新機動武闘伝 GガンダムSEED Destiny 作:カンナム
ウルベとウォンと言う巨悪を前に戦うキラ達。
ですが、彼らは未だに機体の全てを理解しておらず、明鏡止水の境地が切れてしまうのです。
そのピンチを救うのは、神の名を冠するあのガンダム。
お待たせしました!
いよいよ、ドモン・カッシュ達の反撃が始まります!!
それでは、ガンダムファイト!!
レディィィィッ、ゴォォォオオオ!!
第78話
戦いが始まった。
人類の未来を賭けていると言っても過言ではない悪魔との戦いが。
キラとアスラン、ここにシンが加わり、真っ向からウルベ・イシカワの駆るヴァニシングガンダムとぶつかり合っている。
キラがドラグーンとレールガンや胸部ビーム砲で全方位から砲撃すれば、その隙間を縫うようにアスランとシンが剣で切りつける。
完璧なコンビネーションだ。
だが、三対一だと言うのにウルベには一向に当たらない。
「…攻めきれない!!」
「これだけ手数で押してもダメなのか!!」
「の野郎おおお!!」
三人の少年たちの言葉を鼻で笑いながら、ウルベは黄金の気を纏った姿で高速移動を行う。
すれ違う。
それだけだ、それだけでーー弾き飛ばされる。
これを見たバルトフェルドが声を上げる。
「キラ! アスラン! シン!!」
「どうなってる!? さっきは二対一でも渡り合ってただろうが!!」
隣でネオが黄金の気を纏った二機とウルベとのぶつかり合いを思い出し、疑問の声を上げる。
それに応えたのはゼウスガンダム達を相手に構えるスティングだった。
「キラとアスランの気力が足りない、シンも。あんだけのパワーを引き出すんだ、パイロットだけじゃ直ぐにガス欠になる。ガンダムからもっと力を貰えるくらい人機一体にならなけりゃ奴らはあれ以上の時間、明鏡止水になれないんだ」
明鏡止水の境地ーー黄金の気を纏い無双する機体を生み出す原動力だ。
だが、キラもアスランもシンも誰一人黄金になる気配はない。
「……人機一体になれぬが故の気力切れとは、あっけない」
ウルベが失望したように、倒れ伏した三人を見据える。
「だが、かえって好都合だ。君たちのような子どもには、自分の体を作り変えられていく恐怖と絶望を味わわせながら支配するに限るからね」
冷酷な笑み。
人間をゴミとしか思っていない、そんな目をした男。
それは、先の大戦を経験したキラとアスランにとっても初めての相手だった。
キラが思い出すのは、世界に絶望して全てを呪い滅ぼそうとした男。
アスランが思い起こすのは、実の父親にしてナチュラルを皆殺しにしようとした大罪人。
そのどちらとも違う。
これは、許されない悪だ。
クルーゼにあったのは狂気だった。
パトリックにあったのは憎しみだった。
だが、この男にあるのは氷のような闘争心と野心、そして純粋な支配欲だとキラ達は理解した。
加えて今の自分たちのコンディションだ。
シン達が援軍に来てくれたはいいが、彼らとて先ほどまでウルベコピーを相手に激戦の末、勝利した身だ。
普通に考えれば、コンディションが良いとはとても言えないだろう。
(このままじゃ、ジリ貧だ…!!)
