新機動武闘伝 GガンダムSEED Destiny   作:カンナム

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 ついに現れた我らがキング・オブ・ハート、ドモン・カッシュ。

 4年間の修行で身に着けた彼の実力は、一体いかなるものなのか?

 一方、地球ではオーブにいるキョウジとファントムペインにいるマスターとの争いが、避けられない状況にまで来ていました。
 
 はたして、どうなることやらーー?

 それでは!

 ガンダムファイト、レディー! ゴォーー!!





第33話 最強 その名はゴッドガンダム

 

ドガァッ

 

 

 

炸裂音が響き渡り、海面に飛沫を上げて、巨大な角と赤い羽を持つ黒いガンダムが後退する。

 

 

 

無造作にして強力な右拳を放ったのは、白を基調としたトリコロールの仏像を思わせる丸みのある顔をしたガンダム。

 

 

 

強烈な一撃に、マスターガンダムをしてガードせざるを得なかったほどだ。

 

 

 

それほどの一撃を放った相手は、先ほどまでとは別人のようなーー恐ろしい形相でマスターアジアを睨み据えていた。

 

 

 

男の両の目から放たれているのは、純粋にして強烈な殺気だーー。

 

 

 

意志の弱いものが目を合わせれば、それだけで気絶するか、最悪命を奪われてしまう程の殺意。

 

 

 

その口元には、三日月を思わせるような鋭い笑みが浮かんでいる。

 

 

 

「この威力にして、この殺意。できる!

 

デビルガンダムか?

 

いや、違うーー。貴様、何者!?」

 

 

 

マスターアジアが、目の前の男を睨みつける。対して、男は静かに返した。

 

 

 

「俺は、キョウジだ。母を討たれ、父を貶められ、悪魔を生み出し、弟に辛き役割をさせるしかなかったーー。

 

無力な俺を憎む俺自身だ!!」

 

 

 

「なんだと?

 

ならば、貴様は、キョウジ・カッシュそのものだと、自身の非力を嘆き、憎み、デビルガンダムの力と意志をその身に取り込んだキョウジだと言うのか!?」

 

 

 

シャイニングガンダムは、ゴッドガンダムに瓜二つになったその顔をマスターガンダムに向け、右拳を握ると、その目から、涙を流す。

 

 

 

「ーーむう、キョウジよ」

 

 

 

 そのキョウジの姿にマスターアジアをして思わず唸るほどの悲しみが伝わってくる。

 

 

 

「……俺は、無力だった。

 

母さんを殺されて、父さんを囚われて、逃げるしかない自分を責めた。

 

 父を貶めたミカムラ博士への恨み、母を殺めたウルベへの憎悪が、アルティメットを悪魔(オレ)へと変えた。

 

しかし、弟に涙を流させながら、それでも……俺を討たせなければならなかったキョウジ(人間)の怒りと嘆きがーー。

 

ドモンの涙が、俺とキョウジを一つにさせたのだ」

 

キョウジは、強き意思を目に宿し、言う

 

 

 

「二度と誰かに繰り返させはしない。

 

こんな、こんな悲劇は!!

 

 こんな思いは、俺たちだけで、十分だ!!」

 

 

 

シャイニングガンダムが、その瞳から涙を流しながら、明鏡止水の境地に達し、肩や足、腕を展開させて、黄金のハイパーモードに変身した。

 

 

 

「マスターガンダム、いや。マスターアジアよ。

 

オーブを討つと言うのなら、この俺を殺しに来い!!

 

その方が俺も遠慮がいらん!!」

 

 

 

強烈な殺意を纏い、明鏡止水の境地に達する二律背反ーー。

 

 目の前の男は、恐ろしいまでに、荒々しく、猛々しく、そして気高い。

 

 

 

「ーー面白い。

 

シュバルツ以外で、ワシが全力を出す価値のある相手がおったか。

 

ならば、キョウジよ。

 

 貴様の全てをワシにぶつけて来るがいい!!

