新機動武闘伝 GガンダムSEED Destiny   作:カンナム

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 さて、皆さん。

 前回のお話でウルベとウォンに乗っ取られてしまったロゴス幹部たち。

 対するデュランダルの方もファム・ファタールとフィルム・ノワールを使い策謀を展開していきます。

 狙われたのは、オーブのセイラン家。

 プラントにてこれを把握したイザーク達は、阻止すべく動くのです。

 はたして、その結果は!?

 それでは、ガンダムファイト!!

 レディィィィッ! ゴォォォオオオッ!!


第63話


第63話 ファム・ファタール(悪夢)との出会い

 

 

ーープラント最高評議会議長室にて

 

 

 

 ギルバート・デュランダルは自分の演説を終えた事に一息ついていた。

 

 

 

 評議会の者たちは一斉にデュランダルを讃えて拍手を送る。

 

 

 

 これに彼は隣のラクスと共に笑顔で応えた。

 

 

 

 ギルバート・デュランダルが名実共にプラント評議会の全てを握った瞬間だった。

 

 

 

 

 

 これに応えるように地球の方でも事態は急速に動き始めた。

 

 

 

 戦争を否定するデュランダルの言葉に感銘を受けた人々が各地でゲリラ行為を開始したのだ。

 

 

 

 次々と追い詰められていくロゴスのメンバー達。

 

 

 

 彼らは表向きは軍事、金融、化学、穀物生産といった産業の大物経営者たちだ。

 

 

 

 表立っての警備は民間企業程度のものでしかない。

 

 

 

 人種も国籍もない暴徒の数に対抗できるだけの武器も数も存在しなかった。

 

 

 

 

 

 そのような現状を知らない、知るはずのないデュランダルに最高評議会の席で黒の陣羽織を着た『ラクス・クライン』は語りかける。

 

 

 

「議長、ロゴスを討つとは言え。彼らの表の顔は大企業の経営者方です。これを軍を使って排除されるおつもりか皆さんに説明をしていただけませんか?」

 

 

 

 これにデュランダルは「ああ」と頷いたあと、評議会のメンバーを見渡し言う。

 

 

 

「私だって名を挙げた方々に軍を送るような馬鹿な真似をするつもりはありません。ロゴスを討つというのはそういうことではない。ただ、彼等の創るこの歪んだ戦争のシステムは、今度こそもう本当に終わりにしたい」

 

 

 

ーーロゴス幹部のビル

 

 

 

 警備用にやとわれていた地球軍兵士達数10人は、必死でビルの前に集まった数万に昇る暴徒に向かって銃を構えながら言う。

 

 

 

「くっそー!」

 

「騙されてるのはお前達だぞ!コーディネイターの奴等に!」

 

「うわ!」

 

 

 

 暴徒はすぐに彼らを飲み込んで行き、ビルの中に入っていった。

 

 

 

 

 

 プラントではデュランダルが変わらず議長席から議員たちに向かって、世界に向けて熱弁をふるっていた。

 

 

 

「我々コーディネイターは間違った危険な存在と、解り合えぬ化け物と、何故あなた方ナチュラルは思うのです?

 

 そもそもいつ? 誰がそう言い出したのです? 

 

 私から見ればこんなことを平然と出来るロゴスの方がよほど化け物だ。

 

 それもこれもただ我々と戦い続けるためだけにやっている。己の身に危険が迫れば人は皆戦います。

 

 それは本能です。だから彼等は討つ。そして討ち返させる。私達の歴史はそんな悲しい繰り返しだ。

 

 戦争が終われば兵器は要らない。今あるものを壊さなければ新しいビルは造れない。畑を吹き飛ばさなければ飢えて苦しむ人々に食料を買わせることが出来ない。

 

 平和な世界では儲からないから、牛耳れないからと、彼等は常に我々を戦わせようとするのです。

 

 こんなことは本当にもう終わりにしましょう。

 

 我々は殺し合いたいわけではない!

 

 こんな大量の兵器など持たずとも人は生きていけます。戦い続けなくとも生きていけるはずです!

