新機動武闘伝 GガンダムSEED Destiny   作:カンナム

32 / 103

 L4コロニー「メンデル」

 悪魔の巣窟と化したその場所で、ラクス・クライン達は絶対絶命の危機を迎えます。

 そこに現れたのは、みなさんご存じのあの男!

 コロニー格闘技の覇者「キング・オブ・ハート」の称号を持つ最強のガンダムファイターと

 最強のガンダムの称号である「ガンダム・ザ・ガンダム」を冠するMF!!

 対するカードは、無限に迫りくる新たなるデスアーミー軍団。

 悪魔の兵団を前に、神の名を冠するガンダムは、どのようなファイトを見せてくれるのか!?

 それでは、ガンダムファイト!!

 レディイイ、ゴォオオオオオオ!!

第32話


第32話 括目せよ 最強のガンダム降臨

 

 

 キョウジが示した扉の向こうから現れたのは10個の球ころだった。

 

 

 

「ーー? これって、アスランの作ったハロ?」

 

 

 

 キラが球を一つ拾い上げ、見つめると緑色の球体はつぶらな瞳をキラに向け、両脇の羽のようなものを広げて挨拶した。

 

 

 

「ハロー、キラ! ハロハロ」

 

 

 

 やはり、アスランの作ったハロに見える。

 

 しかし、ハロはすべてラクスと共にいるはずだ。ならば、この緑色のハロたちはいったい?

 

 心なしか、大きさもアスランのものより大きい。

 

 アスランの作ったハロはハンドボールくらいの大きさだが、これはバスケットボール並の大きさだ。

 

 バルトフェルドが皆を代表して問いかける。

 

 

 

「キョウジ? こいつらは」

 

 

 

「ラクスのピンクちゃんを見せてもらって考えついた俺のハロだ」

 

 

 

 言いながら、右手をスッと差し出すとその掌の上に目のあったハロが一体飛び乗る。

 

 そして皆に向かって一礼した。

 

 

 

「ハロハロ! ヨロシク、ミンナ!!」

 

「「か、かわいい…っ!」」

 

 

 

 その様は愛らしく、カガリだけでなくマリューにもヒットしたようだ。

 

 

 

「いや、そうじゃなく。こんなマスコットロボットをどうするつもりだ?」

 

 

 

 トダカが思わずといった感じで二人にツッコミをいれてから、キョウジを見る。

 

 

 

「こいつは、ただのマスコットロボットじゃありませんよ、トダカ一佐」

 

 

 

 そのキョウジの言葉にバルトフェルドが目を見開いた。

 

「お、お前まさか…!! このマスコットロボットに霧発生装置のノウハウを!!?」

 

 

 

「もちろん。

 

 加えて、こいつらには自立支援型のOSを組み込んでるオートマタとしても使えるようにしている。

 

 せっかく、連合のウィンダムが手に入ったんだ。使わない手はない」

 

 

 

 キョウジの何気ない発言に皆がポカンとして口を開いた。

 

 

 

「敵のMSを捕獲できれば、この先俺たちの戦力は増していく。

 

 パイロット補充兵の代用にこいつらを使えるからね」

 

 

 

 霧発生装置、ジャミング磁場発生装置、盗聴用結界発生装置に加えて、MSを操作する自立支援型OS。

 

 

 

「もちろん、これだけじゃ世界と渡り合うには足りない。足りなすぎる」

 

 

 

「な!? まだなにを!!」

 

 

 

 もうそろそろ、この青年の異常さにも慣れてきたつもりであったが、今回の発明にまた度肝を抜かされてしまう。

 

 

 

「今から、シミュレートを行います。

 

 仮想敵として、連合から捕獲したウィンダムを3機使わせてもらいますよ。

 

 もちろん、この3機も俺たちの大事な戦力ですから、落とす訳にはいきませんがーー」

 

 

 

 言うと、キョウジは手早く、カタパルトデッキを操作し、予め設置されていたウィンダムをオーブ領海の外にまで飛ばす。

 

 

 

 次に、オーブ製の潜水艦が一隻出航する。

 

 モニターに写された艦内にいるのは会議室にいるハロ達とは別口のハロがいた。

 

 

 

「ど、どうするつもりなのーー?」

 

 

 

 マリューの言葉に、キョウジは静かに微笑むと腕を組んだ状態でモニターのハロ達に指示した。

 

 

 

「さあ、敵がきたぞ! オーブを守れ!!」

 

 

 

