新機動武闘伝 GガンダムSEED Destiny 作:カンナム
天然の渓谷を切り取って作られたこの基地は、地球連合の要であるスエズ基地への通り道として欠かせず、補給路でもある、重要拠点です。
幾たびに渡り、ザフトの部隊が、この要塞に挑み破れていきました。
そんな中、ついに我らがシン・アスカのミネルバ隊が、この要塞に挑むのです!
それでは、ガンダムファイト! ガルナハン攻略作戦!!
レディー、ゴー!!
第30話
真っ暗な洞窟内を、小型戦闘機が最大速力で突っ切っていた。
灯りもなにもない。ライトさえつけず、
だれが見ても狂気の沙汰としか思えぬ状況だった。そのなかで、シンはコクピット内で独りごちる。
「ーーレーダーや視覚に頼るなよ、シン。
五感を研ぎ澄まし、人機一体の境地で風の音と空気の摩擦を感じろ!」
狭路にして複雑に蛇行するこの洞窟の地形は、地元では戦闘機の通路としてまず認知されない難所だ。予め地形は隊長アスランから渡されていたが、シンはまるきり地図を見ずに作戦に参加していた。
予め地図や地形を覚えると、どうしても視覚に頼らざるを得なくなるからだ。
明鏡止水の境地を修行しているシンにとって、それは効率が悪い。
「ーーいける。なら、後はやるだけだ!!」
瞳を大きく見開いて、シンは暗がりの中で、いまだ見えぬ出口の光さえも見通していた。
ーーーーーー
ミネルバの会議室で、アスランが切り出した作戦は、地元のゲリラ部隊との連携による地形の把握だった。
MSでは通ることさえできない狭路を、シンのインパルスならば、分離形態で突っ切って行ける。
敵のMAをひきつける役は、アスラン自身が行うと言っていた。
「ーーシン、作戦の成功はお前の腕にかかっている。
頼んだぞ」
「何を言ってるんですか、アスランさん」
アスランは目を丸めた。シンが呆れた表情を最前列の椅子から向けてくる。作戦に積極的なことは周到な予習内容から間違いない。ならば、シンなりに作戦の穴を見つけたのか。
アスランが身構える間に、シンが率直に言った。
「作戦の要は、参加するチーム全員でしょ?
誰が欠けてもできやしない。俺は、自分に与えられた役目をこなすだけ、ですよ」
「ーーシン」
「貴方が責任感強いのは、何となく話してて分かりました。けど、いつ如何なる時でも、自分を見失わない為には、自分を追い込むだけじゃダメです」
意外な核心をつかれ、アスランが息を呑む。長くザフト在籍しているアスランは、人一倍緊張が顔に出にくいよう訓練されている。つねに冷静沈着。クルーゼ隊にいたころも、こんな指摘は他人からされたことがない。
シンは不敵な笑みを浮かべ、放心しているアスランに告げた。
「ーー大丈夫。俺たちなら、やれますよ」
確信に満ちた一言だった。
胸のあたりが、ふっと温かく感じる。
アスランは困難な作戦前だというのに、珍しく眉間から力を抜けるのを自覚した。
「ーー不思議な奴だな。お前になら、任せておけばいい。
そんな気持ちにさせられたのは、初めてだ」
「ーーそれを、証明してみせますよ。貴方の前でね!」
自信に満ちた瞳は、慢心などしていない。
相手の戦力を知り、強敵だと判断したからこそ、シンは燃えている。
自分の力を、修行の成果を試したい、それもある。
だが、勝利しなければならないプレッシャーをも、シンは飲み込む。
不安はある。
恐れもある。
だが、自分達ならできる、それだけのことを自分やレイ、ルナマリアは学んだのだ。
この、筆舌に尽くしがたい能力を持つ青年から。
シンに目を向けられ、シュバルツは力強い目を返して頷いた。