それは分かっている。
だが、キラは退く気はない。
何故ならーー
「みんな、あと少し粘ってくれ!! すぐにドモンさんやシュバルツさん達が来る!!」
キラの言葉に、シンが頷く。
「俺ならいけますよ、まだ!! シュバルツさん達が来る前にカタをつけてやる!!」
「無理をするなよ、シン!! まずは、俺から行く!!」
言葉どおりアスランが先に仕掛け、すぐ後ろにシンが付く。
同時に機体をダッシュさせ、斬りかかった。
「待て!!」
その時、第三者の声が彼らに届いた。
「ーードモンさん!!」
「現れたか、キング・オブ・ハート! ゴッドガンダム!!」
キラが微笑み、ウルベが忌々し気に声の放った方を見据える。
そこには、両腕を胸の前で組んで立つ、神の名を冠するガンダムが居た。
「キラ、アスラン! このケンカ、俺が買った!!」
ドモンの宣言がオーブの海に響き渡った。
一方でルナマリアとスティング達は、ウォンの率いるゼウスガンダム達を相手にしていた。
彼女達もまた、大苦戦を強いられている。
気が尽きかけているのもそうだが、一番の理由はゼウスガンダム達にあった。
「わはははは! この程度で俺達DG細胞に勝てると思っているのか、愚かなわっぱどもめ!!」
「おほほほほ! 貴女達、かわいい顔をしてるのねぇ。苦しみ歪む顔を私にもっと見せて頂戴!!」
「あなたがたでは、私のイリュージョンを破ることはできません。残念でしたね」
圧倒的な力でスティングとアウルを叩き伏せるネオギリシャの古代の彫刻のような姿をしたマーキロット・キュロノス。
ルナマリアとステラの動きを見事に見切り、蛇を模した長い胴体でしなやかな反動をつけ、繰り出された尾の一撃は、彼女達を背中から地面に叩きつける。
緑色の肌をした女言葉の男は、ネオインドの笛吹きにして蛇使いチャンドラ・シジーマ。
更に地面に叩き伏せられた少年達に情け容赦のない球体のビット攻撃で追い打ちをかけるのは、ネオポルトガルの丸く太った肉体のピエロ姿の男ーーロマリオ・モニーニ。
彼らは、かつてのゾンビ然とした姿ではなく、生前のような理性と知性を取り戻していた。
ただしその性格は元のものよりも数段、凶悪かつ凶暴に作り変えられていたが。
変化は突如起こった。
アスランに倒されてから、ゼウスガンダム達のファイターが言葉を発し始めたのだ。
闘いが、彼らに自我を取り戻させていたのだ。
数の上では4対4と互角ではあるが、未来世紀のガンダムファイト決勝大会に出場するような猛者たちだ。
ルナマリア達にとって、圧倒的に不利な状況だった。
たとえ万全の状態だったとしても、個々の戦闘力で彼女達が不利なのは変わらない。
だというのにーー。
「それでも、目は曇りませんかーー! ザフト軍に連合、オーブ軍。三つの部隊をしてデスアーミー達やガンダムヘッドで充分抑えられているというのに」
ウォンが皮肉気な笑みを浮かべながら手を叩いて拍手する。拍手を送りながら、彼は考える。
縋るものなど、全て無駄だと教えてやろうと。
「あたし達を舐めるな、ウォン・ユンファ!」
「私たちは、あんた達なんかに負けない!!」
ルナマリアとステラが鋭い瞳でそう告げた。
瞬間、彼女たちの影からスティングとアウルが現れ、左右から同時にウォンに斬りかかる。
即座にゼウスガンダムが腰の剣を抜き、左から右へと薙ぎ払い、二機纏めて吹き飛ばした。
「小僧や小娘が、このゼウスに敵うと思うのか!?」
「あら、マーキロット。1人でやるつもりなの? 私にも分けて頂戴よ、こぉんな可愛い子達なんだからぁ」
シジーマがやや責めるような口調でマーキロットに問いかける。まるで蛇が獲物を寄越せと舌舐めずりしているようだ。
「ウォン様、マーキロット殿。わたくしにもお情けを。久方ぶりの獲物でございます。是非ともーーわたくしとガンダムに奴らの血肉をお与えくださいませ」
