新機動武闘伝 GガンダムSEED Destiny   作:カンナム

36 / 103
みなさん、キラのフリーダムガンダムが、マスターの圧倒的な力の前に倒れました。

絶対絶命の危機に現れたのは、シャイニングガンダムに乗るドモン・カッシュの兄、キョウジ。

はたして、キョウジは、マスターと地球連合から、オーブを守り抜けるのでしょうか?

それでは、ガンダムファイト!!

レディィィィッ、ゴォォォオオオッ!!



第36話 最高の兄と最強の弟

 

「おい、ジッとしてろよ! 坊主!!」

 

 コジロー・マードック曹長は、アークエンジェルの甲板上に飛ばされたキラを艦内へと回収した。

 

 しかし、キラが向かった先は医務室ではなく、ブリッジであった。

 

「ありがとうございます、マードックさん。でも、この状況で寝てなんていられないですよ!!」

 

 

 

プシューッ

 

 

 

 ハッチが開き、ブリッジに入るとマリューが驚いた顔で振り返ってきた。

 

 

 

「キラ君、だめよ! 医務室で手当てを!!」

 

 

 

「かすり傷です。それよりも、アークエンジェルで出られる機体はありますか?」

 

 

 

「ーー悪いけれど、アークエンジェルに予備の機体はないわ」

 

 

 

「なら、砲撃主をやります。それぐらいなら、役に立てるはずです。このまま、黙って見ているくらいなら、皆さんと一緒に戦います」

 

 

 

「ーーわかったわ、キラ君」

 

 

 

 キラの強い瞳は、何を言っても聞かないと主張しているようだった。これを受け、マリューも反論少なく、キラに砲撃主の席につくことを認める。

 

 

 

(キョウジさん、どうか無事でーー!)

 

 

 

 モニターに写されているマスターガンダムと対峙するシャイニングガンダムを見据えて、キラは祈るしかできない自分を呪った。

 

 

 

 

 

ーーーーーーー 

 

 

 

 

 

キョウジの存在に、驚愕したマスターアジアは、明鏡止水の境地ーーハイパーモードを一旦解除した。

 

 

 

 そして、改めてオーブ付近の無人島の地面に立ち、向き合うキョウジのシャイニングガンダムと東方不敗のマスターガンダム。

 

シャイニングガンダムの胸部と頭が、ゴッドガンダムの物に変化している。

 

自身が闘ったデビルガンダムの進化形のように。

 

 

 

「シャイニングガンダムか? しかし、その姿はゴッドガンダムを模しておるようだな。

 

 デビルガンダムと同じく、それがネオジャパンのガンダムの最終形態であると判断したか」

 

 

 

 構えを取るマスターガンダムに、シャイニングガンダムも拳を胸の前に掲げて、構える。

 

 

 

「マスターアジア。

 

 あんたが、ドモンの師匠とは知らなかったな」

 

 

 

「キョウジ・カッシュ。

 

 ワシの大罪を裁くならば、ドモン以外では貴様をおいて他にあるまい」

 

 

 

何かを告げようとするマスターを遮り、キョウジは静かに語る。

 

 

 

「すべては済んだことだ。

 

 今更、終わったことを蒸し返しても何も変わりはしない。だが、マスター」

 

 

 

 キョウジは握りしめた拳に力を入れ、怒りに燃える眼差しをマスターアジアに向けた。

 

 

 

「たった今、キラを傷つけたアンタを、俺は許せそうにはない……」

 

 

 

この言葉に、マスターも拳を掲げて応える。

 

 

 

「よかろう、一人の武闘家として相手をしてやろう!

 

 ただの男であった貴様がDG細胞を得てどう変わったのか!

 

 そのシャイニングガンダムと共に試してやろう。この、オーブという国も含めてなぁ!!」

 

 

 

バキィッ

 

 

 

 鋭いマスターガンダムの踏み込み。

 

 そして、放たれた強烈な右ストレートを、キョウジは瞬きすらせずに左手で掴み止める。

 

 

 

「ーーやはり身体能力が、ガンダムファイタークラスに上がっておるようだな。

 

 さすがは、DG細胞よ」

 

 

 

(しかし、ワシの拳を止めたこと自体については、こやつの度胸を褒めるべきか)

 

 

 

鋭い眼差しを向けながら考えるマスターに、キョウジが動いた。

 

 

 

その動きは素人の動きではない。

 

踏み込みも、体運びも、全て理に適った武闘家の動きだった。

 

 

 

「ーーこの動きは!?

 

流派、東方不敗!?」

 

 

 

完璧なまでに洗練された、タイミングと姿勢から、手本になるようなフォームで放たれる。

 

よほどの生真面目な修練と研究を繰り返さなければできない動きだ。

 

 

 

「ーーだが、何故きさまが、我が流派を!?」

 

 

 

マスターをして、当然の疑問だった。

 

彼が武術を教えたのは、ドモン・カッシュであって、その兄キョウジ・カッシュには何も伝えてはいない。

 

流派東方不敗を学ぶ機会などないはずだ。

 

 

 

( シュバルツが伝えたのか?

 

いや、ゲルマン忍術ならばともかく、東方不敗を学ばせる必要などない。

 

そもそも、シュバルツとキョウジは現在別々に行動しておる。

 

技を教える暇などない。独学で東方不敗を学んだと?)

 

 

 

頭に浮かんだ考えを否定しながらも、次々に放たれる拳蹴打を捌くマスターアジア。

 

その時、一つの仮説が生まれた。

 

 

 

( まさか、こやつーー。

 

シャイニングガンダムの戦闘データを研究したのか?

 

その動きを体と頭に叩き込んだと?)

