新機動武闘伝 GガンダムSEED Destiny 作:カンナム
強力なタッグ。
ガンダムシュピーゲルとデビルガンダムを前に。
ついにウルベは、ウォンは、倒されました。
しかし、ヘブンズベースにはまだまだウルベコピーが存在していました。
この巨大な敵を前にシンはマスター達の手を借りずに倒すことを宣言するのです。
はたして、どうなるのか?
それでは、ガンダムファイト!
レディィィィッ、ゴォォォオオオッ!!
強烈な白の光が、ヘブンズベースから少し離れた島の地面から天へと向かって放たれた。
その威力はすさまじく。
空に浮かぶ雲が片っ端から消し飛んでいった。
光がとおり過ぎた後に発生した衝撃波は、海面を巻き上げ、地面を割る。
あまりの威力に、天変地異を前にした子どものように呆けるザフト・連合両陣営。
「なるほど。これが世界をも滅ぼす悪魔の一撃か」
「この威力は、戦略級兵器ーー? いや、これはもっととんでもないものだ」
数あるデスアーミー達を屠りながら、ビショップとナイトを駆る二人のザフトパイロットが唸る。
フィルム・ノワールとハイネ・ヴェステンフルスだった。
「い、今のはーー!?」
シンも呆然と見上げていた。
巨大な機体ーーグランドマスターガンダムが空中に吹き飛ばされ、その後に放たれた強力無比な一撃。
それはあの巨体を完膚なきまでに消し飛ばした。
はっきり言って桁の違う威力だ。
石破天驚拳。
それを極限まで極めた一撃。
一機のMFが放った技が、あれほどの威力とは誰も思うまい。
「これが、最強の力なのか……!!」
アウルも隣で呆然としていた。
その横でマスターガンダムのファイター東方不敗マスターアジアがにやりと笑う。
「ふん! Dめが、やりおるわ!!」
ジョンブルガンダムのファイター。ジェントル・チャップマンも頷いた。
「大した奴だ。一人でウルベ達のところまでたどり着いたか」
ネロスガンダムのファイター。ミケロ・チャリオットがこれに吐き捨てる。
「あのドモン・カッシュとゴッドガンダムを相手に真正面からやりあえる化け物だ。あんな頭だけのカス共に負けるわけねえだろ」
その三人の言葉に、シンはデスティニーガンダムのコクピットから思わず問いかけた。
「それってーー! ウルベとウォンを!?」
シンの言葉にマスターアジアはコクリと頷いた。
「うむ、どうやらシュバルツとDは本懐を成し遂げたようだな」
返答にシン達は目を大きく見開いて拳を天に突き上げた。
「よっしゃぁああああああ!!」
「さすが、シュバルツさん!!」
「ああ! これで、ようやく終わる」
シン達三人は互いに手を取り合いながら、喜ぶ。その様をスティング達が笑いながら見ていた。
「さすが、ゲルマン忍者」
「ホント、呆れるぐらい見事だよ」
「うん。シュバルツ、凄い!!」
6人の少年・少女達の称賛が響く。
周囲には未だデスアーミー達が居たが、自己再生をすることもなく。
明らかにその数を減らしている。
「おのれ!! キョウジにデビルガンダム!! よくも!!!」
ウルベコピーが最後の一体となりながらもこちらに構える。
「こうなれば、一人でも多く地獄まで道連れにしてくれる!!」
デスガンダム・ルークを構えさせる。
「ほう。あきらめの悪さと執念だけは認めてやろう」
マスターガンダムがこれに構えを取る。
それを制するようにネロスガンダムが前に出た。
「けっ、コピー体の分際で俺達ガンダムファイターに挑もうってのが、そもそもの間違いだろうが!!」
ミケロが殺意をまき散らしながら、ネロスガンダムに構えを取らせる。
その更に前にシンのデスティニーガンダムの背が立ちはだかった。
「…小僧。いや、シン・アスカ。貴様…!」
「! なんだぁ、てめえ?」
目を丸くし大きく見開くマスターアジア。
問いかけるミケロにシンはウルベコピーを睨みつけながら言った。