不気味な笑顔と芝居がかったお辞儀で告げるのは、ロマリオだ。
「僕たちを餌か何かだと思ってんのかよ」
「ーー気持ち悪い、こいつら!」
悪意しかない彼らの言葉に、心底嫌悪感を抱くアウルとステラ。
「だが、強い。俺たちが万全でも、不利だ」
「一対一ならね」
冷静な瞳で見つめて告げるのは、スティングとルナマリアだった。
彼らは、ガンダムに構えを取らせながら分析する。
「チームワークは、あたし達の方が上よ」
「最低でも3対1の状況で斬り込まないとな」
自分達の状態を見ながら作戦を立てる彼らだったが、そこに第3者の声が間に入ってきた。
「いやーー。お前達は充分に戦った」
温かく頼り甲斐のあるその声に振り返れば、両腰に手を当てた黒いヘルメットを被ったような忍者を模した機体ーーガンダムシュピーゲルがそこにいた。
「シュバルツさん!!」
「「「シュバルツ・ブルーダー!!!」」」
ルナマリアとステラ達が揃って彼の名を呼ぶと彼もそれに頷きながら応える。
「そう! ここからは、私が相手だ!! 地獄の亡者どもめ、覚悟するがいい!!!」
両腕のブレードを展開し、シュピーゲルに構えを取らせるシュバルツ。
「ネオドイツのシュバルツ・ブルーダーかーー。面白い!神の名の下に叩き伏せてくれる!!」
「シュバルツ、邪魔をしないで頂戴。私たちの貴重な食事をねぇ!!」
「ミスターシュバルツ。わたくし共も、久方ぶりに飢えております。邪魔立てをなさるならーー命の保証はできかねますな」
それぞれ語る3人のファイターにシュバルツは告げた。
「無駄話は終わりだ。来い!!」
瞬間だった、3体のガンダムは我先にとシュピーゲルに襲い掛かる。
「この俺を相手に複数で仕掛けろとはーー神の怒りによって死にたいらしいな、シュバルツよ!!」
「貴様のような私利私欲に走り、人々に害なす神等、疫病神でしかない!!」
「ほざけぇええええ!!」
鋭い踏み込みと共に右手の剣を正眼に構えて袈裟懸けを放つゼウスガンダム。
目にも止まらぬスピードでその場から消えるガンダムシュピーゲル。
次の瞬間、青白い斬撃が両者の間で走り、火花を散らす。
「おのれ! 相も変わらず、ちょこまかと動きおって!!」
凄まじいスピードで刃の檻を作り出しゼウスガンダムを閉じ込めてしまうシュピーゲル。
その神業に、ゼウスをして舌打ちするしかなかった。
「どうした、どうした、どうしたぁああ!!!」
左右からのシュピーゲルブレードの斬撃と、立体的な動きにマーキロットは防戦一方だ。
「フ。やはり貴様、変わっちゃいないようだな! あの決勝大会の頃と!!」
「何をぉ!? 俺は強くなった!! 悪魔の力を得て強くなったのだ!!!」
「見せかけだけの強さなど、何になるぅううううう!!」
右手一本の横薙ぎを紙一重で屈んで避けると、シュバルツは両の手を前方に突き出してブレードを展開した。
「まさか!?」
「ここらで引導を渡してくれるわ、ゼウス!! シュトゥルム・ウント・ドランクゥウウウウ!!!」
頭上で展開したブレードを構えるとその場で大回転を始める。
そしてコマのように回ったシュピーゲルは、漆黒の竜巻となってゼウスの名を冠するガンダムに一瞬で近づいた。
「ぬぉ!?」
咄嗟に左手にゼウスハンマーを召喚し、裁きの雷を放ちながら竜巻に叩きつけるゼウスガンダム。
だがーー。
「バカな!!?」
ゼウスの放った雷の槌は竜巻状になっている刃にあっさりと弾かれ、一瞬でその全身を細かく切り刻まれて上空へ弾き飛ばされる。
「まさか! またしても俺が負けると言うのか! 未だにこれほどの差があると!?」
そんなゼウスに目もくれず、コブラガンダムが笛の先からビームの手槍を作り出してシュピーゲルに突き出してきた。
独特な蛇の動きから成す鋭い一撃だが、あっさりとシュバルツは上体を反らすだけで紙一重で見切り、すぐさま両腕を交差させてコブラガンダムの胸部を切り裂いた。
