新機動武闘伝 GガンダムSEED Destiny   作:カンナム

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 皆さん、シュバルツの前に現れたウルベとウォン。

 彼らの犠牲となった多くの人の無念を晴らすため。

 シュバルツは単身戦いを挑むのです。

 果たして、ここヘブンズベース基地で悪魔の力を操る二人を倒すことができるのか?

 それでは!

 ガンダムファイト!!

 レディイイッ、ゴォオオオオオオオッ!! 


第71話 闘志を燃やせ シュバルツの魂 Dの一撃

 

 ヘブンズベース基地

 

 

 

 その脱出艇のドッグ内で、シュバルツ・ブルーダーはロゴスの総統ロード・ジブリールと。

 

 

 

 そして未来世紀における怨敵、ウルベ・イシカワとウォン・ユンファと対峙していた。

 

 

 

 ウルベ達の足元には、さるぐつわを噛まされ両腕を後ろ手に括られて身動きの取れない中年の男性ウナト・セイランがうめき声を上げながら、無造作に寝転がされている。

 

 

 

「さあ、シュバルツ。外で命を懸けて戦っている貴方の教え子達の為にも、早く決断してください」

 

 

 

 厭らしい笑みをそのままに、ウォンはシュバルツの目を見て言う。

 

 

 

「このクズの為に我々を見逃すか。無駄と知りながら、クズを見捨てて我々を倒すか、をね」

 

 

 

 サングラスを付け直しながら、ウォンは問いかける。

 

 

 

ウルベが続ける。

 

 

 

「つくづく、カッシュ家は綺麗事が好きな連中だ。信念か、意地かは知らないが人を信じると言う。そのために自分の大切なものを失っていくのにな? 学習しないのかね、キョウジ君」

 

 

 

 笑いかけるウルベにセイラン家の二人は訝しげに眉をひそめる。

 

 その彼らの前で、シュバルツがマスクを外した。

 

 

 

「?!」

 

 

 

 ウナトとユウナの顔が驚きに引きつる。

 

 

 

 それはまさに、さきほどウォンたちに献上しようとしていた、オーブに現れた忌まわしき男ーーあの参謀と同じ顔。

 

 

 

 キョウジ・カッシュそのものだったのだ。

 

 

 

「たとえ誰に馬鹿にされたとしても。人を信じたが為に、この身が砕けようと構わん」

 

 

 

 真っ直ぐにシュバルツは、ウルベにウォンに言い切る。

 

 

 

「信じることは尊いことだ。疑うことは容易いことだ。人の言葉を真に受けることを、単純だと馬鹿だと貴様らはあざ笑う。だが! それがどれだけ尊く、困難なことかを貴様らは理解していない」

 

 

 

 ウォンはその言葉に小馬鹿にした笑みを浮かべ、ウルベは不快気に表情を歪める。 

 

 

 

 右の拳を自身の顔の前に出してシュバルツは続ける。

 

 

 

「私は人を信じることを辞めはしない。たとえ、この先どれだけの裏切りにあおうとも。私は、私に助けを求める力なき者がいる限り、私を信じる尊き者がいる限り、独りになろうとも戦い続けると誓おう」

 

 

 

 はっきりと二人の悪党の目を見据えて、シュバルツ・ブルーダーは叫んだ。

 

 

 

「人を信じる心があれば、恐れるものは何もない!! 私は、私と言う存在がこの世にある限り、人を信じよう!! 信じ抜いて見せよう!! 誰に批判され、誰にとがめられようとも、変えられぬ!!」

 

 

 

 熱き思いの丈をシュバルツは、覆面を取り払うことで露わにした。

 

 

 

「それが、私の生き方だ!!!!」

 

 

 

「滑稽ですね。それだけの力がありながら、自ら愚者の盾となるとは。ならば、世界を支配する我々の糧となるがいい、シュバルツ・ブルーダー」

 

 

 

 ウォンが冷ややかな笑みと共に告げた。

 

 

 

「貴様らにこの世界を支配することなどできはしない。この世界は今を生きる尊き人々のものだ。貴様らに支配されて良いものではない」

 

 

 

 シュバルツは続ける。

 

 

 

