新機動武闘伝 GガンダムSEED Destiny   作:カンナム

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マスターアジアの強大な力の前に、悪魔の力を使ってなお、倒れてしまったキョウジ・カッシュ。

しかし、戦いはまだまだ、終わってなどいなかったのです。

悪魔の力を放つキョウジ、太陽の光を放つシャイニングガンダム。

太陽の如き熱き魂の東方不敗と、闇の力を放つマスターガンダム。

両者の対決は、更なる高みへと登りつめていくのです。

それでは、ガンダムファイト!!

レディーーーー、ゴーーーーー!!

第37話




第37話 不撓不屈 キョウジという漢

同時刻ーーーー

 

 

 

マスター達の部隊とは正反対の方角から、オーブを攻める部隊があった。

 

 

 

ファントムペイン隊長、ネオ・ロアノーク率いるウィンダムの特務隊だ。

 

 

 

隠密を主に得意とする彼らの部隊は、マスターガンダムに陽動を依頼し、手練れのパイロット3名とステラのガイアガンダムを組み込んだ編成でオーブの地形から、最も手薄であろう場所を攻め込んだ。

 

 

 

「ーーだったはずなんだがねー。奴(やっこ)さんも馬鹿じゃないか」

 

部隊長のネオは、舌打ちしながら、現れた三機のムラサメ隊に応戦する。

 

 

 

パイロットの練度や機体の性能は共に互角。

 

数の上なら、ウィンダム隊の方が一機多い上に、ガイアがいる分、ファントムペイン側の方が有利だ。

 

しかし、彼らムラサメ隊の機動力は音速を超えており、ネオの射撃技術を持っても、簡単に当てられるものではない。

 

 

 

「どうなってんだ!?

 

あの動きで正確に射撃や連携が取れるだと!!」

 

 

 

ネオをして、舌打ちをするしかない見事なMSの運用。

 

可変機であるムラサメの利点を見事に活かして、敵は三位一体の攻撃を繰り出してくる。

 

それも、MA形態で加速した後に、加速力をそのままに、変形してビームサーベルを抜いて切り掛かってくるのだ。

 

 

 

ビームライフルも侮れない。

 

 

 

1つ1つのビームは標準より少し貫通力に優れているだけだが、三位一体で放たれた場合、3本のビームが一つになり、より強力で貫通力の高い、戦艦の副砲クラスに化けるのだ。

 

 

 

「ーー高性能なのは、障壁だけじゃない。

 

MSもだ! 見た目だけじゃなく、中身も改造してやがったかよ!!」

 

 

 

避けるネオに、向こうの隊長機らしき機体が挑んできた

 

 

トラを思わせる黄色と黒の縞模様を二の腕に描き、左肩に東洋で使われる漢字で「虎」と書かれたムラサメ。

 

彼は一振りのビームサーベルを抜くと、ネオのウィンダムめがけ、斬りかかる。

 

 

 

「ーーこいつ!!」

 

 

 

咄嗟にバーニアをふかして避けるも、この一機だけ動きが違うことにネオは気づいた。

 

 

 

速いだけの他の二機と違い、この一機は、正確にこちらの隙を狙って切りつけてきたのた。

 

 

 

見事な技だと、ネオは仮面の奥の表情を曇らせた。

 

 

 

「ーー頼むぜ、ステラ。

 

この作戦の本命は、お前の明鏡止水にあるんだからよ」

 

 

 

隊長機のムラサメにビームサーベルを抜いて構え、ネオはウィンダムを突っ込ませた。

 

 

 

ーーーーーー

 

 

 

シャイニングガンダムとフリーダムガンダムは、激戦の末、マスターガンダムに敗れた。

 

その事実は、連合軍に希望を、オーブ軍に絶望を与えていた。

 

 

 

その時、戦意を失い呆然とするオーブ軍に対し、たった今、彼らの希望たるガンダム二機を倒した男ーーマスターアジアの取った行動は、予想外のものだった。

 

 

 

「どうした、オーブ軍!

