新機動武闘伝 GガンダムSEED Destiny 作:カンナム
究極の数を相手にするシン達とスティング達。
そこに乱入したのは、未来世紀でドモン・カッシュ率いるシャッフル同盟と戦ったデビルガンダム四天王だったのです。
果たしてシン達は、この戦いをどう切り抜けるのか?
それでは、ガンダムファイト!
レディィィィッ、ゴォォォオオオッ!!
強大な爆発と共に、凶悪な力を誇っていた魔神は消えていった。
その前に立つのは、紅い翼の紅いボディのトリコロール。
白を基調とした20メートルを優に超えるガンダムであった。
そのガンダムのファイターたる紅い髪の青年は、静かに。
燃えていくデスルークの残骸を踏み潰すと、目の前に広がるデスアーミーに向かって紅の目を向けた。
「我が子。デスアーミー達よ、我に歯向かうか?」
気負いも何もない。
それは質問ですらない。
ただの確認だ。
だが、その何気ない言葉にどれだけの殺意が込められたのであろうか?
言葉を向けられた訳でもないのに、シン達は心臓を握りこまれたかのような重圧を感じた。
しかし、悲しいかな。それとも幸せかな。
怒りも悲しみも、恐怖すらも感じないデスアーミー達は静かに銃を、武器を親であるデビルガンダムーーDに向けて構える。
「そうか。ならば、失せろ」
デビルガンダムの右手が蒼く燃え上がる。
そのまま、右手を前方にかざすと。
強烈な光を放った。
地響きが辺りに鳴り、地面が揺れる。
強大な光の一撃に、着弾した地面は爆発し、無数のデスアーミー、ネービー、バーディーを消し飛ばした。
デビルガンダムは、前方にかざされた蒼く燃える右手をそのままに、ゆっくりと敵本拠地に顔をむけた。
体をそちらに向け、歩いていく。
「ーーな、何てめちゃくちゃなパワーだ」
思わず、シンがそう言うとマスターアジアから檄が飛んだ。
「馬鹿者! 感心しておらんで、やるべきことをせんか! この未熟者!」
「ーーって言っても」
次々と基地の施設ごと消していくデビルガンダムに、シンは冷や汗を流した。
「さすがに、アレについて行くのはちょっとーー!」
「ふふ、背を追おうとする心意気は良いが。ヤツに付いて行くのは、貴様にはまだ無理だ。それは恥ではない」
予想外のことでマスターアジアに認められ、戸惑うシンは問いかけた。
「なら、どうしろって?」
「シュバルツが、この場におらんということは貴様らは陽動であろう? 陽動ならばもっと派手に動かんか」
「派手にーー? あ!」
目の前で暴れ回る魔王を名乗る機体を見てシンも得心した。
「なるほど、要は暴れ回るってことか!!」
「左様! だが、気をぬくな? 敵は待ってはくれぬぞ?」
言いながらもマスターガンダムが右手を紫に燃やし、前方に向かって放った。
「ダァァアクネス、フィンガァアアアッ!!」
エネルギーの渦が光となり、全てを飲み込む。
その威力に目を見張る6人。
そのうちの三人ーー己の弟子に向かってマスターアジアは笑いかけた。
「我が弟子たちよ、ワシの技を見取りさらなる成長を遂げてみせい!!」
「「「はい、師匠!!!」」」
マスターガンダムは、本拠地に向かってゆっくりと歩み去るデビルガンダムを見送る。
彼は、邪魔をする者を本当に片っ端からその右手の光で消していく。
その様を確認すると、ジョンブルガンダムとネロスガンダムをふりかえって見据えた。
「では、わしらも派手に行くとするか!」
これにチャップマンが凄みのある笑みを返し、ミケロが凶暴な貌になって答えた。
「全滅させてもかまわんのだろう? あの悪趣味な部隊は」
「御託はいいってんだよ、さっさとやろうぜ! マスター!!」
二人からの返答に満足気味に笑むとマスターアジアは、ゾンビ兵の大群を睨み据える。
