新機動武闘伝 GガンダムSEED Destiny   作:カンナム

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さて、皆さんーー。

物語はまだまだ終わりを迎えることはありません。

ステラを攫ったウルベ達に挑むため、ネオ・ロアノークは一つの決心をします。

また、マスターアジアはガーティールーの今後を思い、彼らと別れて単独で悪魔を追いかけるのです。

そんな中、全世界を揺るがすイベントが行われようとしていましたーー!!

それでは、ガンダムファイト!!

レディィィイ、ゴォォオオオオッ!!

第40話



第40話 攫われたステラ 魔人の思惑

 

ーー オーブ軍基地の医療施設にて ーー

 

 

 

「ちくしょう…!!

 

 俺は、自分の部下一人、守れないってのか!!」

 

 

 

 動かなくなったウィンダムのコクピットで、ネオは自分の非力を呪っていた。

 

 部下を無駄死にさせたばかりか、最後まで得体のしれないシステムに抵抗し、自分を守ってくれた少女を、何もできずにつれていかれてしまった。

 

 

 

「こんな、無能な男が、ほかにいるかよ!!」

 

 

 

 白いベッドに寝かされていた男ーーネオ・ロアノークは、己の無能さに拳を握りしめていた。

 

 

 

 ベッドの脇には、彼の部下であるイアン・リーやスティング・オークレー、アウル・ニーダがいる。

 

 

 

「まさか、連合が我々を裏切るとは…」

 

「ステラがさらわれちまうなんて、な」

 

「どうすんだよ、ネオ?」

 

 

 

 三人の言葉に、ネオはぼんやりと天井を見上げるしかなかった。

 

 

 

ーーーーーー

 

 

 

 あの後、ステラ・ルーシェがアズラエルと呼ばれる戦艦と共に姿を消した瞬間に、地球連合全軍に退却命令が出ていた。

 

 

 

 急な撤退命令に、首を傾げる者もいたが、多くは特に疑問を抱くことはなく、その場から去っていった。

 

 

 

 そして、アークエンジェルとガーティ・ルーの二隻の戦艦がたどり着いた海域で、彼らは倒されていた三機のMSと、赤を基調としたトリコロールのガンダムを発見する。

 

 

 

「あ、あの機体は、東方先生に倒されたのではなかったのか!!」

 

「デビルガンダムって言ってたよな?」

 

「やばいぜ、今の僕らじゃ……!!」

 

 

 

 ガンダムの正体に気づき、顔色を失くしたのは、ガーティ・ルーの乗員たちだ。

 

一方のキラ達は、倒されていたムラサメ二機を確認した後、赤い羽のガンダムを見る。

 

 

 

「バルトフェルドさんーー、アマギさんまで!!」

 

「マリューさん、あの機体はデビルガンダムです!!

 

 記録データに該当します!!」

 

「見た目が変わっているのは、シャイニングガンダムのように進化したからなのね」

 

「シャイニングとよく似ている進化の仕方ですね。

 

 ゴッドに似せているのは、ザフトの量産機ともかかわりがあるからなのか?」

 

 

 

 キラとマリューが記録データを確認しながら、姿を新しくしたデビルガンダムを見つめる。

 

 

 

「マリューさん!

 

 本当にこの艦に、機体はないんですか?」

 

「……だめよ、キラ君。

 

 あなたは、マスターガンダムに受けたダメージが」

 

「この状況で、そんなことを言ってる場合じゃないことは、マリューさんだってわかるでしょ!?」

 

 

 

 キラの必死な訴えに、マリューは眉をひそめるも、先ほどの戦いのダメージを考え、彼にMSで行けとはとても言えない。

 

 

 

「格納庫の3番に、エールストライクガンダムがある

 

 アスハの姫様から、ストライクルージュを借りてたからな。

 

 そいつをお前さん用に、いじった」

 

「……!! マードック曹長!!」

 

 

 

 キラの手当ても碌にしていないのに、MSのことを教えたマードックに、思わずマリューが非難の声を上げた。

 

 

 

「艦長。

 

 どのみち、この状況じゃ坊主に出てもらわなきゃ全員お陀仏ですよ」

 

 

 

「ありがとうございます、マードックさん!」

 

 

 

 マリューの返事を待たずに、格納庫に走ろうとするキラだが、その時バルトフェルドから通信がアークエンジェルに入った。

 