「ぎゃああ!!」
胸を抑えて後ろにのけ反るコブラガンダムの懐に間髪入れず、踏み込むと展開された右のブレードを横薙ぎに放ってコブラガンダムの胴を切り捨てる。
「グハァ!!」
不気味な笑みを浮かべたピエロの顏を模した胴体を持つガンダムーージェスターは、長くしなるバネのような両腕から鋭い剣を作り出した。
その剣はシュピーゲルのように手の甲の上を通るようにして刃先を生み出している。
「私の動きを真似るつもりか?」
「わたくしの力は相手の能力を真似ることにこそ、ありますからね」
「面白い! ならば、鏡に写りし己の像を前にどこまで真似られるかな? 鏡転同血!!」
瞬間、シュピーゲルが青い光を胸から放つと同時にもう一体のピエロのガンダムが現れたのだ。
「ーー!!」
「モノマネが得意なのは、ご自分だけだと思われましたか? わたくしも、忍術を習う身でございます。この程度のことは造作もありません」
「こしゃくな!!」
怒りに歪んだ表情でロマリオは、拳の先から突き出た剣で斬りかかった。
これに余裕の笑みを返しながら、鏡と称したロマリオが丸い拳を握って構える。
勝負は一瞬で着いた。
右の斬撃を丸い拳で払うと、がら空きになったその胴体と顔面に鋭い拳打が無数に炸裂したのだ。
「バーニングジェスターパンチ、とでも言っておきましょうか?」
「ぐはぁあああああ!!」
地面に仰向けに倒れ伏したジェスターガンダムをもう一体のジェスターガンダムが見下ろしている。
「武芸の基礎は模倣にございます。ですが、オリジナルの技をただ模倣するだけでは何の意味もない。自分のスタイルに確立しなければ、武芸の後継など不可能でございます。見せかけだけの力を振るうあなた方にはお分かりにならないかもしれませんがね」
倒れ伏したロマリオに、もう一人のロマリオが語り掛ける。
青い光と共に、もう一体のジェスターガンダムはガンダムシュピーゲルに姿を戻した。
「貴様たちに贈る、せめてもの情けよ。己の技が足りなかったのではない、貴様らは己の心に敗れたのだ!!」
膝を付きながら体を起こし、睨みつける三機のガンダム達に向かってシュピーゲルは腰に手を当てて言い切った。
これを見ていたウォンは舌打ちをすると同時に、呟く
「やはり、復活したての彼らではシュバルツの相手は荷が重いかーー。まあいい、ジブリールが宇宙に行けば何とでもなるーー!」
にやりと笑うウォンの背後からシュバルツとよく似た声が聞こえてきた。
「そうやって驕り高ぶるから、あんた達は足元を掬われるんだ」
笑みを引っ込め、ウォンは視線を背後に向ける。
そこには、静かに海面に立つシャイニングガンダムが居た。
ゴッドガンダムと瓜二つとなった顔で、彼は静かにウォルターガンダムを見据える。
キョウジもまた、刃のようなきらめきを持った瞳で冷酷な笑みを刻むウォンを見据えていた。
「やはり、君が私の相手ですか? キョウジ・カッシュ君」
「そういうことだ。このまま、大人しく捕まってくれるならいいが、さもなくばーー」
「さもなくば?」
同時にシャイニングガンダムの胸部カバーが展開し、エネルギーマルチプライヤーを剥き出しにさせる。
肩と二の腕、脚部のアーマーも展開し、黄金の光が溢れだす。
シャイニングガンダム・スーパーモードだった。
「……死んでもらう」
キョウジの顔が恐ろしい形相に変化し、血のように紅い瞳になっている。
まるで飢えた狼のような、凶暴な獣を連想させる顔つきだった。
「フンーー。ならば私も、受けて立つまで!!」
ウォンは自身の機体に組み込まれたバーサーカーシステムを起動させ、赤色のオーラを身にまとった。
肌の色はDG細胞のものとなり、白眼は血に染まり、瞳は闇色に輝く。
ウォルターガンダムもマスクを展開し、鋭い牙を剥き出しにしていた。
「DG細胞の力をどちらが、より使いこなせているかの勝負だぁああ! 覚悟しろ、キョウジィイイイ!!」
