新機動武闘伝 GガンダムSEED Destiny 作:カンナム
ドモン・カッシュが言い放った『離』の答え。
次元覇王流とは、いかなる流派か?
そして彼はデビルガンダムことDに、何を伝えようと言うのか?
それでは、ガンダムファイト!!
レディィィィッ! ゴォォォオオオッ!!
ミネルバのブリッジに集まった面々の中で、シュバルツはモニター内の弟の実力と宣言に目を見張り、呟いた。
「次元覇王流、だとーー?」
聞きなれない流派の名前を語る弟は、静かにシュバルツさえも知らない拳法の構えを取る。
流派東方不敗に通じる呼吸法だが、その構えが違う。
ドモンが独自に編み出した拳法だというのかーー。ならば。
シュバルツは師としても兄としても、ぜひ見極めたいものだった。
たった四年で桁違いに強くなった弟の技を。
「ドモンよ、見せてもらうぞ!! 貴様の修行の成果と、そして次元覇王流とやらを!!」
腕を組み、シュバルツはモニターのドモンに言い放った。
全く異なる場所にて、マスターアジアもシュバルツと同感であった。
「我が教えを離れ、一人前の武道家となったか。ならば見せてみよキング・オブ・ハート。貴様が歩んできた四年をその拳で表現してみせい、ドモン」
一方、オーブでは皆が集まる会議室に遅れてドモンのもう1人の兄、キョウジとキラが現れ、事情を周りから聞いていた。
状況確認を終えた後に、キョウジはモニターを見ながら呟く。
「ーーったく。シュバルツ達の小言が長すぎて、最初の方を見逃したじゃないか!!」
「それ、シュバルツさんやアスランには絶対に聞かれないでくださいね。また怒られちゃいますから」
文句を言うキョウジの横で、キラは疲れ切ったような何とも言えない顔をしていた。
ーーーーガンダムファイト会場
右手にシャイニングフィンガーと同じ緑色の気の光を宿しながら、ゴッドガンダムは拳を握り締める。
「次元覇王流、だと? 流派東方不敗を捨てたのか」
Dは構えを取りながらも、問いかける。
「Dよ。これからお前に見せるのは、師の技を模倣する『守』のお前と師の教えを『離れた』俺の差だ。武道家の拳は己を表現するためにある」
ドモンは一つDに対して手招きを行うと言った。
「ーー来い。次元覇王流の極意、お前にも見せてやろう」
「気に入らんな。まるで自分が勝つのが当たり前だと言わんばかりの言い草だ」
「そのつもりだーー」
間髪入れずにDに応えるドモン。Dの眦がつり上がる。
「ーーその言葉、後悔させてやろう!!」
ハイパーモードのパワーを発揮して、Dは一気にドモンの懐に飛び込む。
「ーーくらえ、デビルフィンガー!!」
青紫に輝く右の掌を振りかぶり放つ。顔面に放たれた一撃は強烈で当たればひとたまりもないだろう。だがーー。
「次元覇王流、聖槍蹴り!!」
緑色に輝く気を左足に纏わせると、ドモンは飛び回し蹴りをDの右掌に合わせた。
雷が発生し、緑と紫の光が火花を散らす。
「ーーこれは!!」
足に纏わせた強烈な気で、デビルフィンガーのエネルギーを防ぎつつ、衝撃を相殺させた。
Dは右掌を振り切った姿勢だが、ドモンは空で態勢を整えると右足に気を纏わせ、踵を振り下ろす。
「ーークッ!?」
咄嗟に顔を後方へ逸らし、斬撃のような踵を避ける。しかし、ドモンの攻撃は止まらない。躱された踵落としのフォームから流れるように着地すると左拳に緑色の気を纏う。
「ーーばかな、貴様!!」
「次元覇王流、聖拳突き!!」
左右の拳に気を纏わせると、左拳から右拳を高速で繰り出した。
咄嗟に両腕を畳み顔面をガードするも、緑色の光が炸裂し、腕が震える。
「ーー隙がない。技の予備動作も無ければ、打ち終わりの隙もない、だと?」.
