新機動武闘伝 GガンダムSEED Destiny   作:カンナム

77 / 103
 みなさん、ついにウルベは黄金の気、ハイパーモードを手に入れてしまいました。

 これに真っ向から立ち向かうのは、キラ・ヤマトとアスラン・ザラ。

 SEEDの因子を持ちながら、明鏡止水の境地に達した彼らもまた、ハイパーモードで迎え撃つのです。

 それでは、ガンダムファイト!!

 レディイイイ、ゴォォォオオオ!!




第77話 C.Eの英雄 対 梟雄と奸雄

 

 再会を喜び、互いの体を抱きしめ合う兄弟。

 

 

 

 そして兄弟機でもあるガンダム達。

 

 

 

 そんな二人がいる海の上。

 

 

 

 ゆっくりと離れる。

 

 

 

 その一方、弟に忍び寄る目に映らぬ影。

 

 

 

「ーーそこだ!」

 

 

 

 弟ーードモン・カッシュはその場で自身の左側の空間に正拳突きを放った。

 

 

 

 すると、何もない空間に忽然と黒と白を基調としたガンダムが現れる。

 

 

 

 そのガンダムーーガンダムシュピーゲルは、ドモンのゴッドガンダムの右ストレートを紙一重で左に見切り、左のクロスカウンターを放った。

 

 

 

 ドモンは瞬きもせずにそれを左手で掴み止める。

 

 

 

 拳が掌にぶつかった瞬間に衝撃が生じ、海面に波紋を広げた。

 

 

 

「ふははははははっ! 久しぶりだな、ドモン・カッシュよ!!」

 

 

 

 強烈な高笑いと共に現れたシュピーゲルのファイター、シュバルツ・ブルーダーは、目の前で自分の拳を止めた男ーードモン・カッシュに語りかけた。

 

 

 

「不意を突いての一撃に反応し、私の反撃の拳を紙一重で見切って掴み止めるとはーー。大した腕になったものた」

 

 

 

「ーーシュバルツ・ブルーダー。貴方とこうして、また拳を交えることができるなんてな。ーー嬉しいぜ」

 

 

 

 燃える瞳、大胆不敵な笑み。

 

 ドモンの反応に素顔をさらしたシュバルツも目を細めて笑みを浮かべた。

 

 

 

「成長したな、ドモン。かつてのお前ならば私の姿を見るや狼狽え、今何をするべきかすら見失っていただろうにーー」

 

 

 

「貴方や師匠から教わった心の強さ。それが俺を高みに上げてくれた。何より、ライバルや弟子が放っておいちゃくれないんだ」

 

 

 

 互いに申し合わせたかのように、右と左の拳をぶつけ合い離れる。

 

 

 

「それでいい。人を愛し、信じる心があればーー」

 

 

 

「ああ。恐れるものは、何もない!!」

 

 

 

 シュバルツは晴れやかな笑顔と燃える瞳で問いかけ、ドモンは熱き瞳と強い笑みをもって答える。

 

 

 

「ーー1分。ミネルバにもらった時間だ」

 

 

 

「キラ達なら、その時間で釣りが来るな」

 

 

 

 互いに交えたいのは、抱擁だけではない。

 

 

 

 言葉だけではない。

 

 

 

 魂を語り、相手の心理を見るは、互いに高めた拳と拳。

 

 

 

「この兄に見せてくれ! 先ほど暴走するキョウジを止め、宇宙ではあのDをも打ち負かした、今のお前の拳と技を!!」

 

 

 

「シュバルツーーいや、兄さん。全力で応えるよ。この魂の拳で!!!」

 

 

 

「ならばーー!!」

 

 

 

「勝負!!」

 

 

 

 互いに一気に気を高め、拳を振りかぶる。

 

 

 

「ガンダムファイトォオオ!!」

 

 

 

 シュバルツが叫びーー

 

 

 

「レディイイイイッ!!」

 

 

 

 ドモンが応じた。

 

 

 

 互いに放たれた右のストレート。

 

 

 

「「ゴォォォオオオッ!!!!」」

 

