新機動武闘伝 GガンダムSEED Destiny   作:カンナム

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 みなさん。

 キョウジとデュランダルの交渉はお互いに痛み分けに終わりました。

 しかし、キョウジの正体を悟ったデュランダルがDG細胞の特性を学ぶために、デビルズサンクチュアリを仕掛けてきたのです。

 はたして、キョウジ達はオーブに無事に帰れるのか!?

 それでは、ガンダムファイト!!

 レディイイイイイッ!! ゴォオオオオオオオッ!!


第54話 どちらが悪魔か?キョウジとデュランダル

 

「ーー貴方のパソコンを調べさせてください。もちろん、全てね」

 

 

 

 薄暗がりの議長の執務室に、キョウジの声が響いた。

 

 

 

 隣に座るカガリは、不安そうにただキョウジを見るだけだ。

 

 

 

 無理もない。

 

 

 

 今でこそキョウジがデュランダルを押さえている状況だが、セイラン家とブルーコスモスの癒着という事実がなくなったわけではないのだ。

 

 

 

 それでなくてもキョウジのしていることは、一つ間違えれば身を滅ぼすものだ。

 

 

 

 仮にキョウジの指摘していることが全て正しいとすると、黒幕は全てデュランダルということになる。

 

 

 

 裏事情に明るすぎるキョウジをデュランダルがこのまま放っておくとはカガリには思えなかった。

 

 

 

「なるほど。私のパソコンを調べる、と?」

 

 

 

「ええ。プラント最高評議会議長のパソコンを調べさせていただきだい。プラント最高の権力を持ち、評議会の全てを管理するあなたのパソコンをね」

 

 

 

「……それは無理だな。機密情報が多々ある、私個人の意見ではどうにもできない」

 

 

 

 微かにデュランダルの声色が落ち、黒髪の軍人サトーと秘書のサラの表情もなくなる。

 

 

 

「オーブの客人、あまり無礼な真似は辞めていただこう」

 

 

 

「少々横暴ではありませんか、キョウジ様?」

 

 

 

 二人の言葉に、キョウジは穏やかな笑みを浮かべたまま答えた。

 

 

 

「ーー確かに。自分でも横暴だと思いますよ。ただし、先ほどのデュランダル議長の発言も横暴が過ぎると思いますが……」

 

 

 

「私の発言が横暴、かね?」

 

 

 

「ええ。セイラン家の癒着問題もまた、こちらで調査が必要な話です。この場で簡単にお答えできる話ではないはずですが?」

 

 

 

「なるほど。つまり君が議長席のパソコンを調べるのを諦める代わりに、私にもセイラン家とブルーコスモスの癒着の事実に目を瞑れと?」

 

 

 

「まさか。膿は出さなければなりません。いずれ、ね」

 

 

 

 キョウジはそう答えながらテーブルに出されたコーヒーを一口啜り、告げる。

 

 

 

「今は、その時期ではないと?」

 

 

 

「膿を出すには、まず膿を知らなければなりません。出すべき膿と出してはならない膿、膿にも時期があります」

 

 

 

「…ほう?」

 

 

 

「ある程度化膿し、白く染まった膿は適切な処置を施すことで綺麗に治りますからね」

 

 

 

 フランクにほほ笑むキョウジにデュランダルは静か微笑み返す。

 

 

 

 まるで親友のような雰囲気だが、この場に満ちているのは緊張感だった。

 

 

 

「なるほど。今回は双方痛み分け、か」

 

 

 

「いいえ。セイラン家とブルーコスモスの資料を頂けて感謝します」

 

 

 

 言いながら、キョウジは提示された資料をカバンの中に入れる。

 

 

 

「……端末番号の資料は必要ですか?」

 

 

 

「その紙を処分したところでデータを消すわけはないだろう? お互いね」

 

 

 

 この言葉にキョウジは微笑みを返すと、スクリと立ち上がった。

 

 

 

「行きましょうか、カガリ代表」

 

 

 

「え?」

 

 

 

 キョウジの唐突な言葉にカガリがきょとんとして返すが、腕を取られて優しくではあるが立たされる。

 

 

 

「議長は俺達のことを分かってくれましたよ」

 

 

 

 

 

 その言葉にカガリは、思わずデュランダルを見つめると彼は苦笑するだけで留めている。

 

 

 

「……ですよね、議長?」

 

 

 

