新機動武闘伝 GガンダムSEED Destiny   作:カンナム

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ーーこの時を

ーー自分は待ちわびていたのだろう

 今、目の前にいる男を確認して胸が昂るのを感じる。

 生まれ出でてまだ半年も経っていないというのに、デビルガンダムことDはこの瞬間のことだけは一生の記憶に残るであろうことを予感していた。

「待っていたぞ、ゴッドガンダムよ」



 さて、みなさん。

 オーブの海域で突如姿を暗ましたデビルガンダム

 彼はプラントのギルバート・デュランダルからの連絡に心を動かされたのです。

 そう!

 ドモン・カッシュとゴッドガンダムがこの世界に現れた件が、ついにデビルガンダムことDに知られてしまったのでした。

 デュランダルは更にDに対し、ドモン・カッシュとの一騎打ちの場を提供するのです。

 全世界を巻き込んだ神と悪魔の至高のファイトの火ぶたが今、切って落とされようとしていました!!

 それでは、ガンダムファイト!!

 レディイイイイイイイ!! ゴォオオオオオオ!!





 




第41話 選択の代償 二人の歌姫

ーーオーブ海域

 

 

 

デビルガンダムことDは、自身の体を見直す。

 

 

 

「DG細胞の体でも、明鏡止水を使えたか。やはり、マスターアジアから力を吸収した際に生身の肉体を解析できたのが大きいな。有機物に限りなく近い物資に変化させることができるようになったか」

 

 

 

掌を開いて閉じる。

 

 

 

「これで、また一つ。我は進化できた。感謝するとしよう、ウルベにウォンよ」

 

 

 

「そちらの戦闘を見ていたよ、D。素晴らしいパワーだね」

 

 

 

虚空を睨み笑みを浮かべるDに突如モニターから通信が入った。

 

 

 

「デュランダルか。どうした?」

 

 

 

「実はね、D。君の目的の男が現れたんだよ。キング・オブ・ハートがね」

 

 

 

「何だと!? それは本当か!?」

 

 

 

目を見開き、問いかけるDにデュランダルは満足そうな笑みを浮かべた。

 

 

 

「メンデルの戦闘記録データを君に送ろう。自分の目でも確認してくれ」

 

 

 

デュランダルの言葉に頷き、送られてきた映像データを再生させると、自分が求めてやまない男とガンダムが、そこにいた。

 

 

 

「ドモンーー! ゴッドガンダムーー!!」

 

 

 

自分を倒した男とガンダムが、デュランダルが改造したデスアーミーの部隊を叩き潰していく。

 

 

 

変わらぬ宿敵の健在ぶりに、Dは笑みを浮かべていた。

 

 

 

「D、プラントに帰還してくれたまえ。ドモン君たちに私からメッセージを送っている。彼の性格ならば罠であったとしても、この申し出を受けるはずだ」

 

 

 

「ーー何をした? ドモン・カッシュとゴッドガンダムは我の宿敵(モノ)だぞ! 余計な手出しはーー!!」

 

 

 

怒りを露わにするDに対し、デュランダルが手で遮ると同時にモニターに一基の廃棄コロニーを映し出させる。

 

 

 

「ーーこれは?」

 

 

 

見れば廃棄コロニーの周りを取り囲んでコーナーポストが置かれ、ビームロープを形成していた。

 

 

 

それが意味することはーー。

 

 

 

「ガンダムファイトを行え、ということか?」

 

 

 

「どうかな、D? もちろん、君が嫌ならばこの案は無しだがーー」

 

 

 

とデュランダルが言い終わる前に、Dが口を開いた。

 

 

 

「いつだ?」

 

 

 

「明日にでもできるよ、試合ならね」

 

 

 

「明後日にしろ。奴ならば1日開ければベストの状態に高めてくるはずだ」

 

 

 

はっきりと断言するDに、デュランダルは苦笑を浮かべて問う。

 

 

 

「発案した私が言うのも何だが、彼が断る可能性は?」

 

 

 