 

 

 重なり合う声。

 

 

 

 ぶつかり合う、両者の気。

 

 

 

 拳と拳が互いの一撃を相殺する。

 

 

 

「…魂の叫び、か。ファイターじゃない俺には分からない世界だな。羨ましいもんだ」

 

 

 

 その戦いを見てもらすのは、シュバルツの半身にしてドモンの兄、キョウジ・カッシュに他ならない。

 

 

 

 時間を無駄にすることはできない、だが。

 

 

 

 このやり取りもまた、彼らーードモンとシュバルツには必要なことなのだと、彼は理解していた。

 

 

 

「シャイニングガンダム、無理をさせたな。大丈夫か?」

 

 

 

 キョウジの問いかけに、シャイニングガンダムは静かにエネルギーをキョウジに送り返してきた。

 

 

 

 まだいける、まだやれる。

 

 

 

 キョウジの体力の回復を促そうとしてくる。

 

 

 

 尽きかけていた気が、シャイニングガンダムから補充されていく。

 

 

 

 愛機の答えに微笑む。

 

 

 

 1分、それだけあればキョウジも一気に回復できる。

 

 

 

 彼らの組み手を見ながら、静かにキョウジは頭の中で策を練り始めていた。

 

 

 

 一方で、互いの拳を相殺したドモンとシュバルツは目で語り合う。

 

 

 

 それは刹那のやり取り。

 

 

 

 だが、交わされた想いは恐らくは1分では語り尽くせないだろう。

 

 

 

 万感の想いが互いの胸を通過し、拳や蹴りとなって放たれる。

 

 

 

 互いの拳を手で掴み止め、笑いあう。

 

 

 

 瞬間、シュピーゲルがまるで霞のように実体が掴めない動きを取ると、まるでスケートのように海上を音もなく滑り、ドモンの視界から消えた。

 

 

 

 対するドモンは、自分の足元に気を送り込み、足裏にから放って固い地面のような気の足場を一瞬、作る。

 

 

 

 宙でありながら、見事なステップを刻み、ゴッドガンダムが動いた。

 

 

 

 左のサイドステップから後ろに振り向きざま、ビームソードを抜き放つ。

 

 

 

 交差する二振りの実剣と一振りのビームソード。

 

 

 

 鍔迫り合い。

 

 

 

「ーーおお!」

 

 

 

 見事なドモンの反応に思わず、シュバルツは感嘆の声を上げた。

 

 

 

 同時に剣を弾きあい、その場で回転する両者は、竜巻を身に纏い、一瞬で数十カ所を斬る斬撃を放ち合う。

 

 

 

「シュトゥルム・ウント・ドランクゥウウ!!」

 

 

 

「ゴォッドスラッシュ・タイフゥウウウン!!」

 

 

 

 竜巻と化した二機は、斬撃をぶつけ合いコマのように弾かれる。

 

 

 

 互いに距離を置いて刃を収め、拳を握り、足を運んで殴りあう。

 

 

 

 霞のように滑空して消えては現れ、攻撃を繰り出すシュピーゲル。

 

 

 

 黄金の気の光と共に片足でサイドステップしてから、鋭く前に踏み込み、攻撃を捌いて返すゴッドガンダム。

 

 

 

 ネオドイツ至高の武技・ゲルマン忍法の体術に抗うは、気を手足に集めて爆発させ、反応速度を上げる次元覇王流拳法の極意。

 

 

 

 互いに一歩も譲らぬ好勝負。

 

 

 

 シュバルツが音もなく消えれば、ドモンが気を弾かせて追いかける。

 

 

 

 手も足も止まらぬ、両者の戦い。

 

 

 

「シュバルツ、そろそろ1分だ。決めようぜ!!」

 

 

 

 これだけの動きをしながら語るドモンにシュバルツも不敵に告げた。

 

 

 

「いいだろう、鏡転同血!!」

 

 

 

 シュバルツの叫びと共に、シュピーゲルが青い光をまとい、鏡のようにゴッドガンダムの姿身となる。

 