「人を見下し、利用することしか知らぬ貴様らには分かるまい。この世界に生きる素晴らしき人間の美しさと強さを。その力は、如何なる権力にも勝ると言うことを。彼らは決して、貴様らのような男には屈さない! それが私が出会った尊き人々だ!!」

 

 

 

 その気迫を前にウォンは笑みを浮かべたまま言った。

 

 

 

「ならば、まずはその屑を助けて見せなさい。その命をかけてね」

 

 

 

「いいだろう。彼らを助けたうえで、貴様らの野望を打ち砕いてくれるーー!!」

 

 

 

 小バカにした笑みを、シュバルツは真っ向から受け止める。

 

 

 

 ウォンが懐から拳銃を取り出し、身動きの取れないウナト・セイランに向けた。

 

 

 

 発砲ーー。

 

 

 

「ーーーッ!!」

 

 

 

 声にならない声が、息子のユウナから発せられた。

 

 

 

 だがーーウォンの凶弾が父親に届く前にシュバルツが彼の前に動き、銃弾を素手で掴み止める。

 

 

 

 超人的な動きと現実離れした光景に、ジブリールやセイラン親子がポカンとしている。

 

 

 

 その様を見て、一人の男がつぶやきをあげた。

 

 

 

「ゆかーーだ」

 

 

 

 ウォンは傍らにいる男に目を向けた。

 

 

 

 訝し気に彼の顔を見やる。

 

 

 

 ウルベ・イシカワの顔が悪鬼の如く歪み、その全身からどす黒い殺気が噴き上がっていた。

 

 

 

「不愉快だーー。これ以上貴様の顔を見ているのは、不愉快極まりない!!!」

 

 

 

 その気迫は、ウルベとは思えない程の気量だった。 

 

 

 

 ウォンは知る。

 

 

 

 ウルベの強さの源がこれだ。

 

 

 

 その正体はーー人々によって裏切られたことによって生み出された感情。

 

 

 

 敗北したことによる挫折と屈辱から成ったもの。

 

 

 

 あらゆる人間に対して向けられる感情。

 

 

 

 憎悪である。

 

 

 

「ウォン。気が変わった。この男はここで、この私の手で殺す!!」

 

 

 

 ウォンはそれにニヤリと笑みを返し、言った。

 

 

 

「存分に。シュバルツはそこの屑を庇っている状態です、万に一つも勝ち目はありません。煮るなり焼くなりお好きなように」

 

 

 

 この言葉にウルベは口元に憎悪の笑みを浮かべて見せた。

 

 

 

 およそ見る人が目を逸らしたくなるほどの、狂わしい笑み。

 

 

 

「命に屑などない。彼らとて必死で生きる者の一人だ!!」

 

 

 

 シュバルツの宣言に、地べたに転がされていた二人の親子の目が見開かれる。

 

 まるで夢から醒めたかのような、冷や水を浴びせられたかのような表情で彼を見ていた。

 

 一方でウルベは執念や怨念と言った負の情を感じさせる笑みを浮かべて言った。

 

 

 

「遺言は終わりかね? ならば死ぃねぇええええええ!!!」

 

 

 

 拳を振りかぶり、殴りかかる。

 

 

 

 同時にウォンがウナトに向けて再び発砲。

 

 

 

 シュバルツは咄嗟にウナトに放たれた弾を前のめりになって掴みとめ、ウルベからの右ストレートをまともに顔面に喰らう。

 

 

 

「ぐっ!」

 

 

 

 のけ反ったときに、左ボディが続けざまに入り前のめりになったシュバルツを次々と強烈な拳蹴打が襲う。

 

 

 

 強烈なラッシュをまともに受け、シュバルツが後方にはじけ飛んだ。

 

 

 

「がはっ!!」

 

 

 

 その様を憎悪に歪んだ笑みを浮かべて見下すウルベは、哄笑する。

 

 

 

「ひゃははははっはははははっ!! どうだ、キョウジィ!? 弱者など! 愚者など!! 他人など!!! 足を引っ張るだけの無駄な存在に過ぎないと理解したか!!?」

 

 

 

 倒れたシュバルツの横面を踏みつける。

 

 

 

「……く!」

 

 

 