「皆無だーー。貴様が先に述べたとおり。我の知るドモン・カッシュは、罠であろうと必ずやってくる」

 

 

 

「彼を信じているのだね、D」

 

 

 

穏やかな笑みを浮かべて問うデュランダルに、Dは邪悪な笑みを浮かべて返した。

 

 

 

「我が最も望んだファイターと、我の対となる名を冠するガンダムだ。そのぐらいはやってもらわねばならん。無論、我とて負ける気など毛頭ないがな」

 

 

 

「わかった、では私からクライン派に独自のルートで情報を流すとしよう。彼らがこちらの情報にどう行動するのか、見せてもらわなければな」

 

 

 

「あの小娘に似た女か。いや、あの小娘を似せたと言うべきだな」

 

 

 

「奇しくも、君の姿の基となった青年と。私が作り出したアイドルのオリジナルが行動を共にしている。因果を感じるね」

 

 

 

笑むデュランダルに、Dは退屈気に告げた。

 

 

 

「くだらんーー。我の目的はただ一つ、ドモンとゴッドガンダムのみよ」

 

 

 

その言葉に、恭しくデュランダルは黙礼してみせた。

 

 

 

 

 

ーーーーーー

 

クライン派の高速巡洋艦ーーエターナル内にて

 

 

 

 マーチン・ダコスタは、プラント本国からの暗号通信を傍受していた。

 

 

 

 それは次のようなものだった。

 

 

 

ーーネオジャパンのガンダムファイターよ、コロニー時間で明後日の午後9時に指定の廃棄コロニーへ現れよ

 

ーー神と悪魔の決着をつけようではないか。

 

 

 

という簡潔なものだった。

 

 

 

 それが一般向けに放送されているテレビやラジオなどから、分かるものには分かるように送られている。

 

 

 

「これは、罠ですよね?」

 

 

 

 ダコスタはラクスに問いかけながら、解いた暗号の答えを見せる。これにラクスは眉根を寄せながら述べた。

 

 

 

「この暗号ではっきりといたしましたわ。デュランダル議長は、やはりデビルガンダムと通じていたのですわね」

 

 

 

「何を今更。あの廃棄コロニーメンデルだったか? で既に黒なのは明らかだったろ。アレだけクローンやらDG細胞製のMSを出してきたんだからな」

 

 

 

 ラクスの答えに、挑戦状を叩きつけられた本人であるドモンは淡々と返していた。

 

 

 

「落ちついてる場合じゃないでしょ!? 貴方は、議長に狙われているんですよ!!」

 

 

 

「そう慌てるなよ、ダコスタ。別にこちらの居場所がばれた訳でもない。男はドッシリ構えてるもんだ」

 

 

 

 ドモンは腕を組みながら面白そうに眉根を上げて、暗号を見つめる。

 

 

 

「それにしても、このガンダム・ザ・ガンダムに挑もうとは。余程の自信か……」

 

 

 

「ドモンさん、迂闊な真似はいけません。相手はあのデビルガンダムとプラントをまとめるデュランダル議長です。ただガンダムファイトをして終わり、ではないでしょう」

 

 

 

「ーーだろうな」

 

 

 

 ラクスの言葉を聞きながら瞳の奥に燃える何かをちらつかせるドモン。

 

 

 

 彼の口元には深い笑みが刻まれている。

 

 

 

 その屈強な肉体に流れる武闘家の血が騒いでいるのだ。

 

 

 

 久しく見なかった強敵の出現と激戦の予感にーー。

 

 

 

「場所の指定はどのあたりだ?」

 

 

 

「ドモンさんーー」

 

 

 

「危険なのは百も承知だ。だが、挑まれた勝負から逃げるような真似を俺はしない。それに気になることもある。悪いがここは俺一人で行かせてもらうぞ」

 

 

 

ドモンの言葉に、ダコスタが目を見開いた

 

 

 

「無茶ですよ! あからさまに罠じゃないですか!! いくら貴方が強くても、敵の親玉の懐に何の準備もしないでーー」

 

