新機動武闘伝 GガンダムSEED Destiny 作:カンナム
しかし、物語はまだまだ続きます。
ジブリールを逃してしまった彼らの前に、今度はデビルガンダムことDが宣戦布告してくるのです!!
はたして、どうなることやら。
それでは!!
ガンダムファイト!!
レディイイ、ゴォオオオオ!!
第73話
跡形もなく消し飛ぶ最後の禍々しい死のガンダムの牙城。
すべてを終わらせた一撃は、この世界の少年と少女たちの願いと思いを込めた光だった。
絶望のMSの軍団に染まっていた空と海、そしてヘブンズベース内の僅かな陸地。
それらがまるで潮が引くように消えて行く。
「やったの、シン?」
ルナマリアが、光の翼を展開しながらゆっくりと地上に降りてくるデスティニーガンダムに向かって問いかけた。
傍らを見れば、彼女と同じく戦い抜いた4機のガンダムも固唾を飲んで見ている。
「……ああ!」
シンはそう言ってルナマリア達の方に振り返り、デスティニーガンダムの親指を立てて見せた。
これに連合とザフトの混成であるデュランダル軍が怒号をあげる。
「やったぞぉおおおおおお!!!」
「俺達は、生き残ったんだ!!!」
皆が手を取り合い、喜ぶ中で、ギルバート・デュランダルも指令席に身を沈めて背もたれに埋まりながら目を閉じる。
「議長ーー!」
サラが隣に来てデュランダルの名を呼び、ねぎらうように見つめると彼は片手で制した後に目を開き言った。
「ようやくスタート地点だ。それとジブリール氏を捕らえるまでは、この世界の戦いは終わってはいない」
「ーーはい」
デュランダルの言葉にサラも微笑みを決してモニターを睨みつけた。
「ラクスーー。ラウとハイネに伝えてくれ。ジブリール氏を探すように」
この言葉にラウとハイネから「了解」との応答があった。
その時だ。
「無駄だ。ロード・ジブリールは逃走した」
第三者の声が通信で割って入って来た。
「その声、Dかーー?」
デュランダルがモニターに目を戻すとそこには赤いボディに赤い羽根をマントのようにして身にまとった機体。
デビルガンダムがこちらを見ていた。
ヘブンズベース陸上にいるシン達は基地の地下あたりにできた巨大な穴から、二機のガンダムが出てくるのを確認していた。
黒いヘルメットをかぶった様な忍者の姿をした機体ーーガンダムシュピーゲルと、赤を基調としたトリコロールボディ(胸の部分だけ青)に赤い羽根の機体ーーデビルガンダムである。
先の通信は赤い方の機体。
デビルガンダムのパイロットであるDから放たれた言葉だった。
「逃げられたっていうのか!? ここまで追い詰めたのに!!」
シンが思わず詰め寄るとシュバルツが頷いた。
「すまん。あと少しだったのだがーー」
これに皆が歯を食いしばる。
同時にギルバート・デュランダルに対してラウ・ル・クルーゼが声を上げた。
「デュランダル議長、逃げられたのであればすぐに追撃を行わなければなりません。我々『ヴェサリウス』はこれより追撃を行います」
この言葉にデュランダルも神妙な面持ちで通信をかえした。
「頼むよ、ラウ」
デュランダルの通信に応えながら、クルーゼは隣にいたナイトのMS。ハイネに声をかける。
「ハッ! そう言うわけだ、ハイネ。もう少し付き合ってくれ」
「分かってますよ。戦争を終わらせようにも、あんな奴に生き残ってもらっちゃ困りますからね」
「そう言ってもらえると助かるよ。」
帰艦するデスビショップとデスナイト。
すぐに彼らを中心とした連合とザフトの混成チームが作られようとしていた。
ヘブンズベース基地でのシン達も追撃に参加しようと声を上げた。
「俺達もいきます!」
「まだやれます、艦長!」
シンとルナマリアの言葉にアーサーはタリアを振り返ると彼女は首を横に振った。
「無理をしないでちょうだい。貴方達の戦いは見事だったわ」
