新機動武闘伝 GガンダムSEED Destiny 作:カンナム
はたして、この戦いの先に何が待っているのか?
それでは!
ガンダムファイト、ベルリン都市防衛作戦!!
レディィィィッ! ゴォォォオオオッ!!
第50話
たったの一撃。
刹那の刻に決着はついた。
勝ったのは、鏡によって作り出された神の写し身。
「一撃ーー。一撃でウルベを倒すか。相変わらずの化け物ぶりですね、ゴッドガンダム。ガンダムシュピーゲルがアレに変化できるとはね、シュバルツがゴッドガンダムを使う時点で反則的な強さだ」
「落ち着いている場合か!? あのウルベを一瞬で倒すような化け物だぞ!!!」
「確かにーー東方先生のヤマトガンダムやマスターガンダム達もいる。潮時ですね」
言いながら、ウォンはアズラエルを戦場から退却させる。
これにいち早く気付いたのはマスターアジアことシュウジ・クロスだった。
「ウォン!! 貴様、俺達から逃げられると思っているのか!!」
「東方先生、今あなた方と戦えばこちらが不利。退かせてもらいますよ」
「笑わせる!!」
ヤマトガンダムは流派東方不敗の構えを取ると、右手に真紅の炎が宿る。これにシュバルツが叫んだ。
「援護するぞ、シュウジ!!」
「ならば合わせろ! --いくぞ!!」
同時にゴッドガンダムの右手が真っ赤に燃える。
「俺のこの手が唸りを上げる。炎と燃えて全てを砕く!! 灼ゃあああく熱!! サァアアアンシャイィンフィンガァアアアアアア!!」
「これぞ明鏡止水ーー!! 爆ぁああああく熱!! ゴォオオオッドフィンガァアアアア!!」
二機のガンダムから強力無比な熱線が放たれる。
「ーーチッ 回避行動!! 急ぎなさい、かすっただけでも致命傷です!!」
左右から放たれる火炎。すべてを焼き尽くす熱線。
ウォンが指示するもそれよりもはるかに早く火炎はアズラエルの目の前に迫っていたーー。
ーー爆発
空が真っ赤に染まり、燃え上がる。
「決まったか!?」
誰かがその光景に思わず叫んだ。
だが、煙の向こうにはアズラエルの艦影が浮かんでいる。
「ーーばかな? あれを防げるだけの兵器がまだあるのか!?」
アーサーの言葉が皆の心境を代弁していた。
「解析急いで! シュバルツ殿たちを掩護します」
「か、艦長! なにを?」
「シュバルツ殿やマスターガンダムたちにおんぶにだっこしてもらっているだけじゃ、正規軍人としてのプライドが許さないわ。なにより、このベルリン基地を守るのは私たちザフトの使命のはず」
アーサーにそう返すとタリアは一斉通信を行い声を張り上げた。
「全パイロットに通達! 全力で、シュバルツ殿とヤマトガンダムを援護し、この作戦に勝利せよ!!」
ーーーー おおっ!!!! ーーーー
ミネルバ、アークエンジェルを問わず、作戦に参加している全ての戦士が力強い声で応える。
シュバルツ達やキラ達の健闘が、彼らの士気を高めているのだ。
「モニターに拡大映像、出ます。艦長!」
メイリンからの言葉にタリアが正面モニターに目を戻すと、アズラエルの前方に無数の銀の球が浮かんでいた。
「ーーこれはっ! なんなんだ、この鉄の玉は!?」
「無数に宙に浮いている鉄の玉……。この鉄の玉がさっきの攻撃を防いだというの?」
タリア達の疑問に答えるように、ウォンがフーッと安堵の息をもらしながら笑う。
「危ないところでした。とっさにデスアーミー達をデスボールに変化してくれたおかげで、被害がなく終わった。
さすがの判断力ですね、ウルベ」
ウォンが笑いかけるのは、甲板の上に生えた異形のガンダム達の集合体。
そう。グランドマスターガンダムだった。
「ふっふっふっふ、この程度。私には造作もないことだ」
「やはり、本体を残して正解でした」
そのコクピットから、ニヤリと笑う男が全身にDG細胞のコードを巻きつけて姿を現した。
「「「なっ、なんだと!?」」」
その声にシュバルツとシュウジ以外の人間が驚愕する。
そこにいたのは、先ほど確かにシュバルツに倒されたはずの悪人。
ウルベ・イシカワだった。
「シュバルツは確実に仕留めたはず。なぜ生きている? いや、まさか!?」
「ウルベの本体は、グランドマスターガンダムの方か!」
周りが混乱しているのに対してシュウジとシュバルツが気づくのは同時であった。
2人の思い至った考えを肯定するかのようにウルベは笑う。
「ふっふっふっふっふ、最初に言わなかったかね?
