新機動武闘伝 GガンダムSEED Destiny   作:カンナム

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 みなさん、オーブは窮地をようやく逃れることができました。

 今回から話は宇宙へと舞台を動かすことになりそうです。

 ミーアを救うために中立都市コペルニクスに潜入した3人の超人。

 また、ミーアを救うためにラクスもレイ達と行動を共にすると言いはじめるのです!

 はたして、どうなるのか?

 それでは、ガンダムファイト!!

 レディイイイッ、ゴォォォオオオッ!!


第81話 それぞれの戦い

 

 宇宙に居るラクス達が呆然と緑色の光ーーレクイエムを見送る。

 

 

 

 己の無力さにラクスは歯を食いしばり、涙を必死にこらえていた。

 

 

 

 誰もがうつむき力なく漂う中、声が上がった。

 

 

 

「お、おい。あれはーー!」

 

 

 

 ディアッカが指さすのと皆が目を見開くのは同時。

 

 

 

 真っ赤に燃える巨大な右手がレクイエムの光を掴みとめて、一気に大気圏外に押し出している光景が映っていた。

 

 

 

「ま、マジかよ!」

 

 

 

「敵も敵だが、味方も味方だな」

 

 

 

 ディアッカの言葉にイザークがあきれた声を上げる。

 

 

 

 一方でレイも呆然とその圧倒的な紅蓮の光がレクイエムを飲み込んで行くのを見据えて呟いた。

 

 

 

「これが、あの人の弟ーー」

 

 

 

「ミリアリアさん、オーブは!?」

 

 

 

 ラクスの必死の言葉にミリアリアがレーダーを確認する。

 

 

 

「……オーブ周辺確認。諸島健在。無事よ!!」

 

 

 

 ミリアリアの言葉にこの場にいる皆が安堵の微笑みを浮かべた。

 

 

 

 同時にレイが震える手を抑えながら、ため息をつく。

 

 

 

「おい。この程度でガタガタふるえてんじゃねえぞ?」

 

 

 

 ミケロが鋭い瞳でレイを射抜く。

 

 その迫力はすさまじく、並みの人間ならば動きが止まるところだろう。

 

 

 

 しかしレイは静かに首を横に振る。

 

 

 

「ああ。大丈夫だ」

 

 

 

 その答えにフン、と鼻で笑うとミケロは顎でレセップス級を指して言った。

 

 

 

「とっとと行くぞーーレイ」

 

 

 

 その言葉にーーガキというのではなく自分の名前を呼んだことにレイは目を見開き、マジマジとミケロを見ると彼は何食わぬ顔で「さっさとしろ」と言って背を向けてきた。

 

 

 

「あの船を動かすなんて面倒なこと、テメエに任せるぜ」

 

 

 

「…ああ。分かった」

 

 

 

 言うと二人はレセップス級に乗り込む為にガンダムを向け、乗りこんでいく。

 

 

 

 ブリッジに来たレイとミケロにラクスから通信が入った。

 

 

 

「本当にありがとうございました。あなた方のおかげです」

 

 

 

「いいえ。俺たちもオーブには沈んでもらうわけにはいきませんから」

 

 

 

「……そうですか」

 

 

 

 レイの言葉にラクスが何か探るような色を瞳に宿す。

 

 

 

 だが、それまでだった。

 

 

 

「ラクス・クライン。貴女もまた闘うものならば、いずれ我々と敵対するでしょう。ですが、今はーー」

 

 

 

「ええ、今闘うことはわたくしも望みません。そしてできることならば、皆が手を取りあえる未来をーー!」

 

 

 

 その言葉にレイは苦笑を浮かべて言った。

 

 

 

「人は、何も問題を持たずに手を取りあえることはありません。それは今までの人の世が証明しています。俺の存在もコーディネーターの存在も。人の欲が生み出したものなのですから」

 

 

 

 レイの言葉にモニターのラクスは悲し気に目を細める。

 

 

 

 そして彼女は言った。

 

