新機動武闘伝 GガンダムSEED Destiny 作:カンナム
ここ、コズミック・イラーでシュバルツ・ブルーダーとマスターアジアによる純粋なファイトが行われるのです!!
はたして、彼等の拳はこの世界の若者たちにどう映るのか!?
それでは、ガンダムファイト!!
レディー、ゴー!!!!
激戦に次ぐ激戦を繰り広げたガンダム達の中で、別格の両者が静かに睨み合う。
しかし、その口元には不敵な笑みが浮かんでいる
「ふん。どうやら考えていることは同じようだな。シュバルツよ」
「そのようだな、マスターアジア」
ガンダムシュピーゲルが両腰に手を当てた姿勢を解いて、前に一歩踏み出す。
対峙するマスターガンダムも組んでいた両の腕を解いて歩き出した。
「ーー師匠?」
「シュバルツさん?」
ステラ、ルナマリアの2人が、双方の位置からそれぞれに語りかける。
シュピーゲルもマスターも、彼らの横を通り過ぎて、互いに向かって構えあう。
「真の戦いとはどういうものか。その目にしかと焼き付けるがよい!!」
「私達の、ファイトを通してな。いくぞ! マスターアジア!」
互いに向かって話しながらも、言葉は自身の教え子達に向けて放たれている。
海面を地面のように歩く両者。
マスターガンダムは、左足一本でつま先立ちを行い、右足を90度に曲げて左足に寄せる。右手を90度に曲げ、顔の横に。左手は敵向かって一直線に伸ばし、両の掌を上にかざす、流派東方不敗の構え。
対峙するガンダムシュピーゲルは、腰を落とし体重の重心を後ろにやりながら、両の腕を曲げて拳を顔の横に置くオーソドックスなファイティングスタイルを取る。
「ガンダムファイトぉおお!」
シュバルツの瞳がカッと見開かれ、覆面越しに声を張り上げた。同時にマスターアジアも声高に応える。
「レディイイイ!」
両者、腰を落とし相手に向かって前傾姿勢をとる。
「「ゴォオオオオオ!!」」
互いに開始の合図を宣言すると共に一気に相手との距離をゼロにするほどのダッシュを行い、懐に飛び込むと同時に拳をぶつけ合うマスターガンダムとガンダムシュピーゲル。
ドカァァァァアッ
2機の放った一撃がぶつかり合うことで生まれた衝撃波で、大西洋の海がモーゼのように真っ二つに割れた。
当然、ミネルバのブリッジにもこの光景はモニター越しとはいえ、映し出され、宙に浮いているはずのミネルバに地震のような衝撃波が襲い掛かる。
「なぁぁっ!? な、なんなんだぁああああ!?」
見ている方が可哀想になるほどに取り乱す副長のアーサー。
しかし、今回は彼を呆れた目で見るクルーはいなかった。メイリンが自分の仕事を忘れずにミネルバへ危機を伝える。
「ガンダムシュピーゲルとあの謎のガンダムの一撃によって生じた衝撃波です! すごい威力です!!」
その報告に完全に腰を抜かしているアーサーが素っ頓狂な声を上げる。
「そんな、大気を震わせるほどの衝撃ぃいい!?」
「距離を取りなさい、アーサー! 下手をすれば、戦いの余波に巻き込まれてミネルバが落とされるわ!!」
「了解! この海域から後退します!」
即座にタリア艦長の指示が飛び、副長に代わって操舵主が返事をする。
「シン! ルナマリア! レイ! 撤退するわよ!」
当然、ミネルバのクルーであり、ザフトのエースパイロットでもあるシン達に後退命令を出す。
ところが返ってきた答えは予想外のものだった。
「いや、俺たちはここに残ります!」
「あたしたち、最後まで見届けます!」
「何故ならこれがーー!!」
シン達三人の言葉の後に、何故か地球連合の三人までも声を合わせて叫ぶ。
「「「「「「本当のガンダムファイトだから!!!!!!」」」」」」
彼らのぴったりとあった息に頭痛を感じながら、タリアはもう自分の常識やら何やらがまったく通じない世界に足を踏み入れていることを自覚した。
「なぜ、地球連合まで同じノリなのかしら?」
最後の抵抗とばかりに、頭に浮かんだ疑問を口にする。
そうすることで、何とかして自分まで流されないように必死で踏みとどまろうとするタリアだった。
ドガガガガアァァァッ
雷や地響きのような炸裂音を周囲にまき散らしながら、互いに無数の拳と蹴りをぶつけ合うガンダムシュピーゲルとマスターガンダム。
「ぬ、ぉおおおお!」