「あれほどの激戦だったんだ。ここは他の部隊に任せて、無理をするな」
アーサーもタリアと同じ意見だったらしく、首を振る。
「だけど、艦長ーー!」
シンが抗議の声を上げようとしたその時だった。
「喝ぁああああつ!!」
突然、マスターアジアが気合の声を上げてシンのデスティニーガンダムに中段付きを放ってきたのだ。
「ーーっ!?」
不意打ち気味に放たれた一撃。
それをアウルのヤマトガンダムがデスティニーガンダムの前に割って入り、受け止めた。
「師匠? 何をなさるんですか!?」
思わず問いかけるアウル。
「師匠!? 何故です!?」
「どうして、シンを攻撃するの? 師匠」
狼狽えるスティングの横で悲し気な表情のまま問いかけるステラ。
いきなり信頼していた大人から攻撃を受けた。
そんな少年たちを見据えて、マスターアジアはニヤリと笑った。
「まだ敵が目の前におるというのに、何だ? その気の抜けようは」
「「「「「「---!?」」」」」」
6人の少年たちが同時に目を見開く。
レイが持っているライフルを構え、ルナマリアが拳を握りしめた。
「人類の、敵だと言ったな?」
「どういうことなの、マスターアジア!? ステラ達を悲しませたら、許さないわよ!!」
問いかけながらも油断はしない二人。
正直に言って、マスターアジアに敵うとは思わないが。
それでも見過ごすわけにはいかない。
「どういうことも何もない。ワシらは人類の敵、敵とは闘うものであろう。のう? 我らが王よ」
マスターガンダムが自身のライバルであるガンダムシュピーゲル。
その横に立つ赤い巨体ーーデビルガンダムに向けて笑いかける。
同時、赤い髪の青年は言った。
「我が名は、デビルガンダム。聞け! 人間たちよ!! そしてそれを纏める者ーーデュランダルよ!!!」
その通信は、全世界に轟いていた。
「我はかつて、この世界ーー地球を再生するために作り出されたもの。だがーー悪人と呼ばれる者に利用され、自我を得て。全ての人類を敵に回し、敗北したものなり」
この放送はオーブに居るキョウジ・カッシュも見ていた。
彼をして、戸惑う。
これは彼の予想にはなかったことだ。
「……デビルガンダム、いったい何をするつもりなんだ? この世界は俺達の世界とは違う。そんなことを宣言したところで何の意味もない。なのに何故、世界をただ混乱させるような真似を?」
宇宙にて。歌姫の戦艦エターナルに居るドモン・カッシュにも届いていた。
ラクスやダコスタが驚愕に目を見開いている中でドモンは静かに瞳の中に炎を燃やす。
「Dよ、お前は師匠・マスターアジアと共にその道を選ぶのか…!」
彼らは真剣な表情で、モニターに映る青年の言葉を聞いている。
「故に我は知る。貴様ら人間の汚さを! 一方では綺麗な言葉を並び立て、一方では平然と裏切るその姿を!! 貴様ら人間は己と少し違う者を認めようとはせず!! 他者を疑い、利用し、滅ぼそうとする愚かな存在だ!!」
その言葉は、一切の優しさや温かみがない。
排除をすることのみを強調した言い方だった。
この言葉に紛争地域にいた少女は身を竦めつぶやく。
「…怖い」
「何をわけのわからないことを言ってやがる! 仕掛けてきたのは、あいつらロゴスだ!!」
「私たちの何が愚かだっていうのよ!!?」
子を失った父親は怒り、母親は嘆きの表情となる。
青年Dは、デビルガンダムの顔をジブラルタル基地ーーデュランダルを真っ直ぐに見据えた。
「我の中ではソレが全てだった。だが違ったのだ」
Dの表情は穏やかなものに変わっていた。
「D--? 君は、何を?」
思わずデュランダルが立ち上がる。
その表情は自分に向けられるべきものであったろうか?
機械だと割り切っていた。
所詮は、機械が作り出した人形だと。
だが、この表情は何だ?
