新機動武闘伝 GガンダムSEED Destiny 作:カンナム
ですが、まだまだ、物語はこれからです!!
それでは、ガンダムファイト、レディー、ゴー!!!
まだ真っ黒なオーブの海を、赤く禍々しい光が照らしていく。
光は、デビルガンダムから放たれていた。
天を衝き、地を穿つ、強烈な波動。
武道家でないキラにも、それは純粋な圧力となって襲い来る。
(向かい合ってるだけなのに、なんなんだ!? この重圧は!?)
「ーー覚悟はよいか?」
声が聞こえたと同時に、デビルガンダムの巨体が消える。
次の瞬間に現れたのはフリーダムの目の前。
「ーーっ!?」
ボディに放たれる拳、咄嗟に左手のひらで受けるも、拳の衝撃はフリーダムの遥か後方まで突き抜けた。
「ぐぅっ!? なんてパワーだ!」
「ほう、反応したか。さすがだな…だがっ!」
そのまま拳を振り抜かれ、後方に吹っ飛ばされるフリーダム。衝撃はキラにも及ぶ。
「ぐぁあああ!!」
強烈なGに、キラが悲鳴を上げた。
「キラーーっ!!」
モニター越しのフリーダムの危機に、ラクスが震える。
「ばかなっ! さっきまでとはスピードもパワーも桁が違うっ!!どういうことだ!?」
バルドフェルドも、先ほどまでの動きと明らかに違うデビルガンダムの動きに戦慄した。
後方に弾き飛ばされながら、キラは必死にフリーダムのウイングバインダーとバーニアを展開、宙にて体勢を整える。
デビルガンダムは、追撃を敢えてせずに、悠然と立ち、キラに話しかけてきた。
驚きと恐怖に顔を歪ませるキラに、Dは邪悪で嗜虐的な笑みを浮かべた。
「貴様の動き、大変参考になった。なんだ? 我の動きが上がったのが気になるのか?
なに、気にすることはない。お前の動きを超えるために、自分の動きを進化させただけだ」
「進化、だってーー?」
疑問を浮かべていたキラに、Dは悠然と説明する。
「貴様の動きは素晴らしい。おそらく、我の世界でも、そこそこの戦士として称されたであろう。
だが、だからこそ、その動きが我を更なる高みへと押し上げる」
「ーー進化? まさか…僕の動きを分析して、それを越えるスピードを出せるように自分を作り変えたのか!?実戦の最中に!?」
キラ自身も、何度か実戦の最中にOSを書きかえ、設定したことはある。
だが、あくまでそれはOSだ。
機体の性能そのものを、目の前の存在は変えられる。
それはつまりーー
「わかるか、人間。お前では我に勝つことなどできぬということが。 我は敵が強ければ強いほど、我が機体を進化させることができるのだ。 我こそは進化の頂点。人々に忌み嫌われし程の力を持つ、デビルガンダムよーー」
デビルガンダムの言葉を頭の中で反芻させ、考える。
(もし今の言葉が本当だとしたら、このままじゃ勝てないっ! フリーダムがどれだけこのMSを上回っていても、このMSはそれを上回るようにさらに進化するってことだ! いったい、どうやればこいつを倒せるんだ!?)