 

 

「レイさん。わたくしもDさんと共に妹を迎えに行きたいのですが、ダメでしょうか?」

 

 

 

「ーー妹?」

 

 

 

「ええ。ただ一人の、わたくしの家族です」

 

 

 

 ラクスの言葉にレイは眉根を寄せて告げる。

 

 

 

「彼女ーーミーア・キャンベルのことですね。正体をご存じで?」

 

 

 

「正体?」

 

 

 

 レイは静かに頷くと言った。

 

 

 

「彼女はナチュラルの親に捨てられた第一世代のコーディネーターです。髪や瞳の色、頬のそばかすが気に入らない、として”ミーア”は捨てられました。キャンベル教会と言う孤児院で彼女は育てられたのです」

 

 

 

「……!」

 

 

 

 その言葉にラクスとダコスタの瞳が大きく見開かれる。

 

 

 

「彼女は自分とよく似た声の貴女に憧れていました。幼い頃より貴女の歌を聞いて彼女は生きてきたのです。そんな彼女が歌手になろうと努力し、その歌を議長に聞かれて拾われたのは運命かも知れません」

 

 

 

「レイさん。貴方は……」

 

 

 

 神妙な顔で語るレイにラクスは湧いた疑問を問いかけようと声をかける。

 

 

 

 それを遮ってレイは続けた。

 

 

 

「俺は議長ーーギルバート・デュランダルに言われてラクス・クラインになる者を調べていました。条件の合う女性を「議長のラクス」に変えたところで、家族にそのことが分かれば何の意味もありません。

 

 ですから、私は初めから身寄りのない孤児院を探すように言われ、ミーアを見つけました。そして、彼女が「ミーアを捨てる」ことができるのか客観的な状況を確認したのです。身寄りもなく、施設にも名前と年齢が記載された書類データしかない彼女はこれ以上ないほど、デュランダル議長の望みに当てはまる存在でした」

 

 

 

「……わたくしが姿を消したことにも責任があります。彼女の夢を利用された責任の一端はわたくしにもあるのですから」

 

 

 

 レイの言葉にラクスは苦虫を噛んだような顔をして言う。レイは表情を消すと感情が映らない冷たい目で問いかけた。

 

 

 

「罪滅ぼしの為に、彼女を引き取ろうと?」

 

 

 

「……最初は罪滅ぼしのつもりでした。ですが、今は。勿論彼女の意志が一番大切ではありますが。わたくしの希望は、たった一人の家族にーー妹になってほしい、ですわ」

 

 

 

 遠慮のない問いかけにもひるむことなく、正面からラクスはレイを見返して言う。

 

 

 

 それにレイも静かに頷くと、言った。

 

 

 

「では、共に参りましょう。貴女の妹であり我が王の想い人でもある女性を救うために」

 

 

 

「…はい。ありがとう、レイさん」

 

 

 

 穏やかに美しく微笑み淡々と話を進めるラクスに周りの人間は困惑していた。

 

 

 

「ちょっと待ってよ、ラクス! いくら何でも敵地のど真ん中に行こうなんて!!」

 

 

 

「そうですよ、ラクス様!!」

 

 

 

 ミリアリアとダコスタに止められるがラクスは凛とした気配を纏って言った。

 

 

 

「大丈夫です。コペルニクスはプラントにも連合にも属さない中立都市。オーブの施設もありますからミリアリアさんとダコスタさんは艦の補給をしておいてください。

 

 レイさん、今からそちらの艦に行きます。わたくし一人の身ならば、それほど時間はかかりません」

 

 

 

 言い出すと聞かないということを知っているダコスタはこれ以上ないほどに弱り切った顔をした。

 

 

 

 しかも今回は同行者として自分を連れていくこともしないようだ。

 

 

 

「いいのかよ? 俺様達はテメエらの敵だぜ?」

 

 

 

 これにミケロが横から問いかける。

 

 

 