「悪いけど、こいつは俺に譲ってくれないか? 戦局はもう決定してる。ここでの勝負は戦局には関係ない」
ミケロが訝し気に問いかける。
「分かってんのか? てめえはさっき、6人がかりで挑んでやられたんだろうが?」
「分かってる。だけど、このままじゃ終われないんだ!! シュバルツさんに助けてもらってばかりじゃ、俺は何のために強くなったのか分からない!! だからーー!!」
燃える紅い瞳を正面に見て、ミケロは「ケッ」と吐き捨てると彼から背を向けた。
「勝手にしやがれ」
そんなミケロにシンが笑いかけた。
「ありがとう」
「気持ちの悪いことぬかすな。俺様はてめえが死のうが知ったこっちゃねえだけだ」
吐き捨てるミケロの横からマスターアジアが告げた。
「心意気はよし、だが。一騎打ちでは話にならんぞ? 分かっておるな?」
「ああ。俺とルナ、レイの三人で、こいつを倒す!!」
シンの力強い言葉にマスターアジアは口元をほころばせる。
その横から、スティングが言った。
「師匠!」
「僕たちも闘わせてください!!」
これにアウルが続く。ステラはその横で純粋な目を師匠マスターアジアに向けていた。
「ばかものが、言うまでもあるまい。貴様らが手を貸さずしてあやつらに勝利はない」
「「「はい」」」
こうして再び6機のガンダムが肩を並べてルークの前に立つ。
「いいのか、マスターアジア。お前の弟子達とあの三機では正直に言って荷が重いぞ?」
小声でジェントル・チャップマンがマスターアジアに話しかける。
これにマスターが微笑んで言った。
「チャップマンよ、人は常に進化するものだ。昨日まで猫であったものが今日、獅子となることもある」
「……それは稀有なことだが、あの小僧たちならばできる、と?」
「うむ! そのとおりだ!!」
「なるほど。では楽しみに見させてもらおう」
ほくそ笑む二人を横目で見ながら、ミケロはため息をつく。
「ケッ、何が面白いってんだ? あんなガキどもの成長なんざよ」
言いながら、ネロスガンダムも視線を6機の少年たちのガンダムとウルベコピーのデスルークから外していなかった。
「無謀だ! マスターアジアやDならばともかく、今のシン君やレイたちでは返り討ちにあう! タリア、なぜ止めない!?」
先の究極の一撃を見た後で、ようやく我を取り戻したギルバート・デュランダル議長は思わず立ち上がり、この戦いを止めようと直接の上司であるタリア・グラディス艦長に通信を入れる。
これにモニターのミネルバ隊は真っ直ぐに議長を見返してきた。
「ーー彼らならば、勝てます。信じてあげてください。彼らの力を」
ミネルバの総意とも言うべき言葉をタリアはデュランダルに投げかけた。
「優秀なパイロットを何人失うか分からないんだぞ、タリア!? 我々は、格闘技の試合をしているのではない!!」
デュランダルの言葉にタリアは真っ直ぐに彼を見て言った。
「そうですね。ですが、議長。貴方の知らない人の可能性があるのなら、この戦いがそれを表示してくれますわ」
タリアの言葉に、デュランダルは何かが引っかかり、モニターのシンたちに目を移す。
一方で、この思わぬ状況にウルベコピーはほくそ笑んでいた。
「貴様ら未熟な小僧どもだけか。これならば逃げ切る可能性が見えてきた!!」
そう告げるウルベコピーに、シンがアロンダイトを突き付けて言った。
「そいつは、どうかな?」
デスティニーガンダムが両手で大剣を持って正眼に構える。
ウルベの気迫が違う。
先ほどまでとは、気の質が違った。
あざけり嗤うのは同じだが、同時に必死でこの場から逃げようとする気迫を感じる。
「……生半可な攻めじゃ倒せない。アウル!」
「OK! 合わせるぜ、シン!!」
自分の機体ーーデスティニーガンダムの動きについて来れるのは、アウル・ニーダのヤマトガンダム・スーパーモードだけだ。
その後ろではレイがスティングに話しかける。
