新機動武闘伝 GガンダムSEED Destiny 作:カンナム
今回のお相手は、地球にいたはずのジェントル・チャップマンとミケロ・チャリオット!!
彼らがドモン・カッシュとDを相手にファイトを仕掛けてきたのです。
一方で、ラクス達の方にもとんでもない事態が起こっていました。
それでは!!
ガンダムファイト!!
レディイイイイッ!! ゴォオオオオオオッ!!
モール街にて
無数の人影を殴り倒し、ひとり立つは赤いマントを羽織った青年。
彼は息すら乱すことなく周囲を見渡すと一つ言った。
「そろそろ出てきたらどうだ。それとも、このモールごとふっ飛ばしてやろうか?」
ドモンの言葉に、気配の主は静かに柱の影から現れた。
気品のある黒髪をオールバックにし、口ひげをたくわえた壮年の男。彼は、冷たく光る鋭い瞳でドモン・カッシュを見据える。
「お前は――!」
ここにいるはずのない男の登場にもドモンは微かに眉を上げるだけの軽いリアクションをする。
「久しぶりだな、小僧。こちらの気配を読むとは、相当腕を上げたようだ」
「あんたか、ジェントル・チャップマン」
ドモンは静かに腰を落として拳を握り、構えを取る。
対峙するチャップマンも、ゆっくりと拳を握って構える。
互いににらみ合う。動いたのは――、同時。
お互いに目にもとまらぬスピードで駆けだしあい、拳と拳をぶつけ合う。
「ほう……。相当腕を上げたようだな」
「そういうことだ。とぉおおりゃあああっ!」
不敵な笑みとともに宣言すると、ドモンの猛攻が始まった。
チャップマンも拳でさばきながら打ち返す。両者、ともに退かない。
互いに超スピードで移動しながら拳と拳、蹴りと蹴りをぶつけ合う。
無数の乱打戦のなか、お互いに申し合わせたかのように強烈な右ストレートを放ちあい、動きを止める。
「なるほど。デビルガンダムとのガンダムファイトを見せてもらったが、この俺が倒すに値するファイターになったようだな」
「フッ、あんたこそ! これが全盛期の三連覇をなしたガンダム・ザ・ガンダムの実力か……。相手にとって不足はないぜ!!」
互いに満足気な笑みを浮かべる。
「……では、存分に戦いを楽しもうか」
「いいだろう! キング・オブ・ハートの名にかけて!」
チャップマンはドモンに構えを取ったまま、右手の拳を解いて打って来いと手招く。
「貴様の新たなる技を見せてもらおう! 次元覇王流――だったか?」
「フン。ほえ面かくなよ、チャップマン!」
ドモンの足元から気が噴き出る。
青白い気の渦がドモンの周りを取り囲む。
そのまま、ドモンは地面を蹴ると一気にチャップマンとの距離をゼロにした。
目の前に一瞬で現れたドモンに、チャップマンも反応する。
「次元覇王流! 聖拳突きぃいいいい!」
「甘いっ!」
放たれた右の正拳突きに、拳の付け根を左手で払って流し、チャップマンの強烈な右のカウンターが放たれる。
だが。
ドモンの顎を捉えるはずだったそのカウンターは、完全に空を切った。
「なにっ!?」
かわされたと見るや、チャップマンは咄嗟にその場からバックステップする。同時に、目の前の空間をドモンの左正拳突きが刈り取った。
即座にチャップマンはその打ち終わりを狙い、右のフックをカウンターで合わせる。
だが既にドモンはそこにいない。
咄嗟にチャップマンは左のガードを顔の横に上げる。そこにドモンの右回し蹴りが炸裂した。
「ぬうぅっ!」
「次元覇王流、聖槍蹴りぃいいい!」
ガード越しに歯を食いしばるチャップマンが後方へ弾き飛ばされる。
だが彼は、咄嗟に自らバックステップすることで蹴りの威力を弱めていた。
鋭い狩人の目が、前方から驚異的なスピードで迫りくる戦士の目を見つめる。
(単純な戦闘能力ならば、この俺をも凌駕するか……ドモン・カッシュ! いいぞ……。これこそが真の戦いというものだ!)
