新機動武闘伝 GガンダムSEED Destiny 作:カンナム
一方で、ロゴスとの最終決戦を前にシンとアスランはデュランダル議長に呼び出されるのです。
果たして、どうなるのか!?
それでは、ガンダムファイト!!
レディィィィッ、ゴォォォオオオ!!
第65話
乾いた音が鳴り響いた。
「き、貴様ーー! デビルガンダム様を裏切るつもりか!?」
腹部に強烈な痛みと熱さを感じて、一気に力が抜ける。
周囲を見れば、自分の部下達が同じように銃弾を受けて倒されていた。
目の前にいるのは、金色の髪にサングラスをかけた美女だった。
誰もいないモール街で、ガンダムファイターから見逃された彼が見たのは、ミーアと呼ばれている少女が攫われた事実と、それを問い詰めた際に返答の代わりとばかりに放たれた銃弾だった。
その銃弾には、DG細胞を破壊する毒が編まれている。
サトーはこれが何を意味するかを悟り、血が吹き出るのも構わずに言う。
「大恩あるデビルガンダム様を裏切ってまで、デスティニープランとやらを実行すると言うのか、貴様らは!?」
「大恩? ふざけたことを言わないで。貴方のような生きる意味を無くしたテロリストぶぜいが、議長と自身を比べようなどと。身の程を知りなさい」
続けざまに放たれる銃弾。
サトーの体に次々と穴を開けていく。
「議長はあくまで、あの化け物の力を手に入れたかっただけ。貴方のように忠誠などハナからしていないわ。議長こそが、唯一絶対の正義なのだから! あのミーアって小娘には、まだ利用価値がある。あの化け物への盾にもなるし、ラクス・クラインをおびき出す餌にもなる」
「き、さま、、この、外道め!!」
最後に撃たれたのは、心臓だった。
「プラントを地球に落とそうとした貴方が言うことじゃないわ。何万人もの犠牲者を出そうとしたんだもの。それに比べたら、可愛いものよ」
侮蔑の笑みと共に、女は去っていった。
後を追おうとして、足がもつれる。
うずくまり、倒れる。
うつ伏せだったのを仰向けにしたところで、動けなくなった。
「…申し訳ございません。デビルガンダム様」
救われた命だった。
捨てるはずの命を、拾われたのだ。
その恩をサトーは返せない自分に苛立った。
「何をしている、サトー?」
聞くはずのない声だった。
霞んだ瞳にぼんやりと映る炎のような赤い髪。
「デビルガンダム、さま、、」
彼は静かに自分を抱き起こし、掌から青紫の気を出して銃痕に当ててきた。
本来ならば、それでDG細胞は活性化し、傷は塞がるはずだった。
「…なんだと?」
普段は表情を変化させないDの目が見開く。
この弾痕は、DG細胞の自己再生能力を殺している。
その事実に。
「…デュランダル」
静かに言いながら、Dはガンダムを呼ぼうとした。
デビルガンダム本体ならば、コードを体に突き刺して壊れた細胞を作り替えることができるからだ。
だが、その手を他ならぬサトーが握りしめ、止めた。
「デビルガンダム様、私はもう持ちません。ナチュラルへの憎しみに囚われ、貴方に救われながらも何の恩も返せなかった私を、どうかお恨みください」
「…サトー。何を言っている?」
「悪魔を名乗るには、貴方は優しすぎる。貴方は、純粋すぎる。ですが、そんな貴方だから、私は。私達は」
既に意識はあるのか、無いのか自分でも分からない。
ただ、これだけは伝えたかった。
役立たずの口を開け、舌を動かし、サトーは言う。
「デビルガンダム様、ミーア殿がデュランダルに攫われました。お守りできず、申し訳ございません」
「貴様が、役立たずだと言うのはわかった。わかったから、その煩い口を閉じろ。傷を治してから言え」
「デビルガンダム様、、、私は大切な家族を殺されました。その恨みを忘れたことはありません。ですが、貴方の配下になった時に、知りました。貴方の世界で貴方がどうやって敗北したのかを」