 

 そして見事、我が流派を体得して見せよ、我が愛弟子ドモン・カッシュの兄よ!!」

 

 

 

マスターガンダムも羽を広げ、黄金のハイパーモードに変身した。両のガンダムは、黄金の気柱を立て、オーブ近海で激突するーー。

 

 

 

ーーーーーー

 

 

 

時は少し遡る。

 

 

 

L4コロニーに現れたゴッドガンダムは、自身を模倣して作られたガンダムタイプのデスアーミーの軍団をなぎ倒していた。

 

 

 

バキバキバキィッ

 

 

 

拳と蹴り、ピームサーベルを組み合わせるだけで、瞬く間に撃破していく。

 

 

 

 それもそのはず、ゴッドガンダムの一撃は、デスアーミーを5~6体まとめて叩き潰していくのだ。

 

 

 

無数のビームライフルの銃口が向けられ、引き金が引かれるより遥かに早くゴッドガンダムは左右にジグザグに動き、的を絞らせない。

 

 

 

「ゴッドスラッシュタイフーン!!」

 

 

 

ギィュウウンッ

 

 

 

腰のビームサーベルを一振り、横薙ぎに両手持ちで構え、機体をコマのように回転させて、自身を竜巻のように変化させると、一気に周囲の敵を薙ぎ払いながら移動する。

 

 

 

ズバババァッ

 

 

 

 切り裂かれたデスアーミーいや、デスポーンは次々と爆発していく。

 

 

 

 その数は、50は下らない。

 

 

 

 一気に半数近くを持って行ったゴッドガンダムの周囲に、それ以上の数の光の粒子が現れる。

 

 

 

「……なるほど。敵の狙いは、こちらの消耗か。キング・オブ・ハートを甘く見るな!!」

 

 

 

 気合を入れ、ゴッドガンダムが疾駆する。

 

 

 

ーーーーーー

 

 

 

新しいデスアーミーの増援が現れるよりも早く、次々と機体を葬っていくドモン。

 

 

 

 その殲滅速度は、正に脅威的としか言いようがない。

 

 

 

「強いーー。

 

 無限に増殖する私のデスポーン部隊が出現するよりも、彼の殲滅速度の方が遥かに早い」

 

 

 

 盤上の駒が次々と撃破されていくのを目の当たりにしながら、デュランダルはさらに駒を打ち込んでいく。

 

 

 

 敵は一機、ならばと囲んでの飽和攻撃を仕掛けるポーン隊。

 

 

 

 しかし、ゴッドガンダムはバーニアを展開すらせずに、その場から脚力だけで人の目に映らない高速移動を行い、あっさりと包囲の外へと出る。

 

 

 

「ガンダムファイターに、常識は通じない、か。

 

 しかし、この世界の標準的なMSより小型ではあるものの、どう少なく見積もっても16メートルは越えている巨体が目の前から突然消えるとはーー。

 

 タリアからのガンダムファイトの映像を見た後とは言え、これほどまでのものか。

 

 並みの部隊では手が付けられんなーー」

 

 

 

 驚愕しながらも、デュランダルはポーンを打ち込む手を休めない。

 

 

 

 ポーン以外の駒を用意しようかとも思ったが、どの道これほどの差のある相手には、サトー達のナイトクラスを用意させても相手にはならないだろう。

 

 

 

「敵の射撃武器は肩のイーゲルシュテルン以外、一切ない。動きは拳法と剣術を主体にしている。MSの武装としてはあまりに貧弱なものだがーー」

 

 

 

 遠距離からのビームライフルの狙撃はすでに試したが、案の定当たらない。

 

 

 

 ライフルを撃った次の瞬間に目の前にゴッドガンダムが現れ、首をあっさりともぎ取る強烈な拳を食らう。

 

 

 

 盾を構えて受け流そうにも、盾ごと上空に弾き飛ばされるか、後方へ吹っ飛ばされる。

 

 

 

「MFとMSは根本的な性能が違う、か。確かにそのようだ」

 

 

 

 自分の手元にあるポーンを錬成する駒の数を確認しながら、デュランダルはゴッドガンダムとドモン・カッシュのデータをポーンに頭に叩き込み、駒を動かす。

 

 

 

「機体性能は確かに雲泥の差だ。

 

 しかし、チェスを模したこの「デビルズ・サンクチュアリ(魔の聖域)」を使用して私が負けることなど、あり得ない」

 

 

 

 ドモン・カッシュの動き、癖を覚えながらデュランダルは駒を動かす。

 

 

 

「D--、今なら君の言っていたことが分かる。

 

 この男、本当に手ごわい。こちらの狙いを正確に把握し、行動しているーー」

 

 

 

 モニター上では、ドモンはデュランダルの狙いを先に読み、目の前の敵ではなく、後方や物陰に出現させたポーンへと一足飛びで距離を詰め、つぶしていく。

 

