新機動武闘伝 GガンダムSEED Destiny 作:カンナム
混戦に次ぐ混戦に、キョウジやマスター、バルトフェルド達にも、変化が訪れます。
果たして、ウルベ達の前に立ったデビルガンダムこと、Dの真意は??
それでは、ガンダムファイト!!
レディィィィッゴォォォオオオッ!!!!
第39話
未だ続く、人智を超えた戦い。
再び、強烈な一撃が互いを目掛け、振りかぶり、放たれる。
ドゴォッ
苛烈にして熾烈ーー。
白と黒の鬼神が、互いに圧倒的な力をーー黄金の闘気を、全身にまとい、ぶつかり合う。
ガンダムと呼ばれた二機の機体は既に神の領域へとーー。
互いの力を際限なく高めあう。
「やりおるわ!!
しかし、この程度ではワシは倒せんぞ!!」
「フフフフ、フハハハハ、ハァーッハハハハハハハ!!
ーー死ね、マスタァー!
アジアァアアアアアアア!!」
「言うて、くれるわぁああああああ!!!」
強烈な拳を互いに撃ち、相殺すると同時に距離が空く。
すかさず、互いに高まった気と気をぶつけ合う。
この戦いに、終止符などあるのだろうか
まるっきり、おとぎ話や神話のような戦いだ。
拳を、蹴りを、互いに連続で繰り出しあう。
その拳は天を裂き、その蹴りは海を割り、その気は地を穿つ。
二つのすさまじい力と力のぶつかり合いは、脅威を通り越し、幻想的な光景へと映っていた。
「ガンダムファイト、か。
俺とカオスもーーこれだけの戦いを繰り広げるようになれるのだろうか?」
「アビス……!
僕とお前の戦いは、まだ終わっちゃいないよな……!!」
その光景を、ガーティ・ルーのブリッジの中から、東方不敗の二人の弟子が見つめる。
キョウジは瞳に凶気を、マスターは鬼気を宿らせてーー。
神々しい宝石のような光を両の拳に宿し、白と黒の機神は互いを目掛けて殴りつける。
バギィバギィッ
両者の対決はいつしか、ハイレベルな技術戦と駆け引きは終わり、足を止めての打ち合いへとシフトしていた。
後方にはじけ飛ぶ両者の首。その度に元の位置に戻し、反撃する。
どちらがより強い一撃を放つか、どちらがより耐えられるか。
両者の対決は、精神が肉体を凌駕した状態にある。
同じようなことが何度も起こっているはずなのに、誰もが動けない。
誰もが、見とれて、何もできない。
意味もなく、彼らの頬に伝うのは、涙。
「た、隊長ーーーー!」
「あ、ああ。何故だ? なぜ、撃てないんだ?」
この場にいる誰もが、手を出せない。
力の差というのは、もちろんある。
だが、それを抜きにしても、彼らの戦いはこの場にいるすべての人々の心に訴えかけていく。
職務に忠実である軍人達の心をも、掌握する悪魔と鬼神の戦いは、まだまだ終わりそうにない。
いや、なかったーー。
ザンッ
空中で力をぶつけあったシャイニングガンダムとマスターガンダムは、地上に戻り、互いに構える。
その時だった。一発の光弾が両者の間に放たれ、地面に炸裂した。
パシュンッ
「ーーなんだと?」
「このタイミングで現れたか。丁度良い、手間が省ける」
マスターアジアは、疑問の声を上げながら、キョウジは凶眼で睨みつけながら、乱入してきた2機のガンダムを見据える。
長距離ライフルを構えているガンダムと、手身近な岩山に腰掛けてこちらを睨むガンダムが、そこにいた。
「久しぶりだな、マスターアジア。
今度は、俺とファイトしてもらおうか」
「よお、シャイニングガンダムにキョウジ・カッシュ!
今度こそ、てめえらを血祭りに上げてやるぜぇ!!
この俺様とネロスガンダムがなぁ!!!」
マスターアジアは、一瞬だけ目を大きく見開いた後に、自嘲気味に笑った。
「なるほど。
ワシもまだ、禊は済んでおらなんだ、ということか。
ジェントル・チャップマンにミケロ・チャリオットよ」
悲しげに懺悔しようとするマスターアジアを制し、チャップマンは、淡々とこたえた。
「勘違いするな、マスターアジア。
俺は、貴様ともう一度闘いたかったのだ。デビルガンダムに操られてではなく、自分の意思でな」
「よかろう。ならば、その意思に応えるまで!!」
構えるマスターアジアに、にやりと笑みを返すチャップマン。
その横で、ミケロが笑いかける。
「いいのかぁ?
悠長なこと言ってて、テメエの大事な弟子を一匹取られちまうかもなぁ?」
「なんだと?」
訝しげに問い返すマスターアジアに、ミケロはニヤリと笑う。
「ウルベやウォンの悪党ぶりはテメエらも、知ってんだろ?
マスターアジア、キョウジ・カッシュ!!」
「「!?」」
ミケロの言葉に、キョウジとマスターが、同時に目を見開いた。
「ウルベ、だとーー?」
「まさか、ウォンの奴が生きておると言うのか!?」
ミケロは、楽しげに顔を歪め、吠える。
「いい顔だぁ!!
いいか、マスターアジア!