『私がきみたちと真っ向勝負するような馬鹿に見えるか?』とね。まあ、コピー体とは言え『私』がまったく歯が立たないとは。恐れ入ったよ、シュバルツ」
「ガンダムファイターとしての矜持すら失くしたか。このたわけが!」
ウルベの言葉に怒りを露わにするシュウジ。これにウォンが割って入る。
「これ以上の戦闘はお互いに傷を増やすだけですよ」
「いや、ウルベにウォン。貴様らをここで殺しておかねば、もっと多くの人が犠牲になる。ここは無理にでも倒させてもらうぞ!」
ウォンがお互いの為に手を引けと遠回しに伝えれば、シュバルツが首を横に振る。
これにシュウジも同調した。
「そういうことだ。貴様らのような外道、野放しにしておくわけにはいかんっ!」
殺気を纏い、ヤマトガンダムとゴッドガンダムはウルベ達に向けて再度構える。
これにウォンがデスアーミー・バーディー部隊に迎え撃つよう叫んだ。
「仕方ありませんね。デスアーミー達よ、デビルガンダムJr.と成りて私たちを守りなさい!!」
ウォンの号令を合図に、宙に浮かんでいる球体が一箇所に集まっていく。
地上に無数にいたデスアーミーや空を飛ぶデスバーディーたちが次々と融合していく。
四本の脚の間に上半身が逆さにぶら下がっている奇妙な姿をしたガンダムが6機宙に浮かんで現れる。
脚部先端からデビルガンダム四天王の能力を備えたビット兵器を放って、それぞれの必殺技を繰り出しながらアズラエルを庇う。
「ま、まだ……。まだ敵の機体は進化するのかっ!?」
「く、敵の戦力には限界がないの?」
アーサーの言葉に応えるように親指を噛みながらタリアは歯を食いしばる。
反対にこの場にいないジブリールは上機嫌で彼らが展開する部隊を見つめた。
「ハッハッハッハッハ! すごい、すごいぞウォン! ウルベ! これがDG細胞か、まだ進化するというのか!
