新機動武闘伝 GガンダムSEED Destiny   作:カンナム

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「もし宜しければ、皆様にデビルガンダム事件についてご説明させていただきましょう」

何処とも知れぬ空間で、その男はスツールに腰掛け、長い脚を組んでいた。
男の頭上からスポットライトが細く降り注いでいる。地面ではなく平らな床だが室内かどうかも定かではない。
年齢不詳の男だった。黒く刈り込んだ丸い頭、丁寧に蓄えた口髭、くるりとした碧眼に愛敬があるが、右目は眼帯で覆われている。体格の良さから、派手な赤いスーツでも不思議とこの男にはよく似合っていた。
彼はどこか物憂げに目を伏せながら、低く、よく通る声で語った。

「デビルガンダム事件とは、コズミック・イラーとはまた別の世界の話。
ここではない、何処かの世界。
その世界は、コロニーと呼ばれる人工衛星を飛ばし、住みにくくなった地球から、人々は宇宙へとその住処を移していくのです。
宇宙に浮かぶ森、山、湖、人々は戦争によって荒廃しきった地球より、住みやすい宇宙を選びます。
そのような中で、これ以上地球を荒廃させないために、コロニー国家連合は、ガンダムと呼ばれる機体を国家の代表として選び、戦って、戦って、戦い抜いて、頂点を決め、優勝したガンダムの国家に4年間の世界の主導権を握らせるという、代理戦争。
ガンダムファイトを作り上げたのです。なんとも、スポーツマンシップにあふれた戦争を生み出したことか。
そんな中で、地球の環境汚染を再生させようと、とある機体が生み出されます。
自己再生、自己進化、自己増殖を繰り返し、汚染物質を除去することを目的として作られたガンダム。
そう、アルティメットガンダムです。
しかし、あまりに強力な力を持つこの機体は、軍に悪用されようとしたため、科学者であり、生みの親であるカッシュ博士が、自身の息子キョウジに地球へ降下するよう、命令したのです。
しかし、地球への落下時のショックで、プログラムが暴走し、デビルガンダムへと変貌を遂げたガンダムは、地球再生の為に、人類抹殺を目論んだのでした」

男は、静かに息を吐き、口調を激しいものへとかえる、

「しかし、その悪魔は、この異なる世界にて生き延びていたのです!!
はたして、悪魔の犠牲となったキョウジやシュバルツが生きていたことと、どんな関係があるのか!?
また、プラント最高評議会議長、ギルバート・デュランダルとは、一体何者なのか!?
ますます、目が離せなくなって参りました!!」


突如、男が立ち上がった。赤いジャケットを脱ぎ捨て、右手にはどこからともなくマイクが、左手には右目を覆っていた眼帯が握りしめられ、その両腕が広げかかげられる。
男は満面の笑みで『あなた』に言った。

「それでは! ガンダムファイト! レディぃいいっ……ゴー!」



第2話 胎動

キラが拾ってきた、と言う表現が適切ではないかもしれないが。

 

 

 

二人の青年の内、覆面の方ーーシュバルツ・ブルーダーは変わっていた。

 

 

 

基本的にマスクを被っている。

 

 

 

食事の時、外出の際、彼は必ず奇妙なツノを付けた覆面を被っている、

 

 

 

だが、それ以外のマナーは、完璧で。

 

 

 

正に非の打ち所がない、と言った風情だ。

 

 

 

キラと共に暮らしている少女。

 

 

 

プラント穏健派のシーゲル・クラインの一人娘であり、自身も強力な伝手を持つ、ラクス・クライン。

 

 

 

彼女の目から見ても、覆面の青年の食事マナーや礼儀作法は完璧だった。

 

 

 

覆面の趣味と、それをどんな時にも身につけている、と言う一点だけを除けば、であるが。

 

 

 

マスクを口元までめくり上げて食事をするシュバルツに、周りの者は乾いた笑みを浮かべていた。

 

 

 

「シュバルツさん、食事の時くらいマスクを外してください。この子達にも悪影響ですわ」

 

 

 

やんわりと、しかし有無を言わさない口調でラクスが注意すると、蛇に睨まれたカエルのように固まった。

 

 

 

「い、いや……その、すまない」

 

 

 

190近い身長のシュバルツが小さくなってしまう。

 

 

 

