新機動武闘伝 GガンダムSEED Destiny   作:カンナム

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 フェイズシフトダウンーー。

 コズミックイラのMS達が常に抱える動力炉の問題。

 そして少年達の心を抉る余りにも残酷な現実。

 佇む強大な絶望の壁を前にキラは、シンは、いかにしてこの窮地を脱するのか?

 それでは、ガンダムファイト!!

 レディィィィッ!!

 ゴォォォオオオッ!!

第48話



第48話 フェイズシフトダウンと明鏡止水

 ストライクガンダムが対艦刀であるエクスカリバーを抜き放ち、巨大なデスルークに斬りつける。

 

 

 

 その鋭い斬撃をスウェーで避けるとデスルークは巨体に似合わぬ素早さで拳を振り下ろしてきた。

 

 

 

「ーーグッ!」

 

 

 

 咄嗟に刀を横に構えて受けるも、凄まじい衝撃に後方に弾け飛ぶキラ。

 

 

 

 なんとデスルークは、その場から見事なフットワークで吹き飛んだキラの後方に回り込むと上段回し蹴りを放ち、小柄なストライクガンダムをまるでサッカーボールを蹴るように吹き飛ばす。

 

 

 

「ぐああああぁっ!!」

 

 

 

 キラが衝撃に悲鳴を上げながらも機体の態勢を整える。

 

 

 

( なんてスピードとパワーだ。あの巨体で、こんな動きができるのか? これが、無人機の動き? マスターガンダムやデビルガンダムに比べたら、まだ戦える相手だけど。今の僕の集中力が、何処まで持つか)

 

 

 

 敵のスピードとパワー、動きを冷静に見ながら剣を正眼に構え、キラは思う。

 

 

 

( 巨体に救われたな。もし、僕たちと同じサイズなら、万全の状態じゃないと勝てない)

 

 

 

 空中で静止しながら敵を睨み据えていると、ルークは右手を腰に左手を顔の横に置いて構えた。

 

 

 

( 拳法の構えーー!?)

 

 

 

 ドモンやキョウジ、マスターアジアの構えとは違うが正しく拳法の構えだった。

 

 

 

 2機の戦いを見ながら、アスランは今一度自分の機体の状態を確認する。

 

 

 

( ミネルバのデュートリオンビームがいるな。それとも明鏡止水ってヤツを俺が使えたら、フェイズシフトダウンも回復できるのか? 今のキラのように)

 

 

 

 ストライクガンダムは旧式の型遅れの機体だ。にもかかわらず、セイバーのフェイズシフトの稼働時間を優に越えて動いている。

 

 

 

 それは同シリーズのインパルスもザク達もそうだ。

 

 

 

( 明鏡止水ーー。シュバルツから学んでおくべきだったな)

 

 

 

 アスランは自分の考えをまとめながら、傍らにいるシンのインパルスに通信を繋げた。

 

 

 

「ーーシン、すまないがミネルバの正面まで運んでくれ。デュートリオンビームを受ければ、まだ動く。キラの援護をしなければ」

 

 

 

 だが、シンのインパルスはまるで石像のように動かない。

 

 

 

「ーーシン? おい、どうした!?」

 

 

 

 反応がないことにアスランが最悪の事態を想定して叫ぶ。

 

 

 

「ーーアスラン隊長」

 

 

 

 やがてシンから通信が返され、アスランはホッとすると同時に注意深く観察する。

 

 

 

「シン、大丈夫なのか?」

 

 

 

「隊長、教えてください。俺たちのしたことは。俺たちがこのベルリンの街を守れなかったのは、茶番なんですか?」

 

 

 

「!! シン…!!」

 

 

 

 咄嗟に言葉が出ない。自分もその事実にショックを受けた1人だ。

 

 

 

 シンの気持ちがわかる。だがーー

 

 

 

「シン、よく聞くんだ。確かに今回の議長や連合の動きは何かある。だが、それで俺たちの覚悟まで嘘にはならない!! 死んでいった兵士達の思いも無駄なんかじゃない。茶番なんかじゃない!!」

 

 