「ーーいい気迫だ、シン。
ならば、この作戦。
私は手を貸さない。お前達だけでやり遂げてみせよ!!」
「「「ーーはい!!」」」
たったそれだけのことで、彼らには全てが通じている。
アスランをして、羨ましくなるほどの信頼関係が、シン達とシュバルツの間にはあるようだ。
( なるほど。
シンがはじめて会った時とは印象が全く違うのは、シュバルツに鍛えられたから、か)
師弟関係ーー、そう呼んで差し障りないだろう。
ならば彼らが、この僅かな期間にどれだけのことができるようになったかを見定めよう。
アスランは、1人頷いた。
ーーーーーー
レジスタンスの少女からの協力で得た、相手の戦力情報と兵器の配置。
それを頭に思い起こしながら、アスランとルナマリア、レイはミネルバの前方に配置された。
渓谷は、想像以上に深く、剣山のように天に伸びている。
更には、ジェットストライカーと呼ばれる空戦バックパックを装備した地球連合の量産型凡用MS、ダガーLが10機。
中央には、一際大きな岩の塊があり、その中腹をくり抜いた穴の中に巨大なローエングリン砲が配備されている。
その上空にはゲルズゲーと呼ばれる上半身がダガーで、下半身がクモのような姿をした問題のリフレクターを装備したMAが浮いている。
「タリア艦長、よろしくお願いします」
「ーー分かったわ。
タンホイザー起動! 目標、敵の陽電子砲!!」
アスランの言葉に、タリアがクルーに指示し、ゆっくりとミネルバの正面に取り付けられている砲門が口を開く。
「ーーアスラン隊長」
「なんだ、ルナマリア?」
「ーー私も援護していいですか? 考えがあるんです」
赤いザクからの通信に一瞬だけ眉根を寄せ、考えるもルナマリアは考えあってのことらしい。
どうするか思慮していると、タリアから指示が飛んだ。
「ルナマリア、見せてあげて。あなたとレイの力を」
その言葉に、ルナマリアは不敵な笑みを浮かべた。
「ーー了解です、敵からの砲撃と同時に撃ちぬきます!」
言いながら、オルトロスを構える。
ーーーー
地球連合ガルナハン基地の作戦会議室にて、もう幾度にもなるザフトの部隊の攻撃を退けた士官は、鼻で嘲笑しながらモニターに映る最新の戦艦ーーミネルバを見据えた。
「性懲りもなくまた現れたか、ザフトめがーー。
何度やっても無駄だ! ローエングリン照準!! 目標、敵ーーミネルバ!!」
連合士官の号令により、岩山の中腹に設置された巨大陽電子砲ーーローエグリンの砲塔に、赤と青の光が満ち溢れていく。
ーーーー
瞬間、敵からの砲撃ーー陽電子砲が発射された。
「ーーミネルバ、退避を!」
アスランが指示を出すより先に、ルナマリアがオルトロスを構える。
「ーーな、何を?」
アスランの疑問に応えるように、ルナマリアが引き金を引いた。
「ーー貫け、オルトロス!!」
凛とした声と同時に放たれる赤いビーム。
ズバァッ
それは、自身の倍以上の太さを誇る陽電子砲を中央から押し返して行く。
「ーーな、何だと!?」
いくらオルトロスが、MSの携帯用ビーム兵器でも強力な貫通力を持つとはいえ、あまりにも理不尽な現象だった。
戦艦の主砲にさえ使われている陽電子砲が、玩具のように押し返されていく。
しかし、敵のMAは光の菱形を幾重にも組んでシールドを展開し、オルトロスを防いだ。
バチィィッ
当然、オルトロスはかき消されるが、防ぎ切った衝撃で連合の最新MAゲルズゲーが、後方に仰け反った。
ーーーー
これに目を見開いたのは、連合軍の軍人たちだった。
「まさかーー。インド洋での噂は本当なのか?
