新機動武闘伝 GガンダムSEED Destiny 作:カンナム
プラントの歌姫ラクスを乗せた戦艦は、今3機の機体を発進させようとしていた。
「ーーキラ・ヤマト! フリーダム、行きます!!」
「アスラン・ザラ! ジャスティス、出る!!」
2人の少年の駆るガンダム。
その後で、神の名を冠する機体がカタパルトから出撃した。
「ドモン・カッシュ! ゴッドガンダム、出るぞ!!」
3機は宇宙の闇に浮かぶ青き惑星に向かって高速で走って行った。
その脇を蹄の音を響かせながら、白い馬が駆けていく。
みなさん、ジブリールを追い詰めたキョウジ。
しかし、物語はまだこの悪党を生かすことを選択しました。
そう、ウルベとウォンを復活させたのです。
セイラン親子の命を犠牲にしてしまったキョウジは、自責の念から、DG細胞の力を憎しみのまま、引き出してしまいます。
はたしてキョウジは、DGコアと融合してしまうのか??
それでは、ガンダムファイト!!
レディィィィッ、ゴォォォオオオッ!!
青い海と空の世界で、光を纏う羅刹が吠えた。
「俺のこの手が光って唸る!! 貴様を倒せと輝き叫ぶ!!!」
これを受けて闇の力を放つ異形が咆哮する。
「笑わせるな!! ただの一般人であった貴様に私が負けるかぁああ!!」
二機のトリコロールのガンダムが互いの右手を光らせる。
片方は金色かがった緑色に。
片方は黒色に近い青色に。
「死ね!! ウルベェエエエエエエエエエ!!!」
「死ぬのは貴様だ!! キョウジィイイイイイ!!」
互いに向かって放たれたのは、必殺のフィンガー。
その一撃は、相手に当たれば確実に仕留められるほどの威力を誇る。
正に必殺技であった。
互いの右手を組ませ、力をーー光を、気を放出する。
そしてーー組んだ右手を中心に気が爆発した。
強烈な爆発と衝撃波が起こり、煙が宙にて浮き上がる。
その煙の向こうから、キョウジは底光る瞳を向けて仁王立ちしていた。
「……おのれ、キョウジ!!」
右手を抑えながら後方に退がったのは、ウルベの方だ。
キョウジのシャイニングフィンガーは、ウルベの力を越えている。
それを今の一瞬の攻防ではっきりと分からせた。
「ーーなるほど。パワーアップしたウルベよりも一撃の威力は上、か」
皮肉気な笑みを浮かべて冷たい瞳をキョウジに向けてウォンは静かに呟く。
ふと気づいた。
シャイニングガンダムの様子がおかしい。
見ればキョウジは、クスクスと笑っているのだ。
目を細めて様子を伺うと、狂ったような哄笑が再び彼の口から漏れ出した。
「ーーこの力、まさか?」
思わずそう口にした。
雰囲気に覚えがある。
当たり前だ、これは自分らと同じ類の力なのだから。
「そうか。私たちは皆、元は死人。DG細胞の力を得て、彼も復活したということか」
無くはない話だ。
マスターアジアもシュバルツ・ブルーダーも、そしてジェントル・チャップマンにミケロ・チャリオット。
みなDG細胞によって復活していた。
デビルガンダムに最も関わったと言えるオリジナルのキョウジ・カッシュがこの世界にいないわけがない。
「少々やっかいですねぇ。この力、奴もDGコアを持っているということですか」
「ウォン! 君が先にジブリールと合流し、マスドライバーを制圧するのだ。宇宙にさえ出れば、後はどうとでもなる」
「たしかに。宇宙には廃棄コロニーに捨てられたデブリなど、いくらでもありますからね。それらをDG細胞で統括し拠点にすれば、我々が人類などに後れを取ることはまずない!」
そのときだった。
「フッフ、フッハッハッハッハ……! 面白いな。アンタらは」
二人が声を発した青年の方を見る。
青年は天に向かって笑いながらこちらを見ると、笑い声を止め、告げた。
「ーーこの俺から逃げられるとでも思っているのか? 無能なDG細胞の諸君」
嘲笑と共に放たれた言葉に、ウルベとウォンも嗤い返す。
「ほう」
