新機動武闘伝 GガンダムSEED Destiny   作:カンナム

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ドモンとレインがカッシュ家から出てくると、チボデー達シャッフル同盟が深刻な表情でうなだれていた。

理由は、ドモンには言わなくても分かっている。

彼らの傍にいる女性たちを見れば。

「ーーお前たち」

ドモンは、真剣な表情で、彼らを見た。

彼らも同じくらい真剣な表情で、こちらを見て話しかけてきた。

「ーードモン、カッコつけたことを言っちまった手前情けないがーー!!」

「私達はーーこれまでのようです!!」

「ーーお前と共に行きたかったぞ、ドモン・カッシュ」

チボデーが、ジョルジュが、アルゴが、それぞれの女性たちに拘束され、無念そうに呻いている。

「お前達、情けなくなどあるものか! 俺だって、痛いほどに分かる!!」

「「「ドモンーー!!」」」

盛り上がる4人だが、1人納得していない者がいた。

「なんで、オイラだけ、爺ちゃん達なんだよ!!」

「そう言うな、サイサイシー」

「セシル殿を連れて来たら来たで、お前はワシらを責めるじゃろ」

不満そうなサイサイシーに、ズイセン、ケイウンが口をそろえる。

「そりゃ、セシルは苦学生なんだからさ。こんなことくらいで呼ぶ訳にはいかないよ。
でも、なんか、寂しいーー!!」

サイサイシーの絶叫がネオジャパンコロニーに響く中、レインが先頭に立って、皆を観光に案内し始めた。

シャッフル同盟の、いや。

キング・オブ・ハートの旅立ちは、未だ成らず、である。


さて、皆さん。

オーブ軍アスハ派が、連合艦隊を退けていた頃。

マスターガンダムとデビルガンダムは、死闘を繰り広げていました。

そして、ザフトのシュバルツ達も、新たな出会いと戦いの場が待っていたのです。

それでは、ガンダムファイト!

レディー、ゴー!!

第28話



第28話 滾る悪魔 進化するデビルガンダム

オーブ近海の名も無き諸島で、2つのMSーーいや、MFがぶつかり合う。

 

 

 

片方は巨大な角を持つ漆黒のボディに赤い羽のガンダム。

 

 

 

もう片方は、巨大な全長をさらに大きく見せる黄金の突起が肩や背中、ふくらはぎについた悪魔のガンダムである。

 

赤い配色の強い体は、胸の部分のみ青く、その中央に丸い緑のクリスタルが嵌められている。

 

だが最大の特徴は、本来の姿よりも白く長い脚部にある。

 

普通のMFよりも二回り大きい上半身のサイズに合わせ、太さもあるが、まさに人型ガンダムの下半身をしているのである。

 

 

 

ズガァアアアッ

 

 

 

2機は、大地と大気を裂きながら、拳に気を纏わせ、ぶつけ合う。

 

 

 

「ーーマスターガンダム!!」

 

 

 

「フンーー! アルゴとやりあった後では、パワーが物足りぬわぁ!!」

 

 

 

全く互角の力比べに、忌々しそうにDが鋭く吠える。

 

 

 

それを余裕の笑みで見据えた後、マスターアジアは突き出していた拳を自然な流れで脇へと引いた。

 

 

 

「ーーっ!?」

 

 

 

 Dが目を丸め、たたらを踏む。瞬間、ガラ空きのアゴに左裏拳を叩きこむと、マスターアジアの嵐のような拳蹴打がDを攻め立てた。

 

 

 

「ーーぐぅ!?」

 

 

 

うめきながら、ガードを固めるD。

 

 

 

その上から、マスターガンダムはお構いなしに猛攻を叩きつける。一秒間に十数撃。頑強なデビルガンダムの巨体が、非常識なまでの拳蹴打の雨をまえに後方へのけ反った。

 

 

 

ズザザッ

 

 

 

距離を置いて、静かにガードの奥からマスターガンダムを見れば、マスターも構えながら、こちらの様子を伺っている。

 

 

 

「ーーどうした? 世界を喰らうガンダムが、この程度で終わるなど拍子抜けぞ!!

 

それとも、ドモンに似せたのは、外面のみか!!」

 

 

 

「ーー調子に乗るなよ?