しかし、マスクは取らないらしい。食事を中断して、どこかへと去ろうとするのでキラが慌てる

 

 

 

「な、何も出て行かなくても!!」

 

 

 

「ぷ、はははははは!!」

 

 

 

そんな様を、もう一人の青年が声を出して笑う。

 

 

 

「シュバルツが悪いな。ラクスが怒るのも無理はない、ちゃんとマスクを取って一緒に食べよう」

 

 

 

「お前な…私は考え無しでマスクをしているわけではないぞ」

 

 

 

「それが余計なんだよ。いいか、シュバルツ。私も彼等も、一々気にしてないだろ? 食事の時くらい、隠すことなく、きちんと話そう。礼儀だよ」

 

 

 

「全く…キョウジ。お前は本当に私か? 迂闊な真似はできんだろ。ドモンや父さん、レイン達のこともある」

 

 

 

「ラクス、シュバルツが怒られ足りないみたいだ」

 

 

 

半分笑いながら、青年ーーキョウジは、ラクスに話しかける。すると、ラクスもとても楽しそうに答えるのだ

 

 

 

「わたくし達が、余程信用に足らないという事でしょうか…悲しいですわね、キラ」

 

 

 

「ラクス! シュバルツさんは、そんな人じゃ!!」

 

 

 

「いや、良いんだ、キラ。こやつらは、私達の反応を楽しんでおるだけだ」

 

 

 

よよよ、と嘘泣きをするラクス。焦るキラ。

 

 

 

覆面をしているのに、疲れたような表情が見て取れるシュバルツ。

 

 

 

彼等を見て楽しそうに笑う子ども達とキョウジ。

 

 

 

二人の青年はいつの間にか、キラ達にとっても掛け替えの無い大切な存在になっていたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーー

 

 

 

あの浜辺での一件以降、キョウジ・カッシュは、意識を取り戻した際、軽い記憶喪失に陥っていた。

 

 

 

簡単に言えば、デビルガンダム事件の一切を覚えていないのだ。

 

 

 

シュバルツは哀れに思いながらも、自身とキョウジに起こった不幸を話した。覆面を外してその素顔さえ晒した。

 

 

 

キョウジも神妙な表情で話を聞き、自分達の弟ドモンがデビルガンダムを倒し、救ってくれたことを聞くと、微笑んでいた。

 

 

 

「なるほど、確かにあなた…いや、お前は私なんだな。ドモンや父さんのこと、ありがとう。シュバルツ」

 

 

 

そう受け入れて頷いた。

 

 

 

ここが何処で、今がいつかは分からないが、少なくともキラやラクスの話から、世界の有り様から、ガンダムファイトも、汚された大地もないこの世界は、自分達の世界ではないと理解した。

 

 

 

 

 

 

そんな中でのシュバルツの告白にも、キョウジは笑って受け入れる度量を見せたのだ。

 

 

 

ガンダムファイターではないが、キョウジもまた、ドモンと同じ血を引くということなのであろう。

 

 

 

(できることならば、キョウジだけでも元の世界へ帰してやらねば)

 

 

 

密かにそう決意したシュバルツは、キョウジへの配慮も含めて、自身の顔を隠すようにしていたのだ。

 

 

 

しかし!!!

 

 

 

「なんだと!? 私達のことをキラ達に話した!!?」

 

 

 

「ああ。この世界は、私達の世界ではない。ならば、私達が正体を隠す必要はないだろう? ベラベラ話すことではないが、キラ君達は命の恩人だからね」

 

 

 

「馬鹿者!! 迂闊な真似を!!! キラ達まで巻き込んでしまうつもりか!!!!」

 

 

 

「痛くもない腹だよ、シュバルツ。隠す必要はない。分かるだろう、私よ」

 

 

 

「だからこそ、だ! 迂闊な真似をして、誰かを巻き込み、不幸にさせてはならん!! 分かるだろう、私よ!!」

 

 

 

シュバルツが思い浮かべるのは、自分を…キョウジを庇って亡くなった母ミキノのこと。

 

 

 

 

 

 

対するキョウジも、そのことは話で聞いており、理解していないわけではない。

 

 

 

だが、キョウジはまるで、シュバルツに気を休めろと言わんばかりに穏やかに笑う。

 

 

 

そしてーー

 

 

 

「と言っても話してしまったしね。キラ、ラクス?」

 