 

 

 

無くはない話だ。

 

優れたガンダムファイターであるシャッフル同盟やシュバルツ・ブルーダーの身体能力ならば、見ただけで型は真似れる。

 

 

 

身体能力ならば、DG細胞の強化があるため、分かる。

 

問題は、技術だ。

 

 

 

本来、武の技術は己の体を痛め抜き、学ぶもの。体に覚えさせるものなのだ。

 

それが出来て初めて頭脳が生きてくる。

 

しかし、キョウジ・カッシュは、凡人よりは優れた肉体を持っていたが、科学者だ。

 

殴り合いの技術など、全く学んでいないはず。

 

だというのに、自分が戦ったデビルガンダムの進化体よりも、遥かに自分の動きとして、流派東方不敗の動きを体に染み付かせている。

 

 

 

バキィッ

 

 

 

強烈な右ストレートを左手で捌きながら、マスターはキョウジを睨み据えた。

 

 

 

「その動きーー。

 

 貴様、いつ我が流派を、どこで学んだ?」

 

 

 

「ーー弟からさ」

 

 

 

「ーー何ぃ?」

 

 

 

淡々と応えたキョウジに、マスターアジアは目を見開く。

 

その動揺を見逃さないように、キョウジは左拳を3発鋭く放った。

 

 

 

パパパァンッ

 

 

 

咄嗟に右拳で、弾くマスター。

 

マスターも返しの左の貫手を放つ。

 

キョウジは体を左脇に半歩ずらし、体を入れ替えながら、貫手を避けた。

 

 

 

バキィ

 

 

 

同時に跳び、宙で後ろ回し蹴りを放ちあい相殺するシャイニングガンダムとマスターガンダム。

 

 

 

「ドモンがこの世界に来ておるのか!?」

 

 

 

「いや、シャイニングガンダムの中にドモンの魂がある。だから、俺は学べるんだ!!」

 

 

 

ドゴォッ

 

 

 

落雷のような打撃音が響く。

 

互いに蹴りを弾きあい、放たれた右ストレートがぶつかる。

 

お互いの拳が衝突した余波で、地面が割れ、周囲の雲が流れ、海面が波打つ。

 

 

 

「夢の中で、ドモンならばどう動くのかを考えていた。

 

その後は、ひたすらに現実で、鏡の前での型の訓練をしていたよ。

 

 おかげで今なら、考える前に体が動くくらいにな!!」

 

 

 

「独闘だけで、ここまで鍛えられただと?」

 

 

 

驚くべきは、キョウジの勤勉さか?

 

才気に溢れていながら、奢ることなく、基本の努力を積み重ねる。

 

簡単なようでなかなか、できることではない。

 

 

 

「オーブに来てから、激戦続きだったんでな。

 

 敵のイメージには事欠かなかった…。

 

 練習相手なら、キラやバルトフェルド達がいた。

 

 アンタとのバトルも、シャイニングのデータから学べたからな!!」

 

 

 

「あの小僧が明鏡止水を使えたのも、それでか。

 

ならば、どこまでやれるか、このワシに見せてみよ!!」

 

 

 

ドガガガガァッ

 

 

 

互いに無数の拳と蹴りを繰り出しあう、乱打戦が始まる。

 

1秒間に数十発の打撃の交換をしながら、両者はクリーンヒットを互いに許さない。

 

 

 

「どうやら、遠慮はいらんようだな」

 

「イメージなら、とっくに倒せてるんだが。やはり、本物は、違うな」

 

 

 

バキィッ

 

 

 

強打を互いに繰り出しあい、離れて構えを取る。

 

 

 

 半歩、踏み込むだけで、キョウジには違う世界が見えている。

 

 ストレートを放てば、何を返されるかも想像がつく。それに対してどう返せば良いのか。

 

 何ができて、何ができないかを分析する。

 

 力の探り合い、勝負の駆け引き、心理戦と言って良い戦いをキョウジはマスターアジアに挑んでいる。

 

 

 

 1秒間に数十発の拳蹴打を放てるスピードを先の立ち合いで示しながらも、どう崩すべきかを考え、隙あらばシャイニングフィンガーを繰り出そうとするキョウジ。

 

 対して、マスターアジアは明らさまなフェイントには、引っかからず、放たれた攻撃の打ち終わりには必ず拳を返す。

 

 単純な殴り合いではない、心理戦と頭脳戦を絡めた戦いに、緊張感が走る。

 

 

 

「あんな近くで、あれだけ拳をぶつけあってんのに、当たらないのかよ」

 

「あの時の忍者とは、また違うなーー」

 

 

 

 シュバルツとマスターの対決は小細工抜きの真っ向勝負。ハイレベルな力と力、技と技の攻防だった。

 

 しかし、キョウジとマスターの対決は、単純な乱打戦にはならない。

 

互いに間合いを図り、目や肩を使ってのフェイントをおりまぜ、一撃必殺のフィンガーを当てる隙を探り合っているのだ。

 

 迂闊な攻撃は、隙を生み、敵に攻撃を与えるきっかけになる。

 

 

 

(これが、本当の東方不敗マスターアジアか。俺のイメージやミケロより、はるかに強い。

 

 急ごしらえのファイトスタイルでどこまで持つかーー。

 

 地力では分が悪いのは明らかだ)

 

 

 

 ステップを刻みながら、キョウジは頭で考える。

 

 マスターの攻撃パターンは、頭の中にすでに入っており、癖も見抜いた。

 

 しかし、それらを突いても、状況は変わらず。

 

 キョウジの攻撃は一度たりとも当たらない。

 

 それだけでなく、こちらの攻撃の打ち終わりを完全に狙われて反撃されている。

 

 

 

「大したものよ。つい先日までガンダムファイターでなかった貴様が、ここまでのレベルになるとはな。

 

賞賛に値する。

 

しかし、貴様ほど聡ければ既に気付いていよう。

 

このままでは、ワシには絶対に勝てんとな!!」

 

 

 

「ーーッ!!」

 

 

 

マスターの宣言にキョウジの額に冷や汗が浮かび上がる。

 

経験と技術が違い過ぎるのだ。力とスピードも大した差はない。

 

確かにクリーンヒットは今の所ないが、それはマスターアジアがキョウジの実力をはかっているからだ。

 

 

 

「さあ、小細工はもう良かろう。

 

出し惜しみをして倒されては元も子もあるまい」

 

 

 

 

 

 マスターは静かに拳を握るとキョウジの前に掲げた。

 

 

 

「こんな風になぁ!!」

 

 

 

 突然目の前でマスターガンダムが姿を消す。

 

 

 

ドグゥッ

 

 

 

