新機動武闘伝 GガンダムSEED Destiny   作:カンナム

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さて、みなさん。

オーブのアスハ部隊は、連戦連勝の雰囲気を高め、ついには、2度もの艦隊戦を制します。

そんな中、マスターアジアのいるガーティー・ルーが、ついに動き始めたではありませんか。

はたして、キョウジやキラは、マスターとファントムペインの猛攻を退けることができるのか?

それでは、ガンダムファイト!

レディー、ゴー!!




第34話 熾烈な戦い オーブ軍 対 流派東方不敗

「バルトフェルドさん、トダカさん。あなた方はこちらの指示があるまで待機でお願いします」

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 早朝。

 

 オーブ領海を護るハロたちが非常警報を鳴らしてきたのは、数十分前のことだ。

 

 三百海里先の近海に、連合の大艦隊――およそ三個連隊――がふたたび観測されたのである。連日連夜、MSの整備・調整と、少数精鋭による艦体を想定した模擬訓練および実戦に時間を割いていたため、この緊急事態に至ってもアスハ軍の士気は高い。

 

 MSのパイロットや各戦艦のクルーたちを広場に集めたキョウジは、ハロが送ってきた詳細な偵察データを基に現状をみなに説明したのちこう言った。

 

既に捕獲した機体は、40機を越えている。

 

連合から捕獲したウィンダムやストライクダガーLを改良し、見た目をフリーダムに似せたものだ。

 

更に、連合製MSの特徴であるバックパックの変換システムを利用して、肩からキャノンを伸ばす砲戦仕様のMSを10機用意していた。

 

 

 

「ん? ああ」

 

 

 

 バルトフェルドは上機嫌に自身のムラサメとキョウジから支給された補助バーニアの調整を楽しんでいた手を止め、頷いた。これまで、物量と言う面で困難を強いられてきたアスハ軍であるが、トダカやアマギの部下たちは果敢にもバルトフェルドたちの要求についてきている。

 

 キョウジが慎重に声音を落とした真意がつかめず、眉をひそめていると、キョウジはこくりと頷き返して、視線を各部隊長と砲戦仕様のMSパイロット達に向けた。

 

 

 

「では今まで通り。

 

あなた方には海域とジャミングを巧く使っていただきます。

 

戦況が少しでも不利になったら、すぐに通信で報せるようにしてください。

 

無理をせず、決して仲間から離れないように。……いいですね?」

 

 

 

「はっ!」

 

 

 

 ざ、と敬礼する彼等に、キョウジは頷き返す。

 

 

 

 何度目になるか分からない出撃と、再三にわたる大艦隊の撃退に浮き足立つことないよう、きちんと最初から説明する。

 

 各々の意志を高める為に。

 

 ずっと作戦本部に滞在していたキョウジは、撃退の為に出撃していたキラ達よりも早く敵の第3撃の部隊配置を聞いており、すでにどの部隊が、第1諸島から第五諸島までどう配置すべきなのか、打ち合わせを済ませていた。

 

 

 

 今朝方、その打ち合わせ内容を聞いたキラは、昨日あらかじめ立てていた作戦とは少し内容が違うことにすぐ気がついた。

 

 

 

 というのも、40機の部隊を3つに分け、それぞれの部隊に最低2機、砲戦仕様が配備されているのだ。

 

 そしてその彼等は、キラやバルトフェルド達が戦闘を行っている間、キョウジが考えた『ビーム兵器での信号弾』を頼りに行動するよう訓練されている。

 

 例えば、空に向かって黄のビームを放てば『劣勢』。青のビームで『制圧』。緑のビームで『膠着』。そして赤のビームで『撤退』を意味するのだ。

 

 この方法で、キョウジは海域に展開させる強力なジャミングによる通信不良への対策とした。

 

 加えて、砲戦仕様のMSだけで構成された部隊には、その護衛役としてアマギ率いるムラサメ隊の手練れを抜擢している。

 

アマギ達4機だけで砲戦部隊すべてを護衛することは不可能だが、もともと、砲戦仕様MSの主な任務は後方支援および傷付いた機体の回収である。

 

これにキョウジは修理機能や補給機能を取り付けている。

 

 前線の――キラ達が率いる先鋒部隊が『道』を作るまで、巨大な設置型のビーム大砲を動かさず遠距離から連合を狙撃する。

 

