新機動武闘伝 GガンダムSEED Destiny 作:カンナム
ある者は惑い。ある者は怒り、ある者は嘆く。
そんな中、ついにウルベとウォンーー二人の極悪人が動き出すのです。
はたして、コズミック・イラの世界はどのようになってしまうのか!?
それでは、ガンダムファイト!!
レディイイイイ!! ゴォオオオオオオッ!!
第62話
世界がデュランダルを讃える声を上げる中。
薄暗がりの部屋で悪意の塊、二つが笑う。
「自らを悪と名乗り、世界の敵となる君たちに従えと言うのかね?」
ロゴスの一人がそれを問う。
戦争とは、互いに正義を名乗りあい、負けた方が悪となるものだ。
古今東西、戦争とはそういうものだった。
だが、目の前の男たちは自らを悪だと認めている。
「何か、勘違いをされていませんか? 勝てば官軍ですよ」
ウォンと言う男はそう言った。
「過程や手段が悪であれ、結果が勝利ならばそれは正義でしょう? 違いますか?」
肩をすくめながら言うウォンにロゴスの面々は渋い顔をする。
「あなた方は、この演説の問題点を少しも分かっていないようですね。民衆の指示がどうなろうとあんなものは後でいくらでも操作できる。問題は、あなた方幹部の顔が全て筒抜けだと言うことなんですよ」
ウォンの発言にロゴスの目が大きく開かれる。
「ジブリール、内通者に心当たりはないのかね? ロゴスのメンバーは定期的に入れ替わっているはずだ。それを顔写真まで手に入れ、自信満々に世界に流せる。そんな情報をどうやって手に入れたのかーー」
「いない!! いるわけがない!! 自らの首を絞めることになるような真似をだれが!!」
冷たい目に射抜かれながらも、必死に告げるジブリールだが、ウルベは静かに言い放つ。
「ならば、先のデストロイガンダムとやら。アレは誰が開発したんだね?」
「アレは…! 我がロゴスのコンピューターに送られてきたデータから…」
「そのデータは何処から送られて来たものだね?」
「数ある機体データのしかも書類選考段階でのことだ。一々目を通してはいないが、実績のあるデータ開発者だったのは間違いない」
ウルベの言いたいことが理解できずにジブリールは首を横に振る。
これに一つ頷くとウルベは冷酷な笑みを浮かべた。
「ガンダムを作るだけの資金もデータも技術者もないはずなのに。あれだけの機体をデータ上で作って見せた、というわけか」
「ジブリール、デストロイガンダムのデータを見せてもらえませんか?」
言いながら、ウォンはジブリールの持つ端末からアクセスしてデータを見始めた。
「ありましたよ、ウルベ」
「ーーフン」
ウォンの言葉にウルベがあきれたような、失望したようなため息を一つ吐いた。
「いったい、何が言いたいのだ!? ウルベ、ウォン!!」
ジブリールが焦れたような声を出すが、これにかまわずウルベとウォンはパソコンのデータに目を送っていく。
「…ほほう。やはり陽電子リフレクターも、か」
「デストロイガンダムも基本骨子は連合の方のようですね。ただし、この機体を作成する上で問題が幾つかある」
「それを解決しているのが、このデータの送り主か。まったく、喜劇だな!!」
笑い飛ばすウルベにウォンはジブリールを見た。
「ロゴスの方々、あなた達は何も目を通してこなかったのですか? 送られてきたデータに何も疑問を感じることなく? 私たちと違って戦争をしている世界だと言うのにずいぶんと平和ボケしていますね」
辛辣なウォンの言葉にロゴスメンバーの眦が吊り上がる。
「何がいいたいのかね、君たちは?」
「はっきりと断じよう。無能だ、諸君は」
これにウルベがはっきりと答えた。
「なに!?」
「商売人としては、それで成り立つのかもしれんが。あいにくと君たちの商売は戦争を媒介としている。よって世界情勢や政治にも大きく左右される。情報戦のやり取りに気を配ることなど、当たり前のことだ」