ザムザザーを倒した理不尽な部隊と言うのはーー」
ただの噂だと思っていた。
ザムザザーの陽電子砲やリフレクタービームシールドを正面から破るMSのビーム砲があるなどとは。
「これが、ザフトのミネルバ隊なのかーーっ!」
敵の戦力を見誤ったことを理解した士官は、しかし気持ちを持ち直す。
このゲルズゲーは、ザムザザーよりも強力なシールドを展開できるのだ。
現に、ゲルズゲーは後方へ僅かに退いたが、ビーム自体は防ぎ切り、ザクのビーム砲から陽電子砲を守り抜いたのだから。
「だがーー、ここガルナハン基地は幾度も貴様らザフトの部隊を退けた堅牢な要塞だ。ここで、終わりにしてやる、ミネルバめ!!」
士官の言葉に、連合の軍人たちもうなずいた。
ーーーー
一方、最新型MAの態勢を崩すことに成功したルナマリアは、後方のミネルバに声を張り上げた。
「ーー今です、艦長!」
「てぇーーっ!!」
ルナマリアの言葉に、タリアが即座に対応し、タンホイザーが放たれた。
バギィィッ
今度の陽電子砲は、完全に衝撃までシャットアウトされる。
「ーーMAだから、態勢が崩れにくいってわけね」
ルナマリアが、瞳を細めながら、呟く。
2本足でない分、空中に居る相手の態勢を崩させるのは至難だ。
「ーールナマリア、今のは?」
ジッとゲルズゲーを見据えるルナマリアに、呆然としながら、アスランが問いかけた、
「ーー私だけじゃありませんよ、アスラン!」
ルナマリアが述べると同時に、岩山の陰からダガーが3機現れ、こちらにビームを放ってきた。
バチチチィッ
瞬間、彼らのビームは一機のザクが放ったビームライフルに押し返され、落とされていった。
「ーーレイも、なのか?」
「ーー明鏡止水。鏡の如く澄んだ心が、俺たちと機体に、限界を越えた力を与えてくれるんです」
かつて、SEEDを発動させたキラは、アークエンジェル級の戦艦の主砲をサーベルで切り払って見せた。
そのレベルの神業を、彼らは軽々とやってのけている。
「ーー自信があるわけだ。こいつらは、強い!」
先の大戦のエースであるアスランさえも唸らせる、赤と白のザク。
「ーーレイ、ルナマリア!
作戦を変更する!!」
急遽、アスランは自分の作っていたシナリオの変更を始めた。
「シンが来るまで粘るつもりだったが、やれる時はやるぞ!!」
アスランの興奮した言葉に、ルナマリアとレイが応える。
「その言葉を待ってました!」
「シンには悪いが、我々だけで終わらせましょう」
下手な指示はいらない、寧ろ連携するには邪魔になる。
アスランは、自分の中にあるSEEDを発動させた。
「ーーいくぞ! お前達がどれだけのものか、見せてもらう!!」
バーニアを一気にふかし、ダガーを3機切り捨てる。
その紅き流星のごとき動きに、ルナマリアが鋭く目を細めた。
「ーー動きが変わった?」
「先の大戦のエースが、本気になったか。ついてこれるか? ルナマリア」
「ーー忘れてた?