なんて! なんて力なんだあっ!」
「さあ、退きましょう」
「ああ。これ以上は無理だな」
しかし、部隊を展開している張本人であるウルベとウォンは興奮するジブリールを尻目に撤退の準備を進めていく。
ここに来ての新型の登場にザフト・オーブ連合軍の士気が下がる中、スティングが笑った。
「ーー大丈夫だ。何も問題ない」
「はあ? なにがだよ、スティング? この状況で」
同僚の余裕じみた笑みに思わずアウルが胡散臭そうに問いかける。
「……そうだな」
「レイ。あんたまでなにをっ……?」
スティングの言葉に続いたのは、普段から冷静で現実的な意見をするレイだった。彼の口元にも穏やかな笑みが刻まれている。
「シュバルツ殿にはーー」
「ーー師匠には」
「「ーーハイパーモードがあるーー」」
二人の少年が言葉を重ねる。
その意味するところを理解したとき、アウルとルナマリアの表情が明るく輝いていた。
弟子たちの期待をその身に受けながら、シュウジとシュバルツはお互いのガンダムを肩を並べて立たせ、横目に告げる。
「シュバルツよ。これ以上、時間をかけるわけにはいかんようだ」
「そのようだな。ならば、ゆくぞ! シュウジ・クロス! いや、マスターアジア!!」
「ーーよかろう。塵も残さんわぁああああ!!」
二機のガンダムは両の拳を腰において気を高めると、同時にハイパーモードーー黄金の気をその全身から放ち始め、天を衝く。
「デビルガンダムJr.よ。四天王ビットで迎え撃て!」
これにウォンがデビルガンダムJr.に命令。6機のJr.からそれぞれ四つのビットが放たれ、ビットはデビルガンダム四天王の姿になって攻撃してきた。
マスターガンダムの上半身を象るものは、左右の貫手からのダークネスフィンガー。
グランドガンダムの角を象るものは、雷と角。
ヘブンズソードの羽、ウォルターの球を模したビットはそれぞれ体当たりからのビーム砲。
そしてJr.本体は胸部にエネルギーをためるとメガデビルフラッシュと呼ばれる可粒子砲撃を放ってくる。
これらの機体はデストロイ以上の火力を誇る上に、自己再生も持っている凶悪なMA達だ。
それらを同時に相手取り、黄金の輝きを放つヤマトとゴッドは前傾姿勢になって大地を思い切り蹴る。
次に二機が現れたのはアズラエルの懐ーー。
一瞬後、彼らが通ったと思われる軌跡に黄金の光の粒子が道となって現れる。
近くに寄っていたビット達は黄金の気に触れただけで消し飛び、6門の強大なビーム砲は黄金の光の塊となった二機のガンダムに押し返され、空中で霧散する。
自身の正面に現れた三機のデビルガンダムJrに対してシュバルツが吠える。
「邪魔だーーっ!!」
隣ではシュウジも同じように目の前にいるデビルガンダムJr.に吠えつけながら、真っ赤に燃える右手を振りかぶった。
「ーーこの、身のほど知らずがぁ!!」
2機の赤い炎を纏った右手は、圧倒的なまでの光を放ちながら異形の機体を消し飛ばしていった。
「ら、ラミアス艦長……っ!!」
「強い……。これだけ圧倒的な力なら勝てる。でも、なんなの? このいやな予感は……」
モニターを確認しながら、マリューも二機のガンダムの力に安堵する。しかし、それでもこの戦場に漂う不気味な雰囲気を拭い去ることができなかった。
「すげえっ! さすがシュバルツさんだ!」
「うん。シュバルツさんと東方不敗が組んだら、これだけすごいことになるんだね」
一方でデスルークを倒したキラ達も気を回復させるために休みながら、ヤマトガンダムとゴッドガンダムの力を目の当たりにして頷く。
「キラ、シン。お前たちは休んでいろ。俺もシュバルツ殿の援護に向かう」
アスランは未だ激戦を繰り広げるアズラエルの方向を見据え、瞳を鋭くする。
「--やめておけい」
「マスターガンダム?」
「先のキラ・ヤマトならばともかく、いまの貴様が行ったところで足手まといにしかならん。大人しく周囲のデスアーミーたちを倒したほうがよかろう。このわしとともにな」
「わかった。ならば、あなたを援護する。マスターガンダム」
マスターガンダムからの通信に頷き、アスランは彼と行動を共にする。
