新機動武闘伝 GガンダムSEED Destiny 作:カンナム
世界が平和になると共に、シュバルツやダイン達も落ち着いていく。
ドモンが迎えに現れた時、シンやキラ、アスラン達はそれぞれの想いを彼らにぶつけるのだった。
あの激戦の後。
俺やキラさん達は、それぞれの戦艦の医療室で目を覚ました。
正直、記憶は曖昧だったけど。
議長とファムと言う女を倒してから、妙なガンダムが現れてシュバルツさん達と戦っていたのまでは覚えていた。
ミネルバの医療室で、シンは目を覚ました。
「ーー艦長に聞いてみないとな。みんながどうなったのか」
ベッドの脇に足を下ろしながら、シンはあまり深く考えずに告げた。
「ま、シュバルツさんやキョウジさんに、マスターアジアがいたんだから、やられやしないだろうけどな」
ふと、敵にどのような攻撃も通じていなかった光景が頭の中に浮かび、思わず首を左右に振る。
「ないないない。ありゃ、タチの悪い夢だな」
シンは目を覚まそうと両手で頬を叩く。
ゆっくりと伸びをした後、ブリッジに向かった。
そこでは、大騒ぎになっている。
それを首を左右に見回しながら状況を確認する。
「え? なんだ?」
皆が無事であることを喜ぼうとするシンの心とは裏腹に、通信兵や艦長、副長たちの表情はすぐれない。
「ーーシン?」
後ろから声をかけられ、振り返るとそこにはルナマリアが居た。
「ルナ。お前も目が覚めたんだな!」
「ーーうん。何、この騒ぎは?」
首を横に振り、自分にもわからないことをルナマリアに伝え、会話に耳を澄ませてみる。
「索敵レーダーをつかえ!」
「レーダーならオーブのアークエンジェルの方が優秀よ! 通信を入れて!!」
「見当たらないだと!? バカな!! ちゃんと探せ!!」
「やってますよ!!」
何かを探しているようだ。
シンとルナマリアは特にそれに何を思うでもなく、ブリッジに足を踏み入れた。
「艦長、みんな。どうしたんです?」
シンが意を決して語り掛けると、皆が水を打ったように静寂に包まれる。
そして静かにこちらを振り返り、タリアが申し訳なさそうな顔になりながら静かに告げてきた。
「シン、ルナマリア。どこまで覚えているの?」
その言葉に二人は答える。
議長とファムを倒した後に出てきたガンダムとシュバルツ達が戦闘を始めたところだと。
「そう…」
タリアはそれだけを告げると、静かに続けた。
「落ち着いて聞いて、二人とも。シュバルツ殿ーーいいえ。あの正体不明のガンダムと戦ったガンダムファイター達が誰一人あの宙域に見つからないの」
シンとルナマリアの顔が凍る。
アーサーが続けた。
「あの化け物の姿もガンダムファイター達も消えたんだ。まるで最初からいなかったみたいに。いや、そんなはずはない。彼らなら必ず勝利したはずだ! そうだろ?」
副長の言葉に呆然としながらシンは頷く。
何を当たり前のことを、とは思うが。
同時にアーサー副長の言葉が遠くに聞こえた。
話したいことがいっぱいあったはずだった。
戦いが終わったら、シュバルツ・ブルーダーに伝えたいことがあった。
彼の下で学べたこと、出会ったことの奇跡を感謝したかった。
なのに。
何も言う暇もなく、風のようにガンダムファイター達はこの世界から姿を消した。
その後、世界は慌ただしく動いた。
DG細胞の起こした戦争。
デュランダルとジブリール両陣営の争いは、あまりに凄惨でコーディネーターとナチュラルの。
否、人々の心に深い爪痕を残した。
軍人、民間人、政治家。
全ての人間を巻き込む事態は、人々にある意味では妄信を辞めさせ、ある意味では疑心暗鬼を与える結果となる。
疑いを持つ。
様々な法律や国の動きに先進国の民は疑いと興味を持って見つめる。
それは当たり前と言えば当たり前のことだが。
人は慣れと共に、疑いや問題意識を持たなくなる。
どうせ変わらないと諦め、言うことを辞めてしまう。
その諦めが、自分の首を絞めることを漠然と分かっていながら。
だからこそ、人々が意識を持っている今が。
ラクスやカガリ達の勝負どころであった。
ラクス・クラインはプラントを纏め上げ、最高評議会議長として議席に着き、カガリ・ユラ・アスハは地球にあって暴走する連合を止め、唯一独立を貫いた手腕を買われて現・連合代表のコープランドと共に三勢力の会議を開く。
ミーア・キャンベルことミーア・クラインは、当初こそ帰還しないダイン・カッシュに対し取り乱していたが、積極的に姉・ラクスの片腕として動く。
それは彼女なりに寂しさを拭うための手段だったのかもしれない。
慌ただしく過ぎ去る日々。
シンとルナマリアはザフト軍人でありながら、キラやアスランと同じオーブ所属になる。
レイはメイリンを伴い、オーブの孤児院で療養生活を始めた。
周りの人々からの勧めと、何よりメイリンの強い希望だった。