 領海域に先ほど飛ばされたウィンダム三機が戻ってきた。

 

 コクピットの中にはハロが鎮座している。

 

 

 

 潜水艦のハロ達は、敵として現れたウィンダム三機を確認すると、ブリッジにいるハロ達を残し、ハッチをあけてコロコロと海域に躍り出ていった。

 

 

 

 金属でできているはずのハロ達だが、前回のジャミング発生装置と同じように海面に浮かんでいる。

 

 

 

「ハロちゃんーー!」

 

「キョウジ、あんな可愛らしいのに、ひどいぞ!!」

 

 

 

 的外れな女性陣達の抗議の声に苦笑いを浮かべながらキョウジはモニターを見据える。

 

 

 

 前回と同じように霧がハロの両脇から発生し、ジャミングの磁場と盗聴結界を生み出すように見えた。

 

 

 

 ところが、今回のそれは海面に霧を発生させるのではないーー。

 

 

 

 はるか上空へと霧は上っていき、やがて黒い固まりとなって空の上で浮かぶ雲と化したのだ。

 

 

 

 ドーナツ状に雲はオーブの周囲100メートル外に展開。後はーー

 

 

 

「こ、これはーー! 雷雲!? 嵐を発生させた!!?」

 

「天候を操れるのは、わかっていたけど、こんな一方的な!!」

 

 

 

 海上の戦闘において天候は古今東西最も重要な要素の一つ。

 

 それをオーブ周辺だけとは言え、自由自在に操れることは、圧倒的なアドバンテージを持つことを意味する。

 

 

 

 案の定、あり得ないほどの落雷と雨、荒れ狂う波の前にオーブまでたどり着けるMSなどいない。

 

 

 

 仮に戦艦であったとしても、同じだろう。

 

 

 

「もっとも、万が一というのは何にでも起こり得る。だから、オーブが戦闘に巻き込まれた際は、すべての島をぐるりと囲えるバリアを作成しておきました」

 

 

 

 案の定、この男。

 

 念には念を入れて、というか。ほとんど攻略不可能な状況へ追いこんでおいて、まだ用意している。

 

 モニターに映し出されたのは、オーブの国土とも呼べる島々の外円に位置する島だ。

 

 そのわずか50メートル外の海域に赤色の長い筒がある。

 

 霧発生装置のそれよりも遙かに巨大な、それは直立不動で海面に立っていた。

 

 

 

「あ! あれは!!」

 

 

 

 キラが見覚えのあるソレに声を上げた。

 

 シャイニングガンダムの戦闘データで見た、それは陸海空の全てを遮断し、二重のバリアを作り出す。

 

 ランタオ島を取り囲んだMFでさえ抜け出せない強力な障壁。

 

 

 

「そう!

 

 俺の世界で作られたガンダムファイト決勝大会バトルロイヤルリング用に作成されたーー

 

 コーナーポストだ!」

 

 

 

 告げた瞬間、ピンク色のビームが三本、コーナーポストから延びる。

 

 それは、雷雲のさらに内にてオーブを取り囲み、つながる。

 

 

 

「これが、世界に喧嘩を売るための俺たちオーブの切り札だーー!」

 

 

 

 専主防衛の精神は、常にオーブ本国を守りながらの不利な戦いを強いられる。

 

 しかし、それを破って他国に侵略すれば、オーブの存在意義がない。

 

 無理を通すのならば、キョウジは容赦をする気はない。

 

 

 

「確実にオーブ本土はこれで、守れる。後は、俺たちが戦って勝てばいい。単純だろ?」

 

 

 

「この技術は、絶対にオーブ以外にはもらせねえな。この技術を巡って戦争が激化する方向にもなりかねない」

 

 

 

 キョウジの言葉にバルトフェルドは苦虫を噛み潰したような表情だ。

 

 

 

「アスハの部隊ーーそれも、あなた方にだからこその種明かしです。

 

 お気になさらず」

 

 

 

「信用してくれるのは、ありがたいがね」

 

 

 

「そもそも、この作戦は作戦とさえ言えません。無理を通さねばならない時点で、普通のやり方ではどうにもならない」

 

 

 

 キョウジの言葉は言外にこうも言える、オーブの理念を貫き国と民を守るのならば、これぐらいでなければできない、と。

 

 それを感じたキラはあっけに取られていた自身を恥じ、強い目でキョウジを見据えた。

 

 

 

「次に来るのは連合の本気の艦隊ですね。それらを相手に、僕たちは一機も落とされることなくーー」

 