二機が飛び立とうとする前に、シンがマスターガンダムに話しかけた。
「あんたには聞きたいことが山ほどあるんだ。こんなところでやられてもらっちゃ困るぜ。さしあたって言うんなら『ーーなんで分身出来るんだよ!』とかな」
シンの言葉にマスターガンダムは振り返りながら鼻で笑うと、セイバーガンダムのアスランに顔を向ける。
「ーーフン。ゆくぞ、赤いガンダムよ!」
「ああ!」
二機のガンダム達は未だにベルリンの街を囲む死者の大群を殲滅するためにキラたちから離れていった。
一方、シュバルツが最後のJr.をゴッドフィンガーで破壊することに成功した。その背を蹴るようにヤマトガンダムが宙に跳躍して右手を大きく振りかぶる。
「消え失せるがいいっ! サァンシャァイィン、フィンガァアアアアアア!!」
右手に黄金の気を凝縮し、アズラエルに向かってヤマトガンダムが光を放つ。
その光の威力は余波だけで建物を吹き飛ばし、立ちはだかるものを全て叩き潰す。
しかし、戦艦の手前の空間で黄金の光は霧散した。
「--なにっ!?」
シュウジの目が大きく見開かれ、その肩は上下に揺れ始めた。
戦艦の前に浮かぶのは長い帽子を被った英国紳士と軍人を足して2で割ったような見た目のガンダム。
「ハイパーモードを使ってこの程度か。やはり気の分身を作りだしたことで、お前自身の力はだいぶ衰えているようだな」
通信越しに現れたのは黒髪をオールバックにした気品と凄みのある男性。
三度に渡りガンダム・ザ・ガンダムの栄誉を手に入れた最強の呼び声の高いガンダムファイター。
「また貴様かーージェントル・チャップマンっ!」
「馬鹿な、貴様も蘇ったのか!?」
ジョンブルガンダムの出現にシュウジが歯ぎしりし、シュバルツが目を見開く。
これにウォンが満面の笑みを浮かべた。
「いいタイミングです、チャップマン!
ウルベ!!」
「ーー分かっている!! エネルギーフルパワー!!」
そして、一気にグランドマスターガンダムーーDG細胞ーーのエネルギーを使ってエンジンをフル稼働する。
「亜空間移動を行います。チャップマン、防戦に徹し1分保たせなさい」
ウォンの指示に従うように、シュバルツとシュウジの前にチャップマンは立ちはだかる。
この光景を見ていたキラが思わず叫ぶ。
「あれは、ジェントル・チャップマン!」
「なんだよ、まだ敵が増えるのかよっ!」
ここに来て更なるガンダムの登場に、シンですら気力がもたなくなってきた。
シュウジーーヤマトガンダムは、現れたジョンブルガンダムに拳を握って構える。
「シュウジ、無理をするな。気の分身に肉体の活性化、おまけにハイパーモードだ。これ以上はお前の身が保たん」
「なにを言う。いまここで無理をせねば、もっと大勢の罪なき人々の命が犠牲になるであろうが! ここで奴らを倒せるのならば、俺の身など気にして何になる!?」
「ーーシュウジ」
先ほどシュウジが肩で息をし始めていたのをシュバルツは知っている。
それでも、この男は戦おうとしている。自分の身を犠牲にしてでも、守ろうと。
それは自分の命を省みないからではない。
誰よりも命が大切だから、譲れないから、闘うのだ。
「ゆくぞ、シュバルツ! 俺達を相手に一分もたせると言ったその傲慢、死を持って償わせてくれる!」
腰を落とし構えるシュウジにシュバルツは静かに頷き、気を高める。
2人の気をまともに受けながら、チャップマンは壮絶な笑みを浮かべていた。
「フン、ウォルフ・ハインリヒにシュウジ・クロス。貴様らの正体がそれだったとはな。
ガンダム・ザ・ガンダム二人を相手に1分か。悪くない。英雄と言われた俺に似合いの戦いだ」
ジョンブルガンダムも腰を落とし、両の拳を握って構える。
「そう。
ガンダム・ザ・ガンダムの栄誉を三度冠した、このジェントル・チャップマンに相応しい」
「ゆくぞシュバルツ! あやつの無駄口、黙らせてくれるわあああ!!」
「チャップマン!
貴様には聞きたいことがあるが私の相棒はもはや限界だ。一刻も早く倒させてもらうぞ!!」
左右から同時にヤマトガンダムとゴッドガンダムが仕掛ける。
左右から放たれる拳と蹴りの雨霰を両の手でさばききるジョンブルガンダム。
「そんな馬鹿なっ!?