「ならば行くぞ!! 世界よ! そして人類よ!! ワシらの力、とくとその目で見るがいい!!!!」
一方的な蹂躙が始まった。
デビルガンダムの理不尽なまでの力が、マスターガンダムの強烈な技が、ジョンブルガンダムの無比な一撃が、ネロスガンダムの凄絶な蹴打が。
数あるゾンビ兵を文字通り紙のように畳んでいく。
この余りの光景に、連合もザフトも何もできずに呆然としていた。
「俺達も、負けてられない! レイ! ルナ!!」
「! ああ、分かっている!!」
「OK! 行くわよ!!」
否、この三人の少年たちは違う。
今、やるべきことを見出し、彼らにできることを考えて最善を導き出すために動く。
「アウル! ステラ!! 俺達も続くぞ!!!」
「任せとけ、スティング!!」
「うん、行こう!!」
共に歩む者たちは、彼らと同じく年端も行かない少年兵たち。
だが、大人である兵士達よりもはるかに早く、彼らの方が動いていた。
ウォンは、一気に蹴散らされていく大群を見ながら言う。
『やれやれ。
数はもはや意味を成しませんね。攻めるのならばともかく、防衛戦でマスターガンダムやデビルガンダムを敵に回しては。おまけに、ジョンブルガンダムにネロスガンダムですか。かつての四天王達が、敵になるとはね』
言いながらため息をつく。
そして、告げる。
『仕方ありません、ウルベ。準備は良いですか?』
その言葉に、その場で唸っていたロゴス幹部達が乗るデスルークが光り始めた。
「…う…う…!!?」
うめき声を上げるしかなかった者たちが更にコードを差し込まれて別の身体に作り変えられていく。
現れたのは、長髪に鉄仮面をつけた筋骨隆々の男。
先ほどDに倒されたウルベ・イシカワだった。
シンがその光景に目を見張る。
「なんだよ、これ! どういうことだ!?」
先ほどまでロゴス幹部だった男達。
人種も国籍も体形も異なる者たちが、皆同じ顔をした男に作り変えられている。
冷酷な笑みと瞳で彼はDやシン達に笑いかけた。
「DG細胞とはすばらしい。この力を使って私は私を増やすこともできる。君たちは私を倒せば倒すほど、倒された記憶を持つ私は進化していくと言うわけだ」
ニヤリと笑いながら、ウルベは続ける。
「しかし、一つ気になるな」
そう言ってウルベの一人がデビルガンダムを睨み据えた。
「何故、DG細胞の支配を使わない? 君の能力ならばデスアーミー達くらいは操れるだろう?」
その言葉に、シンも目を見開く。
「ーーーーえ?」
これにスティングが答えた。
「師匠が教えてくれた。こいつらはDG細胞という特殊な金属からなる物質でできてるんだ。有機物、無機物関係なしに自分の一部としちまう恐ろしい細胞でな。そいつを統括し生み出したのが、そこにいるデビルガンダムだ」
「…ベルリンの街を焼いた部隊も、元凶はこの紅いガンダムか!!」
シンが思わずアロンダイトを構える。
アウルがマスターガンダムを見ながら言った。
「でも、どうして師匠がこんな奴と?」
これにマスターアジアはにやりと笑みを返して言った。
「言うたであろう? わしらは人類の敵となる、とな」
「敵? どういうことなの!?」
ルナマリアがこれに問いかけると、マスターはそれ以上は言わずにこう告げた。
「今はウォンとウルベを倒すことが先決! 話はあとだ、いくぞ!!」
そういいながら無双していくマスターガンダムを見据えて、ルナマリアがつぶやく。
「勝手な奴ーー」
人の意見を聞き、尊重するシュバルツとは大違いだと、呆れた表情で見ながら、増えたデスルークを見やる。
Dは、彼らが見守る中、静かに告げた。
「我は二度と支配はせぬ。それだけよ」
この言葉とDの目にシンには何かが見えた気がした。
シンの脳裏に浮かんだのは、戦争の犠牲となった自分の両親と妹だ。
「あーー?」