「ふんふんふんふんっ!」
無数に放たれる拳蹴打の内の1つが空を切った。
ビュウンッ
見るとシュピーゲルが分身してマスターガンダムの右ストレートを避けつつ、その後ろへ回り込んだところだった。
後方に回り込んだシュピーゲルに対し、マスターガンダムは右手を頭上に掲げ、左手を時計の針のように大きく回す。
マスターが描いた円は、時計の時刻のように12の文字が浮かんでいた。
「目には目を、歯には歯を! 分身には分身を! 喰らえ、シュバルツ! 流派東方不敗! 十二王方牌大車併!!」
マスターの気合と共に突き出された右手。同時に12の紫の光の玉から無数の小型のマスターガンダムが、分身したシュピーゲルに攻撃を仕掛ける。
対するガンダムシュピーゲルは、分身を維持したまま、シュピーゲルブレードを展開した。
「甘いぞ、マスターアジアっ!!」
襲い来る小型のマスターガンダムに向かって斬りかかる。
バキキキキキィッ
またしても凄まじい打撃音が響き渡った後、マスターガンダムが作った気の分身は消え、ガンダムシュピーゲルも一身に戻る。
瞬間、ガンダムシュピーゲルがつま先立ちになり、両腕を交差させてブレードを展開。コマのように回りだした。
「シュツルム・ウント・ドランクぅうう!」
海面上を漆黒の竜巻と見紛うばかりに回転しながら、マスターアジアに迫る。
「ーーフン!!」
対するマスターアジアは、ビームクロスをマスターガンダムの袖口から放ち、気合一閃。
「ぬぅうあっ!」
大回転するシュピーゲルにマスタークロスを伸ばし、取り縄のように竜巻へまとわりつかせる。
「ふんっ!」
そして、マスタークロスを引っ張り、ついにシュピーゲルはその回転を止まらせる。
「ふっふっふっふっふ、要はそのコマの回転を止めてしまえば、その技は使えぬということよ。シュトゥルム・ウント・ドランク、破れたり!!」
完全に技を破り、勝ち誇るマスターアジア。ーーしかし
「ふっふっふ」
「ぬっ?」
「それはどうかな?」
シュバルツは余裕の笑みでマスターを見据える。それに不敵な笑みを返しながらマスターアジアがビームクロスを引っ張った。
「負け惜しみを! ぬううぅあ!!」
次の瞬間、ビームクロスが粉微塵に切り裂かれた。
「なんとっ!?」
思い切り引っ張ったため、マスターガンダムの体勢が崩れる。
「もらったぞ! マスターアジア!」
それを見逃すガンダムシュピーゲルではない。マスターガンダムの上空に跳躍し、頭上から刃を振り下ろす。
対するマスターガンダムは白羽取りでシュピーゲルブレードを受け止めた。
バシィツ
海面が二人を中心に巨大な波紋を広げる。
ガンダムシュピーゲルは、マスターガンダムに切りかかった姿勢のまま、宙に止まっている。
「ぬぅう!」
両者、互いに力を押し合う。ガンダムシュピーゲルは刃を振り下ろそうと、マスターガンダムは止めた刃ごと投げ飛ばそうとしている。
拮抗はすぐに敗れた。
「ぬぅううううっ! ふんっ!」
パキィイイインンッ
あたりに甲高い音が響き渡る。
マスターガンダムが、白刃取りしたシュピーゲルブレードを、自分の側に引き寄せ、へし折ったのだ。
右の刃を折られたことを悟り、バックステップしてマスターから距離を取るシュピーゲル。
両者は、これほどの攻防を行いながら息一つ乱していなかった。
ガンダムシュピーゲルの右のブレードが折られたことに、シン達は大きなショックを受けている。
「そんなっ!? シュバルツさんのブレードをへし折った!?」
「信じられない……。」
「シュバルツ殿のブレードは、ビームサーベルをも防ぐ超高性能の振動ブレード。それを素手で折るというのか」
彼らと対峙するようにして見ているスティング達も目を大きく見開いて戦慄していた。
「し、師匠と互角だ!!」
「僕らが敵わないわけだーー」
「やっぱり、あの忍者は怖いもの」
当の本人たちは、周りの驚愕や狼狽、戦慄など知らずに、ただ己達の純粋な力を比べあう。
「フン、今度はこちらの番だな。ディスタント・クラッシャぁああ! 覇ぁっ!」
マスターガンダムは、右手を貫き手にしてシュピーゲルに真っ直ぐに突き出す。突き出された貫き手の分だけ、計ったかのようにシュピーゲルはバックステップして距離を置く。