知らなかった。
Dにそんな表情ができることを、デュランダルは知らなかった。
「君は誰なんだ?」
そのデュランダルの疑問に構わずDは続ける。
「我は、我の世界で多くの人間が地球を守るために戦ったのを見た。今の貴様らと同じようにいがみ合い、疑い合った人間たちが、地球を守るためだけに一つとなった」
狂人の類かとも思った。
だが、彼の話には凄みがあった。
何故かはわからないが、彼の言葉には力があったのだ。
「故に我は、そなた等に問いかける。そなた等は真実、平和を望む者か?」
これにシンを含む兵士達が声を上げた。
「当たり前だ!!」
「俺達は、平和を望んでいる!!」
「だからこそ、ロゴスを討とうと!!」
これにDは問いかけた。
「ロゴスを討てば、平和になるのか? それは、そなた等人間たちの総意か?」
その言葉に即座にシンが言った。
「総意かどうかなんかどうでもいい! 動かなきゃ、何も変わらないから!! だから俺達は今、こうして戦ってるんだろ!?」
「その考えと思いは正しい。だが、その後はどうする? 導かれるまま、誰かに判断を委ねたまま生きるのか?」
「根本的なこと言ってやるぜ。俺はな、そんな頭でっかちの話なんかどうでもいいんだよ!! 問題は、あいつらーーウォンやジブリール達を生かしておいたら、もっと大勢の人間が犠牲になるってことだよ!! ベルリンの街みたいな被害が何度も引き起こされるんだ!! 許せるわけないだろうが!!!」
言いながらシンは炎の瞳をDに向ける。
Dも同じ色の瞳で彼を見返した。
「だから、皆ここにいる!! こうして戦っているんだ!!!」
彼の思いを代弁するかのように、他の5人の少年たちもデスティニーガンダムの傍らに立ってデビルガンダムを見る。
「その思いが愚かだって言うんなら、お前もウォンやウルベ達と同じだ! 俺は、お前を許さない!!」
デスティニーガンダムが拳を握りしめる。
それをデビルガンダムが静かに見据えた。
「ガンダムシュピーゲル、貴様の影響か?」
「私は彼に技を教えたに過ぎない。だが、私もシンと同じだ、デビルガンダムよ」
言いながらガンダムシュピーゲルのファイターたるシュバルツがブレードを静かに展開する。
「彼の言葉と思いが分からぬのなら、私がファイトを通じて教えてやろう!!」
だが、デビルガンダムはそれに構わずに再びデュランダル軍全体に告げる。
「ならば、そなた等に問う。その尊き思いを利用されていると何故気付かない?」
「……!?」
この言葉にシンとシュバルツの目が大きく見開かれる。
「真実、あのベルリンの一件がロゴスだけが原因だと思っているのか? 否、思っていたとしても、だ。ウォン達の言葉に偽りはなかった。デュランダルとのやり取りで、そなた等にも疑問が浮かんだ者もいるだろう。それとも、利用されていたとしても己や自分の大切な者が助かるならば大人しく利用されるという考えか?」
その言葉にシンが大きく目を見開いて思い返す。
ウォンの言葉に偽りがない。
その言葉は真実だからだ。
ベルリンの一件、アークエンジェル、キラ・ヤマト、アスラン・ザラ。
それらは全てギルバート・デュランダルが仕組んでいた。
だけど、それを告げられたところで、シン達には何もできない。
今、何かができる状態にはないからだ。
デュランダルは世界的に支持を集め、プラント最高評議会すらも纏めている。
この状況で、デュランダルを黒だとは宣言できない。
(こいつ、何でこんなに詳しいんだ!?)