 

 

「そうだ。最初から最後まで変わらない。やることは単純だ。敵を完膚無きまでに倒し、自分たちの力を見せつける」

 

 

 

「ーーはい」

 

 

 

 キョウジの言葉に、キラは強い瞳でうなずいた。

 

 

 

ーーーーーー

 

 

 

 オーブに協力的なスカンジナビア王国の手を借り、宇宙に上がったラクス・クラインは自身の専用艦ーーエターナルを拠点とした。

 

 彼女は、宇宙に上がって早速自身を支持するクライン派と接触し、宇宙の情勢を確認していく。

 

 その中で、気になる言葉を聞くのであった。

 

 

 

「ーー? デュランダル議長が、巨大なMAの残骸を回収した?」

 

 

 

「それだけでは、ありません。遺伝子研究のメッカとされているメンデルに立ち寄り、奇妙な研究を行っているとか」

 

 

 

「十年以上も活動を停止しているはずのL4コロニーで研究ーー?」

 

 

 

 技師長の言葉に眉間にしわをよせ、ラクスはL4コロニーへ向かうことを決意した。

 

 

 

「ダコスタさん、よろしくお願いいたします」

 

 

 

「やれやれ、危険だから待っていてください、と言っても聞いてくれないんでしょうね」

 

 

 

 赤茶色の髪を短く刈り込んだ褐色の青年、マーチン・ダコスタは、ため息をつきながらエターナルの舵をL4コロニーメンデルへと向けた

 

 

 

 モニターのクライン派の男性からさらに情報が寄せられる。

 

 

 

「やはり、ラクス様を行かせるのは反対です。

 

 メンデルに潜入しようとした私の同胞達が全て謎の失踪をしています。

 

 MSを使う傭兵団に頼んだこともありましたが、連合の核部隊を退けた謎のガンダムタイプに殲滅させられました」

 

 

 

「神出鬼没の悪魔の手先にして、神の姿を模した機体ーーですか」

 

 

 

「ーーは?」

 

 

 

 ラクスのつぶやきに、皆が彼女を見据えるが、彼女は何でもないと首を横に振り、微笑みかけた。

 

 

 

「ありがとうございます、技師長。

 

 ですが、わたくしもまた、やるべきことを見つけたのです。行かせてくださいな」

 

 

 

「ーーご武運を」

 

 

 

「はいーー」

 

 

 

 モニターの男に、ラクスは静かに微笑み返した。

 

 

 

 

 

 メンデルーー

 

 

 

 かつて遺伝子工学のメッカとされ、多くの命が犠牲となってできあがったコロニー。

 

 

 

 その宙域に差し掛かり、ラクスは己の勘で船を止めた。

 

 

 

「ラクス様ーー?」

 

 

 

 ダコスタが意味が分からず、問いかけるとラクスは鋭い瞳をモニターに映る隕石のデブリ帯を見据える。

 

 

 

ビシュンッ

 

 

 

 中から一筋のビームがエターナルに向かって放たれてきた。

 

 

 

「ーーダコスタさん!」

 

「了解です!!」

 

 

 

ラクスの言葉に返しながら、ダコスタはエターナルの舵を握り、一気に加速させた。

 

 

 

高速艦の中でも、特別なエターナルは、初速から一気に最大速度でデブリ帯に突っ込み、無数のビームライフルをやり過ごす。

 

 

 

同時にデブリを利用して、敵の砲撃から身を隠しつつ、エターナルのスピードを使って、一気にメンデルへと向かう。

 

 

 

「このまま、メンデルのドックに向かいます!

 

しっかり捕まっていてください、ラクス様!!」

 

 

 

「ーーわかりました」

 

 

 

ダコスタの言葉に頷きながら、モニターに映るメンデルをみすえる。

 

 

 

後方から、デブリを同じように加速して抜けてきた敵のMSが、ビームライフルを放ってくる。

 

 

 

「ーーあれは、この間の機体と似て非なる。

 

ゲイツRを改修して、機体を模しているーー」

 

 

 

ラクスが静かに後方から迫る機体を観察する。

 

 

 

エターナルが、進む先に次々と光の粒子が現れ、ゲイツを基にしたガンダムタイプが、無限に湧いて出てくる。

 

 

 

「ーーなんなんだ、こいつら!?