 マスターの強烈な右拳がみぞおちに入っていた。思わず、前のめりになるキョウジ。

 

 

 

「ーーぐぅっ!?」

 

 

 

「この程度ならば、あのキラという小僧の健闘にすら報えぬぞ! キョウジ! シャイニングガンダム!!」

 

 

 

ドガァッ

 

 

 

 マスターガンダムの左拳がシャイニングガンダムの右頬を捉え、後方へ弾き飛ばす。

 

 

 

ピシュンッ

 

 

 

 同時にマスターガンダムは超スピードでその場から消え、吹き飛んでいるシャイニングガンダムの背後に回ると、強烈な右蹴りを真上に振り上げた。

 

 

 

バキィッ 

 

 

 

 すさまじい炸裂音が響き渡り、シャイニングガンダムが天高く吹き飛ばされる。

 

 

 

シュゥンッ

 

バギィッ

 

 

 

 天頂高く飛ばされた先には、更に超スピードで回り込んだマスターの強烈な右拳の打ち下ろしが背中を痛打し、地面に叩き落された。

 

 

 

ズドォォオオンッ

 

 

 

 土煙を上げながら、巨大な穴を地面に開ける。

 

 

 

 その前にマスターガンダムは悠然と降り立った。

 

 

 

「貴様らの腕はそこまでか? キョウジよ」

 

 

 

 穴の底から、シャイニングガンダムがバーニアを噴射させて跳び、地面に降り立つ。

 

 

 

(ここまで力の差があるのかーー。できる限り、温存したかったが、このままじゃ駆け引きにもならない。

 

 スーパーモードを使うしかないーー!)

 

 

 

 キョウジはマスターを睨み据えると、一呼吸置いて両の拳を握り、腰だめに構えて、気合いを入れた。

 

 同時に、シャイニングガンダムの足元から気の波が生じ、両足のカバー、両肩、腕のカバーが展開する。

 

 

 

 そして、最後に胸のカバーが開き、エネルギーマルチプライヤーと呼ばれるエメラルド色のクリスタルが金色の光を放つ。

 

 

 

「ーーこれは、シャイニングガンダムのスーパーモードか!!」

 

 

 

「これなら、どうだ!!」

 

 

 

ピシュンッ

 

 

 

 気合と共に、シャイニングガンダムが超スピードでその場から掻き消える。

 

 

 

「おもしろい! 貴様のスーパーモード、まやかしかどうか見せてもらおう!!」

 

 

 

 マスターガンダムも構えを取ると同じように、地面を蹴って掻き消える。

 

 

 

 両者は、肉眼ですら映らないほどのスピードで、地面を、空を、海上を駆け回りながら、拳と蹴りを繰り出しあう。

 

 

 

ドガガガガガガァッ

 

 

 

 あたりには、衝撃波と炸裂音が響き渡っていく。

 

 

 

 次に両者が現れたのは、空中。

 

 互いに右ストレートを放ちあい、拳同士をぶつけて、衝撃を相殺し静止した姿勢での登場だった。

 

 

 

「やりおるわ。このワシにここまでの動きをさせるとはな!!」

 

 

 

(スーパーモードでようやく互角か。これが、東方不敗マスターアジアの実力ーー!)

 

 

 

 互いに拮抗した戦いを繰り広げているが、キョウジにはこの戦いの先が見えている。

 

 

 

 スーパーモードは確かに強力無比な身体能力の強化だが、無制限にできるわけではない。パワーとスピードが上がったとはいえ、互角の状況では倒せない。

 

 

 

「ならばーー!!」

 

 

 

「! 来るか!!」

 

 

 

 右拳に気をため、緑色の光を放ちながら、力を解放する。同時にマスターガンダムも右拳から紫の光を放ちだす。両者、拳を解き、互いに手を組み合いながら、技を放った。

 

 

 

「シャァアアアイニングゥウウウ!!」

 

 

 

「ダァアアアアアクネスゥウウウ!!」

 

 

 

「「フィンガァアアアア!!!!」」

 

 

 

ズガガガガァッ  

 

 

 

 辺りに雷が降り注ぐ。

 

 二人の力によって周りがすべて吹き飛ばされていく。

 

 

 

ーーーーーー

 

 

 

 地球連合軍の艦隊も、雷の壁をやぶったことにより、オーブへの侵攻を開始しようとするも、この異常なまでの力と力のぶつかり合いのせいで、進軍することができずにいた。

 

 

 

「なんだ、このとんでもない力のぶつかり合いはっ!?」

 

 

 

「天が、天が荒れているっ!」

 

 

 

「海が、海が割れるぅううっ!」

 

 

 

「なんなんだ、なんなんだあいつらはぁああああっ!」

 

 

 

「ファントムペインはあんな化物を飼っているのかっ!?」

 

 

 

「それよりも、あんな化物と渡り合えるオーブの機体はなんなんだっ!?」

 

 

 

 あまりの力と力の対決に、もはや声もない連合のパイロットや戦艦の乗組員たち。

 

 彼らの常識やMSでは到底太刀打ちできないレベルの戦いが、今、目の前で展開されている。

 

 

 

ーーーーーー

 

 

 

 これを母艦ガーティー・ルーのブリッジ内で見ていたスティングとアウルも拳を握りしめていた。

 

「師匠と互角の力だ……! やはりあの機体、MFだったのか」

 

「ダークネスフィンガーと互角ってことは、とんでもない威力だな。力だけなら、間違いなく僕らより上だぜ」

 

 

 

 二つのフィンガーのぶつかり合いは、先のガンダムシュピーゲルが変身したゴッドガンダムとの対決を彷彿とさせる。

 

 

 

 ガーティ・ルーの艦長であるイアンも二人の言葉と目の前の現実に顔の色を失くしていた。 

 

 

 

「東方先生を止めれるやつが、フリーダム以外にいるなんてーー。

 

 このオーブって国はどうなってるんだーー!?」

 

 

 

ーーーーーー

 

 

 

 一方で、アークエンジェルのブリッジで観戦していたキラも表情を曇らせていた。

 

 

 

「デビルガンダムをも退けたシャイニングフィンガーでも、押し切れない!!