「我々が無能ですか。ならば、その無能の我々に殺されてしまったセイラン親子は、無能の極みですね。そしてそれを止められなかった君自身もね」
ウォンの言葉にキョウジの哄笑が更に強まる。
「クックックックック、ハッハッハッハッハ!」
笑い声が響き渡った後、シャイニングガンダムがその場から消えた。
現れたのは、ウォン・ユンファの目の前。
ウォンがそれを把握したときには、凄まじい音を響かせながらシャイニングガンダムの右拳がウォルターガンダムの丸いボディに突き刺さっていた。
「ぐおぉっ!?」
思わずうめき声を上げるウォンを冷たく見下ろしてキョウジは告げた。
「うるさい虫だ……。虫は潰すに限る」
左手のシャイニングフィンガーがウォルターガンダムの顔面へと無造作に迫る。が、キョウジはとっさに左手を引っ込めて自分の側頭の横に左手を置いた。
その左手に強烈な蹴りが炸裂する。
背後からシャイニングガンダムの側頭部を狙って放たれたハイキックは、ウルベからの攻撃だった。
「なにっ!?」
止められたことを目を見開いて驚くウルベ。
「いつまでもいつまでも、うっとうしい虫けらどもが! 貴様らのDG細胞の力など、この俺が倒せるものか! ックックックックック、ハッハッハッハッハ! 見ろ! この力ぁっ!」
キョウジの宣言と共に、シャイニングガンダムが紅い光を纏った。
同時にウルベもDG細胞の力を解放し、殴りかかって来たキョウジを迎え撃つ。
繰り出される拳と拳、蹴りと蹴り。
だがーー。
「なんだとっ!? このスピードとパワー! 常軌を逸している……!」
言葉どおりに、ウルベの放った拳が蹴りが。
全てキョウジの攻撃に押し負けている。
それだけではない、体の動き。
単純な動作だけの話ではない、体の運びや反射速度。
そのスピードにおいても、ウルベはキョウジに一方的に打ち負かされていた。
「常軌? 常軌だと?! この程度で常軌だとっ!? 貴様、それでも人間を捨てた身か! この動きは! 東方不敗マスターアジアの動きを超えるために俺が進化させた動きだ! この程度のことも考えられないのか!? それでよく、人間を捨てたなどと言えるなぁあ!」
「ぐうっ!? なんというパワーだ……!」
常軌と告げたウルベにキョウジは不快気に、愉快気に嗤いながら容赦ない攻撃を繰り出してくる。
(粗削りな動き! 隙だらけだというのに、反応速度が速過ぎて攻撃を打ちこむ隙がない!)
「ウルベ! デスルークを使いなさい! 四、五体くらいならば召喚できるはずです、早く!」
「気楽に言ってくれる……! はあっ!」
ウォンからの指示に攻撃を打ち返した後、ウルベがガンダムヘッドをふり仰いだ。
「ガンダムヘッドよ!」
ガンダムヘッドの口から青白い光の球が放たれる。それらは海上で四十メートル近い巨大なMFへと変化する。
そのコクピットのなかにいるのは、ウルベと同じ姿をしたコピー体だ。
「自己進化という点においてはあなたに一日の長があるようですが、自己増殖という点においては我々のほうが上のようですね。キョウジ・カッシュ!」
ウォンが微笑みながらキョウジに告げる。
同時にウォルターガンダムからも三つの光の球が放たれた。
光の球はそれぞれ三機のMF--ゼウスガンダム、ジェスターガンダム、コブラガンダムへと変化した。
「この戦い、我々が勝たせてもらいますよ」
勝ち誇るウォン。
対してキョウジは頸動脈から頬にかけて、六角形の金属鱗を浮き上がらせた。
これにウルベが目を細めて告げた。
「正気か? きみは人間を捨てるのかね、キョウジ君。わたしたちと同じ存在になると?」
「無理からぬことですねぇ。弱い人間などという生命体を捨て、新たなる命へと進化する。当然の結果だ」
力を求め続けていた彼らには分かる。
綺麗事をいくら語っていても、力がなければ何もできないと言うことが。
そんな二人にキョウジは告げる。