「やれるか?」
「任せとけよ」
クーロンガンダムが静かにビームクロスを抜き、硬質化させて一振りのナギナタへと変化させる。
互いにニッと笑い合う。
「ステラ、お願いしてもいいかな?」
「うんーー! 勝とう、ルナ!!」
シャッフルハートに搭乗するステラにインパルスガンダムのルナマリアが何かを話しかける。
まともにやりあっても勝てないことは6人とも分かっている。
ならば、相手の態勢を崩し、防ぎきれない一撃を加えるしかない。
「…作戦会議は終わりかね? ではこちらから行くぞぉおおお!!」
デスルークが背中の小さなバーニアを吹かして一気に距離をゼロにする。
大地に突き刺さる巨大な拳打。
どでかいクレーターが出来上がる。
6機のガンダムはそれが着弾する紙一重で見切り、四方に飛び散った。
「ちょこまかと、虫けらめが!」
周囲を見渡すウルベ。
その後方から、超スピードでクーロンガンダムとMAとなったシャッフルハートの背にまたがるインパルスガンダムが現れた。
「なに!?」
エクスカリバーとビームナギナタが同時にデスルークの巨大な胴を後ろから切りつける。
「硬い!?」
「武器が、通らねえか!?」
弾かれる二機の攻撃。
「ふん、そんなものか」
それを見てにやりと笑いながらウルベが超スピードで回し蹴りを放ち、宙にいる三機に放つ。
鋭い一撃だが、当たる瞬間にあさっての方向から多重ビーム砲がはなたれ、僅かに蹴りの狙いがそれる。
「なに!?」
目を見開くウルベが見た先には、こちらにバックパックのビーム砲とライフルを構えたレジェンドガンダムの姿だった。
「おのれぃ!! 鬱陶しい虫共めが!!」
続けざまに放たれる多重ビームを巨体でありながらも素早く、ステップしながらルークは避ける。
地面に手をつき、側方に回転したり、バク転しながら網の目を縫うように巨体が飛び跳ねる。
「なんて動きだ!!」
あの巨体に当てられる気がしない。
レイをしてそう思わせる程の動き。
多重ビームの先にはスティングのクーロンガンダムが居た。
「まだだ!!」
ナギナタを回転させて盾にし、多重ビームを受ける。
そのビームを穂先に集中させて、横薙ぎと同時にルークに放った。
「器用な真似を」
ウルベはその技に感心しながらも右の拳をつくって弾く。
ガードに回した右の拳の影からステラのシャッフルハートに乗ったルナマリアのインパルスガンダムが顔面に斬りかかった。
「くらえ!!」
しかし、その突きはあっさりと巨大な左手の人差し指と中指に挟まれ、止められている。
「ーークッ」
咄嗟に柄同士を連結させていたエクスカリバーの片方を外し、一振りの大剣にして構えなおす。
デスルークは掴みとめた方のエクスカリバーを無造作に地面に投げ捨てた。
「ホントに強すぎるんだけど…!! 何なのよ、こいつ!!」
「師匠たちが相手してたら弱く見えるけど、やっぱり手強いね」
「それにしたって、手強すぎるでしょ!! 隙なんかまるで無いじゃない!!」
じだんだを踏みしめながら言うルナマリアにステラが困ったような表情になる。
「でも、何とか攻撃は回避できてるよ?」
「そんなの、向こうに一撃入れられなきゃ一緒じゃない!! 腹が立つ~!!」
目の前に巨大な右手がある。
その指先に青白い光が集約され、放たれる。
レーザーは地面に線を引きながら、海を割りながら、雲を割きながら、ルナマリア達に迫る。
「やろう! クーロンフィンガァアアア!!」
真紅の手が光輝き、ステラ達に迫るビーム砲を横から撃ち抜いて庇う。
スティングの攻撃力はルークを上回っている。
機動力ならば、ステラのシャッフルハート。
手数ならばレイのレジェンド。
的確な格闘ならルナマリアのインパルスが勝る。
だが、決定打が与えられない。
一方でウルベも違和感に気付いた。
