新機動武闘伝 GガンダムSEED Destiny   作:カンナム

35 / 103
 みなさん、マスターアジアとその弟子二人の猛攻が始まりました。

 はたして、キラやキョウジ達は彼らの猛攻を退けることができるのか?

 それでは、ガンダムファイト!!

 レディイイイイイイイ、ゴォオオオオオオ!!


第35話 誇り高きフリーダム キラ・ヤマト

 

オーブを守る雷壁は全て吹き飛ばされ、取り囲んだ連合兵が一気に僅か40機程度のアスハ軍を狙って襲い来る。

 

 

 

 

 

絶対防護壁が破られた。

 

 

 

 その事実に、誰もが呆然とする中、キョウジがすぐに指示を出した。

 

 

 

「トダカさん、ムラサメ部隊の出撃をお願いします」

 

 

 

 キョウジの言葉に、ムラサメ部隊を預かる隊長機、トダカが頷いた。

 

 

 

「了解! 「アスハの青き翼」の力を見せてやりましょう!!」

 

 

 

「無理はしないでください、こちらは数の上で圧倒的に不利です。ハロのサポートがあるからと言っても、落とされては何にもなりません」

 

 

 

「わかっています、トダカ隊! 出るぞ!!」

 

 

 

 トダカ率いるムラサメ隊10機は、ハロを複座にしており、MSの動きをサポートさせているため、反応速度が上がっている。

 

 

 

 このムラサメ隊よりもさらに改造を施した機体がバルトフェルドのそれだ。

 

 

 

 機動力だけならば、フリーダムにすら匹敵するスピードで一気に加速できる。このバルトフェルド機と同じ改造を施された機体がもう2機ある。

 

 

 

 これらは、バルトフェルド機から送られる信号によって動くハロ達の随伴機だ。

 

 

 

「それじゃ、俺は敵の本命を叩く。キラ、敵のエース機をアークエンジェルの部隊と叩いてくれ」 

 

 

 

「わかりました。バルトフェルドさん、無茶はしないでください」

 

 

 

「わかってるよ。だが、多少は無理しないと、な!!」

 

 

 

 言うやいなや、バルトフェルドはオーブの北側へと二機のムラサメを連れて一気に向かった。

 

 

 

「キラ、バルトフェルドさんの言うとおりに、敵隊長機を頼めるか? 俺もバリアの調整を終えたらすぐに加勢に向かう」

 

 

 

「大丈夫です。僕達なら、やれます!!」

 

 

 

 キョウジの言葉にキラが頷き、アークエンジェルに向かってフリーダムを飛ばした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

至る所で戦闘が始まる中、アークエンジェルに向けて敵陣から疾駆する機体があった。

 

 

 

「正面上空! 謎のMSから通信、来ますっ!」

 

 

 

「うゎーはっはっはっはっは!

 

この程度のことでうろたえるとは、笑止千万!

 

貴様らの雷の壁など! この流派東方不敗には、まったくの無意味!!」

 

 

 

通信越しでもわかる、とてつもなく強い意志。

 

 

 

何より、マリューには通信を入れてきた相手に心当たりがあった。

 

 

 

「あの機体は……っ」

 

 

 

「艦長! どうされましたか」

 

 

 

「いけないっ! あれは、あのガンダムは! デビルガンダム四天王のひとり、マスターガンダム!」

 

 

 

マリューの顔色が悪くなっているのに気づいたブリッジクルー達。

 

マリューは改めてモニターを確認し、ハッキリと目の前にいる敵の存在を把握した。

 

全人類の抹殺を企んだ恐るべき人間。

 

東方不敗、マスターアジアだ。

 

 

 

「ほう。わしを知っておるのか。

 

 やはりこの雷の壁と言い、オーブ軍に張られておるバトルロイヤルリングのバリヤーと言いーー」

 

 

 

 腕を組むマスターガンダムは、背部のウイングバインダーをマントのようにし胸の前で閉じ、空中で静止する。

 

 

 

「わしらの世界の人間が、オーブにおるようだな。そやつが何者かは知らんが、この世界には過ぎたる力。こちらで回収させてもらおう」

 

 

 

 この言葉に、敵の狙いがキョウジであると悟ったクルー達がマリュー艦長を仰ぎ見る。

 

 

 

「どうする!? 今、キョウジさんを連れて行かれてはっ!!」

 

「どうするもこうするもないだろう! ラミアス艦長!」

 

 

 

 クルー達の言葉に一つ頷き、マリューはキッと目の前の敵を見据える。

 

 

 

「本作戦はまだ、終わったわけではありません!