「ああ。ところで、キョウジ君。君は、ベルリン基地を襲った真犯人を知っているのかな?」

 

 

 

「ええ。ロゴスですね」

 

 

 

「ウルベ・イシカワとウォン・ユンファとは誰のことかね? キョウジ・カッシュ君」

 

 

 

 ぴたりとキョウジの動きが止まった。

 

 

 

 これにデュランダルは口の端を歪めて笑みを強める。

 

 

 

「やはりそうか。ドモン・カッシュにシュバルツ・ブルーダーがこの世界に居たのだ。君がいないことの方がおかしい。考えてみればね」

 

 

 

(Dが「細胞の支配権」を私に託したために「彼の世界」の情報を細胞から引き出さなければならなくなったのが災いして、先手を取られたか。しかし、考えようによっては好都合だ)

 

 

 

 はたしてキョウジは、自分の姓(であるカッシュを名乗らずに相手にバレたこと)に反応したのか。

 

 

 

 それとも、ウルベとウォンの名前に反応したのか。

 

 

 

 デュランダルは、これをどう取ったのだろうか。

 

 

 

「あなたなら、一々言わなくても調べられるのでしょう?」

 

 

 

「やはり、そうなのだね? ならば私と来たまえ。君も彼らの恐ろしさを知っているはずだ。共に世界を害する悪を倒すためにもーー」

 

 

 

「あいにくと、俺は正義の味方を名乗れる器じゃない。もちろん、貴方も」 

 

 

 

 はっきりと拒絶した。

 

 

 

 これにデュランダルが目を細める。

 

 

 

「俺はあくまでプラントと交渉します。交渉相手は貴方個人ではない」

 

 

 

「……残念だよ、キョウジ君」

 

 

 

 キョウジはデュランダルに背を向けて、出口に向かって一歩踏み出した。

 

 

 

 その時だった。

 

 

 

 プラントの宇宙港に駐留しているオーブ製のシャトル近辺で爆発が起こった。

 

 

 

 その様が、議長室のモニターに映し出される。

 

 

 

 シャトル周辺の宇宙宙域に無数のMSーーザクが現れたのだ。

 

 

 

「ーーな!? どういうことだ、議長!!」

 

 

 

 カガリがデュランダルに振り返り、怒鳴りつける。

 

 

 

 対峙するデュランダルは席を立つこともなく、静かにこちらに背を向けたままのキョウジを見据えている。

 

 

 

「申し訳ない、姫。今から模擬戦を行う予定でしてね。急遽こちらに姫が来られたので、中止するよう伝えるのを忘れてしまっていたようです」

 

 

 

「すぐに辞めさせてくれ!! このままじゃ、オーブのシャトルが!!」

 

 

 

 カガリが頼み込む前に、キョウジが手で彼女を制する。

 

 

 

「ーーキョウジ?」

 

 

 

 キョウジの目元は前髪に隠れてカガリからは見えない。

 

 

 

 しかし、その口元が三日月のようにニィッと吊り上がったように見えた。

 

 

 

 彼は静かにカガリを自分の後ろに回すと、議長の方を見つめた。

 

 

 

 その際、サトーの表情が強張り、サラの方は青ざめている。

 

 

 

 唯一、デュランダルだけが笑みを強くしていた。

 

 

 

「目的はーー?」

 

 

 

 信じられない程、冷たい鋭利な刃物のような声色。

 

 

 

 それは、凶気を孕んでいる。

 

 

 

 悪魔のごとき凶の気を目から放ち、鋭利な刃物のように弧を描く口元。

 

 

 

 凶笑ーー。

 

 

 

「Dと同じ気だな……。やはり君は彼の生みの親、か」

 

 

 

「無駄口を聞くつもりはない。ーー要件を話せ」

 

 

 

「簡単なことだよ。私と勝負をしよう、キョウジ君」

 

 

 

「勝負だと……?」

 

 

 

 キョウジの視線が議長を射抜く。

 

 その威圧感に、サトーの背筋が凍った。

 

 

 

(デビルガンダム様……っ!)

 

 

 

(気づいたかね、サトー?)