 

「……んで」

 

 

 

「! シン…!!」

 

 

 

「なんで、ザフトも連合も。何の関係もない人達を戦わせて、殺させて。戦火を広げていくんだ。どうして、こんなことを平然とできるんだ。茶番なんて、何故言える…!」

 

 

 

 シンは今、混乱していた。

 

 頭の中にあるのはグチャグチャした思考と感情。

 

 怒り、絶望、悔恨、懺悔、そして裏切りーー。

 

 

 

 インパルスが肩のビームサーベルを抜き放ち、ストライクガンダムと闘うルークを見据えた。

 

 

 

「! シン、よせ!! そんな冷静さを欠いてる状態じゃ危険過ぎる!! 一旦ミネルバまで退いて補給するんだ!! お前のインパルスもエネルギー切れを起こしてもおかしくないんだぞ!!」

 

 

 

「ーーやれます。明鏡止水なら」

 

 

 

「馬鹿野郎! そんな顔してるくせに、明鏡止水なんて無理だ!! シン、一度退却するんだ!!」

 

 

 

「ーーやれます。許すもんか」

 

 

 

「シンーー!!」

 

 

 

 自分も同じ状態だったから分かる。

 

 

 

 シンは今、自分の中にある怒りに身を任せようとしている。

 

 

 

 先ほど、自分もその状態でウォンに挑み返り討ちにされた。

 

 

 

「ーーこんなことをするのが正義なら、ザフトも連合もない。どっちも許すもんか。絶対に許さない…!!」

 

 

 

「シン、今のお前じゃキラの足手まといになる。やめろ!!」

 

 

 

「やれますよ。許さないーー!! 許すもんか、絶対にぃいい!!!」

 

 

 

 シンの叫びに呼応するように、インパルスのバーニアの火が一気に膨れ上がる。

 

 

 

 同時にインパルスが音速を超えて一気にルークの頭上に躍り出た。

 

 

 

「ーーシン!? どうして」

 

 

 

「キラ!」

 

 

 

「アスラン? シンは君と退避するんじゃーー」

 

 

 

「聞いてくれ。今のあいつはさっきの俺だ。冷静さを欠いてる。悪いが、フォローを頼みたい」

 

 

 

「分かったーー。でも、無理もないよ」

 

 

 

「分かっている、シンを頼む。俺も自力でミネルバまで退いて補給する。それまで無事でいてくれ」

 

 

 

 アスランの言葉にキラは静かに頷くと、笑った。

 

 

 

「初めてじゃないかな? 君が僕を頼るのは」

 

 

 

「ーーこんな時に、余裕言ってる場合か!!」

 

 

 

「分かってる。アスラン、そっちも無事で!」

 

 

 

 キラは戦場であることを忘れさせるほど、日常の一コマのような笑顔を浮かべると、インパルスに近づいていく。

 

 

 

 それを見ながら、アスランはふと違和感を感じた。

 

 

 

「ーーキラ、あいつ。戦場で笑うような奴だったか? まるで別人だ」

 

 

 

 そう、キラは戦場では常に張り詰めた表情をしていた。

 

 

 

 だからこそ、フリーダムが倒されたと聞かされた時、アスランには普段どおりのキラに違和感しか感じなかった。

 

 

 

 以前のキラなら、フリーダムが倒された時点で自分には闘う力がないと絶望したはずだ。

 

 

 

( シュバルツの修行を受けた訳じゃない。オーブにいるキョウジ・カッシュのおかげなのか? それとも別の? 今のキラの心の強さは、以前の比じゃない)

 

 

 

 退却しながらアスランはホッと胸を撫で下ろした。

 

 

 

 ガルナハン要塞を攻略した時のシンーーいや、それ以上の頼りがいが今のキラにはある。

 

 

 

 アスランは全てをキラに託し、ミネルバのビームを受ける座標軸をメイリンと交信してわりだした。

 

 

 

「頼んだぞ、キラ! シン!!」

 

 

 

 アスランが去った後、2機のMSと巨大MAFとの白兵戦は苛烈を極めた。

 

 

 

