新機動武闘伝 GガンダムSEED Destiny 作:カンナム
その真実は、彼が今まで信じてきた全てを揺るがすものになるのですーー。
それでは!!
ガンダムファイトぉ!!
レディイイイイイイイ!!
ゴォオオオオオオ!!
第47話
赤い羽根に巨大な角を持つMFーーマスターガンダムは、気を高めながら、腰を落とし両の拳を腰に置く。
「シャッフルハート! クーロンガンダム! 貴様らは左右の部隊を叩け!! 中央はワシに任せろぉ!!」
「承知! ならば、ワシは右の部隊を叩く!!」
「左は任せろ! 行けい、マスターガンダム!!」
3機のMFは全く同じ声を上げながら、互いに語り合うと、理不尽なまでの強さでベルリンの街に足の踏み場さえない程に広がるデスアーミーの部隊を蹴散らしていく。
それを下に見るのは、家の屋根の上にある細い針のようなアンテナの上に立つガンダムシュピーゲル。
これに乗るシュバルツ・ブルーダーは呆れた表情で隣の家のアンテナ針の上に立つヤマトガンダムを見つめた。
「気の分身による遠隔でのモビルトレースか。貴様もよくやる、マスターアジア。いや、シュウジ・クロス」
シュバルツの言葉にニヤリと不敵に笑いながらも、若々しい顔をこちらに向けるシュウジ。
「DG細胞ーー。気で細胞を活性化させ、全盛期の若かりし頃の肉体に戻すとはな。呆れた男だ」
マスターガンダム達とアークエンジェルの活躍で一気に戦況が膠着する状態に落ち着き、シュバルツはシュウジに語りかけた。
「仕方ないだろ。ドモンがあまりに強くなってるんでな。俺も武道家として自分より高みにいる者に挑んでみたくなったのだ。貴様とて同じだろ、シュバルツ」
笑いながら、かつての姿と声で今の語り方をするシュウジにシュバルツも苦笑する。
「やはり、私達はファイターだな。シュウジよ」
「無論だ。俺たちはファイター以外にはなれんさ、ウォルフーー」
互いに穏やかに笑いあうと、正面に浮かぶアズラエルとウルベが駆る専用機のガンダムをにらみすえた。
「それにしても、戦艦の甲板の上に生えたあの機体。デビルガンダム四天王の集合体か」
「くだらんな。紛い物の寄せ集めで作られた機体とは。しかし、シュバルツ。ウォンと組んでいるあの男は誰だ?」
微かに目を細めながら、シュウジはウルベの顔を睨みすえる。
「あいつ、何処かでーー!」
「ウルベ・イシカワ。ネオジャパンの軍人にして、デビルガンダムを手に入れようと企んだ極悪人だ」
「なるほど。奴がデビルガンダム事件の首謀者にして、ドモンや貴様の宿敵か」
語り合う両者に、ウルベが告げた。
「マスターアジアの正体がまさか、我がネオジャパンの裏切り者シュウジ・クロスだったとは。驚きましたよ、東方先生」
「ふん。貴様のようなゲスな男に馴れ馴れしく先生などと、呼ばれる気はない」
「これは手厳しい。しかし懐かしくて、ついね。私を初めて打ち負かした男ですからな、貴方は」
ウルベの言葉にマスターことシュウジは眉根を寄せながら、思案する。
「お忘れですか? 第12回ガンダムファイト決勝で、私は貴方に打ち負かされ、力の真理を知ったのですよ」
「! ああ、あの時の夜郎自大か。己の力に過信やら慢心していたようだから、少し躾けてやろうと思ったんだが。そこまで捻くれる程になるとはな。すまなかった、そこまで器が小さいとは思わなかったんだ」
痛烈な皮肉を交えて告げるシュウジにシュバルツが覆面の下で笑みを作る。
昔から変わらない。悪党には一切の情けをかけない徹底した男ーーそれが、シュウジ・クロスでありマスターアジアだ。