「所詮、人間などこんなものよ!! だが安心しろ、我らDG細胞が全てを作り変えてくれる!! 弱き人間など、滅びてしまえぇええええええぇっ!!! ひゃぁああああはははははははははははは!!!!」

 

 

 

 その時だった。

 

 

 

 両腕を後ろ手に括られていたウナト・セイランが、横からウルベに体当たりを仕掛けたのだ。

 

 

 

「ーーな!?」

 

 

 

 同時にウォンにもユウナが後ろから体当たりを仕掛けた。 

 

 

 

「貴様ら--!?」

 

 

 

 恐怖に怯え、自分の命を大事にすることしか頭にない親子。

 

 

 

 それが自分の命を危機に晒してまで動くと思っていなかったウルベとウォンは目を軽く見開きながら態勢を崩す。

 

 

 

 瞬間だった。

 

 

 

 目の前にシュバルツ・ブルーダーが踏み込んできて、ウルベの顎を蹴り上げる

 

 

 

「! グハッ!」

 

 

 

 続けざま、ウォンの腹に右の正拳を叩きつけて吹き飛ばす。

 

 

 

「ガハァッ」

 

 

 

 遥か後方に弾き飛ばされた二人。

 

 

 

 それをゆっくりと見ながら、シュバルツはウナトとユウナの縄とさるぐつわを外して開放する。

 

 

 

「キョウジ・カッシュ君。私をーー私たちを許してくれ」

 

 

 

「あんたを、僕たちは誤解していた。本当にすまない」

 

 

 

 二人からの謝罪にシュバルツは頷くと言った。

 

 

 

「後で話を聞かせてください。今は、あそこの通路から外へ! ここは私に任せて! 必ずあなた方を逃がして見せます!!」

 

 

 

 思わずユウナが反論した。

 

 

 

「でも、それじゃアンタが!!」

 

 

 

「今は話をしている時ではない!! 早く行くんだ!!!」

 

 

 

「……!!!」

 

 

 

 悔しげに唇をかみしめるユウナの肩を制し、ウナトが言った。

 

 

 

「ありがとう。必ず君も無事に戻って来てくれ」

 

 

 

 そんなウナトにシュバルツは微笑みを浮かべて言った。

 

 

 

「…はい。さあ!」

 

 

 

 彼に促され、セイラン親子がその場から逃げ出した。

 

 

 

 これをウォンが立ち上がりながら見送る。

 

 

 

 ウルベに至っては憎しみが更に醜悪に彼の表情を歪ませていた。 

 

 

 

「ジブリール、手筈通りに」

 

 

 

「あ、ああ。しかし、いいのか? お前たちもーー」 

 

 

 

 戸惑い気味のジブリールにウォンが優しくほほ笑んで言った。

 

 

 

「大丈夫です、万が一の為にもあなたは早くお逃げなさい」

 

 

 

「そ、そうか。すまんーー!!」

 

 

 

 それだけを告げてジブリールはドッグに停泊している潜水艦に乗り込んだ。

 

 

 

 艦は一気に停泊所を抜け、海へと出ていく。

 

 

 

「! いかん!!」

 

 

 

 シュバルツがそれを追いかけようとするも、ウルベとウォンが立ちはだかった。

 

 

 

「私たちを倒してところで、DG細胞を組み込まれた誰かの中で新しい私たちが姿を現すでしょう」

 

 

 

「無駄と知りながら、それでも抵抗するのかね? キョウジ」

 

 

 

 二人からの言葉に拳を握って構えるシュバルツ。

 

 

 

「そやつらが現れる前に、全てを終わらせてくれる!!」

 

 

 

 その時だった。

 

 

 

「いつまでも、自分たちの思う通りに行くと思うな。塵芥めが」

 

 

 

 第三者の声が響き渡る。

 

 

 

 同時に強烈な気がシュバルツとウルベ達の丁度、中間地点に炸裂した。

 

 

 

「…これは!?」

 

 

 

 シュバルツがそちらを振り返ると、そこには自分の弟とまったく同じ顔と声を持った紅い髪の青年がいた。

 

 

 

「貴様は……!!」

 

 

 

「ーーデビルガンダム!!」

 

 

 