 その目は油断すれば喉元を掻っ切ると言わんばかりの殺気で研ぎ澄まされているのがモニター越しでも分かる。

 

 

 

「おい、ラクス。レイって奴だけならまだしも、さすがにこいつと行かせるわけには!」

 

 

 

 ディアッカが首を横に振りながらミーティアの砲身をレセップス級に向ける。

 

 

 

 その反応に赤銅色の拳大の宝石球を取り出して残酷で挑戦的な笑みを浮かべるミケロ。

 

 

 

「大丈夫です。ミケロさんは、そんな無駄なことはしない方ですわ」

 

 

 

 二人の間を割って入るかのようなラクスの言葉にモニターのミケロが鋭く目を細める。

 

 

 

 そんなミケロに対し更に言葉をつづける。

 

 

 

「ここで無駄な時間を送るよりも、さっさと目的を遂げる。それが貴方のはず。違いますか?」

 

 

 

「……ケッ」

 

 

 

 ラクスの言葉に空気を吐き捨てるとミケロは肯定も否定もせずにモニターから目を離し、ブリッジの椅子の一つに座ると頭の後ろで両手を組んで背もたれにもたれかかる。

 

 

 

 それを了承と判断したラクスは、微笑みを浮かべてレセップス級に乗りこんでいった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一方で、オーブの方は荒れていた。

 

 

 

 レクイエムを放ったジブリール達ブルーコスモスは宇宙に逃げて行ったからだ。

 

 

 

 少なくとも、この場にいる人間達にジブリール達のシャトルがどうなったかを知るすべはない。

 

 

 

「うまく行ったのか、ドモン」

 

 

 

 皆が生き延びた幸せを嚙みしめる中、キョウジは淡々と穏やかに文字通り国を救った弟に問いかける。

 

 

 

 キョウジのシャイニングガンダムの左にはシュバルツのガンダムシュピーゲルも来ていた。

 

 

 

 ドモンは静かに頷いて構えを解くと、首を兄たちとは別の方向に向ける。

 

 

 

 海面を馬の蹄の音が響いてくるのを確認し、ドモンは彼らを迎えた。

 

 

 

 ゴッドガンダムとシャイニングガンダム、そしてガンダムシュピーゲルの前にモビルホースを駆って現れたのは、シャイニングガンダムとゴッドガンダムに似た赤い機体。

 

 

 

 ライジングガンダムだった。

 

 

 

 ドモンはライジングガンダムに目を向け、モビルホースである風雲再起の馬頭を撫でてねぎらいながら話す。

 

 

 

「ああ。間違いなくライジングアローは正確にシャトルを射抜いた」  

 

 

 

 ドモンの言葉にキョウジが表情を明るくする。

 

 

 

 だがその隣で、シュバルツは眉根を寄せて深刻な顔をしているドモンに気付き問いかけた。

 

 

 

「ならば何故、そんな険しい顔をしている?」

 

 

 

 シュバルツの言葉にドモンは、苦笑して答えた。

 

 

 

「遠隔リモートでのライジングアローだったからさ」

 

 

 

「ーー何だと?」

 

 

 

 眉根を寄せるシュバルツにドモンが答える。

 

 

 

「明鏡止水でもハイパーモードでもない、ただのライジングアローだ。シャトルを落とすだけなら威力は申し分ないが、黄金のハイパーモードを手に入れたウルベが大気圏突入中とはいえ、大人しく食らったってのが気になる」

 

 

 

 その言葉にシュバルツが険しい顔のまま頷いた。

 

 

 

「確かに、それは妙だな。ハイパーモードならば防ぐことは可能のはずだ。最悪、大気圏突入中であったとしてもガンダムだけで抜けられる」

 

 

 

 深刻な表情で黙り込むドモンとシュバルツ。

 

 

 

 その空気を破ったのはキョウジだった。

 

 

 

「……ほう、それは好都合だな」

 

 

 

 意外そうな表情でキョウジを見るドモン。

 

 

 

 シュバルツも苦虫を噛んだような表情でキョウジに言った。

 

