新機動武闘伝 GガンダムSEED Destiny   作:カンナム

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みなさん、我らがシュバルツ・ブルーダーは、ついにオーブを離れ、ミネルバ隊と合流を果たします。

そして、アスラン・ザラもまた、衝撃の出会いを果たすのです。

それでは、ガンタムファイト、レディー、ゴー!!!




第11話 新たなる旅 それぞれの始まり

 

 ザフト新造艦ミネルバ--

 

 

 

 中立国家オーブの港に停泊して、休息を取る約束の3日目に、長身で灰色のコートを着た奇妙な覆面の男が現れた。

 

 

 

 彼の登場に合わせて、ミネルバは格納庫に船員を招集した。

 

 

 

 皆、覆面の男の入隊に不安半分、憧れと期待が残りといった風情だ。

 

 

 

「本日より、ザフト艦『ミネルバ』に同席させてもらうことになりました。シュバルツ・ブルーダーです。よろしく」

 

 

 

 両手を腰の後ろに回して組み、よく通る声で皆に挨拶するシュバルツ。

 

 

 

 軍人ではないはずなのに、その動きは正規兵のものよりも機敏で清廉されたものであった。

 

 

 

「シュバルツ氏はあくまでオーブの出身だから、ザフト軍ではないけれども、私たちに協力してくれるそうよ。もちろん、客人としてね。

 

 本国からの指示もあり、彼を迎え入れることになりました。みんな、仲良くして頂戴ね」

 

 

 

 皆がざわめく中で、彼を艦に誘った少年--シンも首をかしげていた。

 

 

 

「--本国から? プラントもシュバルツさんの加入に賛成してる?」

 

 

 

 プラント本国には、シュバルツ・ブルーダーのことは内密にしているはずだった。それなのに--

 

 

 

「おそらくは、デュランダル議長の指示だろう。あの場で、プラントの議会権限を持っているのは、ジュール隊のイザーク隊長とデュランダル議長だけだ。

 

 ジュール隊長は新人議員であるし、ミネルバとの関わりは皆無と言っていい。

 

 それにミネルバ隊を創設したのはデュランダル議長だ」

 

 

 

 シンの疑問にレイが右隣で答えた。左隣から、ルナマリアが身を乗り出してくる。

 

 

 

「覆面は変だけど、ザクに乗って助けてくれたときとか、普段の対応とか、格好いい人よね」

 

 

 

「お姉ちゃん、趣味変わったの!? あんな覆面忍者が良いなんて!!」

 

 

 

思わず目を剥くメイリンにシンがムッとした表情になり、言った。

 

 

 

「メイリンは、戦場のあの人を見てないから、そんなこと言うんだよ。めちゃくちゃカッコイイんだぜ。シュバルツさんは」

 

 

 

シンの言葉の後に、ルナマリアとレイも続く。

 

 

 

「ーーそうなのよね。普段の格好がアレだけど」

 

 

 

「格好がどうかは分からんが、凄まじい腕と筋の通った話をされる方だな」

 

 

 

三人からの高評価があることに、疑問符を浮かべながら、メイリンはシュバルツを見た。

 

 

 

「カッコイイ……かなぁ?」

 

 

 

そんな俗な話がされる中で、シュバルツ・ブルーダーの歓迎式は終了した。

 

 

 

 

 

ーーーーーー

 

 

 

同時刻、プラントに居るアスランは、復隊目的でデュランダル議長に面会しようと、イザークの口添えから議会のある空港で待機していた。

 

 

 

待ち合わせの時間まで、あと半時間程度だ。

 

 

 

壁に掛けられた時計で確認し、空港のソファに腰掛け直す。

 

 

 

「アスランーー!! アスラン・ザラーー!!」

 

 

 

「ーー!?」

 

 

 

声の聞こえた方を見ると、ピンクの髪をしたアスランの良く知る女性が、走り寄ってきた。

 

 

 

「ーー!? ラクスっ!?」

 

 

 