 

 

「丸一日、猶予がある。俺の気持ちを作り上げるのに十分な時間だ。俺を模しているデビルガンダムの意思か、デュランダルって奴の計略かは知らないが。おそらく、向こうは真剣に俺とファイトがしたいのだろう」

 

 

 

「敵の狙いが分からないのに、その懐に行くなんて! なんて無茶苦茶な!!」

 

 

 

「俺の国の古い諺に『虎穴に入らざれば虎子を得ず』と言う言葉がある。無茶でも何でも、一気に事態を動かすには奴らの狙いに乗るしかない。どの道、デビルガンダムとは戦うつもりだった。こちらとしても都合がいい」

 

 

 

「一騎打ちだけで済むとは思えない!! 私は反対です!!」

 

 

 

 ダコスタの必死な訴えに、ラクスも思案している。

 

 

 

「100%罠だと言い切れます!! ラクス様からも、ドモンさんを止めてください!!」

 

 

 

 思案気な顔のまま、ラクスはドモンに問いかける。

 

 

 

「ドモンさん、あなたは罠だと?」

 

 

 

 これにドモンは笑みを浮かべて告げた。

 

 

 

「さあな。だが、罠であったとしても構わない。要は俺にそれを破る力があるか、ないか。それだけだからな」

 

 

 

「負ければ、ただではすみませんよ? それに勝っても無事に済むとは思えません。それでも行くのですか?」

 

 

 

「すまないな、ラクス。だが、俺の中に流れる武道家の血が戦いたいと言ってるんだ。四年前、みんなの力を得てようやく倒せたデビルガンダムを相手に、今度はどれだけ戦えるのか知りたい。そして奴がこの世界で、どれだけ腕をあげたのかを」

 

 

 

 ドモンの言葉に、ダコスタが素っ頓狂な声を上げた。

 

 

 

「何を言ってるんですか!? 我々は格闘技の試合をしているんじゃないんですよ!! 戦争をしてるんだ!!」

 

 

 

「分かっている。だがーー、俺には奴らがガンダムファイトの意味を知らずに使っているとは思えないんだ。頼むラクス。行かせてくれ」

 

 

 

 ラクスは思う。ドモンの実力は先ほど垣間見た。彼が真っ向から戦って負ける姿は想像できない。しかし、相手はあのデビルガンダムであり、油断ならないデュランダル議長だ。

 

 

 

 たっぷりと考えたラクスの答えはーー

 

 

 

「分かりました。行ってください」

 

 

 

「ラクス様ーー!?」

 

 

 

「ダコスタさん。ドモンさんはわたくし達に手を貸してくださっているだけです。クライン派ではありません。何よりも、この世界のことはこの世界に生きるわたくし達が解決しなければなりません」

 

 

 

 ラクスの言葉と視線にダコスタは思わず黙り込んでしまった。何者にも揺らぐことない信念を貫いたーー凛とした光がラクスの瞳に満ちている。

 

 

 

「すまないな、ラクス。俺から力を貸すと言い出したくせにーー」

 

 

 

「いいえ。ただし条件がございますわ」

 

 

 

「なんだ?」

 

 

 

 問い返したドモンの顔を真っ直ぐに見返し、ラクスは告げた。

 

 

 

「わたくしも共に参りましょう」

 

 

 

「ーーラクス様!!?」

 

 

 

 ダコスタをチラリと見た後、ラクスはドモンを見据える。

 

 

 

「かまいませんね?」

 

 

 

「ああ。分かった」

 

 

 

 二人は多くを語らない。それだけだった。ダコスタとしてもそれ以上言い出せる雰囲気ではない。立場やタイミングを読んでいる場合でないのは頭で理解しているが、こうなった歌姫が何を言っても聞かないのは既に分かっている。

 

 

 

「ダコスタさん。ガンダムファイトに参加すると返事をしてください」

 

 

 

「分かりました--。こうなりゃ、どうにでもなりやがれ!!」

 

 

 