「ああ。俺は無力な人間だ……。貴様ら程度に、彼らの命を蹂躙された。止めようと思えば止められたものを、気付けなかったことが俺の無能の証。だから、俺はもう俺でなくていい。貴様らのような下衆を斃たおせるのなら、俺は喜んで悪魔にでもなんにでもなってやる! ウルベ! 地獄で母さんとセイランさんたちに、詫びに行けぇええええ!」
同時、シャイニングガンダムが黄金の光に包まれる。
「これはっ……! 明鏡止水だと!? やつもデビルガンダムと同じように、DG細胞の力を使いながら明鏡止水を使えるのかっ!?」
「これはいけませんね。完全に想定外だ……。まともにやりあうと、こちらも被害が大きくなる。ウルベ、ここでの戦いは時間稼ぎに徹しましょう。所詮オーブ軍などキョウジ・カッシュのシャイニングガンダムのみですよ」
「フンっ! ならばここで時間を稼いでおけば、マスドライバーはいずれ制圧できるということか。頼んだぞ、ウォン」
「いいでしょう」
ウォンと同時に、ウォルターガンダムから生み出された三機のガンダムが消え去った。
「逃がすかぁ!」
「それはこちらのセリフだぁあっ!」
ウォンの逃げた方向へシャイニングショットを放とうとしたキョウジのまえに立ちはだかったのは、デスルーク。
さらにガンダムヘッドから自動的に無数のデスアーミーたちが生み出されていく。
「君がこの場から離れれば、あっという間にデスアーミーの軍団はオーブと言う国を飲み尽くしてしまうだろうねぇ!」
「ならその前に、あんたらを皆殺しにすればいいってわけか」
キョウジが獣のような咆哮を上げる。
同時、周囲を取り囲んでいた四体のデスルークを、その両手と両足ではるか後方に弾き飛ばす。
「ええいっ! 陽電子縮退砲! くたばれぇええええ!」
二体のデスルークから放たれる巨大なビーム砲。シャイニングガンダムは棒立ちの状態で受け止める。
黄金の光に触れると同時にビーム砲が消し飛んでいく。
「ば、ばかなっ!?」
戦慄し、棒立ちになるウルベコピー。
同時にシャイニングガンダムが両腕を組み、一振りのビームソードを作り上げた。
「一刀両断、シャイニングフィンガーソード……!」
通常のビームサーベルと変わらないサイズの、とてつもないエネルギーを秘めた剣がシャイニングガンダムの両手に生じる。
「必殺! シャァアアアイニング! スラアアアッシュ!」
前方の空間を横一線に薙ぐ。
同時に世界に、緑色の光の線が走る。
無数のデスアーミーと二体のルークが、キョウジが剣を払う動作をすると同時に切り捨てられた。
「こ、こんな……馬鹿なっ……!」
呆けていたのも一瞬で、ウルベの形相に苛立ちがこもった。
「数など問題ではないということか!」
そんなウルベをキョウジはゆっくりと睨みつけながら邪悪に微笑む。
「これが二律背反の境地ーーいや、極みだ」
DG細胞の力は闘争本能を呼び起こし、人格を凶暴化させて力を得る。
対して明鏡止水は、自身の潜在能力を穏やかな心で引き出す。
まったく正反対の力だ。
それを二つ同時に使うことなどできるはずがない。
できるはずがないのだーー。だというのに、目の前にいる男は、それを可能にしている。
圧倒的な凶気を纏いながら、心静かに己を見据える理性を持つ。
「なるほど。DG細胞との相性がいいのか。ならば、君はDG細胞そのものと一体化しようとしているとも言えるな。皮肉な話じゃないかーー。オーブと言う国を護る健気な心意気に応えるのが、悪魔の力だったとは。そしてそれに君は間もなく完全に取り込まれるーーか」
周りにいるウルベのコピー体もそれに邪悪に微笑む。
時間を稼げばやがてキョウジという人格は消え、ここにいるのは完全なDG細胞の塊となる。
強力な自己進化の果てに生まれるDGコアだ。
取り込めば、自分にとってこれ以上ない戦闘力の増加となるだろう。
ウルベは喜びに打ち震えていた。
支配に関する能力ならば先のセイラン親子で実験済みだ。
取り込めるーー理性のないDG細胞の塊ならば、取り込めるとウルベは嗤う。