彼女を抱きとめ、間近で顔を見るも、アスランの記憶の中にあるラクス・クラインに酷似している。

 

 

 

ただし、彼女とはあまりにも、雰囲気が違いすぎる。何より、服の露出度や胸の膨らみなどもーー。

 

 

 

「ーー君は?」

 

 

 

幾分か、吹っ飛んだ思考を戻しながら、アスランは問いかけた。

 

 

 

「ーーミーア、ミーア・キャンベルよ! 会いたかったわ、アスラン!!」

 

 

 

予想どおり、ラクスとは全く違う名前を告げてきた。

 

 

 

後ろから来たマネージャーらしき者や、護衛のような人間を見て、ミーアはアスランから離れ、隣の席に座る。

 

 

 

「でも、その姿と格好は?」

 

 

 

「私、ラクス様の身代わりでデュランダル議長の元にいるの。あの大戦の後、ラクス様はお姿を隠されたから、大戦後の混乱を避けるために、議長が私を選んでくださったの!!」

 

 

 

両の手を胸の前で合わせ、ミーアは目を輝かせた。

 

 

 

「ーーそれは、構わないのか? 君は、ラクスじゃない。ミーアなんだろ?」

 

 

 

なんとなく、ミーア個人としての気持ちを知りたくて、アスランは問いかけた。

 

 

 

すると、一瞬だけ、ミーアの顔が強張るも、すぐに笑顔を浮かべて答えた。

 

 

 

「私、憧れだったの! ラクス様の歌が好きで好きで、ラクス様を目指して歌手になった。でも、中々売れなくて。そんな時に議長に拾われて、ラクス様になれたの!!

 

凄く、感謝してる」

 

 

 

ミーアの独白を聞きながら、アスランは表情が強張るのを感じた。

 

 

 

( イザークの言うとおりだ。全くの善意からの行動じゃない。これは、俺も気をつけないとダメだな)

 

 

 

一見、ミーアの願いを叶えたように見えるが、ラクスはただの歌姫ではない。

 

 

 

クライン派を主流とした政治的後ろ盾を持つ、プラントの姫でもある。

 

 

 

替え玉を手元に置いて、利用しない手はない。

 

 

 

「ーー貴様が、アスラン・ザラか?」

 

 

 

眉間に皺を寄せ、考え込むアスランに、第三者の声がかかった。

 

 

 

心なしか、イザークに似ていたような気がしないでもなかったが、彼よりも低い声だ。

 

 

 

見れば、ロビーの方に20代前半、180はあろう長身の赤い髪のザフト軍の緑服を着た褐色の肌の青年が立っていた。

 

 

 

「ーーあなたは?」

 

 

 

「俺に名はない。呼びたければ、Dと呼べ。デュランダルはそう呼ばせるようにしているらしい」

 

 

 

いくら、ザフトが義勇軍とは言え、最高評議会議長を呼び捨てにする青年に、思わず目を白黒させるアスラン。

 

 

 

「ーーD!! 議長を呼び捨てにしちゃ、ダメじゃない!!」

 

 

 

すぐさま、アスランの隣に座っていたミーアが叱りつけた。

 

 

 

青年ーーDは鬱陶しげに、ミーアを見据える。

 

 

 

「ーーやかましいな、相変わらず。その金切声をどうにかしろと、何度言えば分かる?」

 

 

 

「残念でした、これは生まれた頃からの自前なのよ!!」

 

 

 

Dは、小うるさい仔犬から目を背けるようにアスランの方を向く。

 

顔立ちは整っているが野生的な雰囲気が全身から漂う青年に、蔑ろにされ、ミーアは更に眦を釣り上げて、立ち上がると、まとわりつくようにDの眼前にまで近づいていった。

 

 

 

「ーー邪魔だ、小娘。俺はそこの小僧に用がある」

 

 

 

「小娘じゃないわ、ミーア!」

 

 

 

興味なさげに、彼女を一瞥したのち、アスランに顔を向けるDに対し、自身の豊満な胸を叩いて、名を名乗るミーア。

 