デビルガンダムを活性化する最も重要なパーツ。
生体ユニットには、テメエの弟子の小娘が良いんだとよ!!」
おし黙るマスターアジアをチラリと見た後、キョウジは無言のまま、凶眼をミケロへと向ける。
「余計なことを教えてくれたものだ。
折角のファイトに水を差す気か、ミケロよ?」
「真実を教えてやったんだ。
むしろ、感謝してもらいてーな!!」
淡々と述べるチャップマンに、耳障りな笑い声を上げながら返すミケロ。
対峙するマスターアジアの目は、影で見えない。
「ーーチャップマンよ、ミケロの話は、本当なのだな?」
「ああ、そのとおりだ」
チャップマンが応えた瞬間、黄金の気柱がマスターガンダムから上り、鬼の形相のマスターアジアがそこにいた。
「貴様、武道家としての誇りを捨てたか!?
その拳を、悪党どもの為に振るうとは!!」
「勘違いするな、マスターアジア」
対峙するチャップマンは、淡々とした口調でロングライフルを背中にかけると、拳を握って構える。
「俺は、あくまで貴様と闘いたかっただけだ。
その為ならば、何処で誰が泣こうと知らんさ」
「その様な、薄っぺらい考えで、このワシを倒せると思っておるのか!?
誇りの無い貴様など、一瞬で叩き潰してくれるわ!!」
瞬間だった。
黄金の光を纏うマスターガンダムは、羽を広げると、一瞬でジョンブルガンダムの懐に踏み込んだのだ。
バギィッ
凄まじい炸裂音と土煙が立ち上る。
土煙が晴れた時、目に映るものは、黄金のマスターガンダムが放った右の拳を右掌にて掴み止めるジョンブルガンダムの姿だった。
「チャップマン、貴様!!」
「ーー美しい輝きだな。
人機一体の境地、明鏡止水か。
しかし、マスターアジアよ。
そもそも、俺たちガンダムファイターにとって機体とファイターの動作融合など、基本中の基本。
わざわざ、勿体ぶるほどのことではない」
目を細めてチャップマンは言いながら、ジョンブルガンダムの左拳がマスターガンダムに放たれる。
マスターガンダムは、ハイパーモードにより上がったパワーで、掴まれた拳を引き抜くと、放たれた左拳を膝を屈ませる事で、上体を低くし、紙一重で攻撃をかいくぐる。
そして打ち終わりを狙った、見事な返しの左掌底打ちを顎めがけて振り上げる。
上半身を反らせ、鼻先で掌底打ちを見切るジョンブルガンダム。
避けると同時に、右の膝蹴りをマスターアジアのガラ空きの脇腹に放つ。
バギィッ
強烈な膝の一撃は、マスターアジアの右掌に掴み止められていた。
咄嗟に、ジョンブルガンダムは、左右の拳をマスターガンダムの顔面に散らす。
首をひねりながら避けるマスターガンダムだが、あまりの手数にバックステップし、距離を置いて構える。
「金色の輝きなどなくても、機体とファイターは一体になれるさ」
「ふん、そのようなセリフは、このワシを倒してからほざくが良いわ!!」
「無論ーーそのつもりだ」
構え直す、両者の横で、シャイニングガンダムを駆るキョウジと、ネロスガンダムを駆るミケロのファイトが、勃発している。
マスターアジアは、混戦となった戦域を自覚し、チャップマンから眼をそらす事なく、ガーティー・ルーに告げた。
「よいか、イアン!
貴様らは、急ぎネオ達の部隊に合流するのだ!!」
「? 隊長達と、ですか?」
名指しで呼ばれた副長にして、艦長であるイアンは、咄嗟に問い返す。
「こやつらが現れたタイミングと、ネオ達の報告が来ない理由は一つ!
奴らも苦戦しておるはずだ、すぐに迎えぃ!!」
「わかりました、貴方を信じます。ご武運を!」
イアンは直様、ガーティ・ルーをネオ達のいる海域へと向けた。
同時に、横で連続で放たれる槍の穂先のような蹴りを見事に捌いているキョウジも、アークエンジェルに告げる。
「ーーマリューさん。
あんた達も、バルトフェルドの所に向かってくれ」
「ーーそんな、キョウジさん!?」
「頼む、バルトフェルドのいるであろう場所から、俺と同じ力を感じる。
最悪、バルトフェルド達を連れて逃げてくれ」
キョウジの言葉に、キラが鋭い眼になる。
「デビルガンダムーー?」
「…多分な。
だが、注意するのは、デビルガンダムだけじゃない。
バルトフェルド達を襲ってる部隊にも、気をつけろ」
「わかりました、マリューさん!!」
キラの言葉に、マリューもようやく頷くと、アークエンジェルは、戦域を離れていく。
「持ち堪えろよ、バルトフェルドーー」
バギィッ
ネロスガンダムから連続で放たれる蹴りの中、一つを選んで蹴り返し、逆に後方へ吹き飛ばす。
「こちらも、すぐに片付けるーー」
獲物であるネロスガンダムを見据える、キョウジの凶眼は、鋭利な刃物の様にギラついている。
ーーーーーー
オーブ海上にて、睨み合う3勢力。
赤を基調とした胸から上、白い顔。
普通サイズのMSよりも更に大きい巨体だが、スマートなフォルム。
「デビルガンダム……、より戦闘に向いた姿ですね。
しかし、その生体ユニットと顔は一体?
なぜ、ドモン・カッシュとゴッドガンダムなのですか?
あなたの能力を最大限に引き出せるパーツは、女であることは、既にご存知のはず」
改めて観察し、ウォンは静かに疑問点を並べた。
ゴッドガンダムを模した胸のエネルギーマルチプライヤーや、マスターガンダムの背中のウイングバインダーと両腕は分かる。
その機能の優秀さは、ウォンも理解できる。
しかし、ガンダムの顔までゴッドに似せる意味はない。まして、生体ユニットをドモン・カッシュにする意味など女性こそが、最もユニットに適しているというデータがある以上、皆無だ。
「我とて乗り手は選ぶ。我が選びし者は、ただ一人。
その者に相応しい機体となる、それだけのことだ」
ウォンの片眉が上がるも、彼は何も言わずにいた。
その横から、今度はウルベがDに声をかける。
「デビルガンダム、一応聞いておこう。
私たちと共に来る気はあるのかな?