 

ならば、面白いものを見せてやる!!」

 

 

 

ブチィ

 

 

 

 Dは口端を皮肉げにつりあげると、左肩から黄色の突起を1つ抜き、薙ぎ払った。

 

その軌跡に沿って、突起物は黄色の柄をもつビームサーベルへと変化している。

 

 

 

抜かれた肩の部分は直ぐに新しい突起が再生していた。

 

 

 

「ーーほう? 貴様、剣を使うか?」

 

 

 

マスターアジアが鋭く目を細める先でDがニヤリと笑う。

 

 ふと、空が曇った。

 

 

 

「ーー我のこの手が翳りて吠える。

 

 全てを屠れと高まり狂うーー!!」

 

 

 

「ーーぬぅっ!!」

 

 

 

 異常を見て取ったマスターアジアが周囲への警戒を強めたとき、Dのビームサーベルは青紫色にどす黒く輝き、デビルガンダムの身の丈を超える大太刀へと進化した。

 

 海面が、気の振動に合わせて震えている。

 

 

 

「食らえ、哀と! 嘆きと! 憎しみの!!

 

ーーデビルフィンガーソード!!」

 

 

 

ブウンッ

 

 

 

 デビルガンダムの巨体から、大上段に振りかぶった大太刀が無造作に振り落ちる。

 

 その異様な迫力にマスターが息を呑み、咄嗟に跳躍して後ろにさがった。

 

 

 

Dが口端をつり上げて、無情にも逃げるマスターを斬り立てる。その一撃一撃は、空間をハッキリと斬り、大地と海を断つほどの絶刀である。

 

「まこと、凄まじき切れ味の太刀よ。

 

これほどの技、学べたはシャイニングのおかけだな」

 

 

 

強力な斬撃に自らもデビルガンダムは感嘆する。

 

 

 

対峙するマスターガンダムが、豪快な笑声を上げた。

 

 

 

「ーーフッふはははは!!

 

馬鹿め、そう易々と、このワシを倒せると思っておるのか!?」

 

 

 

「ならば、どうする!? この凄まじき太刀を!!」

 

 

 

 斬り立てるDの太刀を、マスターガンダムは鮮やかなステップを刻んでかわしていく。だが、デビルガンダムはDG細胞の塊だ。どれだけエネルギーを消費しようと関係ない。

 

かわし続けられようが消耗など、しない。

 

 

 

大上段から振り下ろされる唐竹の一撃を、マスターガンダムが白刃取った。

 

 

 

ピシィッ

 

 

 

完璧なタイミングと把持の仕方に、デビルガンダムでも抜けれない。

 

 

 

「ーーくっ! さすがだな、マスターアジア!!

 

だが、この太刀はビームよ!!

 

折ることは叶わんぞ!!!」

 

 

 

「ーーフン。その技を使うドモン・カッシュのシャイニングフィンガーは、ワシが教えた技。

 

すなわち!!」

 

 

 

マスターアジアが、刃を挟む両手に気を集中させる。

 

瞬間、デビルガンダムが作り出した強力な太刀は、光の粒子となって霧散した。

 

 

 

「ーー!?」

 

 

 

「破り方も心得ておる。

 

さらばだ、デビルガンダムよ!!」

 

 

 

マスターガンダムの右手が紫の気を纏い光輝く。

 

 

 

ズシュウウゥッ

 

 

 

Dは、目を見開きながら、デビルガンダムの胸部に深々と突き刺さる右手を確認していた。

 

 

 

「爆発!!」

 

 

 

貫手で胸部のクリスタルを貫き、力を爆発させる。

 

 

 

紫の光が一瞬、あたりを照らし出し、デビルガンダムは爆発の中に姿を消した。

 

 

 

「ーーふん、シュバルツとの決着前に、貴様と勝負することになるとはな。

 

だが、それも終わりだ」

 

 

 

爆発させ、消しとばした手応えを感じたマスターガンダムは、静かに踵を返すとその場を歩いて離れていく。

 

 

 

ーーーーーー

 

 

 

連合戦艦ガーティ・ルーのブリッジにて、モニター越しにこの闘いを見ていたネオ・ロアノーク、イアン・リーは呻いていた。

 

 

 

「ーー流石に鮮やかですね。しかし、あのマスターという男にしては、遊びがなかった気もしますが」

 

 

 

「そだねー。まあ何にせよ、悩みの種が増えるわけじゃなくて何よりだ!