 そして『道』を作った先鋒部隊と合流し、改めて進軍する時、初めてムラサメ隊が活躍することになる。言わば、保険のような存在としてアマギ達のムラサメ隊は置かれているのだ。

 

 総指揮官に抜擢されたキョウジは、殿しんがりとしてオーブ本土を守る役割だった。故に、どの兵よりも最後尾になる配置だが、逆にどの兵よりも広く戦況を見定め、即座に各部隊に指示を送るのが必要がある。

 

 例えば、第一小隊が赤の施術で『劣勢』を指示した際、すでに『制圧』の合図を送った部隊に『増援に向かえ』の合図をするのが彼の役目だ。この、『制圧』を完了した部隊が、仮に第二小隊ならば、赤のビームが二発、空に向かって放たれる手筈になっている。

 

 ここで、砲戦仕様MSは絶対にウィンダムを攻撃してはならない、という制約が生まれた。

 

 空に向かってビームを乱用すれば、信号弾との区別がつかなくなるためだ。

 

 つまりウィンダムに対しては、すべて空中戦仕様MS隊のビームサーベルでの白兵戦及び海上に設置された大型ビーム砲で対抗する。

 

 キョウジの仕事は淡白だが、タイミングを見誤ればアスハ軍が傾く。その大任を圧力プレッシャーと思っていないのか、彼はいつも通りの調子で引き受けていた。

 

 キョウジによる改良で連射性の上がったビーム兵器ならば機動力の高いウィンダム隊を抑えることは可能だ、と。

 

 

 

「……でも、それだけでホントに敵艦隊をどうにか出来るのか?」

 

 

 

 誰もが考える言い分に、キョウジは不敵に笑い返してくる。

 

 

 

「空にビームの粒子が溜まる。――それで十分だ」

 

 

 

 と。

 

 なにやら、企んでいる様子で。

 

 隣でキョウジと共に改修していたキラが口出しをしてこないことから、確証があるのだろう。

 

 バルトフェルドは首を傾げながらも、こくりと頷いた。

 

 

 

 

 

 

 

 ……………………

 

 ………………

 

 

 

 

 

 

 

「準備はいいわね。ここが勝負の分かれ目よ。私達がここを死守できなければ、連合ーーいえ、ブルーコスモスは、オーブ本土まで一気に攻め込むでしょう。なんとしても食い止めます……全軍、進軍!」

 

 

 

 凛とした面持ちでマリューが指揮すると同時、居並ぶMS部隊が、一挙に己が右腕を掲げた。

 

 

 

――おぉおおおおおおおおっっ!――

 

 

 

 びりびりと。

 

 まるで地鳴りのような迫力に、キラは腹の底が揺さぶられるのを感じながらバルトフェルドを見た。すでにムラサメのコクピット乗っているバルトフェルドは、いつでも準備万端だ、と言わんばかりに、に、と口端を吊り上げている。

 

キラもフリーダムのコクピットで、緊張をほぐす為に、ため息を一つ吐く。

 

 

 

 ――開戦だ。

 

 

 

 海中に続くシェルターが、開け放たれると同時、凄まじい勢いでフリーダムを模したムラサメやウィンダム、M1部隊が海上に出て行く。

 

まるで川の激流のように、どどどっ、と。

 

 MS達のバーニアが噴出される音が、確かな重みを持ってキラの耳朶を打っていた。

 

 

 

(いよいよ、か……!)

 

 

 

 ぐ、と操縦桿のグリップを握りながら、キラも意を決したようにフリーダムをカタパルトに載せた。

 

 バルトフェルドのムラサメのバックパックに取り付けられたのは、ウィンダムやストライクダガーに付けられたジェットストライカーのバーニアだ。

 

これをキョウジは海上、海中、空中、陸、全てに対応する強力な移動手段へと改良した。その性能はかつて、機動力を重視したMSラゴゥを乗りこなしたバルトフェルドをして、唸らせる。

 

 キラとバルトフェルド以外の全てのMSが基地から出て行った後、残ったキョウジは、す、と映し出されたモニターに接続されたキーボードに手をかけた。

 

 

 

「全軍、少し離れてください」

 

 

 

 通信越しにそう言ってキョウジは、モニターを確認する。

 