どうにかして状況を打破しなければならない。
ギルバート・デュランダルの隣に控えていたデビルガンダムが、ラクスを狙ったザフトの部隊と同時に来たのだ。
ここで敗北することは、シェルターのラクス達もただでは済まないということになるーー
キラは、強い意志の力で恐怖をねじ伏せた。
その様に、Dはさらに邪悪な笑みを浮かべ、気を高める。
「ふっふっふっふっふ、諦めんとはたいしたものだ。恐怖を糧に、闘志を奮い立たせたか。だが、お前に勝ち目はない。大人しく、我がDG細胞の糧となれ、キラ・ヤマト」
邪悪な気は、更なる禍々しい闘気を呼び、Dの力を底上げする。
迂闊な攻撃は、逆に敵を強くすることを理解したキラは、静かにDの動きを窺う。
「どうした、かかってこないのか?」
動かないキラに、サディスティックな笑みを浮かべて、Dはフリーダムを冷酷に見下ろす。
まだ、動かない。すると、Dは無造作にこう告げた。
「では、こちらから行こう」
一瞬の後、一気に突っ込んでくるデビルガンダム。
キラはフリーダムのバーニアを一気にふかし、バックダッシュを行う。
同時にビームライフルを構えてデビルガンダムの頭部に向かって二撃、放った。
バチィッ
しかしデビルガンダムは、無造作でーーガードもせずにビームを顔面でまともに受けーー無傷だった。
「ーーなにっ!?」
まるで、ビームなど気にすることもなく、そのまま突き進むデビルガンダムに、キラは目を見開く。
「まだわからないのか? 無駄なんだよ」
言葉と同時に、デビルガンダムがフリーダムが逃げようとした方向へ先回りして左上段回し蹴りを放ち、ヒットする。
フリーダムは、物凄い勢いで横に吹き飛ばされる。
地面に叩きつけられる直前でバーニアを吹かし、なんとか体勢を立て直す。
しかし力の差は歴然…間髪入れずに、キラの目の前にデビルガンダムが突っ込んできている。
キラが正面を向いて反応すると同時に、背後にDは機体を回らせていた。
「ーーくっ!!」
振り返り様にサーベルを一閃するフリーダム。
しかしその一撃は、絶妙なデビルガンダムの上体反らしで、彼の顎先を掠めるだけだ。
返しの左横回し蹴りがフリーダムの側腹に決まり、軽く数100メートルの距離を吹き飛ばされる。
(ーーあの巨体で、なんてスピードと身のこなしなんだ!!これがMFなのか! スピードもパワーも、頑丈さも、すべて桁が違う!!)
「ーーだけど、僕はまだ、負けた訳じゃない!!」
自身を奮い立たせる。圧倒されている。だから、どうした?
機体の性能が違う、それがなんだ?
自分が諦めたら、ラクスはどうなる?
自分の大切な人達は、どうなる?
「ーー諦めない!! 最後まで僕は、戦う!!」
フリーダムは、パイロットの意志に応えるように、翼を大きく広げ、左右にサーベルを一振り持って、デビルガンダムに仕掛ける。
音速をも越えるスピードで、フリーダムはデビルガンダムに斬りかかったーー。
ハイスピードでの凄まじい攻防。
並のパイロットでは、10数回は命取りになるであろう、斬撃と打撃のぶつかり合い。
キラの高速での斬撃を左右の拳で捌きながら、デビルガンダムが懐に入りこもうと踏み込む。
フリーダムは逆に、デビルを懐に入れさせまいとバーニアをふかし、バックステップしながらのサーベルでのなぎ払い。
互いに譲らぬ自分の有利な距離の取り合い。
しかし、細かい動きを前提としたMFと、射撃を重視したMSでは、当然だが差が出る。
フリーダムの左袈裟切りを紙一重で脇にかわし、ついにデビルガンダムは、フリーダムの懐に入り込んだ。
「ーーしまった!!」
「さらばだ、キラ・ヤマト!」
勝利の凄絶な笑みを浮かべ、Dは左掌を突きだしながらフリーダムのコクピットに放つ。
「いかん、あれでは避けられないっ!」
「きらぁあああっ!!」
バルドフェルドが叫び、ラクスが声を限りに絶叫する。
その光景にキョウジも叫んだ。
「ーーやめろぉぉぉおおおっ!!!」
その時だ。
キョウジが声を限りに叫んだ瞬間、あふれんばかりに輝く緑色の光がデビルガンダムの掌の前に現れたのだ。