「ソニックウウウ、スラァァアアッシュゥゥウウウ!!」

 

 

 

 シンのインパルスの音速を超えたサーベルの一撃は、巨大なMAFーールークの体を後方へガード越しに吹き飛ばす。

 

 

 

 あまりの威力にキラがポカンとするほどだ。

 

 

 

「ガンダムファイターの弟子になると明鏡止水の機体強化だけじゃない。技も覚えられるんだな」

 

 

 

 なるほど、と一つ頷きながら吹き飛んだルークが態勢を整えながら着地するのを確認する。

 

 

 

「その動きは、覚えたよ!!」

 

 

 

 キラはストライクをルークの足下に移動させ、着地しようとした右足にエクスカリバーを横薙ぎで払う。

 

 

 

 巨体が、宙に再び浮き上がり、無防備な姿を晒す。

 

 

 

「行くよ、シン!! 力を貸して!!」

 

 

 

「うぉおおおっ!! お前らみんな、許すもんかぁあああっ!!!」

 

 

 

 キラの言葉に合わせるように、インパルスが真上から。同時にキラのストライクがエクスカリバーを両手持ちの前面に突き出しながら真下から。

 

 インパルスが頭部にビームサーベルを振り下ろし、ストライクがエクスカリバーをコクピットの脇にある動力源を貫いていく。

 

 

 

「これでーー!!」

 

 

 

「ーー終わりだぁあああっ!!」

 

 

 

 見事なコンビネーションに頭部を失い、胸元に大きな穴を開けた巨体は地面に背中から叩きつけられる。

 

 

 

 通常ならば、これで勝敗は決した。

 

 

 

 だがーー

 

 

 

「ーー何だって!? まだ、動くのか!?」

 

 

 

 キラの言葉どおり頭部を失い胸元に大きな穴を開けてなお、デスルークは再び立ち上がり始めた。

 

 

 

 体の破損部から触手状のコードが伸び穴を塞ぎ、頭部を再生していく。

 

 

 

「ーーもう一度、叩き潰してやる!! お前の存在を俺は許さない!!」

 

 

 

「待つんだ、シン! 闇雲に攻撃しても、この機体は!!」

 

 

 

「ーーうぉおおおおっ!!」

 

 

 

 懐に突っ込むインパルス。その目の前に突如現れる巨大な右拳。シンは、その拳を右手のビームサーベルで薙ぎ払い、受けながす。

 

 スピードもバーニアも緩めず、ひたすらに突っ込むと、左拳が来たので右に受けて流し、胸元にビームサーベルを突き立てた。

 

 

 

「ーーくたばれぇええ!!」

 

 

 

 そのまま頭部まで切り上げ、爆発を起こす前に離れる。

 

 

 

「これで、どうだ!?」

 

 

 

「ーーシン、避けて!!」

 

 

 

 キラの通信よりも早く、シンは反応していた。先ほど流した巨大な左手が、下から迫っていたからだ。

 

 

 

「ーー当たるかぁあああっ」

 

 

 

 避ける。

 

 

 

 そのまま腕を蹴り飛ばして払い退ける。

 

 

 

「許さないって言っただろうがぁああ!!」

 

 

 

 そのまま、再び懐に入り込んで一撃を浴びせようとした。だがーー。

 

 

 

「ーー!? な、何だって!?」

 

 

 

 鮮やかなトリコロールのインパルスガンダムが、灰色の機体に変化し、バーニアの火が消えた。

 

 

 

「ーーフェイズシフトダウン!? なんで!!?」

 

 

 

 シンには理解できない。

 

 

 

 明鏡止水の境地なら、まだ戦える自信がある。

 

 

 

 そう、明鏡止水ならば。

 

 

 

 空中で一瞬、静止したインパルスが落下する前に不死身のデスルークの右拳が迫った。

 

 

 

「ーーぐぁあああっ」

 

「ーーシンッ!」

 

 

 

 後方に弾き飛ばされるインパルスをキラのストライクが受け止める。

 

 

 

