新機動武闘伝 GガンダムSEED Destiny 作:カンナム
前回のお話ではレイがミネルバ隊を離反してしまいました。
混乱するシン達。
ですが、戦いは彼らに迷っている時間すら与えません。
オーブに逃走したジブリール達を追うように彼らにも指令が下ったのです。
はたして、オーブでの戦いでロゴスとの因縁に幕を下ろすことができるのか?
それでは、ガンダムファイト!!
レディイイイイ、ゴォオオオオ!!
ミネルバのパイロット。
レイ・ザ・バレルは、人類の敵を名乗るデビルガンダムとその四天王と共にヘブンズベースを去った。
ロード・ジブリールを逃がしてしまったシン達は、レイのことにショックを受けながらもミネルバに一端帰艦する。
MSデッキにて、彼らはアウル、スティング、ステラの三名、そしてシュバルツと共にタリアに迎えられていた。
「とりあえず、良く戦ってくれたわ。貴方達のおかげでヘブンズベースを落とせた。これは間違いないもの」
その言葉にシンは静かに頷く。
「ありがとうございます」
そして意気消沈したまま呟いた。
「でも、レイの奴がーー」
その言葉にルナマリアもスティング達も顔を伏せる。
そんな彼らにシュバルツが声をかけた。
「シン。何故レイがいなくなったのかを理解できないのか?」
「……ミネルバに居ても、デュランダル議長を止められないからって。でもーー!」
シンはシュバルツを向いて思いのたけを爆発させた。
「なんで行かせたんですか!? あいつらは、人類の敵で!! 世界すべてを敵に回そうとしてるような奴等なんですよ!!」
「……お前は、レイの覚悟をどう思っている?」
「!」
「気付いているのだろう? レイが何故、自分たちと違う道を選んだのかを」
シュバルツの静かな言葉にシンは、それでもと反発する。
「わかってますよ! あいつが、俺達の為に奴等と手を組んだことなんか!! あいつが、俺達を裏切ってなんかないってことが!! でも、だけど!! どうしてレイを止めてくれなかったんですか!!!!」
「……何?」
「あなたが止めてくれたら、あいつは思いとどまったのに!! あなたが止めてくれたら、あいつはミネルバに残っていたのに!! どうして!!?」
シンは確信していた。
あの時、もしシュバルツが首を横に振っていれば、レイはギリギリでこちらに帰って来ていたと。
デビルガンダムとか四天王という連中も自分からは積極的に勧誘していなかった。
あくまでレイの判断に任せていた。
だからーー。
「どうして止めてくれなかったんだ、シュバルツさん!! 貴方の言葉なら、アイツはミネルバに戻ったのに。思いとどまったのに!!」
「シン。本気で言っているのか?」
静かに問いかける黒い瞳。
整った顔。
シュバルツのいつもの深い瞳を前にシンは一瞬、何も言えなくなる。
だがーー。
「ーー本気です。たとえ、アイツが自分で決めて判断したことでも、俺はアイツをあの時止めるべきだったと思ってます」
「そうかーー。ならば、どうする?」
その問いに、シンははっきりと彼の目を見て言った。
「レイを必ず、必ずこっちに引き戻します!!」
「…それはお前だけでか?」
シュバルツは言いながら、シンの周りに立つ少年たちを見る。
この意をくみ、彼らは言った。
「いいえ、シュバルツさん」
「私たちも、レイを取り戻すのに協力する!!」
少年たちよりも早く二人の少女が答えた。
「ステラやルナだけじゃない。俺達もだ」
「あいつ、僕達のこと友だって言ってくれたんだ。だからーー!」
少年たちの言葉にシュバルツは静かにシンに向き直った。
「シン、最後にもう一度問う。私がレイを止めなかった理由が分からないか?」
