新機動武闘伝 GガンダムSEED Destiny   作:カンナム

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 さて、みなさん。

 闘いに継ぐ闘いに、戦士達はしばらくの休息を取るのです。

 一方、プラントではギルバート・デュランダルがついに動き始めたではありませんかー!!

 はたしてシュバルツ達は、戦争を続ける世界にどう立ち向かうのか?

 それでは、ガンダムファイト!!

 レディィィィッ! ゴォォォオオオッ!!



第51話 動き出す世界

 ベルリンのザフト基地内で

 

 

 

 先の悪魔の兵団を前に勝利したミネルバは、協力してくれたオーブのアークエンジェルとマスターアジアに対し、ザフト基地総出で食事に迎えていた。

 

 

 

 ほぼ廃墟と化していたベルリンの街だが、あの絶望的な状況に勝利したことで市民からの支持も高まり、市民からは連合への嫌感情も伴ってパーティが行われている。

 

 

 

「ここまで街をボロボロにされたのに、俺達を笑顔で迎えてくれるなんて」

 

 

 

「なんだか、申し訳ないわね。あたし達、結局、街の大半を焼かれてしまったしーー」

 

 

 

「だが俺達のしたことは、これだけの人に支持されることだったということだ。素直に受けるべきだな」

 

 

 

 市民達の喜びようをパーティ会場のモニターで見ながら、申し訳無さげなシンやルナマリアに対し、冷静に告げるレイ。

 

 

 

 アスランとキラもこれに頷いた。

 

 

 

「そうだな。あのまま、奴らに占拠されていればもっと恐ろしい事態になっていただろうからな」

 

 

 

「うん。彼らの目的は全人類の支配だからね」

 

 

 

 キラの言葉にシン達3人が目を向ける。

 

 

 

「キラさん、それってどういう意味なんですか? 議長の考えとかもーー」

 

 

 

「ーーごめん、シン。今、全てを語るには早過ぎるんだ。だけど、コレだけは言える。あの死者の部隊だけは、連合もザフトもオーブもない。確実に倒さなきゃいけないんだ」

 

 

 

 キラの強い言葉にシンは戸惑いながらも頷いた。

 

 

 

「ーーシン、キラ准将? 議長の考えって?」

 

 

 

「え? あ、えっとーー!」

 

 

 

 何気なしに聞いてくるルナマリアにシンが慌てていると、キラが横から応えた。

 

 

 

「ーールナマリアさん。准将はいらないよ。キラと呼んで欲しいな。僕も准将ってガラじゃないから」

 

 

 

「ーーえ? えっとーー!」

 

 

 

「ーーダメかな?」

 

 

 

「い、いえ! そ、それじゃ、よろしくです。き、キラ」

 

 

 

「ーーうん、よろしくね」

 

 

 

 笑顔のキラにルナマリアは頬を染めて何も言えなくなる。

 

 

 

 キラはそのまま、シンに目を向けルナマリアが見ていない時に首を横に振った。

 

 

 

「ーーす、すみません。キラさん」

 

 

 

「いや。それより、シン。君も僕をキラって呼んでくれないかな?」

 

 

 

「ーーえ? さん付けじゃダメですか? なんか、呼びづらくて」

 

 

 

 そういうシンにキラがショックを受けたかのような表情になる。

 

 

 

「僕、そんなに話しづらいかな?」

 

 

 

「あ、いや。そうじゃなくて、恐れ多いというか。何度も貴方には助けられてるし、尊敬してるんです。ですから、呼び捨てはちょっとーー!」

 

 

 

「そ、そっか。なんだか、嬉しいというか、照れるな」

 

 

 

 顔を赤く染めるシンとキラに、ルナマリアが微妙な表情になる。

 

 

 

「何なのよ、シンったらーー! シュバルツさん以外にも尊敬する人がいるわけ?」

 

 

 

 何処か嫌みに聞こえる口調にシンの眦がつり上がる。

 

 

 

「ルナも見たろ? キラさんは、明鏡止水の境地に達してるんだぜ。俺たちより、はるか前にいるんだ」

 