いや、今はDと名乗っているんだったな」
ウルベの言葉に一つ頷き、ウォンも同調する。
「……DG細胞の力を使って、今一度、世界を支配しようじゃありませんか、デビルガンダム!!
私とウルベが揃えば、こんなちっぽけな世界など、すぐにDG細胞で埋め尽くすことができるでしょう!!
この世界で力を蓄え、元の世界に戻った暁には、すべてを喰らうこともできるのです!!」
狂った欲望に眼を見開き、話しかけるウォン。
その後方からウルベは、冷めた視線で酷薄な笑みを口元に刻んでいた。
彼らの話を聞きながら、ネオ・ロアノークは手に汗を浮かばせながら、操縦桿を握りしめた。
「なにを言ってるのか、サッパリだが。
むちゃくちゃヤバそうな奴らだってことはわかったぜ。
あの話が全部マジならな」
「ああ、その理解で充分だ。
しかし……最悪だ。この間、オーブに現れたときとはまったく姿が違う。
これがデビルガンダムの自己進化ってやつか。
厄介な能力だが、後ろの彼女も危険だな」
ネオの横に移動しながら、バルトフェルドも頷く。
アマギとバルトフェルド、ネオは、赤い光を纏うガイアガンダムと、ウルベ達と対峙するデビルガンダムの間にいる。
赤いビームを受け、様子がおかしいガイアガンダムのパイロット、ステラは先ほどから唸るだけで、何も行動しない。
「ステラーー、一体どうしちまったんだ?」
今のステラは、ネオの知る表情豊かな彼女ではない。
悪鬼のように表情を歪ませ、殺意に満ちた瞳をこちらに向けてくる。
しかし、そこに意志のようなものは一切感じない、まるで人形のような冷たい瞳だった。
「さあ、デビルガンダム。
答えを聞かせてもらおうーー」
ステラをそのような状態にした張本人である男ーーウルベは、淡々と目の前の機体に語り掛ける。これを受け、赤い髪の悪魔は、邪悪な笑みを浮かべて返した。
「なぜ我が、貴様らのような塵芥の言葉を聞かねばならん?」
デビルガンダムは、両の拳を腰に置き、羽を広げて気合いを入れるーー。
紅黒い光を身に纏い、Dは吠えた。
「身の程を弁えろウルベ、ウォン。
我は、デビルガンダム!!
過去、未来、現在、異界において、究極のMFよ!!
貴様らの様なドブネズミが、我に指図などできぬわ!!」
Dの圧倒的な気迫を前に、ウルベはつまらなさそうに一瞥をくれるだけだった。
彼は何の感情もない、何物をも写さないどす黒い闇を思わせる瞳で、こちらを見据えてくる。
「やはり、私たちとともに歩むことを拒むか。
余計な自我を芽生えさせたものだ。
以前の君ならば、とっくにこちらのものになっていたのだがね。
ドモン・カッシュ、私たちのデビルガンダムに余計な知恵を与えてくれたものだ」
ため息を一つ吐くウルベを引き継いで、ウォンが言う。
「今のあなたは、我々が望むデビルガンダムではありません。
ならば仕方ない。
あなたを倒して、自我を奪い去り、我々の望むデビルガンダムになってもらいましょうか。
機械ごときが、私たち、人間に歯向かうものではありませんよーー!」
ニィィイイッと口を引き裂くように笑みを浮かべるウォン・ユンファ。
これにDも邪悪にして不遜な笑みで迎える。
「ーーできるものならやってみろ」
「やりなさい、ゼウスガンダム! ジェスターガンダム! コブラガンダムよ!」
ウォンの合図と共に、先ほど腹を撃ち抜かれたゼウスガンダムが一気に再生し、異形のガンダム三機は赤い光を纏う。
ーーーぐぃぁあああああっ
ーーーうぅううううおぁあああぅ
ーーーひっひひひひひぃぃいいいいっ
死人が苦悶のような、愉悦のような笑顔を剥き出しにして構える。
まるで、生者に自分たちの仲間になれと言わんばかりの笑みーー。
ーー裁きの雷ぃぃいいっ
ーービィイム・ヴォイドォ
ーーバルーン・スクリィマァア
ゼウスはイカヅチハンマーを、コブラは笛の取手からビームサーベルを、ジェスターは両袖から風船に似た無数のバルーンビットを繰り出し、技を同時に仕掛けてくる。
「フン、くだらん」
ブゥウウンッ
それを眺めて吐き捨てると同時、デビルガンダムは両手を腹の前で組むと、巨大なビームソードを一振り作り出した。
「メガ・デビルーースラッシュ!!」
Dは、八双に太刀を構えて振りかぶりーー
「--ぬああっ!!」
気合と共に、横薙ぎに空を斬り払う。
ーーズバァッ
<<<ーーーッ!!?>>>
世界に紫の斬閃が疾る。
ーーズガァッ
刀身より放たれた衝撃波が、扇状に広がり、三機の異形のガンダムを技ごと、まとめて斬り捨て、爆発した。
「ーーこれはっ!」
「驚きましたね。MFの性能だけならば、すでにゴッドガンダムをも凌駕している」
ウルベが目を見開き、ウォンがグラサンの淵を指で押し上げ、頬に冷や汗を流す。
「次は、貴様らの番だ。
その空飛ぶ箱舟を棺桶にするがいいーー」
Dは静かに、ビームサーベルの切っ先をアズラエルに向ける。
これを受け、ウルベも笑みを浮かべて返した。
「ふっふっふっふっふ、なるほど、楽しませてくれる。
さすがは、デビルガンダムだ。こうでなくてはつまらないというものだよ。
ではウォン。私たちも始めようか」
「ええ。
四天王、ウォルターガンダムよ!!」
ウルベとウォンが、自分のガンダムを召喚する。
「括目せよ!