 

 

その後、まるでDに言い聞かせるかのようにアスランをさして、告げる

 

 

 

「この人は、アスラン!!」

 

 

 

「何だっていいだろ。とにかく邪魔だから、向こうへ行け」

 

 

 

「ムッカァ!! あなたね、そんな態度だからーー!!」

 

 

 

Dは、さっさとアスランに用件を告げたいようだが、ミーアが噛み付いてそれどころではない。

 

 

 

( 無茶苦茶、目立つな。この二人)

 

なんとなく、距離を置いて、二人のやりとりを見る。

 

 

 

どう見ても、怖そうなDだが、意外にミーアに危害を加えるような真似はしない。

 

 

 

もっとも、Dはさっさとこちらに話を振りたいようだが、話しかけようとする度に、ミーアが前に回り込み、話を遮られている。

 

 

 

「ーー賑やかだね、D。ミーアも」

 

 

 

見れば、苦笑を浮かべたギルバート・デュランダル議長がロビーの階段から降りてきていた。

 

 

 

瞬間、ミーアが顔を真っ赤にして恥ずかしがり、うつむく。

 

 

 

反対にDは胸を反りかえらせて、アゴを向ける。

 

 

 

「ーー貴様の使いで来たが、小娘に邪魔をされたぞ。デュランダル」

 

ギロッと睨みつけるように、Dがホールに降りてきたデュランダルを見る。

 

 

 

先ほど視線を向けられたアスランは、身が竦む迫力だと思ったが、ミーアも議長も、全く緊張していない。

 

 

 

「すまないね。だが、D。ラクスがそこまで感情を露わにするのは、君ぐらいなんだよ?」

 

 

 

「迷惑だ」

 

 

 

間髪入れずに応えるDだが、すぐさま隣のミーアに足を踏みつけられている。

 

 

 

丁度議長からは、影になるが、アスランからは丸見えの位置だった。

 

 

 

Dが表面上は、全く顔を歪めずにミーアを見ると、うつむいて前髪の影に顔を隠しながら、般若の形相でDを睨みつけている。

 

( こ、こ、怖い……!!!)

 

 

 

アスランをして、戦慄するほどの形相であった。

 

 

 

本物を知るからこそ、余計に恐ろしい、アスランであった。

 

 

 

ーーーーーー

 

 

 

その後、デュランダルの案内で、客間に通されたアスランは、席に着くなり、デュランダルに自分の用件を伝えた。

 

 

 

「ーーつまり、オーブに籍を置いたまま、ザフトに復隊したい、と言いたいのかな?」

 

 

 

「ーーはい」

 

 

 

自分で言ったことだが、内心はどんだけ面の皮厚いんだ、と自分でツッコミを入れる。

 

 

 

イザークは、ストレートに要望を言って、受け入れられなければ、また相談しに来いと言っていたが。

 

 

 

まず、駆け引きもクソもない、こんなやり方では、通るものも通る訳ーー。

 

 

 

「ーーなるほど。カガリ姫の為か」

 

 

 

「ーーはい。って、え!?」

 

 

 

見ると、デュランダルはとても微笑ましいものを見るようにアスランを見ている。

 

 

 

「若いとは、いいね。純粋な気持ちで、行動ができる。若さ故の過ちもあるだろうが、私は尊重したい」

 

 

 

テーブルに置かれたカップを取り、口をつけて紅茶を一口含み、優雅にテーブルに戻す。

 

 

 

「ーーしかし、君はパトリック・ザラのご子息だ。アイリーン・カナーバ前議長のお心遣いの件もある。

 

オーブに籍を置いたまま、ザフトに参加することを私の一存で決めて良いものか」

 

 

 

「ーーその件につきましては、厚かましいついでに、私にフェイスの権限を与えていただきたいのです」

 

 

 

これは、やんわりと断わられるパターンだな、と考えながら、ヤケ気味にフェイスの件を伝える。

 