鋭い右の爪を展開し、襲い掛かるウォルターガンダムに対し、シャイニングガンダムは静かに左拳を掲げる。
繰り出されていた右の爪を左へと捌いて押しやり、反対の右の拳をウォルターガンダムの顔面に叩き込んだ。
「ぐぉ!?」
悲鳴と共にのけ反るウォンに間髪入れず、キョウジの鋭い右の回し蹴りが決まり、後方へ弾き飛ばされる。
「おのれ!!」
のけ反って吹き飛ばされながらも、両手を展開して赤いビーム砲を放つウォルターガンダム。
刹那、放たれたビームの先に、シャイニングガンダムはいない。
「ーー!?」
目を見開くウォンの目の前に拳を振りかぶって懐に入り込んでいるシャイニングガンダムがいた。
「バカな!? 何故、貴様にこんな動きが!!?」
強烈な右の拳がボディに突き刺さり、思わず動きを止めるウォルターガンダムにシャイニングガンダムの連撃が突き刺さる。
「肘打ち、裏拳、正拳、胴回し回転蹴りーーはああああああ!!」
右の肘打ちで顎を打たれ、裏拳で顔を跳ね上げられ、更に左の正拳でのけ反った顎を更に突かれて後方に距離を開けたと同時に、右の胴回し蹴りがウォルターガンダムの横面を蹴り飛ばす。
完璧なまでのコンビネーションに、格闘技の素人であるウォンでは対応できなかった。
「な、何故だ!? いくらシュバルツのオリジナルで、ドモンの兄とは言え、貴様はただの科学者のはず!! DG細胞による反応速度や身体能力の強化だけで、ここまでの動きができるわけが!!!」
海面に弾き飛ばされながら、ウォンはキョウジを睨みあげた。
それを静かに見下ろして、キョウジは告げる。
「逆上せ上るのもいい加減にしろよ、ウォン」
「ーー何?」
静かに告げるキョウジにウォンの目が見開かれる。
「自分だけが特別だと思っているのか? 笑わせるな、お前たちの力など所詮見せかけだけのものだ」
「これは傑作だ。……あなたもその見せかけだけの力を奮っているではありませんか」
「そうだな。確かに俺もDG細胞の自己進化による身体能力強化を使ってはいる。だがーー」
強烈な踏み込みと共に、既にキョウジはウォンの目の前にいる。
「ーーく!」
咄嗟に反応したウォンは左の爪でシャイニングガンダムの顔面を狙うのだが、あっさりとその手首をつかみ取られ、右に流されると同時に強烈な右の肘打ちを左わき腹に入れられた。
「ぐふぅ!?」
そのまま、左の前蹴りで顎を蹴り上げられ、後方に弾き飛ばされる。
四つん這いになりながら、海面を引っかいて動きを止めるウォルターガンダム。
「ーー何だと!?」
見開いた目の先には、光り輝く掌があった。
「必ぃい殺、シャァアイニングゥフィンガァアー!!」
まともに顔面を鷲掴みにされ、ロックされた。
流れるように自然な動きで次々と攻撃を繰り出すキョウジに思わず叫んだ。
「バカな! この私が、グレートウォンが! 何故、こうも一方的に!?」
理不尽だと嘆くウォンに、キョウジは静かに告げる。
「DG細胞の力に溺れ、己を磨くことを忘れた貴様に俺が負けるものか」
凶気を孕んだ瞳でキョウジは見下ろしながら、告げる。握る力を徐々に強めながら。
「人は常に進化する。だが、逆もある。自分が他者より僅かに優れた存在だからと力に溺れ驕りたかぶれば、本来の力を発揮することなく、退化し衰える」
「な、何が言いたい!?」
徐々に強まる痛みに耐えながら、ウォンは周りを見回す。キョウジの裏を掻けば、この状況を打開できるのだから。
「貴様らは人から進化したのではない。人を捨て化け物に成り下がったんだ。自分の弱さから目を背け、逃げて力に溺れた、ただの愚者だ!!」
更に光が強まり、力が吹き上がる。
ウォンは忌々しげにキョウジを睨みながら、言った。
「認めよう、確かに細胞の力に私は溺れていた。だが、貴様とて同じだ、キョウジ! 綺麗事を告げたところで、貴様も私達と変わらない存在ではないか!! 細胞の力に頼らなければ、それだけの身体能力になる訳がない!!!」