あの黄金の機体はっ、MFが黄金になったら無敵なんじゃないのか!?」
アーサーの言う通り、明鏡止水の境地に達した黄金のガンダムは、全てにおいて凌駕する。
しかし、ジョンブルガンダムは一撃でもまともに受ければ砕かれる強烈な一撃を的確に捌いていく。
これにデスアーミーの一個師団を殲滅したクーロンガンダムとシャッフルハートが、振り返りながら唸る。
「……なんという奴よ!
シュバルツたちの攻撃をまともに受けれぬと見るや、全て受け流すことに専念しておる!」
「あの2人の攻撃をまともに受ければチャップマンーージョンブルガンダムの腕は消し飛ぶはず。それをわずかに逸らすことにより、攻撃を全てさばいておるのだな」
更にセイバーガンダムと共に敵を殲滅していたマスターガンダムも唸った。
「一つでも間違えれば、一瞬で穴だらけだと言うのにーー! 並みの度胸と自信ではない!! これが3度に渡りガンダム・ザ・ガンダムの栄誉を手にした男の実力か!!」
3機のMFは全く同じ声で同じセリフを告げた。
「「「しかし、ならばこそ打ち破らねばウソと言うものよ!! ワシらの主たるシュウジとライバルであるシュバルツーー!! 貴様らが組んでおるのだからな!!!」」」
3機のMFの激励にシュウジの眦がつり上がる。
「分かっておる、黙って見てるがいい! このたわけどもが!!」
「一ーくっ! 流石にやるな、チャップマン!!」
対して横にいるシュバルツは冷静にチャップマンの実力を認めていた。
「大したことではない。防戦に徹すれば、俺の実力ならば一分程度耐え切れんことはない」
「舐めおってからにぃいいっ!」
シュウジはシュバルツを庇うように前に出ると、一気呵成に前に出る。
「ならばわしが! この東方不敗マスターアジアが貴様を完全に止めてくれるわあ!!」
シュウジ・クロスからマスター・アジアの姿に戻りながらも、彼は気迫で黄金の姿を維持している。
「シュウジ! やはり肉体を活性化する気力がーー!!」
「シュウジ・クロスの姿とは比べるべくもないな。一撃の重みはともかく、手数が目に見えて衰えいる。
気も尽きかけている今のお前で、俺を止められるのか? マスター・アジア」
マスターはチャップマンの言葉に凶暴にして獰猛な笑みを浮かべると、シュバルツに背中を向けたまま告げた。
「シュバルツ! こやつはワシが抑える! ゆけいっ!」
「マスターアジア!?」
「ゴッドガンダムと石破天驚拳ならば、きゃつらを消し飛ばせる!! 貴様の鏡転同血の力、奴らに目にもの見せてやれぃっ!!」
マスターアジアの言葉にシュバルツも力強く応えた。
「いいだろう! この技に我が魂の全てを込める!!」
一つ頷いてから、腰を落とし両手を右腰に構えてたわめ、強烈な黄金の光の球を作り出す。
その核となる黄金の光の球に紅い文字で「驚」が刻まれる。
ーー流派東方不敗ーー最終奥義ーー石破天驚拳ーー
シュウジ・クロスことマスターアジアが第7回ガンダムファイト大会にて編み出した最強にして最終奥義。
おそらく単体での一撃ならば、これに敵う技はないだろう。
強力無比な攻撃力を誇る正に「必殺」を体現した「一撃」である。
輝きは更にまし、黄金の光の球に真紅の劫火が纏い始める。
だがシュバルツが今、正にその究極の一撃を放とうとした時、一筋のビームが彼の背中に放たれた。
その際どい一撃は、シュバルツをして回避せねばならないほどに正確無比。
放ったのはチャップマンであった。
彼は両手でヤマトガンダムの攻撃を防ぎつつ、その間隙を縫って背中のロングライフルを左片手で持ち、シュバルツのゴッドガンダムに向けて撃ったのだ。
「--ぬうっ!?」
「くっーー!」
マスターアジアを相手にそれをやってのけたチャップマンの技量にシュバルツ達は思わずうなる。
対するチャップマンは淡々とした表情で話した。
「石破天驚拳など、打たせはせん」
これにアウルとスティングが思わずうめく。
「なんだよ、あの化物はっ!?」
「まだあんな奴がいるのかよっ!」
シンがアスランが時計と目の前の激戦を見ながらつぶやく。
「まずい! もう三十秒経った!」
「あの二人を相手に、本当にこのまま一分もたせるつもりなのかーー!」
そんな周りの言葉を無視して、マスターアジアはシュバルツに吠えた。
「シュバルツ! 貴様はもう一度気を溜めい!」
しかし、その気迫に反してヤマトガンダムのハイパーモードが、黄金の輝きが消え通常のトリコロールの機体に戻る。
(マスターアジアめ。もう気がーー!!)