 

 

どうせ断わられるなら、全て告げてやる、と言った具合だ。

 

 

 

だが、これに議長がニンマリと言った表情でアスランを見た。

 

 

 

「どういう風の吹き回しかな? アレックスとしての偽名を捨てながらも、オーブに籍を置き、ザフトのフェイスになりたい、という真意は」

 

 

 

「先ほど、議長のおっしゃられたように、今の私は、一ボディガードに過ぎません。カガリの側に居ても弾除けにしかならない。それでも良いと、考えていましたが、それでは、弾除けにもならないし、妻にももらえないと、知り合いに言われました」

 

 

 

「私が、君にフェイスの権限を与えるのを疑っていないのかな?」

 

 

 

「ーー議長を信じて、全てを話しました」

 

 

 

どの面下げて言ってるんだ、と冷めた目でツッコミを入れずにいられない、内心だったが、必死にデュランダルの目を見る。

 

 

 

すると、デュランダルは前かがみになりながら、アスランに話してきた。

 

 

 

「ーー実はね、アスラン君。先のセカンドステージを強奪した戦艦の正体が、分かったんだよ。

 

連合の戦艦だ。

 

ただし、ユニウス条約に違反した、表向きでは、連合も持てないものでねーー」

 

 

 

「それは、つまりーー!!」

 

 

 

目を見開くアスランに、デュランダルは頷いた

 

 

 

「君は、父上に聞かされていないかな? ブルーコスモスの息のかかった地球連合の部隊のことを。軍事産業複合体ロゴスと言う、危険な連中の事を」

 

 

 

「ロゴスーー? 何度か父から聞かされています。確か、ブルーコスモスと繋がりのある、軍事産業。先の大戦で戦死した、ムルタ・アズラエルも、ブルーコスモスの盟主にしてロゴスのーー」

 

 

 

アスランの言葉に、デュランダルは満足気味に頷いた。

 

 

 

「ーー戦争になるんですか?」

 

 

 

「遠くない内に、ね。オーブも巻き込まれなければ良いのだがーー」

 

 

 

溜め息混じりに告げられる言葉に、アスランは戦慄した。

 

 

 

つまり、一方的に地球連合は、プラントに攻撃を仕掛けてきた事になる。

 

 

 

しかも、中立コロニーのアーモリーワンで、だ。

 

 

 

まるで、2年前の繰り返しだ。

 

 

 

前回はザフトが強襲して連合のGシリーズの機体を奪ったが、今回は地球連合がセカンドステージの機体をザフトから強奪した。

 

海洋国家オーブの周辺は、地球連合に加盟している国ばかりだ。

 

 

 

前回は、ウズミが居たからこそ、ある程度は抑えられたが、最終的に力ずくで来るだろう事にかわりはない。

 

 

 

今のオーブに、地球連合の強制を突っぱねる力があるか、どうか。

 

 

 

( カガリーー!!)

 

 

 

居ても立っても居られなくなり、アスランはデュランダルに軽く頭を下げると、客間から出て行こうと立ち上がった。

 

 

 

「ーーアスラン君、これを渡しておこう」

 

 

 

間髪入れずにデュランダルは、金属片をコトリとテーブルに置いた。

 

 

 

それは、ザフト軍のフェイスの証だ。

 

 

 

「ーー議長?」

 

 

 

「さらに、これを君に預けておく。セカンドステージの新型機だ。アーモリーワンでの式に間に合わずにいたんだが、つい先日完成してね。

 

良ければ使ってくれ」

 

 

 

まるで、車を貸すかのような気軽さで、MSのカタログを渡された。

 

 

 

思わず、議長が何を考えているのか、と顔を覗くと、デュランダルは笑った。

 

 

 

「ーーアスラン。私は運命を信じている。君のSEEDの力を。願わくば、君の望む正しい道を進んでくれ。オーブにとっても、ザフトにとってもね」

 

 

 

「ありがとうございますーー」

 

 

 

「そうそう、つい先ほどだが、シュバルツ・ブルーダー殿がオーブの客人として、ミネルバ隊に着いた。君もミネルバに向かうといい。彼との会話は君にも必要なものだ」

 

 

 

デュランダルの言葉に、黙礼だけを返し、アスランはその場を後にした。

 

 

 

( デュランダル議長は、一体、何を考えている?)