あたしの方が、あんたやシンより明鏡止水の境地に近いのよね!!」
瞬間、赤と白のザクは、白いオーラのようなものを全身に纏うと、アスランのセイバーに勝るとも劣らないスピードで、岩山を蹴り、一気に空中戦へと移行した。
紅と白と赤の機体が、縦横無尽に渓谷を駆け、ビームで落とし、サーベルやアクスで切り捨てる。
ゲルズゲーの盾がどの程度の強度かは、見抜いた。
リフレクターのはられた正面には無類の強さだがーーーー
「ーーそれ以外の所は、脆そうだな!!」
セイバーをMA形態で加速させて対象に急接近し、近距離の間合いに入ると加速を加えた状態でMS形態に変化させ、ビームサーベルを抜き放つ。
同時にルナマリアとレイのザクが、ビームライフルを放ち、ゲルズゲーの前面にリフレクターシールドを展開させた。
バシバシィッ
ビュゥウウンッ
リフレクターが展開されている脇の部分から、一気に切り掛かる。
ゲルズゲーが、こちらに気づき、右手に持ったビームライフルをこちらに向けようとするもーー
「ーー遅い!」
ズバァッ
右手のサーベルで、砲身を切り落とし、左手のサーベルを抜き様に、ゲルズゲーの胴に切り掛かる。
ガギィッ
しかし、リフレクターシールドの影響か、ゲルズゲーの胴をとらえたサーベルは出力を弱め、皮を斬る程度で、胴体を斬り裂くまでには至らない。
「ーークッ」
呻いて離れ、腰のビームキャノン2門を放つ。
バシィッ
正面に放たれた2門のビーム砲は、常時展開されているリフレクターに防がれる。
「ーーラミネート装甲も施されているのかっ」
サーベルでの斬撃が弱められた理由はリフレクターだけではない。表面の装甲にビームをはじく仕様のラミネート装甲が施されている。
アスランは接近戦から中距離戦の距離を保ちつつ、ゲルズゲーに攻撃を仕掛けていく。
その様を、周囲のダガー部隊を斬りおとしながら、ルナマリアは述べる。
「アスラン。明鏡止水じゃないのに、すごい反応速度ね。確かにエース、だわ」
「ああーー。セイバーのスペックをおそらくは限界以上に引き出している、だがーー」
「明鏡止水でないなら、自分の感覚をマシンに押し付けているだけ、になってしまう。だからーー」
二人は声を同時に合わせた。
「「マシンに無理をさせる分、フェイズシフトダウン(電池切れ)になる可能性が高い」」
大西洋での戦いで、連合に奪取されたアビスのパイロットがシンに告げた通りだ。
「隊長のフォローがいるな」
「ーーシンをおとなしく待つ? ないわね。むしろ、シンの間抜け面の方が見たいわ」
「同感だーー」
二機のザクはバーニアをふかし、空中を蹴るような動作で一気に手短な敵に接近すると手持ちのビームアクスで大上段から切り捨てた。
ーーーー
ミネルバのブリッジ内では、アーサーが拳を握りしめ興奮していた。
「艦長! レイもルナマリアもすごいじゃないですか!!」
「先の戦闘よりも動きに磨きがかかってる。もともと、成績優秀なエリートだけれど、シュバルツ殿の修行を受けた今となっては、充分にエースパイロットを名乗れるわね」
「すごいですね、シュバルツ殿!! あいつらをここまで鍛え上げられるなんて!!」
純粋なヒーローへの憧れを思わせる副官の言葉に、シュバルツはいつもどおり腕を組み背筋を伸ばしたまま、モニターを見据えて答える。
「何度も言うが、私はきっかけを与えたに過ぎない。真面目に修行に取り組み、資質を開花させたのは奴らの努力あってこそだ」
「それにしたって、切っ掛けだけでここまで段違いな動きにはならないわ。シンもレイも、ルナマリアも、いい意味で変わってきている。
礼を言います、シュバルツ・ブルーダー殿」
真摯な言葉に、シュバルツも腕組をやめ、タリアを振り返る。その彼の目を見据えながら、タリアは作戦行動中であるにもかかわらず、穏やかな表情でシュバルツに告げた
「できれば、あなたにはこのまま、この船に残ってもらいたいくらいだわ。このミネルバが解散するまでね」
その言葉を受け、かすかに目元を細めてシュバルツは返す。
「申し出はありがたいが、私にも先のことは分からん。