 

 

 攻撃の起点となるはずだった機体は、上空からの唐竹割りに真っ二つにされる。

 

 

 

 独りつぶやくデュランダルだが、その口元は楽し気にゆがめられている。

 

 

 

「はじめてだよ。

 

 私がチェス盤を模したゲームでここまでてこずらされているのは」

 

 

 

 デュランダルは笑う。

 

 

 

 普通に戦えば勝てない、この戦いはすでに数など問題ではない。

 

 

 

 まともな集団戦法の運用の仕方では、まず通じない。

 

 

 

 かと言って、犠牲を無視して突っ込ませても、クローンやポーンの錬成速度よりも、たった一機のガンダムの殲滅速度の方が明らかに早い。

 

 

 

「楽しいじゃないか、キング・オブ・ハートーー!」

 

 

 

 はじめは純粋な力比べを行っていたドモンとデュランダルの戦いは、超高レベルな読みあいへと変化していったーー。

 

 

 

 デュランダルは目の役割を果たすポーンを一機生み出し、ポーンの群れをより正確に指揮して、ゴッドガンダムに向かわせる。

 

 

 

 もはや、逃がしたラクス・クラインなどどうでもよい。

 

 

 

 目の前の敵は、自分のすべてを受け止め、返してくる。この至福の時を、デュランダルは大いに楽しんでいた。

 

 

 

ーーーーーー

 

 

 

 一方、敵を殲滅するスピードをまるで落とさないドモンであったが、敵の動きに何者かの指示があることをすでに理解していた。   

 

 

 

「このガンダム擬きどもの動き、誰かが俺の動きとこのコロニー全体を把握した上で指示しているのか。

 

 ということは、そいつが何者かは知らんが、デビルガンダムの手先であることに間違いはないな」

 

 

 

 ドモンの目の前に3体のポーンが召喚され、ビームライフルを構える。

 

 

 

 しかし、ドモンはそれらにはまるで取り合わず、明後日の方向に顔を向けると、一気にダッシュした。

 

 

 

「はぁあああ、とぉおりゃぁああ!!」

 

 

 

 右腰の柄に手を触れ、交差気味に抜刀し切り捨てる。

 

 

 

 そこにいたのは、1体のポーン。

 

 

 

 ドモンは正確に、敵の陣頭指揮をしている機体を把握し、切り捨てていく。

 

 

 

「別の機体に”目“が移ったかーー。頭はおそらく、この場にいない」

 

 

 

 無数に現れるポーンの中から、正確に敵の目の役割を果たす者を見つけ、切り捨てる。

 

 

 

 MSの配置、自分の位置、周囲全てに感覚を研ぎ澄ませるドモン。

 

 

 

 むろん、それだけでは目の役を当てることなどできない。

 

 

 

 最後に必要なものは、地形やMSの配置、自分の位置から判断する読みだ。

 

 

 

「敵も中々手ごわい配置をしてくる、俺の動きを見て研究している最中ってところかーー。ん? お姫様達はどうやら無事に自分の船にたどり着いたようだな」

 

 

 

 敵の動きを把握しながら、ドモンはラクス達が無事に自分の船にたどり着いたことを気配で感じ取る。

 

 

 

『--ドモンさん! こちらエターナル、ラクス・クラインです!

 

 聞こえますか?』

 

 

 

 間髪入れず、ゴッドガンダムに通信が入ってきた。

 

 

 

「ああ、聞こえてる。無事に船に着いたみたいだな」

 

 

 

 モニター越しにピンクの髪をした少女が現れた。彼女とその付き人は、一瞬あっけに取られたような表情をしている。

 

 

 

 ドモンはその理由に気付いていないが、モニター越しにゴッドガンダムが倒した無数のポーンの残骸が見えたのだ。

 

 

 

 ドモンは会話しながらも手を休めることはなく、敵の目の役割をする者を見抜き、つぶしていく。ポーンがまた一機爆発し、その光景を見て、ラクスが戦闘中であることを思い出し、切り出す。

 

 

 

『--ドモンさん、こちらでのわたくし達の作業は終わりました。

 

 エターナルに合流してください、脱出します!』

 

 

 

「そうかーー。

 

 なら、こいつらには。

 

 とっとと、ご退場願おうか!」

 

 

 

『--え?』

 

 

 