シュバルツは語らず、ただ目を大きく見開いた。その目にマスターは目力を入れて見据えてくる。
ーー ここは、わしが全力で抑える! --
彼の目はそう語っている、ならば自分も全力で応えねばならない。
「マスターアジア…! すまん!!」
シュバルツは熱い思いを胸に、一気にアズラエルに向かって跳躍した。
これにジョンブルガンダムが再び片手で銃を構えようとするも、目の前にヤマトガンダムが回り込み、ジョンブルガンダムの懐に飛び込んで拳蹴打のむしろと化して妨害する。
チャップマンは、無数に放たれる拳と蹴りを両腕でガードしてさばきながら、ヤマトガンダムの背後に飛ぶゴッドガンダムを獲物を駆る狩人の目で見据える。
再び間隙を縫ってヤマトガンダムの攻撃の右ストレートを右に回り込みながら躱し、背中に背負ったライフルを片手抜きしてゴッドガンダムの背後に撃った。
ーーが、引金を引こうと瞬間にヤマトガンダムに銃身を蹴りあげられる
弾はあらぬ方向に飛んで行った。
「やらせんと言うたはずだぁ!」
猛虎の如き咆哮を上げるマスターアジアに、チャップマンは静かに狩人の目を向ける。
シュバルツのゴッドガンダムは、背後を完全にマスターアジアに任せ、背中の日輪を輝かせる。
「ゴッドフィールド・ダァアアアッシュ!」
空中でハイパーモードを発動し、6枚の羽を展開、背中の日輪がバーニアとなり、一瞬でゴッドガンダムをグランドマスターガンダムの目の前まで移動(ワープ)させる。
ウルベが、この動きに目を見開いた。
「ーーばかなっ!? 貴様!!」
「今度こそ、これで終わりだ! ゴォオオッド! フィンガアアーー!!」
赤く燃える右手を右ストレートの軌道で振り切り、強烈な火球が放たれる。
勝った。
誰もが、そう確信した。
「ーー残念でしたね。シュバルツ。東方先生」
だがーー
ウォンの静かな言葉が聞こえてくると同時、戦艦アズラエルが忽然と目の前から消えた。
「「「「ーーな!?」」」」
一同が驚愕する中、嫌味なまでに落ち着いた男の声が聞こえてくる。
「ーーまたお会いしましょう。シュバルツ・ブルーダーにマスターアジア、それに異世界のガンダム達よ。
次は、あなた方に地獄を見せられると思います。楽しみにしていてください。
では、ごきげんよう」
あれほどの質量を誇りながら消えた戦艦。
同時にマスターと激戦を繰り広げたチャップマンも姿を消していた。
そしてベルリンの街を完璧に取り囲んでいたデス・アーミーとバーディー達も潮が引くように何処かへ去っていく。
「ーー敵部隊、後退していきます」
「勝った、の?」
メイリンの報告に呆然となりながらも、目の前の敵部隊を見据える。
皆が呆然とする中、一際大きな音が聞こえ、そちらを向くとヤマト・ガンダムが膝をついていた。
同時にクーロン・シャッフル・マスターの3機のMFが光の玉になってヤマトガンダムに吸収される。
「ぬう! 少し、無理をし過ぎたか」
「すまないシュウジ、いやマスターアジア。やつらを逃がしてしまった」
片膝をつき、息を整えるマスターにシュバルツが詫びる。
「貴様ほどの男が逃げられたのであれば、他の誰がやっても同じであろうよ。それにしても、厄介なやつらが手を組んだものだ」
「ああ。まったくだ」
シュバルツもまた、体内に高めた気を収める。銀色の光とともにゴッドガンダムがシュピーゲルへと戻った。
「グラディス艦長! さっきの戦艦、逃走経路もレーダーに反応ありません!」