反対にウルベは、苛立ちを顔に浮かべたのち、いやらしい笑みを浮かべて返してきた。
「私を負かした貴方とその弟子が殺しあう様は、実に楽しめましたよ」
「ーーそして、ドモンに倒されたか? 成長せん男だ」
しかし、シュウジに嘲笑いすら浮かべて返され、いよいよウルベの眉間には青筋が浮かび上がる。
「口の減らん男だ。そうそう、ステラだったか? 貴様の弟子が泣き叫びながら、街を破壊する様は中々面白い見世物だったぞ? DG細胞も植え付けてある。貴様らがステラを取り返したところで、除去できなければ彼女はゾンビになるだけだ」
「ーー俺の弟子に手を出したか。命がいらんと見える」
シュウジは笑みを浮かべたまま、鋭い殺気を瞳にこめる。
この反応にウルベは気を良くしたのか、笑みを浮かべて告げた。
「貴様ごとき死に損ないに私が倒せるかな?」
「ククク、この雑魚が。吠えるじゃねぇか…!」
その二人を割って入るようにシュバルツが立つ。
「生憎だがなウルベ。アークエンジェルに彼女が救われたのは、こちらで確認している。彼女は無事だ。キョウジがDG細胞のワクチンを作っているからな。それを投与するだけで除去できる」
「ーー!! バカな。キョウジの奴め、いつの間に!?」
「ウルベ、貴様は「私」を甘く見過ぎだ。いや、自分以外の全てを見下す貴様には分からんか。シュウジの言うとおり、貴様は慢心と過信の塊だ」
淡々と哀れみすら込めたシュバルツの声に、ウルベの顔が醜悪に歪む。
「滑稽だな。自分が貶め、苦しめた男に過ちを指摘され、あまつさえ哀れみすら受けるとはーー! とんだピエロだ!!」
そんなウルベを笑い飛ばしながら、シュウジは容赦なく告げた後ーー表情を消した。
「全てを見下す貴様のような男には、似合いの生き方だな」
「マスタァアア、アジアァアアッ!!!」
「来るがいい、井の中の蛙よ。貴様と俺の格の違いを、もう一度教えてやる」
構えるシュウジだったが、ふと構えを解き、傍らのシュバルツに笑いかける。
「ーーいや、俺の出番ではないな」
「感謝するーー。シュウジ」
「その代わり、完膚なきまでに叩き潰せ」
獰猛な虎を思わせるような笑みを浮かべて笑うシュウジ。
「ーー言われるまでもない」
全身から燃えるようだったシュウジの殺気とは違う、研ぎ澄まされた日本刀のようなそれを噴き出しながら、シュバルツがウルベの前に立った。
「虫けらの人間ぶぜいが!! 貴様ら、どこまでも私を見下しやがってぇえええっ!!」
「ウルベよ、もはや語ることはない。ーー母の、母さんの仇だ。死んでもらう」
ガンダムシュピーゲルが、ブレードを展開し構えた。
ーーーーーー
一方で、インパルス、ストライク、セイバーの3機のガンダム達の戦いも続いていた。
デストロイガンダムは、パイロットを失ってもなお動いているのだ。
それもステラが乗らない時の方が、行動が鋭く早い。
放たれる強力なビーム砲の数々を紙一重で避けて、攻撃を繰り返す3機のMS。
しかし、どれだけ波状攻撃を仕掛けても、切り口から緑色のコードを溢れさせて傷を塞ぎ、元どおりに再生してしまう。
DG細胞の力で修復するだけではない。本来なら、これだけの長距離遠征とビーム砲の連打にエネルギー切れを起こしてもおかしくないのに、一向にデストロイガンダムの動きは鈍らない。
無尽蔵にエネルギーが発生している証拠だろう。
これには、流石のキラ達も攻めあぐねていた。