 

 たとえ雷の壁をやぶられたとしても、私たちはまだ戦いをあきらめるには早すぎます!!」

 

 

 

 その言葉に答えるように、トダカ率いるムラサメ部隊がさっそうと登場した。

 

 MA形態での音速を超えた機動でマスターガンダムに迫る。

 

 

 

「ラミアス艦長! ここは私たちムラサメ隊にお任せください!

 

 各機、敵隊長機を狙え!

 

 悪いが俺たちの参謀を、くれてやるわけにはいかないんでね!

 

 お引き取り願おうか、連合の新型!!」

 

 

 

「トダカ一佐、無茶です!

 

 その機体は、連合のものでも、ザフトのものでもありません!!

 

 それに、接近戦を挑んではーー!!」

 

 

 

 マリューの言葉を聞かず、ビームサーベルを抜き放ち、マスターガンダムに斬りかかるムラサメ。

 

 三機のムラサメが同時に切りかかるのだが、マスターガンダムはその場を微動だにしない。

 

 次の瞬間、

 

 

 

バチィツギギィンッ

 

 

 

 切りかかった三機とすれ違いざまに交差する機体があったーー正体は緑色のガンダム。

 

 

 

「セカンドステージのっ! カオスか!?」

 

 

 

 あの一瞬で切り裂かれたムラサメは海上に落ちていく。

 

 

 

「師匠はやらせねえよ」

 

 

 

「くっ」

 

 

 

 咄嗟に機体を引かせ、間一髪その刃から逃れたトダカは、その斬撃の鋭さに唸るも、すぐさまサーベルを抜き切りかかる。

 

 

 

バチィッ

 

 

 

 切り払われるトダカのムラサメ。

 

 

 

「この音速を越えた動きに、軽々とついてくるだとっ!?」

 

 

 

 改良されたムラサメの動きは、連合製のMSをことごとく、退けていた。

 

 音速を超えるスピードしかり、コンビネーションしかり、それらを正確に行えるのは、パイロットの技量とハロのサポートのおかげだ。

 

 しかし、カオスは底上げされたアスハのムラサメ隊のコンビネーション攻撃を1機で破って見せた。

 

 

 

「たしかに動きは大したもんだがね……」

 

 

 

 そう告げるカオスガンダムのパイロットーースティング・オークレー。

 

その横には、同じくザフト製ガンダムのアビスに乗ったアウル・ニーダがいる。

 

 

 

「悪いけど、ぼくたちには見え見えなんだよねえ!」

 

 

 

 一瞬後、その場から消えるほどの超スピードで動き、上空からグレイブを振り下ろしてくるアビス。

 

 間一髪、ハロが緊急時のソニックブームを発動させながら脇へ逃げるトダカのムラサメ。

 

 

 

「とはいえ、速ぇなーー」

 

 

 

 その音速のスピードには、さすがのスティングも舌を巻く。

 

 

 

「けどさ、明鏡止水を発動すれば、なんてないだろ?」

 

 

 

「まあなーー」

 

 

 

 アウルの言葉に返すと、二人は同時に目を閉じて、一息つく。

 

 次の瞬間、二つの機体は全身に白い光を纏うと、ガンダムが両の目を輝かせ、一気に切りかかってきた。

 

 

 

「なっ!?」

 

 

 

 そのスピードは、先ほどまでの比ではない。

 

 

 

ズバババァッ

 

 

 

 青とピンクの斬線が無数に空を走り、瞬く間に周囲のムラサメが切り裂かれていく。

 

 

 

 そして、それに目を奪われている隙に、トダカは前後で挟まれ、両者のビーム砲が同時に放たれた。

 

 

 

パシュシュッ

 

 

 

 全く同時に放たれたビームに、思わず目を見開き、硬直する。

 

 

 

「し、しまっ!」

 

 

 

 為す術なく落とされるしかないのか。

 

 

 

トダカの脳裏に諦観の念が浮かんだ刹那ーー。 

 

 

 

「トダカ一佐っ!」

 

 

 

第3者の声が割って入ると同時に、自分のムラサメが模している機体が、モニターに現れた。

 

 

 

「キラ准将っ!」

 

 

 

その機体、フリーダムガンダムは、音速でこちらに飛んでくると、腰の二門のレールガンを上空から放ち、トダカに前後から迫っていたビーム砲を消し飛ばす。

 

 

 

「ぼくたちのコンビネーションに、割り込んできたっ!?」

 

「現れたか。オーブの守護神、フリーダム!」

 

 

 

アウルとスティングは、臆することなく、己の武器を構えて、フリーダムガンダムを睨み据えた。

 

 

 

「キラ准将!!」

 

「トダカ一佐、この三機はぼくが相手をします。あなたはライトニングウォールをもう一度発生させるためにも、周囲の連合艦隊を退けてください。

 

 現場部隊の指揮を!!」

 

 

 

 フリーダムはムラサメと連合のMS2機の間に割り込んで、対峙する。

 

 

 

「無茶よ、キラくん!!