暗い光を瞳にたたえながら、チャップマンは口元を冷酷にゆがめた。
対するドモンもまた、燃える瞳をそのままに不敵な笑みを口元に貼り付けている。
両者の影が、交差した。
強烈な拳と蹴りの交換。互いの攻撃を打ち、さばき、返す。
地面を、壁を、屋根を蹴って二人の超人は所狭しと駆け回る。
次に両者が立ち止まったのは、モール街の広間のど真ん中だった。
バキィッ
拳と拳をさらにぶつけ合う。そのときだ。
「むっ!?」
「なにっ!」
二人に向かって放たれる無数の銃弾。両者咄嗟に離れて地面を転がりながら、避ける。
壁際に隠れたとき、ロケットランチャーが二つ、ドモンとチャップマンの身を隠した柱に放たれていた。
巨大な爆発が広がった。
煙が晴れたのち、現れたのは重武装をしたザフトの軍人たちだ。
褐色の肌に鼻の上に刀傷のようなものを付けた黒髪の男は、油断なく、神経質に周りを見渡す。
「やりましたか、隊長」
「いくら超人とは言え、あれほどの敵を相手にしていたのだ。我々の気配など感じている暇もあるまい。作戦は完了した。帰還するぞ」
「ハッ!」
その男の名はサトー。かつてユニウスセブンを地球に落下させようと試みたテロリストの首魁である。
「まさかこんなところに我ら以外のDG細胞の人間がいようとはな。だが、やつが何者かはわからんが、ドモン・カッシュを抑えてくれてちょうどよかった。化け物同士、茶番を演じている間に命を落とすとは。デビルガンダム様の宿敵と言うには、あまりに間抜けな最期よ」
「フンっ。たしかにそれで死んぢまったらレインやチボデー、Dにはなんて言われるかわかったもんじゃないな」
「なにっ!」
声のしたほうをサトーが振り返ると、まったく無傷のドモン・カッシュがそこに立っていた。
「隊長!」
「ぐああっ!」
部下たちの悲鳴が聞こえ、振り返ると、チャップマンによって見る間に全員が叩き伏せられていた。
「ふざけた真似をしてくれたな。戦士の戦いを邪魔したのは罪深いぞ」
「ば、バカなッ!? 無傷だとっ!」
「貴様ら軍人はいつもそうだ。自分たちの常識にとらわれ、それ以外のことを簡単に見逃す。貴様らごとき国の狗が、誇り高き戦士の戦いを汚すな!」
強烈な殺意をまき散らしながら、チャップマンがサトーに近づこうとする。
「待て、チャップマン。その男には聞きたいことがある」
「このような狗に、なにを問うというのだ? それが我々の戦い以上に大事だとでも? 戦士としての心構えを忘れたか、ドモン・カッシュ!」
「お前の都合で生きているわけじゃないんでな。俺も」
まるでサトーを脅威と感じていない二人のやりとりに、彼の自尊心は著しく傷ついた。
「き、さまらっ! 舐めるのも大概にしろおぉおおっ!」
吠えると同時に手榴弾を投げつける。瞬間だった。空中で爆散する手榴弾。
爆風に吹き飛ばされるサトー。
「ぐあああっ!」
その熱と衝撃に悲鳴を上げる。
「な、なにがっ……!」
地面に叩きつけられ、見上げるとロングライフルを右手一本で構える男がいた。
こちらを見下ろす冷酷なまなざし。
ライフルの銃口は確実にサトーの眉間でぴたりと止まり、男ーーチャップマンはまばたきすらしない。
特殊訓練を受けているサトーだからこそ、戦慄した。
同じ土俵に立たされたことで、目の前の男が殺戮機械だと判ったためだ。一切の隙が見当たらない。
冷や汗が噴き出て頬を伝う。
「どうした? 自分のプライドのほうが命よりも大事ではないのか? だから俺に挑んだのではないのか? それとも、自分の挑んだ相手がどのレベルかすらわからんのか?