「問題は、その時間を私が耐えきれるか、か。面白い!!」
ガンダムファイターの意地がウルベにもある。
昨日まで研究者でしかなかったキョウジになどに負けるつもりはない。
皮肉にも力の差を感じながら心が折れない理由は、人間であった頃のウルベ自身忘れていた武術家としてのプライドだった。
それは恐らく、シン・アスカという少年たちに敗れたコピー体の意識。
その時の意地が、誇りが、ウルベの魂をいびつなりにも燃え上がらせていた。
たとえどれだけ弾き飛ばされようとも、敗北を認めなかった彼らの魂が。
ウルベにも影響を与えていたのかもしれない。
デスルークを軽々と貫く拳。
首をあっさりと刈る蹴り。
それらを受けながら、ウルベは最後の一人になろうとも逃げることを辞めていた。
真っ向からぶつかり合う。
漆黒のオーラがウルベの全身を纏う。
「うぉおおおおお、負けん!! 貴様などに!! ぬるま湯に居たカッシュ家などに!! この私が負けるものかぁあああああああ!!!」
「---死ィイイイイイイネェエエエエエエエエエエエエッ!!!」
金色の光と漆黒の影がぶつかり合う。
キョウジからは既に言葉が失われつつある。
ウルベの身体は破壊されるたびに自己再生で修復される。
どちらも譲らない。
下がらない。
ラッシュを繰り出してくる黄金のシャイニングガンダムの一つ。
左拳を選択して咄嗟に右に見切るウルベ。
掴まれたことにより、黄金であったシャイニングガンダムの機体が一瞬気を散らし、トリコロールに戻る。
同時にウルベガンダムのマスクが左右に展開され、生物的な牙を剥き出しにするとシャイニングガンダムの左腕に噛みついた。
「ーーッ!?」
「ふふふ、もらうぞ! 貴様の血肉を!!」
ウルベは両腕でシャイニングガンダムの左腕を引きちぎる。
キョウジは意に介さない。
右腕でウルベのガンダムを後方へ殴り飛ばす。
同時に自己再生で左腕を一瞬で再生させる。
ウルベは後方に弾かれながらも、両腕の中にあるシャイニングガンダムの左腕をDG細胞に指示して一つの球に変えるとそのまま機体に飲み込ませた。
同時にウルベの頭に体中に力がみなぎる。
キョウジの記憶ーー力、シャイニングガンダムの境地。
すべてが彼のモノとなっていく。
見た目にも変化があった。
ウルベのガンダムが、ゴッドガンダムと同じ顔と胸に変化したのだ。
その変化は、シャイニングガンダムの変化やデスガンダムシリーズと酷似していた。
「くくくくーー! 手に入れたぞ、ハイパーモードを!!」
同時にウルベの機体が黄金に変化する。
「ーー何?」
胸部カバーが展開され、エネルギーマルチプライヤーが青黒く輝く。
同時にウルベのガンダムの右手が同じ色に輝き、前方に放たれた。
咄嗟に黄金のハイパーモードに変身するシャイニングガンダム。
デスルークが放つものと同じくらいの巨大な青黒い光。
それをまともに受け止める。
「ーーあらゆるものを無にする光。ーーヴァニシングガンダムと名付けようか」
紫色の人ならざる異形の細胞を全身に浮かばせて、血走った赤い目を向けながら、ウルベは自分のガンダムをそう名付けた。
「神も悪魔も、光も闇もーー全て消してやろうじゃないか。この私のガンダムでな!!」
笑みを浮かべるウルベにキョウジも笑みを返した。
ただし、その瞳にはほとんど理性が残っていない。
「う、る、べぇ!! 死ィイイイイイイネェエエエエエエエエエエエエッ!!」
「死ぬのは貴様だ、キョウジ!!」
ガードも何もない大振りの右ストレート。
先ほどまでのウルベには脅威だったが、今の彼には止まって見える。
「さらばだ!!」
右拳を左に捌き、コクピットに向けて青黒く輝く右手を突き刺そうと繰り出した。
「死ね、キョウジ!!」
強烈な衝撃がウルベの首を後方へ弾き飛ばした。
訳が分からず、首を戻しながら態勢を立て直す。
そこには、うめき声をあげてうつむきになっているシャイニングガンダム。