 

 貴様ら、もしや今の戦いを見て怖気づいたのではあるまいなっ!?」

 

 

 

突如、オーブ軍に対して声を張り上げたのだ。

 

これに、連合もオーブも仲間同士、顔を見合わせる。

 

 

 

「貴様らのために最後まで戦い、自らの命まで落とそうとした二人の男の姿を見て、なにも感じぬのかっ!?」

 

貴様ら、何のために戦っておる!」

 

 

 

そんな彼らに対し、更に激しくマスターアジアは声高らかに告げる。まるで、燻る木炭に、今一度火を焚べるかのようにーー。

 

 

 

「くっ、そうだ。戦いはまだ終わっちゃいない!」

 

「フリーダムやシャイニングが、俺たちのために道を開けてくれたんだ!」

 

「ならば俺たちも、それに報いなければ!」

 

 

 

敵であるマスターガンダムの叱咤激励とも言える言葉に、オーブ軍の折れかかっていた気勢が再び燃え上がっていく。

 

彼らは、今一度己のMSに握らせた武器を構えさせる。

 

 

 

「フンっ、それで良い! 貴様らの意地を見せてみよ。

 

この東方不敗マスターアジアにな!」

 

 

 

これを受け、マスターアジアは満足気に頷き、構えた。

 

 

 

始まったのは、MF一機に対し、MS一個小隊と戦艦2隻の戦い。

 

 

 

しかし、戦艦の主砲も、ムラサメ隊の編隊を組んだ連携も、M1アストレイや捕獲したウィンダム部隊の攻勢も、全て、目の前の機体には通じずにねじ伏せられていくーー。

 

 

 

放たれた戦艦の副砲ゴッドフリートは、素手で払いのけられ、スレッジハマーと呼ばれるホーミングミサイルも、網の目を縫うようにジグザグに動きながら、避けきられる。

 

 

 

ビーム砲やミサイルは、無意味だと悟るや、ウィンダムとアストレイ部隊のビームサーベルによる波状斬撃。

 

 

 

オーブ軍のーーアスハ私軍の戦法の全てを使って、彼らは圧倒的な力を持つマスターガンダムに挑む。

 

 

 

しかし、数々の戦局を覆してきた戦法も、このデタラメな敵には、全く通じない。

 

 

 

一方の連合軍は、たった一機で自分達を苦しめていた軍勢を相手に圧倒的な力で、ねじ伏せていく味方の出現に、湧いていた。

 

 

 

「これで勝てるぞ!!」

 

「ーー今だ、一気に押し込め!!」

 

 

 

次々と大量のウィンダムが、雷の壁やジャミングに守られていたオーブの防衛ラインに踏み込んでいく。

 

 

 

「ーーやはり、無理なのか」

 

 

 

流石のオーブ軍も、ついに心が折れかかった。

 

その時だった。

 

 

 

ムクリーー

 

 

 

マスターガンダムの前で前のめりに倒れていたシャイニングガンダムが、立ち上がったのだ。

 

 

 

「ーーぬう?」

 

 

 

ズドォアッ

 

 

 

 

 

同時に尽きていたはずの気が、一気に天高く突き上がり、黄金の気柱を形成して、消えた。

 

その気は、汚れたシャイニングガンダムのボディを一気に洗浄し、細かい傷なども全て回復した、力の満ち溢れた状態にしている。

 

 

 

「ーーな、ばかな!?」

 

「バケモノめ、まだーー!?」

 

 

 

一斉に地球連合のMS隊は、動きを止めた。

 

パイロットであるキョウジの瞳は、それほどの凶気に満ちていた。

 

 

 

「ーーまだ立てるとはな。大したものよ」

 

 

 

腕を組み、マスターアジアは、シャイニングガンダムに向き直った。

 