「ーーいえ。貴方は誰よりもレイを想って、アイツの決断を尊重した。だけど、俺は納得できなかった」
歯を食いしばり、告げるシンにシュバルツは静かに告げた。
「ならば良い。お前にはもう、片手では足りないほどに大切な者たちがいる。それをどんな時も忘れるな」
「はいーー!!」
シュバルツからの言葉に、シンは力強く頷いた。
このMSデッキでの様を少し離れたところから、タリア・グラディスとアーサー・トラインが見ていた。
「何とか納まったみたいね」
「でも、驚きました。あのレイがーー」
「ええ。でも今はーージブリールを倒すことが先決よ」
タリアの言葉にアーサーも頷いた。
作戦まではまだ時間がある。
短い時間だが、パイロットたちには仮眠を取らせるべきだろう。
オーブからプラント宛に要請もあった。
ジブリールを撃破もしくは捕獲する。
ロゴスをーー完全に消滅させるための作戦が今、始まろうとしていた。
ロード・ジブリールは淡々と作業をこなしていた。
ウォン・ユンファとウルベ・イシカワ。
彼らからもらったDG細胞のデータと培養方法。
自分の因子を使ってコピー体をつくる。
すべてのデータを手に、ジブリールは微笑んでいた。
「これだけのデータを私に託すとは。待っていろ、ウルベ。そしてウォン。すぐに貴様らを復活させてやる」
オーブと言う国。
技術や知識だけは高いが、いろんな意味で脇が甘い国だ。
そこでなら、いくらでも感染者を増やし、ゾンビ兵のどれかをウォンとウルベのコピー体として復活させられる。
ほくそ笑むジブリールの前に静かにオーブの海港が見えてきた。
「ジブリール様、間もなく本艦はオーブの海港に到着します」
「分かった。それにしてもオーブのブルーコスモス構成員は中々優秀じゃないか。ドックを一つ手に入れているとはな」
満足気味に頷く。
島国であるオーブにとってドックは生命線の一つ。
それを簡単に指定できる程にブルーコスモスの構成員はオーブの港を掌握している。
この事実にロゴスの底力を感じざるを得ないと、ジブリールは笑っていた。
ドックに停泊した船を下り、迎えに来ていた私服の構成員たちと顔を合わせる。
「よくぞ、ご無事で。マスドライバーの準備はできております」
「ご苦労だった。さあ、案内してくれ」
「はっ! こちらです」
ジブリールの言葉に敬礼をしながら、一人の男が案内しようとしたその時だった。
ジブリールはふと気づいて告げる。
「少し待て。何故、マスドライバーのことまで知っている? 我々は受け入れをしてくれと頼んだだけのはずだが?」
これに案内しようとしていた男が首を傾げる。
「? ですがジブリール様。二回目の通信でマスドライバー施設の掌握を指示されておられましたが?」
「なんだと? 私はそのような指示はしていないぞ?」
「ですが、あのお声は間違いなくジブリール様のーー!」
その時だった。
「そこまでだ、ロード・ジブリールにブルーコスモス!!」
第三者の声が響いたと同時に無数のオーブ兵が物陰から現れ、ジブリール達を取り囲んだ。
「! これはーー馬鹿な!! なぜ我々の動向がこんなにも早くオーブに!?」
ジブリールの計算では、後数時間は余裕のはずだった。
ザフトのデュランダルはオーブを信用していない。
オーブに報告すれば、ジブリールを匿うと判断し、確実に軍を差し向け、攻撃できる状態でしか告げてはこないはずだ。
なのに、こんなにも簡単にドックを見破られた。
「勇気あるオーブの同士が居ましてね。彼らが命からがら応えてくれました」
取り囲んだ兵士たちの後ろから一人の白色のシャツと紺色の上下のスーツを着た整った顔の青年が現れた。」
「! この声ーー!?」
ジブリールから指示を受けたという男が目を見開く。