 忌々しそうにウルベとウォンが青年の名を呼ぶ。

 

 

 

 そう、DG細胞によって構成された限りなく新しい人類。

 

 

 

 彼の名は「デビルガンダム」だ。

 

 

 

「…貴様が」

 

 

 

 シュバルツが初めて出会ったかつての宿敵を見据える。

 

 

 

 その顔に浮かぶのは憎しみでも敵意でもない。

 

 

 

 どこか懐かしみを感じる表情だった。

 

 

 

「そうだ。我が貴様らカッシュ家の怨敵デビルガンダムだ。はじめましてだな、シュバルツ・ブルーダー」

 

 

 

 デビルガンダムこと紅い髪の青年ーーDは名乗るのもそこそこに、シュバルツに背を向けてウルベとウォンの方を見据える。

 

 

 

「貴様ら、面白いことを言っていたな? DG細胞のゾンビ共に自分の記憶と人格をコピーした因子を移植しているとか」

 

 

 

 笑みを浮かべた。

 

 

 

 その笑みは、紅い鬼が人を食らおうと口を開けたようだった。

 

 

 

「それを我に聞かれたのが、貴様らの運の尽きだ」

 

 

 

 瞬間だった。

 

 

 

 デビルガンダムを名乗る紅い髪の青年から強烈な気が発生し、青紫の光が彼を中心に一気に世界に広がって消えたのだ。

 

 

 

 一瞬の出来事だった。

 

 

 

 シュバルツには分からず、Dを見据えるが、ウルベとウォンは違った。

 

 

 

 先の光景とDの言葉に、二人の悪党の顔が醜悪に歪んだのだ。

 

 

 

「き、貴様…!!」

 

 

 

「私たちのDG細胞因子を…!!」

 

 

 

 その言葉で理解する。

 

 

 

 Dというデビルガンダムそのものの青年は、自らの細胞に命じたのだ。

 

 

 

 人間に感染したDG細胞にウルベとウォンの因子を消滅させるように。

 

 

 

「…どうする? これで貴様らに保険はない。困ったなぁ?」

 

 

 

 せせら笑う邪悪な笑み。

 

 

 

 魔王の言葉に、悪党二人は歯ぎしりを返すだけだ。

 

 

 

 その表情で理解した。

 

 

 

「どうやら、年貢の納め時のようだな? ウルベ、ウォン!!」

 

 

 

 Dの隣で構えを取るシュバルツ。

 

 

 

 二人を睨み据えて、ウルベは言った。

 

 

 

「仕方あるまい。ここは久しぶりに我々もガンダムファイトに興ずるとしようか」

 

 

 

 これにウォンが答える。

 

 

 

「そうですねぇ。考えようによっては目障りな敵を一気に打ち砕くチャンスでもある」

 

 

 

 サングラスをかけなおしながらウォンも頷いた。

 

 

 

 瞬間、二人の身体を紫の光が包み込み、直後。

 

 

 

 強大な影がシュバルツとDを見下ろしていた。

 

 

 

「さあ、来るがいい!!」

 

 

 

「このグランドマスターガンダムが相手をしてあげましょう!!」

 

 

 

 強大な影の正体はデビルガンダム四天王の集合体。

 

 

 

 四体の異形を合わせたキマイラ。

 

 

 

 グランドマスターガンダムだった。

 

 

 

 マスターガンダムのコクピットにはウルベ。

 

 

 

 尾に付いているウォルターガンダムのコクピットにはウォンがそれぞれ搭乗している。

 

 

 

 これにシュバルツが答えた。

 

 

 

「いいだろう、ならば! ガンダァアアアアアムッ!!」

 

 

 

「ふんーー!!」

 

 

 

 シュバルツに合わせて、Dも同時に右腕を掲げてフィンガースナップを鳴らす。

 

 

 

 青白い光と共にガンダムシュピーゲルが。

 

 

 

 蒼紫の光と共にデビルガンダムが現れた。 

 

 

 

 MFが三体。

 

 

 

 地下に創られたドッグ内で三機のガンダムの戦いが始まった。

 

 

 

 

 

 一方でセイラン親子もシュバルツの指示された通路を抜け、着水している脱出艇を一つ手に入れた。

 