何より私やアスランには、やり遂げねばならぬこともある。
すまないな、艦長」
正直に申し訳なさそうに断るシュバルツに微笑み、タリアは言った。
「今は、それで構わないわーー。回答は保留しておいてちょうだい」
「う、うむーー」
覆面の奥で、やや答えづらそうにしているシュバルツを見て、なんとなく様子を伺っていたメイリンは、彼が微笑ましいように思えた。
ーーーー
ミネルバのブリッジ内でのやり取りをそっちのけで、基地攻略に勤しむ三機のMS。
臨機応変なコンビネーションで敵MAを惑わし、 三位一体での攻撃を繰り出し続けている。
今は防がれているが、三機のエースによる近接攻撃の波状斬撃は鋭く、防ぐだけでも精神が摩耗していく。
この攻撃を繰り返すだけで、そのうちにMAのパイロット達も集中力を切らし、やがて他のダガー達のように落とされていくだろう。
すでに、表に出ていたダガー部隊は、赤と白のザクにより、ほぼ壊滅している。
赤い可変機である目の前の敵を相手にしていただけなのに、いつの間にか周りの味方が落とされている事実に彼らーー地球連合軍の希望はリフレクターと呼ばれるMAの盾とローエングリンという槍しかなくなっていた。
「ーーまた来る!?」
しかし、MAのパイロットたちは、すでに恐慌状態に陥っていた。
このゲルズゲーもまた、ザムザザーと同じく福座敷の機体であり、三人のパイロットが必要になる。
「ち、畜生!!」
「なぶり殺しかよ!!」
空中に見えない壁でもあるかのようにバーニアを噴射させて、宙を蹴るような動作をした後、一気に二機のザクがゲルズゲーに左右から斬りかかった。
リフレクターを貼り、すれ違いざまに切り結んでいく二機を目で追おうとして、中距離正面上空に、あの可変機が位置し、貫通力の高い腰のビーム砲を放ってくる。
この可変機は、先の二機が斬撃を放った後、ビームサーベル二刀流と腰のビームキャノン2門を使い分けて波状攻撃にバリエーションをつけてくる。
「なんなんだ、こいつらのコンビネーションは!?」
連合の兵士達の戦意は、もはや風前の灯火だった。
ーーーーーー
攻撃を仕掛ける側にあるアスラン達にも、それは充分に分かった。
シンが予定ポイント到着まで、まだ充分に時間はある。
この期に乗じて叩けるならば、叩く。
万が一、倒せなくても今の状況ならば、シンが援軍に入れば確実にMAも、ローエングリン砲も落とせる。
先ほどから、苦し紛れに放たれようとしている陽電子砲は
ルナマリアのオルトロスで既に破られている。
「このまま、一気に押し切れるーー!」
アスランはそう呟くと、二機に通信を入れた。
「ーーレイ、ルナマリア!
一気に叩くぞ、遅れるなよ!!」
「ーー了解しました、アスラン」
「分かりました!!」
2人から即座に返事があり、3機は凄まじいスピードでMAに襲いかかった。
先ず白いザクファントムが、ゲルズゲーの頭上に跳躍し、右手のビームアクスを振りかぶると、袈裟懸けに切り落とした。
バギィッ
連合兵が毒付く
「ーークソッ、リフレクターがそんな攻撃で!!」
展開されたリフレクタービームシールドが、その一撃を当然防ぐ。
しかし、その陰から赤いザクウォリアーがビームアクスを片手に突っ込んできた。
「ーーくそ、何て連携だ!?」
連合兵が叫ぶのと同時に、赤いザクのルナマリアは、瞳を閉じ、意識を集中する。
右手のビームアクスの刃の部分に左手を添え、指先に至るまで、自分の体であると意識する。
同時に、ルナマリアのザクウォリアーの足元から、白い炎のような光が生じ、ザクが横薙ぎに払うと同時に螺旋を描いて上空へ立ち登る。
思い描くのは、疾風怒濤の一撃ーー。
「ーートルネード・アックス!!」
気合い一閃、黄金の斬閃が横薙ぎに引かれ、気付けば上空へと、ゲルズゲーを吹き飛ばしていた。
「「「ーーな、ナァニィ〜!?」」」
連合兵士達が、口を揃えて理不尽なまでの一撃に驚愕する中、弾き飛ばされた天頂にビームサーベルを二刀抜いたセイバーが、待ち構えている。
当然だが、今の一撃で、リフレクター発生装置は、破壊されてしまっている。
つまりは、完全な無防備ーー!
