新機動武闘伝 GガンダムSEED Destiny   作:カンナム

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 ドモン達が、意気消沈した状態であったとき、二人の青年があばら家の前に現れた。
「師匠! どちらに行かれるのですか?」
「チボデーさん達も来てたんですか」
 黒髪の青年と赤髪の青年がそれぞれ口に出す。
「ユウゴにセカイか。
 悪いが、しばらく俺は留守にする。お前たち独自でしばらく修行をしておいてくれ」
 ドモンは二人の弟子に向かってそう言った。
 彼らは、ユウゴ・カガミにカミキ・セカイと言う。
 キング・オブ・ハートの弟子たちだ。
「ーーわかりました」
「帰ってきたら、きっと驚きますよ! 俺たちの実力に!!」
「セカイの言うとおりです。待ってますよ、師匠!!」
 二人の弟子の快活とした言葉に、にやりと笑い、ドモンは言う。
「ならば俺も旅先で腕を磨いておかないとな。そう簡単に抜かせはせんぞ。お前たちにも、ジュンヤにもな!」
 ここにいない武者修行に出ている三人目の弟子の名を出し、気合を入れる。
 三人は拳を突き出しあいながら、笑った。
 後ろでは、ゴッドガンダムを見送る二体のゴッドガンダムによく似た機体がある。
 それぞれ、ハイパーGガンダムとバーニングガンダムと言う、ゴッドガンダムの弟分であり、カッシュ博士が制作し、カラト首相の指示によって作られたユウゴとセカイの愛機だ。
「ーーへっ、弟子ってのも良いもんかもしれねえな」
「慕ってくれたり、モノを教えるって結構楽しいぜ! あんちゃん!!」
 チボデーとサイサイシーがそのような会話をする横で、ドモンは再び彼らシャッフルと妻に向き直った。
「行こうーー、ネオジャパンコロニーへ!!」
 こうして、シャッフル同盟とレイン・カッシュはカッシュ博士の住むネオジャパンコロニーへと出立した。

 さて、みなさん。
 ここ、オーブ海上でのアスハ部隊と連合艦隊との決戦もついに終幕を迎える時がやってきました。
 はたして、この先に何が待ち受けているのかーー?
 それでは、ガンダムファイト!
 レディー、ゴー!!


第26話 圧倒 オーブを護りしもの

オーブ領海に浮かぶ連合艦隊は、ついに自分たちが相手する存在の異常さに気付き始めるのだった。

 

「か、艦長! 敵フリーダム、いまだ落ちませんっ!」

 

「オーブ本国への着弾もありません!」

 

 

 

 通信兵からの報告に、蛇の目の士官は頬杖を突きながら、不快そうに呟いた。

 

 

 

「使えない奴らだな……。これだけの数がいてたった一機の機体を落とせんとは。

 

 まったく、無能な味方は敵よりも始末が悪い」

 

 

 

 そうごちながら、作戦指示を再び飛ばし始める。

 

 

 

「各機に伝えろ! 

 

 アークエンジェルやフリーダムを狙うよりも、あからさまでいいから、オーブ本土を狙うことを優先しろとな!」

 

 

 

 不快そうな士官の指示に、副官が珍しく口を挟んだ。

 

 

 

「そ、それが……!」

 

 

 

「なんだ?」

 

 

 

「こちらがオーブ本土を狙ったMSが、次々と落とされていっています!」

 

 

 

「敵包囲網は薄いんだ。その程度のことで……!!」

 

 

 

 副官の言葉に、士官がさらに檄を飛ばそうとしたところ、通信兵から更なる報告が上がる。

 

 

 

「斥候隊! 全滅しました!」

 

 

 

「なんだと……!?」

 

 

 

「フリーダム! こちらに来ます!」

 

 

 

 モニターには、こちらを振り向きながらビームサーベル二刀を構え、青い翼を広げながらこちらを睨みつける機体があった。

 

 

 

「対空砲火! イーゲルシュテルン、及び全ミサイル、撃てぇいっ!」

 

 

 

 士官は咄嗟にチャージの必要の無い実弾兵器を次々と選択。

 

 フェイズシフトを展開しているフリーダムには大した効果はないが、少なくとも前進は止められる。

 

 

 

「各艦に伝えろ! 全MSを出撃させろとな!