光は、一機のーートリコロールを基調としたーー鎧武者を彷彿とさせるMFに変化した。
その機体は、先日オーブに来た津波を割り、元の世界では、一度はデビルガンダムを倒したこともある。
キングオブハートの愛機にして、ゴッドガンダムの兄弟機。
そう、シャイニングガンダムだーー。
フリーダムとデビルガンダムの間に現れたシャイニングガンダムは、デビルガンダムの放った左手の手首を右手で掴み止めている。
同時に、デビルガンダムがシャイニングガンダムの顔を見る。
「久しぶりだな、兄弟。ギアナ高地以来だ」
何も語らないシャイニングガンダムにデビルガンダムは嘲笑した。
「ふんっ、ドモン・カッシュ抜きで我に勝てると思うのか? 弟よ」
瞬間、シャイニングガンダムは、掴んでいるデビルガンダムの左手を固定したまま、無言で右の後ろ回し蹴りを顔面に放つ。
咄嗟に、掴まれていた腕を引き離し、デビルガンダムはバックステップで鼻先にて避けた。
全く油断ならない鋭さと速さを兼ね備えた一撃に、デビルガンダムも腰を落として、斜に構える。
自分を救ってくれた機体に思わず、キラは問いかけた。
「力を、貸してくれるのかっ?」
その言葉に、シャイニングガンダムは一瞬だけ、首をフリーダムにふり返らせ、目を光らせる。
そして、ハッキリと頷いてみせた。
その様に、キラはよし、と一つ頷き、デビルガンダムは忌々しそうに、シャイニングガンダムに言い放つ。
「パイロットも生体ユニットも持たぬMFなど、なんの役に立つ!」
言うや否や、飛び込んでくるデビルガンダムに対し、見ると同時にシャイニングガンダムは自分の腰からビームソードを抜き放ち、デビルガンダムに負けず劣らずのスピードで突っ込む。
ガキィッ
デビルガンダムの右掌をビームソードで抑え、止める。
「ーーふんっ、小賢しい」
力任せにサーベルごとシャイニングガンダムを押し返そうとする。
その瞬間にシャイニングガンダムの肩の上から、フリーダムがフルバーストを放ってきた。
「なにっ!?」
流石のデビルガンダムも反応できず、まともに喰らった。
「ちぃっ! 小賢しい真似をっ!」
フリーダムの攻撃は、無傷ながらもデビルガンダムをのけぞらせることに成功した。
瞬間、シャイニングガンダムが追い打ちで胴薙ぎを決めて、後方へデビルガンダムを吹っ飛ばす。
ズドォッと地響きと土煙を上げながら、デビルガンダムは地面に叩きつけられた。
この光景に、シェルターのバルドフェルド達は湧き上がる。
「ーーやるじゃないか、キラ!!」
「シャイニングさんのおかげですわね」
ラクスも穏やかな笑顔で安心したように、彼らを見る。
吹き飛ばされたDは、土煙を睨み付けると同時に、気合いで煙を弾き飛ばした。
同時に舌打ちをする。
「ちぃっ」
土煙を晴らすと同時に、右からシャイニングガンダムが両手持ちからの右袈裟懸け。左からフリーダムガンダムが二刀流からの十字切りでデビルガンダムに斬りかかった。
交差攻方気味に斬り捨てられるデビルガンダムは、咄嗟に両腕でガードするも、衝撃で後方に後ずさり、防いだ腕も表面を切り裂かれる。
だが、次の瞬間には、裂かれた傷はビデオの逆回しのように再生した。
ガードを解き、静かに2体のガンダムを睨み据えて、Dは嗤った、
「くくく、思った以上に戦いにはなるようだが……ーー所詮この程度よ」
Dはそう吐き捨てると同時に、胸部に力を込める。
次の瞬間、デビルガンダムの胸にある緑色のクリスタルから赤い色の炎が噴き出し、一直線に放たれた。
熱戦を間一髪で左右にかわす、シャイニングとキラ。
ーーズドォァッ
その後方に放たれた炎の一撃は、オーブの山を一つ消し飛ばし、ドーム状に光が広がる。
その光景に、相対するキラは戦慄した。
「なんて威力だっ!」
まともに食らえば跡形も残らないだろう、強烈な一撃。アレが街に放たれでもすればーー。
いや、山に暮らしていた人がいたらーー。
そこまで想像し、先日あった少年ーーシンの言葉を思い出す。
(俺の家族は、あなたのフリーダムが戦った場所で、死んだんだ!!)