 通信で目を丸くしているラクスを無視し、ドモンは静かに瞳を閉じる。

 

 

 

 手に持ったビームサーベルを両手持ちで正眼に構えるとーーーー。

 

 

 

シュゥウウウウウンッ

 

 

 

 サーベルは太さと長さを増していく。

 

 

 

 ゴッドガンダムの背中の6枚の板が展開し、日輪を思わせる光の輪を形成した。

 

 

 

「ーー爆ぁああく熱っ、ゴォッドスラァアアアアッシュぅうう!!」

 

 

 

 コロニーの内壁にまで達する長さに、モビルスーツ胴3体はあろうかという、太さになった巨大なビームサーベルを形成したのち、ドモンは更に普通のビームサーベルのサイズにエネルギーを凝縮していく。

 

 

 

 それはあまりのエネルギーの質量に青白いプラズマを発生させながら、実体剣のような重量を持ち、刀身が日本刀のように変化した。

 

 

 

「ーーーーてぇえりゃぁあああああっ!!!!」

 

 

 

 それを脇構えにすると、ゴッドガンダムは両手持ちで袈裟懸けに切りつけた。

 

 

 

ズバァァッ

 

 

 

 一瞬の出来事だった。

 

 

 

 ゴッドガンダムの一閃は空を疾り、写真に鉛筆で線を入れたかのように、景色に斬閃を残す。

 

 

 

 世界が斜めにずれたーー。

 

 

 

ズドドドドドドドドォッ

 

 

 

 後に、その場にいたポーンだけが体を斜めにずらし、連鎖的に爆発していくーー。

 

 

 

 しばらく刃を構え、敵の全滅を確認したドモンはサーベルを一閃し、静かに刃を納める。

 

 

 

『これがーー、ゴッドガンダム』

 

 

 

『な、なんなんだ、このMSはーー!』 

 

 

 

 あまりの出来事に愕然とした表情になっているラクス達をようやく振り返り、ドモンは穏やかにして不適な笑みを浮かべて話しかけた。

 

 

 

「ーー待たせたな。そちらへ合流する」

 

 

 

『え、ええ。お待ちしていますわ』

 

 

 

 ドモンの戦闘力にあっけに取られながらも、気丈な歌姫は平常心を取り戻し、ゴッドガンダムを自身の戦艦エターナルへと迎えた。

 

 

 

 彼と共に、ギルバート・デュランダルの残したデータを解析するために。

 

 

 

「ーー凄まじいものだな、ゴッドガンダムか。

 

Dが望むだけのことはある」

 

 

 

一瞬で手駒を全滅させられたと言うのに、デュランダルには余裕の笑みがあった。

 

 

 

メンデル内にあったMS並びにクローン作製技術は既に移転させている。

 

 

 

メンデル自体が消し飛ばされない限り、何度でも施設の再生は、DG細胞により可能だ。

 

 

 

ゴッドガンダムのデータが取れた。

 

今回はそれで充分だろう、とデュランダルは笑っていた。

 

 

 

ーーーーーー

 

 

 

 一方、オーブはすでに再三の連合からの攻撃をキョウジの作成したハロによって天候を操り防いでいた。

 

 

 

 運よく雷雲の海域を抜けれたとしても、その先にはアスハの私軍が展開され、あえなく撃沈されて捕獲されている。

 

 

 

 アスハ私軍は、MSや軍艦を捕獲した際、乗組員やパイロットを即連合あてに強制送還させている。

 

 

 

 はじめは、オーブ本国と国民も勝手な行動を行うアスハ軍を批判していたが、本土を守り抜き、連合の大艦隊を完膚なきまでに退ける国民はアスハ軍に、国民の支持が集中していた。

 

 

 

 オーブの政治家達は、アスハ軍をテロリストおよび国家反逆罪とし、処刑する名目を立てるも、国民から激しく非難され、糾弾を受けてその身を隠していった。

 

 

 

 これにより、オーブの政治体系は全く機能をなさない状態になるはずだったーー。

 

 

 

 しかし、予め事態を予測していたキョウジの指示で抱き込んでいた政治家たちを続投させ、国内の政治事をカガリの指示のもと、行わせる。

 

 

 

 あくまでカガリは政治のみを行い、軍には関わらないようにキョウジから釘を刺されていた。

 

 

 

 オーブは自国の資源が豊富で、自給自足ができるため、実質上の鎖国を行うことができる。

 

 

 