「ふむ、やはりステラがデストロイガンダムの性能を抑えていたのですね。カタログスペック程度の能力しか発揮されていませんでしたし。まあ、それでも自己再生するデストロイガンダムからステラを奪還されるとは、思っていませんでしたが」
丸いグラサンを指で押し上げながら、ウォンは巨大なガンダムの周りを飛び回る3機のMSを見据える。
「この世界のガンダム同士の殺し合い。高みの見物と洒落込みましょうか」
強烈なビーム砲の連発を紙一重でかわしながら、3機のガンダムは機動力を活かし、飛び回る。
それを追ってデストロイの全身から正確無比なビームが、所構わず放たれる。
「ーーくっそ! 近づけない!! このままじゃーー!」
いくら明鏡止水で機体性能を底上げしていても、フェイズシフトが切れて、動けなくなる。
シンが焦りに焦っていると、キラから通信が入った。
「シン! このMAはリモートでコントロールされている!だから、操縦者を倒せばこいつは動きを止める」
「ーーあいつか! だけど、こうビーム砲が多いと近づけない!!」
「僕とアスランが、このMAを押さえる!! 君は、ウォルターガンダムをーーウォンを倒せ!!」
キラの予想以上に強い言葉に、シンが当惑していると彼は強い口調で続けた。
「戦いたくないものの心を洗脳して、無理やり戦わせる。そんな奴を絶対に許しちゃいけない!!」
「ーーキラさん」
その横で痛烈な斬撃が爆発し、デストロイの左腕を破壊した。
爆発を背にしているのは、アスランのセイバーガンダムだった。
「シン。お前ができないなら、俺が変わってもいい。あの男の顔をぶん殴ってやりたいのは、俺も同じだ!!」
「アスラン、しばらく見ない間に随分好戦的になってない?」
「ーーお前はどうなんだ、キラ?」
目の色が完全に違うアスランは、怒りを必死で押さえながら話しているようだった。
そんな彼は、隣で表面は呑気な雰囲気のキラに問いかける。
「どうって、そんなの決まってるじゃないか。アスラン」
キラはいつもどおりの穏やかな笑顔で、シンにこう言った。
「ーーシン、僕達の分は頼んだよ。僕達は、このMAを解体しておくからね」
(目が、笑ってないーー!!)
シンの表情がはっきりと恐怖に歪んだ。
キラは間違いなくウォンに怒りを覚えているが、それを隠すようにいつも通りの笑顔を浮かべている。
はっきり言って余計に怖い。
「シン、やれるよね?」
「できるのか、シン?」
二人の青年からの言葉に、シンの目にも炎が宿った。
「分かりました。二人の分もきっちり、ぶち込んできますよ!!」
シンの言葉にキラとアスランは満足気味にほほ笑むと互いを横目で見合う。
「うん、頼むよシン」
「シン、任せたぞ。そうとなれば、キラ」
「ああ。シンを援護するためにも、さっさと終わらせよう」
キラもSEEDを発動させ、一気に反応速度を上げる。
同時に機体に白い光ーー明鏡止水の力が宿った。
(SEEDで反応速度を上げ、人機一体の明鏡止水で上がった分の性能を機体にも反映させれば。ストライクでも、フリーダムの動きはできる!!)
ストライクガンダムのビームサーベルの太さが一気に倍に膨れる。これにアスランもセイバーのビームサーベル二刀を抜き放ち、構えを取る。
「いくぞ、--キィィラァアアアアアアア!!」
「ア、ス、ラァアアアアアアアアンッ!!」
二機のガンダムの力が一気に爆発し、圧倒的な動きでデストロイガンダムに襲い掛かった。
2機は機動性とパワーを活かし、デストロイガンダムのビーム砲をサーベルで切り払いながら、一気に懐に入る。
左右からセイバーとストライクが同時に斬りつけ、デストロイの巨体が後方へ吹き飛んだ。