 

無限に出てくるのか!?」

 

 

 

「ーーこの力、デビルガンダム三大理論の一つ、自己増殖に他なりません。デスアーミーと呼ばれた機体が、無限に出て来るのを記録映像で見ました」

 

 

 

「じゃあ、このガンダムタイプは!!」

 

 

 

ダコスタの言葉に頷きながら、ラクスは前を見据える

 

 

 

「ーーデスアーミーの進化型でしょう。

 

ゲイツを基にして、自分を倒した機体に似せ、手先にする。デビルガンダムとは、人間の思考に近いのかもしれません」

 

 

 

ズドォォンッ

 

 

 

無数のビームライフルをかわしながら、エターナルはメンデルのドックに無理矢理突っ込んだ。

 

 

 

「ーーなんとか、着艦できましたね」

 

 

 

「プラントの中までは追ってこない?

 

ユニウスセブン攻略で得たジュール隊長の報告どおりですね」

 

 

 

「なんで、このメンデルを守っていたんでしょう?」

 

 

 

「ーー分かりません。ですが、わたくしが見た記録なら、デビルガンダムは、このメンデルを拠点にしていると推察できます」

 

 

 

「ちょっと信じられませんね。機体が、プラントを吸収するなんてーー」

 

 

 

「ーーええ。わたくしも、映像を見ていなければ、信じられなかったと思いますわ」

 

 

 

ラクスの言葉に、ダコスタはゴクリと生唾を飲み込むと、銃火器を装備した。

 

 

 

こうして、2人はメンデル内へと足を踏み入れることに成功したのだ。

 

 

 

かれらが、其処で見たものは、本来ならば稼働しているはずのない研究所に電気が通り、明々と辺りを照らしている事実だった。

 

 

 

破棄されたはずの施設は復元され、破壊されたはずの機器が動いている。

 

 

 

人体培養カプセルが稼働し、中にはデビルガンダムのユニットになっていた、赤い髪の青年がいる。

 

 

 

「ーーこれは、何という!!」

 

 

 

ラクスをして、絶句する。

 

 

 

至る所に置かれた培養カプセルの中には、Dと同じ姿をした者が瞳を閉じて眠っている。

 

 

 

「ーー侵入者、発見」

 

 

 

「排除、する」

 

 

 

ラクス達が声の聞こえた方を見ると、緑のザフト軍の服を着た赤い髪の青年達がこちらを見て、腰のマシンガンの銃口を向けてきた。

 

 

 

「ーークローンがもう稼働しているのか!?」

 

 

 

「DG細胞による、クローン戦士。しかも、ドモンさんを模している。危険極まりないですわね」

 

 

 

バババババッ

 

 

 

物陰に隠れ、マシンガンの弾をやり過ごすも、次々とクローンが現れ、敵の包囲網が増えていく。

 

 

 

「ーーこれは、まずいですね!

 

ラクス様、少々手荒にいきますよ!!」

 

 

 

「ーーやむを得ませんわね」

 

 

 

自分の言葉に、ラクスが頷いたのを確認すると、ダコスタは胸に入れていた手榴弾のピンを抜き、敵に向かって投げつける。

 

 

 

ズドォンッ

 

 

 

爆発が起こり、煙に紛れて、その場から離れる。

 

 

 

研究所を出る際、移動用に用意したホバートラックに乗り込み、ダコスタは、エターナルのあるドックへと走らせる。

 

 

 

その後方から、まるで幽鬼もしくは操り人形のようにユラユラと左右に揺れながら、クローンが追いかけてきた。

 

 

 

彼らは、一斉に右手を掲げると、ピシィッとフィンガースナップを一つ鳴らした。

 

 

 

「ーーなんだ? 何をするつもりなんだ?」

 

 

 

眉を寄せ、不思議そうにクローン達の様子をルームミラーで確認するダコスタ。

 

その横でラクスが顔面を蒼白にした。

 

 

 

「ダコスタさん、危ない!!」

 

 

 

「ーーえ? うわあ!?」

 

 

 

ラクスの言葉に前を見れば、前方にエターナルを襲ったゲイツを基にしたガンダムタイプが、現れたのだ。

 

 

 

シールドの先端からビームサーベルを抜き、こちらへと振り下ろしてくる。

 

 

 

「ーーくそ!!」

 

 

 

間一髪のところで、斬撃を避けるも、発生した衝撃でホバートラックは、横倒れしてしまい、咄嗟にラクスを抱えてダコスタは、メンデルの砂漠と化した大地に倒れこんだ。

 

 

 

その脇では、倒されたトラックが爆発している。

 