Dの目をシンは知っている。
アスハやアスラン、キラと同じ目だ。
自分が誰よりも尊敬するシュバルツ・ブルーダーと同じ目をしている。
あの目は、大切な何かを守れなかった者の目だ。
大切な何かを失ってなお、前に行く強さを持つ目だ。
それを理解したとき、自然とシンは構えたアロンダイトを下げる。
「ふ、ハハハハハハ!!! 傑作だ、悪魔と呼ばれたお前が、支配をしないだと!!? ドモン君の影響か!?」
これを笑い飛ばすのは冷酷な笑みと人間離れした冷たい瞳を持つ男。
「笑わせてくれるな、デビルガンダムよ」
これにDは静かに彼を見返した。
瞬間だった。
デスルークの目の前にDは瞬間移動したようにその巨体を踏み込ませる。
「ちぃ!!」
自分のみぞおち辺りにある顔に向かってウルベのデスルークが拳を振り下ろす。
それを左手一本で難なく受け止めるデビルガンダム。
目を見開いたウルベの腹にデビルガンダムの強烈な右正拳が決まっていた。
「ぐふぉ!?」
一撃で巨体の膝を曲げ、前のめりにくずおれるウルベ。
それを見下ろすデビルガンダム。
魔王は静かに魔神の笑みを浮かべていた男を見下ろしている。
「どうした? 笑ってみよ、ウルベ。我が許す」
そう言うと無感情だったDの貌に凶悪な笑みが浮かび上がる。
生きる者すべてを食らいつくさんとする悪魔のような笑みが。
これにほかのデスルークを駆るウルベ達が殺到した。
「おのれ!!」
「デビルガンダムめ!!」
デビルガンダムに殴りかかったのは十数体あったデスルークのうちの6体。
だがーー。
一体目の右正拳を左に見切るとデビルガンダムは彼の懐にあっさりともぐりこみ、自分より大きなその顎を蹴り上げた。
巨体が数百メートルの高さまで跳びあがり地面に叩きつけられる。
かまわず2体目のデスルークが、デビルガンダムの胴体に巨大な足で蹴りを仕掛けてくるのを左掌であっさりとつかみ取る。
「ーーな!?」
掴みとめられたと気付いた時には、デビルガンダムの顔が目の前にあった。
そのまま、遥か後方まで顔面を殴られて吹き飛ばされる。
残る4体はコンビネーションを仕掛けてきた。
同時にデビルガンダムの四方を囲み、ラッシュを仕掛けたのだ。
巨体とは思えない拳蹴打の雨あられを、デビルガンダムは両腕と両足を使って巧みに捌いていく。
まるで後ろに目でもあるのかと言う正確さと見事な技、人間離れした反射速度に、力。
4人のウルベが完全にさばき切られたのを見て驚愕に目を見開いた隙に、デビルガンダムの右足が上がり、その場で周囲を蹴り薙ぐ。
4体まとめて後方へ弾き飛ばされる。
6体が同じ位置にまとめられたと悟った時、デビルガンダムの右手が光った。
「暴裂! デビィイイイイルフィィンガァアアアア!!」
何もできずに光に消えていくウルベ達。
これをほかのウルベ達が戦慄しながら見ている。
「ば、ばかな」
「なんだ、この強さは?」
「し、信じられん」
右手の光を納めると、デビルガンダムは彼らに背を向けて本陣のあるヘブンズベース基地に向け、再び悠然と歩き始める。
それを止めることは最早ウルベ達にはできない。
それほどの力の差を見せつけられていたのだった。
奇しくも6人がかりで先ほど挑み、ひねられた自分たちと重ね合わせてシンやアウル達は考えてしまう。
「お、おい、シン。あのデカい奴、無茶苦茶強かったよな?」
「俺達とはレベルそのものが違うな。さすがシュバルツさんより強いってだけのことはあるぜ」
「ま、マジかよ…!? 師匠と互角だったあの忍者より強いのか!?」
「ああ、本人が言ってた。あいつに勝った弟さんは更に強いってな」
あの時の誇らしげな男の顔を思い出し、シンは思う。
(俺もいつか、あの人にあんな顔をして話してもらえる男になるだろうか?)