「どういうことだ? 6体居たはずだが、なぜ先ほどから4体しか攻撃に参加してこない?」
ウルベが静かに周りを観察すると、腰だめに気を高めるデスティニーガンダムとヤマトガンダムの姿があった。
「なるほど、明鏡止水で気を極限まで高めて放つつもりか。無駄な事を! と言いたいが、何が起こるか分からんからな。先に潰させてもらおうか!」
構えを取るウルベを正面に見ながら、シンは呟いた。
「どうするよ? 気付かれたみたいだぜ?」
これにアウルが皮肉気な笑みを浮かべた。
隣のシンに語りかける。
「やるか? まだ気が充分じゃないがーー。シン、お前はどうだい?」
「似たようなもんだ。とてもじゃないが、奴を一撃で倒せるようなレベルじゃない」
シンの予想どおりの回答にアウルが苦笑しながら言う。
「お互い、役立たずだねぇ」
「は、まったくだ」
二人とも皮肉気な笑みで笑い合う。
それを見下ろしながら、ウルベは言った。
「お友達との最後の会話は楽しめたかな? ならば消えるがいい!!」
右の掌を開き、エネルギーを溜めて放とうとする。
それを、横からレジェンドガンダムとクーロンガンダムが腕の部分に切りつけて狙いを外させる。
「やらせるかっ!」
「そう簡単に!!」
レイとスティングの体当たり気味の斜め斬り下ろしの同時攻撃に、ルークの太い腕の狙いがそれる。
「貴様ら!!」
巨大な左の拳に殴り飛ばされるレイとスティング。
弾き落とされる二機は地面に叩きつけられた。
「ぐぅっ」
「なんてパワーだ!」
衝撃に歯を食いしばる二機の上に巨体が跳びあがる。
「死ねぇええええええ!!」
悪魔の雄叫びを上げながら、目は赤く染まり、肌は紫となって牙を剥き出しにした異形の男は襲い来る。
「やらせるかぁあああああ!!」
「なめるなぁああああああ!!」
二人の少女が跳びあがったルークの顔面にエクスカリバーの横薙ぎの一撃を食らわせる。
シャッフルハートの機動力と斬撃の威力を合わせた一撃。
しかし、それもわずかに首がのけぞる程度の効果しかない。
「「ーーーーっ!!」」
その程度の効果しかないことに目を見開く2人の少女。
「じゃじゃ馬どもめが!!」
ウルベは首を元の位置に戻し、右の拳でルナマリアとステラを打ち落とす。
「ああああああっ」
「きゃああああっ」
背中から地面に叩きつけられる少女たち。
ウルベがゆっくりと彼女たちに向かって歩む。
「先に貴様らから握りつぶしてやろう」
邪悪な笑みを浮かべて言うウルベに、背後からレジェンドガンダムの多重ビームとクーロンガンダムのエネルギーショットが背中に当たる。
「ぬぅ?」
衝撃に体を揺らし、振り返って見ればスティングとレイの二人の機体が立ち上がって、こちらに構えを取っていた。
「やらせるかよ、ステラ達を!!」
「ああ、そうだな。これ以上は、やらせん!!」
全身から白い炎のような気が二機を包み込み始める。
「……明鏡止水? こざかしい。!ぐう!?」
ゆっくりとそちらに体を向けたとき、インパルスガンダムのビームライフルとシャッフルハートのエネルギーショットがデスルークの横面に直撃した。
「きさまらぁああああ…!!」
忌々しさと苛立ちから、ウルベが唸る。
そんな彼に不敵な笑みを浮かべてルナマリアは言った。
「調子に乗ってんじゃないわよ。化け物さん」
「ステラはーーううん。私たち、まだ負けてない!」
ステラも普段は愛らしい相貌を鋭くして叫ぶ。
これを忌々しそうに見下ろすデビルウルベ。
デスルークは赤黒い光を全身に纏い、一気に気を高める。
「できると思うなよ? 貴様ら如き有象無象が!! このウルベを倒すなど!!!」
拳を握り構えを取るウルベに、ルナマリアが。
ステラが、レイが、スティングが、叫んだ。
「「「「俺(あたし)達の魂の炎! 極限まで高めれば、倒せないものなどーーない!!!!」」」」
その言葉にーーウルベの目が見開かれる。