 

 たかがフリーダム一機に、いつまでもいいようにもてあそばれるな!!」

 

 

 

 士官の指示に、焦った通信兵からの報告が届いた。

 

 

 

「艦長! 二時の方向よりフリーダム発見!」

 

 

 

「なにっ。前方から来ているのではないのかっ?」

 

 

 

「アークエンジェルよりフリーダムが三機発進されております!」

 

 

 

 モニターで確認したところ、特徴的な青色のバックパックを広げて、青、黒を基調とした機体が三機、カタパルトから出撃される。

 

 

 

「なんだとっ!?」

 

 

 

 士官が驚愕のあまりに目を見開くと同時に、さらなる報告と別のモニターに機影が映し出された。

 

 

 

「タケミカヅチより五機のフリーダムが出撃されております!」

 

 

 

「計九機? 九機のフリーダムだと?」

 

 

 

 通信兵の報告に何の冗談だと副官が取り乱す。無理もない、たった一機を相手に30機の斥候隊がつぶされたのだ。

 

 その9倍の数の機体が一気に現れたのだから、絶望するしかない。

 

 

 

「恐れるな。こちらのMSは三百ある。たかが九機のMSなどに……」

 

 

 

 士官の言葉はもっともではあるが、現実に目の前で展開された光景を目の当たりにして、笑い飛ばせる者はこの船にはいなかった。

 

 士官はほかの者の思いを無視するかのように独り言をつぶやく。

 

 

 

「それにしても、なぜフリーダムが九機……。

 

 オーブーーいや、アスハはユニウス条約に違反するフリーダムの技術を、完全に量産できるほどにまで解析を進めてていたのか?」

 

 

 

 そのとき、通信兵から無視できない報告が士官に届いた。

 

 

 

「艦長! ジブリール卿より通信が入っております!」

 

 

 

 士官は一つ咳払うと、椅子に座りなおして帽子をかぶり、姿勢を正した。

 

 

 

「お繋ぎしろーー」

 

 

 

 モニターには、薄暗い部屋の中で、青い照明を浴びた頬のこけた紫色の唇が特徴の壮年の男が現れた。

 

 

 

『どうかな? オーブの攻略のほうは』

 

 

 

「存外てこずっておりますが、こちらにはMSが300機もございます。まず負けることはないでしょうーー」

 

 

 

 蛇の目の男の報告に、ジブリールと呼ばれた男はモニターの向こうで目を大きく見開いた。

 

 

 

『驚いたな。君が斥候隊で落とせないとは』

 

 

 

「オーブもそれだけ本腰を入れてきたということでしょうか。おっと、カガリ・ユラ・アスハというテロリストでしたね」

 

 

 

『どちらでも構いはしないよ。どのみちコーディネーターを囲うような国など、滅んでもらうつもりだからね』

 

 

 

 ジブリールは酷薄な笑みを浮かべながら自分の膝元にある猫を大事そうに愛撫する。

 

 その言葉に恍惚とした表情で士官が返した。

 

 

 

「存じております、ジブリールさま。青き清浄なる世界のためにーー!」

 

 

 

『“蛇の目”と呼ばれた君ならば、必ずや私の期待に応えてくれるだろう。よろしく頼むよ。わざわざ再生までしてやった鷹は、口だけで使い物にならないようだからね」

 

 

 

「1MSのパイロットと、部隊を預かる私とでは、比べ物にならんでしょう」

 

 

 

 自負を含めた士官の笑みに、ジブリールは満足そうに笑みを浮かべた。

 

 

 

『戦果を期待しているーー!』

 

 

 

「ハハッ」

 

 

 

 

 

ーーーーーー

 

 

 

 

 

 バルドフェルドは、自分の機体のコクピットから通信をキョウジに入れた。

 

「おい、キョウジ。大物が出てきたぞ!」

 

 

 

「大物?」

 

 

 

 当のキョウジは、訝しげに首を傾げながら、バルドフェルドを見据えた。

 

 

 

「さっきシュバルツの声が聞こえた気がしたんですがーー」

 

 

 

「ああ。偶然みたいだが、敵の親玉の声は、お前さんらによく似てるようだな」

 

 

 

「親玉? つまり、今の通信相手がーー」

 

 

 

 キョウジがなるほどと頷いたのを確認して、バルドフェルドは続ける。

 

 

 

「ジブリールって言ってたろ。

 

 ブルーコスモスでジブリールといえば、ロゴスの幹部でもある、ロード・ジブリールしかいない。ブルーコスモスのなかでも過激派として有名な男だ」

 

 

 

「なるほど。俺たちの声に似てるんですね、その親玉の声はーー。フフッ」

 

 

 

「ん? ……お前、なに企んでるんだ?」

 

 

 

 あからさまに何かを企んでそうなキョウジの笑みに、バルドフェルドは半分あきれたかのような表情で問いかける。

 

 それにキョウジは世間話をするかのような気安さで目を敵艦隊に向ける。

 

 

 

「それはまた、おいおい……。

 

 今は聞き分けの悪い連合の艦隊さんを叩き潰すことに専念しましょう。

 