ならば貴様は、狗畜生にすら劣る。――失せろ、クズめ」
容赦のない言葉にサトーは歯を食いしばり、チャップマンを睨み上げる。
「その前に、お前が俺達を狙ったのは、あのギルバート・デュランダルってやつの差し金か?」
その横から問いかけるドモンにサトーはただ睨み返すのみだった。
「狙いは――ラクスか! チッ! チャップマン! 勝負の続きはあとだ!」
それだけを言うと、ドモンはその場を去っていった。
「フンっ。この王者を相手に指図するとは。ずいぶんとデカくなったものだ、小僧」
ライフルを背中に収め、チャップマンは葉巻に火をつける。
その場にうずくまるサトーに見向きもせず、王者は悠然と去っていった。
残されたサトーは、うずくまったまま屈辱と怒りに震えた。
「ぐ、ぅうう、ぅうううう! お、の、れぇええええええっ!」
サトーの慟哭が、無人のモール街に響いた。
一方で、Dもまた戦いを展開していた。
ショッピングモールの裏手。
少し薄暗い通り道。
彼の目の前にはパンクルックをした赤い髪をトサカのように逆立てた鷲のような尖った顔をした男が立っている。
「殺気を送っていたのは、貴様だったか。ミケロ・チャリオット」
Dは凶悪な笑みを浮かべてミケロを見下ろしながら言う。
対峙するミケロは、不機嫌に唾を地面に吐き捨てると言った。
「ドモン・カッシュじゃなくて、テメエのような紛い物が来るのかよ! ケッ」
そのまま斜に構えを取り、ミケロは残虐な笑みを浮かべた。
「だがテメエをぶっ殺して、その力を手に入れれば。今度こそドモンの野郎を殺せるなぁ…!!」
「ククク、面白い。やってみるがいい、ミケロ」
互いに凶悪な笑みを浮かべる。
相手を倒し、食らいつくすためだけの、獰猛な肉食獣のような笑み。
それを顔に貼り付けてDは右の拳を、ミケロは右の蹴りをぶつけ合う。
強烈な衝撃波が巻き起こり、周りのものを吹き飛ばしながら、両者の気と気が爆発した。
「らしくねえんじゃねえのか、デビルガンダムよぉ!? あの小娘どもを庇って一人で俺の前に出てくるなんてよぉ!! それとも、生体ユニットにでもするつもりなのかぁっ!! ヒャハハハハハハッ」
「ーー相変わらずの蛙鳴蝉噪ぶりだ。雑魚が!!」
ミケロの言葉に淡々とした表情だったDの顔が凶悪に歪む。
口元を吊り上げ、凶気を放つ赤い瞳をミケロに向ける。
「らしくなってきたじゃねえか!! そうだ、それでこそ!! 悪魔のガンダムだ!!!」
狂気の笑みを浮かべて、ミケロは叫ぶ。
互いに攻撃を繰り出し合いながら、捌きながら、高速で移動しあう。
「貴様ごとき三下が語る「悪魔」か。穢悪を貫くことしかできぬ貴様が、我の目指す「魔」を語ると?」
「何が、魔だ!? 気に入らねえ奴をぶち殺し、欲望のままに奪う!! それが、悪だろうが!!! くだらねえルールをぶち壊す、悪こそ「力の象徴」じゃねえか!!!」
ぶつかり合う力と力。
蹴りと拳。
多彩な蹴りを披露するミケロ・チャリオット。それを力で相殺するD。
両者の実力は明らかだった。
(くそったれがぁ! この野郎、徐々に俺の攻撃を見切ってやがる……。まさか、進化してるってのか?)