 

 

 

アスランの中で疑念が渦巻いていたーー。

 

 

 

ーーーーーー

 

 

 

アスランが去った後、部屋に赤い髪の青年。Dが入ってきた。

 

 

 

「あの小僧も、舞台に必要なのか?」

 

 

 

「ーーああ。彼もまた、SEEDの持ち主だからね。ところで、D。君は、これから地球に向かうらしいが、何が目的かな?」

 

 

 

問いかけると、Dはニヤリと笑い、告げる。

 

 

 

「ーーこの世界には、我の他にも意思のあるガンダムが存在する。我から生み出されたもの。我の力を利用したもの。我に操られたもの。

 

その中で、一度は我を倒した『弟』と『かつての生体ユニット』の顔を拝むのも悪くない。

 

その後は、ドモン・カッシュを越えるために我が復活させた2人から、武術や戦術を学ぶとしよう。

 

この身を変え、進化を遂げ、更なる強さを示そうぞ」

 

 

 

「ーー楽しみだ。君の下半身のガンダムヘッドは、こちらの手元にある。

 

存分に楽しんできたまえ、新たな君に出会えるのを期待しているよ」

 

 

 

「当然だ、この世界で頂点に立ち、時空を超え、ドモンとゴッドガンダムを今度こそ下す。

 

我を倒したシャッフル同盟も、我と戦ったすべてのガンダムファイターも。

 

我が眷属にしてくれるわ」

 

 

 

 邪悪な笑みを浮かべ、この世界を足掛かりにして、元の世界を取り込もうと野心を燃やす。

 

 

 

 そんなDの姿を、恍惚とした表情で見つめ、デュランダルは跪く。

 

 

 

「我が王よ、何なりとご命令下さい。この世界の争いを終わらせ、真に支配される方よーー」

 

 

 

 デュランダルの部屋には、ユニウスセブンもテロリストであったはずのサトーや落とされたはずのジュール隊の者が、デュランダルの脇にて同じく跪いていた。

 

 

 

ーーーーーー

 

 

 

翌日の朝、オーブ近海にてーー。

 

 

 

ミネルバが、オーブの領域を出ようとした時に、それは起こった。

 

 

 

「ーー艦長! 前方にオーブ軍が展開しています!!」

 

 

 

「何だって!? どうして!?」

 

 

 

メイリンの報告に、副官のアーサーが取り乱す。

 

 

 

対するタリアは、納得気味に頷いた。

 

 

 

「やはり、当然こうなるでしょうね」

 

 

 

「ーー何故ですか!? 私達は、オーブにカガリ代表を返したり、カガリ代表から、客人としてシュバルツ殿を招いているんですよ!?」

 

 

 

「アーサー、言ってて気付かない? それよ、問題は。代表からの客人」

 

 

 

半分呆れ顔になりながら、モニターに映るオーブ軍を見つめる。

 

 

 

「カガリ代表の目が及ばない、オーブの海域ギリギリの所で部隊を展開しているのも、おそらく」

 

 

 

「それって、代表の意志をオーブは無視してるって事ですか?」

 

 

 

素っ頓狂な声を上げるアーサーに、タリアは親指の爪を噛みながら、言った。

 

 

 

「表向きは、代表に報告が遅れた体を装い、事後報告にすると言ったところかしら。カガリ代表は、まだまだ若いから、こういう政治の搦め手には、弱そうね」

 

 

 

オーブに引き返し、カガリ代表に掛け合おうにも、おそらくはもう、代表への連絡線を切られているはず。

 

 

 

「艦長、オーブ軍から通信です!!」

 

 

 