 

東方先生を迎える準備をしろ。マスターガンダムを収容後、本艦は任務に戻るぞ!」

 

 

 

この時の彼らはまだ、オーブでの地球連合艦隊の完敗を聞いていないため、気楽なものだった。

 

 

 

だが、状況は二転三転していくーー。

 

 

 

ーーーーーー

 

 

 

カーペンタリア基地にて。

 

 

 

歌姫ラクスのライブが終了し、皆が帰還する中で、ルナマリアはウンザリといった表情で隣の幸せそうなメイリンを見やる。

 

 

 

「ーーああ、買い物もできたし!

 

ラクス様のライブでストレスも解消できたし、サイコー!!」

 

 

 

「そりゃ、良かったわねメイリン。あんたのおかげで、あたしは修行が遅れたんだけどね。

 

絶対、シンとレイの仕業だわ…!!」

 

 

 

許すまじと、拳を握り締める彼女だが、突如MSデッキに招集がかかった。

 

 

 

「ーーええ!? アスラン・ザラがオーブからザフトに来てる!?

 

しかも、フェイスって!?」

 

 

 

妹のはしゃぎように、耳をふさぎながら、とりあえずデッキに向かうと、シンとレイがすでに整列していた。

 

 

 

傍らには、腕組みをして背筋を伸ばして立つシュバルツもいる。

 

 

 

先にシュバルツに黙礼すると、彼はマスクの奥の目を和らげ、いつもどおり穏やかに頷いてくれた。

 

 

 

「シン、レイ!」

 

 

 

その後、自分を追いやった2人に話しかけると、それぞれ反応を返してきた。

 

 

 

「お? 早かったな、ルナ!」

 

 

 

「もう少し、ゆっくりして来ても良かったんだぞ?」

 

いけしゃあしゃあと述べる2人に、眉を引きつらせ、ルナマリアは言う。

 

 

 

「あんた達、あたしを出し抜いて何を教えてもらったのよ?」

 

 

 

「待てよ、ルナ! まだ、何もーー」

 

 

 

「誤解だ、ルナマリア。俺たちは別にーー」

 

 

 

睨みつけると、シンもレイも顔を見合わせ、しどろもどろになりながらも、語る。

 

 

 

2人の手は、パーだった。

 

 

 

「お前達、歓待式の最中に私語はよせ。

 

目立っているぞ」

 

 

 

シュバルツにやんわりと注意され、大人しくなる3人。その横で、メイリンがジッと静かに観察していた。

 

 

 

( 何だか、みんな変わっていってる?

 

お姉ちゃんは、ブランド物やお買い物より、修行をしたいって言うし。

 

シンは、前まであんなにも取っ付きにくかったのに、最近は何だか明るいし、素直だし、優しいし。

 

レイも、この中では一番変わってないように見えるけど、式典の最中に私語をするしーー)

 

 

 

メイリンがちらっと見上げたのは、長身の覆面忍者。

 

 

 

( この人、お姉ちゃん達が言うように凄い人なのかも?

 

こないだも、海の上で凄い戦いしてたしーー)

 

 

 

ジーッと見ていると、覆面忍者は、その目を和らげ、穏やかで温かみのある声をメイリンにかけてきた。

 

 

 

「どうかしたのかな?」

 

 

 

「あ、い、いえ!」

 

 

 

「そうか。とりあえず式の最中だから、前を向いていた方がいいぞ」

 

 

 

「あ、はい」

 

 

 

声が、素敵かもしれない。

 

 

 

後、背も高いし。

 

 

 

性格も落ち着いた大人って感じでーー。

 

 

 

でも、やっぱりあのマスクはなぁ。

 

 

 

メイリンは、そんな取り留めのないことを頭の中で分析していた。

 

 

 

アスランは式を終えるとシュバルツやシン達の方に真っ先にやってきた。

 

少々呆れ顔だ。

 

 

 

「君たちは、やたらと目立つな。頼むから、会議中に私語は謹んでくれよ?

 

ま、これからよろしく頼む。君たちの部隊を指揮することになったフェイスのアスラン・ザラだ」.