 

 歩み寄り話し合い、今度こそ彼等の創った戦う世界から共に抜け出そうではありませんか!」

 

 

 

 デュランダルの弁に全ての議員たちが席を立ち、拍手を送る。 

 

 

 

ーーーーー

 

 

 

 ブルーコスモスのメンバーと発表されたメンバーのビルに詰め寄る暴徒たち。

 

 

 

 彼らの蛮勇はついに構成員メンバーのもとへとたどり着いていた。

 

 

 

「ルクス・コーラー!」

 

「ブルーノ・アズラエルだ!」

 

「ブルーコスモスのメンバーを見つけたぞ!」

 

「引きずり出せ!」

 

 

 

 これをモニターで見ながら、ジブリールは震えていた。

 

 

 

「こんな…、こんなバカなことが!」

 

 

 

 必死にこちらに助けを求める幹部のメンバーを見ながら、怯えと恐怖に駆られてジブリールは吐き捨てた。

 

 

 

「くっそー! デュランダルめ!!」

 

 

 

 これを冷ややかに見るのはロゴスを完全に掌握した悪人二人だった。

 

 

 

ーーーー

 

 

 

 一方でデュランダルは、各地でロゴスメンバー宅への暴徒による襲撃事件と地球連合軍のロゴスからの離反と彼らがロゴスを討つことへの協力を申し出ている報告を受けていた。

 

 

 

「ああ、分かった。それでいい。今後もそうした申し入れは基本的にはどんどん受けてくれたまえ」

 

 

 

 評議会議員の一人であるクリスタ・オーベルクは不安げな顔でデュランダルに言った。

 

 

 

「でも、何もこんな時に。議長が御自身で地球へ降りられなくとも。指示はここからでも十分お出しになれますわ」

 

 

 

「そういう問題ではないよ。旗だけ振ってあとは後ろに隠れているような奴に、人は誰も付いては来ないだろ?」

 

 

 

 答えながら彼はニュースを流しているモニターを見据えて言う。

 

 

 

「ジブリール氏の行方もまだ判らんのだ」

 

 

 

 そして自分の向かいに立つラクスに笑いかけた。

 

 

 

「しかし凄いものだね、人々の力は。恐ろしくもあるよ。こちらが手をつかねているうちに、こんなことにまでなってしまうとは」

 

 

 

「ええ、でも議長のお言葉に皆奮起しているのですわ。本当に戦争のない世界に出来るならと」

 

 

 

「出来るさ。皆がそう望めば。では、行こうかラクス。みんな、後を頼むよ」

 

 

 

 ラクスと共に議長はその場を後にする。

 

 

 

 彼らの背に向かって評議会議員たちは笑顔で言った。

 

 

 

「「「「「はい!」」」」」

 

 

 

 

 

 デュランダルは議会席を後にしながらも思う。

 

 

 

(ウィラード隊からの報告。アークエンジェルの撃沈は未だ確認できぬものの、キラ・ヤマトの撃破は間違いなし。取り敢えずは強力な駒を一つ消せた、か。

 

 いや、油断は出来ぬな。白のクィーンは強敵だし、彼女の傍には最強の男「キング・オブ・ハート」がいる。それにオーブにはその兄である「あの男」もーー)

 

 

 

 自然とデュランダルの唇がかみしめられ、拳が握られていた。

 

 

 

「では議長。わたくしはーー?」

 

 

 

 目の前でラクスが物思いに沈む彼に小首を傾げながら問うてきた。

 

 

 

「ああ、そうだったね」

 

 

 

 言いながらデュランダルはラクスの後ろにいる金髪の男に話しかける。

 

 

 

「君たちに頼みたいことがあるのだが、良いかな?」

 

 

 

「議長の仰せのままにーー」

 

 

 

 仮面の男はにやりと笑いながら芝居がかった会釈をしてみせる。

 

 これに苦笑を返しながら、デュランダルは言った。

 

 

 

「地球には彼女を連れて行こうと思う。君とラクスは、こちらに残って白のクィーンやキングの駒を探し排除してもらいたい」

 

 

 

 デュランダルの言葉にラクスはお淑やかな笑みを浮かべ両手を叩いて言った。

 

 

 

「まあ! それではわたくし達に裏切り者さんを探して来い、と?」

 

 

 

「そうなるね。頼めるかな、ラクス?」

 

 

 

 これにラクスは静かに頷くと他者への慈愛に満ちた微笑みを浮かべて言った。

 

 

 

「分かりましたわーー。参りましょう、クルーゼ隊長」

 

 

 

「了解です。ラクス・クライン」

 

 

 

「お二人にはつもるお話もあるでしょう。わたくしは、先に向かいますわね」

 

 