 

 

「しかし、力やスピードだけではワシには勝てん。いかにDG細胞と言えど、付け焼き刃ではワシは倒せんぞ」

 

 

 

マスターの言葉に、キョウジは前髪の陰に目元を隠しながら、こちらに向かって幽鬼の如く歩いてくる。

 

 

 

 

 

「ーーぬ?」

 

 

 

キョウジの全身に赤黒い禍々しい光が満ちていく。

 

 

 

「まさかーー!!」

 

 

 

この変化とそれが意味する事に気付き、目を見開くマスターアジア。

 

 

 

「ーー馬鹿者がぁ!!

 

そんなことをして何になる!?

 

折角、拾った命を再びDG細胞にくれてやるつもりかぁ!?」

 

 

 

キョウジの人相が更に凶悪に歪められ、その身に纏う力は、暴力的とすら言える。

 

 

 

「ーーキョウジ、貴様!!

 

縁もゆかりもない国の為に、ドモンとの再会を諦めるのか!?

 

そこまでする義理が何処にある!?

 

ファイターですらない貴様が、DG細胞の力を解放すれば、たちまちデビルガンダムに取り込まれようーー!!」

 

 

 

マスターの言葉も虚しく、ついにキョウジはDG細胞の力を解き放った。

 

 

 

「ーー哀れな。せめてワシの手で引導を渡して、くれるわぁあ!!」

 

 

 

殴りかかるマスターアジアの眼の前で、キョウジは動いた。

 

右正拳突きに対し、獣のように前のめりになると、後方へ予備動作なく、ジャンプした。

 

その動きは、野生の猫科動物の如く、柔軟かつ敏捷。

 

 

 

「ーーなに!?」

 

 

 

鼻先で、本気の正拳突きが避けられたことに、目を見開くマスターアジア。

 

同時にシャイニングガンダムは、宙で態勢を整えると、右拳を振りかぶる。

 

 

 

「ーー全身の筋肉を使い、一気に身体機能を高めたか。しかし、この動きはーー!!

 

右か!!」

 

 

 

正拳突きを放ち終わった隙を狙ってのキョウジのカウンター。

 

体の向きや振りかぶった姿勢で右正拳突きの返しが来ると構えたマスターアジア。

 

 

 

バギィッ

 

 

 

しかし、強烈なクリーンヒットをもらい、首を大きく仰け反らせる。

 

 

 

「ーーなんと、これは!!」

 

 

 

マスターアジアの反応を見てから、キョウジは逆の拳を振りかぶり、宙で態勢を変えて、ガラ空きの横面に左ストレートを叩きつけたのだ。

 

 

 

強烈な一撃に、マスターガンダムの体が宙に浮き、後方へ、弾けとぶ。

 

 

 

対して、シャイニングガンダムは、宙に浮かびながらもバーニアをふかさず、慣性の法則に逆らった明らかな人間離れした前のめりの姿勢からのダッシュで、吹き飛ばされ、未だに宙にあるマスターガンダムの体に追いつくと、無造作に右腕を剣術の切り上げの如く斜め下から裏拳気味に振り上げた。

 

 

 

ドゴォッ

 

 

 

天高く舞い上がるマスターガンダム。

 

 

 

その更に上に、シャイニングガンダムが、それ以上の勢いで地を蹴り、カタパルトからの射出が如く空へ跳び上がると、強烈な右のカカト落としをマスターガンダムの背中へ決めた。

 

 

 

ドガァッ

 

 

 

垂直に地面に叩き落とされたマスターガンダムの場所には、大きなクレーターが出来上がっていた。

 

 

 

「ーーなんなんだ、あの機体は。

 

先ほど、倒れたばかりじゃないのか? なのに、倒れていたのはほんの五分足らずーー!