 

完全に互角だっ!!」

 

 

 

「ダークネスフィンガーで互角、ならそれ以上の技は防げないわっ!」

 

 

 

 キラとマリューの言葉に、周りの者が驚いた顔をして見返す。

 

 

 

「あれ以上の技があるんですかっ!?」

 

「……マスターガンダムはまだハイパーモードになってない。あれを発動されたら、キョウジさんはっ」

 

 

 

 キラの返答に、ハイパーモードと言うのが、フリーダムを倒した黄金の形態である事を連想したクルー達は、事態の深刻さを理解し、思わずシャイニングガンダムを見る。

 

 

 

「それじゃっ、この戦いは……!」

 

「だけど、キラ! あのシャイニングガンダムってやつも金色になれるんじゃないのか」

 

 

 

 クルー達の言葉に、キラも弱ったような表情になりながら答える。

 

 

 

「いえ、今のシャイニングガンダムは前のシャイニングガンダムよりも機体の性能そのものが上がってます。

 

だから、明鏡止水を使っても、人機一体の境地に達してなければ、機体は金色にならないんです。

 

キョウジさんがシャイニングを使いこなすレベルに達していなければ、シャイニングガンダムは真のスーパーモードになれない!」

 

 

 

キラの言葉にマリューも表情を固くする。

 

 

 

「機体の性能が上がったということは、それだけパイロットも技能を上げなければならない……。これが明鏡止水なのね」

 

 

 

明鏡止水や人機一体の境地の奥深さを、キラやマリューはこの戦いから垣間見ていた。

 

 

 

ーーーーーー

 

 

 

緑と紫の光をぶつけ合う両者であるが、決して引くことはない。

 

そんな中、マスターアジアが、吠える。

 

 

 

「そこまでか。そこまでのモノに過ぎんか。これではオーブを護ることなど、無理の一言よっ!」

 

 

 

猛虎の如き咆哮を上げながら、黒い鬼を思わせるガンダムが、その両目を真っ赤に輝かせる。

 

 

 

「足りぬっ! 足りぬわぁあああっ!」

 

「ぐあああぁぁっ」

 

 

 

ズガァッ

 

 

 

マスターガンダムは、ダークネスフィンガーのパワーを上げ、シャイニングガンダムをフィンガーの気ごと、吹き飛ばした。

 

当然シャイニングガンダムは、後方に吹き飛ばされ、慣性に従って背中から地面に叩き落される。

 

 

 

ドザァッ

 

 

 

何とか、体を起こすシャイニングガンダムの目の前に、マスターガンダムは、両腕を組んだ姿勢でいた。

 

 

 

「このワシのダークネスフィンガーは、シャイニングガンダムの後継機であるゴッドガンダムと互角!

 

 ただのシャイニングフィンガーなど、ワシには通用せんわ!

 

 機体の性能はたしかにDG細胞によって上がったようだな。だが、その程度ではワシには勝てん。

 

鍛え上げた修練は認めるが、それもここまでというのなら拍子抜けよ!!」

 

 

 

マスターの宣言に、キョウジは悔しそうに顔を歪めた。

 

 

 

「くっ、デタラメな強さだ……!

 

 ミケロ・チャリオットなんか、比じゃない!!」

 

 

 

翼を大きく広げ、マスターガンダムは、前傾姿勢になると更に告げる。

 

 

 

「キョウジよ、これが真のガンダムファイターの強さだ!!

 

さあ、その身に刻み込むがいい!!」

 

 

 

ピシュンッ

 

 

 

地を蹴り、一気にダッシュするマスターガンダム。そのスピードは、最早モニターには映らない。

 

対峙するキョウジのシャイニングガンダムもまた、膝をついた姿勢から、消えた。

 

 

 

ズドォッ

 

 

 

次の瞬間、拳をぶつけ合う両者の姿が現れる。

 

 

 

バギバギバキィッ

 

 

 

そのまま、慣性に逆らいながら、凄まじい拳と蹴りの交換を行う。

 

 

 

「そこまでかっ! キョウジ・カッシュ!」

 

 

 

パシィッ

 

 

 

乱打戦の中、放たれたキョウジの右ストレートを受け止めて、右ストレートを顔面に返す。

 

 

 

バキィッ

 

 

 

捉えられたシャイニングガンダムは、はるか後方に吹き飛んだ。

 

 

 

「ぐ、ぅぅっ」

 

 

 

スーパーモードは切れていないものの、とてつもない拳を返されて痛烈なダメージを負うキョウジ。

 

途切れそうな意識を集中させ、スーパーモードを持続させる。

 

 

 

「俺がここで倒れるわけにはっ! 負けるわけにはいかないんだっ!!」

 

 

 

立ち上がりながら、拳を構えて宣言するキョウジに、マスターが告げた。

 

 

 

「その気構え、気迫は見事。

 

しかしワシの相手をするには、十年早いわっ!

 

 さあ、このオーブと言う国とともに眠るがいいっ!」

 

 

 

ドゥンッ

 

 

 

気を高め、マスターガンダムが右拳を振りかぶりながら、シャイニングガンダムに殴りかかる。

 

 

 

ーーーーーー

 

 

 

立ってスーパーモードを持続するのが、やっとのキョウジにマスターガンダムの拳を返す術などない。

 

 

 

「ーーキョウジさん!!」

 

 

 

キラが、叫んだその時、禍々しい気を孕んだ黄金の光の柱が、シャイニングガンダムから放たれた。

 

 

 

「ーーッ!?」

 

 

 

ーーーーーー

 

 

 

ドゴォッ

 

 

 

凄まじいカウンターの一撃にマスターをして下がるしかなかった。

 

 

 

その拳は、先ほどまでのような生真面目で洗練されたものではない。

 

 

 

無造作に、力任せに放たれただけの拳。

 

しかし、その威力と鋭さは、先ほどまでとは一線を画す。

 

まるで、野に生きる獣の如く無駄のない一撃ーー。

 

 

 

「ーーこの殺気にして、この威力。できる!