「な、何なんだ、この部隊はーー!?」
「化け物だらけじゃないかーー!?」
「コーディネイターは、ここまで強くなるのかよ!?」
悲鳴に近い言葉を発しながら、振りかぶられる左右のサーベルを見据える、連合兵達。
だが、要塞司令室は、千載一遇のチャンスだと、照準をセイバーに合わせていた。
「やはりな! あの3機の内、最後に攻撃を仕掛けてくるのは、空戦装備のある可変機だった。
今ならば、ゲルズゲーもこちらの射軸上にはない!!
ローエングリン砲、スタンバイ! 目標は敵の可変機だ!! 撃てェェエエ!!」
司令官の言葉通りに、青と赤の光を放つ光弾が砲塔に生まれる。
その時だった、索敵班からの声が上がる。
「ーー司令官、小型の熱源反応を感知しました!!」
同時に、小型戦闘機が、モニターに映し出された。
「ーー何だと? 渓谷の洞窟を抜けて来たのか!?
正気か、こいつら!!?」
司令室が慌てる中モニター上では、小型戦闘機を先頭に、3機の飛行物体が、洞窟から出ると、一機のMSに空中で合体した。
「ーー何だ、何なんだ、この部隊はああ!?」
機体は、砲戦仕様のブラストシルエットを装着したインパルスガンダムであった。
「ーーげ、迎撃しろ! 要塞の壁に取り付けた固定砲台の照準を全て奴に集中するんだ!!」
雨霰のように降り注ぐビーム砲に実弾兵器。それらを冷静な目で機体を微かに動かして避けながら、パイロットは目を見開いた。
「ーー5分! 目標タイムの半分だ!!」
パイロットのシンは、ブラストインパルスの腰に装備してあるオルトロスの改良型であるM2000F ケルベロス高エネルギー長射程ビーム砲2門を、敵のローエングリン砲に向けた。
「ーーそして、これで終わりだ!!」
ズドォッ
引き金を引かれ、2門の強烈なビーム砲は、見事にローエングリン砲を貫き、爆破した。
同時に、上空へ跳ね上げられた切り札のMAーーゲルズゲーもザフト可変型MSーーセイバーにより、四肢を断ち切られ、動力炉をショートされて完全に無力化した状態で、捕獲されていた。
それを確認した赤と白のザクは、限界を超えた互いの機体を支え合いながら、労いあった。
「ーー凄いじゃないか、ルナマリア!」
「ありがと、レイもね!」
この完璧な勝利に、彼らを含めたミネルバ隊は、湧いた。
一方ガルナハン基地作戦司令室にて、司令官は未だ呆然とモニターを見ている。
「ーーば、バカな。こうもアッサリと、このガルナハン基地が攻略されるなんて」
インパルスガンダムのパイロットから、通信が入る。
「ーーこちら、ザフト軍ミネルバ隊、シン・アスカ。
あんたらの戦力は完全に抑えた。大人しく投降してくれたら、命に危害は加えない。
レジスタンスにも、話は通してる。判断は、あんたらに任せる。ただし、抵抗するんなら、覚悟だけはしてくれ」
まだ、幼い子どもの声に、ブリッジは更に騒然となる。
「ーー我々は、あんな年端も行かない子どもに負けたのか……?」
呆然とする連合士官に、シンが声をかけた。
「子どもとか、大人とか、そんなの関係ないだろ。あんた達もーー、プライドや面子より命を大事にしなよ」
その真っ直ぐな目を向けられ、士官は苦笑を浮かべた。
「私の負けだな。君のようなエースに、情けをかけられ、且つ諭されるとは。
降伏する。
私は、この基地の司令官大佐のイー・パイルだ。全責任は私にある、部下への温情をお願いしたい」
「ーー了解です」
同時に、ガルナハン基地から、降伏の煙が打ち上げられ、レジスタンスと交戦していた白兵達も、銃を捨てて白旗を上げる。
ホッとシンが一息つこうとした時だった。
レジスタンスが、捕虜となった連合兵に銃口を突きつけ、ある者は殴りかかったのだ。
「ーーやめろぉぉおお!!!」
シンはスピーカーを張り上げて、岩壁を殴りつけ、見事にレジスタンスの動きをこちらに注目させて、停止させた。
「止めるな、こいつら連合に俺の妻と子が!!」
「そうだ、こいつらのせいで!!」
何名かの者から声が張り上げられ、憎しみと悲しみの入り混じった言葉がインパルスに集中する。
「わかるさ、肉親を奪われたあんたらの気持ちは。でもな!!