 

 

 その通信機を使って必死に呼びかける。

 

 

 

「こちらウナト・エマ・セイラン! 応答してくれ、オーブ軍!!」

 

 

 

「何をしてるの、父さん! 通信よりも先に脱出を!!」

 

 

 

 父親のしている行為をとがめながら、エンジンをかけるユウナ。

 

 

 

 これを無視してウナトはオーブへの通信を行った。

 

 

 

「…ジブリールも逃げていた。奴はおそらく、オーブのブルーコスモスの構成員と連絡を取り、マスドライバーを使うつもりだ。何としても止めさせなければ!!」

 

 

 

「オーブ政府に繋いでもらうんだね?」

 

 

 

「そうだ! セイランの口座と取引をしていたブルーコスモスの無線の周波数を伝えれば、ジブリールを止められる!!」

 

 

 

「分かったよ、父さんはそのまま通信を呼び掛けて! 僕はこいつを動かしてオーブに向かう!」

 

 

 

 ユウナはマニュアルを操作しながら、進路をオーブに向かって舵を取り、潜水して向かわせる。

 

 

 

 その時だった。

 

 

 

 通信が繋がり、向こうから声が聞こえる。

 

 

 

「こちらオーブ軍。セイラン様? どうされたのですか?」

 

 

 

「話はあとだ! 至急、アスハ代表に繋いでくれ!! ことは一刻を争う!!」

 

 

 

 セイラン家秘蔵の緊急通信であること。

 

 

 

 通信モニター越しのウナトの表情が普段とは考えられない程に真剣であったことから、通信兵は急いで対応を始めた。

 

 

 

 こうしてセイランからの通信を受けたオーブは、極秘裏に現れようとするジブリールに対応する策を練るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 強烈な雷がドック内に走り回る。

 

 

 

 強大な角から放たれたのは、辺り一面を全て焼き払う落雷だった。

 

 

 

 その雷の雨を網の目をすり抜けるようにジグザグにステップ移動しながら避けるデビルガンダム。

 

 

 

 残像を残すスピードで宙を駆けるガンダムシュピーゲル。

 

 

 

 二機は強烈な落雷をものともせずに接近し、野太いグランドガンダムの左右の足にそれぞれ仕掛ける。

 

 

 

「デビルストライク!!」

 

 

 

「シュピーゲルブレード!!」

 

 

 

 デビルガンダムの気を纏った右の正拳突きが、シュピーゲルの展開された右のブレードが。

 

 

 

 交差攻法気味にすれ違いざま放たれる。

 

 

 

 鈍い打撃音と鋭い斬撃音が響き渡る中、二本の足から火花が散る。

 

 

 

 しかし、それもすぐに消滅して再生を始めてしまう。

 

 

 

「ぬぅ!」

 

 

 

 これに目を険しく細め、シュバルツは一端距離を取る。

 

 

 

 デビルガンダムの方は、鋭く放たれたガンダムヘブンズソードの羽ーーヘブンズダートを片手で払いながら、身を翻し右手のデビルフィンガーからエネルギーショットを放つ。

 

 

 

「ーーふん!」

 

 

 

 ウルベは腹筋に力を入れ、ボディにまともに受けたエネルギーを拡散させて飛び散らせる。

 

 

 

 拡散されたエネルギーは、床でも壁でも平気で射抜きながら、消滅した。

 

 

 

「なんという強固な装甲に強烈な自己再生だ。ダメージが通らんとは」

 

 

 

 シュバルツが表情を険しくしながら言うと、ウルベは笑い返す。

 

 

 

「当たり前だろう? グランドマスターガンダムには四天王の機体すべてが入っている。この機体はいわばMF4機分のエネルギーを持っているのだよ」

 

 

 

「いかがです? 巨体でありながらも、我々二人が操作することによって反応速度は以前シャッフル同盟が戦った時とはくらべものにならない程になりました」

 

 

 

 厭らしい笑みを浮かべるウォンをDは無表情に見返す。

 

 

 

 とりあえず、厄介だった。

 

 

 

 攻撃力や反応速度、動きもそうだが。

 

 

 

 何よりも厄介なのは堅牢な装甲と、傷を負った瞬間に回復する自己再生能力だ。

 