 

 

 

 デュランダルの視線に気づいたサトーは、小声で問いかける。 

 

 

 

(まさかっ! この男もーー)

 

 

 

(間違えているよ、サトー。正確には、この男が、だ)

 

 

 

 デュランダルは視線をキョウジに戻し

 

 

 

「そう、君こそが人とDG細胞の融合体。Dの片割れ。……そうだろう? キョウジくん」

 

 

 

「俺の質問に答える気がないのなら、この場であんたらを拘束させてもらうぞ」

 

 

 

「姫のいるまえで、きみがそんな無謀なことをするとは思えないな」

 

 

 

 この答えにカガリが声を張り上げる。

 

 

 

「キョウジ! 私にかまうな!」

 

 

 

「そういうわけにはいかないでしょう、彼はオーブの参謀なのですから。オーブの代表であるカガリさまが傷を少しでも負えば、彼は参謀としての地位を追われてしまうでしょうね」

 

 

 

 デュランダルが訳知り顔で語りながら、カガリを笑い。キョウジを見つめる。

 

 

 

「そこでだ、キョウジくん」

 

 

 

 デュランダルとキョウジを隔てる卓上が輝きはじめ、デスクに内蔵されている立体モニターが宇宙図を創り出した。

 

 サラが箱を手に一つずつ持ち、片方をデュランダルの席のまえに、もう片方をキョウジの席のまえに置く。

 

 デュランダルはその箱の中から駒をつまみあげると、キョウジにさらした。

 

 

 

「チェスもどきだが、私の考えた新しいゲームだ。このポーンを置くと」

 

 

 

 卓上の宇宙図にカガリたちをこの場に連れてきたシャトルが映った傍に、デュランダルは駒を置いた。

 

 外を映し出す議長室のモニターに青白い光の粒子が現れ、一体のMSを形成する。

 

 そのMSはゴッドガンダムを模したトリコロールの機体。

 

 

 

「こ、これはっ、連合のクルセイダーズを破った部隊……!」

 

 

 

 カガリが思わず目を見開く。

 

 

 

「デビルズサンクチュアリ。この聖域のなかには分子レベルまで分解したとある細胞がありましてね。それらを駒を置くことによって個体化させることができるのです」

 

 

 

「なっ……!? そ、それがザフトの防衛部隊の正体かっ!」

 

 

 

「敵から見れば、いきなりMSが現れたように見える、ある意味反則な技ですね。無人機ではありますがリモートすることも可能です。ーーこのように」

 

 

 

 モニターに映るゴッドガンダムもどきがビームライフルを構える。その銃口が、オーブの護送艦を向いていた。

 

 

 

「よせっ!」

 

 

 

 カガリの制止むなしく、放たれるビーム。暗黒空間を鋭く穿つ一条の光は、シャトルの脇を通りがかった隕石を粉々に打ち砕いた。

 

 

 

「どうです、正確でしょう? これが三十個あります」

 

 

 

 デュランダルは楽しそうに言う。

 

 自分の作り出したシステムに絶対の自信があったのだ。

 

 

 

「チェスもどきだと言ったな? つまりチェス盤を模した、無人MSでの団体模擬戦か」

 

 

 

「さすがは姫。飲み込みが早くて助かります」

 

 

 

「狙いは何だ!」

 

 

 

 カガリの鋭い詰問にデュランダルは片眉を上げながら言った。

 

 

 

「いま姫たちに地球に戻られると、少々やっかいでしてね。セイラン家を潰せなくなる」

 

 

 

「なっ!? 私たちがやると言っているだろう!」

 

 

 

「潰せないでしょう。なぜならば、政治家のほとんどはセイラン派だ」

 

 

 

 デュランダルの確信に満ちた言葉。

 

 

 

 分かってはいたが、ザフトの異常なまでのこちらに対する情報収集力にカガリも思わず歯ぎしりする。 

 

 

 

(セイラン家のあり方や癒着問題だけじゃない。私とオーブ政治家達との距離まで把握している。ここまで知られているなんて……!)

 

 

 

「それに。私がここで動かなくとも、あなたがたを足止めしているだけで勝手にセイランは動くでしょう。破滅の道にね。

 

 そうすれば、証拠だのなんだのと言わなくて済む」

 

 

 

(ユウナたちが……本当にそんなことを?)