 彼は、すらりと長い手をキーボードのエンターキーに伸ばすなり、息を吐いた。

 

 

 

「作戦……」

 

 

 

 キョウジがつぶやいた瞬間、オーブの海域に予め散っていた丸い緑の球体が浮き上がり、これでもかと言わんばかりの、黒い水蒸気を上空へと噴き出していく。

 

 水蒸気ーー霧は、上空に固まっていき、その場に形成されていく。

 

 

 

「開始っ!!」

 

 

 

 か、と目を見開いたキョウジが真上から叩きつけるように指をキーボードに振り下ろす。

 

 ただそれだけの動作から一気に丸い球であるハロ達が動き出した。彼らは、ジャミングの磁場を発生させる霧を次々と発生させていく。

 

 ――それが空中に集まり、雲を象ったとき、雷の嵐が海面に降り注ぐ。

 

 

 

 ズガガガガガガガァアアンンッッ!

 

 

 

 オーブ周辺の海域に強烈なサンダーストームが発生。

 

 その雷の嵐は、オーブ侵攻を防ぐために降り注がれる。

 

 ――オーブの城壁、そのものだ。

 

 

 

「……よし。正常にライトニングウォールを発生できた」

 

 

 

 キョウジは、発生させた雷の制御をコンソロールパネルで細かく打ち込み、ハロ達に直接指示し、動きを変化させて敵艦隊の侵攻を防いでいく。

 

 

 

「……毎度毎度、とんでもないやつ……」

 

 

 

 傍観するバルトフェルドの方が、あきれたといわんばかりに表情を歪めていた。そんな彼に同調するように、同じ表情でキラたちも頷いた。

 

 そんな彼等を置いて、キョウジは戦況を把握しながら自分が作った雷嵐を制御し、更にオーブ周辺の海域にレーダーを展開し、熱源反応を調べ始めた。

 

 ――敵の艦隊の動きを。

 

 

 

「……そろそろ、先鋒部隊が衝突するな」

 

 

 

「!」

 

 

 

 つぶやく彼に、ば、とキラの顔が起き上がる。その隣で指示を待つバルトフェルドへ、キョウジは通信を入れて頷くと――、言い放った。

 

 

 

「キラ、バルトフェルド。……出動だ!」

 

 

 

「おぅっ!」

 

 

 

「ああ!」

 

 

 

 ジェットバーニアを噴かせるムラサメの動きに従って、エンジン音が基地内に響き渡る。

 

 その隣で、キラは不安に駆られることはなく、強い瞳でモニターのキョウジを見据える。 

 

 

 

「この戦い、絶対勝ちましょう! キョウジさん!!」

 

 

 

 それが誓いであるように、す、とフリーダムがキョウジを向いてその目を光らせる。宣言するキラに、キョウジもこくりと頷いた。

 

 

 

「今回、俺はアスハ軍の援護を第一任務として動く。

 

……だが、出来るだけ二人の支援もするつもりだ。現場の指令系統は頼んだぞ、二人とも」

 

 

 

 キラに応えるように、右手を掲げる。

 

 

 

 自然、二人の口元に浮かんだのは、互いを信頼しているような、自信に満ちた笑み。

 

 

 

 無言のまま、笑いあう二人に、やれやれとバルトフェルドがため息を吐いた。

 

 

 

「今更だが……。もう少し息をつかないか? 力の入り過ぎはよくないぞ」

 

 

 

 言って、肩をすくめる。するとキョウジは、バルトフェルドに視線を向けて気負ってなどいない、とそう態度で示すように微笑った。

 

 その彼を、ふん、と苦笑しながら見返して、バルトフェルドは横目でフリーダムを見る。

 

 

 

「じゃ、行こうか。ーーキラ、遅れるなよ」

 

 

 

「はい!」

 

 

 

フリーダムが青い両翼を展開させ、バーニアをふかす。

 

それを横目で確認して、こくりと頷いたバルトフェルドは、す、とキョウジを一瞥してからムラサメを発進させた。

 

 

 

 ドンッッ!

 

 

 

 雄叫びを上げて、巨大なMSを2機がカタパルトデッキから猛速度スピードで発進していく。

 

 それを、じ、と見送って、キョウジは静かにマリューに視線を向けた――……。

 

 

 

 

 

「私達の行動が、オーブの明暗を分けます!