既にドモンはDの逃げる方に先回りし、強烈な聖拳突きを放ってくる。
「ーーおのれ!!」
一撃の重みはそれほどでもないが、気によって高められたキレが桁違いだ。
左右の拳と蹴りに気を纏わせ、隙もほとんどない。
「Dよ、流派東方不敗の技は確かに強力だ。だが、その技には莫大な気を必要とする。その為に初動や打ち終わりに隙が生じやすい」
「当てれば終わりだ!!」
咄嗟にDは右手を掲げ、左手で前方に円を描く。
「ーー流派、東方不敗!! 十二王方ーーッ!?」
だが、技を発動させる瞬間にドモンが懐に踏み込んで聖拳突きを放ってくる。
脇に回り込んで避けるDだが、ドモンはその正面に一直線に踏み込んでくる。
「ーーおのれ!!」
Dは悪態を吐くと、足を止めて拳を振りかぶり放つ。先ほどまでと同じように殴り合いが始まる。
ただし、今度は一方的にDが殴り負けていく。
「ーーなんだと!?」
見ればドモンは、足を止めることなく、左右に細かくサイドステップしながら、拳や蹴りを繰り出している。
その足が地を蹴るとき、小さく緑色の気が弾けるのが分かる。
バギィッ
強烈な聖拳突きに、ついにデビルガンダムの巨軀が後方に下がる。
「我が真っ向から打ち負けた、だと!?」
「聖拳!」
ドモンは更に左拳を突き出し、ボディに入れるとーー
「蒼天!」
続けざまにアゴに右アッパーを打ち込んで、宙に浮かせ
「聖槍!」
右の回し蹴りをハイキックにして足裏で顔面を蹴り飛ばし、
「竜巻!!」
後方に弾けとぶデビルガンダムを左足一本で地面を蹴って追いつくと回転力を加えた左の飛び後ろ回し蹴りを叩き込んだ。
ドゴォッ
土煙を上げながら、叩きつけられるD。その前に静かにドモンは着地し、見下ろす。
「何という、流れるような連撃だ。足を絶えず左右に散らして的を絞らせず、一方的に打ち勝つラッシュ力ーー」
シュバルツが目を見開き、体術に感嘆の意を漏らす。
「加えて、奴の拳や蹴りに気を纏わせることにより、ラッシュとてただの手打ちにあらず。東方不敗の技が高めた気を外に放つ技ならば、ドモンの技は気を肉体の内側で爆発させる技、か」
マスターアジアはドモンの気功術に唸る。
「冷静に相手と自分の位置関係を把握している。相手の攻撃が当たらず自分の攻撃が当たる場所をドモンは瞬時に判断してるんだーー!」
キョウジはドモンの判断力に、唖然としていた。
皆が、一人の武道家の技に目を奪われている。無理もない、あのデビルガンダムが手も足も出ないのだからーー。
膝をつき、肩で息をするDとそれを平然と見下ろすドモンの姿は、シュバルツやマスター、キョウジの度肝を抜かせていた。
「ばかな!! 一体何だと言うんだ!! 何故ドモンごときが、こんな馬鹿げた強さにーー!?」
「ーー驚きましたね。ドモン・カッシュがこれほどとは」
ウルベやウォンですら、顔色をなくしている。それだけ、圧倒的だった。
Dは肩で息をしながらドモンを見上げる。
「わかるか、Dよ。我が師、マスターアジアならば俺の動きを見て取れば咄嗟に相打ちを狙い、足を止めに来る。シュバルツならば、俺の拳法を封ずる為にビームネットの類や分身を駆使し。我が兄キョウジなら、俺の位置取りに気づき、自らの位置を変えてくる」
「ーー!」
「お前の動きや技のキレは正にマスターアジアそのものだ。だが、お前はマスターの使う技の性質を理解してない。一つ一つの技には当然それぞれに用途がある。それを理解していれば、少なくとも一方的に打ち負けることはなかった。ハイパーモードを使用しているお前の方が今の俺よりスピードもパワーも上だからな」
淡々とハイパーモードにすらならずにDを退けた男は、当たり前のように告げてくる。