 

 

 

 議長の言葉に、カガリも不安げな表情になる。

 

 

 

 今までは信じていた。

 

 

 

 やり方は違えど、オーブの為に行動しているのだと。

 

 

 

 だが、これはーー。

 

 

 

「カガリ。悪いが議長の相手をしてくれないか」

 

 

 

 そんなカガリの思考を切らせたのは、キョウジの言葉だった。

 

 

 

「えっ?」

 

 

 

「ゲームは得意だろ」

 

 

 

「で、できないことないけど……」

 

 

 

「頼む」

 

 

 

 キョウジは意識しているのかは分からないが、カガリの方を見ようとしない。

 

 

 

 カガリは、キョウジの瞳に凶気が宿っているのを何となく察しているが、敢えて口に出さなかった。

 

 

 

 かわりに普段通りの調子で話す。

 

 

 

「いいのか、キョウジ!?」

 

 

 

「ああ。どのみち、勝たなきゃ帰してくれまい。……そうだろ?」

 

 

 

 話題を振られた議長は、満足げに鼻を鳴らした。

 

 

 

「想像にお任せするよ」

 

 

 

 指を組んで余裕の姿勢を崩さない議長にカガリは一つ頷くと、席に着く。

 

 

 

「それぞれ手駒は30。どこに配置してもかまわないーーと、言いたいがそれでは少々漠然としすぎかな?」

 

 

 

 卓上の宇宙図に、赤と青のラインがそれぞれ引かれた。

 

 

 

「青の領域内ならば姫はどこにでも出すことができる。反対に、赤の領域内ならば私はどこにでも駒を出すことができる。ただし」

 

 

 

 デュランダルは一つ、色の違うポーンを手にした。

 

 

 

「このポーンキングは、最初からこの戦線中央最奥面に置かねばならない。つまり、自分の手元を初期配置とする。言うまでもありませんが、これを取られたらゲームオーバーです」

 

 

 

「こ、ここだな」

 

 

 

(なるほど。戦略のシミュレーションゲームか……。問題はチェスと違って隣り合えば必ず勝てるってわけじゃないことだな。より実践的ってわけか。いや、すでに実戦に投入されているんだったな。

 

 私が負ければ、長い時間ここに拘束されてしまうことになる。なんとしても勝利しなければ!)

 

 

 

「ポーンの配置はこのライン上なら自由なんだな?」

 

 

 

「そうです。そのラインより手前であればどの領域に配置してもかまいません。

 

 もっとも、中立地帯ーー色の付いていない宙図がほぼ七割ですが。この広大なマップをどう利用されるかはプレイヤーの腕次第ということです」

 

 

 

「っ!」

 

(シャトルを人質にしていることまでゲーム感覚か……!)

 

 

 

 不快気に歯を食いしばり、カガリはデュランダルを睨みつける。

 

 

 

「動かし方はどうするんだ?」

 

 

 

「基本的にはオートマティックです。識別信号の違いを見つけ、敵と判断した相手に突き進むようにしています。もちろん、どれかを遠隔操作すれば性能も格段に上がります。

 

 もっとも、制御できる数を増やせば増やすほど、操作するプレイヤーの腕が問われてしまいますがね。

 

 チュートリアルを始めましょうか? 代表」

 

 

 

 この申し出にカガリは頭を横に振って操作パネルに手を置いた。

 

 

 

「いや。実戦で覚える」

 

 

 

「説明書は読んだほうがよいかと思いますが?」

 

 

 

「そんな暇はない!」

 

 

 

 ムキになって答えるカガリに微笑を一つ返すとデュランダルは静かに、システムを起動させた。

 

 

 

「では始めましょう」

 

 

 

 卓上に青い光の粒子が満ちていく。

 

 

 

「デビルズサンクチュアリ、開幕」

 

 

 

 デュランダルの宣言と同時に、それぞれ30機のポーンが模擬戦宙域に現れる。

 

 

 

 カガリが赤色を基調とした、デュランダルは青色を基調としたトリコロールの機体だ。

 

 

 

 ポーン達は右手にライフル、左手に盾を装備している。

 

 

 

 キングポーンのみ、盾もライフルも持たずにオルトロスと呼ばれる長距離狙撃用ロングライフルを装備していた。

 

 

 

 デュランダルの布陣は、30機の機体をそれぞれ前衛と後衛に分け、20機を横一列に並べ、残りの10機をキングの周辺に配置している。

 

 

 

(MSの編隊としては基本的な配置だ……。だけど基本だからこそ、これを打ち破るのは難しい。数の上で五分と五分。ならどうする?)

