新機動武闘伝 GガンダムSEED Destiny   作:カンナム

101 / 103
 復活作業に手こずりましたが無事、最終話に辿り着けました(^^)





エピローグ ミーア

 その日、私は出会った。

 

 

 

 傲岸で不遜で、社会常識なんて何も知らないのに偉そうで。

 

 

 

 デリカシーがなくて、遠慮が無くて。

 

 

 

 それでも、静かに私の傍に居てくれる。

 

 

 

 そんな炎のような赤い髪のヒトに。

 

 

 

「髪の色が違うわ!!」

 

 

 

「どういうことだ、高い金を払っているのにどうしてこうなるんだ!?」

 

 

 

 実際にそんなやり取りがあったのかは知らないし、私には知る由もない。

 

 

 

 だけど、私は物心ついたころには、施設に居た。

 

 

 

 冷たい施設。

 

 

 

 真っ白な壁と床。

 

 

 

 私と同じように親に捨てられた身寄りのない子ども達。

 

 

 

 私たちは、高校生の歳になれば無理矢理独り立ちさせられ、施設を出て行かされた。

 

 

 

 幼いころからファンだったヒトがいる。

 

 

 

 その人の名は『ラクス・クライン』

 

 

 

 私とよく似た声をした女性。

 

 

 

 彼女みたいになりたくて。

 

 

 

 必死になって歌を勉強した。

 

 

 

 だけど。

 

 

 

「声は、いいんだけどね」

 

 

 

「もっと他にないかい?」

 

 

 

「君の見た目では、いまいち売れないなぁ」

 

 

 

 全てのレコーディング会社に行っては落とされる。

 

 

 

 そんな生活をくり返して、半年が過ぎたころ。

 

 

 

 私の憧れた少女。

 

 

 

 パトリック・ザラが起こしたヤキン・ドゥーエ戦役が集結。

 

 

 

 ラクス・クラインがプラントから亡命して少し経った時期だった。

 

 

 

「ミーア・キャンベルさんですか?」

 

 

 

 安アパートで独り暮らしをしている私の下に、黒い服を着た男の人たちが現れたのだ。

 

 

 

 彼らは、プラントの評議会議員のバッチを身に付けていた。

 

 

 

「貴女にお願いしたいことがあるのです」

 

 

 

 その言葉を呆然と聞きながら、私はこのチャンスを逃すまいと思った。

 

 

 

 紹介されたのはテレビでよく見る最近プラント最高評議会議長に就任したギルバート・デュランダル氏。

 

 

 

 彼から直々に言われたのは。

 

 

 

「キミにお願いしたいことは、一つだ。今、プラントにはアイドルが居ない」

 

 

 

「ラクス様のことですか?」

 

 

 

「そうだ。彼女の歌は、疲弊しきったこのプラントの人々に癒しを与えてくれていた。キミに頼みたいのは、彼女が戻ってくるまで彼女の代わりをしてもらいたい」

 

 

 

「ーー私が?」

 

 

 

「そうーー。キミがラクス・クラインになってほしいのだ」

 

 

 

 そしてーー私・ミーア・キャンベルの戸籍はデュランダル議長に買われ、ラクス・クラインとしての人生が始まった。

 

 

 

 その付き人として、今まで一緒に行動してきたマネージャーともう一人。

 

 

 

 議長に紹介された赤い髪の青年。

 

 

 

 そう。

 

 

 

 ダインーーううん。

 

 

 

 この時はまだ、Dと名乗る赤い髪の青年と出会った。

 

 

 

 

 

 呆れたわ。

 

 

 

 Dは、社会常識に全く欠けてたの。

 

 

 

 私の知らない話とか、歴史とか、そういうのなら詳しいのに。

 

 

 

 議長に敬語は使わない。

 

 

 

 初対面なのに高圧的に話す。

 

 

 

 重役の社長だろうと、議会の議員だろうと。

 

 

 

 全く変わらない。

 

 

 

 私はそれが、腹立だしくて。

 

 

 

 猛烈に悔しくて、嫉妬した。

 

 

 

 なんで、こいつはこんなにも自由なんだろう?

 

 

 

 私は必死に誰かの顔色を気にして、窺って、気に入られるようにと頑張って来たのに。

 

 

 

 親に捨てられ、施設から追い出され、レコーディング会社からも見放されかけたのに。

 

 

 

 なんで、こいつはこんな態度を取っても周りに許されるんだろうって。

 

 

 

 私は、Dが羨ましくて妬ましかった。

 

 

 

 そんな私に、あいつは言った。

 

 

 

「一々、弱者の顔色など見ていられるか。我は貴様らと違って暇ではない」

 

 

 

 淡々と高圧的に、私を見下して。

 

 

 

「アンタに、何が分かるのよ!?」

 

 

 

「…なんだと?」

 

 

 

 能面みたいに無表情だったあいつの顔が、目を見開いて驚いたものに変化した。

 

 

 

 私は構わずにぶちまけてやった。

 

 

 