 

 

 これにドモンが晴れやかな笑顔で言った。

 

 

 

「なあ、ゴッドガンダム。兄さんとシュピーゲルに見せてやろうぜ。俺たちの真の力を!」

 

 

 

 ドモンの言葉にゴッドガンダムが頷き、目を光らせる。

 

 

 

 同時に、背中の6枚のフィンが展開され、赤い光の輪を背に負う。胸部カバーが展開され、納められていた紅玉・エネルギーマルチプライヤーが剥き出しになる。

 

 

 

 更にドモンの駆るゴッドガンダムの紅玉には、キングオブハートの紋章が浮かび上がった。

 

 

 

 二体のゴッドガンダムは、互いに明鏡止水の境地ーー黄金のハイパーモードとなる。

 

 

 

「我が心、明鏡止水。ーーされど、この掌は烈火の如く!!」

 

 

 

「俺のこの手が真っ赤に燃える! 勝利を掴めと轟き叫ぶ!!」

 

 

 

 互いに燃える赤い右掌を掲げ、ストレートのように突き出す。

 

 

 

 ガッシリと互いの真ん中で組み合う、燃える右掌。

 

 

 

「「爆ぁあく熱!! ゴォッドフィンガァアアアッ!!!!」」

 

 

 

 極限まで高まった互いの一撃に海面は割れ、空は荒れる。

 

 

 

「ドモォオオオオオンッ!!」

 

 

 

「に、い、さぁあああん!!」

 

 

 

 一際、強力な気が互いの組み合う右掌を中心にぶつかり、文字どおり辺りを真っ赤な光で染めて爆熱した。

 

 

 

 爆煙が晴れた後、片方のゴッドガンダムはシュピーゲルに戻っていた。

 

 

 

 静かに両腕を垂らし、肩で息をしている。

 

 

 

 対峙するゴッドガンダムは、威風堂々とした立ち姿で右掌を未だに赤く染めたまま、シュピーゲルを静かに見つめている。

 

 

 

「どうだい、兄さん。これが俺とゴッドガンダムの力だ!」

 

 

 

「素晴らしいガンダムファイターになったな、ドモン。嬉しいぞ。よくぞ、ここまでーー!」

 

 

 

 爽やかな弟の笑みに、幸せそうな笑顔でシュバルツは笑った。

 

 

 

 キョウジがシュバルツの横に来ると肩を貸し、笑いながら告げる。

 

 

 

「これから、もう一仕事あるんだ。サボるなよ、シュバルツ」

 

 

 

「分かっている。キョウジよ、手はあるか?」

 

 

 

 その言葉に互いに笑みを引っ込め真剣な表情になる。

 

 

 

「マスドライバーを最悪破壊することも念頭に置いていこう。奴らを逃すわけにはいかない」

 

 

 

「ーーよし。ミネルバも気を利かせて、先に向かってくれたようだ。我々も向かおう」

 

 

 

「ああ、急がなきゃな。ん? なんだよ、ドモン?」

 

 

 

 そんな会話をする2人の兄を呆れた顔で見て、ドモンは言った。

 

 

 

「兄さん達、一ついいかい? 少しは仲間を信じたらどうだい?」

 

 

 

 その言葉にハトが豆鉄砲を食らったような顔で目を丸くするキョウジとシュバルツ。

 

 

 

「キラとアスラン。それにシュバルツ兄さんの教え子に俺の弟や妹弟子達。直接戦っているのを見ちゃいないが。

 

 どいつもこいつも、そんなに柔な奴等じゃなかったぜ? 目を見れば分かるさ、アイツらが強いっていうのはな」

 

 

 

 拳を握りしめ、武者震いをしながら不敵に笑う。

 

 

 

 ドモンの魂は、今もなお紅く燃えている。

 

 

 

 そのドモンの言葉に、キョウジとシュバルツは互いに見合うと苦笑していった。

 

 

 

「ドモン、お前の言う通りだ」

 

 

 

「確かに。私もそれで教え子に怒られてしまった」

 

 

 