「どうした、ミケロ。貴様の語る「力の象徴」。こんなものか?」
「ぬかせえええええ! 銀色のォオオ! 脚ィイイイ!」
大きく足を振りかぶり、気弾を放とうとして、目の前に迫りくる拳に叩き伏せられる。
「ぐふぁっ! ……なんてパワーだ!」
倒れ伏したミケロを容赦なく踏みつけるD。
「ぐぅ、ぁっ! デ、ビルッ、ガンダムッ……!」
「この程度でドモンと戦おうだと? 笑わせてくれる。所詮貴様は三流よ」
「デビルガンダムゥウウウウウ!」
「ん?」
ミケロの気が爆発。
踏みつけられていた姿勢から一気に立ち上がると、Dの左頬に向かって右の銀色の脚が振り抜かれた。
炸裂音が響き渡る。
「うっ!」
ミケロが驚きに固まりながらDを見つめる。Dは無造作に左腕を顔の横に上げ、ミケロの蹴りを完全に受け止めていた。
「格の違いが分かったか? 貴様は所詮、この程度だ」
Dの右拳に赤い色の気が宿り、ミケロの顔面を貫いた。
宙で縦に一回転し、ミケロの長身が派手に地面を跳ね、動かなくなる。
そのミケロを見下ろしながら、Dは述べた。
「貴様の語る悪など、ただの欲望に過ぎぬ。それでは奴の宿敵足りえん。我と貴様では目指す場所が違うのだ」
そう告げ、背を向けた。
(それにしても、モール街の気配がおかしい。デュランダル……なにを企んでいる?)
Dは倒れ伏したミケロをそのままに、その場を去っていった。
モール街の一区画にて。
ザフトの軍人とゾンビ兵を率いた一組の男女が、ラクスとダコスタのまえに現れた。
ラクスにとっては見知った二人である。
「貴女は、フレイ・アルスターさんなのですか?」
「どう返してほしい? ラクス・クライン」
「どう、とは」
彼女は愉快そうにラクスに笑いかけ、悪意のある笑みで
「そう、と返してほしい? それとも、いいえ、と返してほしい? どっちでもかまわないわよ。だって、貴女はここで死ぬんですもの」
「わたくしは……いま死ぬわけには参りません」
「あらどうして? いまさら出てきて、綺麗言でも吐きたいの?
ほかの人間がどんな死地に突き落とされようとも、そうやって独り安全圏でのんびりショッピング。
それで事が片付きそうになってきてから、自分の番だと場をかき回す。
常に正しく平和を愛し、けれども必要な時には、私たちを導いて共に戦場を駆けてもくださるお方?
本当、あなたにお似合いの肩書よね」
「名がほしいわけではありません。姿も。ただ――あなた方を放っておけば、もっと大勢の人が犠牲になるのです。ですから、わたくしは――!」
「だから、あなたは「ラクス・クライン」なのよね。
聞いていいかしら? 戦争で人が死ぬのは当たり前でしょう?
もっと大勢のひとが犠牲になる。なら、ならない方法なんてあるの?
都合のいいおとぎ話に聞こえるんだけど。ねえ、ラクス。
あんたが絶対的に正義ってわけ? 「コーディネーター」さん」
「っ!」
「言い返せない? ……そうよねぇ。だって、貴女は世界よりキラを選んだんですもの。あの戦争で、ズタズタにされたプラントより。不安に怯え、駆られて、歌姫にすがる人々よりも、貴女はキラを選んだ。
そのくせ、いまさら正義面して現れて。
癪に障るわぁ。貴女のその綺麗事も、あんたの小奇麗な顔も声も! みんな作りものだっていうのにね!