 やけくそに叫びながら、ダコスタはデュランダル議長あてに暗号通信を開き、メッセージを送付するのだった。

 

 

 

ーーーーーー

 

 

 

 翌日、デュランダルは執務室にミーアを呼び出し式の段取りを彼女に伝えていた。

 

 

 

「ーーと言うわけだ、よろしく頼むよラクス」

 

 

 

「分かりました、議長。それでDは?」

 

 

 

 プロデューサーと共に会場内の施設の詳細なデータを印字した資料に目を通しながら、笑顔でデュランダルに答えるとミーアはもう一人の主役であるDの姿を探した。

 

 

 

「彼なら先にガンダムファイト会場に行ってるよ」

 

 

 

「え? 本番は明日の夜なんですよね?」

 

 

 

 目を丸くして問いかけるミーアにデュランダルはクスリと笑い、答えた。

 

 

 

「ああ。まるで遠い恋人を想うように待ち遠しいらしい」

 

 

 

「あのDが?」

 

 

 

「私も意外だったよ。基本的に彼は他人に興味がないからね。付き合いが一番長い私ですら、あそこまで感情をあふれさせたDを見るのは初めてだ」

 

 

 

 笑みをこらえようともしないデュランダルをぼんやりと見返し、ミーアは不愛想な赤い髪の青年を思い浮かべていた。 

 

 

 

その後ーーーーガンダムファイト特設会場にて

 

 

 

「お疲れさまでした、ラクス様」

 

 

 

「ありがとうございます」

 

 

 

 ミーアは、明日のためのリハーサルをたった今終えたところだった。汗をタオルで拭きながらステージの脇に移動して資料に目を通す。

 

 

 

 ガンダムファイトと言うのが何なのかは、よく分からないが何かのイベントをDは行うらしい。

 

 

 

 そのDの相手が会場に来たら、彼の案内をするのも自分の役目だった。ただし、ミーアはその相手がどんな姿をしているのかを知らない。

 

 名前がドモン・カッシュといい、黒髪で長身の男性としか聞いていないのだ。

 

 

 

「ねぇ、マネージャー? なんで議長はこんな特設会場まで作って、その人を呼ぶのかな?」

 

 

 

「そりゃ俺にも分からんけど、なんか考えがあるんやないか?」

 

 

 

「ーーっていうか、どうしてステージの後ろにMSが置いてあるのかしら」

 

 

 

 言いながらステージの後ろに佇む巨大な機体を見つめる。

 

 

 

 赤いマントを羽織るようにした姿の機体は、静かにその場に直立していた。

 

 

 

「Dの奴、どこにいるのよ。打ち合わせとかしたいのにーー」

 

 

 

「ああ。その兄さんなら、あの機体の中にいるらしいで」

 

 

 

「え? なんで?」

 

 

 

「さあ?」

 

 

 

 マネージャーが首を傾げるのを見ながら、ミーアは佇む機体を見上げる。Dが乗っていると聞いてから、どこかこの機体がいつも自分を見下ろすDの姿に似ている気がした。

 

 

 

「ほんっと、腹の立つ奴ね!!」

 

 

 

 ミーアは自分に対して無関心なデリカシー0の青年を思い浮かべて、悪態をつくと立ち上がりステージでリハーサルをしているスタッフに話しかける。

 

 

 

「すみません! もう一回リハーサルお願いできますか?」

 

 

 

「ラクス様!? いや、ありがたいのですがーー」

 

 

 

舞台監督が何かを言おうとする前に、ミーアは続ける。

 

 

 

「わたくしならば、大丈夫です。やらせてください」

 

 

 

再び舞台にスポットライトが点き、イントロが流れ始める。

 

 

 

( 見てなさいよ、D!! この私がただの小娘じゃないって認めさせてやるんだから!!)