我が手足、グランドマスターガンダムよ!!」
かの者の名は、デビルガンダム四天王の一機、笑倣江湖ウォルターガンダム。
そして、その四天王の集合体とされるグランドマスターガンダムが同時にアズラエルの格納庫に出現する。
カタパルトから射出された丸い球は、異形のガンダムーーMAの姿へと変化した。
反対にグランドマスターガンダムと呼ばれた機体は、アズラエルの格納庫で鎮座し、全身からケーブルを伸ばしてアズラエルに接続する。
「我が子、ウォルターガンダム。そんなカスに使われるだけの存在に成り下がったか」
目を細め、Dが侮蔑するかのようにウォンの駆るウォルターガンダムを見据える。
対峙するウォンは、ニヤリと笑うと答えた。
「このウォルターガンダムは、外側こそあなたが造ったものですが、中身はまるで別物です。
わたしのためにチューナップされている。
ドモン・カッシュにやられた時とは、わけが違うんですよ」
「ほう。なにが違うのか、教えてもらおう」
「いいでしょう」
Dの言葉にニヤリと返し、ウォンは球体のガンダムの外枠を中央から分割し、アーマーを開く。
同時に、長いホースの様な両腕が伸び、黄色い角の様な先端がマニュピレーターであるかのように三分割して展開する。
まるで、毒花の蕾が咲くように。
ぐぐぐぐぐ、ばきいぃ
そこまでは、Dの記憶にあるウォルターガンダムと寸分違わない。
しかし、ここからウォルターガンダムは、変化した。
ジェスターガンダムに似た下半身から伸びるのは、カニやエビの様な細長い足が3本のはずだった。
だが、今のウォルターガンダムは、下半身が異様に発達し、両腕と外殻のアーマーが融合する。
伸びた二本の足は、爪先が鋭く伸びた異形の爪を3つ持つ。
全体的なフォルムは、ザフト製の水中型MSゾノに似ている。
「ーーなに? その姿は」
「いかがです、デビルガンダム。
この世界の技術を取り込み、進化したウォルターガンダムは?
この脚と足をつければ、立派なMFになるんですよ。素人の私が使ったこの機体もね!!」
ウォンの感情に合わせる様に、ウォルターガンダムのマスクが展開し、牙を剥き出し、口を開いて笑う。
やや猫背気味な姿勢のウォルターガンダムは、長い前足を思わせる手をダラリと垂らしたまま、静かに前に出る。
猫背気味だというのに、20メートルを超えるデビルガンダムよりも頭一つ高い。
睨みあいから、先に動いたのはウォルターガンダム。
鋭い右のクロー攻撃で敵を襲う。
デビルガンダムはそれを上体を反らし紙一重で避け、ガラ空きのわき腹に左拳を三髪入れる、のけぞったウォルターガンダムの顔面に右のハイキックをぶち当て、後方へ吹き飛ばす。
「ウォルター・テンタクル!」
ウォルターガンダムは両手をばっと開き、掌にあたる部分から赤いビーム砲を放つ。
「--デビルショット!」
デビルガンダムも青紫色に輝く右の掌から光弾を放つ。
ズドォッ
青紫の光弾と赤いビームは互いの中央で相殺しあう。
「さすがですねえ。ですがあなたが不利であることに変わりはないんですよ。デビルガンダム」
Dは目の前のウォンから、淡々と視線だけを後方へやる。
「その機体はなんだ、ウルベ?」
そこにいたのは、緑色と赤色と黄色のトリコロールのガンダムがそこにいた。
その姿は、どこかシャイニングガンダムやライジングガンダム、ひいては進化前の自分に似ている。
サイズも一般的なMFの16.2メートル前後。
「きみやシャイニングガンダム、そしてゴッドガンダムの先輩にあたる機体だよ。
第十二回ガンダムファイト決勝大会。
わたしはこの機体で勝ち進んだ。
この、ウルベガンダムでね!!」
ウルベは誇らしげに自身の機体を見下ろす。
「思えばグランドマスターガンダムなどという力だけの機体に乗ってしまったのが、わたしの敗因だよ。
わたしはもっと早く気付くべきだった。
もっともわたし用にチューナップされたガンダムとはなにか、とね。
倒れたグランドマスターガンダムを回収し、アズラエルの動力炉兼MF製造機とし。
わたしはガンダム開発主任としての知識をフル活用し、わたし専用の、最高のガンダムを創りあげたのだ!!」
目を見開き、両手を広げ、高らかに宣言する。
「今の私ならば、あの時のシャッフル同盟など恐るるに足らぬ。それだけの力を手に入れたのだ!!
さあ、見るがいい!!
このガンダムこそ、わたしの力の象徴!!
全てを薙ぎ払う、最強のガンダムだ!!!」
ウルベガンダムの日の丸を思わせる胸の赤い球は、エネルギーマルチプライヤーに差し替えられ、真っ赤に光る宝石となっている。
「始めましょうか。
見たところ機体性能の差は、私たちの機体と、あなたの機体にそれほどの差はないでしょう。
となれば、あとは――」
一度言葉を区切り、いやらしい笑みを浮かべながら、ウォンはDに言い放った。
「数がモノを言う。
そう思いませんか? デビルガンダム」
「ーー笑わせる。
まとめて地獄に送り返してくれるわ!」
これを受け、Dも翼を大きく広げて、流派東方不敗の構えを取る。
「よし、今のうちだ!