 そんな二人の兄に、ドモンは笑いながら言った。

 

 

 

「さあ、考えようか。あいつらが時間を稼いでくれている間にウルベ達を確実に倒す方法を!!」

 

 

 

 彼の言葉に二人の兄は力強く頷き返してくれた。

 

 

 

 三人はレーダーで位置を確認しながら、ウルベ達の狙いを読んでいく。

 

 

 

「マスドライバーの制圧が無理なら破壊。それぐらいは奴らも読んでいるだろう」

 

 

 

「ならばDG細胞の自己進化で大気圏突入するようにシャトルを作り変える、か」

 

 

 

 キョウジとシュバルツがそのような問答をすれば、ドモンが告げる。

 

 

 

「自己進化には時間がかかる、そんな悠長なことをしていたら俺や兄さん達に倒されるのがオチだ。何か他にある」

 

 

 

 ドモンの言葉に二人の兄も頷いた。

 

 

 

 狙いを正しく読まなければ、またしても逃げられる。

 

 

 

 それだけは避けなければならないと、三人は互いに話し合いを始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 一方で、オーブ・マスドライバー施設。

 

 

 

 オーブ本土の上空で、ぶつかり合う三つの黄金の光を纏った機体。

 

 

 

 ストライクフリーダムガンダムとインフィニットジャスティスガンダム。

 

 

 

 そしてウルベ・イシカワの駆るヴァニシングガンダムである。

 

 

 

 高速で斬り合う両者の影。

 

 

 

「ーーおのれ、ここまで食らいついてくるか!!」

 

 

 

 一機だけなら打ち勝てるウルベだが、相手のコンビネーションが鋭い。

 

 

 

 かつ、一機一機の力も決して侮れない。

 

 

 

 戦いは、拮抗していた。

 

 

 

「ベルリンでの借りを!!」

 

 

 

「今日、返す!!」

 

 

 

 キラとアスランの叫びと同時に放たれるビームソードの斬撃。

 

 

 

 ウルベは二刀流にして、二機からの連撃を防いでいた。

 

 

 

「ーー強い。この強さ、正に明鏡止水! だが、舐めるなよ。私は、ウルベ・イシカワだぁあああっ!!」

 

 

 

 気を爆発させながら、左右の刀を袈裟懸けに放つ。

 

 

 

 右のキラ、左のアスランが、共に斬撃を受けて弾き飛ばされた。

 

 

 

「くっ、やっぱり強い!」

 

 

 

「だが、倒せない敵じゃない!!」

 

 

 

 キラの言葉にアスランが叫び返し、気を奮い立たせる。そこにゆっくりと割り込むものがいた。

 

 

 

「ーー素晴らしい。よくぞここまで、ガンダムファイターとしての実力に目覚めたものだ」

 

 

 

 異形の姿をした丸みのボディに、獣や悪魔を思わせる逞しい太ももから細い膝下から足。

 

 その爪先には鋭い爪が二本生えている拵えだ。

 

 

 

「「ーーウォン・ユンファ!!」」

 

 

 

 少年達の言葉にウォンがニヤリと笑う。

 

 

 

「そう、私こそがこの世界を統べる者。ウォン・ユンファです。キラ・ヤマトにアスラン・ザラ、でしたね? 連合のブラックリストに君たちの名がありましたよ」

 

 

 

 サングラスを押し上げて、冷たく暗い血のような赤い目で少年達を見据える。

 

 

 

「降参なさい。君たちでは我々には勝てない。分かっているはずだ」

 

 

 

 告げるウォンにキラが即座に反応した。

 

 

 

「僕たちは貴方達に勝つ! 勝って止めてみせる!! これ以上の悲劇を!!」

 

 

 

「俺たちを、コズミック・イラを舐めるな!!」

 

 

 

 アスランも武器を構えながら告げる。

 

 

 

 これにウォンは右手をスッと上げ、傍らに3機の護衛用のMFを前に出した。

 

 

 

