のように軽くかたるバルドフェルド。
当然、非公開になっている情報を知るバルドフェルドに、シュバルツは疑問の表情を向ける。
「バルドフェルド、何故あなたがそれを知っている?」
「蛇の道は蛇って言ってな。元ザフトの人間でも未だに繋がりのある所はある。お前さんの情報はミネルバ隊にジュール隊、後はデュランダル議長にしか今のところは、広がってないが、ねーー」
コーヒーをカップ3つに均等に淹れながら、バルドフェルドは、淡々と鼻歌交じりに答える。
「優秀な情報源をお持ちのようだがーー、元ザフトでも、今はオーブの民間人であるあなたが、何故そこまでザフトにこだわる?」
コーヒーを入れたカップ3つを盆に載せ、テーブルに運び一つをマリューに、もう一つをシュバルツに出しながら、告げる。
「それを話す為に、そろそろ、お前さん達の正体を聞かせて欲しいんだがねーー」
「なにーー?」
「お前さん達のことは、散々調べ尽くしたが、全く分からない。経歴も戸籍も、オーブで偽装した以外のことは何も分からん。別にそれは、お前さん達が難民であれば分かることだ。プラントを破壊したり、津波を防ぐほどのMSさえ、持っていなければな」
バルドフェルドの目は油断ない光でシュバルツを見据えた。
対するシュバルツも正面から見返す。
「やはり、我々のガンダムのことを聞きたいのか」
「やはり、と言いましたね? シュバルツさん、あなたは一体?」
更に横から、マリューが口を挟む。
シュバルツは、あの騒動以降、半日ほど気を失い静かに寝かされているキョウジを見た後、覆面を外した。
「何ーー?」
「キョウジ、さん?」
覆面を外したシュバルツの顔は、ベッドで寝かされているキョウジと肌の色以外、瓜二つであった。
「私は、キョウジであってキョウジではない。言わば、影」
「影ーー?」
「そう、鏡に映ったキョウジの影なのだ」
シュバルツは語り出した。 自分の世界の話を。
自身とキョウジに起こった悲しい事件を。
全てをーーーー
ーーーーーー
長い沈黙があった。
マリューもバルドフェルドも、重苦しい表情になっている。
そんな彼らに、シュバルツは告げた。
「信じてくれ、としか今は言えん。しかし、私は嘘はーー」
語ろうとするシュバルツを手でバルドフェルドは制してきた。
「ーーいや、お前さんが嘘つきじゃないのは、ここまでの付き合いで、俺たちも知ってるよ」
「むしろ、納得しました。キョウジさんやシュバルツさんの機体や実力にも」
マリューに至っては納得してしまっている。彼女は元々は、ストライクガンダムのマニュアルに携わっていた人間だ。
シャイニングガンダムやガンダムシュピーゲルの技術の異常さは理解できる。
バルドフェルドに至っても、自分用に機体を改造する彼だからこそ、MFとMSとの根本的なコンセプトの違いを理解できる。
この世界の技術体系では殆ど、再現できないであろうことも。
「異世界かーー。なるほど、君たちも波瀾に満ちた人生だな」
「その一言で済まされると、有難いような、失礼なような、複雑な気分だな」
軽い感じで言われ、苦笑気味に返すシュバルツ。それに、バルドフェルドも穏やかに笑い返した。
「それで、シュバルツさん。あなたは、これから、ザフトのミネルバ隊に入るのですか?」
マリューの言葉に、こくりと頷き、シュバルツは言った。
「デビルガンダムーー、奴は間違いなくザフトのギルバート・デュランダルの元にいるはず。
それに、近くで成長を見届けたい少年がいる」
「正直、お前さんには、オーブに居てもらいたいんだがね。最近はどうも、連合、ザフトともきな臭い。ウズミ殿亡き今、連合からの同盟を突っぱねる力がオーブにはない」
バルドフェルドには、まるでこの先の状況が眼に映るようであった。
オーブは、近い内に必ず、戦争に巻き込まれる。
理念をいくら掲げても、それを貫く能力が、今は無いのだから。
せめてーー、キラが傷を癒し、先の大戦で預かった剣を持って、カガリの側に居れば、あるいは。
「もし、万が一、戦争に巻き込まれたら、キラ君は勿論、キョウジ君にもこの国は力を借りることになるだろう。
初めに謝っておくよ、シュバルツ君」
「状況は、そこまで切迫しているのか?」
「残念ながらねーー」
ため息まじりに吐かれた言葉に、説得力を感じ、シュバルツは、思わず寝かされているキョウジを見た。
「できるならば、キョウジをこれ以上苦しめたくはないのだが」
「そりゃ、さっきの話を聞いて俺もできるなら、関わらせたく無い。だが、お前さん達は、この世界に来て力を示しちまった。隠していても、ばれちまうくらいの力をな」
静かに波の音が聞こえてきた。