途端にキラの目つきが鋭くなり、デビルガンダムを睨みつけた。
「ふっふっふっふっふ、はっはっはっはっは! 力の差を理解したか、愚か者どもよ。ん?」
目を見開くデビルの前に、フリーダムが現れた。
強烈な、右の片手胴薙ぎに、デビルガンダムをして下がらざるを得ない。
「ーーよくも、オーブを!!」
怒りに燃えるキラの攻撃は鋭く、フリーダムの動きもそれに合わせて、苛烈になる。
無視できないフリーダムの動きに、デビルガンダムは集中し、もう一機のガンダムから目を離してしまっていた。
バキィッ
フリーダムを打ち下ろし気味の右拳を叩き付けて、倒すと同時にDは気配に気付き、振り返る。
緑色に輝く掌が、デビルガンダムの目の前にあった。
「ーーなんだと!?」
驚愕と同時に、頭部が掴まれ、シャイニングガンダムのマスクが、左右に展開し、光輝く右手が力を増した。
シャイニングフィンガー、シャイニングガンダムの切り札にして、あらゆる場面に対応する、必殺技である。
「ぬぉおおおおおっ!」
両手で右腕を引きはがそうとするデビルガンダム。
それよりも早くシャイニングガンダムがデビルガンダムの頭部を握り潰した。
ーーボシュウッ ズシィィン
全機能を停止し、仰向けに倒れるデビルガンダムの巨体。
「やったのか!?」
動きを止め、倒れた機体に、キラが喜びの声を上げながらフリーダムを立ち上がらせた。
ーーだが。
すぐに、緑色のコードが頭部の無くなった首から伸び、生き物のように蠢いた後、頭部を形成し始めた。
僅か数秒で頭部は元に戻る。
同時に、立ち上がってくるデビルガンダムーー。
「どうすればいい、どうすれば勝てるんだ!! こいつにーー!!」
流石のキラも、デビルガンダムの再生能力にキリがないことが分かり、焦りが見え始めていた。
その時、フリーダムのモニターにシェルターのバルトフェルドから通信が入った。
『キラ、どうやらそいつとはまともにやりあっちゃだめなようだ。とりあえず、一時撤退することを薦めるよ』
「でもっ、どうやって!」
簡単に言うバルトフェルドに、キラが焦りの声を上げる。
すると、バルドフェルドから地図がデータで送られてきた。
『一瞬でいい。一瞬、あのデビルガンダムをこの位置に押し込むことができればーー』
その地図に、座標軸を送る。
「ーーこれは?」
『とりあえずデビルガンダムをそのポイントまで後退させてくれ。 上にさえ載せれば、カタパルトデッキを使って、デビルガンダムを海の彼方へ吹っ飛ばすことができるはずだ』
「わかりました」
この手しかないーー。キラの目に、冷静な光が戻る。
一方、立ち上がったデビルガンダムは、シャイニングガンダムを睨みつけていた。
「シャイニングぅぅ……き、さ、まぁあああ!」
叫ぶと同時に、巨体が消える程のスピードで動き、アッサリとシャイニングの懐に入り込むと、強烈な左の拳をボディに放つ。
ドゴォッ
凄まじい衝撃と共に、シャイニングガンダムの機体が宙に浮いた。
「できそこないの弟が、この俺に敵うと思うのかぁあ!」
宙に浮かび上がった状態から更に、右拳で顔面を殴りつけられるシャイニングガンダム。
強烈な一撃は、シャイニングガンダムを後方へはじき飛ばした。
「ーー力の差を思い知れ!!」
同時に、デビルガンダムの肩や背中にある黄色の突起物から赤いビーム砲が放たれ、辺り一面を焼いていく。
ズガガガガァッ
落雷が連続で落ちたような音と共に、辺り一面が、焼け野原になっていくーー。
その光景に、キラが叫んだ。
「ーーもうやめろぉ!! どうして、こんなことが平然とできる!?」
拡散粒子弾を宙にいた状態で捌きながら、キラはフルバーストを放って応戦する。
