「みなさん、大変なことになってしまいました……」

 何処とも知れぬ空間で、男はスツールに腰掛け、長い脚を組んでいた。
 頭上からスポットライトが細く降り注いでいる。地面ではなく平らな床だが室内かは定かではない。
 年齢不詳の男だった。黒く刈り込んだ丸い頭、丁寧に蓄えた口髭、くるりとした碧眼に愛敬があるが、右目は眼帯で覆われている。体格の良さから、派手な赤いスーツでも不思議とこの男によく似合っていた。
 彼は物憂げに目を伏せながら、低く、よく通る声で語った。

「かつて全宇宙を混沌の渦に巻き込んだデビルガンダムとの戦いは、完全な集結を迎えたはずでした。
ですが、物語は新たに動き始めたのです。
 デビルガンダムの呪いを一身に受け、悲しい結末を迎えたキョウジ・カッシュとシュバルツ・ブルーダー。彼ら二人が、なんと息を吹き返したのです。
 場所は丘の上に慰霊碑が望める浜辺でした。そこでシュバルツは、気を失ったままのキョウジを抱え、慰霊碑と献花を世話するある少年と出会うのです。
 はたして、彼らの出会いがどのようなファイトの嵐を吹き荒らすのか。どうやら、私はまだまだ叫ばなければならないようです」

 突如、男が立ち上がった。赤いジャケットを脱ぎ捨て、右手にはどこからともなくマイクが、左手には右目を覆っていた眼帯が握りしめられ、その両腕が広げかかげられる。
 男は満面の笑みで『あなた』に言った。

「それでは! ガンダムファイト! レディぃいいっ……ゴー!」