「巻き込まれるのは、時間の問題か」
「加えて言うなら、あなた方は、今の地球連合、ザフト、オーブ全ての勢力が喉から手が出るほどに欲しい存在です。それこそ、力ずくでもーー」
マリューの言葉に、更に事態の深刻さを理解する。シュバルツは、今一度キョウジを見た。
「キョウジは私のようなファイターではない。あなた方の期待には応えられないかもしれないがーー」
「あの機体ーーシャイニングガンダムだったか? の力を見て、それを動かせるなら、充分だと思うがね」
「………」
思い返すのは、かつての世界。
デビルガンダムに取り込まれ、望まぬ意志で多勢の人を不幸にし、自身も作り変えられた、キョウジの末路。
「キョウジの意志に関係なく、彼を争いに巻きこむならば、私はあなた方の敵になるかもしれんーー。
無論、キラもだ。あなた方は、そうやって、できる力があるからと、キラに状況を諭し、戦いを強制させた。
戦争をしているのだから、という理屈は分かる。だが、キラは能力があっても普通の少年だったのだ!! 望んで兵士だったのではない!!」
シュバルツの強い言葉に、マリューが下を向き、顔を歪めた。これに対し、バルドフェルドは、冷静に言葉を返す。
「兵士だよ。少なくとも、戦時に戦場で兵器を扱うなら、間違いなく兵士だ」
バルドフェルドの目を真っ向から見据え、シュバルツは聞いた。
「兵士に意思はない、と言うのか?」
「兵士は、ただの兵士だ。無論、人間である以上、意思はある。それでも、兵士は兵士。
戦場で消耗品のように今も多くの命が己の意思に反し、消えていく。キラのように、そうしなければ、生き残れない状況に陥り、挙句に命を奪われる。
キラやキョウジの命と彼らの命、どう違うのかね?」
戦争の現実ーー。
シュバルツとてーーウォルフとて現実には知らぬ、民間人の犠牲や入隊を前提とした戦い。
ファイターとしての戦いとは、まるで違う。
やるせなく、悲しく、あまりに理不尽な命の奪い合い。
ガンダムファイトの無い世界の争い。
「最早、避けられぬ、かーー。キョウジもキラも」
「力を持つからこそ、な。俺たちも宛にしなきゃならん状況だということは、詫びるよ。
俺に君のような力があれば、誰も巻き込まないと、言えるかもしれん。
しかし、現実は違う。特に、君の力やキョウジの力は、下手をすれば、地球連合やザフトの勢力図を書き換えかねない。
それほどの力、みすみす手放すことはできないな。
お前さんが、デビルガンダムとやらの調査をするという目的でザフトに入るなら、俺たちでも充分力になれるんだがね?」
つまり、バルドフェルドはキョウジやシュバルツの力をもらう代わりに、デビルガンダムの情報を探すと言っているのだ。
しかし、シュバルツは首を横に振った。
「あなた方の力を信じ無いわけではないが、デビルガンダムは危険なものだ。下手に手を出せば取り込まれる可能性もある。
余計な犠牲は出したくない」
「そんな危険なものだからこそ、この世界での協力者がいるんじゃないか? キラやラクスだけでなく、俺たちも混ぜてもらえんか?」
押し黙るシュバルツに、バルドフェルドも辛抱強く待つ。
キョウジの身が彼らの元にある以上、交渉は不利なのだがーー。それでもこのバルドフェルドという男は、シュバルツの意志を聞いている。
シュバルツがその気になれば、キョウジを奪還し、この場から消えることも可能ではある。
しかしーー。
思考を巡らせるシュバルツに、第三者の声がかかった。
「キョウジさんを、巻き込むようなことはさせません。絶対にーー!!」
「そして、シュバルツさん。貴方のしようとしている調査を、こちら側は全面的に協力致しますわ」
入り口から聞こえてきた声に振り返ると、そこには1組の男女が立っていた。
「キラ君ーー!?」
「ラクス。決心が付いたのか?」
「ええ。わたくしも、やるべきことをやりましょう。キラやシュバルツさん、カガリさんのように」
2人にあるのは、凛とした気配。
シュバルツをして、思わず目を細めるほどに眩しい、気高い決意を感じる。
ーーーー
その夜、シュバルツ・ブルーダーは、ザフトのミネルバ隊に合流した。
翌日、地球連合はプラントに対し、ユニウスセブン落下を企てた犯人の引き渡しを口実に戦争を仕掛けたのだった。
みなさん、お待ちかねー!!
プラントで、ギルバート・デュランダルとの面会に行くアスラン。
そんな彼の前に、プラントにいるはずのない、かつての婚約者が姿を表します。
更に、赤い髪の軍人が、アスランの前に現れるのです。
次回!!
機動武道伝GガンタムSEED DESTINY 第11話に
レディー、ゴー!!