そうでしょう? 「コーディネーターのお姫様」」
「わたくしは、わたくしです。コーディネーターであろうと、ナチュラルであろうと、わたくしは、ラクスとして生きる」
「そのせいで、ミーアは犠牲になった。
ねえ。「お姉様」ってどんな気持ちで呼んでいたのか、教えてくれる?」
ラクスの顔が歪んだ。
それを見て、ファム・ファタールは嗜虐的にほほ笑んだ。
「罪悪感を感じてたんだ、ラクス」
「……っ!」
ラクスの反応を見ながら、ファムは微笑む。
「私の時もそうだったわよね。パパの艦を撃ったら、この子を殺す。そう言ったときも、貴女は私を憐れんでたわよね。ラクス?」
フレイの顔をした彼女は楽しそうに、懐かしそうに、自身の父親が撃たれた光景を思い返して嗤う。
これにラクスがはっきりと気付き、怒りを露わにして言う。
「貴女は、フレイさんではない! なぜ、彼女のことを!!」
「私はフレイ・アルスター。そう言った方が面白いでしょ? ラクス。
それとも」
そう言うと彼女は左手で顔を覆い、まるで仮面を取り換えるような動作を取った。
すると、肩だった彼女の髪は腰まで伸び、その色は鮮やかな赤から淡いピンク色へと変わった。ストレートの髪はゆるやかなウェーブを描き、瞳は灰色からアイスブルーへと変化した。
「それとも、ラクス・クライン、のほうがよろしいですか? お姉様・・・」
「姿が変わる? DG細胞のクローン……! 貴女はっ!?」
驚愕するラクスの表情を見て、嗤う「ラクス」の姿をした彼女。
「フフフッ、わたくしが生まれたとき、ミーアさんはもう用済みでした。
けれど、わたくしが議長にお願いしたのです。
『彼女ミーアさんの夢をかなえてあげてほしい。
ラクス・クラインならば、名も姿も与えることなんてなにも感じたりしません。
だってわたくしは、キラさえいればそれでいいんですから』とね。
まさか、あんな茶番を演じてくださるとは思いませんでしたけれど。いい足止めになりましたわ、彼女は」
「この! 化け物っ!」
ダコスタが耐え切れずにファムに対し拳銃を構えたとき、彼が引き金を引くよりも早く、銃声が鳴り響いた。
「ぐあっ!」
手元を抑え、うずくまるダコスタ。
その前に右手に構えた銃口から煙を吹かせながら、フィルム・ノワールは見下し笑う。
「ショーはこれからだ。たっぷり楽しんでいくといい。君も、ラクス嬢もね」
「ラウ・ル・クルーゼ! 亡霊め!」
「ハッハッハッハ!」
ダコスタの罵倒に愉快気にクルーゼの姿をした男は笑う。
「あらあら。ダコスタさんったら、オイタが過ぎますわねぇ」
「ラクス様の声と顔で! 貴様っ! よくも!!」
激昂するダコスタの前にしゃがみ込むと目の前で「彼女」は微笑む。
「ラクス」の姿で
「ラクス」の声で
「ふふっ。では、誰がお好みですか?」
「お前みたいな化け物にっ! 好みなんか言いたくないね!」
「クスクス、勇敢ですけれどダコスタさん。その姿では滑稽ですわ」
精一杯の虚勢を張るダコスタに強烈な蹴りが鳩尾に叩き込まれた。
「グフッ」
「ダコスタさん!」
駆け寄るラクスにダコスタは弱り切った笑顔を向ける。
「すみません、ラクス様っ……! くっそぉ……! これじゃあドモンさんにも、Dさんにも、合わせる顔がないじゃないかっ!」
そんな二人を愉快気に見ながら、ファム・ファタールは静かにラクスを見て笑った
「どうします、ラクス様? いいえ、「わたくし」」
その言葉にラクスとダコスタは、呆然と彼女を見る。
彼女の隣では、クルーゼが苦笑いをこぼしていた。
「ファム。それはデュランダル議長の考えとは違うのではないかな? 議長の考えでは、彼女はここで殺す。そのようになっているはずだが」
これにファム・ファタールは微笑んだ。
ラクスの声で、フレイの言葉使いで
そして二人とは似ても似つかない悪意しかない笑みを浮かべて。
「それじゃあ面白くないじゃない? だって、私が生まれた理由がそれだもの。
貴女のようなきれいな心を持っている人を、徹底的に傷つけるのが「私」だもの。
そうでしょ?