 

 

 

「隊長をあなたがやるんですか? シュバルツさんじゃなく?」

 

 

 

明らさまに不快そうなシンに、苦笑してアスランは述べた。

 

 

 

「シュバルツ殿は客人だし、軍人でない以上隊長職には就けない。

 

気持ちは分かるが、そんなに嫌うなよ。少なくとも、俺は君に感謝してるんだ、シン」

 

 

 

穏やかに笑いながら言うアスランに、シンは何故ここまで自分が好かれているのかわからず小首を傾げる。

 

「えとーー?」

 

 

 

するとアスランは笑みを引っ込め真剣な表情でシンに話しかけた。

 

 

 

「キラのことだ。あいつは、君に会って変わった。ずっと悩んでいたあいつが。

 

俺でもラクスでも、カガリでもない。

 

君が、あいつに立ち上がる力をくれた。

 

だから、ありがとう。シン」

 

 

 

「お、俺ですかーー?

 

でも俺、なんか、あの人の立場とか苦労とか考えないで、感情で話しちゃった気がして」

 

 

 

余計に苦しめたんじゃないか、と言おうとして、アスランが遮った。

 

 

 

「それは違う。君の言葉をあいつは誰よりも有難く思っていた。

 

目が覚めたと言ってたよ。だから、俺も感謝してるんだ。キラは、俺の弟みたいな奴だからさ」

 

 

 

鼻をかきながら、言うアスランに、シンは初めて親しみのある笑顔を見せた。

 

 

 

「そう言う事なら、貸しですね? なら、アスランさんにも力を貸してもらいますよ!

 

争いを終わらせる為にも!!」

 

 

 

「ーーシン。俺のセリフだ。

 

君のーー、いや、君たちの力を俺に貸してくれ。これ以上、無駄な血を流させてはいけないんだ」

 

 

 

アスランの強い目を見て、シンもまた頷いた。

 

 

 

「ーーなんだか、2人の世界って感じね?」

 

 

 

「その方がいいだろう。これから、俺たちはアスランの指示で動くのだからな」

 

 

 

「それは、そうだけどーー」

 

 

 

眉根を寄せ、不満そうなルナマリアに、レイが静かに告げた。

 

 

 

「安心しろ。シンが一番心を許しているのは、お前だ、ルナマリアーー」

 

 

 

「ーーな、何を言ってんのよ!!」

 

 

 

顔を赤くし、そっぽを向くルナマリアに心の中で告げる。

 

 

 

( シュバルツ殿を抜けば、なーー)

 

 

 

素知らぬ顔で、自分の心の呟きに頷くレイである。

 

 

 

その時だったーー。

 

アスランの元に駆け寄るものがいたのだ。

 

 

 

「ーーアスラン!」

 

 

 

「み、ミー……じゃない、ラクス!?」

 

 

 

抱きついてきた柔らかい存在は、アスランのよく知る女性ーーではなく、その人を真似た存在。

 

 

 

「何故、ここにーー!?」

 

 

 

「婚約者のあなたの元にわたくしが、来てはなりませんか? アスラン」

 

 

 

「え? 婚約者って……」

 

 

 

腕の中にいるミーアことラクスに、どう説明しようか考えていると、冷たい視線がアスランを射抜いた。

 

 

 

しかも、複数ーー。

 

 

 

正体はシン、ルナマリア、メイリンだった。

 

 

 

「ーーし、シン。これは、だな」

 

 

 

「アスランさんて、カガリ代表のこと、どう思ってんです?

 

ラクスさんもキラさんのこととか」

 

 

 

冷たい視線ながらも、一応は聞いてくれるシンに、有難く思って説明しようと口を開き、

 

 

 

( このラクスはミーアだってバラしちゃマズイんだった!!