ウルベの辛辣な言葉にロゴスのメンバーが顔を赤くさせ、ある者は憮然とし、ある者は怒りを露わにする。
「誰かがやってくれるだろうーー。自分たちは甘い汁を吸えればそれでいい。リスクを考えずに甘い話にばかり乗る。困った豚ですね」
「ジブリール、君も大変だったろう。こんな豚しかいない組織をよくまとめられたものだ」
予期せずに評価され、ジブリールは困惑の表情になっている。当たり前だろう、彼には理解がまったくできていないのだ。
「送られてきた端末は地球軍のものではないな」
パソコンを操作しながら言うウルベにジブリールが目を大きく見開く。
「なんだと!? では、どこから!!?」
「地球上からでないのならば、後は一つしかないでしょう」
ウォンがニヤリと笑いながら空を指差す。
「プラントだとーー!? バカな!! この端末からの情報は二年以上前から送られてきていたんだぞ!!?」
二年以上前ーーすなわち、血のバレンタイン頃。
「ーーあ」
ジブリールが、思わずと言った風に口を開けて言った。
同時にロゴスのメンバーも顔色を失くしている。
「私が無能だと言った意味が分かりましたかな? 二年もこのような状況を放っておくなど、私には考えられないことだ」
「商売人としては、それで良いのですがね。使える者はなんでも使えばよい。ただし、出所をきちんと調査してからですがね。あなた方は、世界を闇から牛耳って来られた。自分たちは絶対に安全だとタカをくくってしまった。その結果が今の醜態です」
彼らは言う。
醜態をさらした愚かで無能な豚しかいない、それが今のロゴスだと。
「だから、あんな幼稚な発言を許してしまうのだよ。あまつさえ、世界の敵などと夢物語まで語られてね」
ウルベは笑う。
「何が世界の敵だ? 世界とは何だ? あなた方や我々を見れば分かるだろう? 皆それぞれが違う人種だ、違う環境に生きている。その者たちにとって共通の敵とは何だ?」
悪魔は笑う。
ロゴスの面々は彼に飲まれてしまっていた。
完全に何も言えない。
「自分たちの生活を脅かすものが敵ーーだと言うのならば、世界そのものではないのかね? 生まれ出でた時点で我々にとって世界は敵だろう。そんなことを今更、公衆の面前でさも高尚な顔で厚顔無恥に語る!! これが喜劇でなければ一体なんだ!?」
この程度かと笑う。
自分たちの相手は、こんな思考でしかないのかとあざ笑う。
くだらない、つまらない、ふざけている、とーー。
「幼稚過ぎて相手をするのも馬鹿らしくなるほどだ。しかし、そんな相手にあっさりと主導権を握られる」
冷たく、冷酷な笑みでモニターのロゴスの面々を見やるとウルベは静かに言った。
「諸君らは子どもに舵を取られるだけのただの豚でしかない。そんな輩をいつまでも飼うほど私は優しくはない」
言うと、ウルベは右手を顔の横の前に持ってくる。
パチンッと小気味の良い乾いた音が響いた、ウルベが指を鳴らした音だと分かったのが、彼らの最後の思考。
モニターの向こうで、阿鼻叫喚の地獄絵図が生まれていた。
彼らが座っていた椅子から緑色のコードが現れ、彼らの体内に潜り込んでいくのだ。
「ぎゃぁああああああっ」
「た、助けて……く、あああああ!!」
冷酷な笑みをたたえて、ウルベはその地獄を見ながらワインを煽る。
人間を辞めていく彼らを見ながら。
ジブリールはそれを見て、思い出した。
自分もまた、こうやって作り変えられたことをーー。
これに感じることは恐怖ではなかった。
むしろーー恍惚とした何かだ。
ロゴスの面々が座る椅子はなぜか同じ物に統一されていた。
そう、趣味や嗜好の違う彼らが、何故か椅子だけは同じものだった。
知るはずもない。
その椅子に悪魔の因子が宿っていたことなど。
二人の悪魔は、陶酔している自分にゆっくりと甘い声で言ってきた。
「まずはデュランダルの思う通りにやらせてやろう。その上で全てを覆してやればよい」
「夢を見ている子どもに絶望を与えるには、その方が良いでしょうね」