 

 

「それは、そうだけどさーー」

 

 

 

 ふてくされた様に頬を膨らませるルナマリアにシンは更に言う。

 

 

 

「そんな人を呼び捨てには、俺にはできないーー。何より、何度も助けられてるんだ」

 

 

 

 真っ直ぐな赤い瞳にルナマリアの機嫌が一気に悪くなっているが、シンは気づかない。

 

 

 

 その時だった。

 

 

 

「シンーー!」

 

 

 

 柔らかい何かが、シンにぶつかる。

 

 

 

「ーー! ステラ?」

 

 

 

「シン、ありがとう!!」

 

 

 

「ーーえ? いや、俺はーー!」

 

 

 

 満面の笑みで抱きついてきたのは、ステラ・ルーシェだった。

 

 

 

 いよいよ、ルナマリアの眦がつり上がる。

 

 

 

「ーーこら、ステラ!! いきなり飛びつくな!!」

 

 

 

「ったく、シンだけじゃないだろ! キラにもちゃんと、礼を言えよ」

 

 

 

 別の方向から声がかかり、シンが2人の顔を見る。

 

 

 

「スティング、アウルーー!」

 

 

 

 2人はシンに名を呼ばれるとニッと笑いかける。

 

 

 

「悪いな、ステラが迷惑かけてよ」

 

 

 

「シン、お前の戦いも見てたぜ。腕を上げたじゃん」

 

 

 

 シンはスティングに「大丈夫だ」と頷き返した後、アウルにワンパク坊主の様な笑みを返す。

 

 

 

「今なら、お前にも勝てるかもな?」

 

 

 

「まあなーー! けど、見てろ。すぐに追いついてやる」

 

 

 

「なら、俺も追いつかれないようにしないとな! まだまだ、強くなってやる!」

 

 

 

「僕もスティングも、まだまだ強くなるぜ! お前やキラにもすぐに追いついてやる!」

 

 

 

 互いにニッと笑いあう。その後ろでスティングも苦笑しながら、シンに頷いてきた。

 

 

 

「いいな、こういうのーー! よし、アウル、お前は俺のライバルだ!!」

 

 

 

「僕はとっくに、お前をライバルだと思ってだぜ。シン」

 

 

 

 ガッシリと握手する2人の少年をキラとアスランが微笑みながら見守る。

 

 

 

「いつまでシンに捕まってるのよ、こんのぉ!!」

 

 

 

 ルナマリアが怒鳴りながらシンに抱きついていたステラを引き剥がす。

 

 

 

「? 何で怒ってるの?」

 

 

 

「な、何でってーー!!」

 

 

 

 本気で分からないステラは、目を丸くしながら首を傾げる。

 

 

 

「あ、そのーー! あれよ!! 女の子が迂闊に男に抱きつくもんじゃないわよ!!」

 

 

 

「ステラ、シンが好きーー。だから、いいの」

 

 

 

「んな!? い、いい訳ないでしょーがぁあああっ!!」

 

 

 

 ステラの過激なスキンシップにルナマリアの顔が鬼になる。

 

 

 

「……な、なあ、ルナ? 何怒ってんだ?」

 

 

 

「あ、ん、た、はぁあああっ!!」

 

 

 

 シンの態度にいよいよ、ルナマリアは怒髪天をついた。

 

 

 

「お姉ちゃん、強力なライバルの出現かも」

 

 

 

 これを楽しそうに見るのは妹のメイリンだった。シンと2人の少女の騒ぎは、周りの人間を集めていく。

 

 

 

「ーーーー!」

 

 

 

 それを距離を置いて見ながら、レイはシン達を見て微笑んでいるキラ達に視線をやる。

 

 

 

( ギルの考えを読んだ? キラ・ヤマト。やはり、俺たちの敵になるか?)