 

よし、ここは、何とかーー)

 

 

 

そんなアスランの思惑を超えて、事態は進む。

 

 

 

「ーーキラ? だれ、それ?」

 

 

 

小首を傾げるラクスに、シンが眦を釣り上げた。

 

 

 

「ーーなんで、あんたが知らないんだよ。あんたと一緒にオーブへ亡命したんだろ?」

 

 

 

「ーーちょっと、アスラン。なんで、この子、ラクス様のこと」

 

 

 

流石のミーアも小声で聞いてきた。

 

 

 

「ここで、俺にふるのか……っ!?」

 

 

 

さっきまでシンに率先して応えようとしていたのに、此処で自分に火の粉がかかるとは。

 

 

 

アスランは、弱り切ったような顔になり、こちらの様子を見ているシュバルツを見た。

 

 

 

すると彼は、修行が足らんぞ、とばかりに首を横に振った後、こちらに歩いて話しかけてきた。

 

 

 

「お久しぶりです、ラクス嬢。オーブでお世話になったシュバルツ・ブルーダーです」

 

 

 

「え、ええーー」

 

 

 

多少、引きつりながらも答えるミーアに頷いた後、シュバルツはアスランに目配せをすると、シン達に振り返った。

 

 

 

「すまないが、今日の修行は休みだ。各自イメージトレーニングをしておいてくれ。

 

私は、これから、ラクス嬢やアスランと話がある」

 

 

 

「えーー? まじですか!?」

 

 

 

「そんな、折角早めに切り上げたのにぃ〜!?」

 

 

 

「わかりました、イメージトレーニングに励みます」

 

 

 

三者三様の反応に頷きながら、シュバルツはラクスとアスランに向き直った。

 

 

 

「では、カーペンタリアに良いコーヒーを淹れてくれる店がある。

 

そこに案内しよう」

 

 

 

言うとシュバルツは、2人を引き連れて、その場を去っていった。

 

 

 

「ところで、シン。なんで、ラクス様がオーブに居たって思ったの?」

 

 

 

ルナマリアの問いかけにシンが答える。

 

 

 

「何でも何も、プラントの歌姫が、英雄と亡命したってオーブでは持ちきりだったんだよ」

 

 

 

「ふうん? まあ、ラクス様も公務とかあるから、亡命も早めに切り上げたのかもね」

 

 

 

シンはなるほどと一つ頷き、シュバルツと共に出て行った青年の背中を半目で見つめる。

 

 

 

「にしても、アスランさんて、誰が好きなんだろな?」

 

 

 

「居るのよね、ああいう女性にだらしのないタイプ」

 

 

 

ルナマリアとその横にいたメイリンも呆れたような視線を送っていた。

 

 

 

 

 

カーペンタリア基地のとある小さな喫茶店にて

 

 

 

「助かりました、シュバルツ」

 

 

 

窓際の席に着いた3人のうち、アスランはフーッと息を吐きながら、述べた。

 

 

 

シュバルツが選ぶだけはあり、客の入りは自分達以外なく、ゆったりとした雰囲気の店だった。

 

 

 

「いや、しかし。

 

きちんと後でシン達に説明しておくのだぞ?

 

あれは、どう見ても不審の目だ」

 

 

 

シン達の目を思い出し、忠告してくるシュバルツに、アスランも苦笑いを浮かべながら、答えた。

 

 

 

「ねぇ、アスラン。ラクス様とあなたは、婚約者なのよね?

 

さっきの子が言っていた、キラさん、て誰なの?」

 

 

 

「そういえば、体外的には発表してなかったんだったな。忙しくて、気にしてなかったんだが。

 

実は、とっくに破局してるんだ、俺とラクスは」

 

 

 

「な、なんでーー!?」

 

 

 

頭をかきながら、アスランは答えた。

 

 

 

「簡単に言うと、お互いに好きな人ができたんだ」

 

 

 

「ーーそれが、キラって人と、アスハ代表なの?」

 

 

 

「ああ。だから、ミーア。

 

ラクスを演じるからと言って俺に懐く演技はいらないんだ」

 

 

 

ハッキリと目を見て言った。初めは何かを言いたそうなミーアだったが、やがて諦めたように笑う。

 

 

 

「ーーそっかぁ、残念。アスラン、かっこいいのに」

 

 

 

「それは買い被りだな、俺はカッコよくなんかないよ。俺なんかより、Dの方がいい」

 

 

 

笑いながら言うと、ミーアの眦がつり上がった。

 

 

 

「ーーどうして、Dの話が出るの?」

 

 

 

「え。いや? 何だか、親しそうだったし……?」

 

 

 

その迫力に、それ以上は言えないアスラン。

 

ミーアは、それを確認してか、どうかは分からないが感情を爆発させた。

 

 

 

「ーーあんな奴!