 古代ギリシャ神話の彫刻のような姿を模したゼウスガンダム、蛇の自律型の機体と一体化しているコブラガンダム、相手の動きを模倣することにのみ特化したピエロタイプのジェスターガンダム。

 

 

 

「我々、未来世紀に敵うと? 笑わせてくれますねぇ」

 

 

 

 ウォンは、更に言葉を続けた。

 

 

 

「君たちは、ウルベが何の考えもなく付き合っていたと思っているのですか?」

 

 

 

 その言葉に、キラとアスランの目が見開かれる。

 

 

 

「君たちは、その機体を初めて使うのではありませんか? 明鏡止水の境地ーー、確かに強力です。君たちと機体の相性も含め恐ろしい能力だ。だがーー」

 

 

 

 ウォンの言葉が進むにつれ、キラ達の機体に変化があった。

 

 

 

 機体を黄金にしていた気の光が消え、ガンダムが元の色に戻ったのだ。

 

 

 

「ーーくっ!」

 

 

 

「バレていたのか!!」

 

 

 

 舌打ちするキラにアスラン。彼らを悠然と笑いながら見て、ウォンは告げる。

 

 

 

「明鏡止水の境地は、完全な人機一体とならなければならない。君たちはまだ、そこまで機体の特性を掴めていないようだ。それでも黄金の気を纏うのだから、末恐ろしい話ですが、ね」

 

 

 

 皮肉気につり上がる口元をキラとアスランが睨みつける。

 

 

 

「さて君たちの力を取り込んであげましょう。今後に役に立ちそうですからね」

 

 

 

 3機のガンダムが連撃を仕掛けてきた。

 

 

 

 ジェスターがバルーンビットを飛ばし、コブラとゼウスが切り込んでくる。

 

 

 

 咄嗟に上にかわすキラとアスラン。

 

 

 

 しかし、上空にもバルーンビットが散りばめられており、キラ達を取り囲んでいる。

 

 

 

「ーーくっ!」

 

 

 

 迂闊には動けない。そのビットの隙間を縫って、雷がフリーダムとジャスティスを襲った。

 

 

 

「ーーぐわぁああっ!」

 

 

 

「な、これはーー!?」

 

 

 

 強烈な一撃に機体と体が麻痺し、一時的に動けない。そこへ、馬と戦車が一体化したハーキュリーを駆るゼウス。

 

 

 

 巨大なコブラメカの頭の上で胡座を掻いているコブラガンダムが突っ込んでくる。

 

 

 

「ーーしま!?」

 

 

 

「クソ、動けない!」

 

 

 

 オーブ本土へ叩きつけられる二機。

 

 

 

 その前に悠然とウォンの駆るウォルターガンダムが浮かんでいた。

 

 

 

「ーーこれが、君たちの限界です。さあ、負けをーー」

 

 

 

 これにアスランが反発した。

 

 

 

「たとえ、明鏡止水の境地が切れても! 俺たちはまだ、負けちゃいない!!」

 

 

 

 彼の耳には、明鏡止水に目覚めてからずっと聞こえてくる声があった。

 

 

 

ーー アスラン、何故私を裏切る!? 妻をーー貴様の母を殺された事を、忘れたのか!? ーー

 

 

 

 亡霊なのか、自分の心が生み出した幻かは、分からない。愚かとしか言いようがない、憎しみに彩られた心。

 

 

 

 だけどーー。

 

 

 

「お前たちのような、守りたいものが無いものに負けてたまるか。全てを捨てても守りたい、そんな人がいない人間に、負けるものか!!」

 

 

 

 守りたい。

 

 

 

 守りたかったのだ、彼もーー。

 

 

 

 行動は愚かかもしれない、だがーー。

 

 

 

 守りたい人を奪われた理不尽に怒り、憎む心まで愚かと言えるだろうか?

 

 

 

 そこに思いが至った時、幼き日に見た父の笑顔があった。

 

 

 

ーー アスラン。お前が幸せになる世界を私は作ろう ーー

 

 

 

 子の幸せを願わない「親」は無い。

 

 

 

 子の未来を願わない「親」は無い。

 

 

 

 たとえ、子に理解されずに憎まれたとしてもーー。

 

 

 

 それを愚かと、何故言えるのか?