 

 

 

 カガリの方はキングの周りに30機すべてを配置した完全防衛体制である。

 

 

 

(これだけ強固な盾を作っておけば、同じ性能である以上、迂闊には攻めてこれない。

 

 とはいえ、時間稼ぎをするのは得策じゃない。

 

 こちらは、時間に追われる側なんだ。できることなら、短期で決着を着けたい)

 

 

 

 デュランダルのポーン達は前衛の編隊を組んだまま進行を始める。

 

 

 

(焦るのはダメだが、ウナト達の事もある。どうするか……)

 

 

 

 カガリはとりあえず防衛線を張ったのち、3体のポーンを前に出す。

 

 

 

(性能は同じなら、迂闊に攻めたほうが負ける!)

 

 

 

 ライフルを3体のポーンに放たせる、牽制用の緑色のビームが宙域に3本。

 

 

 

 これにあわせるようにデュランダル側からも、3体のポーンが前に出てきた。

 

 

 

 シールドで防がれる。

 

 

 

(ビームを弾く? 装備しているのはアンチビームコーティングか)

 

 

 

「ふふふ」

 

 

 

 盾を構える3機の後ろから、回りこむように6機のポーンが現れ、それぞれライフルを構えてカガリのポーン3機を落とす。

 

 

 

 同時に盤上のポーンの駒、3体が倒れて消えた。

 

 

 

「くそっ!」

 

 

 

(だがこれで分かったぞ……。やはり先手が不利だ。本来のチェスなら後手のほうが不利ということだが、実戦にあってはうかつな行動は死につながる。ここは慎重に……)

 

 

 

 正面からビームライフルを撃ち合う両陣営。

 

 

 

 しばらくしてカガリは気づいた。

 

 

 

(議長は編隊を組んでいたのに、正面からしか仕掛けてこないのか? これなら防ぎきれる。

 

 正面からくる攻撃はぬるすぎる。私と同じ初心者ならともかく、議長はこいつを使って、実際に連合のクルセイダーズを止めてるんだぞ。なにか手がーー?)

 

 

 

 そう考えたとき、左右に展開していたポーンが六機ずつ倒される。

 

 

 

「なっ!?」

 

 

 

(左右6機、合計12機だとっ!? いったいーー)

 

 

 

 見れば左右に展開されているデュランダルの機体がある。

 

 

 

(20機を前線に出していたはずっ。それを影にして、後列にいた10機を回り込ませていたのか!

 

 囲まれた!)

 

 

 

 集中砲火を浴びるカガリの部隊。

 

 

 

(こ、このままじゃっ……!)

 

 

 

 キングを守るために周囲を固めるも、アンチビームコーティングシールドが執拗な攻撃に保たずに次々とカガリのポーンは撃破されていく。

 

 

 

(ジリ貧だ……! どうすればいい?)

 

 

 

 やがてデュランダルのビームライフルの雨霰が止まる。

 

 見れば、三機のポーンと一機のキングのみがカガリに残されていた。

 

 

 

 

 

「姫、一度ギブアップされることをおすすめいたします。その布陣ではもはや、私に勝つことはできない」

 

 

 

「ぐっ!」

 

 

 

 デュランダルの余裕を持った言葉に、苦い顔をしながらカガリは抵抗しようとするも、横から待ったをかけられる。 

 

 

 

「カガリ。交代だ」

 

 

 

「えっ? こ、こんな状況でかっ!? はっきり言うが、もう詰んでるぞ!」

 

 

 

 焦るカガリにキョウジがニヤリと不遜に笑って答える。

 

 

 

「案外そうでもないかもしれんぞ」

 

 

 

「ポーン三機しかいないのに、どうやって戦うつもりかね? そもそもキングとて、ポーンと同じ性能しかないというのに」

 

 

 

「とりあえず、キングに名をつけるとするか」

 

 

 

「ん?」

 

 

 

 デュランダルの言葉を無視しながら、キョウジは不遜な笑みを浮かべたまま卓上に置かれたポーン3体とキング1体を名付けていく。

 

 

 

「キングはカガリだ。あと三機はーーそうだな。えー、左からキクチ、サカキ、サイトウ、と」

 

 

 

「な、何をやってるんだ、キョウジ? シャトルの乗組員の名前を付けたりして」

 

 

 

「……シャトルの乗組員だとて、戦うさ。オーブ軍に、脇役はいない」

 

 

 