 

 

「…待て、キラ

 

 アークエンジェルもだ」

 

 

 

 その声に、キラとマリューの表情が柔らかくなる、

 

 

 

「無事だったのね、バルトフェルド隊長」

 

「ああ。

 

 ラミアス艦長、アマギも連合のパイロットも無事だ。

 

奇しくも、そこのデビルガンダムのおかげでね」

 

「ーーどういうことなの?」

 

 

 

 訝し気に眉を顰めるマリューに、アマギも頷きながら続ける。

 

 

 

「彼がいなければ、我々は全滅していたでしょう」

 

 

 

「それは、いったい……!!」

 

 

 

 その答えに、キラも思わず身を乗り出した。

 

 

 

「ーーそんなことは、どうでもいい!!

 

今すぐ俺を回収しろ、イアン!!

 

 なあ頼む、アークエンジェル!!

 

 協力してくれ!!」

 

 

 

 その時に通信が割って入ってきた。それは連合のMS--ウィンダムからのものだった。 

 

 

 

「ーー隊長? 一体、なにが?」

 

「ーー今の声、まさか!!」

 

 

 

2隻の艦長は、それぞれ連合のパイロット、ネオ・ロアノークに反応していた。

 

 

 

「おい、無理するな!

 

お前さんが、一番やられてるんだぞ」

 

 

 

「バルトフェルドさんの言うとおりだ。

 

貴方が一番、彼女から攻撃をーー」

 

 

 

バルトフェルドとアマギの2人から、止められるも、ネオは引き下がらない。

 

いや、下がれない。

 

 

 

「このまま、引き下がれるかよ!

 

ステラを、あいつを助けなけりゃいけねーんだよ!!

 

せっかく、普通の人間と同じ生活ができるようになってたんだ!

 

それを、あんなクソ野郎どもに台無しにされて、たまるか!!」

 

 

 

ネオの言葉に、ガーティ・ルーの面々も、なにがあったかを悟り出した。

 

 

 

「ステラ? ステラが、どうしたってーー?」

 

「どういうことだよ、ネオ? まさかーー!!」

 

 

 

スティングとアウルの言葉に、ネオは歯を食いしばった後に俯きながら、震える声で告げた。

 

 

 

「ーーすまねぇ、守れなかった」

 

 

 

瞬間、ガーティ・ルーの空気がーー凍った。

 

 

 

ーーその後、意識を失ったネオは、オーブの医療施設にて治療を受けていたのだ。

 

 

 

攻め込んでいた連合艦隊は、突如ジブリールの鶴の一声でオーブ海域から姿を消していった。

 

 

 

激闘を繰り広げていた四機のMFも、ウルベ達が退却すると同時に、チャップマンが叩き伏せられたミケロを連れ、2人の間隙を縫って退いていった。

 

 

 

「ーーキョウジよ。

 

貴様に言うのは筋違いであろうが、伝言を頼む」

 

 

 

「ーーなんだと?」

 

 

 

「ワシは奴らを追わねばならん。

 

連合艦隊と共に奴らが退いたのは、偶然ではあるまい。

 

奴等と連合が手を組んでおるのならば、ワシは貴様らと共には歩めぬ。

 

ワシの存在は、貴様らの足枷となるであろう。

 

独自に追わせてもらう、とな。

 

貴様らの武運長久を祈るーーそう伝えておいてくれ。

 

では、さらばだぁ!!」

 

 

 

叫ぶと同時に、マスターガンダムは、広げていたウイングバインダーを閉じ、マント状にして一気に水平線に向かっていった。

 

 

 

ーーーーーー

 

 

 

この事をキョウジから聞かされたガーティ・ルーの面々は、複雑な表情であった。

 

 

 

「せめて、ステラの事を伝えておきたかったぜ」

 

 

 

苦い顔をしたネオに、アウルも頷いた。

 

 

 

「ステラの事を知っててくれたら、師匠はステラを助けてくれただろうしね」

 

 

 

「甘えんなよ、アウル。ステラは、俺たちの仲間だろ。師匠に頼ってばかりで、何も出来ないヤツになりたいのかよ?」

 

 

 

「だけどスティング、実際どうすりゃいいんだよ!? 連合が、俺たちを裏切ったんだぞ!! 連合に助けを求められないなら、どうしようもないじゃないか!! 師匠なら、師匠が居てくれたらーー!!」