なんだかよくわからんが、DG細胞同士でやり合ってくれてるんだ。いまのうちに俺たちはガイアガンダムを回収して、身を隠すぞ!!」
「ーー了解です!!」
「よし!
もう少し大人しくしてくれよ、すぐに元のステラに戻してやるからな」
バルトフェルドの言葉に、アマギとネオがそれぞれ答えながら、つぶやく様な唸り声を上げて棒立ちになっているステラの機体を取り囲む。
「おおっと、そうはいきませんよ!
バーサーカーシステム、フルパワー!」
その瞬間だった、赤いビームがアズラエルの砲塔から再び走る。
車線軸上には、ネオのウィンダムがあった。
「ーーぐ、ぅぅ! ネオ、危ない!!」
突如、唸るだけだったステラの瞳に理性の光が戻り、ネオのウィンダムを庇う。
「!! ステラ!?」
背後に迫るビームから身を挺してステラに庇われたとネオが悟った時、少女は苦悶の叫びを上げた。
「ああああああっ!!」
ステラの行動を見据え、ウォンが頷く。
「やはり、まだ理性がありましたか。ステラ、あなたはその邪魔な人間たちを殺しなさい」
「ーーイヤァアアアアッ!!」
瞬間だった、ステラが身を引き裂かれるような悲鳴をあげたのだ。
「な、なんだっ」
「ステラ! 大丈夫か、ステラ!」
必死に呼びかけるネオに、モニターの中でステラが手を伸ばしている。
「うう、うっ、ネオ……だめ……!
ネオ! ううぅう、ぁあああああ! 死ねええ! ネオぉおおお!」
「ステラ!?」
先ほどのような獣の雄叫びをあげ、ステラはネオに斬りかかる。
咄嗟にネオはビームサーベルを抜いて受け止めた。
ギィンッ
「くそっ! なにをやった!?」
バルトフェルドがビームライフルをウォンに向けて叫ぶ。Dを間に挟みながら、ウォンはニヤリと笑みを浮かべて返した。
「ふふふふ、自分の護るべきものに殺されて死ねるのです。
こんな幸福な死に様はないでしょう、ネオ・ノアローク。しかし、妙ですね。
彼女の能力ならば、あなたたちくらい軽く潰せるはずだったのですが」
疑問に首を傾げるウォンに応える様に、ビームサーベルでつばぜり合いを行うガイアから、声が上がる。
「やめ、てぇえ……
ステラに、ネオを、殺させ、ない、で……」
「ーーステラ!!」
彼女の瞳から涙が流れる。
必死に少女が、この得体の知れないシステムと戦っているのが分かる。
「これは驚きました。
ガンダムファイターのアレンビー・ビアズリーよりも、耐えるとはーー!
健気じゃないですかあ。ねえ、ウルベ?」
「ふっふっふ、ウォン。君も悪趣味な男だ」
「ーーて、め、え、らっ!!」
ついに、ネオの堪忍袋の緒が切れた。手に持ったサーベルで斬りかかろうとバーニアをふかす。
が、その前に赤い羽を持ったガンダムの背が、ネオの前に立ち塞がった。
「ーー邪魔だ、人間。貴様らから先に潰すぞ」
「なん、だとぉお!?」
淡々と言い放つDに、ネオが怒りのまま、サーベルを構える。それをバルトフェルドのムラサメが割って入った。
「ーーよせ!
俺たちが割って入れるレベルじゃないことくらい、お前にだってわかるだろう!
いまは彼女を正気に戻してやることのほうが先決だ!!」
「くっ。ステラ……待ってろよ!」
「戻せればいいですがねえ。システムを理解していないあなた方の手でーー。ふふふ」
先ほどから、彼らをいいようにいたぶるウォンにとって、彼らの抵抗はむしろ、享楽だった。
その表情のまま、ウォンは目の前の悪魔を見据える。
「ーーさて。ではこちらも続きを始めましょう」
次に放たれた赤いビームは、ウォルターガンダムに注がれた。
「ーーな、なんだと!?」
「どういうことだ!?」
理性を無くし狂わせるシステムだと言うのは、ステラを見れば分かる。だが、なぜそれを自分に向けたのか、バルトフェルドやネオには、理解できない。
「ーーなるほど。
DG細胞による身体能力の向上に加え、バーサーカーシステムにより闘争本能を高め、反応速度と攻撃力を上げたか。武闘の経験の無いウォンなりに考えているようだな」
闘争本能の赴くまま、凄まじいスピードとパワーに任せ、ウォルターガンダムが攻撃を仕掛ける。
対するDのデビルガンダムも、巨体とは思えないスピードで軽々とリーチの長いウォルターガンダムの懐に入り込み拳を放つ。
力と力がぶつかり合い、無数の拳と爪が宙で火花を散らし合う。
「ーーどうだぁ、D!?