 

 

「キョウジよ。お前がなぜそのような言葉を発するか、私には分かるが他の者がいる前では言うなよ?」

 

 

 

「好都合だって…? 兄さんはウルベ達を憎んでたんじゃないのか?」

 

 

 

 ドモンの言葉にキョウジは静かに頷くと言った。

 

 

 

「ああ。俺個人の感情で言えば、生きているんならウルベを殺してやりたい。

 

 母さんの仇であり、オーブと言う俺のもう一つの故郷を壊そうとした奴だしな。正直目の前に居たら、国の都合なんざ知ったこっちゃない」

 

 

 

 にべもなく言うキョウジの目には、冷ややかな憎悪の炎が燃えている。

 

 

 

 本気の目だ。

 

 

 

「ザフトや連合をーーいや。デュランダルを無視して良いなら今からでも追いかけて、是が非でも殺してやるさ」

 

 

 

 憎しみに彩られたキョウジの声は、それでも知性と理性を感じさせる。

 

 

 

 いくら怒りを感じようとも頭は常に冷ややかな男。

 

 

 

 DG細胞は怒りや憎しみの感情や破壊衝動を増加させる代わりに圧倒的な力を与えるもの。

 

 

 

 今の兄からは変わらぬ穏やかさと理性的な温かさの他に生前は感じられなかったファイターとしての才能と力、そして凄みも感じるとドモンは思った。

 

 

 

「ギルバート・デュランダル、か。キョウジ兄さんは奴が何を企んでるのか、知ってるのかい?」

 

 

 

 プラントで出会った穏やかな笑顔の男。

 

 

 

 第一印象はキョウジと似た理性と知性で勝負をするタイプの男だと感じた。

 

 

 

 もっとも、その瞳の奥にあるのは強烈な野心だが。

 

 

 

「おそらく、だがな。なあドモン、お前はデスティニープランについてキラ達とどこまで話してる?」

 

 

 

 キョウジの言葉にドモンの目に理解の色が現れた。

 

 

 

 デスティニープランとはデュランダルが世界を統一した上で推し進めようとしている遺伝子による人間の支配を前提とした計画だ。

 

 

 

 その計画はデュランダル本人さえをも遺伝子に乗っ取らせようとする狂気を感じる。

 

 

 

「そうか。対立するナチュラルとコーディネーターを一つに纏める為の悪役ーーそれがウルベ達、か。そしてそいつを打倒するのがデュランダル率いる人類ってシナリオか」

 

 

 

「実際問題、デビルガンダムーーいや、Dだっけ? 紅い髪のお前と瓜二つの。アイツやマスターアジアがその役を引き継いでやろうとしてるみたいだが。戦力はともかく、実質的にデュランダルにとっても危険なのは手段を選ばないウルベやウォンの方だ」

 

 

 

「なるほど。タイミングとしては、今あいつらに死んでもらうと俺たちの都合が悪くなるわけだ」

 

 

 

「そうだ。Dたちが宇宙に上がった以上、デュランダルがまず狙うのは地球圏の統一。その最たる障害はオーブだからな」

 

 

 

 キョウジの言葉にドモンは頷く。

 

 

 

 シュバルツがキョウジの言葉を継ぐように告げた。

 

 

 

「そして、その尖兵となるのが私の鍛えたミネルバ隊、か。ゲルマン忍法で撃墜詐欺をしたところで、ミネルバも長い時間身を隠せるわけではないーー。今回の戦闘でオーブにも余力はなくなっただろう。詰まる所、現状を維持するのならともかく捕虜を増やす資源がない、か」

 

 

 

「ミネルバ隊に限らず、正規軍人の連中はプラントとか言うコロニーに家族がいるから迂闊な真似はできない。となるとライジングガンダムでの追撃は結果的には正解か」

 

 

 

 ドモンの言葉にキョウジが満足気に頷いた。

 

 

 