ウォンのパソコンの画面にはユニウスセブンで現れたテロリストのMSジン・ハイマニューバⅡ型とブルーコスモスの部隊「クルセイダーズ」を破ったプラントの守備隊の映像が流れていた。
まったく同じ動きで、同じ斬り方で敵を倒すMSを左右で比較するように流しながら。
ーーーー
デビルガンダムは己の放つエネルギーを使って飛ばしていく。
「デビルフィールドダッシュ!!」
背中の巨大な翼を大きく広げ、青紫の光の輪を闇の宇宙に生み出すとその光の輪のエネルギーで一気に空間を捻じ曲げて飛ぶ。
彼が目指すのは、プラントの最高評議会議長のいるコロニーだった。
すると彼の前に小さな隕石の群れーーデブリが広がっている。
「……ふん」
デビルガンダムは移動を止め、その場に留まるとうっとうしげに右手を顔の前に出し、虫を払うように動かす。
同時に、強大なエネルギーの塊がデビルガンダムに弾かれて近くの隕石に当たり貫通していった。
「ほう、相当ドモンに鍛えられたようだな。面白い」
闇の中に浮かぶ隕石ーーその一つに腕を組んで立つのは、黒いボディと巨大な角、そして赤い羽根のガンダム。
覚えがある。
そのガンダムの中にいる男にも。
「東方不敗マスターアジアか。貴様と遊んでいる暇はない!!」
デビルガンダムーーDの言葉に、拳法着を着た白髪の男が笑った。
「ーーフン! 貴様、このワシからーー。東方不敗マスターアジアから逃げられると思っておるのか!?」
言うと構えを取るマスターガンダムにDは舌打ちをする。
「ならば、叩き潰すまでよ!!」
「やってみよ、究極と謳われた貴様の力でなぁ!!」
二つの強大な力が再び闇の中でぶつかり合った。激突する両者の拳と蹴りは、互いの周囲に浮かぶ小隕石を衝撃波だけで砕いていく。
あまりに圧倒的な両者の力は、宇宙に更なる衝撃を生んでいく。
「フフフ、やはりか。貴様、拳から信念が伝わってくるぞ…!! 己の闘う理由を見つけたか!!」
「無駄口を叩いている暇はない、そう言ったぞぉおおおお!!」
互いの拳を拳で弾きあい、さらなる拳をぶつけ合う。
「ならば、一刻も早くワシを倒してみせぃ!! いくぞ、流派東方不敗!! 十二王方牌大車併!!」
右手を大きく頭上に掲げ、左手を時計回りに回転させて気による梵字を十二個作り上げる。
「ゆくぞ、デビルガンダムよ!!」
「ちぃっ!!」
拳を腰に置き、デビルガンダムも構えを取る。
マスターガンダムは右手を突き出し、気による「自分と変わらない等身の分身」を12体作り出して前方に放ってきた。
「なにぃ!?」
襲い来る紫の気を纏った12体のマスターガンダムにデビルガンダムは驚きながらもすぐさま拳を返していく。
それを両の腕を組んだ状態で見据えるマスターガンダム。
「どうだ? シュウジ・クロスの時代の気量を取り戻したマスターアジアの力は? ヤマトガンダム達をステラ達に譲ってなお、これだけの分身を作り出せるとはーー。我ながら恐ろしいものよ!!」
言いながら、マスターガンダムは両手をたわめ、右腰において構える。
ダークネスフィンガーのエネルギーである紫の光の球が上下に組んだ両手の中に生まれる。
デビルガンダムは、それを確認しながら次々と襲い来るマスターガンダムの分身の攻撃を返していく。
強烈な動きを誇る分身達と真っ向から殴り合うデビルガンダム。
そこに極限まで高められた気の球をマスターガンダム本体が撃ち出した。
「流派東方不敗が最終奥義!! 石破ぁあ!! 天ぇええん驚ぉおおおお拳ぇええええん!!」
戦略兵器級の巨大な黄金に輝く気の光線ーー。
紫に光輝く「驚」の文字を黄金の光線が撃ち出してくる。
それを見るや、デビルガンダムは全身に紅い気を纏うと、一気に分身を蹴散らし、右掌を突き出して光線を受け止めた。
「ぬぅあああああああっ!!」
「うぉおおおおおおおっ!!」
黒い鬼神が紅い悪魔が咆哮する。
強烈な力と力をぶつけ合いながら、異形とも言える両者の戦いは燃えていた。