 

 

 これに対し、デビルガンダムことDの下した判断は、力押しだった。

 

 

 

「我のこの手が陰りて嗤う。すべてを屠れと高まり狂うーー!」

 

 

 

 右手に気を集中させて、今一度蒼紫の炎を右手にまとう。

 

 

 

 瞬間、羽を大きく広げたデビルガンダムは、音速を越えた動きであっさりとグランドマスターガンダムの懐に踏み込み、右手でグランドガンダムの胸の部分を貫いた。

 

 

 

「ぬお!?」

 

 

 

 目を見開くウルベを睨み据えてDは言う。

 

 

 

「ーー粉々にしてくれる。暴ぅうう裂っ!! デビィイイイイルフィィンガァアアアア!!」

 

 

 

 強大な閃光と爆発がグランドマスターガンダムを包んだ。

 

 

 

 距離を置いて様子を伺っていたガンダムシュピーゲルの前にデビルガンダムがバク転しながら、その20メートルを越える巨体で軽々と着地する。

 

 

 

 煙が晴れたとき、上半身を消し飛ばされたグランドマスターガンダムがそこにあった。

 

 

 

 だが、すぐに破損部からDG細胞の触手が伸び、ビデオの逆再生を早回しにしたように一気に元通りの姿に戻っていった。

 

 

 

「無駄ですよ、デビルガンダム。この機体は防御力と再生力に関すれば、最強を成す機体です。正に浮沈艦と呼ぶに相応しい機体でしょう」

 

 

 

 勝ち誇るウォン。

 

 

 

「君たちは徐々に消耗していくしかない、ということだ。このグランドマスターガンダムを前に初めから君たちに勝利などなかったのだよ」

 

 

 

 高笑いするウルベ。

 

 

 

 彼らを見ながら、シュバルツは静かにデビルガンダムの傍らに立つ。

 

 

 

「だそうだが、何か手はあるか?」

 

 

 

 ガンダムシュピーゲルからの言葉にデビルガンダムはニヤリと凄絶な笑みを返して言った。

 

 

 

「楽しみだ。究極の一撃を食らってなお、奴らがそのような戯言をほざいていられるか、な」

 

 

 

 これにシュバルツが「ほう」と眼を細めてつぶやくと、言った。

 

 

 

「その技を放つのに、どれだけ気を高めねばならない?」

 

 

 

 問いかけるシュバルツにDは静かに笑みを消すと言った。

 

 

 

「1分だ」

 

 

 

 この言葉にシュバルツはコクリと頷くと、シュピーゲルを一歩前に出す。

 

 

 

「了解した。それまでは私が引き受けよう」

 

 

 

 余計な話は一切しない。

 

 

 

 デビルガンダムが静かに両の足を肩幅に広げ、膝を軽く曲げた。

 

 

 

「ーーぬん!!」

 

 

 

 Dはその場で両の拳を腰だめに構えておくと、一気に気を高め明鏡止水の境地ーー黄金のハイパーモードに変身する。

 

 

 

 胸部のカバーが展開し、蒼紫に輝くエネルギーマルチプライヤーが露わになる。

 

 

 

 圧倒的な太陽の如き黄金の光がドック内に溢れている。

 

 

 

「ウルベ! 何をするつもりかはわかりませんがーー」

 

 

 

「分かっている! デビルガンダムから先に!!」

 

 

 

 その時、シュバルツのガンダムシュピーゲルがグランドマスターガンダムの足元に現れる。

 

 

 

「おっと、余計な真似はしないでもらおう。私がお相手するぞ、ウルベにウォンよ」

 

 

 

 言うと同時、鏡転同血の光がシュピーゲルを覆い、真紅の炎を纏ったトリコロールのガンダムに変化する。

 

 

 

「「ゴッドガンダム!!」」

 

 

 

 二人が目を見開きながら、そのガンダムの名を呼ぶとシュバルツは腰のビームソードを二振り抜き放ち、両手に持って構えながら言う。

 

 

 

「ゴッドシャドー!」

 

 

 

 10体の質量を持った分身が生まれ、同じ構えを取って言う。

 

 

 