 デスルークにはデストロイガンダムのような武装はない。ただ殴ると蹴る、掴むだけの機体だ。だがその動きには隙がなく、早い。

 

 おまけに再生能力と不死身ぶりだ。とてもではないが、今のキラ達に勝てる相手ではない。

 

 

 

 アズラエルに乗るウォンはモニター上のルークを見据えて笑う。

 

 

 

「ガンダムファイターの平均的な反応速度に、拳法の動きをインプットしただけですが。中々、強力な機体に仕上がりましたね」

 

 

 

「ーー後でデータを送ってくれ。是非量産したい」

 

 

 

「貴方も好きですね、ジブリール」

 

 

 

 通信で話しかけてくるジブリールにウォンは笑う。そして再び挑もうと立ち上がるガンダム達を見据えた。

 

 

 

「電池切れがもう一機。さて、後一機も時間の問題ですかねぇ」

 

 

 

 いやらしい笑みを浮かべながら、語るウォンにジブリールも笑いかける。

 

 

 

「圧倒的だな。君たちの力は」

 

 

 

「私たち、ですよ? ジブリール」

 

 

 

「! ふふふ、そうだな。そうだとも、我々の力だ」

 

 

 

 互いに笑いながら、モニターで最後の抵抗をするストライクガンダムを見据えた。

 

 

 

「ハイドロゲン消失、駆動パルス低下。このままじゃ、僕も明鏡止水が切れる?」

 

 

 

 ストライクはインパルスを地面に下ろすと、先の衝撃のダメージを冷静に解析する。

 

 

 

 キラの予測では、後数分後にはフェイズシフトダウンが来る。

 

 

 

「負けるな。このままだと」

 

 

 

 鋭い瞳のまま、キラはルークを睨みつけ、つぶやく。

 

 

 

「すみません。キラさんーー」

 

 

 

「! シンーー」

 

 

 

「貴方の言うこと、正しいのは分かってました。でもーー。すみません、俺のせいで。貴方までーー」

 

 

 

 シンの言葉を聞きながら、キラは笑う。

 

 

 

「シン、君は間違ってないよ」

 

 

 

「キラ、さんーー! でも、俺のせいでーー!」

 

 

 

 キラは静かにインパルスを庇うように前に出てエクスカリバーを構える。

 

 

 

「間違ってないよ。君の守りたいって思いは。君の願いは間違いなんかじゃない。結果が望むものと違っただけだ。でも、それは間違いなんかじゃない!!」

 

 

 

「キラさん。なんで貴方は、俺なんかにーー」

 

 

 

「僕は諦めてない、勝つつもりだ」

 

 

 

 キラはそう言うと、ルークを睨みつけた。これにアズラエルに乗るウォンの目つきが変わった。

 

 

 

「……この少年」

 

 

 

「? この小僧がどうした?」

 

 

 

「確実にここで仕留めておかねばいけませんねぇ」

 

 

 

 ウォンの言葉にジブリールが怪訝な顔をする。

 

 

 

「この程度の小僧、潰すのはやぶさかではないが。何故こだわる?」

 

 

 

「ーーこの状況で彼は諦めていない。私はね、あんな目をした連中をよく知っているんです。あれと同じ目をした奴らは茶番にしか見れない戦いを演じながら、それでも最後はデビルガンダムを滅ぼした」

 

 

 

「ーーーーあの小僧にそこまでの力が?」

 

 

 

「力は問題ではない。問題はあの強き信念です」

 

 

 

 ウォンは忌々しそうに表情を歪めながらも告げる。

 

 

 

「その信念は協調を呼び、数ある意志はついには強大な力をも覆す。私たちが敗北したのも、奴らの信念を甘く見ていたからだ」

 

 

 

「ではーー」

 

 

 

「彼には、ここで退場してもらいます。ルークの必殺技でね」

 

 

 

 ウォンの言葉に反応して、ルークがキラのストライクに目を向ける。胸部のゴッドガンダムと同じつくりのカバーが開き、エネルギーマルチプライヤーと呼ばれる結晶体が光り輝き始める。

 

 

 

「陽電子縮退砲ーー発射!!」

 

 