シンが疑問に思うのも当然だった。
そこにタリアからの通信が割り込んで来た。
「一つ良いかしら? 私はザフト艦艦長・タリア・グラディスです。貴殿の力のおかげでウルベとウォンを倒せたことをまずは、礼を言わせてください」
「……」
タリアを訝し気に見るDに彼女は真っ直ぐな瞳を持って告げた。
「そして先の質問については、誰もが貴方のように強くはありません。ここには多くの人がいます。人種も国籍も皆、違います。彼らーーいえ、私たちには一人一人、守るべき家族がいます。そしてその事情も一人一人違うのです。しかし、皆が同じ方向を向いていなければ戦争など、個人の力ではできません」
「なるほど。概念として敵にも家族があることは知っている。だからとて、殺し合いの場では悩みや情けなどを持って望めば己が死ぬ、か。わざわざ自我を捨て、機械が如き動きをする貴様らが我には理解できなかったのだ。許せ」
「ーーええ。考えの違う人間達を纏めるには、一つの目標が必要ですから」
Dは無表情ながらも、静かにタリアの話を聞いている。
シンから見たその姿は答えを聞くのを待ち望み、やり取りを楽しんでいるかのようだった。
「デュランダル議長の考えに疑問を持つのか、持たないのか。それは一人一人の判断です。ただ、あのウォンの出した映像に何も感じない人間は、ここにはいないでしょう。ですが、戦闘後に「人類の敵」とあなた方が宣言されたことにより、議長への疑問よりも我々はあなた方を優先し、警戒しなければならなくなっているのです」
少し怒り気味に言うタリアにDは肩を竦めると言った。
「我らの存在は貴様らを混乱させるだけ、か?」
「現状においては、そのとおりです。ましてあなた方は、あの化け物とも言うべきウルベ達を圧倒する程の無視できない存在。混乱はこの上ないものです」
「なるほど。我が余計なことをせんでも、勝手に貴様らで考えるか」
驚くほどあっさりとDはタリアの言葉に納得すると、そのまま機体を別の方向へ向けた。
同時にシン達6人とシュバルツに向けて言う。
「次に会う時は、敵として遠慮なく相手をしてやろう。貴様らが今と変わらず、デュランダルの先兵のままならばな」
最後にジブラルタルのデュランダルに向けて彼は悪鬼の形相となり、凶気を孕んだ瞳で告げた。
「ーーいずれ女は返してもらうぞ」
その気迫はモニター越しでありながら、デュランダルをして気押される程であった。
まるで獰猛な肉食獣の檻に放り込まれたような、心臓を鷲掴みにされたような感覚だ。
「ーー!」
レイが先のデビルガンダムの様子に目を見開き、何かに気付いたように1人頷く。
デビルガンダムはマント状にしていた翼を広げると、マスターガンダム達に告げる。
「行くぞ、もはやここに用はない」
「そうか。よかろう」
マスターガンダムがそれに応えるとネロスガンダムを向いた。
「では行くとするか、ワシらの艦を出せ」
「ーーケッ」
吐き捨てると、ネロスガンダムのデュアルアイが光る。
同時にレセップスと呼ばれるザフト艦が彼ら四天王の上空に現れた。
「「「師匠ーー!!」」」
マスターアジアの弟子たちが思わず問いかけた。
「師匠! 俺達の敵に何故なるのですか!?」
「僕達、何か師匠の気に障ることをしたんですか!?」
「師匠、お願い! 敵にならないで!!」
そんな三人の弟子を振り返ったマスターアジアは、温かみのある顔で言った。
「馬鹿弟子どもめ。ワシを越えなければ、人類は守れんぞ? シュバルツの下で精々精進するが良い」
思わず、ステラが一歩踏み出そうとするが、それよりも先にレイのレジェンドガンダムが前に出た。
「デビルガンダム」
「ーー?」
レイの目がDを見据えている。
これにデビルガンダムおよび四天王が足を止めて振り返った。
「人類の敵となるとは、ギルをーーギルバート・デュランダルの敵と言う意味なのか?」
「……だったら何だ?」
その答えにレイは眦をキリリと吊り上げて、言った。