 

 

 

一向にこちらを向く気配の無いMSに向けて、ミーアは歌を歌い始めた。

 

 

 

デュランダルは自身の私室でリハーサルの様子を確認していた。

 

 

 

デュランダルは思う。Dという男のことを。

 

 

 

かつて人類抹殺を試みた彼の心は、人類に対する関心がなかった。

 

 

 

人間こそが地球を汚す原因だと判断したのも、人間の行ってきた結果を見ているからだ。

 

 

 

心というものを持たないデビルガンダムには当たり前の回答であろう。

 

 

 

ならば、今の彼は人類に関心があるのか、といえばそれも疑問だった。

 

 

 

Dは基本的に人間に興味がない。

 

 

 

今の彼は、地球にすらもあまり興味を抱いていないようだった。

 

 

 

今、彼が関心を集めているのは、強くなること。

 

 

 

そして、戦うことだ。

 

 

 

ある1人の男とーー。

 

 

 

「それほどまでに想い焦がれる相手か。Dよ、君は正に心を手に入れていたのだな。彼に倒されたことが、君に心を生み出させた」

 

 

 

自分の計略でもあるがミーアがラクスに憧れ、姿を模しているのと同じように。

 

 

 

デビルガンダムはドモン・カッシュとゴッドガンダムに憧れ、姿を模しているのだろう。

 

 

 

「ーーとはいえ、Dのそれは最早模倣の域を超えている。四年の歳月でドモン・カッシュがどれだけ成長しているかは分からないが、Dの力も底知れない。果たして、どちらが勝つのか」

 

 

 

「ーーデビルガンダム様が勝つ、とは言い切れないと?」

 

 

 

傍らに控えていたサトーが口を開く。彼も自分と同じくDG細胞によって肉体を作り変えた新人類だ。

 

 

 

「あのDがあそこまでこだわる男だ。何より手合わせをした私の感想だよ。ドモン・カッシュ、彼の強さは底知れない。桁が違うと言っていいだろう」

 

 

 

「ーーならば、何故デビルガンダム様と一騎討ちなど。もし彼が敗れるようなことになれば」

 

 

 

「ーーそれも、いい」

 

 

 

サトーは思わず目を丸くし、口を閉ざした。

 

 

 

「私もDと同じでね、サトー。見たいのだよ、人の行き着く先を。人でありながら、強さを極めた者の実力を。限りなく進化する悪魔を相手に3度も打ち勝つ、最強の男をね」

 

 

 

遺伝子を操るのでもない、薬を使うのでもない。

 

 

 

ただ、ただ、純粋に強さのみを極めた者の力。

 

 

 

絶望にあって最後まで希望の光たりえた強さを、Dのようにデュランダルも見たのだ。

 

 

 

「サトー、私はこの戦いを全ての人類に見せようと思う」

 

 

 

「ーー何故ですか?」

 

 

 

「コーディネーターとナチュラルの対立など、瑣末なものに過ぎない。彼らの力の前にはね。だが、その力を振るう片方は紛れもなく、ナチュラルなのだ」

 

 

 

遺伝子こそが、全てのデータだと考えていた。

 

 

 

だが、違うのだ。

 

 

 

DG細胞然り、ガンダムファイター然り。

 

 

 

人間の可能性は、デュランダルの想像を超えていたのだ。

 

 

 

ならば、見るしかない。

 

 

 

ならば、見せるしかない。

 

 

 

ナチュラルにも、コーディネーターにも。

 

 

 

全ての人類に、見せつけよう。

 

 

 

悪魔と神。

 

 

 

そう呼ばれるガンダム達の、2人の男の戦いをーー。

 

 

 

「全世界にこの対決を見せつける。それが、私の運命なのだろう。Dと出会ってからの、ねーー」

 

 

 

笑みを浮かべたデュランダルの考えは、サトーにも理解できないものだった。

 

 

 

ーーーーーー

 

翌日、最後のリハーサルに励むミーアは、一心不乱に歌とダンスを続けていた。

 

 

 

その時だったーー。

 

 

 

自分の歌に合わせて完璧な旋律で、透き通るような声が聞こえてきた。

 

 

 

周囲の人間が、思わず周りを見渡している。

 

 

 