宇宙の遥か彼方でーー見える強烈な光の線。
その線は、宇宙空間に境界線のように真横に光った後、ドーム状に爆発が起こった。
ーーザフト軍宇宙基地
「隊長!! これを!!」
「な、なんだ!? どこかの新星が爆発でもしたのか!?」
ーー地球軍月のコペルニクス
「なんだと言うんだ、この爆発は!?」
「分かりません!! ザフトの新兵器か!?」
悪魔の力を使うガンダムは、その両翼を大きく広げて健在であることを示す。
それを同質の力を放ちながら、中に生粋の武闘家を乗せた鬼神のガンダムが見守っていた。
「ーーこんなものか、マスターガンダム?」
「言いおるわ。ならば、帰山笑紅塵!!」
マスターガンダムの咆哮。
同時に12体の分身は、両腕を胸の前に組んで構える本体に吸い込まれていった。
12体の分身すべてが本体に重なった時、黄金の気を纏ったマスターガンダムが誕生する。
「ーー明鏡止水、か」
「こうなっては、前ほど甘くはないぞ? どうする、デビルガンダム?」
「ーー」
無言でデビルガンダムも両拳を腰において構え、黄金の気を足元から発生させて全身にまとう。
極限の光を放つ二つの機体。
その様は、闇のなかである宇宙空間の果てまでも照らそうとしているかのようだった。
「そう! その貴様とやりたかった!!」
「フンーー!」
拳を構え、殴りかかろうとするデビルガンダム。
その前にマスターガンダムは静かに右の拳を突き出す。
「……?」
「何をボーっと突っ立っておる? 拳法家ならば応えんか!!」
デビルガンダムは訝し気にしながらも、言われた通り拳を突き出してマスターガンダムの右拳に合わせる。
「良いか、礼に始まり礼に終わる。それが武道家の心構えよ」
「……」
コクピットの中で微かに目を細めるDにかまわずマスターアジアは告げる。
「ネオが言っておった。貴様に助けられたとな」
「…オーブ海域のことか。ただの偶然だ」
「偶然か。ならば、何故ウルベ達を倒した後にネオ達を攻撃しなかった?」
「ただの気まぐれだ」
マスターアジアの問いにDは言葉少なげに応えていく。
それを聞くたびにマスターの引き結ばれた口元が徐々に緩んでいく。
「デビルガンダム。貴様、まだ人類を滅ぼそうと言うのか?」
その問いに、Dは淡々と答えた。
「ああ。人間が滅ぼすに値するのならな」
「ほほう…!」
東方不敗マスターアジアの顔は既に笑みを隠そうともしていなかった。
「デビルガンダムよ、貴様は変わったな。誰が貴様を変えた? ドモンか? キョウジやキラ・ヤマトか? ギルバート・デュランダルか?」
「……何が言いたい?」
「何、貴様を変えたものが何なのかを知りたくてな。確かにドモンとの闘いで貴様は変わったのだろう。だが、それだけではあるまい? この拳を通して伝わる魂の熱さ。貴様の中で何が変わった?」
その言葉にーーDの頭に浮かんだものがあった。
ーー はじめまして。ラクス・クラインですわ --
力も何もない。
ーー 小娘じゃないわ! ミーア! ミーア・キャンベルよ!! --
ただの小娘だった。
ーー もう! せっかく本名を名乗ってるんだから、ちょっとは反応してよ!! --
初対面の自分に対しても真っ向からものを言ってきた怖いもの知らずの小娘だった。
ーー ラクスが安っぽくなった、か。ダメだな、あたし --
必死に『歌姫』を演じて、他者からの言葉に思い悩んで、それでも自分なりに答えを出そうとした小娘だった。
ーー あたしね。ラクス様がおられない間、精一杯代役するわ! それで戦争がおわるんですもの!! --
小さな肩にとんでもない重いものを背負わされ、利用され、そしてーー。
Dは知る。
彼女の悩みを。
彼女の弱さを。
彼女の真の姿を。
それでもと、願った姿をーー。
「東方不敗ーー!」
胸の内に生まれた熱い想い。
炎のように滾るその何かが、Dに極限の力を引き出させる。