 

 

 

アウルの言葉に、スティングも眉根を寄せ、歯をくいしばる。押し黙るガーティールーの一行を、オーブの面々も神妙な面持ちで聞いていた。

 

 

 

「教えてくれないか? 奴等が言っていたDG細胞って、何なんだ? 何故、ステラを狙いやがった。味方の俺たちを裏切ってまで」

 

 

 

ネオは、ベッドの上で身を起こし、キラやキョウジ達に問いかけた。

 

 

 

ネオの仮面を外した素顔に、キョウジを除くアークエンジェルの面々の表情が変わる。

 

 

 

ある者は驚愕し、ある者は納得し、ある者は呆然としていた。

 

 

 

「ーームウ?」

 

 

 

マリューが形の良い唇を震わせながら、死んだはずの恋人と同じ顔をした男を見据えた。

 

 

 

「ーーどうした? 俺の顔に、何かついてるか?」

 

 

 

「言っただろ? お前さんは、先の大戦で亡くなった俺の友人に似てるってな。

 

ここに居る連中と、その友人は同志だったんだ。特に、そちらのマリュー・ラミアス艦長とそいつは恋人だった」

 

 

 

アークエンジェルクルーの反応に、ネオ達の方が困惑していた。

 

その間を取り持つよう声をかけたのは、共にガイアガンダムを抑えようと戦ったバルトフェルドだった。

 

 

 

「ーーそりゃ、とんだクソ野郎だな」

 

 

 

その答えを聞いて、ネオが苛立つように告げた。

 

 

 

「ーーん?」

 

 

 

「何年も前に死んだ男を未だに想うようなーーこんないい女を置いて死ぬ、なんてな」

 

 

 

マリューを正面に見て、真剣な表情で告げたネオに、バルトフェルドは声を出して笑った。

 

当のマリューは困惑気味にネオを見返す。

 

 

 

「はは! クソ野郎かはともかく、大バカ野郎には違いないな」

 

 

 

「ふふーーわりい、話を戻してくれねえか?」

 

 

 

バルトフェルドの屈託ない笑顔に、ネオもガーティールーの面々も、少しだけ硬い表情がほぐれていた。

 

 

 

「ーーああ。キョウジ、話しても構わないか?」

 

 

 

「もちろんだ。彼らが攫われた仲間を助けると言うなら、今から戦う奴等の事を少しでも多く知っておいてほしいからな。

 

それに場合によっては、こちらも協力できるかもしれない。

 

これはもう、連合もザフトも関係ない。事態は最悪の一途を辿っているのだから」

 

 

 

キョウジの言葉に、皆が彼に注目した。

 

 

 

彼は語る、自分の身に起きた悲劇を。

 

デビルガンダム事件の全貌を。

 

自分の世界で起きた、悪夢を。

 

 

 

「機械が、人間を抹殺するだとーー?」

 

「地球を喰らうガンダムだというのかーー!」

 

「自己再生、自己増殖、自己進化、だって?」

 

「何かの悪い冗談とかじゃ、ないのかよ?」

 

 

 

話を聞いたガーティ・ルーの面々は、声を無くし、辛うじて感想を語るのみだった。

 

 

 

「ステラが攫われた理由は、デビルガンダムの生体ユニットにするため、なんだな?」

 

 

 

「ああ。だがーーー」

 

 

 

ネオの問いにキョウジも頷きながら、思考する。

 

 

 

「デビルガンダム自身はーー、生体ユニットを不要と判断したんだな」

 

 

 

「気になるのは、何故オーブに現れたのか。僕たちを見ても戦闘せずに去ったのか、ですね」

 

 

 

「多分、欲しかったものを手に入れたからだろう。明鏡止水の境地をな」

 

 

 

キョウジの間髪入れない言葉に、キラも目を鋭くした。

 

 

 

「ハイパーモードを使いこなせる、と?」

 

 

 

「バルトフェルド達の記録映像を見ても分かるように、既に二機のDG細胞製のMFを退けてる。

 

脅威的なパワーアップだ」

 

 

 

「でも、何故デビルガンダムはウルベやウォンを倒そうとしたんでしょうか? 記録映像の会話でも、彼らからは敵対しようとはしていなかったのに」

 

 

 