 

 陽電子ーー核エネルギーとエネルギーマルチプライヤーの異なるパワーを両腕の力で圧縮し、胸の前で強大な青い光の球を作り出した。

 

 それをルークは前方に向かって放つ。

 

 

 

「ーーこれはーー!!」

 

 

 

「やばいーー!! ベルリンの街が!!」

 

 

 

 その強大な青い光線は、100メートルはあるルークすらも飲み込むほどの大きさで前方に放たれた。ベルリンの廃墟の街は光の中に消えていき、その光に飲み込まれればキラもシンも、そしてその背後に展開されているミネルバとアークエンジェルの複合部隊も全て消えるだろう。

 

 

 

 その時だった、黒い体に赤い羽根、巨大な角を持つガンダムがキラ達とルークの前に割って入った。

 

 

 

「紛い物の気と兵器の力などで、このワシが倒せるものか! ダァアアアクネスフィィンガァアアアア!!」

 

 

 

 マスターガンダムは闇の光に輝く掌を正拳突きのように突き出し、紫色の気の壁を作り出すとルークの巨大な光線を真っ向から受け止めて見せた。

 

 

 

 強烈な光と光のぶつかり合いは、やがてルークの放つ光の方が細くなり、消えていった。

 

 

 

 ダークネスフィンガーの光の壁がルークの縮退砲を完全に防ぎきったのだ。

 

 

 

「あなたはーーマスターガンダム!!」

 

 

 

「な、なんでーー?」

 

 

 

 キラ達の言葉にマスターガンダムが返した。

 

 

 

「何をしておる!? 戦いの最中に敵から目を離して呆けるなど、勝負を捨てたもののすることぞ!!」

 

 

 

「「ーー!!」」

 

 

 

「それとも機体のエネルギーが尽きたから動けないと言い訳でもするのか!? それで敵が待ってくれるのか!? 闘わんか、このたわけ共が! 貴様ら何の為に人機一体の境地を学んでおる!?」

 

 

 

 マスターガンダムの言葉に、キラの目が大きく見開かれた。

 

 

 

「気力だの集中力だの、そんなものを気にしてどうして敵を倒せる!? このワシを相手に戦った貴様の力はこんなものではあるまい! キラ・ヤマトよ!!」

 

 

 

「ーーマスタァアアアアガンダァアアアアムッ!!」

 

 

 

 キラの咆哮がベルリンの街に響き渡る。

 

 

 

「! キラ、さん……!!(すげぇ、なんて気だ!!)」

 

 

 

 キラはストライクガンダムを立たせながらマスターガンダムを見据える。

 

 

 

「僕は、僕は二度と負けない!! フリーダムが僕を生かしてくれたんだ!! 負けて、たまるかぁああああああ!!!!」

 

 

 

 それまでのダメージをまるで思わせない気迫、覚悟、そして機体の動きだった。

 

 

 

 ストライクガンダムの周囲に気による力の波動がはなたれ、地面を窪ませる。

 

 

 

「それで良い。今こそ、貴様は本物のガンダムファイターよ」

 

 

 

「こ、これってシュバルツさんやマスターガンダムと同じガンダムファイターの!!」

 

 

 

 マスターガンダムは呟くように言い。シンは頭の中でオーブ海域やコロニーメンデルでの対決を思い起こした。

 

 

 

 それほどの気迫が力が、今のストライクガンダムから出ている。

 

 

 

「喝ぁあああつ!! 応えよ、キラ・ヤマト!! 貴様は今ーー!?」

 

 

 

「赤(あ)!(か)!く!! 燃えているぅううああああああああ!!!!」

 

 

 

「いようし!! ならば後ろは任せろ、往けぃ!!」

 

 

 

 キラの咆哮に応えるようにマスターガンダムが構えを取りながら告げた。

 

 

 

「うぉおおおおおおおっ!!」

 

 

 

 キラはエールストライクアタッカーを外すと、背中にエクスカリバーを斜め差しした後、ストライクガンダムに踏み込みさせる。

 

 

 

ドォンッ

 

 

 