キラとアスランは正に殺人的な業務を仕切っている。
キョウジ・カッシュが執り行った事務の全てをノート片手に必死で身に付け、寝る間も惜しんで宇宙や地球を行き来していた。
シンがオーブに入ったのも見るに見かねて、だ。
二人は責任感が強過ぎて、限界まで仕事をやろうとするところがある。
間違いなく早死にすると、シンはルナマリアに語った。
スティングやアウル、ステラの3人は当面、ネオことムウの指示でレイとメイリンの付き添いで施設に来ている。
ステラはシンについて行きたがったが、事務仕事と外交には向いていないと誰もが首を横に振り、今の運びとなった。
ルナマリアは当初、ガッツポーズを取っていたが。
後にステラ(猫)の手も借りたいとボヤいていた。
ムウ、バルドフェルド、マリューの3名は政治には携わらず、結局軍人としてオーブに所属する。
ミネルバ隊もデュランダルが倒れたおかげというか、最後までザフトに所属したこともあり、何事もなく軍に復帰できた。
しかし、艦長のタリア・グラディスは事後処理を行った後に退艦した。
理由は息子との暮らしを優先するとのことだったが、本音は喪ったものが多かったからであろうと窺い知れた。
それぞれが、ガンダムファイターへの想いを持ちながら、タブーのように口にしない。
口にすれば、堰を切ったように溢れ出すだろう。
彼らへの寂寥感。
日々が過ぎることで全ての出来事が夢であったかのような想い。
その度にシンはデスティニーガンダムの下へ来ては語りかける。
何も語らない彼も、シンの想いを理解しているように気を和らげる波動をくれた。
これを感じるだけでも、シンは信じられる。
あの強き人達に出会えたのは、夢でも何でもない。
あの戦いも、熱い日々も。
全ては自分の身に起こった真実なのだ、と。
それから一月が過ぎ、ようやく落ち着いて来た頃。
ラクスの計らいで、あの戦いに参加した身内だけのパーティーが行われた。
参加したのは、アークエンジェル隊、エターナル隊、ジュール隊、ハイネ・ヴぇステンフルスそしてミネルバ隊である。
日々の忙しさもあり、懐かしさもあり、皆が盛り上がる。
ラクスとミーアがライブを行い、ハイネがカラオケとは思えない歌を披露したり。
イザーク、ディアッカ、アスラン、キラの四人がバンドを組んでラクスやカガリ、ミリアリアにシホ達が合いの手を叫んだりと、宴もたけなわと言ったところで。
ふと、シンは彼らの笑顔に寂しさを感じる。
「どうしたの、シン?」
「食べてないじゃない?」
綺麗に着飾ったステラとルナマリアを見て、苦笑しながらシンは告げた。
「何でもないよ。さ、食べるかな」
どこか無理をしている笑みにステラはシンの手を取る。
「何でもなくないよ? シン、私も寂しいもん」
「…そうだな。だけど、俺たちが寂しがってたら、駄目じゃないか。キラさんから聞いたけど、シュバルツさん達は、自分の世界に帰ったのかもしれないんだからさ」
この場にいる誰一人、あのガンダムファイター達の敗北など考えてない。
彼らは勝利し、己の世界に帰ったのだろう。
それは、この世界でのDG細胞事件が収束したからだと、皆は思っていた。
正体不明のガンダムも言っていた。
世界に見せつけると。
つまり、この世界がガンダムファイター達に助けを求めたんじゃないか。
それが終わったから、彼らは帰ったのではないかと。
シンは今、そう思っていた。
「何だ。少しは寂しがってくれてもいいだろう?」
そんな声が聞こえた。
会場の騒めきが、消える。
皆が視線を向けた先には、一月前と変わらない姿でシュバルツ・ブルーダーとキョウジ・カッシュが立っていた。
「…シュバルツ、さん?」
ポカンとするシンにシュバルツは温かで優しい笑みを返す。
「ああ、私だよ。シン」
隣にはキョウジが苦笑しながら言う。
「みんな。無事で何より、だな」
その後ろから、赤い鉢巻きをした青年が白髪混じりの拳法着の男と共に現れる。
「凄い戦いだったみたいだな。信じてはいたが。見事だったぞ、お前達」
「…皆、変わりないようで何よりだ。安心したぞ」
ドモン・カッシュとマスターアジア。
会場が音を取り戻すのに、時間はかからなかった。
「シュバルツさん! どうして!?」
「みんな、落ち着いてくれ。それを説明する前に、レイ。少し良いか?」
シュバルツの言葉にレイが前に出る。
首を傾げている彼をキョウジが優しく迎えた。
「待たせたね、レイ君。君の為のワクチンが出来上がった。処置をしたいから、一緒に俺たちと来てくれないか?」
「え…?」
言われた意味が分からず、レイが茫然とすると隣のスティング、シン、アウルがキョウジに食らいついた。
「それって!」
「つまりさ!」
「レイの体は!?」
彼らを見返し、シュバルツとキョウジが優しい笑顔のまま、頷いたのを見て。