 

相手は、あのマスターガンダムを含めた3機なのよ!?」

 

 

 

 その時、間髪入れずマリュー艦長から通信が入った。

 

 

 

「やってみます。いや、やらなきゃいけないんです!

 

トダカ一佐、ここは任せてください!!」

 

「わかりました。ご武運を、キラ准将!!」

 

 

 

 MA形態に変形し、一気にその場を去るトダカのムラサメ。

 

落とされたムラサメ隊は、海中のオーブ艦が回収している。

 

 

 

睨みあう、3機のガンダム。

 

 

 

「気を付けろよ、アウル。こいつはちょっとやばいぜ」

 

「わかってるって。対峙するだけでビリビリ感じてるよ。強いぜ、こいつ」

 

 

 

 二人はお互いにそう言いあうと、各々の刃を構えながら、対峙するフリーダムを見据える。

 

 

 

 キラもまた、敵の構えを見ると、そこに隙のないことに顔を歪めた。

 

 

 

「迂闊に攻めてこない?

 

 なんてやりづらい2機なんだ。だけど!」

 

 

 

 フリーダムは両足を閉じ、翼を大きく広げると、同時にその両目を輝かせる。

 

 

 

「きみたちに手こずるわけにはいかない!

 

 ぼくがやられたら、すべてが終わりだから! いくぞっ、フリーダム!」

 

 

 

 キラがSEEDを発動させたのだ。

 

 フリーダムが全身を輝かせ始め、バーニアの火がそれまでの倍以上に燃える。

 

 

 

 

 

 この光景にスティングとアウルの2人が揃って目を見開いた。

 

 

 

「こ、これはっーーあのときのインパルスのパイロットと同じ力か!?」

 

「確かに、そうだけど。それだけじゃない!」

 

 

 

 スティングの言葉に、実際に戦ったアウルが頬に冷や汗をかきながら、付け加えた。

 

 

 

「機体が、機体がパイロットに力を貸してるっ! この人機一体の境地は明鏡、止水だ……!」

 

「自分の反応速度の底上げと、明鏡止水の機体の負担の軽減ができるってことか」

 

 

 

 明鏡止水のレベルが、あの時のインパルスのパイロット程度ならば、まだ何とかなるのだが。

 

 フリーダムの性能そのものが、セカンドステージと呼ばれる機体とは違う。

 

 加えて、音速を越えながらも正確な射撃でビームをビームで落とした腕は、もはや超人の域だろう。

 

 冷静に自分たちの実力と機体性能を見比べて、スティングとアウルはフリーダムを睨み付けていた。

 

 

 

 

 

「むぅっ!?

 

 この気迫、やはりスティングたちでは荷が重いかーー」

 

 

 

 その様子を見ていたマスターガンダムも、フリーダムガンダムの気迫と動きに、目を見張った。

 

 スティング達の見立て通りならば、ステラを加えた3機でようやく足止めができるということであったが。

 

 

 

「今のスティング達でどの程度できるか。

 

 我が弟子たちよ、貴様らの戦い。見せてもらうぞ」

 

 

 

 その師の期待に応えるように、スティングが叫んだ。

 

 

 

「怯むな! 俺たちだって明鏡止水の使い手だ!

 

 相手がオーブのフリーダムだからといって!!」

 

 

 

 対峙するフリーダムのコクピットの中で、キラも瞳を閉じながらつぶやく。

 

 

 

「感じるよ、フリーダム。

 

 君をとおして敵の動きが、ぼくには見える!」

 

 

 

 キッと目の前の二機を睨み付けると同時に、勝負が始まった。

 

 

 

「アウル!」

 

「スティング!」

 

 

 

 2機は互いに名を呼びあうと、一気にその場から高速で移動を始めた。

 

 

 

「「てやぁああああ!」」

 

 

 

 それぞれ左右から旋回し、同時に手に持った刃で攻撃をしかけるアウルとスティング。

 

 だがーー

 

 

 

「右と左。一見同時に攻撃をしかけているようだけど、まだ甘い。

 

 君の方が、仕掛けるのが一瞬早かった。それが隙だ!」

 

 

 

 くるっと回転し、右方のアウルに対してバーニアを一気に噴射させ、ビームサーベルを抜刀する。

 

 

 

ズバァッ

 

 

 

 桃色の斬戦が空を走り、フリーダムはすれ違い様にアビスガンダムの四肢を切り捨てた。

 

 

 

「ぐっ、くそぉおおおお!! まだだぁ!!」

 

 

 

 両腕と両足を奪われてなお、アウルは胸のビーム砲を放とうとする。

 