 

貴様、一体、何者だ!?」

 

 

 

マスターは、今、目の前にいる男が、先ほどまで闘っていた相手とは決定的に違うことを見抜いていた。

 

 

 

「ーーフ、フフフ、フハハハハハハッ!!!」

 

 

 

男、キョウジは口の端を歪めると、笑った。

 

 

 

それは、哄笑。それは、狂笑。それは凶笑。

 

 

 

ありとあらゆる意味で不吉な笑み。

 

 

 

人の口から放たれたとは思えないほどに、その場にいる人々に恐怖を与える笑い声ーー。

 

 

 

モニターに現れたキョウジの顔は、邪悪にして純粋な殺意に瞳を吊り上げ、口元に狂気を思わせる笑みを浮かべている。

 

 

 

「ーーもう一度、聞いておく。

 

貴様は、何者だ? この気配、ワシの記憶にある悪魔そのものだ」

 

 

 

マスターの問いかけに、キョウジは笑い声をピタリと止めると、圧倒的な殺意を放つ凶眼でマスターを睨み据えると静かに、知的でありながらも邪悪な笑みを浮かべた。

 

「ーー俺か?

 

俺は、キョウジ・カッシュさ。マスターアジア。

 

いや、我が子。マスターガンダムよ」

 

 

 

「戯言を。

 

このマスターガンダムを我が子、と呼ぶならばーーデビルガンダムに違いあるまい。

 

確かに、貴様から感じる気は、デビルガンダムを名乗っていた奴よりもワシの記憶にあるデビルガンダムに近い。

 

いや、デビルガンダムそのものよ!!

 

しかしーー!!」

 

 

 

マスターをして、頭を悩ませる状況だった。

 

キョウジの中にもDG細胞があった。それは、分かる。

 

 

 

問題は、本体のはずであるDと名乗ったデビルガンダムのそれよりも、今のキョウジから発せられる気の方がマスターアジアのデビルガンダムのイメージそのものであるということだ。

 

 

 

で、ありながら、キョウジは自身をデビルガンダムとは名乗らず、キョウジと名乗った。

 

 

 

傀儡と化していたあの頃とは、明らかに違う明確な殺意を放ち、あの頃と変わらない全てを問答無用でひれ伏せる重圧をその身から放ちながら。

 

 

 

「ーーデビルガンダムの意志を取り込んだのか?

 

キョウジ・カッシュの執念が、デビルガンダムのプログラムによって作られた人格を取り込んだとーー?」

 

 

 

マスターが、仮説を立てながら、問いかける。これに、キョウジと名乗った悪魔の気を放つ男は、拳を握りしめて答えた。

 

 

 

「俺は、キョウジだ。母を討たれ、父を貶められ、悪魔を生み出し、弟に辛き役割をさせるしかなかったーー。

 

無力な俺を憎む俺自身だ!!」

 

 

 

「なんだと?

 

ならば、貴様は、キョウジ・カッシュそのものだと、自身の非力を嘆き、憎み、デビルガンダムの力と意志をその身に取り込んだと言うのか!?」

 

 

 

シャイニングガンダムは、ゴッドガンダムに瓜二つになったその顔をマスターガンダムに向け、右拳を握ると、その目から、涙を流していた。

 

まるで、ドモンが、兄であるキョウジの悲しみを想うかのようにーー。

 

 

 

「ーーむう、キョウジよ」

 

 

 

 そのキョウジとシャイニングガンダムの姿にマスターアジアをして思わず唸るほどの悲しみが伝わってくる。

 

 

 

「……俺は、無力だった。

 

母さんを殺されて、父さんを囚われて、逃げるしかない自分を責めた。

 

 父を貶めたミカムラ博士への恨み、母を殺めたウルベへの憎悪が、アルティメットを悪魔(オレ)へと変えた。

 

しかし、弟に涙を流させながら、それでも……俺を討たせなければならなかったキョウジ(人間)の怒りと嘆きがーー。

 

ドモンの涙が、俺とキョウジを一つにさせたのだ」

 

 

 

キョウジは、強き意思を目に宿し、言う

 

 

 

「二度と誰かに繰り返させはしない。

 

こんな、こんな悲劇は!!

 

 こんな思いは、俺たちだけで、十分だ!!」

 

 

 

シャイニングガンダムが、その瞳から涙を流しながら、明鏡止水の境地に達し、肩や足、腕を展開させて、胸部のクリスタルから、緑に輝くビームクロスを引き抜いて、タスキがけにすると、黄金のハイパーモードに変身した。

 

 

 

「マスターガンダム、いや。マスターアジアよ。

 

オーブを討つと言うのなら、この俺を殺しに来い!!

 

その方が俺も遠慮がいらん!!」

 

 

 

強烈な狂気とも言える殺意を纏い、明鏡止水の境地に達する男。

 

二律背反ーー矛盾そのものと言える、目の前にいる敵。

 

 この男は、恐ろしいまでに、冷酷で、荒々しく、猛々しく、そして気高い。

 

 

 

「ーー面白い。

 

よもや、シュバルツだけでなく、そのオリジナルである貴様も、ワシが全力を出すに値する相手であったか。

 

ならば、キョウジよ。

 

 貴様の全てをワシにぶつけて来るがいい!!

 

 そして見事、我が流派を体得して見せよ、我が愛弟子ドモン・カッシュの兄よ!!」

 

 

 

悪魔の力を放つキョウジは、黄金の気柱を立て、一度全ての感情を消したように無表情になると、氷のような静けさと狂気を纏いながら、問いかけてきた。

 

 

 

「ガンダムファイト!! ーーーーレディ?」

 

 

 

「ゴォォォオオオッーー!!」

 

 

 

対するマスターアジアは、炎の熱さと黄金の鬼気を纏ってハイパーモードになりながら、叫び返した。

 

 

 

ドゴォァッ

 

 

 

再びぶつかり合う、力と力。

 

 

 

今度の乱打戦は、ガップリ4つに噛み分けるーー本当の五分と五分。

 

 

 

正真正銘の、真剣勝負だ。

 

 

 

両者のスピードもパワーも、先ほどまでとは桁が違う。

 

 

 

明鏡止水の境地に至った武の極みに通ずる者同士の力と力の対決は、人外と言って良いほど、あり得ないエネルギーを見せ合う。

 

 

 