 一方の連合側はいくら大艦隊で仕掛けても、その分被害が増えることをここに来て理解し始めていた。

 

 

 

 オーブは、おそらく世界のどの国ーープラントとさえ比べても、あり得ないほど高度な科学技術を持っている。

 

 

 

 かと言って、不安をあおり、オーブ国内からの内部崩壊を行おうにも、潜入させたスパイとは一切の連絡が取れず、艦隊をオーブ本国の周辺に並べたところで、意味不明のジャミングと霧が起こり、たった20機に満たないMSに壊滅されている。

 

 

 

 本土を撃てる距離まで詰めれば、訳のわからない天候が起こり、一気に雷雨の中を動かねばならなくなる。

 

 

 

 

 

ーーオーブのアスハ軍は、天候をも操る。

 

 

 

 

 

 この噂は、瞬く間に世界に広がっていった。

 

 

 

 もはや、この世界でブルーコスモスを除いた勢力は、オーブの実力の高さと一貫して主張する他国への侵略をしないとする理念と姿勢を理解し、友好的な関係を結ぼうという動きさえ出ていた。

 

 

 

「考えられんことだが、君たちの世界では、こんなあり得ないモノも作られているのかね、ウルベ?」

 

 

 

送られてくる映像や資料に目を通しながら、自分が取り込んだ2人の友人のうち、片方に話しかける。

 

 

 

彼は、長い髪を弄びながら、ワインを一口含むと、右側の顔を鉄の仮面で隠した冷たい翡翠の瞳を自分ーーロード・ジブリールに向けた。

 

 

 

「できるーー。

 

 私たちの世界の技術ならばな。

 

 あれはネオイングランドで使用された霧を発生させ、レーダーの機器をジャミングする装置を改良したものだろう」

 

 

 

「興味深いな。あれがあれば、確実に敵を仕留められる」

 

 

 

 身を乗り出すジブリールに、興味もなさげに、ウルベは言った。

 

 

 

「つまらん子どもだましの機械だよ、ジブリール。

 

 もし、あれを破りたいならば、君の子飼いの部隊に頼むといい」

 

 

 

「何ーー? ファントムペインにか?」

 

 

 

 ウルベの提案に首を傾げるジブリール。その横から、今度は赤い瞳をしたサングラスの男が口を挟んだ。

 

 

 

「そうそう。

 

 あなたの子飼いのファントムペインーー。非常に興味深いですよ。

 

 彼らならば、この装置を打破できるでしょう。強力な助っ人もいるようですからね」

 

 

 

 皮肉気な笑みを浮かべている神経質そうなサングラスの男を見据え、ニヤリとジブリールは笑う。

 

 

 

「君たちに映像を見せられるまでは、信じられなかったが。確かに、ネオが隠しているあの謎の機体ならば攻略できるかもしれん。

 

 しかしウォン、あれほどの機体のパイロットをこちら側に引き込めるかな?」

 

 

 

 ウォンと呼ばれた男はグラサンの淵に手をかけると、穏やかで上品そうな笑みを浮かべて答えた。

 

 

 

「それについては、ご安心ください。

 

 おそらく、あの助っ人は東方不敗マスターアジアという老人です。

 

 彼は、義理人情に厚い性格をしている。その彼が、未だファントムペインという部隊から離れないのなら、彼なりに思うところがあるのでしょう」

 

 

 

「なるほど、ネオの機転が結果的に我々にとって有利に運んだというわけか。

 

 それで、どうやってあの人外をぶつけるんだね?」

 

 

 

「オーブには、かつてデビルガンダムと呼ばれた存在がいます。

 

 ミケロ達の報告からも間違いありません。

 

 そのことをマスターアジアに語れば、十分でしょう。

 

 コーナーポストの話も、ついでにしてあげれば、確実に食いついてくるはず。もともと、あれは我がネオホンコンの技術なのですからね」

 

 

 

「なるほど、さすがは私と同じく、世界を支配したことのある為政者達だーー」

 

 

 

 こうして、ジブリールは地球軍第6独立機動軍「ファントムペイン」の駆るガーティ・ルーに連絡を入れたのであった。

 

 

 

「さて、オーブに手を貸す悪魔が勝つのか、亡霊に手を貸す鬼が勝つのか、高みの見物といこう」

 

 

 

「そして、全てが終わった後、我々こそが世界を統べるに相応しいと、証明してあげましょう」

 