 

それも明らかに動きが変わった!!」

 

 

 

イアンの言葉が、この場にいる全ての連合兵士の気持ちを代弁していた。

 

 耐久力、機動力、攻撃力。

 

 それら全てがMSの枠に留まっていない。

 

 

 

 

 

 

 

バギィッ

 

 

 

 衝撃に首をのけ反らせながら、マスターガンダムが後方に下がる。

 

 

 

「ーーふん、なるほど。恐るべき力とスピードよ。

 

 しかし、勢いだけでワシを倒せるとは思わんことだ!!」

 

 

 

 言いながら、右拳を後方に振り返りながら放つ。目の前には、先回りしていたシャイニングガンダムがいた。

 

 

 

ビュンッ

 

 

 

「なにーー!?」

 

 

 

 完全に捉えたはずの一撃は空を切る。

 

 またしても、シャイニングガンダムは慣性を無視し、地面とほぼ平行になるように体を仰向けに倒した姿勢で片足のつま先だけ地面に残して止まって見せた。

 

 

 

 どんな姿勢からでも強烈な一撃を放ってくる上、その攻撃に吹き飛ばされれば、圧倒的なスピードで先回りされる。

 

 先ほど、マスターがキョウジに対してして見せた攻撃の打ち終わりを狙ってのカウンターなども今のシャイニングガンダムには造作もない。

 

 

 

(DG細胞により、こやつは理性を失っておるはず。

 

ならばこそ、このワシをも追い詰めるパワーとスピード、反応速度、身体能力を得ておるのだ。

 

 しかし、攻撃の打ち終わりを狙うカウンターや、どんな姿勢からでも急所を狙う正確な攻撃は、とても狂人のそれとは思えんーー!!)

 

 

 

 DG細胞の力を暴走レベルまで解放した今の状態で理性を保っているとしか思えない。

 

 

 

(いよいよ、デビルガンダムとキョウジの一体化という先の話を信じねばならんかーー!!)

 

 

 

今一度、気合いを入れ直し、拳を構え、マスターガンダムは足を踏ん張る。

 

 

 

「ならばーー。一気に叩き潰してくれるわ!!」

 

 

 

機体のダメージは、気の充実で回復できる。それがマスターガンダムを構成するDG細胞だ。

 

そして、ガンダムファイターであるマスターアジアは百戦錬磨の達人を越えた超人。

 

 

 

「ーーそこだ!!」

 

 

 

突如、何もない空間にマスターガンダムは、右のストレートを放った。

 

 

 

ビュンッ

 

 

 

紙一重で、その一撃は首をひねって回避され、打ち終わりを狙った右ストレートを放ってくる。

 

 

 

「ーー甘いわ!!」

 

 

 

そのカウンターを見越し、マスターは左の拳に小回りをきかせて、ショートフックを放つ。

 

カウンターにカウンターを重ねる高等技術。

 

 

 

バギィッ

 

 

 

 

 

しかし、下がったのはマスターガンダムの方だった。シャイニングガンダムが、マスターの左フックに左のショートアッパーを合わせたのだ。

 

 

 

咄嗟に後方へ仰け反り、放っていた左拳をアゴに引きつけて避けるマスターガンダム。

 

 

 

「ーーチッ!」

 

 

 

そこではじめて、キョウジの表情が歪み、舌打ちしてみせた。

 

 

 

互いに一度、距離をあける。

 

 

 

「ーー左のショートアッパーとはな。

 

ワシの狙いを読んでおったかーー!」

 

 

 

打つも守るも攻防一体の動きを互いに見せる。正に力と力、技と技。

 

 

 

そこに駆け引きが混ざる。

 

 

 

「ワシの技と貴様の身体能力。

 

総じて言えば、持っているものは、五分と五分。

 

ワシのような武道家ならば、駆け引きなど無用と真正面から叩きあうのみだが。

 

キョウジよ、貴様の拳は武術家のそれだな」

 

 

 

何も語らず、拳を握り構えるキョウジに、マスターアジアは頷く。

 

 

 

「武には、三つの極みがある。

 

 

 

一つ、 武を通じて己が体を鍛え、心の道ーー道徳を極める武道。

 

 

 

一つ、武をもって他者に魅せる芸を成し、美しさを求める武芸。

 

 

 

そして、心もなく、美もなく、ただ相手を倒す技術のみを追求する武術」

 

 

 

極みに通じるものだからこそ、理解する。

 

この者にとって武とは何か?