 地面を踏み込む音は後から聞こえ、気が付けばストライクガンダムはルークを真正面から殴り倒していた。 

 

 

 

「!! 何だと!? これは、一体どうなっているんだ、ウォン!?」

 

 

 

「この力、まさかーー!!」

 

 

 

 ルークの巨体を吹き飛ばす圧倒的な力、音速をも越えた踏み込みのスピード。

 

 

 

 二年前の連合のストライクにこれだけのことなど、出来る訳がない。ジブリールが驚愕している横で、ウォンが静かに卵型のチョコレートを手に取り口に含む。

 

 

 

 そのサングラスの目の奥の瞳は鋭い光を放っている。

 

 

 

「明鏡止水の「境地」に達したーー?」

 

 

 

 100メートルの巨体から放たれる強烈な拳。それにストライクガンダムは真っ向から拳を合わせる。

 

 

 

「うおおおおおおおっ!!」

 

 

 

 瞬間、青い気の渦がストライクガンダムから放たれ、デスルークの拳を正面から打ち返した。

 

 

 

「「「「「-----ッ!!!!!!」」」」

 

「か、艦長ーー、私は夢を見ているのでしょうかーー?」

 

「現実よ、全てね。だけど、これがオーブのキラ・ヤマトなの?」

 

「キラ君、一体、何がーー?」

 

「おいおい、あの坊主!!」

 

「リミットを振り切ったか、キラーー!」

 

 

 

 この場にいたすべての者がその光景に思わず絶句する。

 

 

 

 20メートルに満たないMSが、100メートルを越える巨躯を真っ向から打ち負かしたのだ。当然だろう。しかもガンダムファイターではない、ただのMS乗りがーー少年がそれをやってのけた事実。

 

 

 

 ストライクの進撃はそこで終わらない。

 

 

 

 空中で一気に加速(バーニアすら吹かさず、消えるように)移動してデスルークの背後に回り込むと凄まじい肘打ちを巨大な背中に決め、クレーター状にへこませる。

 

 

 

 その部分に振り返りながらの強烈な右足のつま先での蹴りが決まり、ストライクは両腕と両足に気を纏いながら無数の拳蹴打のムシロと化した。

 

 

 

 一撃一撃がデスルークの巨体に決まる度に装甲をへこませ、ひび割れ、欠損を大きく大きくしていく。

 

 

 

「キラ、さんーー! す、凄すぎる……!!」

 

 

 

「何をしている?」

 

 

 

「ーーえ?」

 

 

 

 呆然とキラを見ていたシンに傍らに立つマスターガンダムが語り掛けてきた。

 

 

 

「貴様は、あの男の健闘に何も感じんのか? あの男の足を引っ張っただけで終いか? シュバルツから何を学んだのだ、このたわけが!!」

 

 

 

 マスターガンダムの言葉にシンの目が大きく見開かれた。

 

 

 

「貴様らの会話は聞いておった。しかし、それがどうした? キラの言葉に貴様は何も感じんのか!? 誰が何を企もうと、貴様のしてきたことすべてが茶番になるのか!? そんな安っぽい覚悟で戦ってきたのか!!? 貴様の許せないという思いはその程度のものか!!?」

 

 

 

「何を……!? あんたに、俺の何がわかる!!?」

 

 

 

「分からんわ!! そもそも、分かって何になる!? 分かってもらえれば貴様は満足か!!?」

 

 

 

「ーー!!」

 

 

 

 思わず口を吐いた反論をマスターガンダムに更に気迫で返される。

 

 

 

「真剣勝負の場に、そのような事を悩んで何になる!? 貴様の目の前にいるものは何だ? 敵だけだ!! 敵に分かってもらってどうする!? 余計な考えはただの重りにしかならんわ!!」

 

 

 

「なんだと!? 俺の想いが間違いだっていうのか!!? 守りたいと願った思いを持ち込むのが間違いだってーー!?」

 

 

 

「守りたいというのであれば、今貴様がしておることは何だ!? 守りたいと言うだけで、願うだけで守れるものなどあるものか!! 本当に守りたいならば、戦わねばならんのではないのか!?」