隣のジブリールはそれどころではなかった。
壁をすり抜けて現れた覆面の男の素顔。
それと同じ顔をした青年だ。
「バカなーー!? 何故、貴様がここにいる!? ウォンとウルベの相手をしながら、私よりも早くオーブに先回りなどできるはずがーー!!」
狼狽えるジブリールに、奇しくも彼とよく似た声の青年は穏やかに告げた。
「その狼狽えようーー。どうやらシュバルツは、貴方に素顔を晒したようですね」
まるで日常の一コマのように。
この緊迫した場面で平然と穏やかな笑顔を浮かべて告げてくる。
「そうかーー。貴様がウルベが言っていたキョウジ・カッシュか」
睨みつける。
その言葉にキョウジは静かに微笑む。
「申し訳ありませんが、マスドライバーへのお膳立ては全て俺の指示でやらせてもらいました。予め得た情報でブルーコスモス側の暗号通信のチャンネルは傍受できていましたから」
「……さすがに優秀だな。私の部下にほしいくらいだよ」
皮肉気に微笑むジブリールにキョウジは告げた。
「まさか。俺は根っからの研究者です。政治家や実業家なんてのは俺の性に合いません」
気さくに告げるキョウジにジブリールは静かに微笑む。
「ところでーー。ウルベやウォンが君のことを知った上で私にDG細胞を移植していたと言ったら、君はどうするかね?」
「隔離します。その上で、貴方に感染している細胞を除去したのちに消滅させます」
「なるほどーー! ならば!!」
瞬間、赤いオーラがジブリールから発光する。
同時に、周りに居た兵士たちがはじけ飛んだ。
「!! なんだ!?」
「キョウジ殿! これは!?」
圧倒的な力とスピードを持った男。
それは事業家だった彼の力ではありえない。
「……その力、貴方は……!」
鋭い目で問いかけると、ジブリールは冷たくも穏やかな笑みで応えた。
「ウォンとウルベが何もせずに私に細胞を移植したとでも思うか? 彼らの能力を私の肉体に付加させたのだよ」
「……!!」
「シュバルツがウォルフとお前の能力を合わせた存在であることは既に分かっている。それをだ、奴らは私に試みたのだよ」
目を見開くキョウジにジブリールは勝ち誇った笑みを浮かべて言う。
「つまり私はガンダムファイターだったウルベを合わせてDG細胞の力を持った人間3人分の力を持つと言うことだ!!」
あっという間に囲んでいた兵士たちが叩き伏せられる。
だが、流石のジブリールもこれだけの数を相手に同時に機銃を放たれれば、倒されてしまうだろう。
手数が足りないと悟ったと同時にジブリールは自分をここまで船で連れてきたロゴスメンバーとこちらで出迎えたブルーコスモスの兵士たちに向かって言った。
「どうだ? 私の力は? お前たちも欲しかろう?」
その言葉に戸惑い、彼らが応える間もなくジブリールは目の前に居た。
瞬間、彼の両手に怪しげな紫の光が宿り、その手で顔面をわしづかみにする。
瞬間だった。
「う。うわあああああ!!」
「ぐぅううううう!!」
瞬く間にロゴスのメンバー達はまともに言葉を発せない哀れな髑髏顔のゾンビ兵となった。
「…DG細胞の自己増殖。DGコアをお前も持っているのか」
キョウジの記憶では自己増殖の機能はデビルガンダム本体にしか存在しないものだった。
だが、ジブリールやプラントのデュランダルの様子を見て考えを改めた。
自己増殖の機能を持つコアの役割を一細胞でもできるようにしている。
「ぐ…! キョウジ殿!!」
倒れていた兵士たちの声。
そちらを向くとそのまま、ジブリール達はマスドライバーのある通路に向かって走り始める。
「トダカさんに伝えてください。マスドライバーにあるシャトルに彼らが乗ればその時点で自爆装置を、と」
「了解しました」