 思った通りキラのーーフリーダムの強さを思い知ったMSのパイロットたちはムラサメやM1をフリーダムに似せるだけで恐慌状態に陥ってくれましたね」

 

 

 

「古典的な戦法だが……効果的な作戦だな。敵の約三割は恐慌に陥ったようだ」

 

 

 

「まだまだこれからです」

 

 

 

 敵MSの動きが混乱している。無理もない、一騎当千を地で行く機体が9機も現れたように見えているのだ。

 

 この混乱に乗じない手はない。

 

 

 

「どうするんだ?」

 

 

 

 言外にどう畳みかけるのか、と問いかけるバルドフェルドに対し、キョウジは静かに右手を掲げた。

 

 

 

「こうしますーー」

 

 

 

 モビルトレースをしたシャイニングガンダムが、忠実にキョウジの動きに合わせて、右手を掲げ、フィンガースナップを利かせて指を鳴らした。

 

 

 

ピシィィィインッ

 

 

 

 辺りに響く音ーー同時に浮きの黒い球から電磁波が発生した。

 

 

 

 

 

ーーーーーー

 

 

 

 

 

連合艦隊も当然、通信やレーダーの類が一切通じない電磁波の檻に気付く。

 

 

 

「ジャミングです!」

 

 

 

「ジャミングだとっ!?」

 

 

 

 通信兵からの報告に副官が目を大きく見開いた。

 

 

 

「電磁波は、この周囲の浮きからーー」

 

 

 

「まさかこの海域全体にジャミングを行えるというのかっ!?」

 

 

 

 通信兵からの報告にいよいよ副官が戦慄する。

 

 その横で、士官が檄を飛ばした。

 

 

 

「ええい、なにをしているっ!

 

 イーゲルシュテルンによる迎撃を自動から手動に切り替え、ジャミングの発生源である周囲の浮きを叩け!その間にミサイルの次弾装填後、周囲の浮きに発射せよ!

 

各艦に伝えろ! その浮きをすべて叩き落せとな!」

 

 

 

 士官の的確な指示に、まだいけると思いなおした副官が真っ先に答えた。

 

 

 

「ははっ!」

 

 

 

 しかし、その次の瞬間には通信兵からの報告が響き渡る。

 

 

 

「だめです、一切の通信がーー!」

 

 

 

「ええいっ、ならば――モールス信号でいい! とにかく伝えるんだ!!」

 

 

 

 副官の指示に、電磁波やレーダーの類に左右されない目視でのやり取りに切り替える。

 

 

 

ーーーーーー

 

 

 

 

 

 その様を、オーブ丘の高台から見下ろすシャイニングガンダム。

 

 

 

「ふっ、モールス信号か。

 

 人間は五感を頼りに生活する生き物、耳が聞こえなくなったら次は目を頼る。

 

 ならば、その目が潰れたら、次は何を頼るーー?」

 

 

 

 独りつぶやくキョウジのシャイニングガンダムの背を見つめながら、バルドフェルドは自身のムラサメに搭載されているレーダーでジャミングの数値を確認する。

 

 

 

「強力なジャミングだ。海流に乗せて発生させたジャミングよりもはるかに。

 

 やつらの会話内容がまったく聞こえなくなった……。ここからだな。このキョウジって男が、どれほどやれるのか。見せてもらおうじゃないか」

 

 

 

 今までは敵の作戦が筒抜けであったが、これからはジャミングの発生により盗聴の類が使えなくなった。

 

 キョウジという男の判断力で、この先の作戦の遂行具合が変わるーー。

 

 深呼吸したのち、ここまでは見事だったと心の中でつぶやきながら、バルドフェルドは、キョウジという男を見極めようと目を見開いた。

 

 

 

 海域では、実弾兵器のミサイルやイーゲルシュテルンの弾幕が次々と海面に向かって放たれ、浮きを爆発させていく。

 

 次の瞬間にはーーー

 

 

 

バシュゥウウウウウウッ

 

 

 

 爆発した浮きが煙を発生、水蒸気となりあたり一面に濃い霧を発生させていったーー。

 

 

 

 

 

ーーーーーー

 

 

 

当然、この現象に、浮足立つ敵艦隊。

 

焦った通信兵が助けを求めるかのように、士官に報告を入れた。

 

 

 

「か、艦長っ! 霧が!」

 

 

 

「ええいっ、霧がなんだ! ジャミングさえどうにかなれば、索敵もできるっ!」

 

 

 

 士官の言葉に、別の通信兵から声が上がった。

 

 

 

「……だめです!! ジャミングの効力が弱まりません!!」

 

 

 

 それにようやく、士官も気付き始めた。

 

 

 

「ば…馬鹿なっ!?