 

 

「油断したか!」

 

 

 

後方から、次々とガンダムタイプが現れ、ダコスタとラクスを取り囲む。

 

 

 

見れば、クローンがフィンガースナップを鳴らすと銀色の光の粒子が彼らを包み込み、ガンダムタイプが現れるのだ。

 

 

 

「ーー万事休す、か」

 

 

 

「諦めては、なりません! 最後まで!!」

 

 

 

ダコスタが、冷や汗を流しながら言うと、ラクスが強い瞳を持って言う。

 

 

 

「わたくし達は、此処で果てる訳にはいきません。

 

最後まで、抗わなければならぬのです!!」

 

 

 

ラクスの強い言葉に面食らった表情をするダコスタ。その前には、無数のガンダムタイプが、迫って来ていた。

 

 

 

ーーーー

 

 

 

 

 

 その様子を、一人の男が広いモニター越しに見ている。

 

 

 

「案外、あっけない終わり方だったな、ラクス嬢」

 

 

 

 男の名は、ギルバート・デュランダル。彼は、チェスに使うポーンの駒を一つ手に取り、盤の上に置いた。

 

 

 

 そのチェス盤を思わせる升目が刻まれた卓には、メンデル内の地形がそのまま描かれている。

 

 

 

 モニターと地図盤を確認しながら、デュランダルは次々とポーンを配置していく。ラクス達が逃げる方に逃げる方に向かって行動させる。

 

 

 

 ガンダムタイプの中でも、ポーンと呼ばれるゲイツRを基にして作られた機体は、理論上メンデル内の物資がある限り無限に増殖できる。

 

 

 

 パイロットもDG細胞があれば、クローン技術を使って増やすなど造作もない。

 

 

 

 デュランダルは、あえて自分の過去の論文をメンデルの研究施設に置いてきた。

 

 

 

 仮に、ラクス・クラインがここで死なない「運命」ならば、彼女にもぜひ知っておいてもらいたかったのだ。

 

 

 

 おそらく、彼女はこちらの考えを否定し、敵対行動に出るだろう。そのためのミーア・キャンベルだ。

 

 

 

 しかし、SEEDを持つ彼女の命運がここで終わるのも、むなしい。

 

 

 

 ギルバート・デュランダルは、純粋に知りたかった。人間の限界を。

 

 

 

 人間の可能性を。

 

 

 

 それは、かつての彼では考えられない思考だ。

 

 

 

 自分が、人間から変化したがための、つまらない感傷だと感じてはいる。

 

 

 

 それでも、デュランダルは知りたいのだ。

 

 

 

 自身の主となったガンダムが見た、人間の可能性をーー。

 

 

 

 そして、追い詰められたラクス達を改めてみたとき、変化が起こった。

 

 

 

「? これはーー?」

 

 

 

 ラクス達の目の前に壁となるように、太陽を思わせる赤い炎を纏った黄金の光の球が現れたのだ。

 

 

 

「ーーまさか!!」

 

 

 

 ギルバート・デュランダルをして、それは予測の範囲外。運命ーーこれがSEEDの因子を持つ者の。

 

 

 

 デュランダルは、モニターの前で人知れず、恍惚とした笑みを浮かべた。

 

 

 

 その神々しい光の球を見ながら。

 

 

 

 

 

ーーーー

 

 

 

 

 

 変化は、唐突だった。

 

 

 

 ラクスがあきらめずに何とか逃げる算段を頭の中で計算していると、彼女たちの目の前の地面に巨大な赤い光の円が描かれたのだ。

 

 

 

 その円の中には、トランプのハートのキングを思わせる絵が光で描かれている。

 

 

 

「な、なんだ!?」

 

 

 

「これはーー、キング・オブ・ハート!?」

 

 

 

 ダコスタが驚く中、ラクスが瞳を大きく見開きながらも、興奮で頬を赤くする。

 

 

 

 次の瞬間、ラクスの予想通り、紅蓮の炎を纏った黄金に輝く光の球が、現れ圧倒的な輝きの粒子を放つ。

 

 

 

 光の中から、男の声が響き渡る。

 

 

 

「出ろぉおおお、ガンダァアアアアアムッ!!!」

 

 

 

ピシィィィインッ

 

 

 

 指の鳴らす音が響き渡り、炎の竜巻が起こる。

 

 

 

 それらが晴れると、同時に両腕を組んだトリコロールのガンダムが姿を現した。

 

 

 