「ならば、俺も共に連れて行ってくれ」
その言葉にシン達の目が見開かれる
「何言ってんだよ、レイ!?」
「正気なの!?」
狼狽える彼らの横で静かにシュバルツは、レイを見ていた。レイは、彼らに向けて頭をさげる。
「頼む、行かせてくれ。ミネルバにこのまま居ても、ギルは止められないんだ!」
「だからって、こんな奴らと組むなんて! 俺は認めないからな、レイ!!」
必死に告げるレイにシンが待ったをかける。
「そうよ、レイ! 得体の知れない上に物騒なこと、この上ないわよ! 人類の敵だなんて名乗る奴なんだから!!」
ルナマリアも遠慮なく告げる。
これにチャップマンが苦笑を漏らし、ミケロは忌々しそうに吐き捨てる。
ゆっくりとデビルガンダムは、レジェンドガンダムを見据えて告げた。
「話してみろ。確かデュランダルの所にいたレイ、だったな?」
Dの言葉にレイは自分を覚えていたのかと目を見開き、一呼吸を置いて心を落ち着けると、ゆっくりと語りかけた。
「デビルガンダム、先のタリア艦長との話で俺なりにあなたが望むものが何か分かった。あなたは人間を知りたいのだろう? 俺は、あなたに具体的な指針と目的を与えることができる。だが、俺1人の力ではそれを遂行することはできない」
Dは静かに続きを促す。
「あなたには力があっても具体的な指針はない。俺たちが組めば、お互いのデメリットを補えるはずだ」
「待てよ、クソガキ」
そこに待ったをかけたのは、パンクルックの凶暴な男。
ミケロ・チャリオットだ。
「勝手に話を進めてんじゃねえよ。ウルベのコピー相手に6人がかりでやっと倒せるような未熟なガキなんざ、足手まといにしかならねえよ」
この言葉に、レイ以外の少年たちの眦がつり上がる。
この気に呼応するように、ミケロが殺気を身に纏い始めた。
「あん? やろうってのか? コピー程度に手こずったてめえらが、この俺様と」
猛禽類が翼を広げ、狩りを行うかのように両腕を広げてミケロは構える。
これにシン達も構えを取るが、それを遮るようにレイは続ける。
「確かに、俺は未熟だ。自分1人じゃ何もできない。決めれない。情けない奴だった。だが!!」
レイは真剣な表情でシンをルナマリアを、スティング達やミネルバを振り返ってから叫ぶ。
「だが、そんな俺を彼らは変えてくれた!! だから、守りたいんだ!! 頼む! ミネルバにこのまま居れば、いずれ俺たちは否が応でもギルの手駒にされるか、ミネルバの誰かを犠牲にしてしまう!! 俺はそれを止めたいんだ!!」
ミケロが小馬鹿にした笑みを浮かべて何かを告げようと口を開けた瞬間に、チャップマンが真剣な眼差しで割り込んできた。
「若いな、小僧。俺たちと共に来るならば、戦士として戦い続けなければならないぞ? 守りたいと誓った友の為に、友を討たねばならん状況に陥ることもある。その覚悟はあるか?」
かつて、英雄として勝利のみを求められた男は静かにそう問いかけた。
「おい、チャップマン!?」
話の腰を折られ、イラつくミケロをさらに遮り、マスターアジアが告げた。
「レイ、と言うたな? その覚悟は見事。そして、友や仲間の為という、その想いも分かる。
だがな、ワシらの道は修羅の道よ。仏に会えば仏を屠り、鬼に会えば鬼を屠る。半端な覚悟では後悔しか生まれぬ。止めておけ、貴様が選ぶにはまだ若過ぎる道よ」
この言葉にレイは歯を食いしばり、告げた。
「俺の命は、元々少ない。テロメアが短い。俺は作られた命なんだ!! 若過ぎるなんてことを言ってる暇なんか、俺にはない!!」
その言葉に、シンの目が見開かれ、ルナマリアが呆然とする。
スティングも思わず棒立ちになり、つぶやいた。
「なんだ、それ? レイが作られた? テロメアが短いってーー」
「意味が分かるのかよ、スティング? だったら、僕にも分かるように言えよ」
不満そうなアウルを見ずに呆然となりながら、スティングは答えた。