デビルガンダムが無差別に放ったビーム砲が、オーブの豊かな自然を焼いていく。
その内のひとつがシェルターを破壊した。
「ーーうわぁああん、ラクスさまぁああ!!」
「ーー大丈夫です。わたくしがいますわ」
瓦礫を避け、悲鳴を上げる子ども達を庇うラクス。しかし、野に晒されたシェルターは、すでに機能を失っており、剥き出しになった彼らにビーム砲が放たれる。
「ラクス!」
赤い光が、ラクス達に迫るのを、キラは絶望を感じながら、見た。
バチィッ
間一髪、シャイニングガンダムが四つん這いになってラクス達を庇い、左腕でビームを防いでみせた。
「ーー私を見ているのか? 何故だ?」
この時はじめて、キョウジはシャイニングガンダムの眼をまともに見た。
シャイニングガンダムは、現れた時からずっとキョウジだけを見ていたのだ。
「私を庇ってくれているのか……? シャイニングガンダム。なぜだ、なぜなんだ……なぜお前は私を」
何故か、シャイニングガンダムの目の光に、懐かしさを感じる。
肉親のような親しみをーー。
その時だ、デビルガンダムの声が彼らに降ってきた。
「フン。そんなことも知らずにいたのか、キョウジよ。我がかつての生体ユニットならば、見たこともあろうが……」
冷酷で嗜虐的な笑みを浮かべ、Dは告げた。
キョウジは、寒気を感じながらも声に返す。
「どういう意味だ?」
「知らぬならば教えてやろう。そこにいるシャイニングガンダムと、最強のガンダムとされるゴッドガンダム、そして貴様の弟ドモン・カッシュは、三位一体なのだ。ドモン・カッシュが大切にしている者は、シャイニングガンダムもゴッドガンダムも守るもの、ということだ。今の其奴の行動も、ドモンの思考を忠実にプログラムされて動いているにすぎぬ。憐れなものだ。我がDG細胞を移植され、ひとつの生命体として命を得たというのに。所詮、我が弟と言えど、ドモンの道具か。この世界にはいない主の意志を継いで、お前のような役立たずを守るとは」
平然とシャイニングガンダムを侮蔑し、嗤うD。
だがキョウジには、まるでそんな言葉は聞こえていなかった。
「シャイニングガンダム……! そうか、お前はドモンなのか」
合点がいったーー。
シャイニングガンダムの中には、ドモンの魂がある。
自分を守ろうと、救おうとした、弟の気高い魂が。
「? なんだ。シャイニングガンダムが」
キラが、真っ先に気付いた。
シャイニングガンダムは、四つん這いになった状態から、ゆっくり立ち上がり、キョウジを見据える。
その全身に、黄金の輝きを纏いながら。
その光は、かつてギアナ高地にて、デビルガンダムを倒したあの光だーー。
「なんだと、この気はーー!! まさか!?」
当然、自身を倒した光に、デビルガンダムは気付いた。
シェルターでも、異変が起きていた。
黄金の輝きが、シェルターの中からも放たれていたのだ。
その輝きは、一人の青年から発せられていた。
「きょ、キョウジさんっ?」
「キョウジさんの全身が、黄金に!」
「ーーなんとまあ、とんでもない現象だな」
マリュー、ラクス、バルトフェルドの言うとおり、全身から黄金の輝きを放つキョウジ。
彼は、静かに右手を掲げる。
シャイニングガンダムがそれに応えるように頷き、両手を左右の腰において、膝を曲げ、構える。
その構えに、デビルガンダムは初めて、動揺の声を上げたーー。
「まさか! これは――!!」
記憶にあるのは、初めての敗北。
その光は、自分の細胞を悉く消し飛ばした。
「シャイニングガンダム、スーパーモード!」
「ーーあの悪魔が、恐れてる?」
キラも、デビルガンダムの動揺に気付いた。
と、同時にキョウジがフィンガースナップを利かせ、叫ぶ。