「そうだ、ウルベ達が生き残っていたなら俺たちが追撃したことで身を隠せる口実ができた。

 

 仮にウルベ達がライジングガンダムに撃墜されていたとしてもデュランダルは行方不明となったウルベ達を見つけるまではオーブを狙えない」

 

 

 

 淡々とキョウジは現状を告げる。

 

 

 

「このことを踏まえたうえで今後について話したいんだが、ミネルバ隊やアークエンジェルと話せるかな?」

 

 

 

 シュバルツが苦笑して言った。

 

 

 

「お前は本当に休まないな、キョウジ」

 

 

 

「働くときは働く、が俺の信条だからな。平和になって元の世界に戻ったらまた研究者としてひきこもるさ。今度はシュバルツっていう俺がもう一人いるんだからな、以前していた研究もはかどるぞ!」

 

 

 

「……まったく」

 

 

 

 冗談ぽく言うキョウジにあきれるシュバルツ。

 

 

 

 それを見て思わずドモンが噴き出す。

 

 

 

「プッーーホントにキョウジ兄さんは、しょうがないな」

 

 

 

 状況は進展していく。

 

 

 

 戦略兵器が既に放たれた、それは引き金をとても軽くしたことになる。

 

 

 

 今後を想えば笑っているわけにはいかないだろう。

 

 

 

 だと言うのに彼ら三人の兄弟は、そんな困難な状況を文字通り力強く笑い飛ばしていた。

 

 

 

 数時間後。

 

 

 

 ウルベ達の追撃部隊をファム・ファタールが率いり、オーブのマスドライバー施設を同盟軍に協力して使用させることで、オーブはブルーコスモスとは無関係であるという立場を対外的にも打ち出すことにキョウジ達は成功した。

 

 

 

 これは政治的にも意味のある行為であった。

 

 

 

 迂闊にデュランダルはオーブを攻める訳には行かなくなったのだ。

 

 

 

 また、キョウジの手引きによりカガリの声明で今回の戦いに参戦したすべての軍に補給を行うことを通達。

 

 

 

 連合とザフトの船はオーブを臨時拠点として動くことができるようにしたのだ。

 

 

 

 この狙いは無論、ミネルバをオーブに停泊させることにある。

 

 

 

 ミネルバ隊の全クルーは、会合という名目でオーブ本国に来るように通達された。

 

 

 

 最終局面が、いよいよ近づいてきている。

 

 

 

 シンはオーブからの迎えの車に乗り込みながら、そんなことを想った。

 

 

 

 

 

 

 

 中立月面都市コペルニクス。

 

 

 

 連合にもザフトにも属さない完全自由都市とされる月のクレーターの一つに創られた居住施設。

 

 

 

 その街中を紅い髪の長身の男が二人の壮年の男性を連れて歩いていた。

 

 

 

 三人とも180を軽く越えている身長のため、比較的背の高いコーディネーター達の中でも頭一つ高い。

 

 

 

 おまけに鍛え抜かれた体と鋭い瞳は否応なく周りの視線を集めていた。

 

 

 

「月かーー。この世界の施設も悪くはないな」

 

 

 

 黒髪をオールバックにした壮年の紳士、ジェントル・チャップマンが空を見上げながら呟く。

 

 

 

 これに隣を歩くお下げ髪の拳法着の男、マスターアジアが話した。

 

 

 

「人の欲は我らの世界で地球を食い物にし、選ばれた人間は宇宙へと逃げていった。しかし、この世界は真逆。地球が美しいのは良いが、宇宙の民を排除することしか考えておらぬブルーコスモス、か。

 

 虐げられ宇宙へと逃れたコーディネーターの人間とて、ナチュラルと呼ばれるこの世界の人間とそう変わるものでもない。元々はコーディネーターもナチュラルが生み出したもの。それから目を背けるは、かつてのワシと同じ。正に愚行の極みよな」

 

 

 