「! なんだと? 何故この程度のMSしか作れない連中にガンダムファイターにも匹敵するパワーと動きが!?」
ウォンがストライクとセイバーの動きに目を見張る間に、シンのインパルスがウォルターガンダムに迫る。
「くらぇえええええええええ!!」
「フン、こしゃくな」
ウォンも右手を開き薙ぎ払いながら、インパルスが振りかぶったエクスカリバーを迎え撃った。
ぶつかり合う両者の一撃は、つばぜり合いになって止まる。
「対艦刀にもなるエクスカリバーが、こんな簡単に受け止められるなんて!」
「こんなナマクラ刀で切れるのですか、あなた方の世界の戦艦は!!」
「ーーんの野郎ぉおおおおお!!」
ウォンの挑発に応えるように、シンがSEEDを発動させる。
「これで、一気に終わらせてやる!!」
凄まじいパワーが爆発し、インパルスは止められた大剣から反動をつけて、上に跳躍した。
「ーーなるほど。それがデュランダルがDG細胞に侵されながらも目を付けているSEEDの力ですか。明鏡止水と重ねがけできる時点で、原理が違うようですね」
丸グラサンをかけ直しながら、爆発的に上がった機体の能力に頷き、ウォンはインパルスガンダムの出力などを解析する。
「君たちは、特別なようですね。下手なガンダムファイターよりも手強い。ですが、このウォルターガンダムに一騎打ちを仕掛けるには、力不足ですよ!!」
その計算データを見てウォルターガンダムのマスクが展開し、鋭い牙を剥いて笑う。
同時に赤い光がウォルターガンダムの体から放たれ、全身に纏うと、ウォンは叫んだ。
「そう! この、グレートウォンに敵うものかぁあああっ!!」
放たれるプレッシャーに、シンが震えを感じる。
「こいつ、これだけの力をーー!!」
だが、シンは燃えるような赤い瞳をウォンに向けると、叫んだ。
「だが、俺はお前みたいな奴に負けるわけには行かねぇんだよ!!!」
「さあ、はじめようか? 貴様に地獄を見せてやろう」
互いに腰を落とし構えあう。
仕掛けたのは、ウォルターガンダム。
しなる右腕を伸ばし、一気に爪を開いて薙ぎ払う。
インパルスガンダムはそれを鼻先で上体を反らしてかわすと、右手一本で持つエクスカリバーを右下から斜め上に振り上げた。
ウォルターガンダムは、一歩分だけ後ろに下がると鼻先で通り過ぎるエクスカリバーを見送りつつ伸ばした右腕の掌をインパルスガンダムの眼前で開き、その中心にある銃口を突きつける。
「ーーなっ!!?」
「さようならぁあああっ〜!!」
赤いビームが放たれた。
この世界でのビーム砲を遥かに凌駕するスピードと貫通力のある赤い光弾は、インパルスの後方へと飛んでいくと巨大な建築物に当たり、消し飛ばす。
通常のビームライフルと変わらない大きさの光弾は、桁違いのスピードと貫通力と爆発力を持つ。
インパルスは、咄嗟に首を横に倒して避けると同時に天高く跳躍する。
「ーーくっ、なんてスピードとパワーだ!?」
ウォルターガンダムは、伸ばした右腕を引き戻すと同時に左手を跳躍したインパルスガンダムに向かって開き、ビーム砲を放つ。
「ウォルターテンタクル!!」
「ーーっ!!」
インパルスガンダムが、咄嗟に上半身を右に半身切ると、脇を通り過ぎる赤い光弾がある。
遥か後方で爆発が生じ、全てを消し飛ばす。
「逃げてばかりでは退屈ですねぇ!!」
拡散で左右広範囲に広がる6発の光弾。
一発一発が、先の一撃に匹敵するほどのものだった。
( こいつ、確かに機体の能力やビーム砲の威力は凄いけど。隙ばかりだ。冷静になれば、対処できない相手じゃない!!)