 

 

 

 静かに冷えた瞳でレイはキラを見つめた。

 

 

 

「よう! お疲れさんだな」

 

 

 

「ーー! お前は確かーー!」

 

 

 

「スティングだ。世話になったな、ザクのパイロット」

 

 

 

「ーーレイだ。こちらこそ、助かった」

 

 

 

 レイの言葉にスティングはニッと笑うと穏やかな表情で告げた。

 

 

 

「ステラは、身寄りのない俺たちの妹みたいな奴でさ。助けたかったんだ、ホントに。だから、ありがとう」

 

 

 

「ーー!」

 

 

 

 スティングの言葉に、レイは目を大きく見開く。

 

 

 

「どうした?」

 

 

 

「いや。お前達は親がいないのか?」

 

 

 

 レイの言葉にスティングはこくりと頷いた。

 

 

 

「ああ、俺たち3人はガキの頃に攫われたんだ。ブルーコスモスに」

 

 

 

「ーー!」

 

 

 

「俺たちは、人殺しをする為だけに育てられた。師匠に出会わなけりゃ、アークエンジェルにいることなく、あのデストロイってのに乗っけられて、死んでたかもな」

 

 

 

「ーー恨んだろう? 世界を」

 

 

 

「どうだろうな。記憶も消されたり、薬で狂わされたりしたからな。まともな判断もできなかったよ」

 

 

 

「ーーすまない。簡単に聞いていいことじゃなかった」

 

 

 

 思わず俯くレイの肩を叩き、スティングは告げた。

 

 

 

「気にするな。話したかったから話したんだ」

 

 

 

「ーーそうか」

 

 

 

「気を使わせたみたいで悪かったな」

 

 

 

「ーーいや、俺は。ーー俺も気にしていない」

 

 

 

 スティングはレイの返しにクスリと笑うと、告げた。

 

 

 

「ありがとよ。そう言えば、ミネルバはこの後、どうするんだ? 退けたとは言え、被害は甚大だぜ」

 

 

 

「ーーそうだな。本国からいずれ指示があるだろう。お前こそ、アークエンジェル隊に入ってどうする? 妹のような存在は救えた。ならば、アークエンジェルにいる意味もない。戦争とは無縁な所で暮らしたらどうだ?」

 

 

 

「レイーーお前、冷たそうに見えて優しい奴だな」

 

 

 

「からかうな」

 

 

 

「ーー本心だぜ?」

 

 

 

「ーーそうか」

 

 

 

「ああーー。ありがとよ、レイ。だが、キラ達には借りがあるからな。それを返すまでは一緒にいるさ」

 

 

 

「そうかーー」

 

 

 

 スティングの言葉に、レイは何処か気恥ずかしげに目を伏せた。

 

 

 

 一方でそれを離れた所から見ているのは、シュバルツ・ブルーダーに東方不敗、アンドリュー・バルトフェルドにネオ・ロアノークだった。

 

 

 

「なんだか、久しぶりに会った気がするな。シュバルツ」

 

 

 

「そう言われれば、そうだな。元気そうでなによりだ。バルトフェルド」

 

 

 

 お互いに穏やかな笑みを浮かべながら握手する両者の横では、グラスに入ったシャンパンを呷るネオがいる。

 

 

 

「しっかし、あのクソ野郎共の顔ったらなかったな! 胸がすいたぜ!! さすが東方先生とシュバルツだ」

 

 

 

「逃しておっては話にならん。それにしても、ワシが離れた後でステラにそのような事をなーー」

 

 

 

「幸い、と言って良いかは分からんが。デストロイに乗せられていた記憶は曖昧でほとんど覚えてないようだ」

 

 

 

「…DG細胞やバーサーカーシステムの特性に救われたようだな」

 

 

 

 ネオの言葉にマスターが応え、バルトフェルドとシュバルツが少年たちを見ながら続ける。

 

 

 

「ーー東方先生。俺たちと一緒に来てくれませんか?」

 

 

 

「確かに。マスターアジアが仲間になってくれれば、この上なく頼もしいな。キョウジの作戦も広がる」

 

 

 

 ネオにバルトフェルドが続いてマスターに話しかけるも、マスターアジアは首を横に振った。

 