少年達はレイを抱きしめた。
「やったな、レイ!!」
「よかったな、おい!!」
「レイ、この野郎! 喜べ、馬鹿野郎!!…グス」
涙ながらにクシャクシャにされるが、言われたレイは未だに茫然としている。
「え? シュバルツさん?」
「ああ。テロメアを治せる。お前の親に当たる男のおかげでな。だが、彼の命を無駄にしない為にも最善を尽くしたい。私達の世界ならば技術と施設に加えて私とキョウジ、そして父もいる。万全の体制でお前の処置ができる。来てくれないか、レイ?」
ゆっくりと噛んで含めるようにシュバルツは告げた。
これにようやく、レイの時が動き出す。
困惑、歓喜、疑問、希望、絶望。
様々な感情とラウ・ル・クルーゼの最後の笑顔。
「俺は…」
「行きましょ、レイ!」
「メイリン!?」
「行って治そ? ずっと一緒に生きたいもん。私はレイと」
満面の笑みで言われ、レイが頬を赤くする。
その横で、ドモンが口を開いた。
「悪いが、レイだけじゃない。キラ、アスラン、シン。スティングにアウルもだな。お前達にも個人的な用がある」
その言葉にシュバルツが穏やかな笑顔から一転。
不敵なそれに変わる。
「僕たちに? まさか!?」
キラが目を見開き、それにマスターアジアが頷く。
「そう! そのまさかよ!!」
アスランが、表情を鋭いものに変えて告げた。
「カガリ、しばらく帰って来れないが。行けるか?」
「え? なんだ? 何が始まるんだ!?」
カガリが分からず、目を丸くする。
隣でシンがカガリの肩を掴んで言った。
「アスハ代表。俺も有給使います」
「え!? お前ら、一体!? キラ、アウル、スティング! 分かるように私に説明してくれ」
カガリの悲鳴を無視して、少年達は瞳に炎を燃やしている。
「スティング達は、ガンダムの調整。できてるかい?」
「当たり前だろ、キラ!!」
「こんなこともあろうかと、調整に調整を重ねてたぜ!!」
少年達の顔を見渡し、ドモンがニヤリと笑う。
「フ…。準備はいいようだな。向こうで、お前達を待ち構えている連中がいるぞ」
「望むところ。いいえ、願っても無い!! 僕とフリーダムガンダムがあなた方にどれだけ、近づけたのか。それを知り得る最高の機会だ!!」
キラが燃える瞳で告げる。
マスターアジアは、これに腕を組み豪快に笑って告げた。
「わっははは! それでこそ、ワシが認めた男よ! キラ・ヤマト!!」
そして、キング・オブ・ハートを輝かせ、ドモンがキラ、シン、アスランを指差して告げた。
「キング・オブ・ハート、ドモン・カッシュの名に懸けて! コズミック・イラのガンダムファイター達よ! お前達に、ガンダムファイトを申し込む!!」
力強い宣言に少年達は是非もなく頷いた。
目を闘志で燃やし、拳を握り締める。
「断られたらどうするつもりだったんだか。いや、乗り気みたいだからいいけど」
キョウジが呆れながらドモンに言うと、シュバルツが告げる。
「断れないさ。強い相手が己を求めていると聞けば、それに応えたくなる。それがガンダムファイターだ」
「厄介つーか、難儀な人種だな」
ため息を吐きながら言うと、シュバルツが不敵に笑う。
「他人事ではないぞ? 今回のファイトは3人一組のチーム戦。貴様にも出てもらう」
「な、なんだと!? 聞いてないぞ、シュバルツ!!」
揉め出す同じ顔をした二人を見て、ドモンは笑う。
東方不敗マスターアジアも。
シンもキラも、アスランも。
スティングにアウル、ステラも。
レイ、ルナマリア、メイリン。
ラクス、カガリ、マリュー、タリア。
ムウ、バルトフェルド、イザーク、ディアッカ、ダコスタにアーサー。
この場にいる全ての者が笑顔を見せている。
こうして、シン達は異世界ーー未来世紀に旅立った。
10日後に彼らは帰って来て語る。
熱きガンダムファイトと、新たな友との出会いを。
そして、人並みの寿命を手に入れたレイを見て。
未来世紀のとある無人の島にて。
自由の翼と正義の剣と運命の光が、炎の武神と鏡の忍者と光の鬼神に相対していた。
「シンよ、私はお前に問うたな。戦う理由を。答えは出たか?」
「もうとっくに分かってたことでした。でも! 本当の意味で気付けたのは貴方のおかげです。守りたいものを守るために、俺は戦います!! 何回、打ちのめされても、何回倒されても、最後の最後まで、足掻いてみせます!! 貴方達が見せてくれたように!!!」
「ならば、来い! 答えを見せてくれ!!」
互いに構え合う6機のガンダム。
赤い服を着た眼帯の男が、マイクを片手に叫んだ。
「みなさん、お待ちかね〜! 世界最強のカッシュ三兄弟に挑むのは、異世界から現れた超新星! 自由と正義と運命の名を冠するガンダム達は、キング・オブ・ハート率いる戦士達にどのような、ファイトを見せてくれるのか?