「今のお前では、場合によればウルベやウォンにさえ不覚を取るぞ」
「ーーゴッドガンダム、貴様どこまで知っている?」
何から何まで悟ったかのようなドモンの言葉に、Dも不快そうに眉根を寄せた。
「ーーいや。お前の拳から、奴らの気を感じただけだ」
「なるほど。とんだ化け物になったものだな。貴様も」
「ーーいや、まだ足りない。俺には誰よりも守りたい女がいる。また拳を交えたいと心から願うライバル達が。俺に教えを請う坊主どもがいる。あいつらに相応しい自分であり続けるためにも、俺は強くなければならない!!」
ドモンの独白にDも目を見開いた。
「D。俺を倒したいならば、まずは何かを愛してみろ。自分でもいい。形のないものでもいい、女でもいい。何かを信じ、愛してみろ。それを守りたいと思えたなら、お前は変わるはずだ」
ドモンの言葉に、ラクスが眉を上げた。
「ーードモンさん。あなたはデビルガンダムに愛を、心を教えようと?」
Dはフン、と鼻で笑うと告げる
「笑わせる。我に愛などーー心などない!!」
「それはどうかな? 『あのラクス』の歌にお前は何も感じなかったのか?」
「ーーーー!!」
「彼女の歌は俺にも響いた。お前にも響いたんだろ?」
押し黙ったDにニヤリと笑みを浮かべてドモンは言った。
「人を信じ、愛することを恐れるな。それがお前に無限の力を与えるんだ。お前の胸の中に流れる熱い想いを見せてみろ!!」
ドモンの熱い魂のこもった言葉は、Dの胸の奥にある何かを動かす。
「ーーふん。愛など、心など知らん。機械の我にあるものかすら怪しいものだ。だが、我の真の力を見たいと言うなら見せてやろう」
黄金の気柱が天をつき、デビルガンダムがその身に黄金の輝きを纏う。
「ーーほう、これが明鏡止水か。実に美しく温かな光だ」
デュランダルは、その光に素直に感動していた。
「Dーー。Dもあの人に憧れてるの?」
一方、ラクス達とは別室に案内されていたミーアは何故かDの姿が先ほどラクスの前で歌った自分の姿に重なって見えていた。
「ーーゴッドガンダム」
「ああ。もう一戦だな」
「ここまで貴様の想定内ということか。これで貴様が我に負ければ、とんだ笑草だな」
邪悪な笑みを浮かべて告げるDに、ドモンも不敵な笑みを返す。
「生憎だが、俺に八百長はできん。俺に勝ちたけりゃ、実力で倒しに来い」
「望むところだぁ!!」
今度は、Dの猛攻が始まる。Dはドモンの動きを越えようと明鏡止水と自己進化を駆使して、動きを高めていく。
次々と繰り出される拳蹴打の雨霰を、ドモンも捌きながら打ち返していく。
高速で移動しながらのぶつかり合い。
「なんという、動きだ!!」
「デビルガンダムめ、明鏡止水と自己進化を駆使しておるのか!?」
「だが、ドモンも負けてないぜ」
シュバルツ、マスター、キョウジがそれぞれの場で発した言葉どおり、両者の攻防は紙一重での打ち合いだ。
次元覇王流の技を繰り出し、要所要所でデビルガンダムの攻撃を相殺するドモン。
ドモンの見切りを上回らんと更に力を上げるD。
どちらも譲らない。
バギャアッ
炸裂音が響き、後ろに下がったのはゴッドガンダム。
「デビルガンダムの動きが、ドモン・カッシュの見切りを凌駕したか!?」
「ーーしかし、勝負はまだわかりませんよ」
ウルベやウォンもまた、この戦いに見解を述べる。
Dが一気に右掌を開いてデビルフィンガーを放とうとする
「ーーくらえ、ゴッドガンダム!!」
「さすがだな、D。だが!!」
青紫の光を放ちながら、右掌を突き出してくるDに対し、ドモンは左拳を地面に叩きつけた。
( ガイアクラッシャーか!?)