それは、それこそが、テロリストの部隊だったサトー達に再び生きる目的を与えたものだった。
「私も見たかった!! あの美しい輝きを!! 人種も国籍もなく、互いに互いを助け合う、あのような姿を!!!」
胸に溢れた思いの丈を振り絞った。
「分かっている!! 見せてやる、貴様達にも!! だから、死ぬな!! サトー! 命令だ、死ぬな!!!」
頬に温かい液体が当たった。
ああ、自分は目が本当にいかれてしまったようだ。
こんなに都合よく、我が主が涙を流しながら、必死になって自分の名を呼んでくれているのだから。
鈍い音が聞こえた。
固い拳が自分の直ぐ左の地面を殴り、えぐったのだ。
「我の命令が聞けんのか、サトー!!!」
都合の良い夢を見たサトーは、最後に本当に幸せだと笑顔を浮かべて、主に言った。
「申し訳ございません。ありがとうございました、D様。私は幸せでした」
それが、彼の最後の言葉だった。
もう動かない。
DG細胞で細胞を活性化し、体を動かすことはできても、サトーは帰ってこない。
Dは静かにサトーの体を横にさせると胸の前で手を組ませた。
かつて、自分の生みの親であるカッシュ博士が冷凍刑に処された時に、その格好を知っていた。
爆発がモール街の離れで起こった。
DG細胞の気配を感じ、Dはそちらに向かって歩いていく。
まるで、サトーの遺体に後ろ髪を引かれているように、ゆっくりと歩いて行った。
「デビルガンダムよ、どうした?」
目を開ければ、宇宙空間を背景に憲法着を着た長い白髪を三つ編みにした壮年の男が、モニター越しにこちらを伺い見ている。
先ほどまで、激戦を繰り広げていた東方不敗マスターアジアと愛機マスターガンダムであった。
彼の隣には、先の激戦を繰り広げた相手、短髪の青みがかった髪をオールバックにした凄みと気品を感じさせる男。
ジェントル・チャップマンがジョンブルガンダムの頭部を再生させている。
「夢を見ていたようだ」
デビルガンダムことDの言葉に、この場にいたもう一人の男が嘲笑った。
「おいおい、機械の身分で夢を見るとはな! 鉄クズから進化したじゃねえか、デビルガンダム!!」
いいご身分だと、全身で表現する男の名は、ミケロ。
トサカの様に坂だった赤い髪と鋭い瞳。そして、尖ったアゴや頬の輪郭は、猛禽類を思わせる。
彼の愛機、ネロスガンダムもまた、赤銅色のトサカを付けたような、無骨な古代戦士の姿を模していた。
「…マスターよ、拠点を作ると言ったな?」
挑発をするミケロを完全に無視して、Dはマスターガンダムを見下ろす。
「そうだ。我らもまた、拠点や兵の数がなければ組織とは事を構えられぬ。力で収めることもできようが、それでは大切なものまで壊してしまう可能性がある」
「…我は、死人は操らぬ」
はっきりとDは言った。
「我は、生者を操らぬ。我は二度と、この細胞で何かを支配せぬ。それでも我と共に貴様は歩むと言うか?」
「はあ!? おいおいおい! 何のためのDG細胞だよ!?まさか、ドモン・カッシュの影響で偽善者にでも目覚めたのかよ?」
問いかけるDの言葉にミケロが天を仰ぎながら言う。
「アホくせえ。何だって、そんな便利なもんをわざわざ、使わねえようにしやがる」
「文句があるなら失せろ。マスターアジアやチャップマンならともかく。貴様のような半端者と組むくらいなら我は独りで良い」
「ーーあんだと、こら? 口の利き方に気をつけろよ? 女も守れねえ、出来損ないの機械人形がよぉ!!」
「…よほど死にたいらしいな、ミケロ」
殺気を前面に出して睨み合う両者。
見上げネロスガンダムと見下ろすデビルガンダム。
今にも爆発しそうな両者だったが、そこへーー
「やめんか、馬鹿者ども!」
「退がれ、ミケロ」