思いながら、シンは頭を振る。
「そのために、俺は強くなる。だろ、デスティニー?」
言いながら、こちらに絶えることなく現れるデスアーミー達を睨み据える。
「あの人が、言ってた。ウォンとウルベはあの人の母親の仇だって。だったらーー!!」
その時が来るまで耐えきる。
それぐらいは訳がない。
何故なら、自分はーー
「シュバルツ・ブルーダーの一番弟子! シン・アスカだ!!!」
一方、ロゴス幹部であるジブリールは今、悠然と潜水艇のあるドックにて脱出の準備を行っていた。
「君たちの作戦は完璧だな。これほどとはーー」
自分の向かいには長髪の軍服の男。
ウルベ・イシカワがワインを片手に一杯ひっかけている。
「幼稚な正義にわざわざ付き合ってやるのも、時間を稼ぐためだと言えば分かり易くていいだろう。我々が安全に宇宙に行くためにもね。我々の目的は、デュランダルの持つDG細胞・コアだ」
これに続くのは、マルグラサンをつけた青年実業家。
ウォン・ユンファだった。
「ザフト軍のプラントやMSの技術を大量に記録し、デビルガンダムの生体ユニットであるDを作り出した記録。ぜひとも手に入れておかねばなりませんねぇ。上手く行けば、我が軍はかつての四天王クラスの力を雑兵に持たせることが可能になる」
ウルベが静かに言う。
「…そろそろか。まったく、オーブもつくづくツイていない国だ。せっかくキョウジ・カッシュのおかげで立て直せたと言うのに、こんな間抜けが我々に近づいてくるのだからな」
笑いながら脇に縛られていた二人の男を見据える。
一人は壮年の男性で、もう一人は青年と言った年齢だろう。
二人はオーブの政治家の証である上着を羽織っていた。
さるぐつわをかまされ、両腕を後ろ手に括られている彼らの名は、ウナトとユウナ。
オーブの有力な政治家であり、ブルーコスモスとの癒着問題でデュランダルやプラントに目を付けられていた二人組である。
話は少し遡る。
セイラン家邸宅では、焦りに焦った表情のウナトとユウナが居た。
「どうして!? どうして、こうなるのさ!? なんでギルバート・デュランダルは僕たちの事を売ったの!?」
ユウナの頭の中では、オーブとブルーコスモスとの癒着問題を教えることで、デュランダルとのパイプを持つ。
これで落ち目のブルーコスモスを見限り、且つ目の上のたんこぶ、何処の馬の骨とも知れない、あのいけ好かない男。
キョウジ・カッシュを排除できる。
これで、何もかも上手くいくはずだった。
「ばかものが!! 何故、私に黙ってこんな真似をした!?」
ウナトの怒声が飛ぶ。
即座にユウナが吠え返した。
「だって! カガリはあいつに! あんな奴に取られたんだよ!? 父さんは悔しくないの!? オーブ政権も何もかも! あんな奴に持っていかれてさ!?」
確かに追い詰められていた。
あのキョウジという若造一人に、オーブの政権は一気に持っていかれていた。
しかし、息子がここまで勝手な行動をとるとは思わなかった。
キョウジ・カッシュからの手紙は、忌々しい程に分かりやすいものだった。
ユウナがプラントに向けて資料を送ったアドレスを、どうやって暴いたのかは分からないが。
それを添えた一言だった。
ーー 説明をしていただけませんか? --
説明?
完璧なまでに外堀を埋めてくるくせに、何をこちらにもまだ逃げ道があるように言うのだ?