 

「心遣いに感謝するよ、ラクス・クライン嬢」

 

 

 

 言いながら、ラクスはその場を後にする。これにクルーゼは静かに笑顔を浮かべて頷いた。

 

 

 

「このような役を与えてすまないね、ラウ」

 

 

 

 苦笑を浮かべながら言うデュランダルに「彼」は笑みを返した。

 

 

 

「気にしないでくれ、ギル。私もこの「役」が案外気に入っている」

 

 

 

「そう言ってくれると助かるよ」

 

 

 

 微笑みを浮かべ合う両者は、先ほどまでの貼り付けただけの笑みとは少し変わったものとなっている。

 

 

 

「『私』は『私の人生』を全うできた。だからこそ、今度は君の世界に対する回答とその結果を見せてもらうよ。ギル」

 

 

 

「君と言う私の最大の理解者を得たのだ。必ず成功させるさ、デスティニープランをね」

 

 

 

 暗がりの通路を彼らは歩いていく。

 

 

 

 クルーゼはデュランダルと別れた後、シャトルに乗り込む。

 

 

 

 VIP席には白のザフト服を着た赤い髪の少女がつまらなさげに外を見ていた。

 

 

 

「ー-待たせてしまったかな?」

 

 

 

「いいえーー。つまらないだけ」

 

 

 

 間髪入れずに気だるげに応えてくる「彼女」にクルーゼーーフィルム・ノワールは笑った。

 

 

 

「議長の思惑通りに進むのがつまらないのかい?」

 

 

 

「ええ。こんなにも歯ごたえがないなんて、つまらないわ」

 

 

 

 そう告げる「フレイ・アルスター」にフィルム・ノワールは穏やかな笑顔を向けた。

 

 

 

「それだけかな?」

 

 

 

「……ミーア・キャンベルを議長に取られたわ」

 

 

 

 不機嫌に頬を膨らませる姿は、お気に入りのおもちゃを奪い取られた子どもの拗ねた顔だった。

 

 

 

「仕方あるまい。彼女には彼女の役割があるーー。君だってラクスだけを演じている訳に行かないのも分かるだろう?」

 

 

 

「キラ・ヤマトーー? そんなにあたしとキラを合わせたいの? クルーゼさん」

 

 

 

「ああ。キラ・ヤマトを苦しめるーーそのために私は、彼が最も大切にしている女性2人の写し身である君を生み出したのだよ、ファム」

 

 

 

 暗い笑みを浮かべるクルーゼーーフィルムにフレイは嗜虐的な笑みを浮かべて言った。

 

 

 

「あなたって執念深いですよね、クルーゼ隊長」

 

 

 

「当然だろう? 君とてキラ君に会えるのは楽しみじゃないのかな、フレイ・アルスター君」

 

 

 

「……キラの目の前で私(フレイ)を殺したあなたがそれを言うのかしら?」

 

 

 

 一瞬ーーフレイの灰色の瞳に殺意が湧く。

 

 

 

 が、それもすぐに消えた。

 

 

 

「フフフフフ、楽しもうじゃないか。我々は既に舞台を降りた役者だ」

 

 

 

 クルーゼの言葉に取り合わず、ファム・ファタールは言った。

 

 

 

「……フィルム。議会席を傍聴していた人間が車に乗ってR2宙域プラント行きのシャトルに向かってるわよ」

 

 

 

「仕事の始まりだね、ファム」

 

 

 

「ええ。あなたの昔の部下達らしいじゃない?」

 

 

 

「君のかつての友人も一緒のようだーー」

 

 

 

 モニターに映し出されたのは、傍聴席から立ち去る三人の少年たち。

 

 

 

 イザーク・ジュールにディアッカ・エルスマン、そしてミリアリア・ハウだった。

 

 

 

「トール(自分の恋人)を殺したコーディネーター共と行動を共にするなんて。ミリアリア、あんたも随分と変わったわね」

 

 

 

 冷めた瞳で冷めた口調で、フィルム・ノワールはモニターに映るショートヘアの少女に語り掛けた。

 

 

 

 

 

ーーーーーー

 

 

 

 一方でイザーク達も議会の話題がほとんど終結したのを確認して席を立ち、イヤホンマイクで決定事項を確認していた。

 

 

 

 車に乗り込みながら、イザークが口に出す。

 

 

 

「デュランダル議長がこのタイミングで、地球に降りる?」

 