「がんだぁあああむ!」
ーーピシィィンッ
瞬間、キョウジは光の球となって、シャイニングガンダムの胸のクリスタルに吸い込まれた。
ーーーー なっ!? ーーーー
見ていた一同が、驚愕の表情になる。
そんな彼らの動揺など、何処吹く風と、キョウジはモビルトレースシステムに、身を包んでいく。
渦巻くエナメル質のようなプラグスーツが体にフィットしていき。
首から足の爪先まで、きっちりと真っ黒なファイティングスーツを着ていた。
『モビルトレースシステム起動、脳波血圧心拍数、オールグリーン』
360度のスクリーンを展開したのち、スーパーモードになったシャイニングガンダムが、その場で拳や蹴りなどを放つ演武を行い、デビルガンダムに向かって威嚇する。
同時に、シャイニングガンダムのマスクが展開し、バックパックのジェット部が上に上がり、頭部に畳まれていた角が、まるで歌舞伎役者のように立ち上がる。
その気迫は本物ーー。
「ばかなっ! なぜだ、なぜファイターでもない、生体ユニットとしても適正が低いキョウジにスーパーモードが発動できるっ!? なんだこれは、どういうカラクリだ!」
デビルガンダムの記憶にあるキョウジに、こんなことができるわけがない。
それが、Dを動揺させていた。
「すごいっ! ……すごいパワーだ」
フリーダムのレーダーが、シャイニングガンダムのエネルギーを測定した。
そのデータ数値を見て、キラは驚きと興奮に包まれた、
「これがーー、シャイニングガンダムの真の姿ーー!」
「キラ! いまなら私ーーいや、俺も戦える! 一緒にこの化物を退けよう!」
「はい、キョウジさん!」
力強いキョウジの言葉とその輝きに、キラも強く頷いた。
黄金の輝きを放つシャイニングガンダムに、デビルガンダムが、気を高めて吠える。
「シャイニングガンダム、スーパーモード……まやかしがぁあああ!」
デビルガンダムが右拳を振りかぶり、殴りかかってくる。
黄金の光を纏ったシャイニングガンダムは次の瞬間、右ストレートをカウンターで入れた。
「ーーグッ!?」
咄嗟に仰け反る体を踏ん張り、首を元の位置に戻した時、嵐のようなシャイニングガンダムのラッシュが、始まった。
肘打ち、裏拳、正拳、右回し蹴り、左後ろ回し蹴り、足刀蹴り、次々とデビルガンダムの巨体を揺るがす、強烈な拳や蹴りがヒットする。
「身体が軽い。俺が習ったことのない動きなのに、次にどう動けば良いのか、どうするとどうなるかが、ハッキリと分かる。まるで自分が武術の達人であるかのように簡単に手足が動く! これが、これがドモンの動きなのか……!」
一撃一撃が早く鋭い。
「す、すごいっ! 的確に急所を貫いてる!」
シャイニングガンダムのラッシュを傍で見たキラは、SEEDを発動させていても、その攻撃の全ては目で追えないことに驚嘆した。
それほどのラッシュを受けるデビルガンダムは、このまま飲み込まれまいと必死に拳や蹴りを繰り出して反撃する。
しかし、その悉くをシャイニングガンダムは返していく。
「馬鹿な、なぜだっ!? なぜ、お前にこんなことが!」
バキィッ
右回し蹴りを片手で止められ、逆に強烈な右回し蹴りをシャイニングガンダムに返され、後退させられながら、デビルガンダムはキョウジを見据えて問う。
するとキョウジは、穏やかな表情でありながら、力強い気を放つ右手を掲げたーー
「なぜかは、俺にもわからない。
だが、一つだけ分かっている。俺の右手がーー叫んでいるんだ!!」
瞳を閉じ、気を集中させ、更に高める。
「俺のこの手が光って唸る! お前を倒せと輝き叫ぶっ!」
「ぬぅ……きょうじぃいいいい!」