 

 

 二人の名はウルベ・イシカワとウォン・ユンファ。

 

 

 

 かつて、未来世紀世界を悪魔の力によって永遠に手に入れようと画策した極悪人である。二人の言葉に陶然としながら、ジブリールはこけた頬に六角形の金属からなる奇妙な紋を浮かばせると、笑った。

 

 

 

「すべてはーーデビルガンダムのために!!」

 

 

 

 三人はワイングラスを掲げて、邪悪な笑みを浮かべたーー。

 

 

 

ーーーーーー 

 

 

 

 一方、ガーティ・ルーの方では、次に向かう場所について東方不敗マスターアジアとエクステンデッドの三人を交えた作戦会議が行われていた。

 

 

 

 オーブの謎の雷雲が発生する海域。

 

 

 

 コーナーポストから出るリングによって発生する二重のバリア。

 

 

 

 これらについて、ネオが説明していると、マスターアジアが瞳を鋭くしながら唸った。

 

 

 

 それに気づかずに、スティング、アウル、ステラの三名が海域を抜けた後に現れるMSにも目を見張る。

 

 

 

「この青い翼の機体、強い」

 

「今の僕達より、つよいね」

 

「ステラ達三人がかりなら、足止めくらいはできると思うよ?」

 

 

 

 これにイアンが渋い顔になった。

 

 

 

「君たちでも、三人がかりで足止めが精一杯なのか。とてつもないな、フリーダムは」

 

 

 

 その横で、ビデオモニターを見るのをやめ、海図を睨みつけるマスターアジアにネオが気付く。

 

 

 

「? 東方先生、どうされました?」

 

  

 

「ネオよ、今回の作戦。よくぞワシに伝えた。これは貴様らの世界の技術ではない。わしらの世界の技術よ」

 

 

 

「MFの世界の技術? どおりで文明が進み過ぎているわけだ。なら技術を提供したのは、この間のシュバルツって奴ですかね?」

 

 

 

 ネオの口調が軽口から緊張を帯びたものに変わる。

 

 

 

 それに首を振り、マスターは答えた。

 

 

 

「シュバルツならば、このような回りくどい真似はするまい。

 

 おそらく、こやつはガンダムファイターではない。科学者の類であろう。

 

 しかし、この世界の技術体系でわしらの世界にあった技術を再現してみせるとは、並みの頭脳ではない」

 

 

 

 マスターの答えに、ネオをして唸るしかない。

 

 

 

「そんな奴が、あの国にーー?」

 

 

 

「この戦い、今までになく壮絶なものとなるであろう。ワシはそう見るぞ、ネオ・ロアノーク」

 

 

 

「まいったね、引き受けるの保留すりゃ良かったかな」

 

   

 

「馬鹿者っ!

 

 強敵と拳を交えるは男子の誉れであろうが!

 

 もっとしっかりせんか!!」

 

 

 

「俺は、ガンダムファイターじゃないんすよ」

 

 

 

 マスターアジアの言葉に、弱弱しいながらも反論するネオ。

 

 

 

 こうして、彼らはオーブ攻略作戦に参加するのだったーーーー。

 

 

 

 オーブ近海に配置されたガーティ・ルーのブリッジで、マスターアジアはオーブという島国を睨みつける

 

 

 

「なるほど。微かにDG細胞の気配を感じる。

 

 スティング、アウル、ステラよ!

 

 遅れるでないぞ!!」

 

 

 

「はい、師匠!」

 

「任せてくださいよ!!」

 

「ステラ、がんばる」

 

 

 

 三人の弟子の言葉に目を少しだけ和らげた後、マスターガンダムがカタパルトデッキから出撃した。

 

 

 

「東方不敗マスターアジア、マスターガンダム!

 

 ゆくぞぉ!!」

 

 

 

 オーブの青い海と空に、漆黒のボディと赤い羽のガンダムが舞ったーー。

 

  

 

 

 

 




 みなさん、お待ちかね~!

 デュランダルの魔の手から無事に逃げ延びたラクスとドモン。

 彼らは、取り込んだデータからデュランダル議長のデスティニープランについての論文を確認するのです。

 一方、オーブに攻め込んだマスターガンダムと三機の弟子達。

 彼らを迎え撃つのは、青き翼のMS部隊でした!

 次回、機動武道伝GガンダムSEED Destiny 第34話に!

 レディー、ゴー!!

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