 

 

 

 それでも愚かと、自分は言わねばならない。

 

 

 

 何故なら、自分は父を否定したのだから。

 

 

 

 自分は、父の息子だからだ。

 

 

 

「愚かな。勝てる見込みの無い勝負に、まだその身を晒すのですか? 理解できませんねぇ」

 

 

 

 いやらしく笑うウォンの言葉に、アスランは強い目で言った。

 

 

 

「ああ、そうだ。愚かなのは、俺だ! 一番愚かなのは、父の本当の想いを理解できず、悲しみと憎しみしか目が行かなかった俺だ!!」

 

 

 

「ーーアスラン」

 

 

 

 目を見開き、キラはアスランを見る。

 

 

 

 訝し気にウォンもアスランを見た。

 

 

 

「それでも、俺はあの人の。パトリック・ザラの息子! アスラン・ザラだ!! プラントを守り、コーディネーターの未来を夢見た男の息子だ!! 負けるものか、負けてたまるか!! 俺に正義を託すつもりだった父の想いが、願いが!!」

 

 

 

 アスランは叫びながら、自身の一言一言が発される度に心が澄み渡るのを感じていた。

 

 

 

「お前たちなどに、負けてたまるかぁあああっ!!」

 

 

 

 叫びと共に、ジャスティスがアスランに応えるように黄金の気をまとう。

 

 

 

「ーーなに!?」

 

 

 

 気は尽きていたはずだった。

 

 

 

 なのに、先ほど以上の気がジャスティスから放たれている。アスランは漲る力をそのまま、ウォンに向かって突っ込んでいく。

 

 

 

「ーーゼウス!!」

 

 

 

 咄嗟にゼウスガンダムに剣を抜かせて割り込ませる。一瞬の斬撃。

 

 

 

 すれ違いざまに斬り落とされたのは、ゼウスガンダムの首だった。

 

 

 

「ーーばかな!? 何故貴様にこんな!? 明鏡止水とは、これほどだと言うのか!?」

 

 

 

 一瞬でガンダムファイトの優勝候補だったゼウスガンダムが斬り落とされた。

 

 

 

 その事実にウォンが忌々し気に、先の一瞬で自身の懐に入ったジャスティスを、アスランを睨みつける。

 

 

 

「終わりだぁあああっ!!」

 

 

 

 ビームソードを振りかぶりながら言うアスランにウォンが忌々し気な顔から一転して言う。

 

 

 

「確かに、一騎打ちならばね」

 

 

 

「ーー!?」

 

 

 

 アスランの斬撃は、視界の左側から伸びてきた青黒く輝く右手に掴み止められていた。

 

 

 

「ーー私とのファイトを忘れたかね、アスラン君」

 

 

 

 強烈な左のボディブローで機体をくの字にされ、前かがみになったアゴを蹴り上げられた。

 

 

 

「ガハァッ!!」

 

 

 

 背中から地面に叩きつけられ、アスランが固まった息を吐き出した。

 

 

 

「ーーアスラン!!」

 

 

 

 キラが即座にフリーダムを立ち上がらせ、倒れたアスランに追撃させまいと背中に庇う。

 

 

 

 ウルベは未だに黄金の気を纏ったまま、こちらに構えていた。

 

 

 

「ーーふふ、君たちと私では地力が違うのだよ」

 

 

 

 ウルベの声に反応するように、首を落とされたゼウスガンダムが切り口から触手を伸ばし、首を繋げて起きあがってきた。

 

 

 

 5機のガンダムに囲まれるキラとアスラン。

 

 

 

「絶対絶命だな、キラ君。アスラン君」

 

 

 

 ニヤリと冷酷な光を湛えて、ウルベが笑った。隣でウォンが冷や汗を拭っている。

 

 

 

「助かりましたよ、ウルベ。まさか、こんな子どもにあんな力があるとは」

 

 

 

 思わずというウォンにウルベが笑みを返した。

 

 