キョウジに向かい、叫びながら、デビルガンダムは駆け出す。同時にシャイニングガンダムの右手から溢れんばかりの輝きが溢れていた。
「必殺、シャァアアアイニング、フィンガァアアアアッ!!!」
右掌を正拳突きのように突き出して、放たれたシャイニングフィンガーは、先ほどのデビルガンダムが放った熱線以上の破壊力の光線であった。
ーーバシィッ
両腕と右膝を使い、押し返そうと受け止めるデビルガンダム。
「ーーこんなもので、究極と言われた我がーー!!」
だが、輝きは更に更に強くなり、デビルガンダムそのものを飲み込み、吹き飛ばす。
「ーーぐああああ!?」
悲鳴を上げるD、この最大のチャンスに、キラが声を上げた。
「いまだ!}
後方へのけぞったデビルガンダムを、フリーダムのフルバーストが更に襲う。
足元を撃たれ、踏ん張ることもできないデビルガンダムは、砂漠の虎が指定した座標に、まんまと運ばれていた。
目標のポイントにデビルが到達すると、虎がニヤリと笑った。
「ーーさよならだ、悪魔くん!!」
バルトフェルドが宣言と共に、シェルターからボタンを押した。
ーーガコンッ
「ーーッ!?」
Dは、足元の違和感に気付き、見ると、森の中にカモフラージュされた、MS用の発進装置ーーカタパルトデッキが、展開され、自分はカタパルトの板の上にいた。
「ーー貴様らーーっ?!」
一瞬の後、カタパルトは射出され、デビルガンダムはオーブの海域に吹き飛ばされた。
「ーーお、の、れぇーーーー!!」
Dの最後の言葉は、途切れており聞き取れなかったが、少なくとも、デビルガンダムの脅威は退けられたことに変わりはない。
しばらくして、オーブの海岸線辺りに、巨大な水しぶきが舞った。
それを見ながら、砂漠の虎が、したり顔で説明した。
「あれほどのスピードならば、海面であれコンクリートに叩きつけられたほどの衝撃を受けるはずだ。これで生きていられたら本物の化物だ」
「とんでもない機体ですね。あれが、デビルガンダム」
闘ったキラをして、ハッキリと言える。
二度と会いたくはない敵だ、とーー。
今回は2回目のパワーアップをされる前に退けられたが、次に会う時は、シャイニングフィンガーすら効かない機体になっているだろう。
キラがそんなことを考えていると、まるでキラの気持ちを代弁するかのように、シェルターにいるラクスが呟いた。
「おそらく、あの悪魔のような機体は無事でしょう」
「機体は無事でもパイロットは無事じゃないだろう。これにて一件落着だ」
「だといいのですが」
バルトフェルドの言葉に、ラクスはジッと悪魔が落ちたオーブの海を見る。
皆が、同じ気持ちだったーー。
変化はしばらくして、起こった。
フリーダムと並んで立っていたシャイニングガンダムが、突如緑色の光を胸のクリスタルから放ち光の粒子となって消失したのだ。
光の粒子が完全に消えると、生身のキョウジが地面に立っていた。
キラもフリーダムから降り、悪魔を相手に共に闘ったキョウジと互いに無事を確認しあいながら、二人はデビルガンダムが飛ばされた方を見る。
「なんとか、なりましたね」
「ああ。だが……これで終わったとは思えない」
「僕もです」
そこには、朝日が昇り始め、太陽を写す平和な海がさざ波を立てていた。
まるで、この先を暗示するかのように、さざ涙は静かに、けれどもゆっくりと、キラたちの足元に引いては、下がっていくーー。
みなさん、お待ちかねー!!
オーブ軍に所属することになったキラ。
プラントに向かい、かつての支持者を集めるラクス。
そして、ミネルバと合流するアスラン。
我らがシュバルツは、シンと共に、連合の巨大MAと対峙するのです!!
次回、機動武道伝Gガンダム SEED Destiny 第14話に、レディー、ゴー!!