「アンタには、分からないわよ! 親にも見捨てられて、施設から追い出されて! 必死になって歌を歌って!! 人一倍働いて、努力して。それでも、全然ラクス様のモノマネだって言われて、認められなくて!! 誰にも必要とされない私の気持ちなんか、アンタに分かるもんか!!」

 

 

 

 Dは何も言わない。

 

 

 

 表情は普段どおりの無表情に変わった。

 

 

 

 だけど、私は止まらなかった。

 

 

 

「あんたの言う弱者って何よ!? 私が、他人の目を気にするくらい弱いからダメだって言うの!? 夢を見ることの、諦めない人の何が弱いって言うのよ!? 簡単に弱者って言葉で一括りにするんじゃないわよ!!」

 

 

 

 肩で息をする私を、Dは静かに見下ろして来た。

 

 

 

 その目に、私は何も言えなくなる。

 

 

 

 何だろう、この優しい目は。

 

 

 

 穏やかでいて、眩しいものを見るような目は。

 

 

 

 ああ、私はこれを。

 

 

 

 この目を知ってる。

 

 

 

 Dは、貴方は。

 

 

 

 私と同じように、誰かをーー。

 

 

 

「…分かった」

 

 

 

「…え?」

 

 

 

「貴様の強さは、よく分かった」

 

 

 

 その時だけだった。

 

 

 

 あいつが、あんな目をしたのは。

 

 

 

 私がラクス様として活動を始めた時も。

 

 

 

 悩んでいた時も、あいつは仏頂面で。

 

 

 

 つまらなさそうに、私の傍に居た。

 

 

 

 居てくれた。

 

 

 

 愚痴も言ったし、泣き言も言った。

 

 

 

 遠慮なんかしなかった。

 

 

 

 だって、あいつだって私に遠慮なんかしてくれたことなかったもの。

 

 

 

 そうしてたら、いつの間にか。

 

 

 

 あいつは、私の中で一番の存在になってた。

 

 

 

 

 

 

 

 ゆっくりと目を覚ました。

 

 

 

 初めて見る天井と自分が寝ていたベッドの感触に、私は自分が今、どんな状況でいるかを思い出している。

 

 

 

 ドアが控えめにノックされた。

 

 

 

「…あ、はい?」

 

 

 

「起きたみたいね。よく眠れたかしら?」

 

 

 

 中に入って来たのは一人の美女。

 

 

 

 濃い茶色の髪を腰まで伸ばした翡翠の瞳が印象的。

 

 

 

「おはよう、ミーア。式は今日の夜だから、手早く朝食にしましょう?」

 

 

 

「…はい。よろしくお願いします、レインさん」

 

 

 

「違うでしょ? 今日から貴女は私の義妹になるんだから」

 

 

 

 イタズラな笑みを浮かべる美女ーーレインさんに、私も苦笑して告げた。

 

 

 

「…はい。ありがとう、お義姉ちゃん」

 

 

 

「うん! さ、手が焼ける夫たちの顔を見に行きましょうか。顔を洗ってからね」

 

 

 

 ウインクしながら言われ、思わず笑ってしまう。

 

 

 

 私、ミーア・キャンベルは今日。

 

 

 

 Dーーダイン・カッシュの妻になる。

 

 

 

 今日が『ミーア・キャンベル』の最後の日だ。

 

 

 

 

 

 ダインにパーティ会場からさらわれた私は、未来世紀の世界に来ていた。

 

 

 

 来るなり、色んな人達に出迎えられた。

 

 

 

 その中でも印象的だったのは、ライゾウ・カッシュという初老の紳士。

 

 

 

 ダインやドモンさん。

 

 

 

 キョウジさんやシュバルツさんとよく似た男性。

 

 

 

「ようこそ、ミーア。私の息子をよろしく頼むよ」

 

 

 

 温かな笑顔と声で、私は色んな人達に見守られながら、幸福に満ち満ちた涙を流して頷いていた。

 

 

 

「あの、お義姉ちゃん。ダインは?」

 

 

 

 私の言葉にレイン義姉さんは、苦笑して言った。

 

 

 

「ホテルの広間。貸し切りだからってはしゃいでるわ。ウチの人や友達とね」

 

 

 

「…え?」

 

 

 

 食事を終え、顔を洗って着替えた私が、ロビーで見たのは。

 

 

 

「甘い、甘いぞ!!」

 

 

 

「わっははは、どうした! シャッフル同盟!!」

 

 

 

 覆面をした忍者と初老の拳法着の男性が。

 

 

 

「OK、OK! 俺たちもヒートアップしてきたぜ! なあ、ジョルジュ!?」

 

 

 

「勿論です、チボデー。シュバルツにマスター。あなた方には、決勝大会やギアナでの借りがある。今日こそ、返して差し上げよう!!」

 

 

 

 髪を青とピンクのメッシュにした男性とオレンジ色の長髪を靡かせた貴族のような白い服を着た青年と殴り合っていた。

 

 

 

「すげえな、チボデーさん達を相手に押してるぜ」

 

 

 

「だが、勝負はこっからだろ? にしても、熱いバトルだぜ!!」

 

 

 

「まだまだ、俺もてめえらも修行のしがいがありそうだな」

 

 

 

 三人の青年達が、それを見て拳を握っている。

 