 バーニアを兼ねた両腕が切られた以上、慣性の法則であとは海面に落ちるしかない。

 

 だが、機体はまだ宙にある。

 

 

 

「お前も、おちろ!! フリーダム!!」

 

 

 

 胸部に光が収縮していくーー。

 

 

 

バギィッ

 

 

 

 しかし、次の瞬間には、胸のビームの射出口に、フリーダムの鋭い回し蹴りが叩き込まれていた。

 

 

 

「うわあぁあああ!」

 

 

 

 胸部から火花を散らしながら、海面上に落とされていくアビスガンダム。

 

 

 

「アウルっ!」

 

 

 

 ほんの数秒で自分の相方を破って見せた敵に、スティングは戦慄しながらも、落ちていくアビスをかばうためにフリーダムの目の前にてビームサーベルを構え、切り結ぶ。

 

 

 

「こいつ、俺たちのコンビネーションに、そのわずかな隙に、つけこみやがった!

 

 なんて奴だーー!!」

 

 

 

 自分とビームサーベルでのつばぜり合いを行うカオスの行動に、仲間をかばう意思を感じたキラはわずかに目尻を下げると、強い口調で言い放った。

 

 

 

「カオスのパイロット……、きみも仲間が大事なんだね。だけど! 僕も負けられないんだ!!」

 

 

 

ギィンッ

 

ズババァツ

 

 

 

 つばぜり合いから、一気に押し返され、ふり返りざまにサーベルを持っていた右腕を斬られるカオス。

 

 

 

「動きが、違い過ぎるっ!」

 

 

 

 何とか距離を置き、追撃は避けられたが、それでも。

 

 この実力差は、絶望的だ。

 

 

 

 

 

 一方で、この戦闘をモニター越しに見ていたアークエンジェルクルーも目を見開いていた。

 

 

 

「キラくんっ……!

 

 こ、こんな動きができるなんて……! いったい何があったの?」

 

 

 

 その言葉にこたえるように、キラはコクピット内で自分の機体に語りかける。

 

 

 

「フリーダム、今ならわかるよ。

 

 ぼくはきみに、自分の感覚を押しつけているだけだったんだな。

 

 今なら、分かる。

 

 きみの能力は、こんなもんじゃないって!

 

 一緒にいこう、フリーダム。

 

 オーブを護るために!!」

 

 

 

 静かに穏やかに語りかけていたキラは、最後に思いのたけを叫んだ。

 

 その叫びに、願いに、思いに応える様にフリーダムの全身が白い光で輝くーー。

 

 

 

 

 

「くっ! なんて気迫だ!!」

 

 

 

 対峙するスティングには、その力に冷や汗しか出てこない。その時だった。

 

 

 

「スティングよ」

 

 

 

 自らの師に呼びかけられ、そちらを向くと。

 

 無残に切り裂かれた自分の相棒の機体ーーアビスを抱えたマスターガンダムがそこに居た。

 

 

 

「し、師匠!」

 

「アウルを任せる。貴様らはいったん母艦へ戻るがよい」

 

 

 

明らかな選手交代を宣言され、スティングは思わず食い下がった。

 

 

 

「俺は、まだやれます!!」

 

「馬鹿者!

 

 男の人生はつねに戦いの連続。

 

 勝つこともあれば負けることもある」

 

 

 

しかし、師の言葉は、叱咤を交えた現状の宣言だった。

 

マスターガンダムは、青い翼を広げ、こちらに構えを取る機体を静かに見据えると、スティングに告げた。

 

 

 

「現時点において、貴様では、あやつには勝てん」

 

「ですが師匠!」

 

「きさまらの仇はわしがとってやろう。今は下がるがよい」

 

 

 

目尻を和らげ、穏やかに言い放つ師に、スティングもそれ以上は言えず、静かにアビスを受け取り、了承した。

 

 

 

「はい……。お願いします」

 

 

 

スティングの脇を両腕を組み、ウイングバインダーをマント状にしたまま、マスターガンダムは通り過ぎる。

 

 

 

「師匠、気を付けてくださいっ!」

 

「そいつ、普通のMSじゃない!」

 

 

 

二人の弟子からの言葉に、口を歪めると、マスターガンダムは、マントを展開し、赤い翼へと変えると、構えを取り、吠えた。

 

 

 

「この馬鹿弟子どもめ。だれに向かって言うておる!