 

あたしを、ラクスとも何とも思わない奴なんか!!

 

だいたい、Dは私の話を無視し過ぎなのよ!!

 

女、だの! 小娘、だの!! まともに名前を呼んでくれた記憶もないし!!

 

ちょっと、聞いてる、2人とも!?」

 

 

 

「ーーあ、ああ」

 

 

 

「う、うむーー」

 

 

 

( 何故、私まで巻き込まれたのだ?)

 

 

 

( この際、巻き込まれてください! コーヒー代おごりますから!!)

 

 

 

ミーアの愚痴は、とどまることを知らず、喫茶店は彼女の独壇場になっていたーー。

 

ーーーーーー

 

燃え上がるデビルガンダムの残骸を背に、ガーティ・ルーに帰還しようと、マスターが目を向けた時、背後で変化が起こった。

 

 

 

「ーー気が膨れ上がる、だと?」

 

 

 

もはや、燃え尽きるだけの残骸に過ぎないはずのデビルガンダムの方から、圧倒的な気が起きていた。

 

 

 

炎に向き直り、構え直すマスターガンダム。

 

 

 

「ーーふん。往生際の悪い厄病神めが。

 

地獄に送ってくれるわ!!」

 

 

 

夕日が陰り闇に包まれていく中で、炎を背に一機のガンダムが立ち上がる。

 

 

 

その大きさは、20メートルを優に越え、特徴的な赤く丸い肩の先には、黄色の突起が一つずつ付いている。

 

 

 

その突起は、真っ白な下半身の両足のふくらはぎにも一つずつ付いていた。

 

 

 

胸部は、赤い配色が強く、金色の金具が、せり出した胸部のカバーを閉じる役目をする。

 

 

 

クリスタルは、カバーの中に収納され、カバーそのものの色は、青い。

 

 

 

仏像を思わせる丸みのある顔と、魔神を思わせる背中の羽。付け根が白く、羽は赤い。

 

 

 

腕は、全体的に白になり、手先の爪が尖った仕様をしている。

 

 

 

「ーーゴッドガンダムの頭と胴に、ワシのマスターガンダムの腕と羽か。

 

自前はもはや、その両の足のみとは。

 

哀れなものよな、他者の真似をせねば、強くなれんとは」

 

 

 

マスターガンダムが右手を突き出し、左拳を腰に置いて構える。

 

 

 

対峙するまったく新たな姿に生まれ変わったデビルガンダムは、微動だにせずにマスターに顔を向けた。

 

 

 

「ーー貴様やドモンを越えるならば、下半身だけをファイター仕様にしても勝てないと、重々思い知らされたのでな」

 

 

 

「ーーふん、確かにゴッドガンダムのエネルギーマルチプライヤーは貴様の使用していたそれの数倍のパワーがある。

 

しかし機体の性能など、ファイターとガンダムの一心同体の境地、明鏡止水に比ぶべくもない!」

 

 

 

油断なく構えるマスターアジアに、ニヤリと笑みを返し、Dは語り出した。

 

 

 

「ーー貴様の肉体は、我が細胞によって再生された。貴様は、どう思っているか知らぬが、都合良く病の無い体を手に入れられたと思うなよ?」

 

 

 

「ーーなんだと?」

 

 

 

デビルガンダムは、両の腕を広げる。

 

 

 

すると、マスターガンダムの胸部に紫の光の玉が現れる

 

 

 

「ーーなんだと!? これは!!」

 

 

 

「返してもらうぞ、貴様に貸していた我の力の分をな!!」

 

 

 

それは、真っ直ぐにマスターの胸から、デビルガンダムのエネルギーマルチプライヤーに取り込まれた。

 

 

 

それまで、両の目に灯りがなかったデビルガンダムに、青紫の光が灯る。

 

 

 

一瞬後、爆発的にデビルガンダムの気が上がった。

 

 

 

「ーーき、きさま、、ワシの力を!!」

 

 

 

対するマスターアジアは、冷や汗を垂らしながら、肩で息をしている。

 

 

 

足腰に力が入らず、膝をつく。

 

それを見下ろして、デビルガンダムは笑った。

 

 

 

「安心しろ、脱力は一時的なものだ。

 