自分を一瞬で負かしたあり得ない敵。
強烈なまでの気を思い起こさせる。
「シャッフル同盟ーー!? こんな小僧どもに、そんな力が!!?」
実際の4人にそこまでの気はない。
だが、侮れないとウルベをして思わせる何かがある。
「どうやら、ウォンが言っていたことも一理あるようだ。貴様ら小僧どもの中から、やがてあのシャッフル同盟のような連中が生まれてくる可能性を感じるぞ」
デスルークは静かに腰を落とし、拳を握り構える。
「ならば打ち砕くのみだ!! 貴様らの力をねじ伏せて私は己の力を示してくれる!!」
一瞬の静寂。
仕掛けたのは、4人の少年たちだ。
四方向から同時に大地を蹴り、距離を詰めて己の持つビームサーベルやナギナタを振りかぶる。
ウルベもまた全身に気を纏い、動いた。
「全く同時に仕掛けたのは、褒めてやる。だが!」
青い光を放つ右の拳で地面を掬い上げるように横薙ぎのフォームから真上に振り上げる。
レジェンドとクーロンがこれに飲み込まれ、天高く弾き飛ばされる。
同時に、背後に迫り来るインパルスとシャッフルハートの斬撃を両の拳で弾いて捌き、強烈なカウンターの正拳突きで二体まとめて弾き飛ばす。
「くそーー!」
「まだだ!」
「このまま、やられるもんですか!」
「私たちは、強いんだから!」
4体のガンダムは、己の持っていた武器を投げ捨てるとゆっくり拳を握って構える。
「ーー面白い。来たまえ、相手をしてやる!」
瞬間だった。
レジェンドガンダムを駆るレイとクーロンガンダムを駆るスティングが同時に左右から殴り掛かったのだ。
大人と幼児程の体格差はあるが、2機のラッシュを真っ向から左右の手で、ウルベは捌いていく。
「どうした、君たちの力はこんなものなのかね?」
言うと同時に、2機の背後に超スピードで回ると強烈な回し蹴りで2機纏めて吹き飛ばす。
今度は前後からルナマリアのインパルスガンダムとステラのシャッフルハートがデスルークに襲いかかる。
正面から攻めてきたインパルスを右腕一本で捌くと、彼はルナマリアの正拳を左に見切ってから掴み止め、背後に来ていたステラに向かって投げ捨てる。
ルナマリアのインパルスを咄嗟に両手で受け止めるシャッフルハート。
そこへデスルークの巨大な足による強烈なスライディングキックが炸裂し、ルナマリア共々上空へ跳ね上げられる。
更に跳躍してウルベは2機に追いつくと拳を振りかぶった。
「ーーやらせん!」
そのウルベの顔面にレイのレジェンドによる拳打が放たれる。
直ぐさま裁かれ、返しの左拳を打たれるも、それをレイはレジェンドにガードさせて止める。
「ーーなに?」
異形と化したウルベの目が見開かれるも直ぐさま、殴り合いが始まった。
互いの攻撃を互いの技で受けて流し、捌く。
「ーー巨体に惑わされていたようだ。やるべきことは見つかったぞ!」
互いに攻撃を相殺しながら、レイは仲間に叱咤激励を入れる。
「ーーなめるなよ、若造が!!」
互いに互角の打ち合いを演じていたように見えるが、体格差は明らか。
負担はレイの方が大きい。
このまま、続ければレイの集中力が切れて負ける。
だが、それを良しとしない男ーースティング・オークレーが、クーロンガンダムに気をまとわせて打ち合いに割り込んだ。
「ーー小僧ども!」
スティングは、打ち返しながら思う。
「信じろ。俺ならできる! 俺なら、やれる! そうだろ、ガンダム!?」
炸裂音が響き渡り、巨大な拳をスティングの拳が迎え撃つ。
地響きが鳴り、宙でラッシュをぶつけ合う両者。
だが、やはりスティングも先ほどのレイと同じく長続きはしない。
そんなことは、4人とも分かっている。
自分たちがラッシュで、あの巨体と互角の打ち合いができるのは、精々が10数秒あれば良いところだ。
ならば、どうする?
明鏡止水で魂を削りながら、10数秒なら確実に稼げると分かったなら、どうするか?