二人の戦士から、待ったがかけられた。
「デビルガンダム、いやDよ。貴様の考えはようく分かった。安心するがいい、ワシもその様な外道な真似をする気は最早、全くない」
満面の笑みで、温かささえ感じさせる声でマスターアジアは、Dとチャップマンに言った。
「その様な事をせんでも、ワシらは人類の脅威足りえよう」
これにチャップマンがニヤリと凄みのある笑みを浮かべてかえした。
そんなマスターアジアにミケロは不満気に名を呼んだ。
「おい、マスター!!」
「黙っていろ、ミケロ。安易な道よりも困難な道の方が達成する気にもなると言うものだ」
「ま、マジで付き合うのかよ? チャップマン!?」
「嫌ならば、この場でマスターアジアとデビルガンダムを相手にするのだな」
「ーーぐっ」
チャップマンからの物言いに、ミケロは歯を食いしばりながらDを睨みつけた。
「甘っちろい悪魔の配下なんざ気に入らねえ。気に入らねえが、強くなるためなら、何だってしてやらあ」
「ーーふん」
Dと互いに睨み合うと、ミケロはデビルガンダム軍に入る事を頷いた。
「話は決まったな。ではDよ。すまぬが、先ほどの艦を復活させてくれ。動かすのは、ミケロに任せるとしよう」
「はあ!? 何だって、俺が!?」
「つべこべ言うでない、この未熟者!! ワシやチャップマンには、しばらく休息が必要だ。それにDには他にやってもらわねばならんことがある」
マスターに一喝され、更にチャップマンが追い打ちをかける。
「強くなるためなら、何でもするのではないのか? その程度の覚悟とはな」
その言葉に、ミケロの眉間に皺が寄った。
猛禽類を思わせる血のような紅い眼で3人を睨み付けると、彼は声高々に宣言する。
「ーー上等じゃねえか。今は、てめえらの召使いにでも何にでもなってやらあ。だがいずれ必ず、てめえらとドモン・カッシュをまとめて俺の前に跪かせてやる!!」
ジブラルタル基地。
ザフトの連合に対する砦であり、目と鼻の先にある連合基地ーーヘブンズベースを攻略するためにザフトおよび反ロゴスの連合戦力が集結している。
そこへ一隻の艦が入港した。
ザフトの新型戦艦にして、英雄の扱いを受けているミネルバ隊である。
「ずいぶん、歓迎されてるみたいね」
「そりゃ、アークエンジェルとキラ・ヤマトを倒したことになってますからね」
タリアが皮肉気に言うと、隣でアーサーも苦笑気味に言った。
「…デュランダル議長も正午には降りてくるそうよ。アスランに伝えておいてくれる?」
「ああ、それなら既に伝えてます。ジュール隊長でしたっけ? 銀髪の彼から急ぎの通信とかで」
「ジュール隊長? プラントの防衛部隊の隊長がどうして?」
「さあ? なんでもオーブのキョウジ殿の手引きとかで」
アーサーの言葉に一つ頷くと、タリアは目を細めた。
「? 艦長、ジブラルタル基地から伝令です」
「どうしたの、メイリン? え?」
メイリンからの報告にモニターを確認してタリアも目を丸める。
「ギルバート・デュランダル議長が、ジブラルタル基地に着いている?」
「シン・アスカとアスラン・ザラを出頭させろってーー!」
アーサーも隣で思わず命令文を朗読していた。
「……先手を打ってきたわね。ギルバート」
親指を噛みながら、タリアは伝令文を睨みつけた。
アークエンジェル撃墜命令以降、デュランダルへのプライベート回線は一切シャットアウトされている。
「今回も、シンとアスランだけを呼ぶ、か」
「艦長ーー。アスランは……!」
オーブ少佐としての地位を兼用しているアスランはアークエンジェルの件もあって下手をすれば、殺される。そう言おうとする副長をタリアは目で制した。
「シンとアスラン、それとシュバルツ殿を呼んで。対策を練りましょう。むざむざ、アスランを殺させるわけにはいかないわ」