「ーーやりおるわ。

 

文字通り人が変わったような荒々しい攻めながら、急所を正確に射抜く的確さ。

 

狂気や怒りに飲まれることなく、それさえも戦法に利用するとは。

 

正に氷の如き殺意ーー!!」

 

 

 

「ーーぬかせ。

 

俺の攻撃を全て返しながら、ベラベラと喋る男のセリフか」

 

 

 

キョウジは、静かに淡々とマスターガンダムを壊す一撃ーーー右ストレートを放つ。

 

対峙するマスターは、その一撃を見事に技ーー放たれた右拳の付け根に左拳を合わせるーーを持って受け流し、強烈なカウンターの右拳を返す。

 

 

 

しかし、武の極致とも言えるその一撃は、マスターをして人外と思わせるキョウジの反応速度によって躱され、放ったカウンターに、左拳のカウンターを重ねてきた。

 

 

 

( なるほど、これがドモンが何か一つでも勝ちたいと願った男の実力か。

 

相手を葬るという凶気に心を黒く染めながら、冷静に物事を捉えて状況を考え、攻撃してくる。

 

更に反応速度と身体能力は、DG細胞により、ワシすらも凌駕しておる)

 

 

 

自分よりも上の力とスピードの相手に、マスターは技を持って応える。

 

足を止めての真っ向勝負ーー。

 

 

 

打たれながら、打つ。

 

 

 

しかし、両者とも、当たらない。クリーンヒットすれば、その時点で一気に連打に飲み込まれ、瞬く間に倒されるだろう。

 

 

 

この乱打戦は、そういう戦いだ。

 

 

 

( 避けづらいーー。

 

しかも一発一発が強打であり、連打。

 

当たれば仰け反り、ラッシュに飲まれるのは、必定。攻撃に攻撃を重ねる正に炎の如き、攻め。退くことなど、頭から考えてない。威風堂々たる格闘技。

 

これが、流派東方不敗、かーー!!)

 

 

 

両者の攻撃レベルは高く。

 

一撃一撃が、食らってのけぞろうものならば即、必殺技の間合いに通じる。

 

紙一重のやり取りは、互いの神経という糸を、限界まではりつめる。

 

 

 

まともな人間ならば、この緊張感にとても我慢できず、自分からミスを侵すであろう、やり取り。

 

 

 

実力が互角ならば、後はどちらの精神力が勝るか、だ。

 

 

 

キョウジの凶気を孕んだ冷徹な判断と洞察力か?

 

マスターの鬼気に迫る強烈な闘志と意地か?

 

互いの意地と意地が掛かった戦い、故に両者退かない。

 

 

 

バギィッ

 

 

 

 強烈な炸裂音と共に、後方へ首を弾き飛ばしたのは、キョウジ。

 

 

 

「「キョウジさんーー!!」」

 

 

 

 キラとマリューが同時に叫ぶ。

 

 

 

「もらったぞーー!!」

 

 

 

 追撃を仕掛けようと拳を振りかぶるマスター。

 

 

 

ドゴォッ

 

 

 

 次の瞬間、キョウジの一撃がクリーンヒットし、マスターの首がのけぞっていた。

 

 

 

「「師匠ーー!!」」

 

 

 

 スティングとアウルも師の名を呼ぶ。

 

 

 

 当の二人は、互いに凄絶な笑みを浮かべながら、拳を振りかぶっている。

 

 

 

「やるではないか、キョウジよ!

 

ーー血が滾るわ、久しぶりになぁ!!」

 

 

 

「ほざけ、マスターアジア。

 

すぐにその煩い口を閉ざしてやるーー」

 

 

 

「ぬかしよるわぁ!!」

 

 

 

「ーー貴様がな!!」

 

 

 

牙をむき出しにして、二匹の鬼は殴り合う。

 

 

 

ーーーーーー

 

 

 

 どれだけ殴り合ったのだろう。

 

 

 

 ただ激しく、ただ強くぶつかり合う両者の対決は、オーブの戦域を所狭しと駆け回り、拳を、蹴りをぶつけ合う。

 

 

 

バギィッ

 

 

 

 何度目になるかわからない、マスターの強烈な一撃に、後方にのけ反るキョウジ。

 

 

 

「勝機ーー! 流派、東方不敗!!

 

 十二王方牌大車併!!」

 

 

 

放たれるは、気により具現化した小型の分身ーー。

 

 

 

「しゃらくさい真似をーー。

 

シャイニングフィンガー・ソード!!」

 

 

 

対するキョウジは、ビームサーベルを腰から引き抜くと、シャイニングフィンガーのエネルギーをサーベルに凝縮し、巨大な剣を作り上げた。

 

 

 

ーーーーーー

 

 

 

「マリューさん、全軍に退避命令を!!」

 

「え、ええーー!!」

 

 

 

キラの言葉に、マリューも叫ぶ。

 

緊急時に開発された信号弾の意味を持つビームをアークエンジェルは放った。

 

 

 

同時にアスハ全軍が、連携して退避する。

 

 

 

対する地球連合軍も、この異常なエネルギーを観測しており、全軍に退避命令を出していた。

 

 

 

「何て、とんでもない力と力なんだーー!!」

 

「ちくしょう、僕たちじゃ。師匠の役にも立てないのか」

 

 

 

あまりの力量差に、ガーティー・ルーのブリッジにいたスティングやアウルも、絶望的な表情になる。

 

 

 

「非常識極まりないな、本当にーー。

 

だが、なんて美しい光なんだーーーー!」

 

 

 

自分にも毒が回ってきたのか、そう冷静な言葉を胸中で漏らしながら、イアン・リー艦長は二つの極大の力を見据える。

 

 

 

まるで、神話やおとぎ話のような、天変地異を平然と起こしながら、戦う二機をーー。

 

 

 

ーーーーーー

 

 

 

渦を巻いて迫り来るマスターの分身に、キョウジはエネルギーの大剣を横薙ぎにぶつける。

 

 

 

ズガァッ

 

 

 

二つの巨大なエネルギーの衝突は、オーブの海にまるで太陽を生み出したかのような強烈な光と衝撃波を放ち、一瞬後に爆発する。

 

 

 

ドゴォォォォォオオンッ

 

 

 

光と衝撃波の奔流と、天を突く巨大な煙の柱。

 

 

 

「こ、こんなとんでもない力と力がぶつかったんだ!