だから、あなたも私のワガママを聞きなさい。
私の為に、あなたも生み出されたのだから。フィルム・ノワール」
「わがままなお姫様だ。――連れていけ」
クルーゼの言葉にサングラスの軍服たちがラクスたちに押し寄せる。
ここまでか、と二人があきらめた。
その時だった。
「ずいぶんと悪趣味なDG細胞の使い方だな。デュランダルめ」
その声と同時に、ザフト軍人が一気に吹き飛ばされた。
「お前が妙な奴の力を借りるために自分の細胞を渡すからだろう!」
声と同時にゾンビ兵が蹴散らされる。
現れたのは、黒と赤の青年、二人。ドモン・カッシュとDだった。
「このタイミングで来るか。まさにヒーローだな、ドモン・カッシュ。そして私の恩人と言うべき存在か、D」
フィルム・ノワールの言葉にDが彼を値踏みするかのような目で睨みつける。
「そうか、貴様が。デュランダルが最初に創ったDGクローンか」
その後ろではドモンがラクスとダコスタを介抱していた。
「ラクス、立てるか? ダコスタも」
「ドモンさん! Dさん! ミーアさんが!」
そんな彼らにラクスが必死の形相で訴えかける。
「なにっ!? ミーアがどうした!」
「奴らにッ!」
ダコスタの言葉にドモンが苦虫を噛み潰したような表情になる。
「チっ! 俺としたことが!」
そんなドモンに対して、目の前のラクスの姿を模したファムは語り掛ける。
「ねえ、どうしてぇ? どうしてあんな偽物がほしいの?」
「何を訳の分からんことを。彼女のなにが偽物だ」
怪訝そうな顔で問いかけてきたファムに対し、ドモンも静かに返す。
「偽物じゃない。ラクス・クラインとして作られた、私と同じ偽物よ」
「フッ、お前とは似ても似つかんな。お前の魂は空っぽだ。一生懸命に誰かを真似ようとしているようだが、その実、お前の内には何もない。こうして面と向かって話していればわかる」
ドモンの言葉に、ラクスの顔をした少女はそれまで浮かべていた嗜虐的な笑みを消すと、まったくの無表情になって冷たい声で言った。
「ひどい言い草ね。……殺して、フィルム・ノワール。その無礼者を」
無造作にラウ・ル・クルーゼは懐から拳銃を取り出すと、ドモン・カッシュに放った。
「ドモンさんっ!」
ダコスタの絶叫の中、彼は見た。
ドモンは弾丸を顔の前で人差し指と中指でつまみ、止めている。
「ええええええええっ!?」
「まさかこんなもんで俺を殺れると思っちゃいないだろうな?」
ダコスタの絶叫を無視して、ドモンはニヤリと二人組の男女に笑いかける。
「でたらめね。ガンダムファイター!」
ファム・ファタールは忌々し気につぶやいた。
隣の男ーーフィルム・ノワールは彼女に反して、悠然と言った。
「やれやれ。これは逃げた方がよさそうだな」
「逃げられると思ってるのか? この俺から」
ドモンは拳を握り、腰を落として構える。
その前に、Dの背が立ちはだかった。
「これはこれは創造主殿。私たちを庇ってくれるのかな?」
フィルム・ノワールの笑顔に対し、Dは静かに言った。
「ミーアはどこだ」
「ん?」
「ミーアはどこだぁあああ!」
鬼の形相で咆哮するD。その迫力と気は、あらゆる者をひれ伏すほどだ。
後ろでこれを見ていたドモンがニッと訳知り顔で笑う。
一瞬、気圧された二人組はすぐに取り繕うと、言った。
「残念だ。ギルバートには申し訳ないことをしてしまった。完全に、悪魔を怒らせてしまった」
「ずいぶん俗っぽいのね、悪魔様。女一人のためにそこまで取り乱すなんて」
同時に地響きが起こり、ショッピングモール全体を揺らす。
ダコスタが叫んだ。
「今度はなんだっ!?」
上空から、巨大な人影が現れた。
一つ目に坊主頭のMSーーザク・ウォリアーだった。
瓦礫が次々と降ってくる。
ドモンは咄嗟にダコスタとラクスを庇うとDに叫んだ。
「D、ガンダムを呼べ! ここはもうだめだ! 脱出するぞ!!」
そんなドモンとDに対し、ラクスの姿をした彼女は赤い髪の少女ーーフレイの姿に戻って笑いかけた。
「また会いましょう? 悪魔様に神様に歌姫様」
ファム・ファタールの笑い声が響くなか、モール街は完全に崩壊した。
皆さんお待ちかね~!!
ついにデュランダル議長は、ロゴスに対する宣戦を布告します。
この宣戦を受けて鼻で笑うのは、未来世紀からの来訪者。
ウォン・ユンファとウルベ・イシカワだったのです!
次回!
機動武道伝Gガンダム SEED Destiny 第61話に!
レディー、ゴー!!