 

 わしは、東方不敗マスターアジアよ!!」

 

 

 

戦闘体制を取ったマスターガンダムに、キラも目を鋭くしながら、フリーダムガンダムを操作する。

 

 

 

「来るのか、マスターガンダム!」

 

 

 

グリップを握る手に汗を滲ませ、それでも背後にあるオーブを感じて奮い立たせるキラ。

 

対峙するマスターガンダムは、キラの気迫をうけながらも余裕を持って語りかけた。

 

 

 

「小僧、名乗ってみよ」

 

 

 

マスターアジアの問いに、キラも強い瞳を持って返す。

 

 

 

「キラ・ヤマト。フリーダムガンダム」

 

「ヤマトにフリーダム、かーー。ふん、良い名だ」

 

 

 

キラの強い眼差しをむしろ、心地よく受け止めながら、マスターアジアもまた、自身の名乗りを上げた。

 

まるで、戦国時代にあった日本の武士の決闘のように。

 

 

 

「わしの名は、東方不敗マスター・アジア! そして我が愛機の名は、マスターガンダム!!

 

オーブの強きガンダムファイターよ、ワシが相手をしてやろう!!」

 

 

 

この宣言にキラもコクピット内で敵の情報を反芻する。

 

 

 

「第十二回ガンダムファイト優勝者!

 

 ドモンさんの武術の師、東方不敗マスター・アジア! 

 

人類抹殺のために、キョウジさんを犠牲にした貴方を、僕は許さない!!」

 

 

 

怒りに満ちたキラの気迫は、マスターアジアをして唸らせる。

 

 

 

「ぬうっ! この気迫……いままでの敵とは一味もふた味も違う。

 

ふん、久しぶりに骨のある相手のようだな。

 

それに、ドモンとキョウジの名を出したか。色々聞かねばならんが、まずは貴様の拳に聞くとしよう!!」

 

 

 

マスターアジアの言葉に応えるように、フリーダムが動いた。

 

 

 

「行くぞっ、フリーダム! キョウジさんの仇!!」

 

 

 

ビームサーベルを抜き放ち、横薙ぎに斬りかかるフリーダムガンダム。

 

対するマスターガンダムもクロスを抜き放ち、なぎなた状にして回転させながら、斬り返した。

 

 

 

ギュウウウンッ

 

ズバババァッ

 

 

 

桃色の斬閃が、宙を走り、すれ違う刹那に五合も切り結ぶ。

 

 

 

「ふん、ぬぁあ!!」

 

「くっーー!!」

 

 

 

すれ違い、振り返りざまに、更に二、三合打ちあう両ガンダム。

 

 

 

「ほう。わしの動きについてくるか!

 

スティング達が敵わぬのも無理はないな」

 

 

 

マスターアジアは、自分の動きについてくるフリーダムに賞賛の意を込め、笑いかける。

 

 

 

「くっ、なんてスピードだ! だけど! 返せないわけじゃない!」

 

「その動き!?

 

こやつ、MFと戦ったことがあるようだな」

 

 

 

キラとの立会いに、久しぶりに血がたぎるマスターアジアだが、同時に敵の動きにMFに対する対応を感じた。

 

 

 

切り払われ、距離が開いた瞬間、フリーダムのビームライフルが吠える。

 

 

 

「これなら、どうだ!!」

 

 

 

ズドドドォッ

 

 

 

中間距離でのビームライフル3発は、狙いが正確であり、並のパイロットなら、それだけで落とされる。

 

しかし、マスターアジアは、普通ではない。

 

 

 

「ふんっ、ぬるいわ!」

 

 

 

パシュシュンッ

 

 

 

そう宣言すると、マスターは素手でビームを払いのける。

 

 

 

ビュンッ

 

 

 

ビームを弾き終えると、そのままフリーダムに向けてダッシュするマスターガンダム。

 

 

 

一気に懐に飛び込んでくる敵に対し、バーニアを弱めて頭と足の位置を真逆にし、アクロバティックな動きをしながら肩からビーム砲を放つフリーダム。

 

 

 

ズドォウッ

 

バチィッ

 

 

 

マスターガンダムは、咄嗟にマスタークロスを横に構え、二門の小型陽電子砲を受ける。

 

 

 

「ぬぉおおあああ!」

 

 

 

ズバァッ

 

 

 

そのまま、横薙に切り払う。

 

 

 

「正確な射撃よっ! それゆえに狙いもわかりやすい!」

 

「だったら、それを利用して、捉えるだけだ!!」

 

「ならば、やってみるがいい、キラ・ヤマトよ!!」

 

 

 

互いに熱く吠えあいながら、超高速で機体を動かすマスターとキラ。

 

オーブのただ広い海と空の真っ只中で、戦場が狭いとばかりに二機のガンダムは、飛び回る。

 

 

 

この両機の常識外れの動きに、戦場が一度戦いを止めた。

 

あまりの動きに皆が、目を奪われていたのだ。

 

 

 

「キラくんの射撃を完全に受け切るなんてっ」

 

「二機の動きが、音速を超えていますっ!」

 

 

 

キラを良く知るアークエンジェルクルー達も。

 