「繋いで頂戴」

 

 

 

メイリンに指示を返し、モニターに映し出される人を見据える。

 

 

 

思ったとおり、オーブの軍人の隣に、オーブの政治家の証であるえんじ色の背広を着た青い髪の青年がいた。

 

 

 

蛇のような粘着質な笑みを浮かべて、こちらを見ている。

 

 

 

「ザフト軍のミネルバ隊、艦長ーータリア・グラディスです。この包囲網は何でしょうか?」

 

 

 

正面から切り込んだところ、青年は、わざとらしく眉を上げ、言ってきた。

 

 

 

『そちらのザフトの船に、私どもの客人が乗っているでしょう? 彼を引き渡していただきたい』

 

 

 

「我々は、貴国のカガリ代表から直接ご依頼を受けて、シュバルツ殿を船に迎えておりますが。代表に話をとおしておられるのでしょうか?」

 

 

 

『その依頼は、何か文面でもある正式なものかな? まさか、口約束だけで、乗り切れるとは思ってないですよね?』

 

 

 

「ーーーーなるほど、ね」

 

 

 

シュバルツの事は、基本的に機密事項であるが故に書面には残さない。

 

 

 

カガリもそのつもりであるからこそ、敢えて文面を残さないように、タリアに直接依頼したのだ。

 

 

 

「一つ、お聞きします。どうやって、この船にいる客人の情報を知り得たのかしら?

 

カガリ代表から、お聞きになったにしては、矛盾を感じますわ」

 

 

 

『ーー代表は、政治にうとくてね。後で、きちんと説明しておくよ。情報については、こちらとしても無視できない事態が発生したんだ、としか言えないね。それより、大人しく引き渡してもらえないかな?』

 

 

 

軍を展開しておいてよく言う。

 

 

 

その言葉は飲み込み、静かに相手を見据える。

 

 

 

「ーー艦長、顔を正面に向けたまま、聞いてほしい」

 

 

 

「ーー!?」

 

 

 

その時、タリアの耳元から声が聞こえてきた。シュバルツのものだ。

 

 

 

「ーーこの部隊、私を手に入れることだけが目的ではない。オーブの海域の外に別の部隊が展開している気配がする」

 

 

 

シュバルツの言葉を受け、表面は、無表情を装うタリアだが、モニターに映らない手を凄まじいスピードで動かし、筆談でメイリンにオーブの海域の外をスキャンさせる。

 

 

 

報告は筆談で行うように、と但し書きを忘れない。

 

 

 

すぐさま、メイリンから反応があった。彼女は表情を真っ青にして、こちらにメモを返す。

 

 

 

( 距離ーーオレンジ。 船15隻。 機体60機。 潜水艦3隻。部隊名は、地球連合ーーやはりね)

 

 

 

敵の狙いは分かった。

 

 

 

デュランダルとの連絡で知り得たことだがーー。

 

 

 

地球連合の裏にいるロゴスは、ユニウスセブンを落下させようとしたテロリストの引き渡しを要求しているらしい。

 

 

 

それを口実に間も無くプラントに対し、戦線布告してくるはずだ。

 

 

 

オーブのユウナ・ロマ・セイランは、地球連合への手土産に、自分達を売ったのだろう。

 

にも関わらず、オーブ本国できちんと補給を受けられたのは、カガリのおかげということか。

 

 

 

ーーーーーー

 

 

 

 

 

一方、オーブのイージス艦では

 

 

 

オーブ政治家のユウナ・ロマ・セイランは興奮していた。

 

 

 

映像を見るまでは信じていなかったが、見た以上、信じるしかない。

 

 

 

津波を割る驚異的な力を持つ謎のMS。

 

 

 

調べさせたが、何の手がかりもない。

 

 

 

だが、調べていく途中で気付いた。

 

 

 

あのMSが現れ、光の壁を出して、津波から守ったのは、カガリの弟とかいうコーディネーター達と薄汚い孤児の連中だ。

 

 

 