答えは決まっている。
「はぁあああっ!!」
スティングの手数が負け始めるまえに、ルナマリアのインパルスガンダムがラッシュを横から仕掛ける。
当然、ウルベはそれを捌いてラッシュを返してくる。
だが、思ったとおり10数秒程度なら互角の打ち合いを演じることができる。
「ーー貴様ら、この程度の時間稼ぎが何になる!?」
問いかけるウルベに、ルナマリアが不敵に告げた。
「分からない? なら、地獄で考えなさいよ」
ルナマリアの気が小さくなるーー寸前に、ステラのシャッフルハートがラッシュを引き継ぐ。
「ーーお前が負けた理由は、一つだけだ!!」
ウルベは力押しで彼女を弾き飛ばそうとするも、粘られている。
「ーーおのれ! この程度の小娘どもに!!」
忌々しげに顔を歪めながら、10数秒後に弾きかえす。
「ーーくっ」
宙で流れるシャッフルハートにウルベは渾身の力で右の拳を振りかぶった。
「死ねえぇぇぇええっ!!」
だが、その拳がステラに当たる寸前に銀色の光と青い光、緑色の光がデスルークの拳のまえに現れる。
レイのレジェンドガンダム、ルナマリアのインパルスガンダム、スティングのクーロンガンダムである。
3機は己の最後の力を振り絞って、真っ向から拳をぶつけてデスルークを止めていた。
「貴様らーー!?」
3人は歯を食いしばり、レジェンドとインパルスは青い光を、クーロンが深紅の光を拳に纏わせている。
「俺たちを舐めるなよ、ウルベ・イシカワーー!」
「あたしたちは、あんたなんかに負けないわ」
「俺たちは、今日! お前を超えていく!!」
これに、ウルベは目を見開いて咆哮する。
「ふざけるなぁあああっ! この私が、貴様ら如きに、負けるかぁあああっ!!」
強烈な赤黒い気がデスルークの拳に纏い、三体のガンダムを後方へ弾き飛ばす。
「「「ぐわああああっ!!!」」」
追撃に右掌を大きく広げ、どす黒い気を高めてエネルギーショットを放つ。
「夢も終わりだ、クズども!!」
当たれば、三体のガンダムは消えるだろう。
それほどの威力を持ってウルベはエネルギーを放ってきた。
「僕のこの手が唸りを上げる、炎と燃えて全てを砕く!!」
その時だった。
強烈な白い光を纏った2機のガンダムが、ウルベのエネルギーショットの前に現れたのだ。
「灼熱、サァアアンシャインフィンガァアアア!!」
トリコロールの二機の内の一機は、右掌を真っ赤に燃やして、ウルベのエネルギーショットを真正面から打ち破った。
「ーー何だと!? 私のパワーが、こんな小僧に!?」
光の翼を広げたもう一つの機体は、青い光を両の拳に纏わせて一気に突っ込んでくる。
「ーー真正面から、打ち砕いてやる!!」
「舐めるなよ、小僧ぉぉおおお!!」
空中で強烈な拳と蹴りをぶつけ合う両者。
デスルークは、その巨体からは考えられない身のこなしで連続攻撃を放ち。
デスティニーは、20メートルにも満たない標準的なMSのサイズでパワー負けしていない。
どちらも譲らない空中での乱打戦。
「何ということだ!! こんなことがーー!!」
デュランダルをして目の前の光景が信じられない。
それはそうだろう。
デスティニーガンダムは、自分の倍近い身長の相手に互角に殴り合っているのだ。
「これほどの動きができるとは技師長から聞いていないぞ! これがシン君の実力だと言うのか!?」
その性能は、確かにインパルスガンダムの上を行く。
だが、これはそんなレベルではない。
MSという枠には既にとらわれない圧倒的な動きだった。
「デュランダル議長、これが心の強さですわ」
うっとりと見惚れるように恍惚とした表情でラクス・クラインの姿をした少女がつぶやく。
「己の可能性を最後まで、一点の曇りもなく、わだかまりも疚しさもない澄んだ気持ちで信じ抜く」
微笑む。
愛おしいほどに、狂おしい程に。
壊したくなるほどに。
今のシン達は美しい。
「明鏡止水ーーこれが、その力なのか」
理不尽なまでの絶望を前にしてもなお、立ち向かう勇気。
一点の曇りもなく、それができる。
彼らの強さは、そこにある。
ぶつかり合う。
何度も何度も何度も。