 

 

「ーー戦力が一箇所に固まるのは悪い兆候だ。過ぎた力は無用な争いを呼ぶ。すまんが、ワシはワシで独自に行動させてもらうぞ」

 

 

 

「正直、自信が無いんですよ。次にあんな奴らが現れたら、貴方の力抜きであいつらを守れんのかどうか」

 

 

 

 ネオは自嘲気味に笑うとマスターを見つめる。

 

 

 

「今回は運が良かっただけだと思っている。次に奴らに出会った時、貴方やシュバルツ、キョウジの力を借りれるとは限らない。そうなると、ねーー」

 

 

 

「馬鹿者!!」

 

 

 

「ーーっ!?」

 

 

 

「そのような弱気でどうする? このワシが。東方不敗マスターアジアが、貴様に愛弟子を託したのだぞ!

 

 もっと気を強く持たんか!!」

 

 

 

 口調は厳しいながらも表情は何処か穏やかなマスターの顔を見据え、ネオは静かに笑みを浮かべた。

 

 

 

「ーーそう、でしたね。あいつらを守るために、俺はオーブに入ったんだ」

 

 

 

「バックアップはさせてもらうぜ。俺たちも、あんなに楽しそうに笑ってる子ども達の顔を守りたいからな。なあ、シュバルツ?」

 

 

 

 バルトフェルドの言葉にシュバルツは覆面の奥の瞳を穏やかに緩め、笑った。

 

 

 

「ーーふ、もちろんだ。私も全力で力を貸そう。ネオ・ロアノークよ」

 

 

 

「ーーありがとよ、シュバルツ。バルトフェルド」

 

 

 

 互いに笑みを浮かべながら、語り合う4人の男。それらから更に離れて、麗しい美女2人がテーブルを前に話をしている。

 

 

 

「こちらの招きに応じていただき、まことにありがとうございます。この基地がこうしてパーティ会場として使用できるのも、あなた方のご協力のおかげですわね。ラミアス艦長」

 

 

 

「お、大げさです。私達は、別にそんなーー」

 

 

 

 タリアの言葉に謙遜するマリュー。アーサーが勢いに乗って彼女に話しかける。

 

 

 

「ーー何を言うんですか! あなたの助力のおかげで、我々は生き残れたんです!!」

 

 

 

「あ、はいーー。あ、ありがとうございます。ですが、私だけの力ではなくーー」

 

 

 

 押しに弱いマリューは、アーサーの勢いに押されながらも、華やかな会場の雰囲気を楽しみつつ、返す。

 

 

 

「ラミアス艦長、堅い話は後にしましょう。アーサー、少し席を外してちょうだい」

 

 

 

「え!? えええええっ!? は、はいーー」

 

 

 

 アーサーはタリアの言葉に肩を落としながら、見るからにションボリとした表情で下がって行った。

 

 

 

「ごめんなさいね、ラミアス艦長。我が部下ながら少し、配慮の足りないところがあって」

 

 

 

「あ、いえーー!」

 

 

 

「ラミアス艦長にはお子さんは、いらっしゃるのかしら?」

 

 

 

 突然のタリアの言葉に、マリューが目をまるくする。

 

 

 

「グラディス艦長ーー?」

 

 

 

 マリューに向けてタリアは1枚の写真を示した。手に取り、眺めるとまだ幼い少年があどけない笑顔を見せている

 

 

 

「息子よーー」

 

 

 

「可愛らしい盛りですね」

 

 

 

「ワンパクで困るわ。でも、最近は滅多に会わないから」

 

 

 

「ーーグラディス艦長」

 

 

 

 タリアの寂しげな表情にマリューも顔を翳らせる。

 

 

 

「本当なら、もっとワガママ言いたいだろうに。私はダメな母親だわ」,

 

 

 

「ーーそれでも、あなたがここに居るから。守れたものもあるはず。あなたがここに居るから、息子さんの安全も守れているのではないですか?」

 

 

 