ウォンの怒号にキョウジも頷いた。
「そうだ。俺も細胞の力に頼らなければ、此処までの力を引き出すことはできなかった。シャイニングガンダムを使いこなすこともな。だがーー!!」
牙を剥き出しにし、鬼の顔でキョウジはウォンを見下ろして告げる。
「己を磨くことだけは、辞めない! 力に溺れて大切な誰かを泣かせるような真似を俺は決してしない!! その為に、俺は俺であり続けてみせる!!!」
その宣言にウォンはニヤリと笑って言った。
「ならば、DG細胞に取り込まれても同じセリフが言えるかな、キョウジ!!」
瞬間だった。
海面から巨大な大蛇の影が浮かんだと思うと、緑色の兜を被ったガンダムの顔をした異形が、シャイニングガンダムの目の前に現れたのだ。
「さらばだ、キョウジ!!」
大きな顎門を開けて異形ーーガンダムヘッドは、シャイニングガンダムを飲み込んだ。
「な!? 卑怯者!!」
ルナマリアが声を上げるが、それをニヤリと笑いながら見つめてウォンは告げる。
「卑怯? 勝てばいい、それが全てでしょう」
ニヤリと笑むウォンに、4人の少年たちが構えを取る。
「無駄ですよ。今の君たちにできるのは精々が、時間稼ぎだ」
そう告げるウォンに、ルナマリアもインパルスのサーベルを構える。
「ーーウォン、貴様も優勢と勝利の違いが分からん口か?」
冷たい声が響き渡ると同時に、ガンダムヘッドの長い首の部分が黄金の光と共に吹き飛んだ。
「ーーバカな!?」
ルナマリア達の表情が一気に晴れやかなものに変わる。
黄金の気を纏い、全身を金色に染めたガンダムが、両の拳を腰に置いて立っていた。
髪を金に染め、瞳は真っ赤な血の色になって、凶悪な顔でキョウジはウォンを睨み付ける。
二律背反の境地ーー。
明鏡止水の境地とは似て非なる、人機一体の極致。
「ーーバカな、これ程だと言うのか。キョウジ・カッシュ!?」
ガンダムファイターの決勝大会を見たウォンには、分かる。
この男の力は既にマスターやシュバルツにも引けを取らない程に鍛えられていると。
完全に誤算だった。
科学者であるキョウジに、これ程の戦闘力があるなど。
先のウルベを退けた力は、DG細胞を暴走させて得たのではなかったのだ。
「お前を殺す。それが俺にできる、セイランさん達やオーブ軍の人にできるせめてもの、罪滅ぼしだ」
「ーーくっ!?」
キョウジに慢心はない。
引き締まった口元も、凶気を孕んだ紅い瞳も、全てはウォンを殺すまで解かれることはない。
鬼の執念だった。
「ーーすげえな、あの人。あんな強かったのかよ」
穏やかな笑顔で自分達を迎えてくれた青年とは、まるで別人だった。
思わずアウルが呟くと、ステラが頷く。
「シュバルツに似てるけど、違う。この人、強いーー!」
「ああ。この強さは、師匠やシュバルツとは違う強さだ。だけどーー」
「ーーそうね。力の質は、ウォンとかウルベと同じだけど。誰かの為に戦おうとする意志をはっきりと感じる。アレだけ凶悪な力と殺気を放っているのに、優れた知性と理性を感じる」
少年達は敏感に察する。
自分達とは似て非なる気を放つ青年の本質を。
邪悪な力に惑わされることなく。
「ウォン・ユンファ。俺はこのガンダムと力に賭けて、貴様を斃す!!!」
「ほざくな、キョウジ・カッシュ!!!」
強烈な気を纏いながら、再び構える2体のガンダム。
悪党を追い詰める同じ顔をしたファイター達を、少年達が静かに見守っていた。
みなさん、お待ちかね〜!!
シュバルツとキョウジにより、追い詰められたウォン。
一方で、ウルベとドモンは、因縁の対決を始めるのです。
果たしてドモンはウルベを倒し、キラ達と共にジブリールを制することができるのか!?
次回、機動武道伝Gガンダム SEED Destiny 第79話に!
レディー、ゴー!!