 

MSなんか、ひとたまりもないぞ!!」

 

「こんな爆発を起こした二機は影も形もあるまい。

 

規模は小さいが、アラスカのサイクロプス以上の爆発力だーーーー。

 

MSでそれだけのエネルギーを放出できること自体、異常なことだがーー」

 

 

 

連合の士官同士が、互いに顔を見合わせながら、状況を確認する。

 

 

 

しかし、大方の人の予想を裏切り、 天を突く巨大な煙が巻き上がり、その煙が晴れると。

 

 

 

汚れでボロボロになりながらも、黄金の気を纏い、五体満足で仁王立ちして向かい合う、二機のガンダムがいた。

 

 

 

「ーー両機、健在です!!」

 

「な、なんだと!! バカなーー!!」

 

 

 

連合、オーブ共に、あまりにもーー。

 

あまりにも非常識な力と力のぶつかり合いは、両軍の動きを完全に止めていた。

 

 

 

「ーーよかった、キョウジさん」

 

 

 

胸を撫で下ろすマリューの隣で、険しい表情を崩さないキラ。

 

 

 

( これが、真の明鏡止水ーー。

 

人機一体の境地は、ここまで、強くなれるのかーー!!)

 

 

 

「ーーだけど。シャイニングの最高の技の一つであるシャイニングフィンガー・ソードで互角なら。

 

マスターアジアの最終奥義、石破天驚拳は破れないーーーー!!」

 

 

 

「「「ーーーーっ!!!」」」

 

 

 

キラの言葉にアークエンジェルクルーが、一斉にモニターを凝視した。

 

 

 

「ーー師匠の勝ちだな」

 

「ああ。良く食い下がったが、石破天驚拳を破ることはできねーだろ」

 

 

 

アウルとスティングの脳裏には、先のデビルガンダムとの対決が思い起こされていた。

 

 

 

そうーー、一撃であの悪魔を葬り去ったあの技ならば、絶対に勝てる。

 

 

 

彼らは、自分達の師の勝利を疑っていないのだーー。

 

 

 

ーーーーーー

 

 

 

傷を負い、ボロボロになりながら、それでも睨みつけあう両者。

 

 

 

ここまで、自分を追い詰めた強敵(とも)に、マスターアジアは、静かに語りかけた。

 

 

 

「ーーキョウジよ、貴様は良く闘った。

 

しかし、これ以上、この勝負を長引かせる訳にはいかん。次の一撃で終わりにさせて貰おうーー!」

 

 

 

これにキョウジは、人を射殺せるような、鋭い瞳で淡々とした口調を返す。

 

 

 

「ああーー。貴様の、敗北でなーー!!」

 

「ーー言うてくれるわぁあああっ!!」

 

 

 

さらに気を高めあう両者。

 

体が傷つき、スタミナが限界に達しようと言うのに、両者の気迫は、衰えるどころか高まっていくーー。

 

 

 

マスターガンダムが右手を前にかざし、光を高めていく。その黄金の光の球を胸の前に両手で抱えると、右腰にそのまま持っていき、腰だめに構える。

 

 

 

「ーー我が、流派!

 

東方不敗が、最終奥義!!

 

石破ぁ! 天驚ぉぉおおお拳ぇぇぇぇんっ!!!」

 

 

 

気合いと共に放たれる、黄金の光の奔流ーー。

 

全てを飲み込む、圧倒的なビームの先端には、紫色に輝く「驚」一文字ーー。

 

 

 

「未だ、我が弟子ドモン・カッシュ以外に破られた事のない、この技を!

 

どう破る!?

 

ドモンの兄! キョウジ・カッシュ!!」

 

 

 

キョウジは、全神経とエネルギーを右手に集中させていた。シャイニングガンダムの右手が、黄金に光り輝く。

 

 

 

同時に背部のフィンが上に引き上げられ、バーニアは黄金の光の輪を象る。

 

 

 

「ーーーー終わらせる。

 

シャァアアアイニングゥゥウ!!

 

ーーーーフィンガァアアアアアアッッ!!!」

 

 

 

放たれたフィンガーは、エネルギーを楯状に展開する。

 

 

 

ーーーーシュオッ

 

 

 

黄金の光線と光壁が、音にならない音を立てて、激突した。

 

 

 

バチバチバチィッ

 

 

 

光と光は、互いにせめぎ合い、押し合う。

 

 

 

「ーーーークゥッ!!」

 

 

 

苦悶の声を上げたのは、キョウジ。

 

 

 

マスターガンダムの光線に、シャイニングガンダムは気を抜けば、一気に持って行かれそうになる。

 

 

 

片膝をつきそうになりながらも、それでも、足を踏ん張り、腰を入れて構えを崩さない。

 

 

 

「わっははははは!

 

見事よ、キョウジ。

 

よくぞ、我が最終奥義を止めてみせた!!

 

だが止めるだけでは、貴様の後ろにあるオーブという国は、守れんぞ!!!」

 

 

 

「ーーーーマスタぁああーー、アジアぁあああ!!!!」

 

 

 

あちこちが、軋みながらも、右手首に左手を添え、猛るキョウジ。

 

 

 

「受け切れる。

 

ーー受けれないわけがない。受けれなければ、俺は死にオーブは破壊される。

 

俺は、受け切らなければならないんだ!!

 

ドモンに謝るためにーー!!

 

父さんに会うためにーー!!

 

こんなところで死んで!!!

 

死んでたまるかぁああああっ!!!!」

 

 

 

形振り構わぬ、がむしゃらな叫びに、マスターアジアもニヤリと、笑う。

 

 

 

「ーー我が流派、東方不敗が最終奥義ーー!

 

天地の気を纏い、力を得る究極の技よ。

 

本来、地球上の万物より力を得る、この技を極めれば、宇宙に出ようとも地球の命の恩恵を得る!!