 

 

と、充てがわれた部屋の入り口に向かってキョウジは話しかけた。

 

 

 

シュバルツが振り返ると、そこには神妙な面持ちのキラと、優しく微笑んでいるラクスがいた。

 

 

 

「シュバルツさん、あなたやキョウジさんの話を聞きました。力にならせてください」

 

 

 

「わたくし達もまた、傷を癒す身。あなた方と出会えた奇跡を信じるならば、共には歩めませんか?」

 

 

 

2人の瞳にあるのは、深い悲しみ。

 

 

 

特にキラのそれはとても根深い。

 

 

 

 

 

それを見て、シュバルツはキョウジを見据えた。

 

 

 

「キョウジよ、お前は」

 

 

 

「そうだ、確かに巻き込む辛さもある。だが、そこにだけ目を向けていてはもっと大切なことを見逃してしまう。シュバルツ、私達にとっても、必要なことじゃないか?」

 

 

 

彼は言外に言っているのだ。

 

 

 

この子達の力になりたいと。

 

 

 

救われた恩義もあるが、この優しい2人の苦しみを和らげたい、と。

 

 

 

「そうだな、義を見てせざるは勇なきなり。傷付いた人を見捨て、己のことしか考えぬ拳などガンダムファイターに非ず。すまない、キョウジ。よくぞ思い出させてくれた」

 

 

 

「元の世界へ帰るにしても、まずは義理を返さなければな。大人なんだから、私達は」

 

 

 

おどけて話すキョウジにシュバルツも、キラもラクスも笑った。

 

 

 

ーーーーーー

 

 

 

平和で穏やかな時が過ぎていく。

 

 

 

しかし、平和と言うのはそう長くは続かないものだ。

 

 

 

それを象徴するかのように、テレビにて臨時報道が行われていた。

 

 

 

席に着き、大人しくマスクを外そうとしたシュバルツの手が、止まった。

 

 

 

その変化に気づいたキョウジが、何事かとテレビを見据えた。

 

 

 

 

 

 

 

『みなさん、私はプラント最高評議会議長、ギルバート・デュランダルです。この場を借り、一週間後に迫った我がザフトの新造艦『ミネルバ』の式典について先立ってご挨拶させていただきます。私達プラントは、連合にもオーブにも隠し事はいたしません。一週間後、工場用プラント、アーモリーワンにてユニウス条約を基に作られた我がザフトの新造艦『ミネルバ』の進宙式を行います。併せて、我がザフトの最新鋭機『セカンドシリーズ』の機体を紹介します。当日はプラント内外からの来訪も取材も歓迎いたします。詳細は式典の際に発表いたします。それでは、失礼いたします』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

テレビの内容に、途中で映された新造艦のシルエット、兵器の開発を大々的に報道してきた。

 

 

 

キラの表情が固い。

 

 

 

ラクスも、それを知ってか、そっと寄り添う。

 

 

 

しばらくして、シュバルツがテレビをみたままの姿勢で固まっていることに気づいたキラが話しかける

 

 

 

「シュバルツさん?」

 

 

 

ラクスも首を傾げながらキョウジを見ると、彼の顔色は真っ青だった。

 

 

 

「!! キョウジさん、どうされました!?」

 

 

 

先ほどまで笑い合っていたキョウジの表情から、血の気が失せている。

 

 

 

「バカな……この禍々しい気は…それに、あの姿…まさか、奴が」

 

 

 

「え? シュバルツさん、どうしたんですか?」

 

 

 

「シュバルツさん!キョウジさんが!!」

 

 

 

ラクスの言葉に、シュバルツとキラも我に返りキョウジに駆け寄った。

 

 

 

「キョウジ、どうした!?」

 

 

 

「キョウジさん!!」

 

 

 

キョウジは震える手を差し出しながら三人を制し、告げる。

 

 

 

「大丈夫だ……シュバルツ、アレが…そうなんだな?」

 

 

 

「!! そうだ、キョウジ。人の姿をしているが…ドモンと同じ姿をしているが…アレが、悪魔だ!!」

 

 

 

「理屈でなく、理解したよ。体が覚えている…冷たく凍るような感覚だ」

 

 

 

シュバルツとキョウジの会話に、キラが気づいた。

 

 

 

今の映像には、ギルバート・デュランダルの他にもう一人映されていた。

 