はじめのうちは余裕を持っていたウォンも、攻撃を躱し続けるインパルスに、苛立ちを露わにした。
「ちょこまかと、煩いハエが!!」
右腕を伸ばし、鋭い爪の攻撃を繰り出すもシンは目つきを変えて叫んだ。
「ーー今だぁあああっ!!」
鞭のようにしなる右腕を左に見切り、両手持ちのエクスカリバーを上段に構えて振り下ろす。
ザンッ
伸びた腕は真っ二つに切り落とされ、ウォンが目を見開いた。
「バカな!? 貴様ごときに私の腕が!!」
「人間離れした身体能力に、機体性能だけどさ。生憎、あんたのは本物じゃない。見せかけだけの強さに、負けてなんかやるものか!!」
エクスカリバーの切っ先をウォンに突きつけ、シンはハッキリと断言した。
「あんた程度に手こずってられないんだ。俺を鍛えてくれた人は、あんたの100倍は強いんだよ!!」
「ーーなるほど。確かに君の強さは私を上回るようですね。いや、実に素晴らしい。そんな機体で私のウォルターガンダムの腕を見切って避けた後に切り落とすとは」
ウォンは素直に拍手していた。自分に手傷を負わせたこの少年の腕前に。
( なるほど。SEEDの因子、なかなか興味深いですね)
ちらっとインパルスの肩越しに後ろを見れば、たった2機のMSが、100メートルはあるデストロイガンダムをサーベルで斬りつけ吹き飛ばすセイバー。吹き飛んだデストロイを空中で先回りし、両手持ちのビームサーベルを唐竹に振り下ろして、地面に叩きつけるストライク。完全に2機はMAを圧倒していた。
( DG細胞による自己増殖のおかげで、今のデストロイガンダムは通常の倍以上の大きさになっている。それを圧倒するというのか)
切り落とされ、火花を散らす自分の右腕とデストロイを圧倒する2機、そして目の前のインパルスを見据えてウォンは笑った。
「ーーなるほど。デュランダルの目も節穴ではない、か。面白いが、このまま奴の筋書きどおりに事が運ぶのもつまらない。少しシナリオを書き換えてあげましょう」
「ーー何を言ってる? 降参でもするのかよ」
「生体ユニットの研究対象が増えることは良いことです。それでは私はこれでーー」
切られた右腕はすぐに再生して、一度だけマニュピレーターを開いて閉じた後、ウォンはインパルスに背を向ける。
「ふざけるな! 逃がすわけないだろうが!!」
シンは、インパルスにエクスカリバーをもう一度両手持ちに構えさせる。
「ーーシン!」
「無事みたいだな!」
その両脇にキラのストライクガンダム。アスランのセイバーガンダムが並びたった。
瞬間、凄まじい音と共に背後でデストロイの巨体が、仰向けに倒れていった。
( すげえ。俺が手こずってる間に、ホントに二人だけであんな化け物みたいなMAを倒したーー! これが、ヤキンの英雄ーー! キラ・ヤマトとアスラン・ザラ!!)
3機のガンダムが揃ってウォンに剣を構える。
( 俺だけでもそこそこ戦える相手だ。3人がかりなら倒せる!!)
シンは自分達の力量と相手のそれを比べた後、自分の結論にこくりと頷いた。
「ここまでだ、ウォン・ユンファ! あなたのしてきた事を僕たちは許さない!!」
「覚悟してもらうぞ! お前のような奴を野放しにしておく訳にはいかない!!」
「さあ、観念しろ! ここがあんたの、年貢の納め時だ!!」
キラ、アスラン、シンの言葉を聞いてもウォンは半身を彼らから背後に向けた状態で笑う。
「君たちの相手は、後ろのガラクタで充分ですよ。さようなら、異世界のガンダム達よ。君たちが生き残れたら、また会いましょう」
「逃がすわけ、ないだろうが!!」
シンの言葉を皮切りにインパルス、ストライク、セイバーが同時にウォンに斬りかかる。
だが、それらは宙に浮かぶ巨大な右腕の掌に止められていた。
「! バカな、まだ動くのか!?」
「動力源は、断ち切ったはずだぞ!!」
コレにキラとアスランが驚愕して目を見張る。頭部も動力源も全て確実に叩き潰していた。
しかし、急速に再生されるMA--いや、姿が変化していく。
「これはーー!!」
変化していくーー。黒を基調とした機体の色は、頭部が白く染まり丸みを帯びた顔にーー。
余計な装飾がはぎとられ、背中に背負ったバックパックが地面に剥がれ落ち、シンプルなフォルムへと変化していく。