 

 これだけ複雑な悪天候を造り出しておきながら、敵のジャミングはまったく鈍らないだとっ?

 

 これだけのモノを実験もせずに秘密裏に開発し実用化させたというのか!?」

 

 

 

 敵の科学力は異常だ。技術体系、発想力、着眼点、そのすべてが士官が今まで争ってきたどんなものよりも秀でている。

 

 

 

「艦長っ! 目視で確認できる距離が、どんどん狭まっていきます!」

 

「デモイン級三番艦! 四番艦! 大破っ!」

 

「敵のビームによる狙撃が鈍りませんっ!」

 

 

 

 士官が言葉もなく戦慄している横で、次々と報告されるこちらの艦の撃墜状況。

 

 

 

「どういうことだ……っ!? 

 

 これほどのジャミングの中で、どうしてこんなことができるっ!? 」

 

 

 

 まったく分からないーー。あまりの理不尽な状況に、今まで冷静だった士官はついにヒステリーを起こした。

 

 

 

「ええいっ! 視界が見えなくなれば、奴らも攻撃ができまいっ! 霧に飛び込め!  

 

 動かぬオーブ本土を狙い撃つのだっ!

 

 撃たねば我らが討たれるぞ!」

 

 

 

 悲鳴じみたその叫び声とともに、旗艦が前進するーー。

 

 

 

ーーーーーー

 

 

 

 その様を確認して、キョウジは一つ頷いて分析を始めた。

 

 

 

「やはり、目視で確認できる内に、こちらへ進んできたか。

 

 嗜虐心が強い男は自分が追い詰められた状況を想定していない。

 

 そのため、我慢強くない。

 

 これまで慎重だった分、一気に勝負を決めようと進んでくるーー」

 

 

 

 シャイニングガンダムのレーダー機器を確認しながら、位置情報を正確に判断し、的確な指示を与える。

 

 この旗艦を一瞬で落とせる実力と機動力、火力を誇り、位置取りも完璧なーーまるで優等生のような回答をたたき出したMSに呼びかけた。

 

 

 

「--キラ」

 

 

 

ーーーーーー

 

 

 

 連合の旗艦ブリッジは騒然と騒いでいた。

 

 突如、霧の中からフリーダムが登場し、こちらに一直線に向かってきたのだ。

 

 

 

「なっ!? ばかな!!!!」

 

 

 

「ーーーーこれで、終わりだぁああああああっ!!」

 

 

 

 キラの叫びと共にフリーダムが全ての射撃武装を旗艦へ向ける。フルバーストモードと呼ばれるフリーダムの全射撃兵装の一斉放射である。

 

 正確に、動力炉だけを狙い撃ち、ビーム砲が貫いていく。

 

 

 

「メインエンジンに被弾!」

 

「出力が45パーセントに低下!各所のダメージ・コントロールが間に合いません!…沈みます!!」

 

「ば、馬鹿な……っ。これほどの戦力差で、なぜっ」

 

「なんなんだ……、こいつらはぁっ!?」

 

 

 

 ブリッジにいるすべての兵達が、絶望と戦慄を味わいながら、自身の乗艦する船の終わりを感じていた。

 

 

 

ーーーーーー

 

 

 

『キョウジさん、敵旗艦落としました』

 

 

 

 キラからの撃沈報告と共に海域を包んでいたジャミングの電磁波と霧が消えていく。

 

 目視でも海中に沈んでいく船を確認し、救命ボートを次々と回収していくタケミカズチおよびオーブの潜水艇を見て、コクリと一つ頷き、キョウジは報告を返す。

 

 

 

「了解だ。

 

 ムラサメとアストレイ部隊も、敵艦を次々と落としてくれたみたいだ。母艦のないMSたちは撤退するほかない。作戦は終了だ」

 

 

 

 その一言に、作戦の完全勝利を確信したアスハ部隊は、勝利の喝采をあげたーー。

 

 

 

 後に、奇跡の海戦と言われるこの戦いは、僅か10機に満たないMSで30倍もある敵艦隊を完璧に倒したと語り継がれることになる。

 

 

 

 その青き翼のMS部隊の立役者には、一人の軍神がいたことは一部の当事者以外、誰も知らないーー。

 

 







 みなさん、お待ちかね~!

 キョウジの作戦により、連合の大艦隊を退けることに成功するオーブ軍アスハ部隊。

 しかし、勝利に湧く彼らに、かつて悪魔の四天王であった2人の男が襲い掛かるのです。

 はたして、復活した彼らの狙いは、何なのか!?

 次回、機動武道伝GガンダムSEED Destiny 第27話に、レディー!

 ゴー!!
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