 

 

「当たらない? 師匠の攻撃が、当たらないっ!?」

 

「なんだ、あいつ……なんなんだよ!?」

 

 

 

マスターアジアに鍛えられていた、スティングやアウルさえも。

 

 

 

「こんな、キラくんーーーー!!」

 

「こんな、師匠ーーーー!!」

 

「「「はじめて見たーー!!」」」

 

 

 

誰もが、皆、釘付けになる。

 

熱く、激しく、ぶつかり合う両軍のエース機同士の対決。

 

 

 

「てぁああああ!」

 

「ふんっ! ほぉれっ!」

 

 

 

叫びながら、斬りつけるフリーダムに、余裕を持って返すマスターガンダム。

 

両者の動きは、より速く、より鋭くなっていく。

 

 

 

ズバァッ

 

 

 

「くううっ!」

 

 

 

うめきながら、マスターガンダムの袈裟懸けの一撃を避ける。

 

 

 

「一撃でもクリーンヒットをもらっちゃだめだ!

 

 フェイズシフト装甲があっても、あの強烈な一撃はそれすらも上回る!

 

 ある程度距離を保て!

 

中遠距離なら、僕のほうに分がある!!」

 

 

 

ビームライフルを主軸に、攻撃を組み立てるキラ。

 

 

 

「ぬんっ!」

 

 

 

バシィッ

 

 

 

対するマスターガンダムは、片手でビームを弾く。

 

 

 

「接近戦は完全に仕掛けてこずに、切り払うことにのみ意識を集中させておるのか。

 

だが、このマスターガンダムに死角などないということを教えてやるわ!」

 

 

 

右手を大きく振りかぶると、紫の光の弾を作り出す。

 

「ダァァアアークネス!! ショット!!」

 

 

 

放たれた紫の光弾は、回転しながら対象に放たれる。

 

 

 

避けるキラだが、その弾のスピードと、破壊力を目の当たりにした。

 

 

 

弾は、オーブのバリアに当たり、ドーム状に爆発したのだ。

 

 

 

「あんなの食らうわけにはいかないっ!

 

でも、エネルギーの溜めがある分、やっぱり近接攻撃よりは、避けやすい!!」

 

 

 

次々に放たれる強烈な光弾を高速移動で避けながら、ビームライフルを返す。

 

このフリーダムの動きに、マスターが頷いた。

 

 

 

「なるほどのぅ。

 

わしの技を撃つ予備動作を見て、攻撃を回避することに専念しておるのか。

 

確かに接近戦でワシに勝つなど不可能であろうが、それだけでワシを倒せるかな?」

 

 

 

マスターは、一度瞳を閉じて構える。

 

 

 

「ならば!!

 

流派東方不敗! 十二王方牌大車併!!」

 

 

 

気合いと共に放たれた、気で創られたマスターガンダムの分身達が、一気にキラに襲い掛かる。

 

 

 

「なっ!? これは!」

 

 

 

渦を巻いて紫の竜巻と化しながら迫る攻撃に、キラも目を光らせ、フリーダムの全砲門を放った。

 

 

 

「ーーあ、た、れ、ぇええーーっ!!」

 

 

 

フルバーストと呼ばれるフリーダムのマルチロックシステムとキラの腕があってできる同時攻撃だ。

 

 

 

ズドォアッ

 

 

 

キラのフルバーストが、マスターの技と激突し、相殺した。

 

 

 

「ーーくっ!」

 

 

 

爆煙を上げた爆発点から、目を背け、キラはビームサーベルを抜刀して左の空間に斬りつけた。

 

 

 

バチィッ

 

 

 

ビームが衝突する音が鳴り響き、そこにマスターガンダムがクロスを刃に変えて斬りかかっていた。

 

 

 

「やりおるわ!

 

しかし、先の技が貴様の最高の技ならば、ワシを倒すことは、不可能と知れ!!」

 

 

 

「ーーくっ、離れなきゃ!!」

 

 

 

「遅い、ダークネスフィンガァアッ!!」

 

 

 

放たれるマスターの必殺技に、フリーダムは、肩口のビームキャノンを咄嗟に放つ。

 

 

 

ズガァッ

 

 

 

二門のビームは、紫の光の掌に押し負け、破壊される。

 

 

 

「キラくんーーっ!!」

 

「被弾したのは、フリーダムか!!」

 

 

 

周囲の声に応えるように、キラは叫ぶ。

 

 

 

「ーーだけど、距離は開いた!!」

 

 

 

次に腰のレールガン二門を使って放つ。

 

ダークネスフィンガーを振り切ったマスターでは、二門のキャノンを防げない。

 

肉を切らせて骨を断つ、キラの捨て身の戦法だった。

 

 

 

「その意気や良し!!