 

 

 

「当然と言えるな。

 

やはり、貴様はファイター(武道家)ではない。

 

貴様にとって武は、悟るものでも、魅せるものでも、ましてや誇るものでもなく、ただ己と他者を守る手段の一つに過ぎぬのだ。

 

ーー故に、恐るべき相手よ」

 

 

 

マスターをして、冷や汗を流している。

 

 

 

「ただ、技を極めただけの凡百の武術家気取りとは、訳が違う。

 

文字どおり命懸けで、貴様は武の術を学んだのだな?

 

守るものを守り抜くためにーー!」

 

その技の全ては、執念。

 

強いはずだった。

 

弟を守りたいと願い執念でシュバルツを作り出した男が、今、その全てを賭してオーブという国の為に、闘う術を求めたのだから。

 

 

 

「ワシとしたことが、貴様という相手を見誤っておったわ。

 

貴様にとって、DG細胞の禍々しき力すら、オーブを守るための手段の一つに過ぎぬのだ。

 

明鏡止水を使いながら、凶を孕んだ純粋な殺意を放つ。二律背反の答え、ようやく見極めたわ」

 

 

 

道を極めるならば、自身の体と心を鍛えずに、あっという間に強力な力を与えるDG細胞は、求めまい。

 

その力に自分の倫理観や価値観が呑まれる危うさは、道を極める者には、火を見るよりも明らかだ。

 

 

 

芸を極めるならば、力による正負は関係ない。だからこそ、DG細胞のような強力な力を求める者もあろう。

 

そして、心が優しければ、力を振るうことに迷いが生じ、闘いを恐れる弱点となる。

 

得た力を振るう者ならば、力に取り込まれ、驕り昂り自滅する。

 

 

 

術を求めた場合も、力の正負は関係なく、ただ強くなれば良い。

 

最も力に取り込まれやすい道だが、その道を極めるものは、他二つに比べて欲がない。

 

心も美もない。

 

ただ、力の強さを求めるのみだからだ。しかし、これを実践できる者など、まずいない。

 

力を手に入れれば、振るわずにいられないのが、人の性だ。武術を極める者は、皆心を病み、力に食われて行く。

 

 

 

だからこそ、道を説き。だからこそ、芸に費やす。

 

 

 

だが、今目の前にいる男は武術のみの男。どれだけ力を得ようと奢らず、恐れず、淡々と目的を見失わない冷徹なまでの思考をほこる。

 

 

 

禍々しさに揺らがず、神々しさに惑わず、ただ術のみを求める者。

 

 

 

「ワシやシュバルツ、ドモンとは明らかに違う。

 

なるほど、これが何をさせても世界一とドモンに言わせた男の本質か。

 

人間離れした悟りよーー!」

 

 

 

マスターアジアをして、初めてであった。

 

目の前の敵は、人形のように人の情けを感じない、心を感じない。

 

人形にはあり得ない執念を感じる。

 

 

 

それは、ただ、守りたいが故。

 

凶気を持ちながら、正気である。

 

殺意を放ちながら、理性を保つ。

 

鬼となりて、神仏の悟りを得るもの。

 

 

 

「ーーワシは、かつて地球を守る為に、修羅に身をやつした。

 

貴様は、弟の為、オーブの為に羅刹へと変わったのだな、キョウジよ」

 

 

 

 キョウジは、何も語らない。ただ、拳を握り、凶眼を滾らせ、こちらに構える。

 

 

 