 

 各機、自分の任務を遂行して!

 

 本艦とM1部隊は、これより連合との開戦を始めます!」

 

 

 

「はっ!」

 

 

 

 

 

 先鋒部隊。

 

 マリュー率いるアークエンジェルの中央部隊は、地球連合軍の分断に成功した。

 

 世界最強と言われる軍事力と物量を武器とする連合艦隊を、見事出し抜いたのだ。

 

 

 

(これほどまでに、皆の戦力が上がってるなんて……!)

 

 

 

 指揮を直接取るマリューにも、各部隊長達が急激な成長を見せているのが、手に取るようにわかる。数で圧倒的不利を示すアスハ軍が、戦場を大きく使うのは得策ではない。

 

そこを突くため、連合軍はウィンダムのジェットストライカーの機動力を生かして中央部隊の背後を、物量を生かしたダガーL部隊をアスハ軍の本隊と真正面から衝突させ、アスハ軍を前後に挟撃するという構図を展開してきたのだ。

 

 ――それを、オーブ本国の周辺に放たれた黒い雷雲が、上空から狙い落としていた。

 

 

 

「な、なんだと!?」

 

「オーブは、天候を操るという噂は、本当なのか!?」

 

 

 

雷に撃たれ、電気回路がショートしたMSは、上空から海面に叩き落とされた。

 

 

 

「普通の雷じゃない、MSの動力炉をショートさせるなんて」

 

 

 

雷に撃たれたぐらいで、通常MSは落ちたりしない。

 

あの雷雲と言い、普通ではない、とパイロット達は把握した。

 

 

 

「ハロ、追撃スル!」

 

 

 

 一個小隊に最低二機、配備された砲戦仕様のMSが、一斉に肩から二門のキャノンを伸ばし、ぶつけた。

 

 連合艦隊に対しではなく、足元の海面に向かって。

 

 

 

 ズガガガァアアアンンッッ!

 

 

 

 海面に放たれたMS用に小型化された陽電子砲は、アスハ軍の背後に回り込もうと部隊を広く展開したジェットウィンダム部隊の、その進路を塞ぐように、海面に漂う電磁波を連鎖で爆発させ、ビームの壁を一瞬作り上げる。

 

 

 

「「「うわああああーーっ!!!」」」

 

 

 

ビームの壁に飲まれたウィンダム隊は、MSを空中で霧散させた。

 

 

 

逃げ切れた部隊もいるが、上空からは落雷、海面から強大なビームの壁が発生したのだ。

 

 

 

動揺は大きい。

 

 

 

 少なくとも三十機近いMSの犠牲は、連合の部隊を戦場ごと寸断した。

 

 

 

「何だと!?」

 

 

 

 どよめく連合軍に、M1部隊は間髪を置かずに突っ込んだ。

 

 砲戦仕様MS達が海面に放って作られた光の壁は、相手の退路を一瞬断ち、敵の意表を突いたのだ。

 

故に、なし崩し的に先鋒の兵士達が相手を討ち取ることは可能だった

 

 

 

 

 

 

 

「すごいっ!」

 

 

 

 先行部隊指揮官として戦況を把握しているマリューは、予想以上の成果に思わず目を見開いた。

 

 

 

「本当に、彼には敵の動きがすべてわかるのでしょうか?」

 

 

 

 アークエンジェルクルーの一人であるノイマン少尉の言葉にマリューは笑みを浮かべながら答えた。

 

 

 

「キョウジさんに何が視えているのかは、わたしにもわからないけれど、これで三度目よ。連合の大艦隊をここまで翻弄できるなんて。MSや機械の開発知識だけじゃない。彼の能力は、科学者という枠にとどまらないわ」

 

 

 

 いつものように勝利できるだろう、彼がいるならば

 

 そんな空気に満ちていたブリッジに突如、緊張が走る。

 

 

 

「艦長!」

 

 

 

 通信兵の緊張に満ちた声に、マリューも一気に警戒レベルを引き上げる。

 

 

 

「どうしたの!?」

 

 

 

「前方より高エネルギー反応! これはっ」

 

 

 

 一瞬後、ピンク色と金色の渦を巻いた巨大な光弾がこちらに向かって放たれてきたのだ。

 

 

 

「回避っ!」

 