しかし、シュピーゲルが見切るのと同時に、肘関節の当たりが分離し、シュバルツに向かってマスターの腕が飛ぶ。
「「「腕が伸びた!?」」」
マスターガンダムは、バックステップしたガンダムシュピーゲルの右腕を見事に捕まえ、自分の手元に引き寄せると、力を込めて握りこんでいた左の拳をボディに放った。
ーーガキィッ
強烈な一撃。
しかし、右ひざを曲げて己のボディに引き寄せることで受け止めるシュバルツ。
「ぬぅう」
マスターをして完全に捉えたと思っていた一撃を防がれたことに唸る。
対するシュバルツは不敵な笑みを覆面の下で浮かべていた。
「ブレードを折ったからと言ってわたしを倒せたわけではない。甘く見てもらっては困るな。東方不敗マスターアジア!!」
ーーガキィッ
お互いに僅かに軸足を後ろに下げて距離を置き、相手の横面にハイキックを放ちあい、蹴りと蹴りが交差する。
お互いの一撃が相殺しあい、両者は海面を足の底で引きずりながら、下がる。
距離を置いた二人は、再び構えをお互いに取り合う。
「ふっふっふっふ、なるほど。流石よなシュバルツ。貴様と万全の状態で拳を交えたのは、新宿で戦った時だが。あの時は、まだ実力を隠しておったか」
「貴様こそ、以前と違い拳に邪気を感じられぬ。迷いもなく、ただ純粋に己を高めることのみに集中した拳。それでこそ、我がライバルだ。マスターアジアよ」
わだかまりも、やましさもない。
ただ気高く、潔く、純粋な意志と意地のぶつかり合い。
二人の達人は拳を通し、互いの想いを理解しあい、更に技を、力を競い合う。
己の限界を追求し、限界を超えてさらに強くなるためにーー。
「フンっ! しかし、貴様の最大の奥義!! シュトゥルム・ウント・ドランクは既に破った!! ここから、どうする!?」
「ふふふ、我がゲルマン忍術の神髄は、疾風怒濤だけにあらず!!」
言うや否や、いきなり背筋を伸ばし左手の人差し指を一本立て、右手で握りこむ。このとき、右手の人差し指は90度に曲げられている。
両の手で、ガンダムシュピーゲルは印を組んでいた。
「フンっ!」
シュバルツが気合を一閃すると、シュピーゲルの胸の部分から青白い光の玉が生まれ、その中央に蒼く輝く文字で「鏡」と刻まれる。
「シュピゲル・アンデア・ユングス・ブルートぉおお!
「これはーー、ドモンのハイパーモードの構えっ!?」
シュピーゲルの胸から生じた光の球は、シュピーゲルの全身を包み込むほどに大きくなる。
「鏡に転じ、映りし者とーー血を同じくする。これぞ、わが鏡転同血!! マスターアジアよ、我が新たなる奥義。貴様に敗れるか!!」
「これは、鏡転同血!!」
「ガンダムシュピーゲルが変身するわ!!」
「だが、一体どんな機体にーー?」
シン、ルナマリア、レイがガンダムシュピーゲルの変化に敏感に反応した。
光の球から現れたのは、シン達の全く知らない機体。赤いプロテクターを思わせる上半身と青いヘルメットを被っているかのような外見は、アメフトの選手のように見える。
両手の拳には、青色のプロテクターをしており、ボクサーの様な構えを取る。
「Hey,東方不敗!」
パイロットの陽気そうな声は、シュバルツ・ブルーダーのものとは似ても似つかないもの。
「ぬぅっ!? 貴様は!!」
この場で、その正体に気付いたのは、東方不敗マスターアジア、ただ一人。
「アンタには新宿の時に世話になったよな! 最終バトルロワイヤルではあんたと拳を交えることはできなかったが、ちょうどいいリベンジの場が出来てHappyだぜ!!」
「チボデー・クロケット……!! 新生シャッフルのクイーン・ザ・スペードか!!」
そこに居たのは、シュバルツ達の世界でドモンの親友であり、ライバルであった男の一人。
「燃える拳」の二つ名を持つ、チボデー・クロケットと、その愛機ガンダムマックスターそのものであった。
皆さん、お待ちかね!!
シュトゥルム・ウント・ドランクを破られたシュバルツは、鏡に転ずることで自分の世界で拳を交えた新生シャッフル同盟に変身し、東方不敗マスターアジアに挑みます。
彼らの人智を越えた戦いは、やがて多くの者を巻き込むのです!!
次回、機動武道伝Gガンダム SEED Destiny 第20話に!!
レディ、ゴー!!