これがわたしの切り札、グレートウォンの真の力だ!」
「なるほど、暇つぶしにはなるようだがーー」
ウォルターの巨大な爪を紙一重で避けると同時に無数の拳をウォルターガンダムの体にぶつける。
「ーーぐう!?」
「本能に任せた獣の戦い方など、積み重なる修練を得た武の前には無力ーー。哀れなものだな、ウォン」
Dの動きや技のキレは全盛期のマスターアジアに匹敵し、そのパワーやスピードは人外のそれだ。
肉弾戦では、ウォンに勝ち目など無い。ウォン一人ではーー。のけぞらされたウォンに更なる追い打ちを仕掛けようと拳を振りかぶると同時に、Dは背後から放たれた拳を振り返りざま受ける。
バギィッ
拳を掴み取り、睨み据える先には、ウルベがいた。
「なるほど、だから貴様か」
「ーーそう。
ウォンだけでは、ガンダムファイターのトップクラスには太刀打ちできない。
だからこその、私だよ」
言いながら、小回りの効く小型のMFの特性を活かし、懐で拳を繰り出すウルベ。
一つ打たれたら3つを返すとばかりに拳をかわすと同時に繰り出す。
ビュンッ
Dから放たれた拳を左に見切り、ウルベはガラ空きの顔面に右ストレートを当てた。
バギィッ
「ーー!?」
しかし、デビルガンダムは仰け反りすらせずに左の拳を振りかざし、御構い無しに攻撃してくる。
その一撃は重く、連撃で放たれるため、迂闊に受けることはできない。
舌打ちしながら、攻撃を捌くウルベに対し、より苛烈にして無慈悲な連撃が放たれる。
ズドォッ
その時、 赤いビーム砲がウォルターガンダムから放たれ、咄嗟にDが後方へ退くと同時に、ウルベガンダムが回し蹴りを放って、デビルガンダムを退ける。
「なるほど、これほどとは。
恐れ入る、では私も奥の手を使おうかーー」
構えを取るウルベにアズラエルから赤い光が放たれる。その光を吸収すると、ウルベの全身をDG細胞が覆い尽くし、彼は見た目にも人間であることを辞めた。
禍々しい気を放ちながら、ウルベガンダムは赤黒い光を纏う。一気に、身体能力が向上したのが、見て取れた。
「ーー!」
「D、君に一つ告げておこう。
神を滅ぼし得るのも、悪魔を倒し得るのも、人間の欲望である、とね」
同時にウルベとウォルターの2機が仕掛ける。
その動きは、先ほどとは比にならない。一騎打ちならばデビルガンダムと互角か、やや劣る程度の動き。
2機の同時攻撃にデビルガンダムも、無数の拳と蹴りを繰り出して応戦する。
バギィッドガガガッ
凄まじい乱打戦を繰り広げる3機。
苛烈にして重いデビルガンダムの拳に対し、小回りの効く自身の機体とデビルガンダムにも力負けしないパワーを活かし、懐から拳を打ち込むウルベガンダム。
アウトレンジから素早く鋭い爪で薙ぎ付けるウォルターガンダム。
拮抗しているかに見える3機の乱戦は、しばらくした後に、終わりを告げる。
バギィッ
デビルの右ストレートが空を切り、ウルベの強烈な左のボディブローが炸裂した。
「ーーフン」
長身が前のめりになるにも構わず、左拳の打ち下ろしを返すデビルガンダム。
ウルベは、それよりも一瞬早く右に半歩踏み込み避けると同時にに強烈な右ボディを食らわせると、凄まじい連続の拳蹴打を放つ。
デビルガンダムも拳を振りかぶるが、死角に移動していたウォンの強烈な鞭を思わせる左の爪の一撃に、アゴを跳ね上げられ、硬直する。
パァンッ
ウルベが、その隙を逃すはずはなく、右ボディを当てた後に、一歩左足を踏み込み、左の拳をアゴに入れ、右の飛び膝蹴りで左肩を打ち抜き、くるりと宙で身を翻して、右のかかと落としをデビルガンダムの頭部に決めた。
ドガガガァッ
ガクゥッ
デビルガンダムは、右の拳をフックにして返し、ウルベの追撃を凌ぎながらも、ついに膝をついた。
ビビュンッ
ズドォッ
更にウォルターガンダムの赤いビームが放たれ、膝をついたデビルガンダムに直撃、爆発した。
爆発の中から、機体のあちこちで火花を上げるデビルガンダムが、ゆっくりと歩いてくる。
「きさまらっ……!」
その顔は、怒りに燃えていた。
そんなDを見下ろしながら、2機のガンダムはニヤリと言いはなつ。
「二人がかりでも、楽に勝たせてくれぬとは恐れ入る」
「ええ、驚きました。さすがは我らのかつての主。ですが、つぎで終わりですよ」
構えを取る両者を忌々しげに睨みつけるD。
実力もさることながら、信じられないほどのコンビネーションだった。
DG細胞によるシンクロをしているにしても、これほどのレベルになるとは、Dの予測範囲外のことだ。
「ウルベ、ウォン、きさまらっ!」
「さあ、終わりにしよう。デビルガンダム。機械ごときが、人間の欲望のすべてを支配できると思いあがったその考え、このわたしが修正してあげよう」
ウルベはまるで聖人が教えを説くかのように穏やかに静かに、語りかける。
「この世界はね、デビルガンダム。
人間を抹殺するためにあるんじゃないんだよ。
人間は、我らに支配され、淘汰され、我々を崇めるためだけに存在するのだよ。
我々の暇つぶしにその命を捧げて、ね」
だが、その内容はこれ以上ないほどに身勝手かつ唾棄すべき行動理念。
勝ち誇るかのようなウルベに、Dが吐き捨てる。
「笑わせるな。薄汚い溝鼠が!」
「フッ、末期の台詞がそれとは。
悪魔の台詞にしてはすこし、凡百過ぎるのではないか? デビルガンダムよ!!」
同時に、ウルベとウォルターが、その場から消え、デビルガンダムに仕掛ける。
「ーーチッ!」
デビルガンダムも、前傾姿勢になり超スピードで消え、迎え撃つ。