拳と蹴りをぶつけ合う。
途中からアウルと二人がかりで攻撃をしているのに、まるで崩せる気がしない。
ウルベの攻撃がここに来て、鋭さと速さを増している。
「認めるものかーー! 貴様らのような夢を見るだけの子どもに、絶望を知るこの私が負けてなるものか!!!」
それは既に執念ですらない。
「貴様らのような存在を一人残らずDG細胞に感染させ、ゆっくりと我が意のままとしてくれる!! たっぶりと絶望を味あわせてなぁあああああ!!!」
怨念と呼ぶにふさわしい負の情念だった。
気迫が更に上がる。
これにアウルが頬を引きつらせながら言う。
「シン、ちょっとやばいぜ! このままじゃ!!」
シンは相手の力が増していくのを感じながらも退く気は一切なかった。
「ぼやくなよ、アウル。ここまで来て、弱音なんざかっこつかねえ!!」
「ーー確かになぁああああっ!!」
シンの言葉に再びアウルの闘志にも火が灯る。
「なら、ここいらでケリをつけるぜ!!」
言うや、アウルはデスルークのラッシュの内から右のストレートを選ぶと、それを弾いて懐に飛び込んだ。
「僕の全気力をこの一撃に込める!! とどめは任せるぞ、シィイイイイイインッ!!!」
「ーーアウル!!」
デスルークの懐でヤマトガンダムの気が爆発した。
「流派東方不敗! 奥義!!」
ヤマトガンダムの全身を緑と金の気の渦が巻いてく。
「超級! 覇王!! 電ぇえええん影ぇええええええい弾ぁああああああんっ!!!」
その一撃はデスルークのの上半身を飲み込むほどに強大なエネルギーの渦となる。
パワーは凄まじく、デスルークの巨体を後方に下げていく。
「こ、こんなものでぇえええええ!!」
しかし、ウルベはその力を持って強大なエネルギーの渦と化したヤマトガンダムを両腕で掴む。
「ちくしょう! こいつを吹き飛ばすには、僕だけじゃパワーが足りねえ!!」
アウルは数10メートル程度ウルベの足を後ろに引きずらせることに成功するも、ドッジボールの球を受け止めるように両腕でしっかり抱え止められる。
「当たり前だ!! 貴様らごとき、絶望や裏切りすら何も知らん子どもに負ける私ではーーない!!!」
もう少しだった。
この男を倒すには、もう少しの力があればできる。
「畜生ーー! あと少しなのにーー!!」
アウルの表情が歪む。
「くくく、このまま握りつぶしてくれる!!」
ウルベが抱え込んだ両腕に力を込め、電影弾の気の渦ごとヤマトガンダムを握りつぶそうとする。
その時だった。
「アウル、行けよ!!」
「俺たちの力で後押しする……!!」
「アウル、あと少しだよ!!」
「弱音吐いてんじゃないわよ、アウル!!」
インパルスガンダム、シャッフルハート、レジェンドガンダムが、クーロンガンダムの後ろに周り肩に手を置く。
ジェネレーターから気が送り込まれ、スティングの身体に欠けていた気が少しだけ戻る。
「行くぜ、アウル!! 受け取れ、俺達の”気”を!!!」
放たれるクーロンガンダムのエネルギーショット。
それが電影弾を放つアウルのヤマトガンダムを後押しする。
「!! ありがとうよ、みんな!!」
わずかにだが、再びウルベの足が後方に引きずられていく。
「なんだと、こんなバカな!?」
狼狽えるウルベにアウルが不敵な笑みを浮かべた。
「前にも言ったけどさ。お前だけは許さない。覚悟しろよ、この屑野郎!!!」
一気に超級覇王電影弾の気が倍に膨れ上がった。
「貴様! 何故まだこれだけの力が!?」
「わかんねえか? わかんねえよな。テメエみたいに独りで戦うような奴には一生わかんねえよ!!」
「…き、さ、ま、らぁああああああああっ!!!」
アウルが最後の気力を振り絞って咆哮した。
「うぉおおおおおおおおおっ!!」
5人皆の思いが一つになる。
「「「「「吹き飛べぇえええええ!!!!!」」」」」
電影弾の気がデスルークの身体を飲み込むほどに強大なものになり、ついにウルベは上空へと跳ね上げられた。
40メートル近い巨体が、百数十メートルの高さまで跳ね上げられる様は、正に圧巻だった。
だが、まだ勝負はついてなどいない。