悲し気な表情でキョウジは去っていったジブリール達を見据えた。
「すまない。俺が作り出した細胞が、あなた方の人生を変えてしまった。その罪を俺は忘れない」
まるで黙祷しているキョウジに周りは声をかけずらくしていた。
その時だ。
指令室よりカガリから通信が入った。
「キョウジ! ウナト達が帰ってきた!!」
その報せにドックが湧く。
セイラン家の報告がなければ、ここまで予定調和には行かなかった。
彼らの勇気ある行動にキョウジは微笑みながら言った。
「よかったな、カガリ」
「それが、おかしいんだ! 奴らの様子が変なんだ!!」
「なに?」
「キョウジに会いたい。自分たちを殺してくれ。彼なら理由が分かるってーー! 罪ならばあとで聞く、お前たちのもたらしてくれた情報のおかげでジブリール達を捕まえられる! そう言っても、殺してくれとしか言わないんだ!!」
カガリの様子からただならない気配を感じ、キョウジは現場の兵士たちに後の事を指示すると通信先の彼女に告げた。
「俺もすぐに向かう」
キョウジが指令室に来たとき、皆が彼を振り仰いだ。
「! キョウジ!!」
カガリの隣に立つとキョウジはモニター先にいる二人の親子。
ウナトとユウナを見据えた。
彼らの顔を一目見てキョウジは戦慄した。
「ウナトさん…! ユウナくん!!」
彼らは息も絶え絶えになりながら、告げた。
「キョウジ君ーー! 間に合ったか」
その言葉の意味が分からずカガリはウナトを見返す。
だが、キョウジには伝わっているようだ。
彼は歯を食いしばり、つらそうに眼を見開きながら、言った。
「諦めないでください! 俺が何とかします!! だから!!!」
彼は必死にそう告げた。
キョウジが、こんな表情になるなんて指令室の人間には見慣れない光景だった。
それだけウナト達が今、遭遇している何かは、絶望的な状況なのか?
カガリ達にも理解できないが、最悪の予想ができてしまう。
キョウジ・カッシュが取り乱しようを見ると、とてもではないが希望的な観測はできない。
「キョウジ・カッシュ……さん」
「! ユウナくん!!」
「僕は、貴方とカガリに謝りたかった」
脂汗を浮かばせながら、必死に何かをこらえて彼は言う。
「キョウジさん、貴方の才能に嫉妬して、貴方の能力が羨ましくて。貴方と言う人を見なかった。だからーー僕は、こんな目に合っても仕方がないんだ。僕がウォンと接触したからーー。この国を裏切ったから……!!」
その涙は懺悔の涙。
自身の行いを振り返れば、ろくなことをしてないな、とユウナは苦笑する。
彼の頬から頸動脈にかけてゆっくりと銀色の六角形が組み合わさった鱗のような紋様が浮かび上がっていく。
「DG細胞…!!」
カガリが呆然としながら、その紋様をなす銀色の六角形を見据えて言った。
ウナトが続ける。
「毒針か何かが仕込まれていたみたいだ。我々がヘブンズベースを離れてしばらくしてから、首に痛みを感じた。それがどんなおぞましいモノなのか、今になって分かったよ」
「自分が自分じゃなくなるのが、よく分かる」
ユウナも告げた。
「自分が知るはずのない知識とか、自分が考えたこともないことがどんどんと出てくるんだ。おまけに自分の記憶が全て覗かれているような感じもする。このままじゃ、僕たちはーー!!」
そして、ウナトは静かに微笑んだ。
「自分が自分でなくなるのは、恐怖だ。それは死ぬことよりも遥かに恐ろしい」
「……最後に話せてよかったよ、キョウジさん。それと、カガリ」
ユウナは穏やかな表情のまま、言った。
「僕は、これだけは言いたかった。親同士が決めた婚約だったけどさ、僕は君が好きだった。愛していた。だから幸せになってくれーー!」
「! ユウナ!!」