 

 

 

「……ぐっ!?」

 

 

 

 マスターガンダムは静かに前方で戦うキラのストライクとデスルークを見据えて言った。

 

 

 

「あの男のように、キラ・ヤマトのように戦ってみせぃ!! 貴様の想いが茶番ではないのならば、証明して見せろ!! 貴様の、まことの力をな!!」

 

 

 

「……動け。動け、動けぇええええええっ!! インパルスゥウウウウウ!!!!」

 

 

 

「どうした!? 貴様の思いとやらは叫ぶだけか!? 周囲の気を感じ、見事機体と一体化してみせよ!! それができずして、明鏡止水の「境地」など夢のまた夢ぞ!!!!」

 

 

 

「うぅうううううおおおおおおおおおおおっ!!!!」

 

 

 

 シンの気迫に応えるように静かに、インパルスのデュアルアイに緑色の光がともる。

 

 

 

 前方では、キラの強烈な連撃についにデスルークが片膝を付いた。

 

 

 

 更に追撃を仕掛けるストライクにデスルークの大振り左フックが顔面に決まり、のけ反る。

 

 

 

「まだだ! まだ足りない!! 僕とストライクガンダムの力は、まだこんなもんじゃない!! 戦いは、まだ終わってないぞ!!!!!」

 

 

 

 のけ反ったストライク目掛け、デスルークは跳びあがり更に全体重を乗せた右拳を打ち下ろしてくる。当たればストライクガンダムなど一たまりもない。

 

 

 

-- キラ、わたくしの思いが貴方を守りますわ --

 

 

 

-- 守るから。私の本当の思いがあなたを守るから --

 

 

 

 自分を大切にしてくれるヒト

 

 

 

 自分が傷つけてしまったヒト

 

 

 

 彼女たちの声が、キラには聞こえたような気がしたーー。

 

 

 

「ーー見える!!」

 

 

 

 瞬間だった。デスルークの動きの何もかもがコマ送りのように見える。

 

 

 

 SEEDで鋭敏な感覚を養っていたキラは、さらなる境地へと足を踏み入れたのだ。

 

 

 

 そこは、静寂の世界。

 

 

 

 冷たいのでも暖かいのでも、怒りも憎しみもない。

 

 

 

 心から澄んだ気持ちーー。 

 

 

 

 彼が己の中の世界に気付いたとき、そこにあったのは二人の少女ーー。

 

 

 

「見えたぞ! これがストライクガンダムの!! ハイパァアーモォオオードだぁああああ!!」

 

 

 

 それはーーすさまじい気の柱だった。

 

 

 

 天が祝福を与えるかのような美しい黄金の光の柱が生まれた。

 

 

 

 強烈な光の塊が、黄金の輝きが空中で生まれ、デスルークを拳ごと吹き飛ばす。

 

 

 

「なぁスティング! これって、明鏡止水の「人機一体の境地」ーーハイパーモード!?」

 

 

 

「キラーー、あんたはどこまで強くなるんだ!?」

 

 

 

 アウルとスティングが思わずこの光景に見とれ。

 

 

 

「レイ、あれってーー!!」

 

 

 

「ああ。俺たちのーー目指す場所だ。キラ・ヤマトはその境地にたどり着いた」

 

 

 

 ルナマリアとレイもその意味するところを知る。

 

 

 

「キラーー。フリーダムを破壊されてなお、お前は前にーー!!」

 

 

 

 アスランもまた、この姿に見とれるものの一人。自分の親友が、自分の想像をはるかに凌駕する力を得ていた。

 

 

 

 そう。

 

 

 

 ストライクガンダムは黄金の気を身にまとっていたのだーー。

 

 

 

「キラ・ヤマトーーストライク」

 

 

 

 キラは呟きながら、自分が背負ったエクスカリバーを抜き放つ。

 

 

 

 それを正眼に構えたとき、ストライクの背から青白い光の翼が生まれた。

 

 

 

「なんだ、なんなんだ!? この力はーー!!」

 

 

 