「レイの奴、老化が早いんだ。そのせいで寿命が短い」
スティングの言葉に、アウルもステラも目を見開いてレイを見る。
「だ、ダメだよ、レイ! 行っちゃダメ!!」
ステラが思わず止めるが、そんな彼女たちにレイは微笑み返した。
「ありがとう。お前達のためになら、この出来損ないの命を惜しむことなく使える。ーー友よ」
その言葉に、シンのデスティニーガンダムの翼が光を生み出した。
「行かせない、絶対に! 行かせないからな、レイ!!」
気は尽きているのに、それでもシンはデスティニーに光の翼を生み出させた。
「あたしだって、行かせないんだから!!」
ルナマリアもインパルスガンダムに構えを取らせる。
「…Dよ、どうする?」
マスターアジアは、静かに彼らのやり取りを見ていたDに話しかける。
瞬間だった。
「ーーな!?」
デビルガンダムの翼が開き、一瞬でシンのデスティニーガンダムの前に20メートルを越える巨体が現れた。
反射的に、シンはデスティニーに右拳を握らせてデビルガンダムの顔面に向けて放った。
瞬間、デビルガンダムの顔の前に、いつの間にか置かれた左掌に掴み止められ、そのまま顎を蹴り上げられた。
「ーーガッ!?」
上空に吹き飛ぶデスティニー。
デビルガンダムは、それを見ることなく目の前のインパルスガンダムの懐に飛び込む。
「ーーくっ! こんのぉおおお!!」
咄嗟に左の拳を3発程散らして、距離を取ろうとルナマリアは行ったが、その内の一つに軽々と胴回し横蹴りをカウンターで顔面に決められ、吹き飛ぶ。
「ーーやろう!」
「させっかよ!」
「これ以上は!」
3人のMFは周囲を囲むと、同時に右手のフィンガーを放った。
だが、デビルガンダムはその場から、右足を浮かせると足先に気を纏わせ、一気に周囲を蹴り薙いだ。
フィンガーが触れる前にカウンターで回し蹴りを決められた3人は、そのまま前のめりに崩折れた。
「ーーなにを!?」
レイがこの光景に怒り、ビームライフルをデビルガンダムに向け、構える。
「ーー落ち着け。命に別状はない。Dはきちんと加減をしておる」
これを制したのは、スティング達の師でもあるマスターアジアだった。
「ーー? どういうことだ?」
「どうもこうもあるまい。ワシらと共に行きたいと言ったのは貴様であろう? 準備は整ったぞ。後は他ならぬ貴様の判断だ」
つまり、シン達を倒したのは、レイがどちらを取るのか選びやすくするためなのだろう。
「ーー乱暴な奴らだな」
呆れたような声が、レイの思いを代弁した。
そこにいたのは、覆面を外した整った顔の東洋人。ガンダムシュピーゲルを駆るシュバルツ・ブルーダーであった。
「ーーえ? シュバルツさん?」
キョトンとこんな場面なのに、目を丸くするレイに素顔をさらしたシュバルツは苦笑を返してから、Dに話しかける。
「レイを連れて行くのであれば、まずは私と闘ってもらおうか、デビルガンダムと四天王よ」
その言葉に、レイが目を見開いて止めた。
「ーー何を言ってるんです!? 彼らを相手に1人でなんて!!」
「ああ、そうだな。だが、武道家にとって拳を交えることは時として単純な勝敗すら超えたものがある。
レイ、私はあの男にお前を頼まれた。だからと言って、お前の選ぶ道を私は否定しない。だが、選ぶ相手には注意が必要だ」
言いながら、デビルガンダム軍団に構えを取るシュバルツは、強い眼差しで告げた。
「生半可な奴に私の大事な教え子は預けられん。私と奴らとのファイトをその目で見て決めろ。奴らが信用に足るかどうかをな!」
これにミケロが嘲笑を浮かべた。
「おもしれえ! ネオ香港じゃ、てめえとは小競り合いしかしなかったからなぁ!! 4人がかりでボロ雑巾にしてやるぜ!!」
シュバルツは、即座に反応してネロスガンダムに向かった。
ガンダムシュピーゲルとネロスガンダムが互いに向かって駆け合う。
「ハイパァアー銀色の脚ぃいいい、スペシャァアアアアル!!」