「何処の世界も人は争うものだ。だからこそ、俺たちの世界ではガンダムファイトの英雄やシャッフル同盟が必要となった。この世界のコーディネーターもまた、調停者としての位置を求めねばならんのだろうな」

 

 

 

 チャップマンの言葉に我が意を得たりと、マスターアジアも頷く。

 

 

 

「ワシやシュバルツが鍛えた奴らが、きっとこの世界を支えて行こう。ワシらがやることは、その障害を取り除きワシら自身が奴らの壁となることだ」

 

 

 

「期待しているんだな、この世界に」

 

 

 

 チャップマンが微笑みながら言うとマスターも温かみのある笑みを浮かべた。

 

 

 

「でなければ、このような回りくどい真似はせん。もっとも、ワシが今一番見たいものは其処にいる男と我が弟子ドモン・カッシュとのファイトだがな」

 

 

 

「ーー異論ない。人の心を持ち限りなく人に近しい存在となったガンダムと、武を極めガンダムと一体となった人の勝負。俺でなくとも見たいものだ」

 

 

 

 普段は淡々としたチャップマンが熱を帯びた声で告げるとマスターも心地よさげに同意する。

 

 

 

「うむ。そして、そのファイトこそが真に人の心に訴えよう。闘いとは何か、強さとは何かを」

 

 

 

「ーー最高の舞台にしなければな。そのためにも邪魔は排除するとしよう」

 

 

 

「後顧の憂いを絶ち、若者達が希望に満ちた未来を己の手で切り開く為にもな」

 

 

 

 二人は互いに見合うと力強く頷きあう。

 

 

 

 彼らの視線の先を歩くのは、新たなる可能性に満ちた赤い髪の超越者。

 

 

 

 人非ざる者でありながら、限りなく人に近しい存在。

 

 

 

 デビルガンダムーー。

 

 

 

 世界を滅ぼす力を持ちながら、人の心と姿を持つ者。

 

 

 

 そして、人を愛する者。

 

 

 

 口には出さないが、マスターやチャップマンには分かる。

 

 

 

 あの拳は愛なき者には振るえないとファイターにしか分からない感性で彼らは確信していた。

 

 

 

 その時、前方を歩くデビルガンダムことDが此方を振り返りながら言う。

 

 

 

「ーー見つけたぞ」

 

 

 

 鋭い瞳を見返し、マスターとチャップマンも前方を見る。其処には何の変哲もないレストランがあった。

 

 

 

「ここがレイの言っておったデュランダル派の工作員が拠点にしておる店か」

 

 

 

「イタリア料理だな。ミケロの奴を連れてくれば良かった」

 

 

 

「ほう? あやつがグルメとは知らなんだな」

 

 

 

「ギャングの頭をはっていただけあって、中々の目利きだぞ。ワインや料理にも精通している」

 

 

 

 盛り上がる二人の男を尻目にDは静かに店の扉を開けた。

 

 

 

 中は木製で合わせた店内であり、清潔感溢れている。

 

 

 

 手短かに窓際のテーブルにDが着くと、マスターとチャップマンも席に着いた。

 

 

 

 客は自分達しかいないようだが、感じる視線は5、6人ほどある。

 

 

 

 監視カメラや盗聴器などもテーブルや灰皿などに仕掛けられていた。

 

 

 

「やれやれ。腹が減っては戦はできぬという。Dよ、飯にしよう」

 

 

 

 なに食わぬ顔で確認しながら、マスターはメニューが書いてある冊子を手に取り開く。

 

 

 

「ーーD。戦士たる者、本当に美味いものを知るも肝要だ」

 

 

 

「おお、チャップマンよ。まさにその通りだ!!」

 

 

 

 Dはメニュー片手に話し合う二人の男を見るや普通に手を上げて店員を呼ぶ。

 

 

 

「ご注文はお決まりですか?」

 

 

 

「赤ワインをくれ。後、ピザはマルゲリータ。パスタはナポリタンスパゲティ。スープはミネストローネを」

 

 

 

 流れるような注文の仕方にマスターとチャップマンが目を見開く。

 