「目覚めたか、ならばこの勝負は負けですね。まぁ、良い余興にはなりました。デスアーミーの部隊は?」

 

 

 

 うろたえるジブリールを尻目にウォンは通信兵役のDGゾンビ兵に問いかける。

 

 

 

「数、衰エテオリマセン。制圧ハ可能デス」

 

 

 

「ウルベがこの艦に帰るまでの時間取りくらいはできるか。ならば問題ありませんね。作戦を続けなさい」

 

 

 

「分カリマシタ」

 

 

 

 淡々とした表情でチョコを食べながら告げるウォンにジブリールが焦った表情になる。

 

 

 

「待て、ウォン! あんな強力なMAをみすみす壊させるのか!?」

 

 

 

「あんなガラクタ、ほしければいくらでも作れますよ。それよりも、あの異世界のガンダムの姿」

 

 

 

 鋭い瞳でウォンは黄金の光を全身から放つ青白い光の翼を背負ったストライクガンダムを見据えた。

 

 

 

「間違いないーー。ならばデータだけでも取っておきましょう。今後のためにもね」

 

 

 

 言いながら、ウォンはチョコの袋をまた一つ破るのだった。

 

 

 

 青白い光の粒子が、気の光がエクスカリバーに宿るとキラはそのまま力を高めていく。その光の剣はーー正にシャイニングフィンガーソード。

 

 

 

「守りたい「人達」がいるんだ。その人達が平和に笑って暮らせる世界を、僕は守りたいーー」

 

 

 

 静かに語りながら、黄金の気を纏うキラはSEEDで光を失った紫の瞳でデスルークを睨みつけた。

 

 

 

「だから、どんなに辛くても! 戦い抜いて見せる!! 希望の未来を守るためにぃいいいいいいいっ!!!」

 

 

 

 横薙ぎを放ち、デスルークの太い両足を切断する。前のめりに崩れるデスルークに袈裟懸けで斜めから胴体を両断した。

 

 

 

 しかし、デスルークは左肩から両断されながらも、残された右腕を前方に突き出し右掌に陽電子砲のエネルギーを溜めていく。

 

 

 

「ーー!? まだ!!」

 

 

 

 デスルークが狙うのはキラではない。その後方にあるミネルバとアークエンジェルの部隊だった。

 

 

 

「しまった!!?」

 

 

 

 キラは咄嗟にストライクガンダムをデスルークの正面に回り込ませ、光の剣を構えて受ける態勢を取る。だが、デスルークの右掌からビームが放たれるよりも早く、二つの赤と白の機体が右腕を撃ち抜いた。

 

 

 

「アスラン! シン!!」

 

 

 

 宙に浮かんでいるのは、エネルギーを補充したセイバーと明鏡止水で機体の限界を超えたエネルギーを引き出しているインパルスだった。

 

 

 

「決めろ! キラ!!」

 

 

 

「お願いします、キラさん!!」

 

 

 

 二人の言葉に応えるように、キラはストライクガンダムの光の翼の出力を上げると一気にデスルークの顔面の正面に飛び立ち、光の剣を両手持ちで頭上に振り上げた。

 

 

 

「はぁあああああ!! これで、終わりだぁあああああああ!!」

 

 

 

 キラの一撃はデスルークの巨体を真っ二つにして見せた。

 

 

 

「これがーー僕とガンダムの力だ!!」

 

 

 

 ストライクが刀を宙で払い、真っ二つにした機体を振り返ると同時に巨大な爆発が発生し、デスルークは光の彼方に消えていった。

 

 

 

「ーーやったぞ、キラ!!」

 

 

 

「すげぇ、ほんとに勝った!!」

 

 

 

 アスランとシンの称賛を受けながら、黄金の輝きを放つストライクは静かに地面に降り立った。

 

 

 

 

 

 

 

 







 キラ達の力を前に倒されたデスルーク。

 一方、シュバルツとウルベの対決もいよいよ大詰めを迎えるのです。

 そこでウルベが語るガンダムファイトの影とは?

 次回、機動武道伝GガンダムSEED Destiny 第49話に

 レディー、ゴー!!

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