「勇敢なことだ。勝ち目など無いだろうに!!」
「油断は禁物ですよ、ウルベェ」
「分かっているさ」
左右から仕掛けるウルベとウォルターに対し、高速で右と左にジグザグ移動しながら、デビルガンダムは拳を放つ。
デビルガンダムは、どちらかの攻撃に合わせ、高速で側面に回り込み、カウンターを放って一人を退ける狙いで動く。
対するウルベとウォルターは、それを察してデビルガンダムの行く先々に先回りし、左右から仕掛けるのを辞めない。
ドガガガガガガガガガガガガガ
あちこちで、土が跳ね上がり、稲妻が宙を走り、地鳴りが鳴る激戦を繰り広げるも、ついにデビルガンダムが捉えられた。
ビシュンッ
ズザア
突如高速移動を止めて、足を踏ん張り、デビルガンダムは右ストレートを放つ。
バギィッ
強烈な一撃を右腕でガードするも、ウォルターの右腕は痺れ、衝撃に機体が下げられる。
その隙に懐へ入り込んだウルベに対し、デビルは強烈な拳蹴打の弾幕を張る。
ウルベもニヤリと笑うと、足を踏ん張り、拳蹴打の弾幕を打ち返した。
凄まじい乱打戦を繰り広げる両者だが、デビルガンダムのパワーに押され、ウルベが後方に退く。
「ーーチッ、重量と馬力ならば奴が上か!!」
「ーーうおおお!!」
悪態を吐くウルベに、Dが畳み掛ける。
Dの強烈な右のストレートを、ウルベは両腕でガードするも、勢いを殺せずに仰け反る。
そこへリーチが長く、しなる野太い棍棒のような左右の回し蹴りがウルベを襲う。
ドガガァ
ピンボールの様に左右に弾かれ、流石のウルベも両腕がしびれ、左の直突きを受けずに、無理矢理態勢を崩して左に避ける。
それは、丁度デビルガンダムの右手側に移動することになる。
「我のこの手が、唸りを上げる。
全てを屠れと高まり狂うーー!!」
トドメとばかりに右手に力を集中し、Dは必殺技を放った。
「まず貴様からだ、ウルベ!
暴裂、デビルフィンガァアアアッ!!」
右手が青紫に輝き、必殺のフィンガーが態勢の崩れたウルベの顔面に放たれる。
ズバァッ
そこへ割り込むように長くしなる腕から、鋭い左の爪がデビルガンダムのボディを切り裂く。
「ーーそうは、行きませんよぉ!!」
奇襲に成功したウォンが耳障りな高笑いを行う。
「ーーグッ」
ビュンッ
デビルガンダムが、僅かに退いたことで、フィンガーの狙いが逸れる。
これを見事に左にさばいたウルベは、懐に入り込み、右掌を青く輝かせるとデビルのボディに突き刺した。
ズシュウッ
「ーーぐふぉっ」
強烈なウルベガンダムのフィンガーを食らい、Dの動きが止まる。
「さあ、終わりだ、デビルガンダム!!」
その一撃は、Dを構成するデビルガンダムのプログラムそのものを焼き尽くす。
放たれれば、Dはその肉体を、デビルガンダムは自我を喪うであろう。
それは、「彼」の死を意味する。
(終わる? 我が。
ドモン・カッシュとゴッドガンダムに問うこともできぬまま……。
人間どもに己の愚かさを悟らせることもできぬまま……。
こんなところで、なにも成し遂げぬまま……我が死ぬ……!?)
どくん、どくんっ
本来、仮初めの生体ユニットに、あるはずの無い生命の脈動は、完璧なまでに人体を模倣した細胞によって再現されている。
それは、Dにとって完璧な誤算。
Dは、この時、初めて自分の生きている音を実感したのだ。
ぴちゃーん
水の音が聞こえた。
一雫の水が、Dの内側にある水面に静かな波紋が広がっていく。
ーーまだだ!!
ーーーーまだまだああああああ!!!!
「うぉああああああああっ!!!」
悪魔の咆哮が、Dの口から迸る。
恥も外聞も無い、ただ、ただ、生命の脈動に従った、稚拙なまでの、それでいて、逞しい咆哮ーー。
悪魔の産声を祝福するかのように、天から黄金の光が、デビルガンダムに降り注ぐ。
ズドォアッ
一瞬後、ウルベガンダムが後方へ吹っ飛ばされた。
「ーーなんだっ!?
こ、これはっ! シャッフル同盟どもの、ハイパーモード!?」
ウルベの記憶の中から、忌まわしいシャッフルの紋章を浮かべた青年達の姿が浮かび上がる。
そう。
デビルガンダムが、神々しい黄金の輝きを身に纏う機体に変化したのだ。
「ーーな、なんだとっ!
何故だ!?
DG細胞と明鏡止水は、相性が最悪のはずだ!!だからこそ、シュバルツ・ブルーダーにはハイパーモードが発現しなかった!!
なのに、何故ダァあああッ!!?」
ドゴォッ
次の瞬間には、デビルガンダムの無造作の右の肘打ちが、思い切りウルベガンダムの顔面を撃ち抜き、後ろに仰け反る。
ドグゥッ
次に左のボディブローが、ウルベに突き刺さり、その強烈な一撃は、MFの両足を地面から浮かせる。
ズガァッ
宙に浮いたところを強烈なかかと落しが、決まり地面に叩きつけられるウルベは、驚愕と力の差に絶句した。
「ーーな、なんだと!?」
後方から掩護しようと爪を展開したウォンだが、一瞬で目の前に現れたデビルガンダムに顔面を掴まれ、地面に叩き落される。
ドゴォッ
たったそれだけ。
たったそれだけで、先ほどまであれほど猛威を振るった二機のガンダムが動かなくなった。
「ーーこんな、馬鹿げたことが!?」
「力が、一気に跳ね上がるなんて!?」
地べたに這い蹲り、悪魔の怒りに触れた力なき民は、許しを乞う。
正にそんな表現が相応しい、現状ーー。
Dは、展開された胸部のエネルギーマルチプライヤーが青紫に輝いているのを確認し、自身の姿を見下ろす。
黄金の闘気を纏う、自分自身を。
「くーー!