下手な言い訳をすれば、その時点でセイラン家は終わりだ。
かと言って、このまま奴の言う通りにしていれば自分たちはいずれゆっくりと滅んでいくだろう。
少なくとも、せっかく手に入れたオーブの主権を完全にあきらめなければならなくなる。
「父さん! こうなったら、ヘブンズベースに集まってるジブリールに助けてもらおう!!」
「なに? ジブリール卿に?」
ここまで夢を見ているとは思わなかったと呆れた顔でウナトは自分の息子を見た。
「ジブリールは多分、負けるよ! ヘブンズベースを攻略するのに大勢の連合とザフトが共同で戦線を張るみたいだからね。そうなったら、二年前みたいにオーブのマスドライバーを使うはずだよ! そいつを利用させてやるからってーー!!」
「……オーブの施設を売ると言うのか? お前は」
「だったら、今すぐ!! あの鬱陶しい男を排除してよ! できないんだろ!? だったら、ジブリールに殺してもらうのが早いじゃないか!!」
「子どもでも分かることだぞ!? そんな夢物語ができるわけないだろうが!!!」
その時だった。
部屋の出入り口が開いたのだ。
「…はじめまして。お取込み中、失礼しますよ」
見たことのない男だった。
緑がかった長い髪にサングラスをかけ、トレンチコートに濃い茶色のスーツを着た、胡散臭い笑顔の若い男。
ウナトの表情が疑問に変わる。
何故? こんな男がいるんだ?
誰なんだ?
そんな疑問を感じている間に息子が笑顔で男を迎える。
「ウォンさん!!」
「…ユウナ様、お久しぶりです。わざわざ、お招き戴きありがとうございます」
思わずウナトはユウナを睨みつけた。
「お前は何を考えている? こんな得体のしれない男を何故屋敷に呼んだ? プライベートの知人ならば政治的な話の場には呼ぶなとあれほどーー!」
「得体のしれないだなんて、父さんはものを知らなすぎるよ。彼こそロゴスの参謀であり、我々セイラン家を救ってくれるウォン・ユンファ氏だよ、父さん」
「ーー何? ロゴスの!?」
思わずウナトはユウナを睨みつける。
そこに男ーーウォンが語り掛けた。
「何故、ブルーコスモスを売ろうとしていながら、その上層部であるロゴスと繋がりを持っているのか? 気になりましたか、セイラン氏」
笑顔で言い当てられ、ウナトは男を睨みつける。
ユウナが笑顔で説明する。
「ウォンさんからの指示だったんだ。プラントの能力を見たい。どの程度把握されているのかを確認したいから、僕たちの癒着問題を晒してほしいってね。僕たちの安全は保障してくれるって」
「安全? ブルーコスモスが裏切り行為をした我々を許すだと? 本気で言っているのか、ユウナ」
「ウォンさんは、違うよ。父さん」
二人の会話を聞き流し、ウォンは会釈をしながらテーブルに置かれたキョウジからの手紙を手に取ると、文面と資料を一目見てため息を吐いた。
「…これはこれは。デュランダルはブルーコスモスとの癒着問題を全てわかっている、という警告とあなた方に対する注意ですか」
「分かるのか?」
ウナトが思わずといった形で声を上げる。
「もちろん。この文面と資料だけで十分です。やはり、ロゴスは無能の塊だったか。口座だけでなく末端のブルーコスモスの方も知られているとは」
ジッと資料を見てから彼は言った。
「では、参りましょうか? セイラン殿、ユウナ様」
「な? どこへだ!?」
ウナトが問いかけたところで、彼はこう答えた。
「あなた方がこの国にこのまま留まったところで、反逆罪で裁かれるだけです。一緒に来なさい」
「ほらね、父さん!」
笑顔でいうユウナにウナトが思わずうなる。
「ーーしかし」
そんな彼に、ウォンはこう言った。