 マリューの真摯な言葉に、タリアは静かに儚げな笑みを浮かべた。

 

 

 

「ーー頭では、そのつもりでも。それをまだ10に満たない子どもに理解しろなんて無茶な話よね」

 

 

 

「今は無理でも、いつかは分かる。それが成長ではありませんか?」

 

 

 

「ーーそうね。ありがとう、ラミアス艦長。聞いていただいて少し気が晴れたわ。こんな話、部下にはできなくて」

 

 

 

「シュバルツさんなら、聞いてくれるのでは?」

 

 

 

「ーー彼には、そこまで頼れないわ」

 

 

 

 マリューの言葉に、タリアは自嘲気味に言った。

 

 

 

「そもそも、彼はオーブからの客人ですもの。そんな彼を主力として見てしまっている。正直言って今、彼に抜けられたらウチの部隊はガタガタよ。それぐらい、彼はシン達にとって大切な存在になってしまっている」

 

 

 

「ーー分かります」

 

 

 

 マリューが神妙な面持ちで応えた。思い出すのは、かつてアークエンジェルにたまたま乗り合わせた民間人キラ・ヤマトのことだ。

 

 

 

 離れた席で年相応に、楽しそうに少年たちの輪の中にいる彼を見つめる。

 

 

 

「軍人でない者に正規軍人である者が頼りきりになる。私は、2年前にそれを味わいました」

 

 

 

「ラミアス艦長ーー。それはもしかして」

 

 

 

 マリューの視線を追い、タリアも心得た顔付きになる。

 

 

 

「シュバルツさん達がもし、あの時に私達の前に現れていたら。私はきっと、あなた以上に依存してしまったと思います」

 

 

 

 マリューの頭に浮かぶのはシュバルツとそして、オーブに残った参謀役の彼のことだ。

 

 

 

「ーー達? ああ、確かに。シュバルツ殿やマスターアジアに私達は頼ってばかりね」

 

 

 

「ーーよく分かります。私もオーブでマスターアジアと戦い、国を守れたことは奇跡だと思っています。いいえ、彼らに出会えたことが奇跡でしょう」

 

 

 

「ーーマスターアジアを相手に?? 信じられないわね」

 

 

 

「ーーこちらもフリーダムを犠牲にしましたが。キョウジさんーーシュバルツさんのご兄弟のおかげでなんとか」

 

 

 

「兄弟? シュバルツ殿に兄弟が? 初耳だわ」

 

 

 

「ーー本人達はあまり、そういう話をしたがりませんよね。よく似ています」

 

 

 

 楽しそうに眉を上げるタリアにマリューが可愛らしく頬を膨らませて見せた後笑いながら、キョウジとシュバルツの話をはじめる。

 

 

 

 平和な時間がオーブ軍とザフト軍、双方に流れていた。

 

 

 

ーーーーーー

 

 

 

 一方、プラントでは暗がりの中で評議会が開かれ、ギルバート・デュランダルの提案に多くの者が頷いた。

 

 

 

「ーーありがとう、皆さん。今回のベルリンの街周辺都市の被害は尋常ではない。こんな事をする連合ーーいやブルーコスモスを我々は許してはならないーー!」

 

 

 

 この演説を静かに見据えるのは、まだ議会に入って1年の新入りにして、ザフト軍エースの称号を持つ少年。

 

 

 

 イザーク・ジュールだった。

 

 

 

「確かに、ベルリンの街やその周辺での虐殺は看過できるものではないが」

 

 

 

 イザークは先ほど見た映像を改めて頭の中に浮かばせる。

 

 

 

「おかしい。連中の部隊にはアークエンジェルの同型艦と連合製だという巨大な人型MA。そして見たことのない無数の不気味なMS達だ。議長はあの連中を連合の部隊としたいようだがーー! 戦艦とMAはともかく。あの無数のMSについて何故言及しない?」

 

 

 

「イザーク! 声に出てるって!!」

 

 

 

 隣の傍聴席にいたディアッカが、イザークを慌てて抑える。

 

 

 