 

 

 そんな彼らを置いて、レイン義姉さんはロビーで笑顔を浮かべて騒ぎを見ていたドモンさんに話しかけた。

 

 

 

「ちょっと、いくら貸し切りだからって。騒ぎ過ぎよ?」

 

 

 

「そうは言うが。シュバルツと師匠に出会っちまったら、今のシャッフルの連中に我慢させるのは無理だ」

 

 

 

「…全く。ダイン、貴方からマスターとシュバルツに言ってくれないの?」

 

 

 

 自分の夫が止める気が無いのが分かったレイン義姉さんは、ロビーのソファーでくつろいでいるダインに告げた。

 

 

 

「…好きにやらせろ。奴らのことだ、止めると俺やドモンも巻き込む」

 

 

 

「…あり得るわね」

 

 

 

 レイン義姉さんの疲れたような声に、私も思わず苦笑した、

 

 

 

「…お。来たか、今日の主役が!」

 

 

 

 ダインの向かいのソファーに座って新聞を読んでいたキョウジさんが、私に話しかけてくれた。

 

 

 

「羨ましいぞ、ダイン! こんな可愛い嫁さん貰えて!」

 

 

 

 肘でダインをつつくキョウジさんにライゾウ博士ーーお義父さんがゆっくりと口を開いた。

 

 

 

「…そうか。なら、カラト首相に頼んでアキノさんともう一人、紹介してもらおうか」

 

 

 

「………冗談だよ、父さん」

 

 

 

「いや、キョウジ! シュバルツもだが、今のうちに嫁さんを貰うべきだ!! ミキノも喜ぶ!!」

 

 

 

「よせよ、頼むから。いやマジで!! 俺はまだ、自由でいたいんだよ!!」

 

 

 

 楽しそうな親子の会話を尻目にダインが立ち上がってこちらに近づいて来た。

 

 

 

「寝れたか?」

 

 

 

「…そうね。誰かさんが、別々の部屋にしたから。ゆっくり寝れたわ」

 

 

 

 嫌味を込めて言ってやった。

 

 

 

 私だって、色々と覚悟して来たのに。

 

 

 

 こいつと来たら、真っ先にドモンさんの部屋に行くし。

 

 

 

 キョウジさんや、シュバルツさん達と組手したり。

 

 

 

 とにかく、こっちに来てから、私を放ったらかしにして好き放題してる。

 

 

 

 レイン義姉さんやアレンビーさんとか。

 

 

 

 ガンダムファイターの奥さん達は、凄く親身になってくれるから、別に不便はないけど。

 

 

 

「…何を怒ってる?」

 

 

 

「ベーつにぃ〜。自分の恋人を放ったらかしにして、平気で男友達と遊んでばかりの誰かさんに、怒ってなんかいませんよーだ」

 

 

 

 拗ねてるだけだけどね。

 

 

 

 これくらいは許されるだろう、と私がレイン義姉さんを見ると、力強く頷いてくれた。

 

 

 

「まだ足り無いわ。いい、ミーア? ガンダムファイターなんて子どもと一緒なんだから。首輪に鎖をつけるくらいじゃなきゃダメよ! 私達も協力するわ!!」

 

 

 

「…はい、頼りにしてます!!」

 

 

 

 女性陣の頼もしい笑みに、思わず頷くと。

 

 

 

 ドモンさんとダインが口をへの字にして、こちらを見ていた。

 

 

 

 

 

 ウエディングドレス。

 

 

 

 純白のそれを着た私を2メートルを越える身長と黒髪になったダインが見つめている。

 

 

 

「…指輪か。鎖に見えるのは、何故だ?」

 

 

 

 静かに呟くダインに向かって私は告げた。

 

 

 

「決まってるでしょ? コレは、貴方を私に縛り付けるものなんだから!」

 

 

 

「…フン。そんなものが、無くとも。俺はお前のものだ」

 

 

 

「いいから、付けなさいよ!! あんたは、私のものなんだから!! 他の女の子に目なんか付けさせないんだからね!!」

 

 

 

 式の最中にそんなやり取りをする私達を、みんなが苦笑して見つめている。

 

 

 

 ダインは私の手を取り、指輪を付けさせると。

 

 

 

 さっさと自分で自分の指に指輪を嵌めてしまった。

 

 

 

「…あ、ん、た、は〜!! ダイーーッ!?」

 

 

 

 見上げて怒鳴る私の口をダインの口が塞ぐ。

 

 

 

 ゆっくりと私から唇を離すダインを呆然と見上げる。

 

 

 

 ダインはそのまま、離れようとした。

 

 

 

 その首に抱きついて、私は不敵に笑ってやった。

 

 

 

「…好きよ」

 

 

 

 そのまま、私はダインの唇に自分の唇を押し付けた。

 

 

 

 周りが私達を祝福してくれる。

 

 

 

 ラクス姉様。

 

 

 

 私、今、とても、幸せですーー。

 

 

 

 私達を祝福する鐘が、ホテルの式場に鳴り響いていた。

 

 

 

 




最後の最後まで、ありがとうございましたーヽ(´▽`)/

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。