 

 

「ロゴスの連中が連合のジブラルタル基地に集まっているらしい。そいつを討つためにザフトと反ロゴスの地球連合軍が合同で作戦を慣行。議長はそれを現場で確認するってわけらしいがーー」

 

 

 

 ディアッカが助手席に乗り込みながら、言う。

 

 

 

 後ろにはミリアリアが乗り込んだ。

 

 

 

「キョウジさんが、セイラン家の水面下での動きが活発になってるって言ってたけど。関係あるのかしら?」

 

 

 

「分かんねぇ…! くそ、何だかきな臭いぜ!!」

 

 

 

 頭をかきながら、各国で起こった事象を時系列で確認するディアッカ。

 

 

 

 まじめな彼は、キョウジに言われてからマメに経済や社会情勢を確認し、同時期に何が起こっているのかをミリアリアと整理していた。

 

 

 

「おかしいだろ!? こんなアッサリと今まで解決できなかったものが一気に動くなんてよ!! しかも世界中でだぞ!!」

 

 

 

「石油の変動価格、武器の露出に。プラントとの貿易回数。何もかも、このタイミングで一気に動いてる」

 

 

 

 二人の言葉にイザークは頷く。

 

 

 

「おそらくは、泳がせていたのだろうな。ロゴスという組織の奥深くにデュランダル議長の手が伸びていたということだろう」

 

 

 

「世界中にも、よ。

 

 考えられないことだけど、議長の意見は無条件で通っているわ。おかしいわよね、国が違うんだから考え方も意見も変わるはずなのに、スカンジナビア共和国とオーブくらいしか議長の考えに反対を唱えていない。まるでみんな、集団催眠にかけられてるみたい」

 

 

 

 ミリアリアの言葉に深刻な表情で黙り込む二人。

 

 

 

「そう言えば。ディアッカはともかく、イザークもよく軍を抜けてこられたわね」

 

 

 

 ミリアリアが重くなった空気を変えようとイザークに語り掛けると、彼は運転をしながら眉をあげた。

 

 

 

「ーーん?」

 

 

 

「だって、イザークは隊長なんでしょ? だったらーー」 

 

 

 

「問題ない。俺の部下たちは優秀だからな、代役もきちんと立ててきた」

 

 

 

 その言葉にミリアリアは何となくディアッカを見ると、彼は顔を真っ青にしながら口元をひくつかせている。

 

 

 

「ねぇ、ディアッカ? 前に言ってたシホって子がーー?」

 

 

 

「……ああ」

 

 

 

「アンタも大変ね」

 

 

 

 思わずと言った感じで言葉に出たミリアリアにディアッカが振り返りながら叫んだ。

 

 

 

「同情するなら、結婚してくれ!!」

 

 

 

「はいはい、また今度ね」

 

 

 

「うそつけぇええええ!!」

 

 

 

 そんな二人のやり取りをニヤニヤと楽し気に見つめるイザーク。

 

 

 

 しかし、そんな楽し気な三人にも魔の手は迫っていた。

 

 

 

「…ねえ、二人とも」

 

 

 

「ああ」

 

 

 

「分かっている」

 

 

 

 三人はルームミラーで後ろからついてくる軍用車を確認していた。

 

 

 

 評議会を後にしてからずっとこちらを付けてくる。

 

 

 

 イザーク達の車は静かに交差点を曲がり、路地に入る。

 

 

 

「イザーク!!」

 

 

 

「しっかりつかまっていろ、二人とも!! 飛ばすぞ!!」 

 

 

 

 アクセルを踏み抜き、エンジンをふかしながら、一気に街中を駆け抜ける自動車。

 

 

 

 軍用のジープも間髪入れずについてくる。

 

 

 

「おいおい、マジでつけてきてるじゃねえか!」

 

 

 

「イザーク! キョウジさんから手配されたシャトルは、第4港のF区画に泊めてあるわ!!」

 

 

 

「4のFだな、任せろ!!」

 

 

 

 だが、イザーク達の車が路地を抜けると、待ち構えていた3台の軍用車がこちらに向かって走り始めた。

 

 

 

「くそっ!!」

 

 

 

 ハンドルを切り、一気に路地裏に突っ込むとそこで車を降り、廃墟のビルに入る。

 

 

 

「おいおい、どうすんだよ!?」

 

 

 

「決まっている。こっちの抜け穴を使うぞ!!」

 

