新機動武闘伝 GガンダムSEED Destiny 作:カンナム
2週間程前からの話だ。
2週間前、胸のクリスタルから光を上げながら、彼の愛機の一つであるシャイニングガンダムが、格納庫から消えたのだ。
彼は、もう一機の愛機であり、相棒であるゴッドガンダムと共に、シャイニングガンダムを探す旅に出ていた。
その日から、彼は見たこともない世界の夢を見るようになった。
見たこともない少年。
見たことのないMS。
そして、2人の兄。
「なあ、ゴッドガンダム。これはシャイニングガンダムが俺たちに、自分が見ているものを見せてくれている、と考えるべきかな?」
自分の愛機を真正面に置いて見据え、問いかけてみると、アルティメットガンダリウム細胞を父、カッシュ博士に組み込まれ、自我を表現できるようになったゴッドガンダムは、目を光らせた後、コクリと頷いた。
「ーーヤッパリ、お前もそう思うか!?」
更に問いかけると、ゴッドガンダムは更に縦に首を振る。
「シャイニングガンダムは、異世界で兄さんたちと共にいる。しかも、その世界には、デビルガンダムも存在している。ならば、俺たちが取るべき方法は一つ!」
コクリとゴッドガンダムが更に頷く。そして青年を促すように、右拳を握りしめて掲げた。
「ーーーーああ! 兄さんとシュバルツ、シャイニングガンダムを迎えに行こう!!
そして、デビルガンダムを倒すんだ!!
俺たちの手で!!」
赤いハチマキを締めた左の頬に十字傷のある青年は、自分の右拳にある、キングオブハートの紋章を輝かせ、赤いマントを翻しながら、叫んだ。
「ーー俺達のこの手が、真っ赤に燃える! 兄さん達を救えと轟き叫ぶ!!」
ゴッドガンダムは、背部の6枚の羽を広げ、日輪のような光の輪を背負い、青年と同じように、真っ赤に燃える右手を掲げた。
「ーー待っていてくれ、兄さん、シュバルツ! シャイニングガンダム!!
必ず、必ず俺とゴッドガンダムがぁ!! 迎えにぃぃぃ、行くぅぅぅぅ!!」
彼らの名は、ドモン・カッシュとその愛機、ゴッドガンダム。
それぞれ最強の証である「キングオブハート」と「ガンダム・ザ・ガンダム」の称号を持つ。
未来世紀最強の存在であったーー。
さて……。
かつてデビルガンダム四天王を率いたマスターガンダムは、ここ、オーブ近海で荒れ狂う恐ろしい力を感じ取ります。
連合の特殊部隊ファントムペインに身を寄せているマスターアジアは、ガーティ・ルーの面々に一時的な別れを告げ、あの史上最凶のガンダムに挑むのです。
はたしてネオは、さらなるガンダムファイトになにを見るのでしょうか。
今日のカードは、マスターガンダム対デビルガンダム!
それでは! ガンダムファイト! レディー、ゴー!
オーブ近海の海中ーー美しく透明な海の中で、一つの機体が体を起こした。
赤い上半身に、胸の部分のみ青いトリコロールの機体ーーガンダムだ。
その機体のコクピットで、赤い髪の男が数日ぶりに目を覚ました。
男ーー青年は、数日前の戦闘を思い起こし、自身の身に起きた顛末を頭の中で整理して、怒りにその身を震わせた。
「ま、負けた……っこの我が! くっ」
腰に両拳を置き、一気に力を開放する。
「お、の、れぇえええええっ!」
ズォォオオオァッ
赤い光が天を衝き、海面から水柱を発たせながら、海上に浮上するデビルガンダム。
彼は自身の体を見据え、忌々しそうに歯軋りした。
「我は、究極のガンダムのはずだ!!
究極の生命体であり、生身の肉体も手に入れた!!