それでは、ガンダムファイトォォオ!!」
「「「レディイイイッ!!!」」」
「「「ゴォォォオオオッ!!!」」」
青い異界の空の下、少年達は戦士達に真っ向からぶつかった。
時は少し遡り、パーティ会場にて。
シュバルツやキョウジ、ドモン達が現れたことで騒いでいる間に。
ラクスの妹、ミーアは攫われた。
「え? ええええっ!?」
気付けば、逞しい両腕に掻っ攫われている。
目の前には愛しい男が優しい瞳で、こちらを見ている。
「ミーア」
「あ、ダ、ダイン?」
真剣な表情でこちらを見るダインにミーアは高鳴る胸を抑えられない。
寂しさとか、不満とか、一杯言いたいことがあった。
だけど、何も言えない。
言わせてくれない程に優しい瞳で、声で。
ダインはミーアに語りかける。
「お前が欲しい、ミーア。お前が好きだ」
「あ、あぁああっ!」
もう力が入らない。
悪魔の言葉は強烈な力で彼女から意志を奪う。
だから、ダインの首に抱き着きながらミーアは泣きながら告げた。
「私は、ずっと前からなんだからね? ずっと、好きだったんだから、バカァ!」
そのまま、魔王は歌姫をさらっていった。
これを穏やかな顔で姉のラクスは見送る。
「どうか、お幸せに。たまには、帰って来てくださいね、ミーア」
通路に消えた二人を想い、ラクスは心から微笑んだ。
全てが幸せになった。
未来世紀とコズミック・イラ。
二つの世界を繋ぎ、救った戦士達。
彼らは、永遠に語り継がれていくだろう。
人が己の行いを反省した時に。
ここではない、何処か。
鉛弾を受け、命を落としかけた彼は静かに瞳を開けた。
「…何処だ、此処は?」
自分のスーツの乱れがなくなっているのを知り、割れたはずのサングラスがあることに一つ頷く。
「気がついたかね。君もよくよく悪運が尽きないな」
語りかけてきた声に皮肉な笑みを浮かべ、彼はサングラスの淵を押し上げる。
「お互い様でしょう。貴方も生きていたのですね」
彼の言葉に男は翡翠色の冷たい瞳を向け、冷酷な笑みを浮かべた。
「ああ、生きている。力もある。どうやら、世界は今度こそ我々に。あの忌々しいガンダムファイターどもを倒してみせろ、と言っているようだ」
「ふふふ。此処が何処で。どんな世界かはわかりませんが、そんなことは瑣末なことですね。我々には」
「そうだとも! 今度こそ、全てを支配する!! 手始めにこの世界だ!! 歯向かう奴は、この私の力で全て消してくれる!!」
「コズミック・イラでは、潜伏期間を慎重に長く取り過ぎました。この世界では、そのようなことはしたくありませんね」
彼は立ち上がる。
青い空と砂漠のど真ん中だった。
「そう言えば、ウォン。この世界にもガンダムがいるようだよ。私達の良い駒になってくれれば良いのだがね」
「ほう? アレか」
見上げた視線の先には、円錐型になったバックパックから光の粒子を散らして白地に青を基調としたコズミック・イラでも未来世紀でもない技術体系のガンダムが、施設に向かって降って行くのが見えた。
「さて。行きますか?」
「ああ。退く道理もない」
互いに酷薄な笑みを浮かべて、彼と男はガンダムが降り立った街に向かって歩いて行った。
どーも、カンナムです(=゚ω゚)ノ
いや、ようやくシン達とガンダムファイター達の旅の全てが終わりました(´ー`* ))))
長かったなーー。
終わらせられなきゃ、どうしよう(´・ω・`)
そんなことを感じながらも一年で終われたのは、本当にみなさんの感想や評価のおかげです(´ー`* ))))
この場をお借りして、お礼申し上げます(=゚ω゚)ノ
ありがとうございました( ´ ▽ ` )ノ