 

ならば、ワシの本気の力で叩き潰してくれよう!!」

 

 

 

この意を汲むと、マスターはニヤリと笑い、両拳を腰において、明鏡止水の境地を発動した。

 

マスターガンダムが黄金の光を纏い、両の目が真っ赤に輝く。

 

 

 

「師匠が、ハイパーモードに!?」

 

「フリーダムは、そこまでの力を持つっていうのか!?」

 

 

 

弟子であり、明鏡止水を学んでいる彼らからすれば、師に本気を出させた「この世界のMS」に、複雑な心境を抱いた。

 

 

 

「ゆくぞ、キラ・ヤマトよ!!」

 

 

 

宣言すると同時に、目の前にマスターガンダムが現れる。

 

 

 

バギバギバキィッ

 

 

 

一瞬だった。

 

一瞬で、フリーダムは両腕を粉砕されたのだ。

 

 

 

「ぐうぅっ

 

でも、ぼくはまだやれる!」

 

 

 

背部のウイングバインダーを使い、姿勢を制御する。

 

使える武装は、頭部のMMI-GAU2 ピクウス76mm近接防御機関砲と腰のMMI-M15 クスィフィアスレール砲二門だけだ。

 

それでも、キラはまだ戦えると瞳を燃やす。

 

 

 

「フンっ、無駄なことはやめることだ。咄嗟に急所を避けたのは、褒めてやる。

 

しかし、その機体ではワシに敵うことはない」

 

 

 

マスターの宣言を受けても、キラはひるむことなく、言い返した。

 

 

 

「それは、わかってる! でも! だからって、退くわけにはいかないんだっ!

 

 僕の後ろには、オーブがある!!」

 

 

 

 気丈にマスターアジアを睨み返す。その目を真正面から受け、マスターも吠える。

 

 

 

「その気迫、見事。ならば来い! キラ・ヤマトよ!」

 

 

 

キラは腰につけてあるビームサーベルの2振りを左右の脚の付け根に装着する。

 

つま先からビームサーベルが形成された。

 

 

 

「てやああああ!」

 

 

 

気合とともにキラは一気にマスターガンダムに迫る。

 

 

 

「ふんっ!」

 

 

 

バチィッ

 

 

 

右足を顔面に蹴りこんでくるキラのつま先へ、マスターは右の回し蹴りを叩きつける。

 

 

 

「どうした? 気迫だけでは、ワシは倒せんぞ!!」

 

 

 

足のサーベルを押さえられたキラは、即座に腰の陽電子砲を、マスターガンダムの胸部へと突き付ける。

 

 

 

「ふん、此の期に及んで大した男よ」

 

 

 

バシュンッ

 

 

 

レール砲が放たれると同時に、超スピードでその場から消えるマスターガンダム。

 

 

 

「後ろっ!」

 

 

 

キラは叫ぶと同時に後ろ回し蹴りを後方に放つ。

 

先ほどは、両腕を犠牲にして受けるしかなかったマスターガンダムの動きを、キラは見事に捉えた。

 

左手で、ビームサーベルを受け止める黄金のマスターガンダム。

 

 

 

「ぬうっ! こやつ、反応速度が上がっておる?

 

 このわしを捉えるほどにか!」

 

「ぼくはまだっ! 負けるわけにはいかない!」

 

「その気迫はたいしたものよ。だが! ダークネス、フィンガァアアアア!」

 

 

 

 サーベルを受け止めていた左手に紫の光が宿り、一気にビームサーベルを押し返す。

 

 

 

ドガァッ

 

 

 

 フリーダムガンダムの左足が吹き飛ぶ。

 

 

 

「もらったぞ!!」

 

 

 

 そのままマスターアジアは、フリーダムの顔面に左のダークネスフィンガーを当てた。

 

 

 

「うわああああっ」

 

 

 

 コクピット内のキラにも衝撃が走る。

 

 何よりも明鏡止水のデメリットにより、ダメージがキラにもフィードバックしている。

 

 

 

「はぁああああ、はあっ!」

 

 

 

 マスターの気合と共に右手の光が爆発し、軽々と顔面を吹き飛ばされるフリーダム。

 

 

 

「くっ!」

 

 

 

 キラは健気にも、フリーダムガンダムの顔面を吹き飛ばされると同時に腰のレール砲を動かし、マスターガンダムを撃つ。

 

 

 

ドゴォッ

 

 

 

 だが、そのレール砲の直撃を食らっても、ハイパーモードを発動させたマスターガンダムには、わずかに後方へ下がる程度のダメージしか与えられなかった。

 

 

 

「くうっ」

 

 

 

 表情を歪めるキラ。

 

 そのフリーダムのボディに突き刺さるマスターガンダムの右手ーーダークネスフィンガーが決まった。

 