そしてそれを庇うように前に立つ二枚の閉じた羽根を持ったトリコロールの同じ顔の兄弟機。
ゴッドガンダムがいた。
「バカな、貴様はーー!!」
ウルベが目を見開くと同時に胸部のエネルギーマルチプライヤーと羽を展開し、背後に日輪を生じさせて構えるガンダム。
「久しぶりだな、ウルベーー! できれば、貴様の顔は二度と見たくはなかったが」
赤い鉢巻に頬に十字傷を負った黒髪の青年。
第13代キングオブハートにしてガンダム・ザ・ガンダムの称号を持つ最強の武道家。
「ドモン・カッシュ!! 何故ここにいる!!?」
ウルベの問いかけにドモンは静かに機体を黄金に変える。
「ーー行け、ウルベ。この場は見逃してやる」
「なんだとーー?」
そのまま、ウルベに背を向けてドモンはーーゴッドガンダムはキョウジに身体を向けた。
「貴様よりも大事な用があるんでな」
そう告げるドモンは、キョウジを悲しげに見やる。
これにウルベが嘲笑した。
「愚かな、既に貴様の兄はDG細胞によって理性を失っている! 元になど戻るモノか!!」
そんなウルベの宣言にもドモンは何の反応も示さない。
静かにドモンはキョウジを見据えた。
「ーー兄さん」
瞬間、キョウジの瞳に理性の光が戻った。
「ーー何!?」
ウルベが目を見開く。
それほどまでにあり得ない光景だった。
既に完全に細胞に取り込まれていた人間が、意識を取り戻すなど考えられない。
「ドモンーー?」
キョウジは一瞬、ドモンを呆けた表情で見た後、悪鬼の形相でその後ろにいるウルベを見つけた。
戻った理性は、直ぐに殺意に変わる。
「ドモン、そこをどけ!! 今度こそ、その下衆をーー母さんの仇を殺してやる!!」
そんなキョウジにドモンは静かに首を横に振った。
「断るよ、兄さん」
「ーー何故だ!!? その男は母さんの仇なんだぞ、ドモン!!!」
憎しみーー、怒り、激情ーー。
それが渦巻いてキョウジの理性を消していく。
変わっていく兄に、ドモンは静かに語る。
「兄さん。たとえウルベを倒せても、このままじゃ兄さんが悪魔の化身になってしまう。そんなことを見過ごすわけにはいかない」
「それがなんだ!? こいつらをここで斃せるんなら、俺は悪魔にでもなんにでもなってやる!!!」
全身を黄金に染め上げ、強烈な凶気を纏ってキョウジは二律背反の境地ーー黄金のハイパーモードに覚醒する。
これにドモンは眦を吊り上げて言った。
「そうかーー。ならば、キング・オブ・ハートの名にかけて! 俺が兄さんを止める!! 兄さんを悪魔になんかさせやしない!!!」
キングオブハートの紋章がエネルギーマルチプライヤーに浮かぶと黄金の気を更に紅蓮の炎が纏い始めた。
圧倒的な気にウルベが目を見開く。
「バカなーー! 気の量が、私の想像を上回るだと!?」
自身も二律背反という境地を得たがゆえに分かる。
今のドモンの明鏡止水は、全てを凌駕していると。
「たしかに今、ドモンと戦うのは得策ではないな」
静かにウルベは、自分の中で高めた気を納めて紺色を主としたトリコロールの機体に戻る。
「今だ、アスラン!!」
「ーーよし!!」
その時、ウルベは明後日の方向から強烈な気を感じる。
そこには、青い翼のガンダムと赤いボディのガンダムがいた。強烈なビーム砲の雨霰が、二機から放たれる。
「ーーチッ!」
ウルベは舌打ちをしながら、網の目を縫うようにかわすとその場から超高速で去っていった。
残されたのは、兄弟機のガンダム。
そして、ファイターである実の兄弟だ。
動いたのは同時。
シャイニングガンダムが、ゴッドガンダムの正面に現れる。
無造作で放たれる右の拳。
ウルベが散々苦戦していたその一撃を、ドモンは苦も無く左に見切って掴み止める。
「ドモン、そこを退くんだ!!」
「断る。その力に取り込まれてまで、奴を倒させるわけにはいかない」
「ならばーーお前を倒す!!」
力任せに放たれる連続攻撃。
スピードもパワーも態勢も全て人間離れしている。