 

 

「他の方はどうなさいますか?」

 

 

 

 マスターとチャップマンは互いに見合うと一つ頷き、力強く告げた。

 

 

 

「「同じものをーー!」」

 

 

 

「畏まりました」

 

 

 

 去っていく店員を見送った後、何食わぬ顔で水を飲む赤い髪の青年を見据えてマスターとチャップマンは頬につたる汗を一つ拭った。

 

 

 

 

 

 大気圏内にて、爆発を起こしたシャトルから黄金の光を纏ったガンダムが、緑色の光の矢を片手に握りしめていた。

 

 

 

「助かりましたよ、ウルベ」

 

 

 

 そのガンダムのコクピットには、冷や汗を拭うジブリールとウォン。

 

 

 

 呆然としながらも、状況を理解し始めるマーキロット達がいる。

 

 

 

 ウルベはなにも言わず、黄金の気に満ちた己を見下ろすと手に持った光の矢を見据える。

 

 

 

「ウルベよ、どうした?」

 

 

 

 ジブリールの問いかけにウルベは「いや」とだけ告げると静かに大気圏を抜けた。

 

 

 

「ガンダムの意思、だと?」

 

 

 

 あの時、ライジングアローにシャトルを射抜かれた瞬間、ウルベの頭にはガンダムを呼べとの声ならぬ声が、聞こえていた。

 

 

 

 その指示に無意識に従い、気が付けばウォン達をコクピットに招きながらもライジングアローを掴み止め、爆発を気の壁で防ぐ黄金のガンダムに乗っていた。

 

 

 

(救われたと言うのか? 私が、ヴァニシングガンダムに?)

 

 

 

 ドモンがファイトの最中に言ってきたガンダムの意思を感じること。

 

 

 

 ウルベは、鼻で笑い飛ばしていたが。

 

 

 

 それを知った今、其処に更なる可能性を感じていた。

 

 

 

「ジブリール。しばらく私は月面基地で修行をしたいのだが、良いかね?」

 

 

 

 この言葉に是非もないとジブリールは告げる。

 

 

 

「無論だ。お前やマーキロット達が強くなればドモン・カッシュやデビルガンダム。デュランダルにも良い牽制になる」

 

 

 

 快諾を得るとウルベは静かに冷酷な笑みを浮かべ、マーキロット達に告げた。

 

 

 

「せっかく生き返ったのだ。私に殺されないようにしたまえ、諸君」

 

 

 

 これにマーキロット達は冷や汗をかきながら告げる。

 

 

 

「望むところだ、ドモン・カッシュを殺す為にもな」

 

 

 

「今以上に強くなるわ。シュバルツ・ブルーダーを下せるくらいはね」

 

 

 

「わたくしのモノマネを馬鹿にした彼らには、報いを与えなければなりません」

 

 

 

 3人のファイターの答えにウルベは笑みを深めながら、ヴァニシングガンダムをダイダロス基地に着地させた。

 

 

 

 迎えに来た連合ブルーコスモス軍を見ながら、ウォンは笑みが止まらないようだ。

 

 

 

「生き延びた我らの力を示しましょう。まずは、月からだ」

 

 

 

「始めようか、宇宙も地球も。ナチュラルもコーディネーターも全て我らの僕と化すのだ!!」

 

 

 

 ジブリールもまた高笑いを浮かべて、世界を我が物にせんと企んでいる。

 

 

 

 こうして。悪はしばらく身を隠す。

 

 

 

 更なる巨悪へと進化するためにーー。

 

 

 

 

 




 みなさん、お待ちかね〜!

 腹を満たしたD達は、レストランの店主に対しレイから聞いていた合言葉を告げます。

 即座に別室へ案内される彼らですが、それはレイが裏切った事を知る店主達の罠でした。

 はたして、Dはミーアの情報を得ることができるのか?

 次回、機動武道伝Gガンダム SEED Destiny 第82話に!

 レディー、ゴー!!
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