「ーー何を焦ってんのよ、ディアッカ。一々、そんなこと気にしてたら、胃に穴があくわよ」

 

 

 

「ミリィ、久しぶりに連絡をくれたかと思えば、こんなムードもクソもない所へ連れて行けなんてなーー。しかも、イザーク込みかよ」

 

 

 

 ディアッカに苦言を呈したのはショートヘアの茶色がかった金髪に活動的な服装の娘、ミリアリア・ハウだった。

 

 

 

「せっかくのデートが、まさかイザークに邪魔された挙句にミリィまで乗りきなんてなーー」

 

 

 

「あんたが余りにしつこいから呼び出しに応じてやっただけ。別にデートとかじゃないから。イザークの話は渡りに船だったわ」

 

 

 

 ボヤくディアッカにミリアリアが容赦ない一言を告げた。

 

 

 

数時間前

 

 

 

 何日も前からプラントの映画のチケットの話をミリアリアにしていたディアッカ。

 

 ようやく実を結び、いざデートという所で携帯が鳴り、イザークからの招集命令があった。

 

 

 

「ーーディアッカ! 議長がベルリンを襲撃された件で臨時会議を開くらしい。貴様も来い!!」

 

 

 

「ふざけんな!! 何でせっかくのデートに仕事入れてきやがる!!? そもそも、1年生の癖に投票権も発言権もないだろうが、おまえ!!」

 

 

 

「傍聴席に着く権利はある。今後のプラントと地球に関係してくるかもしれん」

 

 

 

 真面目なイザークの言葉を聞いて、頭を悩ませるディアッカの二の腕をつかみ、ミリアリアが目を光らせた。

 

 

 

「ねえ、イザーク。私も参加していい?」

 

 

 

「ーーお前な、デートはどうすんだよ? つーか、プラントの議会に部外者のお前がーー」

 

 

 

 ディアッカがはっきりと断わろうとした時、イザークが不敵な笑みと共に言った。

 

 

 

「ーー構わんぞ。むしろ、俺としては部外者のお前に客観的な意見を求めたかった。ミリアリア」

 

 

 

「ーーおい、イザーク!!」

 

 

 

 あっさりと乗り気なイザークにディアッカの目が回る。隣で自分の腕を掴んでいるミリアリアは、これ以上ないくらい魅力的な笑顔を見せた。

 

 

 

「ありがと、イザーク。どっかの否定してばかりの馬鹿者より余程話がわかるわ」

 

 

 

「その何処かの馬鹿者が誰かは分からんが、中々に役に立つ男だ。捕まえて損はないぞ?」

 

 

 

「ーー知ってる」

 

 

 

「だろうなーー」

 

 

 

 不敵な笑みを浮かべ合う2人に、思わずディアッカはゲンナリとする。

 

 

 

 その後、ディアッカはミリアリアに半ば引きずられるように議会に連れて行かれたのだった。

 

 

 

 思い出していると、デュランダル議長の演説は続いていた。

 

 巨大なスクリーンには、2隻の連合の戦艦が並んでいる。ミリアリアの目が鋭く細まった。

 

 

 

「見てください。これが2年前の連合の戦艦『アークエンジェル』と『ドミニオン』です。そしてーー」

 

 

 

 写真に出されたのは、アーモリーワン襲撃の際に現れた黒塗りの戦艦『ガーティールー』。更にベルリンでの戦闘で現れた『アズラエル』と名乗った戦艦だった。

 

 

 

 比べるまでもなく、この4隻の戦艦はよく似ている。

 

 

 

 ざわざわと騒ぎ出す議会。

 

 

 

「この写真をご覧いただければ分かると思います。ーーつまり、セカンドステージ強奪のテロリストも、ベルリンを襲った部隊も連合の。いや、ロゴスの部隊なのです!!」

 

 

 

 ミリアリアとイザークがロゴスの単語にピクリと反応した。

 

 

 

「ロゴスって?」

 

 

 