「分かりました!」
メイリンが答えながら艦内通信でシンとアスラン、シュバルツを参集する。
程なくして、彼らは現れた。
「? お姉ちゃんとレイは呼んでないんだけど?」
一緒に来た二人に思わず言うと、ルナマリアが妹に言う。
「議長に呼ばれたんでしょ? シンとアスラン。何かあるって分かるもの」
「……シンは、キラ・ヤマトを倒している。それにアスランもアークエンジェルを撃った。議長が何かをする理由がない」
「それは、あんたの考えでしょ? 希望を持つのはやめなさいよ。下手したら二人とも殺されるかもしれないんだから」
「ギルは、そんなことはしない!」
ルナマリアの言葉に感情的になって言うレイをシュバルツが目で収めた。
「レイ、信じたい気持ちは分かるが。今は状況が状況だ。最悪の事態を想定して行動するのは間違いではない。いつもの冷静なお前ならば、諭されるまでもなく分かるはずだ」
「……俺が、冷静ではないと?」
「ああ、今はな」
シュバルツにまではっきりと断じられ、レイは思わずうつむく。
シュバルツはシンとアスランにのみ分かるように目配せをしてきた。
少なくとも、レイは気付いていない。
シンとアスランは互いに横目に見合った後、シュバルツと話を詰めていった。
時間になり、シンとアスランは共にデュランダルの下へ出頭することになる。
「ーー何もなければ良いのだけれど」
「ですね。シュバルツ殿は?」
「万が一の時の為に、ガンダムシュピーゲルに乗って待機してもらっているわ。この辺りには連合の船に紛れてオーブの工作員もいるみたいだから、いざとなればアスランは」
「本当に、万が一なんて起きて欲しくないですね。もうこれ以上は、ゴメンだ」
シュバルツのおかげで確かにアークエンジェルやキラは無事だった。
だが、それでも、仲間だと思っている相手をたとえ演技とはいえ撃たなければならない。
アーサーは、そんな思いはゴメンだと、強く思っていた。
タリアも頷きながら、まるで敵地に二人を送り込むかのような気分でシンの運転する車を見送った。
「アスラン隊長ーー」
車を走らせながら、シンはアスランに話しかけた。
「? 何だ、シン?」
「万が一の時は、俺が隊長を守りますから」
はっきりと、シンはアスランの目を見て言った。
これにアスランは苦笑する。
「バカ、俺たちは敵地に行くわけじゃない。勲章を授与されに行くんだろ?」
「…それは、そうですけど」
アスランは軽い口調のままに、言った。
「万が一の時は、俺もキラの時のように頼む」
「…俺は!」
思わず、シンはキラを倒した時の事を思い出し、アスランに抗議する。
「分かってる、万が一の時だ。頼むよ、シン」
「…はい」
頑固なアスランの態度にシンは不承不承、頷いた。
車は、広大な屋敷の中に招き入れられる。
2人はすぐにデュランダルの待つ式典場に案内される。
大勢の兵士達が拍手と共にシンとアスランを迎えた。
祭壇の奥には、デュランダルが笑みを浮かべて立ち。
その傍らにはラクス・クラインを模した少女がこちらに微笑みを浮かべている。
「気をつけ!!」
アスランが式場に響くように声を上げると同時にシンも見事な所作で背筋を伸ばした。
「アスラン・ザラ!!」
「シン・アスカ!!」
「以上2名は、デュランダル議長の出頭命令を受け、出頭しました!!」
一度、声を切り同時に頭を下げる。
「敬礼!!」
見事なアスランとシンの所作に居合わせた人々から感嘆の声が上がった。
デュランダルは満足気味に頷くと、左手を祭壇の前に差し出す。
アスランが先頭に立って歩き、シンがピタリと後ろに着く。
2人は壇上に上がり、祭壇の前で議長と顔を合わせると再び敬礼した。
「アスラン・ザラ」
ラクスの姿を真似た少女、ミーアがアスランの名を読み上げる。