「それは、俺にもわからない。だが、一つだけハッキリしてることがある」

 

 

 

キョウジの言葉に、ネオが身を乗り出した。

 

 

 

「なんだ、それは? どうでもいいがお前の声、ジブリール卿に似てるな」

 

 

 

「ーーそのジブリールってのは、ブルーコスモスの盟主ですよね? あなた方はジブリールの直属の部下。そのあなた方に聞きたいんだが、今回のウルベ達の行動はジブリールと繋がっていると確信できるものか?」

 

 

 

「ーーファントムペインに所属する者の名は、連合の正規軍には載らない。分かるのは、俺たちの直属の上司だけだ。

 

そしてウルベとかウォンて奴らも、ファントムペインと俺たちの部隊の名を呼び、俺の名やステラの名を口にした」

 

 

 

ネオの淡々とした答えに、ガーティ・ルーの面々が表情を固める。改めて、自覚したのだ。

 

 

 

ステラは、連合にーーブルーコスモスに攫われたのだと。

 

 

 

「間違いなくジブリール卿と奴らは手を組んでる」

 

 

 

ネオの言葉にキョウジの表情が深刻なものに変わった。

 

 

 

「厄介な状況だな。

 

プラントの最高評議会議長ギルバート・デュランダルは、かつて人類抹殺を試みたデビルガンダムと通じ、地球連合のブルーコスモス盟主ロード・ジブリールは、DG細胞を駆使して世界を支配しようとするウルベやウォンと手を組んでる」

 

 

 

「ーー完全に後手だな。まあ、規模が違い過ぎると言えばそうだし。俺たちは他国に介入できんから仕方ないさ。

 

むしろ、少ない戦力でよくやってる方だ。お前がいなけりゃ、とっくにオーブはジブリールの支配下だぜ」

 

 

 

キョウジの悔しそうな表情に、バルトフェルドが肩を叩きながら、告げた。

 

 

 

「ーーだが、こうなっちまったらカガリに意思表示してもらわなきゃならん。あくまで、俺たちはアスハ派の私軍だったが、オーブの正規軍を使えるようにしないとな」

 

 

 

「つまり、アスハ独自の判断ではなく、オーブ全体の意思で戦う、か。今までは負けても、俺たちだけの責任で済んだが、今度はオーブそのものに責任ができるな」

 

 

 

「今更だよ、キョウジ。今の状況でも、充分連合はオーブと俺たちを同一軍として見てるさ。

 

今までは篭って国を守れば良かったが、これからは情報戦だ。手数がなけりゃ話にならん。

 

その上で、今までのアスハ私軍のような自由度が効く部隊も必要だ」

 

 

 

「ーーアークエンジェル、か」

 

 

 

バルトフェルドとキョウジの会話に、皆が注目していた。

 

 

 

「ーー元連合のパイロットを迎えるなら、アークエンジェルを置いて他にないだろ?

 

あの少女を救うためにもな。ロアノーク大佐?」

 

 

 

「ネオでいい。それと、助けを求めてなんだが、少し待ってくれないか?

 

正直、俺は願ったり叶ったりだが、ガーティールーのクルーの中には家族を持つ奴らもいる。

 

迂闊に連合を離れる訳には行かない奴らもな」

 

 

 

ネオの言葉に、キラが頷いた。

 

 

 

「ーー分かってます。ガーティ・ルーには連合に戻るべき人々もいるでしょうしーー」

 

 

 

キラの言葉が言い終わる前に、ガーティ・ルークルーから、声が上がった。

 

 

 

「ーー大佐、何を言い出すんです!?」

 

「自分達は、大佐とーー!!」

 

 

 

それを手で遮り、イアン・リー艦長がネオを見据える。

 

 

 

「ーーご自身だけ、全ての罪を被られるおつもりですか? 自分達を、安全に連合に返すために。そんなことを、我々が望むと?」

 

 

 

「ーーイアン、聞いてくれ」

 

 

 

「確かに、私たちには家族がいます。しかし、艦長として言わせてください。ウルベとやらに殺されたパイロットたちも、紛れもなくガーティ・ルーのクルーの一員ーー家族なんです。

 

それをだまし討ちで簡単に殺された挙句に、ステラまで攫われた。この上、まだ連合の犬になれ、と?」

 

 

 

「イアン、お前は軍人だろうが!!」

 

 

 

「その前に、人間ですよ。

 