だというのに、何なんだ、さっきの無様な姿はっ!!」
デビルガンダムーーDにとっては、あるまじき醜態であった。
全身に赤く禍々しい気を纏い、握りしめた拳を睨み据える。
「ガンダムファイターですらない奴らに、二人がかりとは言え、押されるとはっ! おのれっ!!」
しばらく力を開放して、周りの雲や波を吹き飛ばした後、自分の手を見据える。
「フン。だが、やつらのおかげで進化はできたようだな」
自分の身体を見下ろしながら、内に満ち溢れるパワーを感じる。
「あきらかなパワーの上昇を感じるが、やつら程度に手こずるようでは、ガンダムファイターはおろか、シャッフル同盟やドモン・カッシュに挑むなど夢のまた夢。
やはり、東方不敗マスターアジアを、そしてシュバルツ・ブルーダーの二人を倒して取り込まねばならぬか。
そうすることで我は、さらなるパワーを得ることができるはずだ」
キラのフリーダムガンダム、キョウジのシャイニングガンダムとの戦いは、デビルガンダムにとって屈辱ではあったが、同時に良い経験にもなっていた。
デビルガンダムは、今の自分の機体データをモニターに出し、確認する。
「理論上では、キラ・ヤマト達との戦いの時点で、最終形態の我を、凌駕していたはずだが。
やはりパワーや再生に頼っていては、MFの爆発的なパワーに対抗できんか」
シャイニングガンダムのスーパーモードで押し切られたのを思い出し、冷静に分析する。
「やつらは感情で一気にパワーが膨れ上がる。
基本能力など、まったく意味をなさん。じつに厄介な奴らだ」
スーパーモードのシャイニングガンダムには、現状では対抗できない。
それ程までに、明鏡止水とは、凄まじいものなのだ。
「だが、我がその境地を理解し使いこなせば、文字どおり究極の存在になるはずだ。
その為にも、東方不敗とシュバルツ・ブルーダーを倒さねばーー」
そう考えていると、こちらに猛スピードで接近する気配があった。
その気配に、デビルガンダムは邪悪な笑みを浮かべた。
「我としたことが、背後を取られるまで気づかんとはな!」
圧倒的な闘気と重圧を撒き散らしながら、気配の主、マスターガンダムが、降り立つ。
「フンっ! 久しぶりだな、デビルガンダムよ!」
両腕を組み、宙に浮かぶマスターガンダムに、デビルもニヤリと邪悪な笑みを返す。
「久しぶりだな。病のない新たな身体はどうだ? マスターアジア」
「フンっ、すこぶる快適よ。このような身体をくれた貴様には、ぜひ礼をせねばなるまいな」
「ほう? ふたたび我が右腕となり、人類抹殺に手を貸すのか? マスターガンダムよ」
邪悪な笑みを浮かべていたデビルガンダムが、殺気を身に纏いながら、構える。
これをマスターは、鼻で笑ってみせる。
「フン、わしはもはや人類抹殺になど興味はない。
いまのわしがせねばならんのはひとつ。
貴様を倒すことよ、デビルガンダム!」
言うや腕を組むのをやめ、流派東方不敗の構えを取る。
「ーー倒せればいいがな?」
対峙するデビルガンダムも、前傾姿勢を取りながら、両拳を握った。
ーー話は少し遡る。
地球連合艦ーーガーティ・ルー
そのブリッジで、指揮官であるネオは、大西洋の海域で激戦を繰り広げた東方不敗に軽口を叩いていた。
「ひゅぅうううう。とんでもない戦いでしたねぇ。まったく!