 背中に、六枚の羽根のような板状のものを背負い、白を基調とした仏像を思わせる。

 

 

 

 ラクスが記録で見た雄姿と寸分たがわぬ、圧倒的な存在感。

 

 

 

「ーーゴッド、ガンダム。なぜーー?」

 

 

 

 呆然と見据えるラクス。ダコスタは目の前に敵の親玉のような機体が現れたことに、舌打ちする。

 

 

 

「クソ、この期に及んで隊長機か!!」

 

 

 

 バズーカを構えるダコスタをラクスが止める。

 

 

 

「ラクスさま?」

 

 

 

「答えて、答えてくださいましっ!! あなたが、何故この世界にーー!?」

 

 

 

 声を張り上げ、ラクスは自分たちに背を向けている機体に問いを投げかける。

 

 

 

 すると彼はーー微かに顔をこちらに振り返って告げた。

 

 

 

「俺が来たからには、もう安心だ。これ以上、この紛い物たちに好きにはさせん」

 

 

 

「あなたなのですか!? キング・オブ・ハート、ドモン・カッシュさん!?」

 

 

 

 頼りがいのある不敵な笑みを浮かべて、紅い鉢巻を絞めた左の頬に十字傷のある黒髪の青年は叫ぶ。

 

 

 

「ーー風雲再起!!」

 

 

 

ヒヒィィンッ

 

 

 

ーーパカラッ パカラッ

 

 

 

 ドモンの呼びかけに答え、どこからともなく、白い馬がラクス達の前に駆け寄ってきた。

 

 

 

「話はあとだ。こいつらは、俺に任せろ。頼むぞ、風雲再起!! 彼女は兄さんたちの恩人なんだ」

 

 

 

 最後の言葉は、白い馬に向かって投げかけられている。

 

 

 

 それを理解し、ラクスは声を張り上げた。

 

 

 

「ドモンさん! なぜ、わたくしたちのことを!?」 

 

 

 

 当然の疑問だった。

 

 

 

 なぜ、記録映像を見たわけでもないのに、この人は自分とキョウジさんやシュバルツさんの関係を知っているのだろう、と。

 

 

 

「シャイニングガンダムが、俺とゴッドガンダムに教えてくれていたんだ」

 

 

 

「そんな、そんなことがーー!?」

 

 

 

 異世界の壁を越えて、彼らは繋がっているというのか。

 

 

 

 その事実に、ラクスが呆然としていると

 

 

 

ヒヒィィンッ

 

 

 

 目の前の白い馬がラクスとダコスタに背を預けてきた。

 

 

 

「今は、逃げろ。後で必ず俺も行く」

 

 

 

「はい。--ドモンさん、ご無事で」

 

 

 

「安心しろ、兄さんとシュバルツを連れて帰るまで、俺は誰にも負けん!!」

 

 

 

 風雲再起にまたがり、ダコスタとラクスが、一気にその場を去る。

 

 

 

「デビルガンダムのデスアーミーか。

 

 このゴッドガンダムを真似ているようだが、紛い物では俺の相手は務まらん。

 

 みんなまとめて、叩き潰してやる!!」

 

 

 

 逃げるラクス達を追いかけようとポーンが一斉にビームライフルを構えて、放つ。

 

 

 

ーーしかし。

 

 

 

 

 

 ズバァッ

 

 

 

 無数のビームは、ゴッドガンダムの居合切りの衝撃ですべて切り落とされてしまった。

 

 

 

 感情の無いはずのクローンたちでさえ、目を見開く。

 

 

 

「言ったはずだ。お前たちでは、相手にならないとな!!」

 

 

 

 ビームサーベルを一振り抜き放って八双に構え、ドモン・カッシュは宣言した。

 

 

 

「ガンダムファイト! レディイイ、ゴォオオオオオオ!!」 

 

 

 

 

 

 

 

 




 みなさん、お待ちかね~!

 ついにC・Eの世界に現れたドモン・カッシュとゴッドガンダム。

 彼と共にラクスは、プラント最高評議会ギルバート・デュランダルの企みを知るのです!

 一方、オーブは再三にわたる連合艦隊の侵攻を、局地的な嵐によって防ぎ続けていました。

 そんな中、この嵐の発生に興味を持った東方不敗マスター・アジアが、自身の弟子達を伴い、オーブに攻撃を仕掛けるではありませんか!!

 次回、機動武道伝GガンダムSEED Destiny 第33話に

 レディー、ゴー!!

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。