くははははははは!!
手に入れたぞ!
明鏡止水を!
ハイパーモードをぉぉ!!!」
悪魔は、喜びに打ち震えながら、天に向かって叫んだ。まるで、神に挑むかのようにーー。
「こ、これは明鏡止水ハイパーモード!
あのエネルギーマルチプライヤーが、完全にデビルガンダムの力を引き上げている!?」
「どういうことだ、ウォン!
明鏡止水は、曇りなき心を持たなければできないのでは無いのか!?
それに、DG細胞で作られた奴に何故、ハイパーモードが使える!!」
何かに気づいた様子のウォンに、ウルベが問いかける。
ウォンは、バーサーカーモードを切りながら、丸渕のサングラスを押し上げ、黄金の闘気を纏う悪魔を見据える。
「誤算でしたね。
デビルガンダムは考えなしに自我を持ったわけではない、ということです」
「シャッフル同盟や、マスターアジアにも匹敵する明鏡止水の境地。
奴は、これを手に入れるために自我を持ったと?」
「DG細胞とは限りなく進化するもの。明鏡止水とは限界まで能力を引き出させる力。明鏡止水によって引き出された力が、DG細胞によってさらに進化するとすれば……」
「理論上、今のデビルガンダムはだれにも倒せない、か」
2人が現状の自分達と相手の状況を見て分析する。
それを悠然と眺めながら、Dは腰を落として斜に構える。
「クククククッ
無様なものだな、ウルベにウォン!
あと一歩で俺にトドメを刺せるところだったのに、油断した挙句に、このザマだ!!」
凶悪に顔を歪めながら、Dは目を見開き、殺気を放つ。
「やはり溝鼠は溝鼠らしく、地を這いつくばるのが似合いだぞーー!」
にらみ合う三者だが、現状ではウルベ達に勝ち目は無い。
それが分かっているからこそ、Dは逃がすつもりはなく、右手に力を溜める。
「ーーさて、この状況をどうするか」
「現状、いまのデビルガンダムは倒せません。となれば、ここは撤退しかないでしょう」
「簡単に言ってくれるな、ウォン。
隙を見て逃げ出そうにも、いまの彼から行うには、なかなか難しいぞ?」
「確かに、今の彼には油断も隙も無い。
しかし、ならば隙を作れば良いーー。
方法など、いくらでもありますよ」
「ーーぬ?」
バキャアッ
その時だった、ウルベ達とは違う方向から、打撃音が響き渡ったのだ。
そちらを伺えば、2機のムラサメが地面に突っ伏し、1機のウィンダムが、前のめりに倒れながらも、必死に赤い光を纏った黒いガンダムに手を伸ばしている。
「くっ、ステラ……!」
「ーーグウウウッ!
グァアアアアアアッ!!」
ウィンダムやムラサメを破った機体ーーガイアガンダムは、黄金の光を放つデビルガンダムに向きなおると、突如、襲い掛かった。
「フンっ、邪魔だ」
Dは吐き棄てると、四つ足のMAモードに変化し、高速で疾駆してくるガイアの首をアッサリと掴むと地面に叩きつけた。
ドゴォッ
「ーーグウウウッ!」
「こんなものが、俺の生体ユニットだと?」
こちらを睨みあげてくるステラにDは、淡々とした表情で告げた。
「ーーくだらん。
前に見た貴様は、そんなくだらん奴ではなかった」
かすかに、ステラにしか聞き取れないほど小さな声でDはそう告げた。
「注意をそちらに逸らしましたね、デビルガンダムうう!」
「いまだああーーーーー!!」
ウルベとウォンが同時に両手から青と赤のビーム砲を放った。
「ーーつまらん真似を」
Dは避けるのさえ面倒だとばかりに押さえつけていたガイアから手を離すと、ビームを真正面から受けた。
ドゴォッ
当然、黄金の気を纏うデビルガンダムには傷一つない。だが、その時にDは変化に気づいた。
爆煙が立ち上り、Dやネオ達の視界を遮る。
Dが無造作に腕を振り、煙を吹き飛ばして周囲の景色を晴らすと、そこにいたはずのガイアガンダムがいなくなっていた。
「ーーなに?」
目の前に視線を戻すと、ウルベとウォンの機体も、アズラエルという船すら無くなっている。
「ーーうまく、逃げたな」
忌々しそうに歯をくいしばるDの耳に、声だけが辺りに響き渡る。
「また会おう、デビルガンダム!!
この次に君にあった時は!!
今度こそ君というプログラムを倒し、その能力のすべてを我々がいただくとしよう!!
それまで、せいぜい悪魔を気取っているがいい!!」
オーブの戦域に、ウルベの高笑いが響き渡っていた。
みなさん、お待ちかね〜!
ウルベ達が去った後、忽然と姿を消すチャップマンにミケロ。
デビルガンダムもまた、彼らを追ってオーブの海域を離れます。
そして、ステラを奪われたネオやマスターの取った行動とは!?
次回、機動武道伝GガンダムSEED Destiny 第40話に、レディー、ゴー!!