「おい、誰だ? エコーを勝手にかけたのは!!」

 

 

 

音響に苦言を呈する監督だが、音響達は皆首を横に振っている。

 

 

 

「ーー今の、声って」

 

 

 

ミーアが呆然としていると、舞台袖からまた先ほどの歌声が聞こえてきた。

 

 

 

透き通るような、穏やかで静かな歌声。

 

 

 

近づいてくる。

 

 

 

「ーーもしかして、ラクス様ーー!?」

 

 

 

思わず、ミーアはそんな声を出してしまった。自分で出した声に、思わず口を塞ぎミーアは前を見る。

 

 

 

そこに現れたのは、陣羽織と呼ばれる着物をきた自分と瓜二つの少女。

 

 

 

いや、自分が似せたーーなりきっていた役そのもの。

 

 

 

「ーーお久しぶりです、ラクス姉様。素晴らしい歌でしたわ。わたくしも、つい一緒に歌いたくなってしまうほどに」

 

 

 

目の前にまで来て微笑む憧れの人。夢にまで見た邂逅なのに、ミーアには冷たい汗が流れる。

 

 

 

自分が、ラクスでなくなってしまえば。

 

 

 

今の本来の姿を捨てた自分は何になるのだろう、と。

 

 

 

「お姉様。わたくし退屈で、これ以上家で待つなんてできなくて。無理を言って彼に連れてきてもらいました」

 

 

 

自分とは、まるで違うオーラを放つ見た目は同じの少女は、明るく朗らかにミーアをラクスと呼ぶ。

 

 

 

「いきなり歌い出すから何事かと思えば、意外にミーハーなんだな。双子の姉がいるとは知らなかったが」

 

 

 

「はいな。わたくしも驚いていますわ。歌を歌う姉様のお姿が、こんなに素敵だったなんてーー。改めて大好きになりました」

 

 

 

男性の声が聞こえてきた。しかし、今のミーアにはそちらを見る余裕がない。男性と朗らかに語るラクスに向かって辛うじて声を出した。

 

 

 

「ーーどう、して? ラクス様はーー」

 

 

 

「貴女ですわ、ラクス姉様」

 

 

 

「ーーえ?」

 

 

 

自分を姉と呼ぶラクスは静かに一歩踏み込むと顔を寄せてきて、言った。

 

 

 

「今、平和を祈り歌を歌う貴女の姿こそ、人々が求めてやまない歌姫の姿です。わたくしのように、全てを捨てて逃げた者ではない。むしろ、わたくしのような愚か者の為に、貴女はーー」

 

 

 

眉根を寄せ、懺悔のような言葉を語るラクスに、ミーアは何も言えない。

 

ラクスはそのまま、ミーアを抱き寄せた。

 

 

 

周りが騒ぎ始めている。

 

 

 

当然だろう、ラクス・クラインに双子の姉や妹がいるなど聞いたことがないのだから。

 

 

 

だが、泣いている妹を自称する者の姿に、誰も何も言えなかった。

 

 

 

「ーーごめんなさい。わたくしが逃げたせいで、貴女を。貴女の人生を。ごめんなさいーー」

 

 

 

その言葉が静かにすすり泣くラクスから聞こえた時、戸惑っていたミーアの頬に涙が一筋つたった。

 

それが決壊の合図だった。ミーアも声を出して泣き始めた。ラクスの腕の中で、母親に抱かれる娘のように大泣きしていた。

 

2人の儚い少女たちの姿に、周りはまことしやかに囁き始める。

 

 

 

ラクス・クラインには双子の妹がいた、と。

 

 

 

 

 

 

 




 みなさんお待ちかね~!!

 ドモンとデビルの対決をギルバート・デュランダルは世界に対し、盛大に放送します。

 彼らのファイトが、連合やザフト、オーブなどの国にもたらす影響は?

 そして、神と悪魔の対決の勝者はどちらなのか!?

 次回、機動武道伝Gガンダム SEED Destiny 第42話に!
 
 レディー、ゴー!!
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