「ゆくぞ、シュトゥルム・ウント・ドランク・スペシャルウウウウ!!!」 

 

 

 

 コマのように回転しながら10体のガンダムが、同時に一点を切り刻む。

 

 

 

「こ、こんな程度の技で!!」

 

 

 

「このグランドマスターガンダムにダメージなど!!」

 

 

 

 威力は乏しいが衝撃が凄まじく、10体の竜巻の一撃はグランドマスターガンダムの巨体を上空へと跳ね上げた。

 

 

 

 凄まじい地響きを上げながら、地面を割きながら、上空に天高く舞うグランドマスターガンダム。

 

 

 

「ばかな!!」

 

 

 

「私たちのグランドマスターガンダムが!!」

 

 

 

 大地に根を張った巨木が、根っこごと上に引っこ抜かれたように、何もない上空へとその身を投げ出したグランドマスターガンダム。

 

 

 

 これにシュバルツがDに叫んだ。

 

 

 

「今だ、デビルガンダムーーDよ!!」

 

 

 

 同時に、デビルガンダムが両手を右腰においてたわめ、一つの白い光の球を作り出した。

 

 

 

 最後の極大の一撃を放とうと、気を高める。

 

 

 

「おお…! これほどとは……!!」

 

 

 

 瞬間、強大な黄金の気柱が立ち上がる。

 

 

 

「流派ぁ!! 東方不敗がぁ!!」

 

 

 

 デビルガンダムが右手を突き出す。

 

 

 

「最終ぅ!! 奥義ぃ!!」

 

 

 

 Dが腰を落としながら瞳を閉じる。

 

 

 

 その身に纏う強大な気が柱から球に変化し、黄金の気は七つの色を放つ白い光の球へと変わった。

 

 

 

 その力を両手に極限まで圧縮する。

 

 

 

 黄金の機体だった機体は、元通りの白を基調とした赤と青と黄色のトリコロールに戻りながらも、そのたわめた両掌には七つの色の光を放つ白い光球がある。

 

 

 

 デビルガンダムはその両手を蒼紫の炎で発光させる。

 

 

 

 同時に両手首を上下に組んで前方に掌を突き出す。

 

 

 

「石破ぁ!! 究ぅ極くぅ!! 天ぇえん驚ぉおおお拳ぇええええん!!!!」

 

 

 

 白い光の光線が、上空へと弾き飛ばされた巨大な機体グランドマスターガンダムに襲い掛かった。

 

 

 

 

 

 

 

 その光は、スピードやパワー等と言う概念を全て凌駕する。

 

 

 

 

 

 

 

「「こ、こんなバカなぁああああああああああああ!!!?」」

 

 

 

 

 

 

 

 絶叫を放ちながら、上空で白い光線に晒されて、圧倒的な暴力にさらされて。

 

 

 

 理不尽な力に晒されて。

 

 

 

 究極の奥義を放たれて。

 

 

 

 二人の巨悪を載せたガンダムの名を冠する異形は跡形もなく、青き空の彼方に消えて行った。

 

 

 

「……貴様らのような下衆に、この美しい世界はやらん」

 

 

 

 静かにつぶやいたDの真意はシュバルツをして分かりかねる。

 

 

 

 だが、そこに邪な考えがあるとは、シュバルツにはどうしても思えなかった。

 

 

 

 これほどの一撃は、心・技・体の全てが極限まで磨かれていなければできるものではないからだ。

 

 

 

 正に神の域だと言える一撃。

 

 

 

「恐ろしくも素晴らしいガンダムファイターになったものよ。これがデビルガンダムのファイター、Dか」

 

 

 

 燃え上がる闘志。

 

 

 

 シュバルツの心の中にファイターとしての魂の炎が今、確実に点火した。 

 

 

 

        

 

 

 

 

 




 皆さん、お待ちかね~!!

 シュバルツとDの活躍によって倒されたウルベとウォン。

 一方でシンとマスター達もウルベコピー率いるデスアーミー達の大群との決着を付けようとしていました。

 残り1体となったデスルークに対し、シンがマスターに告げた言葉とは?

 次回! 機動武道伝GガンダムSEED Destiny 第72話に!!

 レディー、ゴー!!
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