 その眼に理性など微塵も感じない。

 

 

 

 だが、闘い方を見るだけでわかる。

 

 

 

 理性をなくしてなどいない、と。

 

 

 

「おしゃべりの時間は終わりだ、マスターアジア。

 

心静かに死ぬがいいーー」

 

 

 

 キョウジは、一切の感情を消した無機質で冷たい言葉をマスターアジアに告げる。

 

冷徹な凶気を纏ったその瞳は、並みの者ならば恐怖に瞬く間に叩き落されるだろう。

 

 

 

 その瞳の中には、己の無惨な骸を問答無用で相手に想像させるのだから。

 

 

 

 しかし、マスターアジアは不敵に腕を組み、笑った。

 

 

 

「何を焦っておる。

 

 このワシとの勝負よりも、優先することがあるのかな?」

 

 

 

「…………」

 

 

 

 キョウジは、何も語らない。

 

 

 

 ただただ凶気を瞳にあふれさせ、静かにこちらの隙を伺っている。

 

 

 

「この東方不敗マスターアジアを前にして、ワシよりもオーブを気にするとはなーー!!

 

 そんなに守りたいか、この国を!!」

 

 

 

 にやりと笑うマスターアジア。ーー瞬間だった。

 

 

 

バギィッ

 

 

 

 すさまじい衝撃音が辺り一帯になり響く。 

 

 

 

 見れば、シャイニングガンダムの右ストレートがマスターガンダムの右の掌に掴み止められていたのだ。

 

 

 

「………」

 

 

 

 キョウジのシャイニングガンダムは、そのまま右拳から緑色の光を放ち始める。

 

 

 

 マスターガンダムも同時に、掴んでいる右掌から紫の光を放ち始める。

 

 

 

ゴゴゴゴゴゴゴゴ

 

 

 

 鳴り響く地響き、荒れ狂う天候。

 

 

 

 二人の気は、極限まで高まりあう。

 

 

 

 両ガンダムは互いの主とは相反する光と闇の力を放ちながら、主の気を高めていく。

 

 

 

 両者の踏ん張る大地が割れ、地面から石が吹き上がっていく。

 

 

 

「師匠……、さっきまでよりも更に気が高まってる」

 

「ああ、この二人。限界はないのかよ」

 

 

 

 アウルとスティングが二人の気を感じ取り、つぶやくと同時、落雷がシャイニングガンダムとマスターガンダムの間に落ちた。

 

 

 

 同時に、すさまじい拳と蹴りの雨あられを交換し合う。

 

 

 

 互いに、一撃を紙一重でかわし、捌き、弾き、相殺しあいながら、敵が反応できないほどの連撃を放たんとより一層手数を、スピードを、パワーを上げていく。

 

 

 

既に周りの者は気づいている。

 

 

 

この戦いの勝者が、オーブ戦域の勝者だとーー。

 

 

 

ーーーーーー

 

 

 

オーブの激闘を自宅のモニターで確認するジブリールは、興奮していた。

 

 

 

「これが、これが!!

 

MFだというのか、素晴らしい!!!

 

なんて力なんだ!!

 

こいつらの力を手に入れれば、最早コーディネーターだのナチュラルだのと、下らん争いを続ける人間どもを地球から一掃できる!!!」

 

 

 

彼は、両手を握り、口元に狂気の笑みを浮かべている。

 

 

 

映し出されているのは、人外の激闘を繰り広げる二機のMF。

 

 

 

戦域を一瞬で飛び回り、艦隊をモノともしない両機の力に、ロード・ジブリールは狂喜していた。

 

 

 

「ーー何を騒いでるんだ、ジブリール。

 

この程度の力など、我々がデビルガンダムを手に入れれば、軽く凌駕できるさ」

 

 

 

そんな彼を諭すように、冷たい眼差しで、ウルベ・イシカワは向かいの席から告げた。

 

 

 

「しかし、ウルベ!!