「ーーロゴス。軍事産業複合体にして、裏からブルーコスモスを操る秘密結社だ。噂の域を出ない正体不明の団体だがーー」

 

 

 

「今回の部隊はロゴスに命じられたブルーコスモスが編成した部隊、か。でもーーおかしいわよね。連合の戦艦とMAはともかく。見たことない無数のMSは、連合にしては技術体系が違い過ぎる」

 

 

 

 傍聴席で堂々と意見交換する2人にディアッカは周りに気を配りながら、胃を痛める。

 

 

 

「なあ、今じゃなきゃダメか? その話し合い」

 

 

 

「馬鹿ね。今だから意味があるのよ。この程度の会話で何かが動くなら、図星もいいところよ」

 

 

 

 ミリアリアの言葉にイザークが続ける。

 

 

 

「普通ならば、あのMSが何処の部隊かを確認するのが最優先のはずだ。だが、議長はブルーコスモスの。ロゴスの仕業だと断定した。連合の戦艦とMAの件で充分だと判断したのか? 今まで慎重だったのに、急きはじめたか」

 

 

 

「もう一つ、あるわ。今の映像は改ざんされてる。後で見せたげるけど、ベルリンの街の戦闘でキラ達アークエンジェルや謎のMSが一騎当千の闘いをしてたのよ。多分、ザフトが先日報じたガンダムファイターってヤツね」

 

 

 

「ふふん、やはり持つべきは友人だな。なあ、ディアッカ」

 

 

 

 やたらと気の合う2人にディアッカはウンザリとした表情になっていた。

 

 

 

「へいへいーー」

 

 

 

「気になるのは、このMAーー。この後、ザフトのMSやらガンダムファイターの機体にそっくりになるのよ」

 

 

 

「はあ? 機体が変わるって?」

 

 

 

「原理は分からないけど、変わったわ。なんだが、不気味なのよね。この部隊ーー」

 

 

 

「…まさか、イザーク?」

 

 

 

 突如、ディアッカの頭に閃くものがあった。

 

 

 

 ユニウスセブンの破壊の際に現れた触手のような緑のコード。

 

 

 

 プラントの巨大な質量を消しとばした機体。アレも光と共に変化していた。

 

 

 

 そう、ガンダムファイトに現れた機体の一つ。

 

 

 

 ゴッドガンダムに。

 

 

 

「デュランダル議長は、何かを知ってる。もしかしたら、アーモリーワンからの一連の出来事も。調べてみる価値はありそうだな」

 

 

 

「協力させてもらうわね。私も故郷がピンチみたいだし」

 

 

 

 イザーク達の話がまとまり、視線を議長に戻すと、彼は更にモニターに映し出した。

 

 

 

 アークエンジェルだ。その戦艦のカタパルトから、テロリストに奪われた機体ーーカオスが飛んだ。

 

 

 

「ーー!! おい、これはーー!!」

 

 

 

「なんで、このタイミングで出しやがった!?」

 

 

 

「ーーこれが、議長のシナリオってワケね。自分にとってアークエンジェルが邪魔になるって判断したのよ」

 

 

 

 ミリアリアからアークエンジェルの加勢を聞いていたイザーク達の目が強張る。

 

 

 

「ご覧ください。アークエンジェル、先の大戦で終戦に導いた船が、まさかロゴスと繋がっていたとはーー」

 

 

 

 デュランダルの言葉に周囲がざわめく。

 

 

 

 彼は更に告げた。

 

 

 

「この争いを止めるため、まず私はロゴスの手先と成り果てたアークエンジェルの排除を宣言しますーー!」

 

 

 

 議会が、大きく揺れた瞬間だったーー。

 

 

 

 

 




 みなさん、お待ちかね〜!!

 プラントからの命令でアークエンジェルを撃たなければならなくなったミネルバ。

 シュバルツとアスランは、ミネルバからの退去を余儀なくされます。

 はたして、シンは?

 キラは、この残酷な運命を受け入れるのか?

 次回! 機動武道伝GガンダムSEED Destiny 第52話に!

 レディー、ゴー!!
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