もっともーー私もあなたも東方先生に会わなければ、それを忘れていたでしょうがね」

 

 

 

「ーーイアン」

 

 

 

歯を食いしばり、辛そうな表情をするネオにイアンは告げた。

 

 

 

「軍人とて、人である。大切なものを奪われれば怒るし、理不尽な目にあえば嘆く。当たり前の事を、当たり前に表現できるようになったのは、あの方のおかげです。

 

スティングやアウル、ステラも、私たちの大切な家族なんですよ、隊長」

 

 

 

穏やかに覚悟を決めた男ーーその後ろには全ての乗組員が同じ表情で並び立つ。

 

彼らの姿にスティングやアウルは、目に涙が溢れていた。

 

 

 

「イアン艦長、そんなにも俺たちのことをーー!」

 

「ーーなあ、スティング。

 

みんな、優しいよな。人殺しの道具として作られた僕たちには、勿体無いくらいにさ」

 

「ああ。ああーー、本当だよ。

 

みんな、優しすぎて、バカばかりだーー!」

 

 

 

そんな光景に、オーブの面々も静かに頷いた。トダカが代表して語る。

 

 

 

「安心してくれ。

 

たとえ、連合にあなた方が帰るとしても、我々は補給を惜しまない。あなた方のような人間こそ、生きるべきだ」

 

 

 

「敵に塩を送るなんて、アンタらも変わった軍人だな。なら、イアン。お言葉に甘えて補給してもらえ。

 

お前らは、連合に戻るんだ」

 

 

 

「ーー隊長!!」

 

 

 

はじめて、冷静な艦長が声を荒げた。

 

 

 

「こんな馬鹿げた勝負はない。東方先生に出会ってステラを救う可能性も考えたが、そもそも地球を回る先生1人に出会える確率は低い。

 

仮にステラを救えても、連合にはいられない。連合加盟国に家族がいる者には、一緒には来させられない。こいつは、俺のワガママだ。

 

頼むよ、イアン。俺の大事な部下達を守ってやってくれ」

 

 

 

普段はちゃらけて軽い隊長の真剣な目に、殊勝な態度にイアンは思い切り溜め息をつくと答えた。

 

 

 

「ーーそう言われたら、仕方ありませんね。分かりました。私たちは連合に戻ります。どうか、ご無事で隊長」

 

 

 

「ーーああ、すまねえ」

 

 

 

部下を頼むと言われ、イアンはようやく引き下がったのだ。

 

 

 

こうして、ネオとアウル、スティングの3名がオーブに残り、連合に家族のいる他の乗組員達は連合側に帰国していった。

 

 

 

ーーーーーー

 

 

 

2日後、ミネルバにてーー

 

 

 

「「ーーこれは、どういうことだ!!」」

 

 

 

アスランは自室で、プライベート回線を開きながら、シュバルツと共に声を張り上げた。

 

 

 

「キラ、俺たちに何故何も言わなかった!?」

 

 

 

「キョウジよ、一言あっても良いだろう!!」

 

 

 

モニターの向こうでは申し訳なさげにしているキラと肩を竦めて笑うキョウジがいる。

 

シュバルツの眉間にシワが寄っていくーー。

 

 

 

「キョウジ、貴様は言ったな?

 

私とアスランがザフトでデビルガンダムに関する情報を集めるのを主な目的にし、表向きはデュランダル議長に貸しを作ることだと。

 

だが、肝心要の私たちの帰る場所が攻撃を受けているのに、助太刀の要請もなくーー!

 

いや! 何よりも、私たちが知ったのが全て終わった後で、ザフトからのニュースで知るとは、どういうことだ!!!」

 

 

 

「キラもだ!

 

俺は、カガリやお前の指示でザフトのフェイスを得た事になってるのに!!