 

キョウジよ、貴様が守るべき者を守りたいならば、貴様一人の力ではこの技は破れぬと知れ!!」

 

 

 

「ーー万物の気を得るーー!」

 

 

 

思わず復唱するキョウジにマスターアジアは、戦闘中とは思えないほど、穏やかな眼差しになると、まるで息子を見守る父のような厳しくも温かい眼差しを、キョウジに向けた。

 

 

 

「ーーさあ、どうした! キョウジよ!!

 

我が流派、東方不敗が最終奥義ーー!!

 

見事撃ってみせい!!」

 

光の奔流がシャイニングを飲み込もうとした、その時だったーー!

 

キョウジの目に、夢か現か、幻かーー。

 

ゴッドガンダムとドモンが、現れたのだ。

 

 

 

「ーードモン?」

 

 

 

逞しく成長した弟は、必死の形相でこちらを見ている。

 

 

 

「ーー兄さん!!

 

たとえ、師匠が相手でも負けないでくれ!!

 

そして一緒に帰ろうーー俺と!!

 

兄さんは、一人じゃない!!

 

父さんも、レインも待ってるーー!!」

 

 

 

「ドモンーー!」

 

 

 

ドモンは、言いながら、キョウジの右手に自分の右手を重ねた。

 

 

 

「ーー兄さん、石破天驚拳は呼吸が大事なんだ。

 

万物の声を聞いて、力の流れを感じれば、兄さんとシャイニングなら、できる!!」

 

 

 

ドモンの構えを真似ながら、キョウジも右腰に両手を置いて腰だめに構えた。

 

 

 

すると、力の奔流が見えてくる。

 

大自然の力の流れがーー。

 

命の鳴動が、キョウジの両手の中に溢れている。

 

黄金の光の球が、両手の中に現れ、全てを包み込む。

 

 

 

「ーー兄さんーー!

 

俺とゴッドガンダムが、必ず迎えに行くーー!!

 

だから、オーブで待っていてくれ……!」

 

 

 

ドモンは、石破天驚拳の構えを取りながら、穏やかな声でキョウジに語りかける。

 

 

 

コレにキョウジも静かな表情で返した。

 

 

 

「ーーああ。ありがとう、ドモン」

 

「兄さんーー」

 

 

 

キョウジの目の前のドモンは、穏やかに笑むと姿を消し、構えるゴッドガンダムとシャイニングガンダムの姿が一つに重なり、胸のクリスタルに赤い紋章が輝くーー。

 

 

 

「ーーアレは、キングオブハート!

 

ドモンめ、兄を助けておったかーー!!」

 

 

 

この現象にマスターは何かを悟ると、穏やかな表情ながらも、父性を感じさせる声で、キョウジに告げた。

 

 

 

「ーーさあ、撃てい!!

 

キョウジ・カッシューー!!」

 

 

 

「ーーうぉおぁあああ!!

 

流派、東方不敗が!!

 

石破!! 天驚ぉぉぉおお拳ぇぇええん!!」

 

 

 

極限まで高めた両手の光の球を、裂帛の気合いと共に突き出す。

 

 

 

ズドォアッ

 

 

 

キングオブハートの紋章を正面に、緑色の光の渦を纏った黄金の光線が空を断ち切っていく。

 

 それがシャイニングガンダムの手許まで迫ったマスターガンダムの光線とぶつかった。

 

 一瞬の、膠着。

 

直後。マスターガンダムの光線が、両者中央まで一気に押し返されていく。だが、そのまま押し切れるかに見えたシャイニングガンダムの光線は、オーブ海上で強烈な光とともに相殺されていったーー。

 

 天まで轟く衝撃の嵐が、空に浮かんだ一帯の雲さえも吹き飛ばし、貫けるような青空が、ただ両者の頭上に広がる。

 

 

 

 キョウジ・カッシュは、東方不敗と全く互角の石破天驚拳を弟と共に撃ってみせたのだーー。

 

 

 

シュゥゥゥゥッ

 

 

 

同時に、ハイパーモードを解除するシャイニングガンダムとマスターガンダム。

 

暁を思わせる2つの輝きは、静まる。

 

 

 

「見事、我が流派を使いこなしたか!!」

 

 

 

先の見事な石破天驚拳に、マスターアジアは、キョウジを褒めたたえた。

 

 

 

ーーーーーー

 

 

 

「ーーし、師匠の最終奥義が!!」

 

「ちくしょう、僕が最初に撃つつもりだったのに!!」

 

 

 

この光景にスティングとアウルは、拳を握り締める。

 

 

 

キョウジの一撃は、確かに、マスターアジアの放ったものと全く同じものだった。

 

 

 

「キラくんーー!」

 

「キョウジさんが、石破天驚拳を!!」

 

 

 

アークエンジェルクルー達も、ガーティ・ルーの乗組員も、いや、この戦場にいる全ての人々が、この光景に飲まれていた。

 

 

 

「ーーマスター、アジア…!」

 

 

 

未だ立つマスターガンダムに、キョウジは、果敢にもさらに拳を握り、構えようとする。

 

しかし、一歩を踏み出せずに、シャイニングガンダムは、展開していた各部を収め、ノーマルモードになりながら、前のめりに倒れた。

 

 

 

パイロットのキョウジの気が、尽きたのだ。

 

 

 

「ーー見事なり、キョウジ・カッシュ」

 

 

 

気を失いながらも、それでも自分に向かおうとしてきたキョウジに、温かで穏やかな表情を向けマスターアジアは、健闘を讃えた。

 

 

 

「オーブか、新しい楽しみが増えたわ!!」

 

 

 

シャイニングガンダムとキョウジは、マスターアジアの前についに、力尽きたーー。

 

 

 

それを満足気に見やり、マスターアジアはニヤリと笑った。

 

 

 

 




みなさん、お待ちかね〜!

マスターの石破天驚拳を見事に返したキョウジですが、ついに力尽き、気を失ってしまいます。

フリーダムとシャイニングの二機が、倒されたことに動揺するオーブの軍勢に、マスターは一喝するのです。

そんな時、悪魔の力で復活したウルベ達の陰謀で、ステラ・ルーシェに危機が迫ります。

次回、機動武道伝Gガンダム SEED Destiny 第37話に、レディー、ゴー!!

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。