「おのれ、こうなればーー!」
胸のエネルギーマルチプライヤーカバーを展開し、結晶を晒す。
エネルギーマルチプライヤーがウルベの気を増幅し、核融合炉が陽電子のエネルギーを倍加させる。
その青と赤の光の球を胸の前で極限まで圧縮し、ウルベは叫んだ。
「ーーこのちっぽけな島ごと消してやる!!!」
上空から下の地面に向き直り、極限まで高めたエネルギーを放とうとして、彼の眼の前に光の翼を広げた機体があった。
「なんだと?」
その機体は、全身から白い光を放つと一気に気を爆発させる。
「ーーこの勝負、俺の。いや、俺たちの勝ちだ、ウルベ!!」
光の残像を残しながら、一気に距離を詰めてくるデスティニーガンダム。
「舐めるなよ、小僧! 島を攻撃すれば、貴様は奴らを仲間を守らなければならん。避けることはできん!!」
デスルークが、エネルギーをデスティニーガンダムに真正面から放つ。
避けれない。
避ければ島にぶつかり、仲間も何もかも消し飛ぶ。
「ーーだったら、打ち破るのみ!!」
シンの気迫に応えるようにガンダムが目を輝かせる。
シンはデスティニーに両手を組ませると、強大な青い光の剣を作り出した。
「キラさん、技を借りますよ!!」
それは、ベルリンでデスルークを破ったキラ・ヤマトのストライクガンダムの光の剣。
模倣したシンは知らないが、その技もある兄弟が使った技をキラが模倣したものであった。
希望の未来を切り開く、輝ける光の剣。
「死ねえぇぇぇええっ!!」
「お前を倒せと、輝き叫ぶぅうううう!!」
赤と青のビームと白い光を纏い光の剣を振りかざすデスティニーガンダムが中央でぶつかり合う。
「シン! ウルベなんかに負けないで!!!」
「ーー信じてるからね、シン」
2人の少女の想いと願いを。
「ーーシン、お前なら勝てる!!」
「頼むぜ、シン!!」
「僕たちが、ここまでお膳立てしたんだ。負けんなよ!!」
3人の少年からの叱咤激励。
そして、あの人からのーー!
「見事、打ち勝ってみせよ! 私の自慢の教え子、シン・アスカよぉおおお!!!」
その想いが声が、シンの耳に届いた時。
運命は黄金の光を纏った。
「ーーばかな、ばかなばかなばかなばかなばかなぁあああっ!! 何故だ、何故貴様に、こんなことが!!?」
デスルークの放った破壊の光が、デスティニーの体を纏う黄金の輝きの前に消し飛んだ。
「ーー我が心、明鏡止水。されど、この胸の魂は、烈火の如く!!」
赤紫の光の翼が、デスティニーの残像を生み出す。
「ーーおのれ、ガンダム!!!」
巨大な拳を振りかぶり、光の翼を背負った黄金のガンダムに放つ。
一閃。
デスティニーの光の剣は、頑強な拳を二の腕あたりまで、一刀の下に切り捨てる。
光の翼が、圧倒的なスピードでデスルークに狙いを定めさせずに動く。
「おのれ!!」
左の拳を放つデスルーク。
「ーー甘い!!」
その場からの横薙ぎで、拳を切り捨てるデスティニーガンダム。
そしてーー。
「ーーこれで、最後だぁあああっ!!」
デスルークの顔面に突き刺さる光の剣。
そのまま、縦に真っ二つにする。
「ーーおのれ、この私が。こんな小僧に負けるとは」
体を半分にされてなお、ウルベはシンに告げる。
「お前、まだ!!」
構えを取るデスティニーガンダムにウルベは笑いかけた。
「今は、一時の勝利を喜ぶがいい。だが、いずれ貴様らは我らDG細胞の支配下になる」
巨大な爆発と共に、デスルークのウルベは告げた。
「その時を楽しみにしているがいい。くくく、はははははははははははは!!」
宙で完全に破壊された巨大な機体。
燃え上がるヘブンズベースの空に悪魔の哄笑が響いていた。
皆さん、お待ちかね〜!
ヘブンズベース基地での戦いは、シュバルツやシンの活躍で勝利を収めました。
しかし、デビルガンダムはその場で人類ーー否、デュランダルに対し、自分たちこそが人類の敵であると戦線布告するのです。
そこでレイが思ってもみないことを彼らに告げるではありませんかぁ!!
次回、機動武道伝Gガンダム SEED Destiny 第73話に!
レディー、ゴー!!