 

 

「クライン派が使ってた抜け道ーー。向こうも気付いてなければいいけど」

 

 

 

 クモの巣のように通るかつて使われていたクライン派の抜け道。

 

 

 

 一般の兵士達はおろか、権力者でさえほとんど知られていない。

 

 

 

 イザークには絶対の自信があった。

 

 

 

 だから、暗がりの抜け道を通る自分たちの目の前に、兵士達が展開されていることに驚愕した。

 

 

 

「なんだと!? ばかな!! クライン派に裏切り者がいるというのか!?」

 

 

 

「どうなってんだ、こいつは…!!」

 

 

 

 マシンガンを構えた緑の軍服を着たザフト兵。

 

 

 

 目元はサングラスをかけて、見えない。

 

 

 

「昔、君に言ったね? 自分の思考に自信を持つのはいいことだが、時には慎重さも必要だと。信じられないという思いに敵は付け込んでくる、とね」

 

 

 

「ーー!!?」

 

 

 

 そんな馬鹿な、と言う思いがイザークの胸に反響する。

 

 

 

 声は、後ろから聞こえてきた。

 

 

 

 同僚であるディアッカも驚愕に目を見張っている。

 

 

 

 同時に振り替えると、彼らの記憶通りの姿をした金色の髪の男が黒の軍服を着て立っていた。

 

 

 

「久しぶりだね、イザーク。それにディアッカ」

 

 

 

「「クルーゼ隊長…!!」」

 

 

 

 二人の言葉にミリアリアも目を見開いた。

 

 

 

「クルーゼって、ラウ・ル・クルーゼ? キラが倒したんじゃ!?」

 

 

 

「……そちらのお嬢さんとは、はじめましてだな。君にもぜひ紹介したい人がいるんだが」

 

 

 

「……え?」

 

 

 

「感動の対面だな」

 

 

 

 言いながらクルーゼは後ろを振り返る。

 

 

 

 そこには白い軍服を着た一人の赤い髪の少女が立っていた。

 

 

 

「…そんな、そんなことって!?」

 

 

 

「久しぶりね、ミリアリア。元気そうで何よりだわ」

 

 

 

「どうして…? フレイ、なの?」

 

 

 

「ほかに誰に見えるっていうの?」

 

 

 

 彼女は傲慢な笑みを浮かべてミリアリアを見下すように言った。

 

 

 

「トールを殺されてキレたあんたが、殺そうとした人間と仲睦まじくしてるなんてね」

 

 

 

「フレイーー。あなた、どうして?」

 

 

 

「死んだはずじゃなかったのか、って? そうね。『私』は死んだわ」  

 

 

 

 混乱するミリアリアの横でイザークが拳銃を構えて言う。

 

 

 

「カーボンヒューマンか!?」

 

 

 

 問いかけるイザークにクルーゼは笑う。

 

 

 

「そうだな、その答えが一番矛盾がない。もっともフレイ・アルスターはナチュラルだ。彼女のデータをプラントに残しておく意味などない」

 

 

 

「……あなたが復活させたのか? クルーゼ隊長!!」

 

 

 

 吠えつけるイザークにクルーゼは静かに笑う。

 

 

 

「イザーク・ジュール「隊長」ね」

 

 

 

「……」

 

 

 

 フレイは一歩前に出ると灰色の瞳でイザークを見据える。

 

 

 

「相変わらず、人を見下した目をするのね? 気に入らないわ」

 

 

 

「貴様のような女に、気に入られたくもないわ!」

 

 

 

 蛇のように絡みつくフレイにイザークは一喝を返した。

 

 

 

「ミリアリアと貴様は同じナチュラルの友人だったのだろうが! それを平然と侮蔑するような奴など、俺は好かん!!」

 

 

 

「フレイって言ったっけな。あの後、ミリアリアも色々あったんだ。だからーー」

 

 

 

 ディアッカがミリアリアをかばうように言うと、フレイは不敵な笑みを浮かべた。

 

 

 

「アンタもモノ好きね? 自分を殺そうとした女に惚れるなんて」

 

 

 

「ーーかもな。だが、お前から助けてくれた恩人でもある」

 

 

 

「ふふ、言うじゃない? コーディネーターのナイトさん」

 

 

 

「そういうお前も、大嫌いなコーディネーターの一員に成り下がっちまったみたいだな?」

 

 

 