「さようなら、カガリ」
静かに微笑みながら、ユウナはモニターの向こうでコンソールパネルの内の何かのボタンを押した。
「ーーっ!! ウナトさん!! ユウナくん!!」
キョウジが必死に呼びかける。
それを微笑みながら、彼らはモニターの向こうで言った。
「ありがとう、キョウジ君」
「最後にアンタみたいな凄い人に会えて、嬉しかったよ」
その声を最後に彼らは通信を切る。
同時に海上に浮かんでいた彼らの乗っている潜水艦から煙が上がり、オーブの海面で爆発した。
「!! ウナト!! ユウナァアアアアアアッ!!」
幼い頃より交流のあった親子だった。
カガリに取って思想は違っても共に国を守ろうとする理念ある政治家だったのだ。
それが、あっけなく炎の中に消えて行った。
「……!!!」
号泣しながらカガリが隣を見れば、唇から血が出るほどに噛みしめ、拳を握りしめたキョウジの姿があった。
「…俺のミスだ」
「キョウジーー!」
涙など流してはいない。
だが、彼は耐え切れずに叫んだ。
「死なせなくても良かった。俺が予測できていれば、彼らは死ななくて良かったーー! 取り返しのつかないミスだ。何が、参謀だーー!! 何が、DG細胞の生みの親だ!! 俺は、何て無力なんだ!!!」
モニターの向こうで燃え上がる潜水艦の残骸を睨み据えて、キョウジはそう言った。
その言葉に、カガリは更に涙を流す。
「ーーそして、何故貴様らが生きている?」
キョウジの呟くような声に、カガリが目を見開いた。
モニターの向こうで静かに潜水艦の残骸が姿を変えていく。
燃え上がっていた炎は消え、緑色の触手の束がうごめき、二体のMS--ガンダムを作り出した。
異形の機体ーーウォルターガンダムと。
ネオジャパン製の機体ーーウルベ専用機のガンダムへと。
「何故? さあ、我々の執念の勝利でしょうか?」
「ーーもしくは、悪運と言うべきかな? キョウジ君」
冷酷に。
残忍に笑う。
彼らの素となった素体はーー紛れもなく高潔な魂を持って死に臨んだ親子。
それを平然と蹂躙し、二人の悪魔は蘇った。
「ウルベーー! ウォンーー!! 貴様等ぁああああああああああああああっ!!!!」
キョウジの腹の底から出た怨嗟の声。
それは怒り。
それは悲しみ。
自分への。
悪魔への。
そして何より、二人の親子の死を踏みにじってまで蘇らせた細胞を作ったのは、紛れもなく自分とその父親であるという事実が。
冷静で知的、理性の塊とも言える彼を、感情のままに叫ばせたのだ。
その咆哮を、ウルベ達は満足そうに笑いながら受ける。
「そう自分を責めるな、キョウジくん。君たちに落ち度などないさ」
皮肉な笑みで、ウルベは告げる。
「ーーなんだと?」
いつもより、明らかに引くく冷たい声音でキョウジは問いかけた。
これにウォンが愉快げに告げる。
「ーー我々にとっても、今回のは賭けだったのですよ」
その言葉に、カガリが目を見開いた。
「ーー賭けだって?」
「そう、正に幸運でした。保険程度にしか考えていなかったセイラン親子に仕掛けた細胞に我々の因子を宿すことはね」
サングラスをかけなおしながら言うウォンにウルベも頷く。
「ーーデビルガンダムは確かにあの一帯のDG細胞の私たちの因子の芽を殺した。ゾンビ兵達の、ね」
その言葉に、キョウジは目を細めた。
「発芽した因子を消すことはできない。それはウルベのコピーを見ればわかりました。デビルガンダムはコピー体のウルベを分解できなかった、つまり我々の因子が発芽して変化したものまでには及ばない」
「問題は、ゾンビ兵になる前ーー。デビルガンダムの細胞への指令は移植前のDG細胞単体の状態での因子にまでも及んで消せるのかと言うところだった。だが賭けは我々の勝ちのようだ」