「了解!」

 

 

 

 マリュー艦長指揮のもと、アーノルド・ノイマン少尉がアークエンジェルをバレルロールさせ、攻撃から回避する。

 

 次の瞬間、爆発が目の前で起こった。

 

 

 

「なっ!? なにが、なにが起こったというのっ!?」

 

 

 

 マリューの言葉に観測兵がいち早く答えた。

 

 

 

「オーブを覆っていた、ライトニングウォールが……! 完全に、かき消されていますっ!」

 

 

 

 その言葉に、マリューが目を大きく見開いた。

 

 

 

「連合にそんなことができる兵器があるなんて……!!」

 

 

 

 呆然とするマリューの前に、立ち上る煙から漆黒のボディと巨大な角、紅い羽根を持つガンダムが現れる。

 

 

 

ーーーー

 

 

 

 連合サイド。

 

 

 

 次々と挑んでは雷に打たれて落ちていくウィンダム部隊に、歯ぎしりしていた。

 

 

 

「くそ、どうにもならんのか!?」

 

 

 

「運良く雷雲を抜けたMSもあるようですが、ジャミングが凄くて通信できずーー」

 

 

 

 司令官の言葉に下士官が答える。そのとき、第三者の通信が割って入った。

 

 

 

「ーー馬鹿者がぁっ!」

 

 

 

 そんな時、横から第三者の通信が入った。気合の入ったその声は、よく響く。

 

 

 

「ーーなっ!?」

 

 

 

 連合艦ブリッジやMS勢の皆がそちらを向くと、四機のガンダムタイプが、己の戦艦のデッキに立っていた。

 

 

 

「あれは、ガーティ・ルー。ファントムペインか!?」

 

 

 

 連合兵の誰かがそれに気づくと、巨大な角を持つガンダムーーマスターガンダムが答えた。

 

 

 

「闇雲に突っ込んだところで、返り討ちに遭うは明々白々。ここは、わしらに任せぃ!!」

 

 

 

「し、しかしーーっ! この雷雲はオーブそのものをぐるりと一周しています! これを破るなど」

 

 

 

「黙ってみておれぃ!!」

 

 

 

 一喝して黙らせると、チラリと緑色の球体が浮かぶ海面を一瞥し、自身の後ろに控える一機に声をかける。

 

 

 

「スティングよ、アレをやるぞ!!」

 

 

 

「はい、師匠!!」

 

 

 

 スティングは自身の機体ーーカオスガンダムを前に出す。

 

 

 

 同時に、ほかの二機とガーティ・ルーは一歩下がった。

 

 

 

 マスターガンダムとカオスガンダムが、同時に構えをとる。

 

 

 

「超級!!」

 

 

 

「覇王!!」

 

 

 

「「電影弾ぁああああああんっ!!」」

 

 

 

 マスターガンダムが渦を巻く気を纏い、その場で回転する。その背後にカオスガンダムが腰だめに構えて待つ。

 

 

 

「撃てぃ、スティング!!」

 

 

 

「はいぃいいいいいいっ!!」

 

 

 

 両手を前に突き出し、マスターガンダムを押し出す。同時、巨大な光弾と化したマスターガンダムが、雷雲に向かって疾った。

 

 

 

「ぬぉおおおおおおっ!!」

 

 

 

 光弾は、海面上にある球体を次々と破壊していくーー。そして

 

 

 

「爆発ぁつっ!!」

 

 

 

 上空に昇るマスターガンダムが自身の纏っていた気を弾き飛ばし、空中で静止しながら、構えた。

 

 

 

ズドォァッ

 

  

 

 瞬間、巨大なドーム状に爆発が発生し、雷雲の一角が消し飛ぶ。

 

 

 

 そこを起点に、ドーナツ状に展開されていた雷雲は、全て弾き飛ばされた。

 

 

 

「さすが、師匠!!」

 

 

 

「すごい、ししょー、スティング、すごい!!」

 

 

 

 ガッツポーズを取るアビスガンダムとガイアガンダム。

 

 

 

 それらを上に載せたガーティ・ルーは、静かにカタパルトデッキを開放した。

 

 

 

「ーーさて、では始めようか! オーブ攻略作戦を!!」

 

 

 

 ネオが仮面の下で笑みを刻み、己のウィンダムを駆って部隊を出撃させた。 

 

 

 

 オーブの青い空の下、激戦が繰り広げられるーー。

 

 

 

ーーーーーー

 

 

 

一方で、こちらはメンデル内から脱出に成功したエターナル艦内。

 

 

 

彼らは、メンデルで得たデータの解析を進めていた。

 

 

 

「ーーこれは、レポート?」

 

 

 

「何かの報告書でしょうか?」

 

 

 

ラクスとダコスタがファイルにアクセスしてモニターに出てきた文字を追う。

 

 

 

「論文だな。

 

デスティニープラン?