 

 

「ぐぁあああっ」

 

 

 

 完全に勝敗の決まった態勢に、マスターアジアが表情を静かなものに変えると告げた。

 

 

 

「惜しい、もう少し時を経ての勝負であれば、より良き勝負となったであろうにな。

 

 だが、今回は勝負あった。

 

 さあ、負けを認めぃ。貴様はよく戦った。このマスターアジアを相手にーー」

 

「まだだっ……!!」

 

「ぬ?」

 

 

 

 マスターの言葉を遮り、キラは睨みつける。

 

 

 

「まだだっ……!」

 

 

 

 突き刺さった腕を支えに、胴体だけとなったフリーダムガンダムは、レール砲をもう一度マスターガンダムに向ける。

 

 そのキラの闘志に、マスターアジアをして目を見開き、吠えた。

 

 

 

「その覚悟や、見事!!

 

 ならば、引導を渡してくれるわぁあああ!!」

 

 

 

「……っ!!」

 

 

 

 

 

「爆発ぁああああつっ!!」

 

 

 

 

 

 その様を見ていたアークエンジェルのマリューが泣き叫ぶ。

 

 

 

「やめてぇええ!! キラ君!!

 

 だれか、フリーダムを! 私たちの希望を守ってぇええええ!!!」

 

 

 

 マスターガンダムの右手から紫の光が膨張し、一気に爆発しようとした刹那ーーーー

 

 

 

「そこまでだぁああああっ!!」

 

 

 

 第三者の声が響くと同時に、緑に光り輝く光弾が、マスターガンダムを襲う。

 

 

 

バシィッ

 

 

 

 咄嗟に右手をフリーダムから引き抜き、光弾をはじくマスターガンダム。

 

 同時にフリーダムがフェイズシフトダウンし、胴体だけとなった機体は海面へと落ちていくーー。

 

 

 

「うわぁああああああっ!」

 

 

 

 そのとき、フリーダムの脱出装置が自動的に発動し、キラを上空へと吹き上げた。

 

 その先には、アークエンジェルがある。

 

 

 

「これはっ! フリーダム!!」

 

 

 

 キラには、自分の愛機が意志をもって自分を逃がそうとしてくれたように感じた。

 

 

 

「僕に……僕に、生きろっていうのか? フリーダムッ!!」

 

 

 

 胴体だけとなったフリーダムはキラの言葉に何かを返すことはなく、海面に水しぶきを上げながら、落ちていった。

 

 

 

「フリーダムガンダァアアアアアムッ!!」

 

 

 

 キラは涙を流しながら、巨大な質量が落ちたことによって出来上がった水柱を見据える。

 

 

 

どぼーんっ

 

 

 

 同時に、アークエンジェルの艦長マリューは、こちらに緊急脱出装置で飛び出てきたキラを見据えると、目に涙を浮かべたまま、鋭く指示した。

 

 

 

「キラくんを回収して!」

 

「りょ、了解!」

 

 

 

 ブリッジクルーの一人が答え、キラを回収に向かわせる。

 

 

 

「フリーダムが、フリーダムが、ああも一方的に……!」

 

 

 

 しかし、オーブの「自由」の象徴であった機体の完敗に、彼らはショックを受けていた。

 

 

 

 

 

 反対に、難敵であったフリーダムを落とせた連合側の士気はうなぎのぼりだった。

 

 

 

「さすが師匠だ! あんな化け物を相手に、完全に圧倒した!」

 

「だが、師匠を止めたあいつはーー? あの忍者が変身した機体に似てるぞ!!」

 

 

 

 マスターガンダムは、現れたトリコロールの機体を睨み据えた。

 

 

 

「ゴッドガンダムーー?

 

 いや、その両の手と足は、シャイニングガンダムかーー。ならば、ファイターは?」

 

 

 

 シャイニングガンダムは、静かにマスターガンダムを睨み据えると、拳を握って構える。

 

 

 

「東方不敗マスターアジア。

 

 もうこれ以上、俺の目の前で仲間を傷つけさせはしない!!」

 

 

 

「その声、貴様はーーキョウジ・カッシュなのか!!」

 

 

 

 目の前に現れた新たなるガンダムの出現に、マスターアジアをして目を見開いた。

 

 

 

 オーブの激戦は、まだ続くーーーー。

 

 

 

 

 

 

 

 




 みなさん、お待ちかね~!

 フリーダムの危機に駆け付けたキョウジ。

 彼の中に眠る力が、マスターアジアとの戦いで再び目を覚まします。

 はたして、この激戦の勝者はどちらなのかーー?

 次回、機動武道伝GガンダムSEED Destiny 第36話に!

 レディー、ゴー!!

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。