「それが何かまでは『頭』では分からんか。よかろう、しかし『心』で分かっておるようだな」
無限の気を放出し始めたデビルガンダムにマスターアジアはニヤリとした。
「デビルガンダムよ、貴様にガンダムファイトを申し込む!! 見事、受けてみせい!!」
「……好き勝手にほざいてくれる」
言いながら、Dは合わせていた右拳をそのままに視線に力を込めて叫んだ。
「ガンダムファイトォオオオオ!!」
「レディイイイイイ!!」
マスターアジアがこれに応えながら拳を押し返してくる。
両者同時に高めた気を開放した。
「「ゴォオオオオオオッ!!」」
ぶつかり合う。
何度でも、何度でも。
拳と蹴りをぶつけ合う。
互いに高速で移動しながら、互いの攻撃を捌きながら。
黄金の光を身にまとった両者は星空の空間に螺旋を描きながらぶつかり合い。
離れ合い、そしてまたぶつかり合う。
光弾を放てば、デブリの一角が消し飛び。
拳を合わせれば、小隕石の軌道が変わる。
無限の力と力のぶつかり合い。
両者の魂の熱さを語るように、気柱が立つ。
青紫の炎と紫暗の炎が互いを焼き尽くさんと猛り狂う。
デビルガンダムは悪魔ーー否、もはやその姿は魔王と言うに相応しい程に禍々しくも気高い。
対峙するマスターガンダムもまた恐ろしくも猛々しい鬼神そのものだった。
純粋な力と力。
技と技、スピードとスピードのぶつかり合い。
どちらの魂の熱さが勝るのか?
どちらがより耐えられるのか?
意地と意地のぶつかり合い。
「ぐぅっ!」
右の正拳突きがデビルガンダムの顔面にヒットした。
後方に弾かれる顔。
「隙ありぃ!!」
更に左拳を繰り出そうとするマスターガンダムだが、その左拳をかいくぐってデビルガンダムの右正拳が左の頬に返された。
「ぬぅお!?」
のけ反るマスターガンダムに左の拳がさらに叩き込まれる。
咄嗟にガードするも上半身が横に流れるマスターの右側頭にデビルガンダムの左ハイキックが迫った。
「!?」
咄嗟に上体を後方へ反らし、顎先で見切るマスターガンダム。
蹴り脚を軸足に引き戻すデビルガンダムより早く踏み込むと、左のボディからアッパーに繋ぎ、のけ反ったデビルガンダムの顔面を蹴り飛ばす。
遥か後方の小隕石に背中から叩きつけられ、隕石が砕かれる。
しかし、マスターガンダムは砕かれた隕石とは別の、自分にとって左後方へと顔を向けていた。
そこに黄金の気を纏った魔王が静かに両腕を組んでいる。
「ほう」
マスターアジアは感心したような声を上げた。
「なんとも、この短期間で恐ろしい強さになったものよ」
「降参するか? 貴様では我に勝てんぞ」
間髪入れずに返ってきた答えにマスターアジアは大きく笑った。
「わっはははは!! 笑わせてくれるわ、このたわけがぁああああ!!」
「ーーっ!!」
更に気が高まるマスターガンダムにデビルガンダムも気を高める。
この果ての無い宇宙空間で、彼らは果ての無い力比べを行っていた。
同時にその場から忽然と消える。
瞬間、衝撃波だけがあちこちの空間で起こり、ぶつかり合う。
音など響くはずのない宇宙で、確かにそれは響いている。
魂と魂がぶつかり合う。
その現象に音が生じている。
拳と拳を、蹴りと蹴りをぶつけ合い、互いに後方へ首をのけぞらせ。
一瞬後には元居た位置に首を戻しながら。
より早く。
より強く。
より先に向かって、一撃を放ちあう。
両者の右正拳の一撃が爆発を起こし、お互いを後方へと弾き飛ばす。
背中から隕石の一つに叩きつけられるデビルガンダムとマスターガンダム。
同時にその隕石を消し飛ばしながら二つの太陽がごとき黄金に輝く球が向かい合う。
「……」
「…はぁ…はぁ」
だが、ついに優劣が付き始めていた。
マスターアジアが肩で息をし始めたのだ。
無理もない、二人の戦いは極限の状態まで気を高めて行われていた。
既に戦いが始まってから丸1日が経とうとしていたのだ。