 不遜な態度でありながら、どこか温かい言葉にカガリはキョトンとし、デュランダルは愉快気に手を叩いた。 

 

 

 

「ずいぶんと余裕だね。キョウジ君」

 

 

 

「余興ではないのか? あんた程度なら、これだけいれば釣りが来る」

 

 

 

 笑みかけるデュランダルに、不遜な笑みを浮かべてキョウジは返す。これに笑みを強めてデュランダルは語る。 

 

「傲慢だね。君の父上もそういうところがあったのかな? だから、親友に裏切られた」

 

 

 

「そう言うあんたは、世界にでも裏切られたか?」

 

 

 

 挑発のつもりで口にしたであろう言葉をあっさりと返されて、デュランダルは苛立ち交じりに睨みつけた。

 

 

 

「ーーなんだと?」

 

 

 

「無駄口を叩いてる暇はない、さっさと始めようぜ」

 

 

 

「いいだろうーー!」

 

 

 

 戦力差は30対3。どう考えても覆せるようなレベルではない。

 

 しかし。

 

 四方八方から放たれるライフルに、その場からわずかに動くだけですべて避けきってみせるキョウジのポーン。

 

 シールドを持たないキングもまた、オルトロスを両腕でしっかりと持ったまま紙一重で避ける。

 

 

 

 ポーンはデュランダル側のライフルを避けると同時にライフルを撃ち返し、撃破していく。

 

 

 

(ばかなっ! 私の動きが読まれているーーこんなことが!

 

 ……そうか。カガリ姫に最初にプレイさせたのは、私の動きを見るためか!

 

 だが、こんな短期間に見切ってくるとは)

 

「おもしろい!」

 

 

 

 キョウジの巧みな機体のコントロールぶりに流石だと笑いながらも、デュランダルは絶対の自信があった。

 

 

 

(だが数の差はすでに絶望的! キングを含めて四機では、この戦力差は覆せない!)

 

 

 

 デュランダルは展開していた部隊を一端集合させ、同時にライフルを構える。

 

 無数のライフルが雨霰と降ってくる。

 

 単騎同士ならば正確なコントロールをするキョウジのポーンが勝つが、この数に撃たれれば撃ち終わりすら狙えない。

 

 完全に防戦一方になる。

 

 

 

 それでもさきほどまでと違い、簡単には落とされない。

 

 あるときはシールドで、あるときではサーベルで切り払い、四機のキョウジの機体は雨霰と降るデュランダルの猛攻を防ぎきっていた。

 

 

 

(だがそれも時間の問題。こちらも徐々に展開しながら各個撃破していくのみだ)

 

 

 

 やはり数の上で圧倒的不利なため、徐々に追い込まれていくキョウジのポーン達。

 

 いや、30機あったデュランダル側のポーンを20機まで落としたキョウジの腕をほめるべきか。

 

 

 

「大言壮語を吐くだけのことはある。同じ数で戦っていれば、負けていたのは私の方だ。

 

 だがーー君の性格が災いしたね」

 

 

 

「デュランダルさんよ、あんたに一つ聞きたいことがある」

 

 

 

「何かな?」

 

 

 

 微笑みを浮かべるデュランダルにキョウジは最初から最後まで不遜な笑みを絶やさない。

 

 

 

「優勢と勝利はどこが違う?」

 

 

 

「なに?」

 

 

 

「分からないなら、次に会う時までの宿題にしておくぞ。今回は俺の勝ちだ」

 

 

 

「なにを馬鹿なことを」

 

 

 

 見れば、キョウジのポーンは二機がキングの両脇を支えるように立ち、三機のポーンのシールドを持った一機が前にでる。

 

 そのシールドを台座にして、ロングライフルを構えるキング。

 

 

 

(ザフト製のオルトロス……! キング用につけていた武装か。だが、いまさらそんなもので)

 

 

 

 無防備に踏み込んでくる敵陣営に向かってキョウジ・カッシュはこう言った。

 

 

 

「傲慢というのはな、『結果の伴わない自信』のことを言うんだ。覚えておけ」

 

 

 

 言葉と同時に大群に向かって引き金を、キングポーンは引いた。

 

 

 

 赤いビーム砲がオルトロスから放たれた。

 

 

 

(そんな距離からオルトロスを放ったところで、私のキングポーンは初期配置から動かしていない。いくら何でも届くわけがないだろう)

 

 

 

 その時、デュランダルは違和感に気付いた。

 

 

 

 オルトロスに緑色のコードが伸びていたのだ。

 

 

 

 それはDG細胞でできた触手。

 

 

 

 DG細胞製のMSであるデスポーン達ならばできないことではない。

 

 

 

 問題はその触手が何を意味するか、だ。

 

 

 

 触手はキングポーンの胸元ーーすなわちジェネレータから直結でオルトロスに結ばれている。

 

 

 

 左右を支えるポーン達からも触手が伸びている。

 

 

 

 前方で盾を構える一機からも。

 

 

 

 すべてオルトロスに繋がっているのだ。

 

 

 

(--まさか!?)