ウォンとウルベはニィッと笑みを深める。
闇夜に浮かぶ赤い三日月が、血のようにあたりを染めるように。
彼らの笑みは、ゆっくりと絶望を具現化していく。
潜水艦の残骸から出てきたのは巨大なガンダムの顔をした触手。
ガンダムヘッドと呼ばれるデビルガンダムの分身体だ。
「さてーー、マスドライバーをもらいましょうか」
「ついでにこのオーブと言う国も我らDG細胞の贄としてやろう」
この言葉に誰もが歯を食いしばり、恐怖に耐えながら迎撃に出ようとしてーー。
キョウジの口元に笑みが浮かんでいるのを見て黙った。
その笑みもまた、凶気を孕んでおり。
目の前にいる悪党二人と同種の勝るとも劣らない邪悪さを醸し出している。
吊り上がった凶気の笑みは、そのままキョウジの哄笑へと変わる。
「くくくく……! ははははははは、ハァーハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!」
まるで狂人のように笑みを絶やさない。
すべてを食らいつくさんとばかりにキョウジは嗤う。
これをウルベが訝し気に見据えた。
「…キョウジ。何がおかしい?」
これにキョウジは静かに笑みを引っ込めると、凶気を剥き出しにした底光りする瞳で。
凶悪に歪んだ貌で、ウルベを見て言った。
「ウルベさんーー。あんたには感謝しなきゃな?」
「ーー何?」
問い返すウルベにキョウジは懐から緑色に光輝く拳大の宝石のような球を取り出した。
「生まれて初めて、心から冷酷になれそうだーー!」
言いながら、球を上に投げると同時にフィンガースナップを鳴らす。
「ガンダァアアアアアムッ!!」
キョウジの合図と同時に緑色の光が辺りを照らし出し、一瞬後オーブの本拠地の前に一体のガンダムが現れる。
トリコロールの白を基調とした機体。
進化した彼は、ゴッドガンダムと同じ顔と胸部の造りになり、エネルギーマルチプライヤーをカバーで隠す。
そのコクピットの中にいるのは、先ほどまで理性的な表情をしていた青年。
その整った顔は凶悪に歪んでおり、凶気を孕んだ瞳は底光り、三日月を思わせるように吊り上がった口元は、殺意以外に何も現していない。
「これはこれは、ドモン・カッシュのシャイニングガンダムですか。まさかお兄さんを護るためにねぇ」
「健気じゃないか…! ミカムラ博士の作にしてはな!!」
シャイニングガンダムの胸部カバーが展開され、両肩とアーム部、ふくらはぎの側面カバーが次々と展開されていく。
「シャイニングガンダムーースーパーモードか!!」
怒りのエネルギーで変身するシャイニングガンダム。
そのメカニズムをウルベは誰よりも熟知していた。
「面白い、そんな紛い物のパワーアップで。ましてファイターでもない貴様に私が倒せるかな、キョウジ?」
その挑発にキョウジ・カッシュは静かに駆けた。
瞬間、同時に両者の腰のビームソードが抜刀され、一瞬ですれ違う。
一瞬後、肩口を爆発して斬撃が炸裂したのは、ウルベの方だった。
「ーー何?」
驚愕に目を見開くウルベにキョウジは静かに告げた。
「逆上せ上るのもいい加減にしておけよ、ウルベ」
キョウジの顔は凶悪な笑みを浮かべてウルベを見下ろしていた。
皆さん、お待ちかね~!!
デビルガンダムの力ーーDG細胞コアと完全な融合を果たしているキョウジ。
対して、セイラン家の知識を得た二人ーーウルベは、ウォンをジブリール達の援護に向かわせ、ガンダムヘッドから大量のデスアーミー達を召喚します。
果たして、キョウジはこの悪魔の部隊を退けることができるのか!?
次回、機動武道伝GガンダムSEED Destiny 第75話に!!
レディー、ゴー!!