無抵抗の相手に、銃口を突きつけて、虐殺されたから、仕返して、それで何が変わるんだよ!?
あんたらのしてること、連合のしたことと、何が違うんだ!?
戦争をして、殺されたから殺すって感情で行動して、延々と繰り返すのかよ!!」
怒鳴りつけるシンの目には、純粋な涙が流れていた。そのあまりにも純粋なーー、温かな想いは、レジスタンスを、連合を止めていた。
「ーーシン。もういい」
アスランが、声をかけてきた。そちらを振り返ると、エネルギー切れで、フェイズシフトダウンを起こしながらも、勝利したセイバーが立っていた。
「シンの言うとおりだ!
これより誰であれ、無抵抗の命を奪う行為は、ザフトが禁ずる!!
捕虜は、全てミネルバ隊の指示に従ってもらうぞ!!」
アスランの言葉が響き、やがて捕虜を収監するために別のザフト部隊が派遣された。
誘導されていく、捕虜達を見ながら、シンはインパルスの中で涙を流す。
「ーーアスランさん」
「ーーなんだ、シン?」
「ーー貴方の言ってたこと、今ならわかります。でも、俺正しいことをしたんでしょうか?」
その言葉に、アスランが目を見開いた。
「シンーー」
「キラさんの言ってた自分が正しいのか分からないって悩んでたことも、今なら分かる。
憎しみは憎しみしか呼ばない。
でも、そんなの当たり前の話で。
肉親を目の前で奪われたり、自分の人生を狂わされてまで、何でその原因が、のうのうと生き延びてられるんだ、て。
そんな気持ちも、俺にはわかるんです」
モニターに映されたシンの表情は、泣き笑いだった。必死に堪えようとしながらも、泣いている。
「俺、何て言っていいのか、分からない。
復讐するな、なんて俺には言えない。でも! 無抵抗な人を目の前で死なせるのも、嫌なんだ。
その人達だって、喜んでしてた訳じゃないのにーー!!」
( 俺は、何て言えばいいんだ?)
アスランには、分かる。シンの苦しみも葛藤も、だからこそ言えない。
何故なら、自分も未だ苦しみ、悩んでいる答えだからだ。
シンの嗚咽が流れる中、アスランは、口を開いた。
「ーーシン。これだけは言わせてくれ。
お前は、何も、間違ってなどないーー!」
その言葉を聞いて、シンは目を大きく見開いた後、嗚咽を必死に噛み殺そうとしている。
作戦成功で湧いているミネルバ隊の皆の気持ちに水をさしてはいけない。
シンは、そう考えて涙を拭う。
「ーーシン」
そんなシンの思いを察して、アスランはそれ以上語りかけはしない。
難攻不落と言われたガルナハン基地が、僅か1時間に満たない時間で攻略された。
少年達の苦悩をよそに、ミネルバ隊の伝説は、既に始まっているーー。
みなさん、お待ちかね〜!
世界各国で、連合とザフトが凌ぎを削り合う中、オーブのカガリ隊の存在は、連合に強制され、虐殺される小国の希望になります。
オーブ国民だけでなく、世界からも評価され始めるカガリ隊に、ブルーコスモス盟主ロード・ジブリールから、ネオ・ロアノーク率いるガーティ・ルーに殲滅命令が下ります。
またシンの悩みと悲しみを感じ取ったシュバルツは、彼に言葉をかけるのです!
次回!
機動武道伝Gガンダム SEED Destiny 第31話に、レディー、ゴー!