咄嗟に地面からの剣山を想定するが、ドモンが叫んだのは別の技の名前だった。
「次元覇王流ーー波動裂帛拳!!」
現れたのは地を這う黄金の気。しかし、その程度の技などDの敵ではない。
「笑わせるな。小賢しい貴様の技など、我が力で屈服させてやるわ!!」
デビルフィンガーのエネルギーを前方に展開し、バリアを作るとそのまま力任せに突っ切る。
だが、目の前にゴッドガンダムはいない。
「ーー左!」
Dが左足を横蹴りに放つと、片手で受け止めたゴッドガンダムがそこにいた。蹴りを受け、態勢を崩したドモンに追撃のデビルフィンガーが迫る。
「ーー次元覇王流、疾風聖槍連舞拳!!」
瞬間、ドモンはデビルフィンガーを脇に見切ると、両手の掌底打ちをダッシュの勢いを加味してDのアゴに向けて放ち、跳ね上げた。
カウンターになった一撃は、Dの動きを止める。そこからドモンの両手両足に緑色の気の光が宿り、刹那の拍子に無数の打撃を叩きこんだ。
「ーーガハッ!?」
思わず息を吐き出し、前のめりになるDの眼の前で緑色に輝く光の掌から、圧倒的な光線が放たれた。
「俺のこの手が光って唸る。お前を倒せと輝き叫ぶ!!
必ぃっ殺! シャァアイニングゥフィンガァアア!!」
その光に弾き飛ばされ、Dはプラントの内壁にめり込む。光の余波はアッサリと廃棄プラントに大穴を開けて見せた。
「ーーまさか、これでも届かないとは。我の完敗だ。ゴッド、ガンダムーー」
最後の力を振り絞り、Dはドモンの勝利を告げると完全に意識を失った。
そのDに対し、ドモンは高らかに告げた。
「俺とお前の決着は、お前が答えを見つけてからだ。俺の本来のスタイルは最後に見せた次元覇王流からの流派東方不敗。そして、明鏡止水のハイパーモードだ!!」
気を失ったDを焚きつけるかのようにゴッドガンダムは、黄金の気柱を上げ、黄金の気と灼熱の劫火を身に纏う。
胸のカバーは開き真っ赤に燃える紅玉がキング・オブ・ハートの紋章と共に光り出す。
背に広げた羽には日輪が生じた。
その輝きは、太陽の如き圧倒的な光であった。
「ーー這い上がってこい!! お前が、このゴッドガンダムの対となるガンダムだと言うのなら俺は、いつでもお前の挑戦を受ける!! 何度でも挑んでこい、D!! 俺のライバルよ!!!」
デュランダルが高らかにゴッドガンダムの勝利宣言を行うーー。
これを見ていた地球・プラントを含む世界の民間人は訳も分からず、けれど湧きに湧いていた。
この力が、新たな戦争の火種になることを彼らはまだ知らないーー。
みなさん、お待ちかね~!!
デュランダル議長によってプロデュースされたガンダムファイトの結果、圧倒的な戦力を保有していると誤解した地球各国の上層部は大混乱に陥ります。
そんな中、ロード・ジブリールは高らかにベルリンの排除を宣言するのです。
悪意と殺意の塊である巨大なMAが、罪なき人々を焼き尽くそうとしたとき、女神の名を冠するザフトの部隊に出撃命令が出ます。
しかし、そのMAに乗せられていたのはーー!!
次回、機動武道伝GガンダムSEED Destiny 第44話に!!
レディイイイイイイイ!! ゴォオオオオオオ!!