これにアスランは、議長の前に一歩出て正面に見る。
「勲章ーーアスラン・ザラ殿。貴殿は、ローエングリンゲートやベルリンで類い稀な活躍を見せ、我が軍に勝利をもたらした。よって、ここにネピュラ勲章を授与する」
賞状を読み上げ、アスランに手渡す。
「おめでとう」
アスランは、節度ある洗練された動きで丁寧に賞状を受け取った。
横に来ていたミーアが微笑みながら、アスランの首に勲章をかけた。
その後、アスランはシンの隣まで下がる。
ミーアがもとの位置に戻ると次にシンの名が呼ばれた。
「シン・アスカ」
先のアスランのように、シンも一歩前に出てデュランダルの面に相対する。
先のアスラン同様にデュランダルは賞状を読み上げた。
「勲章ーーシン・アスカ。貴殿の功績は先のアスラン・ザラと同様である。更に貴殿はアラスカにて世界を混乱させんとしたアークエンジェル及びキラ・ヤマトを撃墜した。よって与えるネピュラ勲章は、二つ授与する!!」
デュランダルは、賞状を手渡してきた。
「おめでとう」
その言葉にシンは、頭の中にキラの笑顔が浮かんだ。
ベルリンの街の惨状が。
スティングやアウル、ステラの事が。
「ーーありがとうございます」
彼は静かに頭を下げ、丁寧に受け取った。
ミーアから勲章が二つ首にかけられた。
「敬礼!!」
アスランの号令が再び会場に響いた。
式典が終わり、アスランとシンはデュランダルの元を訪れた。
と言っても彼らが案内されたのは客間ではなく、MSの製造工場であった。
「ーーこれは!」
「ガンダムーー!」
アスランとシンが同時に声を上げる。その先に、ギルバート・デュランダルがミーア・キャンベルを連れて立っていた。
「やあ、よく来てくれたね。アスラン、シン・アスカ君」
にこやかに言うデュランダルに、アスランとシンが頭を下げた。
「ーーお久しぶりです、議長」
「自分たちをお招きいただき、ありがとうございます」
2人の丁寧な対応にデュランダルは苦笑を浮かべた。
「ーーそう固くならないでくれ。ここには、私と君たち。それにアスランの婚約者たるラクスしかいない」
デュランダルの言葉に応えるように静かに佇んでいたミーアが前に出る。
「ーーアスラン、お久しぶりですわね。お元気でしたか?」
「え? あ、はい」
そのミーアの姿にアスランは違和感を覚えた。
先の映像で見たラクスに似せた少女と違い、今の彼女は間違いなくミーアだ。
だが、彼女ではあり得ない反応をしている。
まるで感情が抜け落ちたかのような、人形のような微笑みだった。
「ーーラクス、何があったのですか?」
「? 何もありませんよ、アスランたら。どうしたのですか?」
「あ、いや。そうですか。何もないなら、構わないんです」
言いながら、アスランは下がる。
シンが後ろから小声で言ってきた。
「ーー隊長。彼女って前に会った? 何があったんでしょうか?」
「後にしよう、シン」
「ーーはい」
2人は言い合うとデュランダルに目を移した。
「ーーどうかしたのかね、2人とも」
微笑みを浮かべるデュランダルに、2人は向き直るとシンが口を開いた。
「いえ。議長の後ろにあるMSが気になったもので。パイロットとしては、やはりMSに目が行きますから」
全く臆する事なく告げるシンにアスランも一瞬、苦笑した後に続ける。
「素晴らしいMSですね。やはりロゴスを倒す為に?」
2人からの言葉にデュランダルは微笑みを浮かべて答えた。
「ああ、私はとんでもないことを始めてしまったよ。まさかこんなことになるとはね。しかし、アスラン。君がオーブではなく我々と共に来てくれるとは。有難い」
「ーーロゴスを討つことに、俺は異論ありませんから」
「その為にかつての戦友やキラ・ヤマト君を討たねばならなかった。君の気持ちを考えるとねーー」