「いずれ私たちロゴスが再び地球圏を制圧し、宇宙のプラントをも支配下に置くでしょう。その時にこんなちっぽけな国はあなた方に返してあげますよ」
「確かにロゴスがその気になれば可能だろうが。君がロゴスの参謀という証拠はあるのか?」
「これで、どうです?」
ウォンが差し出したのはロゴスのマークの入った純金製のバッジだった。
一目見ただけでウナトの目が見開き、顔が青ざめる。
目の前の男が本物だと分かったのだ。
同時に自分の発言をふりかえり、無礼を理由に殺されることに思い至った。
「ウォンさん、僕達を勝利に導いてくれるんだよね?」
「もちろんです。私が勝ち馬に乗せてあげますよ。あなた方、セイランをね」
そう言う男の言葉に逆らい難く、ウナトは彼の手を取っていた。
そして、今、さるぐつわを噛まされて、息子共々無様に地べたに転がされている。
「さて、そろそろあなた方を救うヒーローが現れるころだ」
そう言いながら時計を見ると同時に、格納庫の壁を一人の覆面の男がすり抜けてきた。
その姿に、ジブリールは驚愕した。
「な、何者だ!?」
現れた男は静かにウォンとウルベを見る。
「ーー私はネオドイツのガンダムファイター。そう! シュバルツ・ブルーダーだ!!」
「な、なんだと!?」
シュバルツの名乗りを聞いて、ジブリールが驚愕に目を見開く。
「ようこそ、シュバルツ。早速ですが、取引です」
「…何だと?」
ウォンがシュバルツの前に猿轡と両手足を縛られたウナト・セイランを転がした。
「…彼は、セイラン家の? そうか。やはり、彼らが」
シュバルツが哀しげに言うと、ウルベが笑いかける。
「君達は、つくづく他人に裏切られるな。それでも、まだ信じるのかね?」
問いかけるウルベにシュバルツは、静かに返した。
「…ああ。キョウジとしても、ウォルフとしても。私は、人が好きだからな」
その言葉に、ウルベが不快気に顔を歪める。
「…綺麗事を。やはり、貴様は不愉快だよ。キョウジ」
「ああ。私もだ、ウルベ」
互いににらみ合う両者の間を割って入るように立ち、ウォンが告げる。
「さて、本題です。シュバルツ、取引をしましょう。私たちを見逃しなさい」
「…何だと?」
問いかけるシュバルツにウォンが告げる。
「あなたに選ばせてあげましょう。彼の命を救う為に、私たちを見逃すか。彼を見捨てて私たちを倒そうとするか、です」
「先に言っておくが。私たちには、バックアップを兼ねた全人格と記憶をコピーしたDG細胞がある。それを全てのゾンビ兵に感染させた。どういうことか、分かるね?」
ウルベの補足説明にシュバルツの目が見開かれる。
「…貴様ら、DG細胞でコピーを用意するだけでなく、個としての自分まで捨てようと言うのか? 私とキョウジを見れば分かるだろう? この世に全く同じ人間など、存在しないんだ!!」
語るシュバルツにウォンは告げる。
「それは君が細胞を知らないからだ。アレを調べ尽くした我々には、造作もない」
覆面の下の表情を鋭いものにして、シュバルツは構えを取る。
構わずにウォンは言った。
「マスターアジアならば、こんな取引は通じないでしょう。こんなゴミの命を彼が庇う訳はない。だが、あなたは違う。シュバルツ・ブルーダー。あなたの情けこそが、最大の弱点だと知りなさい」
厭らしい笑みを浮かべて、ウォンはそう言った。
皆さん、お待ちかね〜!
セイラン親子を盾にとり、オーブの政治家とロゴスの癒着問題をチラつかせるウォン。
対するシュバルツは、ウォンとウルベをこの場でどうすれば倒せるかを考えます。
そんな中、赤い髪の悪魔がウォンとウルベを抹殺しに現れたではありませんか!?
次回、機動武道伝Gガンダム SEED Destiny 第71話に!
レディー、ゴー!!