何かあると探れば、キラというコーディネーターのガキが2人の男を海岸で拾った話が出てきた。

 

 

 

2人は、カガリの伝手でオーブに偽造の籍を用意されていた。

 

 

 

しかも、キラが2人の男を拾った、その日に謎のMSの目撃談もある。

 

 

 

この2人の内、どちらかが、あのMSに関係しているに違いない。

 

 

 

そのMSを捕獲し、研究すれば、オーブは連合に代わり、地球を支配することもできる。

 

 

 

自分が、それを行ったあかつきには、カガリを妻とすることも容易にできるはずだ。

 

 

 

1人の男が、キラから離れたのは、ユウナには好機にしか映らなかった。

 

 

 

ついでにミネルバを連合の餌に差し出すこともできる。

 

 

 

全て、自分の描いたとおりに動いている、とユウナは優越感に浸る。

 

 

 

「ーーカガリ、待っていてくれ。すぐに君を妻として迎えに行くからね」

 

 

 

満面の笑みを浮かべ、勝利を確信して、ユウナは駒を進めた。

 

 

 

ーーーーーー

 

 

 

現状を説明すると、声の主であるシュバルツは、一つ頷いた。

 

 

 

「なるほど。つまり、オーブも一枚岩ではないと言うことか」

 

ユウナの一方的な通信もあり、シュバルツはミネルバが置かれている現状に納得したようだ。

 

 

 

「ーーあなた、何処にいるのかしら?」

 

 

 

タリアだけでなく、ブリッジの人々も先の声が聞こえたようだ。

 

辺りを気味悪げに見渡している。

 

 

 

「ーー艦長、私が彼らをまきましょう。どうやら、私のガンダムが目的のようですしね」

 

 

 

シュバルツの発言にタリアは、眉間に皺を寄せ、考える。

 

 

 

「ーー不可解なことがあるわ。

 

カガリ代表は、約束を違えるような人ではない。あなたのことをあの男は、どうやって知った?

 

あなたの実力は、アーモリーワンからユニウスセブンまで、カガリ代表もアレックス殿も知らなかったはず」

 

 

 

何処から情報が漏れたのかーー。

 

 

 

いやーーもし、仮に情報が漏れたとしても、信じるかどうかは、別の話だ。

 

 

 

農業用プラント『ユニウスセブン』を跡形もなく消滅させた先の機体のことを。

 

 

 

そして、人知を超えた激闘を繰り広げたこの男の闘いを見て、この程度の戦力で抑えると言うのか?

 

 

 

「ーーそのことについては、心当たりがあります。おそらくは、そちらの案件でしょう」

 

 

 

「できれば、その心当たりとやらを教えていただけないのかしら?」

 

 

 

「ーーオーブには、私の半身がいる。今は、これ以上のことは。では、失礼ーー」

 

 

 

それだけを告げ、シュバルツの声が途絶えると同時にモニターに黒いガンタムが一瞬現れ、目の前から消えた。

 

 

 

次の瞬間、オーブのイージス艦隊の目前に原因不明の水柱が発生した。

 

 

 

「ーー何なの!?」

 

 

 

目の前で起こる怪奇現象に、タリアでなくとも、頭を抱えたくなる。

 

 

 

オーブ艦隊は、原因不明の水柱に遭遇した後、レーダーなどの機器類がショートし、ミネルバを完全にロストした。

 

 

 

当然、海域の外で待ち構える地球連合も、ザフト艦の消失を知る。

 

 

 

この一件で、オーブは連合から、疑惑の目を向けられる口実を与えてしまったのだった。

 

 

 

それから間を置かず、ロード・ジブリールによるプラントへの一方的な宣戦布告が行われたーー

 

 

 

 

 

 




みなさん、おまちかねー!!

シェルターに逃げ込んだキョウジ達。

しかし、ザフトのMSは、執拗に彼らの命を狙います。

これに対し、キラはラクスより自由の剣を受け取り、彼らに立ち向かうのです。
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