 

「君らしくないじゃないか、ウォン。コズミック・イラの連中を真っ先に警戒したのは君だろうに」

 

 

 

「やはり、何処かでガンダムファイターとは違うと慢心していたようですね。ですが、それもーー」

 

 

 

「ああ、終わりだ。彼らはこれより、私達の下僕となる」

 

 

 

 近づいてくる5機の悪魔。

 

 

 

 彼らの右手には、邪悪な銀の光が宿っている。

 

 

 

 あれに当たれば悪魔の洗礼を受け、否が応でも従僕にされてしまうだろう。

 

 

 

「ーーアスラン」

 

 

 

「ああ。奴らが組みついてくる時が、勝負だ」

 

 

 

 2人はまだ、諦めていない。

 

 

 

 ワンチャンスを狙って斬りこむ。

 

 

 

 その瞬間に備えていた。

 

 

 

「ーーワンチャンなんか、狙わなくていいですよ!!」

 

 

 

 第3者の声が響き、同時に紅い光線がコブラガンダムを横から吹き飛ばした。

 

 

 

「ーーなに? 援軍だと!?」

 

 

 

 ウルベが笑みを引っ込めてビームが放たれてきた方を睨みつけると、そこには5機のガンダムが海上に浮かんでいた。

 

 

 

「シン・アスカか。こんなにも早くこちらへ来るとはな。流石はシュバルツ・ブルーダーやマスターアジアの弟子どもだ」

 

 

 

 忌々し気にしながらも、何処か楽し気にも聞こえるウルベの声。

 

 

 

 頼り甲斐のある炎のような赤い目の少年が、赤い翼の機体を駆って其処にいた。

 

 

 

「ウルベ、ウォン! 今度こそ、俺たちがお前達を倒す!!」

 

 

 

「シン!! それにスティング達も!!」

 

 

 

「ミネルバの皆もかーー!!」

 

 

 

 5機のガンダムは後ろにザフト軍を率いて現れたのだ。

 

 

 

 巨大な悪を打ち砕く為に。

 

 

 

「数だけ揃えた烏合の衆が!!」

 

 

 

「全員まとめて、DG細胞の糧にしてあげましょう」

 

 

 

 邪悪な笑みを持って受けて立つ2人の魔神。

 

 

 

 血の涙のような赤い線を頬に引いたガンダムは、静かに背中の大剣を抜き放ち、光の翼を広げた。

 

 

 

「終わりにするんだ。お前たちを止めて、レイを必ず取り戻す!! こんな所で、負けるわけにはいかないんだぁあああっ!!」

 

 

 

 シンの叫びと共に、デスティニーから気が迸る。

 

 

 

「キラ、アスラン! あたし達も助太刀するわ!!」

 

 

 

「終わらせようぜ、俺たちの手で!!」

 

 

 

 ルナマリアとスティングからの通信にキラとアスランの気力が膨れ上がった。

 

 

 

「よぉおおしっ!!」

 

 

 

「やるぞ、皆!!!」

 

 

 

 2人の掛け声に、5人の少年達も答えた。

 

 

 

ーー『応!!!!!』 ーー

 

 

 

 7人のガンダムが、死の軍団を操る5体のガンダムに向かっていく。

 

 

 

「コズミック・イラのガンダムタイプと、未来世紀のガンダムタイプの違いを教えてあげますよ」

 

 

 

「MSとMFの違いだけではない。ただのパイロットとガンダムファイターの実力の違いもな!!」

 

 

 

 ウォンの言葉を引き継いでウルベが黄金の気を放ちながら、構える。

 

 

 

 今、此処に総力戦が開始されたのだった。

 

 

 

 




 みなさん、お待ちかね〜!

 7人の少年達は、死の軍団を率いる2人の魔神に挑みかかります。

 しかし、敵の数と能力に苦戦を強いられてしまうのです。

 光と影、そして神の名を冠するガンダム達は、はたしていつ参戦するのか?

 次回、機動武道伝GガンダムSEED Destiny 第78話に、レディー、ゴー!!

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。