 

これだけの力をみすみす捨て置くのか!?

 

この力があれば、デビルガンダムを手にすることも……!!」

 

 

 

納得が行かない様子のジブリールに、ウルベは苦笑を漏らした。

 

 

 

「ーーいかに強力な力とはいえ、我々の望むのはデビルガンダムの復活と支配だ。

 

マスターアジアやDG細胞の残りカスなど、不要なのだよ」

 

 

 

「ーーだが!!」

 

 

 

ワインをゆるりと注ぐウルベに、ジブリールが声を上げる。それを遮り、両者の間に座る男ーーウォン・ユンファが笑った。

 

 

 

「ーージブリール、我々は過去に失敗しました。

 

デビルガンダムを手に入れようとして、彼の支配下に置かれてしまった。

 

ですが、我々は今度こそ、あの力を支配下にし、我々の目的を果たすのですよ」

 

 

 

ウルベが、その言葉に笑い、そして一気にワインわ煽ると気迫を露にして続ける。

 

 

 

「そう!

 

手に入れるのだ!!

 

我々が、あの力を!!!

 

プラントだか、コーディネイターだか知らんが、そんなものに、デビルガンダムを渡してなるものか!!!」

 

「ーー彼を手に入れるのは、私達以外にはない。

 

いや、「彼」ではないですね。「あの機体」を、と言いましょうか」

 

 

 

ウォンの邪悪な笑みに、ウルベも我が意を得たりと笑う。

 

 

 

「ーーそうだ。

 

私達の為のデビルガンダムを手に入れるのだ。その為にも、必要なモノを手に入れなければならない」

 

 

 

ウルベの言葉に、ウォンが続ける。

 

 

 

「ーー今、この戦いで重要なのは勝敗ではありません。

 

デビルガンダムの生体ユニットに相応しい存在を確認することこそが、私達の目的なのです。

 

捕獲できれば最上ですね」

 

 

 

「そして、最大の障害となる東方不敗とキョウジ・カッシュが潰しあっている今こそが、好機!!

 

ウォンーー」

 

 

 

「ーーふふ、さあ始めましょうか。

 

私達の世界征服をねーーーー!!」

 

 

 

ウォン・ユンファが笑った先には、まるで衛生アンテナに使うような巨大な皿の中央から、針を生やした装置があった。

 

 

 

その装置は、未来世紀にて作られた呪われた存在。

 

人間を心の無い狂戦士に変えてしまう狂気のシステム。

 

 

 

「ーーステラ・ルーシェ。

 

彼女ならば、アレンビー・ビアズリーに匹敵する生体ユニットになるでしょう。DG細胞によって強化すればね!!」

 

 

 

邪悪に笑むウォンに、ウルベが冷酷に笑みを浮かべた。

 

2人の気配に、ジブリールは冷や汗を流しながら、一歩下がる。

 

そんな彼にウルベは、優しく笑いかけた。

 

 

 

「ジブリール、君も知るといい。

 

君をつまらん人間という存在から変えた「力」というものをねーー!」

 

 

 

ウルベの言葉に、ジブリールは何とか笑みを作ると、返した。

 

 

 

「ーーいいだろう。

 

期待しようじゃないか、こんな戦いすらも、ままごとと断じる君たちにね」

 

 

 

ウルベは、何も答えずに、静かに笑みを浮かべた。

 

 

 

 




みなさん、お待ちかね〜!!

ここに来て、ついにウルベが、ウォンが、動き出します。

シャイニングガンダムとマスターガンダムが激闘を繰り広げる中、狙われたステラ・ルーシェとガイアガンダム。

バーサーカーシステムに狂わされたステラに連合もオーブも混乱する中、悪魔の手先となって蘇った三体のガンダムが彼らを襲うのです!!

次回、起動武道伝GガンダムSEED Destiny 第38話に

レディー、ゴー!!

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