その顔とボディはーーゴッドガンダム。
両腕は丸みのある肩が特徴的なシンプルな頑丈なデザイン。拳にナックルガードが付けられている。
足は野太く、太ももからして元のデストロイガンダム並みのそれだが、こちらも白を基調としたシンプルなデザインだった。
「100メートルを超えるMFです。どうなることやら? デスルークと名付けましょうか。ザフトに合わせてね」
ウォンの言葉の通り、ザフトのデスアーミーたちは、ゴッドガンダムを模してジンハイマニューバ2型を基にしたデスナイト。
ゲイツRを基にパイロットをDと同じDG細胞のバイオノイドにして作られたデスポーンがある。
このデスルークと名付けられた機体もゴッドガンダムを模している。
これが意味することは、何かーー。
「まさかーー!! この惨状の全てをザフトに押し付けるつもりか!!?」
アスランがウォンに叫ぶ。
世界はつい先日、デュランダル議長が開催したガンダムファイトを見ている。
その圧倒的な力と力のぶつかり合いは、まだ人々の記憶に新しい。
ゴッドガンダムとデビルガンダムーー両者の姿が、よく似ていたことも当然知っているだろうし、これらを管理しているのはザフトであると世界は認識している。
そして、連合の核部隊を退けたデスナイトの映像も以前に世界に配信されていた。
つまりーー。
「そんなこと、許されるわけがない!!」
「汚い真似してんじゃねぇよ!!」
アスランの思考にキラとシンも気付き、武器を構える。
「この映像を利用するつもりだった君たちの親玉にほんのプレゼントですよ」
「どういうことだ? まさかーーデストロイガンダムの設計図のことも、それをここまで野放しにしていたことも理由があるのか!?」
ウォンの言葉にアスランが何かに思い当たるかのように眉根を寄せながら聞く。
「隊長! こんな奴の言葉、聞く必要なんかーー!!」
シンが止めようとするのを、キラが止めた。
「キラさん?」
「ウォン・ユンファ。貴方は、ギルバート・デュランダル議長が何を目的にしているのかを知っているんですか?」
キラの言葉にウォンはニヤリといやらしい笑みを浮かべて告げた。
「オーブのキョウジ・カッシュが設計図のデータを盗んだのも知っていますよ。勿論流したのは、デュランダルの手の者ですがねーー。ギルバート・デュランダル、なかなか狡猾な男だ。彼はあらかじめデストロイガンダムの設計図を手に入れていた。何故なら、ロゴスにガンダムのデータを流出させているのはザフトだからーー」
「なら、ベルリン市街に来るまでの惨状も。この都市での犠牲も全て、全て議長とロゴスの茶番だというのか!!?」
アスランの怒りに満ちた問いに、ウォンは更に笑みを深める。
「どういうことなんですか? アスラン隊長、この戦いが茶番?」
シンの問いかけにキラが鋭い瞳でウォンとデスルークを睨みつけながら答えた。
「シン。実はオーブにいる優秀な人がデストロイガンダムの設計図を入手してくれてたんだが、この話には裏があるみたいなんだ。情報の出所はプラントらしい」
「ーープラント? なんで、プラントが連合の秘密裏に作られているはずのMAの設計図をーー!?」
「プラントに対して、オーブは自国の難民を受け入れたいという要請をしていた。それに対する見返りの協力要請もしていたんだ。これにプラントからの返答は回答を保留するという答えだった。この間のオーブと連合の戦闘が終わったと同時に返事があったらしい。その回答メールの添付ファイルにーー」
キラの言葉にアスランが歯ぎしりを行い、シンが動揺する。
「なぜ、言わなかったんだ!? あの時に!!」
「アスランやシュバルツさんと話をした後なんだ、メールが届いたのは。その添付ファイルの意味を確認していたら、廃棄コロニーでガンダムファイトが開催されていた」
そしてガンダムファイトが行われた直後にデストロイガンダムが動いたーー。
タイミング的には、最悪だった。
「君たちにも色々あるようですねーー。お若いのに大変だーー」
嫌味な笑みを浮かべるウォンをアスランが睨みつけた。
「議長の企みが真実だとして。それを分かった上でーーお前は民間人を犠牲にしたって、そういうのか!?」