彼の傍らに控えるかのように存在した、赤い髪のザフト兵。

 

 

 

「まさか、「彼」が?」

 

 

 

「もし、シュバルツさんのお話に出てきた悪魔ならば、プラントはとても恐ろしい力に取り憑かれてしまいましたわね」

 

 

 

いつも穏やかなラクスをして、険しい表情になっていた。キラは、途方も無い何かが起こる予感を感じるのだった。

 

 

 

ーーーーーー

 

 

 

翌朝、キラとラクスは、オーブのカガリ・ユラ・アスハ代表の訪問を受けていた。

 

 

 

 

 

「久しぶりだね、カガリ。もしかして、昨日の報道のこと?」

 

 

 

キラが、カガリに話しかけた。

 

 

 

「久しぶりだな。キラ、ラクス。昨日のデュランダル議長の報道で、お前たちの顔を見たくなったんだ。極秘にだが、会談を設けてもらう。アスランにも護衛で来てもらうんだ。議長の真意を知りたい」

 

 

 

「デュランダル議長は穏健派であると、うわさは聞いておりますが、気をつけてくださいね、カガリさん」

 

 

 

「ありがとう、ラクス。お前たちの顔を見たら、少し勇気がもらえた」

 

 

 

「ごめん、カガリ。君やアスランにだけ押し付けて」

 

 

 

「言うな、キラ。私はお姉ちゃんだからな!」

 

 

 

「まあ、カガリさんらしいですわ。ふふ」

 

 

 

不安、焦燥、それらを吹き飛ばそうとする精一杯の空元気。

 

 

 

ラクスは意を汲んで笑い、キラは胸を痛める。

 

 

 

「話は聞かせてもらった」

 

 

 

一同が振り返るとキラ達の影が伸び、スーっと人の形をしたと思いきや、独特な覆面をした男が現れた。

 

 

 

「シュバルツさん!!」

 

 

 

「そう! シュバルツ・ブルーダーだ」

 

 

 

「まあ、流石は忍者さんですわね〜ハロ?」

 

 

 

驚くキラと手を叩いて喜ぶラクス。そしてあからさまに混乱するカガリ

 

 

 

「な、なんだこいつ? 一体どんなトリックを…というか盗み聞きか!?」

 

 

 

「そんなことはどうでもいい!! カガリと言ったか? あのデュランダルと言う男に会うのならば、私も連れて行ってくれ」

 

 

 

「何を言ってるんだ!得体の知れないお前を連れて会議の場に行けるわけ無いだろ!? 私はこれでも国家元首なんだぞ!! 信用を落とす真似はできない!!」

 

 

 

「足手まといにはならん。何事もなければ、先のように私は姿を現さん。頼む!! この世界に関わることなのだ!!!」

 

 

 

お互いににらみ合う。長身のシュバルツと女性のカガリでは身長差もある。カガリは必然的にシュバルツを見上げる形になる。

 

 

 

その瞳に悪意はなく、深い悲しみと温かみを感じる。

 

 

 

「奇妙な覆面をしてるのに、何故だろうな…悪人には見えない。不思議なやつだ」

 

 

 

「カガリ、僕からもお願いしていいかな?きっとシュバルツさんはカガリやアスランを助けてくれる。そんな人だから」

 

 

 

カガリはキラの言葉を聞きながらラクスを見る。彼女は静かに頷いてきた。

 

 

 

やがてカガリはため息を大きく吐くと、ヤケクソ気味に言い放ったのだ。

 

 

 

「分かった! お前を連れて行くよ、それでいいな!!」

 

 

 

「感謝するぞ、カガリ・ユラ・アスハよ!!!」

 

 

 

こうして、プラントへの会議にシュバルツも参加することになった。

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーー

 

後のアスラン。

 

 

 

「私はネオドイツのガンダムファイター。そう! シュバルツ・ブルーダーだ!! よろしく頼む」

 

 

 

「カガリ…この人は一体?」

 

 

 

完全にテンション負けしていた。

 

 




みなさんお待ちかね〜!!

悪魔の気配を放つドモンそっくりの男を探りに、シュバルツはカガリと宇宙に上がります。

そこで、シュバルツは新たな争いの火種に巻き込まれるのです!!

次回!!機動武闘伝GガンダムSEED DESTINY!!『始動』にレディぃゴー!!
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