貴様の中にあった我が細胞を返してもらった影響だな。

 

貴様の動きを技を覚えた、なーー!!」

 

 

 

述べると同時に、デビルガンダムが動く。

 

現れたのは、マスターガンダムの正面ーー。

 

 

 

「ーーおのれぃ!!」

 

 

 

気合いで立ち上がり、応戦するマスター。

 

 

 

デビルガンダムは、両の拳を腰に置いたまま、その場から無造作に右拳を繰り出す。

 

 

 

手打ちのはずのその一撃は、マスターをしてガードせざるを得ない速さと威力を兼ね備えていた。

 

 

 

ドゴゥッ

 

 

 

「ーーぬう!?」

 

 

 

踏ん張りが効かず、体制が崩れたマスターの脇に素早く踏み込み、デビルガンダムの拳蹴打の連撃が襲いかかる。

 

 

 

( 今のワシの足腰では、受け切れぬ。ならばーー!!)

 

 

 

自分の状態を冷静に把握し、敵の攻撃を見据えながら、避ける。

 

自分のボディに放たれる拳の一つ一つを丁寧に受け流し、受け切れない回し蹴りは、バックステップをしてかわす。

 

 

 

マスターが着地すると同時に、デビルガンダムの左手ーーディスタントクラッシャーが伸び、マスターガンダムの腕を掴んで、引き寄せる。

 

 

 

完全に懐へ引き寄せられるまえに、マスターは左手を振り払い、左拳を数発デビルガンダムの眼前に散らして、距離を置く。

 

 

 

振り払われて伸びた左手を引き戻し、構え直すデビルガンダム。

 

 

 

マスターアジアは、それを冷静に見つめながら、自分の足腰の状態を確認する。

 

 

 

( まだ、足腰の踏ん張りが効かんか。腰の入った攻撃や蹴り技は使えん。

 

しばらくは気を練り、回復につとめるか)

 

 

 

ステップを刻んで状態を確認しつつ、敵を見据える。

 

 

 

攻撃を捌ききれるのは、Dが自分の動きをトレースしているだけだからだ。

 

あの動きにDが慣れる前に、回復しなければ不利になる。

 

 

 

「ーーさすがは、東方不敗マスターアジア。

 

立っているのもやっとの状態で、良く避ける」

 

 

 

「ーーふん。ワシの動きをただ真似るだけの機械人形に、ワシを倒せる道理なし!!

 

あてが外れたようだな、デビルガンダムよ」

 

 

 

「どうかな? 貴様も気付いていよう。

 

この動きと新たな機体(カラダ)が俺のものになれば、どうなるかを、な!!」

 

 

 

拳を握りしめ、構えを取るDに、舌打ちをしながら、東方不敗も構え直す。

 

 

 

「笑わせてくれるわ! そのような浅はかな考えで我が流派を掴もうなどと!!」

 

「ーーなら、どう浅はかなのか。教えてもらおうか!!」

 

機体のウイングバインダーを開き、一気に加速して襲いかかるデビルガンダム。

 

ギュムッ

 

対するマスターガンダムも自身の軸足で地面を踏みしめて笑った。

 

 

 

ーーーーーー

 

 

 

カーペンタリア基地を出発したミネルバ隊は、連合の拠点、ローエングリーンゲートに足を進めていた。

あたりは、渓谷の岩場ばかりで、天然の要塞とも言える。

ミネルバの作戦会議室で、アスランがモニターの前に立ちながら、状況を説明していく。

 

「ーーこれより、ローエングリーンゲートの攻略の為に作戦会議する。

各員、しっかりと聞いてくれ」

 

アスランの声が響く中、会議が始まったーー。

 

 

 

 

 

 

 




皆さん、お待ちかね〜!!

ローエングリーンゲート攻略には、シンのインパルスが欠かせないと語るアスラン。

シンも修行の成果を試す良い機会だと快諾します。

一方で、悪魔との死闘を繰り広げていたマスターに危機が迫り、かつてエクステンデッドと呼ばれたスティング達がデビルガンダムの前に助太刀に入ります。

彼らを見て、かつてのガンダムファイター達を思い返すDの取った行動とはーー?

次回、機動武道伝Gガンダム SEED Destiny 第29話に!!

レディー、ゴー!!
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