 

 

 

 MSのジェネレータに直結した作られたビーム砲は強力だ。

 

 

 

 それが4機分、フルパワーで放たれればどうなるかーー。

 

 

 

 単純に計算して威力や射程はフルチャージ分の4倍ーー。

 

 

 

「ーーしまった!?」

 

 

 

 強烈なビームが迫りくる無数のMSを飲み込みながら、一瞬でデュランダルが初期配置に置いたキングポーンをも飲み込んでいった。

 

 

 

 だが、強烈なビームはそこで終わらない。

 

 

 

 その先にあった砂時計型のコロニーの脇を通り過ぎていったのだ。

 

 

 

「キョウジ・カッシュ……!!」

 

 

 

「人質を取っているのが、自分たちだけだとでも思ったのか? デュランダル」

 

 

 

 不遜にして邪悪な笑みが、キョウジの顔に浮かんでいた。

 

 

 

 ーー BATLLE END ーー

 

 

 

 その文字が卓上に浮かび上がり、デュランダルの目が大きく見開かれる。

 

 

 

「身の程を知れ、デュランダル。貴様は正義の味方などではない。奴らと何も変わらん『傲慢』な男だ」

 

 

 

 鋭い瞳のまま、キョウジは静かにデュランダルを見据えてそう言った。

 

 

 

 そして瞳を閉じ、一つ息を吐くと先ほどまでの穏やかな瞳の青年に戻る。

 

 

 

「その力を完全に使いこなしているのか……!」

 

 

 

「力はただの力ですよ。それを振るうものが、力に溺れなければ自分の意思で動かすこともできる」

 

 

 

 キョウジは淡々とした表情で語る。

 

 

 

「お分かりか? 俺が貴方と交渉しない理由が」

 

 

 

「……!」

 

 

 

「心当たりがありませんか。貴方は本当に傲慢な方ですね」

 

 

 

 そういうと、キョウジはもはやデュランダルに興味を示すことなく背を完全に向けて、カガリを見据えた。

 

 

 

「行こうか。余計な時間を使った」

 

 

 

「ーーあ、ああ」

 

 

 

 キョウジは最後にこれだけを告げて去っていった。

 

 

 

「約束は守りますよ、お互いの為にも。必ずセイランの件を落ち着かせましょう」

 

 

 

 去っていったキョウジの背を見送った後、サラは眦を吊り上げて銃を懐から取り出す。

 

 

 

 サトーはそれを手で制し、デュランダルを見据える。

 

 

 

「……くくくくく、ははははははははははははは………!!」

 

 

 

 デュランダルは机の上で手を組んだ姿勢から前のめりになると、笑い始めた。

 

 

 

「で、デュランダル様ーー!」

 

 

 

 サラが手を差し伸べようとしたところで、その手を払いデュランダルは立ち上がった。

 

 

 

「ーー許さんぞ、キョウジ・カッシュ」

 

 

 

 その声は、今まで誰も聞いたことのない冷たい声

 

 

 

 腹の底からの怨嗟の声だ。

 

 

 

「私はどんな手を使っても、貴様を倒す。覚えておくがいいーー!」

 

 

 

 真紅の瞳は、暗い炎に彩られていた。

 

 

 

 

 




 みなさん、お待ちかね~!!

 ミネルバ隊についに下されるアークエンジェル抹殺指令。

 これに対抗するため、シュバルツはアークエンジェルとミネルバに一つの案を出すのです。

 一方、オーブでもセイラン家の不穏な動きが活発化していました。

 はたして、シュバルツやキョウジは、激動を迎えようとする世界をどう抑えるのか!?

 次回!
 
 機動武道伝Gガンダム SEED Destiny 第55話に!!

 レディー、ゴー!!
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