「なるほど、これがーーデビルガンダムか。確かにこの強さならば、全てを屈服させれよう。しかし、貴様はそれを望んでおるのか? どうもそうは感じられんがな」
「……無駄口を叩いている暇はない。随分と時間を食った、退くならば退け。まだ邪魔するのならば、このまま叩き潰してくれる!!」
「ならば、次の一撃で決着をつけてくれるわ!!」
「望むところだ、来るがいい!!」
最後の極大の一撃を放とうと、両者が腰だめに構える。
瞬間、三度強大な黄金の気柱が立ち上がる。
「流派ぁ!!」
デビルガンダムが右手を突き出す。
「東方不敗がぁ!!」
マスターガンダムも同じように右手を突き出した。
「最終ぅ!!」
Dが腰を落としながら瞳を閉じる。
「奥義ぃ!!」
マスターも同じように瞳を閉じて気を高める。
両者の纏う強大な気が柱から球に変化し、黄金の気は七つの色を放つ白い光の球へと変わった。
その力を両者両手に極限まで圧縮する。
黄金の機体だった二つの機体は、元通りの色に戻りながらも、そのたわめた両掌には七色の色を放つ白い光球がある。
デビルガンダムはその両手を蒼紫の気で発光させて。
マスタガンダムはその両手を紫暗の気で発光させて。
同時だった。
同時に両手首を上下に組んで前方に掌を突き出す。
「「石破ぁ!! 究ぅ極くぅ!! 天ぇえん驚ぉおおお拳ぇええええん!!!!」」
白い光の光線がお互いの中心でぶつかり合う。
その光は、スピードやパワー等と言う概念を全て凌駕する。
光が放たれたことによる衝撃波だけで、全ての隕石が消し飛んでいく。
究極の力と力の一撃。
その威力は問答無用とばかりに全てを消していく。
ぶつかり合い、押し合う等ということは許されない。
少しでも威力が弱い方が一気に消し飛ばされる。
もし双方の威力が互角であったならーー。
「爆ぁく発ぁあああああつっ!!」
「デェエッド、エンドォオッ!!」
二人の声が宇宙空間という闇を消し飛ばす白い世界の中で、響いていた。
双方の威力は互角。
強大な光と光が交わる。
強大な恒星と見紛うばかりの光球が生まれた。
その光の球が生まれて消えるまで僅か数10秒程度。
だが、それによって生じた衝撃波が数10秒の間吹き荒れる。
デビルガンダムもマスターガンダムも、極限の技を放った直後では動けない。
容赦なく衝撃波は二人を襲った。
何もない空間。
宇宙の闇の中に、二機はいた。
マスターガンダムは、全身から火花を吹き、左腕と両足を失っていた。
対峙するデビルガンダムは、その全身から火花を吹いているも五体満足で浮かんでいる。
「ーーフン、これでは再生せねば戦えんか」
「…何故しない?」
そう言うだけで何もしないマスターにデビルガンダムは己の体を再生させながら不審に思い、問う。
「何、ワシの目的は決まったからだ」
「? 何だと?」
言うと、マスターアジアが気を込めてガンダムを一気に再生させた。
両者の姿は一気に戦う前と何ら変わらない姿に戻った。
だが、マスターガンダムは闘う構えを取らずにデビルガンダムに歩み寄った。
「何のつもりだ、マスターガンダム」
「貴様の闘う理由を見てみとうなった。それだけのことよ」
「ーー何?」
鋭い瞳で問いかけるデビルガンダムにマスターアジアはニヤリと笑みを浮かべて見せた。
「デビルガンダムよ、今の貴様ならばこのワシが仕えるだけの価値はある。今一度、張らせてもらおう。デビルガンダム四天王の頭をなぁ!!」
「ーーっ!?」
マスターの言葉にDは大きく目を見開いた。
皆さん、お待ちかね~!!
ウルベとウォンによって完全に乗っ取られてしまったロゴス。
対するデュランダルの方もファム・ファタールとフィルム・ノワールを使い策謀を展開していきます。
狙われたのは、オーブのセイラン家。
プラントにてこれを把握したイザーク達は、阻止すべく動くのです。
はたして、その結果は!?
次回、機動武道伝GガンダムSEED Destiny 第63話に!!
レディー、ゴー!!