よ、化け物・ザ・化け物!!」
「フンっ、あれこそが真のガンダムファイトよ
貴様らの戦争など、わしらの戦いに比べればまだまだ温いわ」
「個人の決闘が、国同士の戦争より、派手ですか~。ホント冗談に聞えねえのがこええよ、まじで」
しかし、すぐにネオの顔を青ざめさせる返しが待っているのだが。
そして大体、すべて本当の話である。
「ロアノーク大佐、ジブリール卿から通信が入っています」
「ジブリール卿ねえ…」
副長のイアンからの報告に仮面の奥で顔をしかめるネオだが、あえてそれを隠そうともせずに、マスターに固い声で告げた。
「すみませんが東方先生。ちょっと席を外していただけませんか?」
「ほう。なにゆえだ?」
話し方の変わりようにマスターも当然気づき、仮面の奥にあるネオの目を見透かそうとするかのように見つめてくる。
「一番、あなたには会ってほしくない人だから、ですよ」
言外に、会えば血を見るであろうことを匂わせる。
(ーー何考えてんだ、俺は。この超人に、何を期待してんだか)
心の中で苦笑しながらも、ネオはそれを表には出さないように努める。
「フンっ、よかろう。わしはあくまで客人ゆえな」
意外にも、あっさりと引いた東方不敗に、ネオは「助かります」とだけ、告げた。
そして東方不敗の傍らにいる三人の少年たちに声をかける。
「スティングたちにも悪いが、東方先生と一緒に向こうへ行っておいてくれ」
「わかった」
ネオの言い方に何かを感じたのか、いつもは憎まれ口を聞いてくるスティングもおとなしく従う。
「なんだよ、ネオのやつ。俺たちを邪険にしてさ」
「ネオ。どうかしたの?」
スティングほどは、配慮をしらないアウルとステラだが、どこかでネオがいつもと違うのを悟り、直接的に不快感をあらわにしたり、疑問を口にする。
それを三人のまとめ役をしているスティングが止めた。
「おい、お前ら。なんでもいいから、とりあえずこっちこい」
有無を言わさず、2人を連れていくスティングは、去り際にネオに目配せをし、言ってきた。
「わりぃな、ネオ」
完全に姿を消したスティングを見てから、ネオは苦虫を噛み潰したような表情でつぶやく。
「悪いだと? ーーばかが、詫びにゃならんのは俺だろうが」
「ロアノーク大佐ーー」
副長のイアンは特にそれに何かを言うことはなく、ただネオを伺う。
「せっかく普通の人間として暮らせるようになったんだ。薬にも頼らず、記憶をいじくることもなく」
自分の記憶を思い返しながら、吐き気がするとばかりに、ネオは顔を歪めた後、自嘲した。
「ならその方がいいさ。余計な研究の成果を、ロゴスに渡すこたぁない。軍人としては失格だがな」
ーーーーーー
「ーーというわけだ。なにか申し開きはあるかな? ネオ・ロアノーク」
モニター内には、薄暗い部屋で青白い肌に紫の口紅を塗った壮年の痩せこけた男がいた。
男の名は、ロード・ジブリール。
反コーディネーター思想主義「ブルーコスモス」の盟主にして、軍事産業複合体「ロゴス」のリーダーでもある。
男の冷酷さと非人道さを知るネオは、嫌悪感を仮面で隠し、事務的な物言いで報告する。
「いえ、何ひとつありません。大西洋の連合艦隊と協力し、ミネルバを落そうとしたのですが、かの船の実力は高く、あと一歩のところまで追いつめはしましたが、撃墜は敵いませんでした」
いつものようにガンダムファイターのことや、スティング達については触れない。
「ーー申し開きはない、か。潔いことだ」
ジブリールはネオの態度に満足そうに頷きながら、自分の膝の上にいる猫をなでる。
「ーーとはいえ、わたしも無限に寛大ではない。キミに対してはエクステンデッド3体という多大な恩赦を与えているのだ。
なんとしても落としてもらわねば困るのだよ、あの船はね」
「承知しております」
「そうか。ならばよい。一刻も早い朗報を期待している」
それだけを告げると、モニターからの一方的な通信は途切れた。
完全に通信が切れたことに息を一つつきながら、ネオは苦笑する。
「やれやれ。中々キツいことを仰られる」
そんな彼に、イアン副長が進言した。
「正直に本国に連絡した方がよいのではありませんか? あのシュバルツと言う男のことを」
あんな反則的な戦闘力を持つ男がいるのでは、今の連合の戦力では到底勝ち目などない。この10倍の戦力を投入しても勝てるか怪しいほどだ。
イアンの言わんとすることを理解しながらも、ネオは首を横に振った。