 会話をしながら、ディアッカとイザークは周囲に気を配っている。

 

 

 

 ここはクライン派の抜け道。

 

 

 

 万が一挟み込みを受けた場合、さらなる仕掛けがあるはずだった。

 

 

 

 それを必死で探す。

 

 

 

「そうね。パパを殺したコーディネーター共の手先になるなんてーーふざけた話だわ」

 

 

 

 そうつぶやいたと同時にフレイは、その場から姿を消した。

 

 

 

 見れば、一気にこちらに踏み込んで来ていたのだ。

 

 

 

「ーーな!?」

 

 

 

 咄嗟に反応したイザークよりも早く、フレイの鋭い左拳が彼の鳩尾にきまった。

 

 

 

 凄まじい音と共に腹を抑えてイザークがその場にうずくまる。

 

 

 

 その端正な顔をフレイの右足が踏みつける。

 

 

 

「今の私、コーディネーターのアンタ達にも手に負えないくらい強くなってるの。だからもう見下されたりはしないわ」

 

 

 

「ーーぐっ!!」

 

 

 

 睨みあげるイザークを嗜虐的な笑みで見下ろすフレイ。

 

 

 

「イザーク!!」

 

 

 

 傍らのディアッカが拳銃をフレイに構えると同時に、彼の視界は大きく反転した。

 

 

 

「ガハァッ」

 

 

 

 投げ飛ばされたと気付いた時には、地面に背中から叩きつけられ、肺の中にある空気が外に出てしまっている。

 

 

 

「すまないな。少しの間、大人しくしていてくれ。ディアッカ」

 

 

 

「相変わらず、なんて動きだよーー!」

 

 

 

 笑みを浮かべるクルーゼに悪態を吐くが、どうにもならない。

 

 

 

 二人は地面に屈服させられてしまった。

 

 

 

 フレイとクルーゼは彼らを見下ろした後、静かにミリアリアを見据える。

 

 

 

「さてーー後は君か」

 

 

 

 ミリアリアが歯を食いしばりながら二人を睨みつける。

 

 

 

「逃げろ、ミリィ!!」

 

 

 

「お、の、れ…!!」

 

 

 

 ディアッカとイザークが叫ぶが対峙するミリアリアは強い瞳のまま、落ち着いてフレイに語り掛けた。

 

 

 

「何が狙いなの? 私たちを殺すのならすぐにできたでしょ?」

 

 

 

 その言葉に、フレイは笑みを引っ込めるとつまらなそうにため息を一つ吐いて言った。

 

 

 

「怖がらないの?」

 

 

 

「見くびらないでくれる? 貴女がフレイなら、私が怯える道理なんかないわ」

 

 

 

 晴れやかな笑顔で言い放つ彼女を、フレイは忌々しそうに見据えた。

 

 

 

「相変わらず、優等生過ぎて嫌味な女ーー」

 

 

 

「そう? フレイは相変わらず、悪者ぶるのが好きよね」

 

 

 

 面と向かって言うミリアリアにフレイは残虐な笑みを浮かべた。

 

 

 

「それは、貴女の知ってるフレイ・アルスターでしょ? 悪いけど、あたしは以前ほど甘くはないわよ?」

 

 

 

 その灰色の瞳をミリアリアは正面から見返す。

 

 

 

 お互いに目を逸らさない。

 

 

 

 先に動いたのはーー。

 

 

 

「バカらしい。辞めたわ、貴女ホントにつまんない」

 

 

 

 フレイの方だった。

 

 

 

 彼女はミリアリアに自分の懐から取り出した一枚のディスクを投げ渡した。

 

 

 

 ミリアリアは反射的に受け取るも呆然と彼女を見返す。

 

 

 

「ーーファム、君は本当に困った子だ」

 

 

 

 これを見ていたラウ・ル・クルーゼは、苦笑しながらフレイのやることを見過ごすつもりらしい。

 

 

 

「構わないでしょ? どうせ世界は議長の思惑どおりに動くんだもの」

 

 

 

 無機質で無感情な、そんな目でフレイはミリアリアに笑いかけた。

 

 

 

「そのディスクにはセイラン家からの嘆願状が入ってる。連中はまだ、自分達がオーブの重役だと思ってるみたいね。プラントにある人物を差し出したいって言ってきたわ。あの気にくわない男ーードモン・カッシュのお兄さん」

 

 

 