哀しげに言うデュランダルの目を見返して、アスランははっきりと言った。
「ーー戦争は、ヒーローごっこじゃない。どちらにも正義はあるし、被害はある。だからこそ、俺は二度と迷いません」
アスランの強い口調にデュランダルは満足そうに笑った。
「キラ・ヤマト君にも、それだけの強い意志があれば。あんな不幸なことにはならなかったのだろうがーー」
「ーー不幸?」
その言葉に、アスランは目を大きく見開いてデュランダル議長を見る。
「何故こんなことに、何故世界は願ったように動かないのかと。実に腹立たしい想いだろう。だが言ってみれば、それが今のこの世界、と言うことだ」
デュランダルの言葉にアスランは目を鋭くする。だが、彼は何も言わなかった。
デュランダルは話を続ける。
「今のこの世界では、我等は誰もが本当の自分を知らず、その力も役割も知らず、ただ時々に翻弄されて生きている。
君たちとて、何度か手合わせして知っているだろう。キラ君にはあれだけの資質、力がある。彼は本来戦士なのだ。モビルスーツで戦わせたら当代彼に敵う者はないと言うほどの腕の」
シンは、静かに唇を噛み締めた。
デュランダルの言葉は続く。
「なのに誰一人、彼自身それを知らず、知らぬが故にそう育たず、そう生きず、ただ時代に翻弄されて生きてしまった」
デュランダルはアスランを見ながら告げる。
「あれほどの力、正しく使えばどれだけのことが出来たか分からないというのにね」
その言葉を聞いてからだった。
シンが口を開いた。
「ーー不幸なんかじゃない」
「うん? シン君、今なんと言ったのかね?」
ボソリと呟いたシンの言葉。
デュランダルは、アスランに注意が行っていた為に聞き逃していた。
「キラさんは、不幸な人間なんかじゃない!」
「ーーシン、よせ!」
もう止まらなかった。
アスランの制止された腕も振り切り、シンはデュランダルに叫ぶ。
「議長は会った事もないのに、どうしてあの人の事を決めつけられるんですか!? 戦いだけが、キラさんの全てじゃない!!!」
赤い炎のような瞳でシンはデュランダルを睨みつけた。
「よせ、シン。堪えろ、堪えてくれ、頼む!!」
アスランが、必死にシンを制する。
このままでは、シンは殺されてしまう。
アスランは、それを確信していた、だから。
「ーー申し訳ありません、議長。シンには俺から言って聞かせますから」
アスランとて、デュランダルの言葉に何も感じてない訳じゃない。
大切な友人を侮辱されたのだ、シンが爆発しなければ踏み絵だと分かっていても耐えられたか、自信がない。
「ーーなるほど。命がけで倒した君が言うのだ。すまなかった、シン君。私の間違いだ」
だが、議長は真摯に受け止めて謝罪した。
これにシンも目を丸くする。
「あ、いえーー」
「こんな紹介になってしまって申し訳ないが、実はこのMS二機は君たちの為につくられたものでね」
デュランダルは苦笑と同時に背後に佇む二機のガンダムを見据えて紹介した。
「ZGMF-X42S、デスティニー。ZGMF-X666S、レジェンド。どちらも従来のものを遙かに上回る性能を持った最新鋭の機体だ。詳細は後ほど見てもらうが、おそらくはこれがこれからの戦いの主役になるだろう」
シンとアスランが二機のガンダムを仰ぎ見る。
「ーー君たちの新しい機体だよ。アスラン、シン君」
2人は仰ぎ見ながら呆然と言った。
「俺たちのーー」
「ーー新しい機体?」
皆さん、お待ちかね〜!
ついにザフトを脱走するアスラン。
シンも新型のMSで、撃破したふりをしてアスランを逃すことに協力します。
しかし、その作戦を聞かされていなかったレイは、目の前でアスランを落としたシンに激しく詰め寄るのです。
次回、機動武道伝Gガンダム SEED Destiny 第66話に!
レディー、ゴー!!