だが、それほどの連撃をドモンは苦も無く、紙一重で避けていく。
正気であったキョウジならば、ここまで単調なコンビネーションはしないだろう。
そう思うと同時に、ここまで理性を失いながらも鋭い技のキレと体運びに兄の変わらぬ几帳面さを感じる。
きっと毎朝、同じ動きを積み重ねていたのだろう。兄は天才だ。だが、その才に溺れずに絶えず上を目指す人だった。
こんな時なのに、ドモンはキョウジの動きや呼吸、自己犠牲の心。全てに懐かしみを感じていた。
「兄さんーー、聞いてくれ。父さんは無事だよ。あれから4年経ったんだ」
鋭い攻撃をノーガードで避けながら、ドモンはキョウジにそう告げる。
左のローキック、右の膝蹴りからのハイキック。
これを一歩右足を下げてローを避け、踏み込んで来た右の膝蹴りを左手で受け、そのままの態勢から放たれた右のハイキックを上体を反らして鼻先で見切る。
「俺は、あれからレインと結婚した。今、あいつの腹の中には俺たちの子どもがいるんだ」
左のストレートを体を半身にかわして避ける。
右手側に来たゴッドガンダムの頭部にシャイニングガンダムの輝く掌が放たれた。
シャイニングガンダムの右手を手首の部分を左手で掴んで止めるゴッドガンダム。
ドモンはそのまま、語りかけた。
「ーー兄さんは一人じゃない。兄さんの帰りを待つ人がいるんだ。兄さんが悪魔なんかになってウルベやウォンを倒せても、兄さんを待つ人達が不幸になるだけなんだよ」
その言葉に、キョウジは目を見開いた。
まるで夢から覚めたかのようにーー。
「ドモンーー!!」
気付けば、キョウジの首元から横頬まで達していた銀色の鱗模様が消えていた。
「キョウジ兄さんーー。ようやく、会えたね」
目を見開き、正気に戻ったキョウジの前で逞しくなった弟は、静かにその両目から涙を流した。
「ドモンーー。強く、逞しくなったな」
「うんーー。兄、さん」
温かい微笑みと共にキョウジの目からも弟と同じく涙が流れていた。
彼はそのまま、笑顔でドモンに告げる。
「はは。だけど、泣き虫は変わってないな」
「ーー兄さんも。兄さんだって、泣いてるじゃないかぁ…………っ!」
顔をくしゃくしゃにしながら、ドモンはキョウジを抱きしめた。
キョウジもその言葉に涙と嗚咽を漏らしながら言った。
「そう、だなーー! はは、上手く言えないやーー。お前と話したいこと、いっぱいあったのになーー!」
「いくらでも話せるよ。俺は、もうどこにも行かない。兄さんも」
「ーーああ。そうだな、ドモンーー!!」
強く強く抱きしめ合う二人の兄弟。
二機の兄弟機。
これを少し離れたところで、先ほどウルベに仕掛けた二機のガンダムが見ていた。
「アスランーー。今は」
「分かっている。俺達だけでマスドライバーを制圧するぞ、キラ!!」
「うん! 僕とこのストライクフリーダムガンダムならやれる!!」
「ああ。俺もこのインフィニットジャスティスガンダムを使いこなして見せる!!」
白い機体は青き翼を、赤い機体は両翼を広げて、ウルベとウォンが向かったであろうマスドライバーに音速を超えるスピードで向かっていった。
「こちらフリーダム! キラ・ヤマトーー! オーブ軍、これより援護します!!」
キラの通信にオーブ軍が湧いていた。
すぐに抱き合っている彼らーーカッシュ兄弟も援護に来てくれるだろう。
だから、今はーー。
今だけ、キラとアスランは兄弟の邪魔をしたくなかったのだ。
青い海と空、そして光り輝く太陽は、悲劇と困難の果てに再会した兄弟を祝福するかのように、優しく包み込んでいた。
みなさん、お待ちかね〜!
ついに、キラとアスラン、そしてドモンとキョウジがオーブに集結しました!
更にザフト軍のミネルバ及び、ファム・ファタールらのボルテールが現れます。
はたして、シュバルツやキョウジ達は、ウルベ達を倒せるのか!?
次回、機動武道伝GガンダムSEED Destiny 第76話に!
レディー、ゴー!!