天高く跳躍し、右足に青白い気を纏わせて稲妻の如く放たれる。
同時に青白い光がシュピーゲルの胸から放たれ、明るい緑色の光がはなたれる。
鏡転同血ーー変わったのは、東方の龍を模した機体ドラゴンガンダム。
「最終秘伝! 真・流星胡蝶剣!!」
緑色がかった黄金の蝶の羽が龍の背から伸び、全身を包んで強力な剣と化す。
二つの蹴りがぶつかり合い、相殺しながら両者離れる。
「…4人がかりなどとは好まんが、貴様ほどの相手ならば拳を交える価値は充分だ。シュバルツ」
着地したドラゴンガンダムは青い光と共に重厚な鋼の機体ーーボルトガンダムへと変化した。
「乾坤一擲! グラビトォン・ハンマァアア!!」
シュバルツの気合と共にハンマー投げの要領で放たれた巨大な鉄球。
それをチャップマンは右足に溜めた雷の気で迎え撃つ。
「グランドホーン!!」
放たれた前蹴りは雷が真っ直ぐな軌跡を作り、巨大な青白い角と化す。
まともにぶつかり合う鉄球と角。
鉄球が後方に弾かれると同時にジョンブルガンダムも後方へのけ反った。
次に現れたのは、翼を広げたマスターガンダムだった。
「ならば! ダァアアアクネスフィィンガァアアアア!!」
振りかぶる紫の光を放つ右手。
「勝負! ゴォッド! フィンガァアアアアアア!!」
同時にボルトガンダムが炎を纏ってトリコロールの羽を持ったガンダムへと変化した。
日輪を背負い、ゴッドガンダムは右手に真っ赤な炎を宿す。
組み合う両者。
「いまだ、ゴォッドフィィルドダァアアアッシュ!!」
瞬間、ゴッドガンダムの背の日輪が輝き、一気に機体を前に突き出す。
「! 何と!?」
絶妙なタイミングのダッシュにマスターガンダムをして、後方に弾かれた。
シュバルツのゴッドガンダムは、そのまま黄金の気を纏うと一気にデビルガンダムに向かって真紅に燃える右拳を振りかぶって突っ込む。
腕を組んでいたデビルガンダムはその両腕をゆっくりと外し、黄金の気を全身に纏って蒼紫に燃える右手を握る。
「ーー破ぁッ!!」
「ぬんっ!!」
気合一閃、ぶつかり合う両者の拳と拳。
互いの黄金の気が一つになり、螺旋を描いて天に昇る。
鏡の武神と悪魔の王との力比べ。
「ぬぅあああああ!!」
「うぉおおおおお!!」
それは全くの互角で、両者は互いの放った拳の衝撃に後方にのけ反った。
互いに構えを取る。
デビルガンダムと睨み合うシュバルツのゴッドガンダムの周りをマスターガンダム、ジョンブルガンダム、ネロスガンダムが取り囲んだ。
「楽しませてくれるわ! シュバルツ・ブルーダーよ!!」
「さすがだ。やはり一騎打ちに持ち込みたいところだな」
「舐めた真似してくれんじゃねえか、シュバルツよぉお!!」
これらの気迫を真っ向から受けて、シュバルツはニヤリと口の端を不敵に歪ませた。
「いい相手だ。これほどの緊張感。久しくなかったぞーー!」
彼ーーシュバルツは、この圧倒的な不利の状況を楽しんでいる。
それを理解して、レイはまた大きく目を見開いた。
「あなたは、俺に何を見せようと?」
黄金の気を纏うゴッドガンダムを相手に、静かにデビルガンダムは左右の四天王に目配せをした。
「ーー邪魔をするな。四天王」
その言葉に、マスターガンダムは拳を握るのをやめ、ジョンブルガンダムは直立不動となる。
ネロスガンダムのみ、デビルガンダムに食って掛かった。
「てめえこそ邪魔すんじゃねえよ、デビルガンダム!!」
ガンダムシュピーゲルが変身したゴッドガンダムを睨みつけてネロスガンダムは構える。
「こいつの半身と弟には、痛い目にあわされてんだ! 借りは返さなきゃなぁあああ!!」
赤い気を纏い、ネロスガンダムが銀色の脚を再び振り上げようとした時、左右からマスターガンダムとジョンブルガンダムの拳が顔面寸前で止められていた。
「ーー!! マスター。チャップマン。てめえら!!」
怒りに表情を歪ませるミケロを冷ややかな瞳で見るチャップマン。