 

肝心のオーブを守る戦いに呼ばないとは、どういうことだ!!」

 

 

 

怒り心頭に発した2人の主張にモニター越しとはいえ、キラがタジタジになる。

 

 

 

「ご、ごめんなさい。アスラン、シュバルツさんも」

 

 

 

「ーーとはいえ、お前達に連絡してる暇が惜しかったんでな。それほどまでに状況は切迫していた」

 

 

 

悪びれもせずに簡単に話すキョウジに、シュバルツの眉がピクピク動いている。

 

 

 

「どうやら、キョウジ。お前とはドモンに会う前に一度きちんと話をせねばならんようだな」

 

 

 

「それは構わないよ〜。だいたいさ、シュバルツ。お前だってミネルバの一員なんだから、迂闊な真似はするなよ」

 

 

 

「このような時に動く為に私やアスランを客人にしたのではなかったのか!!」

 

 

 

「何のために俺は、オーブの少佐兼フェイスになりに、デュランダル議長に会いに行ったんだ!!」

 

 

 

キョウジの言葉に、シュバルツとアスランが抗議の声を上げる。

 

 

 

「本来はな。

 

だが、連合の裏にウルベやウォンがいて、奴らの息のかかったガンダム達が出てきたんだ。おまけにデビルガンダムまでな、この上ザフトに介入されたらどうなる?」

 

 

 

「…しかし!!」

 

 

 

「今回は凌げた。そして、裏にウルベがいると分かった。今後は遠慮なく呼ばせてもらうよ。オーブの重鎮達からもようやく、支持を得ることができた。

 

オーブとして、これからは動く」

 

 

 

キョウジの言葉にようやくシュバルツとアスランも怒りを納め、表情を新たにする。

 

 

 

「そうか、ついにオーブが」

 

「厳しい戦いになるなーー」

 

 

 

2人とも今後の事態を踏まえた上でキョウジやキラと意見を交換しあう。

 

 

 

熱を帯びてきたその時だった。

 

 

 

ーーコンコンッ

 

 

 

「シュバルツさん、アスラン隊長!

 

ブリッジに来てください。実は、宇宙でデュランダル議長がーー」

 

 

 

シンの声だった。アスランもシュバルツも、互いに顔を見合わせ、頷くとキラとキョウジに断りを入れた後、通信を終えて廊下に出る。

 

そこには、赤服の3人。シンとルナ、レイが並んでいた。

 

 

 

「3人とも来るなんて、どうしたんだ?」

 

 

 

「実はシュバルツ殿、議長が宇宙(そら)でガンダムファイトをプロデュースするそうなんです」

 

 

 

「「何だって!!?」」

 

 

 

思わずシュバルツとアスランが口をそろえた。

 

その横でレイの後を継ぎ、ルナマリアが話す。

 

 

 

「何でも、異世界から来た最強の戦士とザフトのガンダムファイターの戦いを地球と宇宙に見せたいんだそうです」

 

 

 

「試合は誰が行うんだ? 私か?」

 

 

 

ガンダムファイターである人間は自分とマスターアジアのみだと考えたシュバルツは、当然そう聞いた。

 

 

 

だが、答えは違う。シンが赤い瞳で真っ直ぐにシュバルツを見据えながら答えた。

 

 

 

「1人はキング・オブ・ハートのドモン・カッシュって名乗ってました。

 

もう1人は、議長の親友でザフト軍の制服を着た赤い髪のDと言う人みたいです」

 

 

 

「ドモン、だとーー?

 

それに、その特徴の男はまさかーー!」

 

 

 

「今から始まるみたいなんで、シュバルツさん達も呼んでこいって艦長がーー」

 

 

 

シンの言葉に、シュバルツはさらに目を見開く。

 

 

 

「今から、だと!?」

 

 

 

ーーーーーー

 

 

 

シン達との会話もそこそこに、シュバルツはブリッジに向かった。

 

 

 

「シュバルツ殿、アスラン少佐、よく来てくれました。ちょうどセレモニーが終わるところです」

 

 

 

ブリッジの巨大モニターに映し出されていたのは、ラクスを演じる少女ミーアのライブパフォーマンス。

 

 

 

そして、その背後で向き合う神と悪魔の名を冠するガンダム達だったーー。

 

 

 

「何故、何故ドモンがこの世界にいるんだーー!?」

 

 

 

全世界に中継されているこの戦いに、シュバルツはモニターに映し出された悪魔とにらみ合う弟の顔を凝視していた。

 

 

 

 




皆さん、お待ちかね〜!

ウルベ達を追いかけていたDの元にデュランダルからの帰還申請が届きます。

Dもまた、望んでやまない再会に宇宙へ上がるのです。

そう、神と悪魔の対決が再び行われようとしているではありませんか!!

次回、機動武道伝GガンダムSEED Destiny 第41話に!

レディー、ゴー!!
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