「ええ。お互い利用しあうのにちょうど良かったのでね」
「どこまでーー。どこまで人の命を犠牲にすれば気が済むんだ!!」
「まるで自分は無関係のような言いぐさですねぇ。貴方たちも知らなかっただけで、彼らの犠牲を前提とした戦いに出向いているじゃありませんか」
「ーーお前……!!」
失笑ーーその類の笑みを浮かべてウォンは怒りに満ちているアスランの顔を見据えた。
「アスランは冷静さを欠き始めてる。シン、悪いけど一緒にフォローに回ってもらえるかな?」
「ーーそんな。俺たちは、俺は守るために戦っていたのにーー! 俺たちの戦い自体が、仕組まれていた茶番だったってーー?」
「! シンーー」
「うそ、ですよね? 俺たちの戦いが茶番なんて嘘ですよね、キラさんーー」
アスランが冷静さを欠き始めていることに気付いたキラは、小声でウォンに仕掛けるタイミングをシンと相談しようと声をかけるも、シン自身も相当なショックを受けていた。
「シン、今はウォンを逃がしちゃいけない。彼をここで取り逃がしたら、もっと多くの人を犠牲にしてしまう。力を貸して、シン」
「で、でもーー俺ーー! 俺ーー!!」
そんな彼らをウォンは冷たい笑みを浮かべて侮蔑した。
「能力は素晴らしいが、所詮は子どもーー。利用されるしかないのですよ」
「黙れぇえええええええっ!!」
アスランがセイバーのバーニアを噴射させ一気にウォンに斬りかかる。
ガシィッ
そのセイバーの胴体をデスルークの巨大な右手が掴みとめていた。
「ーーな!?」
「アスランッ!!」
人形のように軽々と持ち上げられるセイバーはルークの右手の中でフェイズシフトダウンを起こした。
「電池切れですかーー。やはり、その程度の文明なのですねぇ」
「ーークッ、セイバーにアーマーシュナイダーのような武器はないのか!?」
アスランはコクピット内で現在の機体の状態および武装のチェックを行うが、イーゲルシュテルン以外の武装は軒並み使えない状態であることに気付く。
ブワァッ
ルークが大きくセイバーを掴んだ右腕を振りかぶると地面に向かって投げつけた。
「ーーうわぁああああああっ!!」
「アスラン!!」
咄嗟にキラのストライクが地面に叩きつけられる寸前でセイバーを横からかっさらう。
「君たちも、時間の問題ですねーー。明鏡止水も切れたようですし」
「ーーくっ!!」
つまらなさそうに棒立ちしているシンと、こちらに武器を構えるキラを見据えてウォンはつぶやいた。
「能力は認めましょうーー。ですが、あまりにも心が幼過ぎるーー。それで世界の覇権を争おうとする我々に挑むとは、愚の骨頂ーー!!」
そのままウォンは悠然とアズラエルに帰還していった。
「坊やたちは、この木偶の坊と遊んでいなさい。大人には大人の仕事があるんで失礼しますよ」
それを睨みつけることしか、今のキラ達にはできない。
無力ーー、そう思い知らされる瞬間だった。
だが、キラは呆然とするアスランのセイバーを地面に下すと、シンのインパルスに告げる
「シン、アスランを連れてミネルバまで退避してーー。ここは、僕が押さえる」
「な、キラ!!」
アスランが抗議の声を上げ、シンが縋り付くような目でキラを見る。それにキラはほほ笑みを返すと言った
「大丈夫だから。僕はーー負けない」
キラのストライクガンダムは、シンのインパルスからエクスカリバーを受け取ると両手でそれを構え、告げた。
「僕たちは、まだ死ねない。だからーー!!」
二機のガンダムをかばうようにキラがルークに剣を向ける。
「僕は、戦う!!」
キラの気高い魂の炎は、まだ燃え尽きてはいなかったーー。
その魂を摘み取ろうと巨大なMFが彼のストライクガンダムを見下ろしている。
まるで、絶望という言葉の代名詞のようにーー。
みなさん、お待ちかね~!!
ルークに一騎打ちを仕掛けるキラ。
心を打ち砕かれたシンにアスランが魂の叫びを上げます。
少年たちの戦いは、連合やザフトやオーブと言った勢力を越えていかねばならない事態に突入していくのです。
一方ーー、シュバルツとウルベの対決もいよいよ、大詰めを迎えようとしているではありませんかぁ!!
次回、機動武道伝GガンダムSEED Destiny 第48話に!!
レディー、ゴー!!