そして、厳しい表情で睨みつけるマスターアジアがいた。
「我々の王の邪魔をするな、ミケロ」
「まだ分からんのか、この未熟者めぃ!!」
紫電と紫炎が、左右から迫りミケロをして動けない。
「デビルガンダムよーー」
「ーー存分に試合えぃ!!」
二人の男からの声にDは静かにシュバルツを見据えて言った。
「ドモンのゴッドガンダムか。さすがに使いこなすのが早いな、シュバルツ」
「あの時、貴様に授けられた力だったな」
「……ユニウスセブン、か」
つぶやくようにDはそう言うと、構えを再びとる。
シュバルツも静かに構える。
同時に消える両者。
次に現れたのは、陸上を海上を空中を、所狭しと駆け回る両者の残像だった。
黄金の光と光がぶつかり合う。
天が燃え、大地が穿ち、海が割ける。
激しい落雷、地鳴り、そのような音が鳴り響き、衝撃波が周りを吹き飛ばす。
互いの連撃を連撃で防ぎ、拳と拳、蹴りと蹴りをぶつけ合う。
スピードのシュバルツ。
パワーのD。
互いに譲らない両者の激突。
本気と本気のぶつかり合いに、周りは何もできない。
「ーー! ぐぅ、シュバルツさん?」
「まさか、一人で?」
気が付いたシンとルナマリアが、花火のようにあちこちでぶつかり合う両者の激突を見て気付く。
桁違いの動きをする二人の戦士に。
目のまえで繰り広げられた激戦にスティングたちも気が付いた。
「マジかよ…!!」
「こ、これってーー!」
「す、すごい」
マスターガンダムとの闘い以上のぶつかり合いが目の前で展開されている。
互いにビームソードを抜き、袈裟懸けに斬り合う。
つばぜり合いの姿勢のまま、二人は睨み合っていた。
「これほどの腕かーー! なんという強さだ!!」
肩で息をし始めたシュバルツに静かにDは告げた。
「四天王の3人を一瞬とはいえ退け、我と対等に打ち合ってみせた男のセリフとは思えんな」
同時に切り払う。
ガクリッと片膝を付くシュバルツを見下し、Dは静かにガンダムのサーベルを納めた。
「……満足したか? シュバルツ」
「ああ。良いファイトだった!」
膝を付いた姿勢でゴッドガンダムからシュピーゲルに戻る。
Dはそんな彼に一瞬だけ邪悪に微笑むと、こちらを呆けた顔で見るレイを見据える。
「さて、我らと来るか。それとも怖気づいたか。返答を聞こうか」
レイはその言葉にDを真っ直ぐに見返した後、シュバルツを見る。
彼は温かな目でこちらを見ると一度だけ頷いてくれた。
「俺の答えは変わらない。あなた方と共に行く。それだけだ」
レイははっきりと、そう宣言した。
これにDは微かに目を細めると、何も言わずにレセップス級に乗り込んだ。
「ようこそ、我らがデビルガンダム軍団へ。歓迎しよう、レイよ!!」
マスターガンダムがレジェンドガンダムを招いた。
「レイ・ザ・バレル、レジェンドガンダムだ。よろしく頼む」
これに臆することなく、レイはレジェンドガンダムをレセップス級に乗り込ませていった。
「レイ、待てよ! 待ってくれ、レイィイイイイイイッ!!!」
「なんでよ、あたし達三人一緒じゃなきゃ意味ないじゃない!! レイ!!!!」
シンの慟哭が、ルナマリアの嘆きがヘブンズベースに響いていた。
「ーー許してくれ、ミネルバ。そしてシン、ルナマリア」
コクピットの中で静かにこぼれたのは彼の涙であろうかーー。
こうして悪魔の軍団は人類の敵として宣言し、ヘブンズベースを後にした。
皆さん、お待ちかね~!!
ロゴス幹部のロード・ジブリールはついにオーブに密航します。
しかし、その先にはあまりにも整った逃げ延びる環境とブルーコスモスの面々。
彼らは突如取り囲まれるのです。
シュバルツと同じ顔をした青年キョウジの仕掛けた罠でした。
いよいよ終わるかと思った戦争。
ですが、無事に帰国したセイラン親子を突如、異変が襲うのです!!
次回! 機動武闘伝Gガンダム SEED Destiny 第74話に!
レディー、ゴー!!