「空間を歪めて移動ーートランスポートですって? そんなことまでできるというの、あの連合の艦は」
事実確認をしながら、タリアは苦虫を噛み潰した顔をしている。
「ラミアス艦長、敵影ありません!」
「ここまで追い詰めて逃がしてしまうなんて……」
マリューもまた、部下の報告に無念そうに顔を歪める。
「くそ! 僕にもっと力があれば!」
「いや、キラさんじゃない。おれだ。俺がもっと心が強ければ、こんなーー!!」
キラもシンも倒せなかったのは自分の責任だと悔やみ拳を握る。
「キラ、シン。いまは、いまはこの戦いを生き延びた喜びを分かち合おう。本当に良く戦ったよ、俺たちは」
アスランはそんな2人に言葉を送ると彼らは苦笑いを返してきた。
タリアも自身の感情に一区切りつけると笑顔を見せて、通信を入れた。
「オーブのアークエンジェル隊の皆さん。本当にありがとうございました。ヤマトガンダム達にも礼を言いたいわ」
「ーーもっと早く駆けつけることができれば、良かったのだけれど」
マリューは無念そうに眉をひそめながら、答え
「この世界の危機だ。そのような礼はいらん。それよりもネオ、貴様らはその部隊に入ったのか?」
その横からマスターが応えたあと、アークエンジェル隊と共にするネオに問いかける。
「ええ。積もる話もあります。とりあえずザフトのベルリン基地で補給でも受けながら、話をしませんか。東方先生
ステラの容態も気になる」
「ふん、よかろう」
ネオの提案にマスターはニヤリと笑んで腕を組み応えた。
これを聞いていたマリューは苦笑いしながらタリアに通信で話しかける。
「か、勝手に話を進めちゃってるけど、大丈夫なのかしら……? グラディス艦長」
これにタリアは何処か気さくな笑みを浮かべて返した。
「ええ、どうぞ。あなた方がいなければ、ベルリン基地はとっくの昔に壊滅しています。人員は後で呼び戻せるし、施設を守れただけでも功績は大きいでしょう」
「ありがとう、グラディス艦長」
「いいえ、こちらこそ。それに個人的に貴女とは話をしてみたいの、ラミアス艦長」
美しい微笑みを浮かべて言うタリアにマリューもニコリと返した。
「ーー私で良ければ」
一方、激戦を生き延びたシン達3人は互いに顔を合わせると、ため息を同時に吐いた。
「とりあえず終わってよかったわ……。もうこんな疲れる戦い、したくない」
「たしかに。長い持久戦だったな」
「ほとんど全力疾走のまま持久を強いられる戦いだったよな……」
シンは思う。
この同僚達との語らいも、生き延びた喜びも、守りたい思いも。
決して嘘なんかじゃないんだ、とーー。
「ーーなあレイ、ルナ。俺たち、生き延びれたんだよな?」
「ーーああ。俺たちは強くなった」
「そうよ。私たち3人揃えば、無敵よ!」
力強い言葉に、シンは心から微笑んだ。
ーー 今は、この場所を仲間を守れたことを喜ぼう。
たとえ、この先に何があろうとも戦い抜くために ーー
シンは心の中で独りつぶやき、決意を新たにしていた。
皆さん、お待ちかね〜!
ベルリン都市での激戦を生き延びたミネルバ隊とアークエンジェル隊。
彼らの活躍の影でプラントのギルバート・デュランダルがついに動き出します。
はたして、デュランダル議長の「ロゴス撲滅作戦」とは如何なるものなのか?
次回、機動武道伝Gガンダム SEED Destiny 第51話に!
レディー、ゴー!!