「嘘でしょ? まさか、オーブのセイラン家が議長相手にキョウジさんを!?」

 

 

 

 目を見開くミリアリアを愉快げに見た後、フレイは言った。

 

 

 

「ーー精々足掻いて見せなさいよ。アンタが世界を見放さないって言うんならね」

 

 

 

 その言葉は、やはり彼女の言葉だ。

 

 

 

 臆病で何も分からず、逃げようとして。

 

 

 

 誰彼構わず傷付け、でも本質は誰よりもーー繊細で触れたら壊れそうな心の少女。

 

 

 

「ーーフレイ!! どうしてなの?! どうして、貴女がそんなところにいるの!?」

 

 

 

 思わず、ミリアリアは叫んでいた。

 

 

 

 悲しみと何かで胸が張り裂けそうになりながら。

 

 

 

「一緒に行こう? 貴女も一緒にーー!!」

 

 

 

 瞬間、相手を射殺さん程の殺意のある灰色の瞳が、ミリアリアの目に飛び込んできた。

 

 

 

「ミリアリア、アンタに一つ言っておくわ」

 

 

 

 目に反して声には無機質なモノが響いている。

 

 

 

 命の危機を感じて、思わず震えるミリアリアにかまわずフレイは続けた。

 

 

 

「アンタの善意で誰も傷付かないと思ってるなら、それは間違いよ。アンタの価値観をあたしに押し付けないで」

 

 

 

 小動物のように震えるミリアリアに、それだけを告げるとフレイはアゴを兵士達に向けた。

 

 

 

 それだけで前方でミリアリア達に対し、機関銃を構えていた軍人達は下がっていく。

 

 

 

「行くわよ、フィルム・ノワール」

 

 

 

「仰せのままに、ファム・ファタール」

 

 

 

 それだけを述べて、フレイとクルーゼは元来た道を戻り始めた。

 

 

 

「待って、フレイ!!」

 

 

 

「ーーフレイさん? わたくし、フレイさんに見えますか。ミリアリアさん?」

 

 

 

 その声は先ほどまでとは全く違う声。

 

 

 

 穏やかで温かい、聞くものに癒やしを与える声。

 

 

 

「ーーなんだと?」

 

 

 

「どうなってんだ、こいつは?」

 

 

 

 呆然とするミリアリアの左右で、イザークとディアッカが立ち上がりながら、目を見開いている。

 

 

 

「ーージュール隊長。クライン派は裏切りなどしておりません。ただ、わたくしが知っているだけですわ」

 

 

 

「ーーラクス、様だと?」

 

 

 

 そう、髪は長さが腰まで伸びて波打ち、紅の色は薄い桃色に変わる。

 

 

 

「ーーカーボンヒューマンなんかじゃない。なんだ、こいつは?」

 

 

 

 ディアッカも呆然としながら、思わず問いかける。

 

 

 

 これにラクスと同じ姿、声、仕草で彼女は応えた。

 

 

 

「わたくしは、ファム・ファタール。キラ・ヤマトを苦しめる為だけに生み出された、作られしもの」

 

 

 

「ーーそんな、ことって」

 

 

 

 ミリアリアは目を見開いて、ラクスの姿をしたファムを見る。

 

 

 

 余りに理不尽な何かに心を締めつけられながら。

 

 

 

「また、お会いしましょう。ミリアリアさん、ディアッカさん、イザーク隊長。あなた方の健闘を心よりお祈りいたしますわ」.

 

 

 

 闇の中に、闇は消えていく。

 

 

 

 かつて絶望を体現した男を伴って。

 

 

 

 白い光を放っていた彼女に似て非なる、白い闇を放ちながら。

 

 

 

「ーー待って。待って、フレイ!! フレイィィッ!!」

 

 

 

 ミリアリアの慟哭に、ラクスの姿をしたファムは歩むスピードを変えずに去っていった。

 

 

 

 




 皆さん、お待ちかね〜!

 デュランダルの宣言にロゴスの構成員たちも揺らいでいました。

 しかし、ウォンの巧みな誘導で彼らは、悪魔の兵団に引き入れられるのです!

 一方、宇宙に上がっていたマスターは再びデビルガンダム四天王を復活させようとDを伴い、チャップマンとミケロに語りかけるではありませんかぁ!!

 次回、機動武道伝GガンダムSEED Destiny 第64話に!

 レディー、ゴー!!

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