「信じると思うかい? あんなとんでもない戦いを」
「映像データを渡せば、それが改竄されたものではないということはわかるはずですが」
「改竄されたものではないことはわかるかもしれないが、だからって本国の意見はひとつさ。あれを倒せ、だと思うよ」
「それは……そうかもしれませんが」
ネオの言葉に、イアンも思うところがあるのか、それ以上は言ってはこなかった。
「さて。どうしたもんかな。東方先生のことも含めて、いつまでも隠していられる状況じゃない。特にあんなバトルを繰り広げられた後じゃ、データを改竄しようにもできねえしな」
顎に手をやり、先日の戦闘データをモニターに再生させながら、眉間にしわを寄せる。
何より、この神聖とも言える戦いを、政治や金儲けの道具にしか見ないだろう連中には、見せたくない。
その時だった。
観測兵が、ネオ達の前で騒ぎ始めたのだ。
「どうした?」
「これは…なんでしょう」
観測兵がある海域を示した。
ネオ達のガーティ・ルーの半径10数キロの距離に、強烈な反応があると、彼は言う。
「あの海域に強大なエネルギー反応の増大を確認しました」
「オーブ近海か。何だ?」
イアンの言うとおり、そこは連合とこれから正式に同盟を結ぶという、オーブの領海近辺の小さな諸島だった。
「ネオよ、そこに近づいてはならん」
その時、部屋を退室していた東方不敗の声が聞こえてきた。
「東方先生、どうされたんです?」
声に振り返り、問いかけると、全身から凄まじい闘気を発しながら、マスターアジアは立っていた。
「貴様らはこのまま目的地に進めぃ。わしの目的が現れたようだ
この戦い、邪魔をするでないぞ」
ニヤリと凄みのある笑みを浮かべ、東方不敗はネオ達の前から姿を消した。
一瞬後、紫色の光がガーティ・ルーの外で輝き、漆黒のボディに赤い羽を広げたガンダムが、高速で船から離れていく。
「いつのまにか機体とともに外に出ちまったか」
モニター越しに離れていく機体を確認してつぶやくネオに、副長であるイアンが話しかける。
「大佐、気付きましたか?あの恐ろしい顔を」
「ああ、まるで鬼みたいな顔してたな。
関わらない方がいいんだろうが、とりあえず。どんなもんが出てくんのか、見とくとしようか」
「了解しました」
「頼むからこれ以上の厄介事は勘弁してくれよ。ほんとによ」
こうして、ある程度の距離を置いて、マスターガンダムを追跡したネオ達は、オーブ近海に浮かぶ無人島の浜辺で向かい合う、二機のガンダムを発見した。
「マスターガンダムと向かい合ってるあの機体がその強大なエネルギーの正体ってわけか」
「大きいですね。普通のMSの二回りは大きい」
イアンの言うとおり、通常のMSの規格よりもズバ抜けて巨大である。
全高が20メートルを越えている。
「どう見ても、ただ事じゃあない、よな?」
ネオの言葉に、ブリッジにいる誰もが黙って頷いた。
無人島の浜辺へと移動した、二機のガンダムは、しっかりと大地を踏みしめ、腰を入れて構えあう。
「はあああああっ!!」
「フンっ! はあっ!」
デビルガンダムが、赤く禍々しい気を纏い、マスターガンダムが気合いを一閃する。
「ふっふっふ、どれ。
デビルガンダム、かつて我が王だった貴様の実力、見させてもらうぞ!」
「フンっ、マスターアジアよ
お前の技と力とハイパーモード。
すべてこの俺に捧げてもらう」
赤い気が、大地を穿ち、天を突く。その重圧を楽しむ余裕すら見せ、マスターアジアは笑った。
「フンっ、ぬかしよるわ。
ならばゆくぞおお!!」
ウイングバインダーを広げ、ダッシュするマスターガンダム。
同時にデビルガンダムも、前傾姿勢から、軸足で地面を蹴り、一気にマスターへと向かう。
「ぬあああああ!!」
「うぉぉおおお!!」
拳と拳をぶつけ合うデビルガンダムとマスターガンダム。
赤い光と紫の光が、無人島の辺りを照らし、力の余波で、波を割く。
ここに、悪魔と鬼神が、ぶつかり合うのだった。
みなさん、お待ちかね〜!!
アスランはザフトにフェイスとして入隊し、ミネルバへと合流します。
その際、オーブが地球連合と同盟を結んだことを知るのです。
一方、オーブは、カガリの意思を無視した他の議員による総評で、連合との同盟に踏み切ります。
何とか思い留まらせようと理念を説くカガリですが、果たしてーー。
次回、機動武道伝GガンダムSEED Destiny 第23話にレディ、ゴー!!