 

名前だけなら、俺のゴッドガンダムに匹敵するほど、ご大層なプランだな」

 

 

 

皮肉気に口元を歪めて言うドモンに応えず、ラクスは真剣な表情で論文を読んでいく。

 

 

 

「ーーデュランダル議長の狙いは、これですか」

 

 

 

「遺伝子が管理する世界って書いてたな?

 

遺伝子でそいつにあった職業を選んで就かせたり、自分より有能な奴と競っても無駄だからやめろと、判断させる世界か。

 

自分から可能性を消し、代わりに得るのが、争いのない世界か」

 

 

 

ドモンの言葉に、ラクスが頷く。

 

 

 

「ーー争っても無駄だと、遺伝子が告げる。

 

競う事を辞め、考える事を辞め、努力する事を辞めて、ただ遺伝子情報から得たデータの通りに行動する」

 

 

 

「それって、なんかヤバそうですね?」

 

 

 

ダコスタも、この計画の具体的な意味は分からないまでも、頷いて応えた。

 

 

 

「自分の頭の中だけで考えた結果だろ。

 

質の悪い妄想だな」

 

 

 

ニヒルに揶揄するドモンに、ラクスが静かに返す。

 

 

 

「しかし、その妄想を現実にしようとするのが、このプランの発案者。

 

ギルバート・デュランダル議長なのです」

 

 

 

「遺伝子によって、優秀な人間を生み出すコーディネイターの究極だな。

 

生み出された人間の気持ちなど理解せずに、自分の歪んだ頭の中だけで、結論付ける。

 

それは、自分の子どもを自分の歪んだ欲望の道具にする行為と何ら変わらない」

 

 

 

ドモンの遠慮ない言葉に、ラクスは思わず苦笑した。

 

 

 

「自分の可能性を自ら殺してどうする?

 

分かり合う努力を放棄して、どうする?

 

全ての責任を遺伝子に任せてどうする?

 

分かりあおうと努力することから逃げ、困難や責任から逃げ、傷付くことを恐れていては、何も変わりはしない」.

 

 

 

「ーードモンさん」

 

 

 

「困難なことに立ち向かい、時に誰かに支えられて、誰かを支えて、そうして勝ち取るんだ。

 

自分の未来はなーー!!」

 

 

 

静かに燃えるその瞳を見据え、ラクスも凛とした気配を纏うと同時に、微笑んだ。

 

 

 

「今一度、改めてお頼みします。

 

ドモンさん、わたくし達に、そのお力をどうかお貸しいただけませんか?

 

人々に希望の未来を考えさせるためにも」

 

 

 

どこまでも真摯なラクスの言葉に、ドモンも頷くと返した。

 

 

 

「もとより、そのつもりだ。

 

兄さんやシュバルツを迎えに来たのもそうだが。

 

こんなことを見過ごすわけには、いかん。

 

俺の方こそ、頼む。

 

俺とゴッドガンダムの力、お前達の為に使わせてくれーーー!!」

 

 

 

「ーーありがとう、ドモンさん」

 

 

 

こうして、ドモン・カッシュは、ラクス・クラインのエターナルに乗艦することになった。

 

 

 

宇宙にある、悪魔の勢力を探るために。

 

 

 

遺伝子による人々の支配を、避けるために。

 

 

 

希望の未来を勝ち取る為にーー。

 

 

 




みなさん、お待ちかね〜!!

オーブの雷壁を破ったマスターアジア。

スティングとアウルの二体のガンダムに、オーブアスハ軍は、大苦戦!!

そんな中、自由の翼が、彼らの危機に現れたのです!!

次回、機動武道伝GガンダムSEED Destiny 第35話に!

レディ、ゴー!!
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