新機動武闘伝 GガンダムSEED Destiny   作:カンナム

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 皆さん、今回のお話でラクスはミーア・キャンベルの下へ向かいます。

 彼女と行動を共にするレイ、ミケロ、メイリンの三人の関係も徐々にではありますが変化していく中、地球では二機のガンダムが修行を行っているではありませんか!

 それでは、ガンダムファイト!!

 レディイイイイイ、ゴォオオオオオ!!

 


第83話 計られた手紙

 

 オーブの訓練施設用に開けられた無人島。

 

 

 

 その大きな舞台で大地に足を着けた三機のガンダムが睨み合っている。

 

 

 

 トリコロールの白い兄弟機が二機と鏡の名を冠する黒い忍者を模した機体。

 

 

 

「…いつでもいいぜ、兄さん達!!」

 

 

 

 トリコロールのガンダムで羽を持つ方ーーゴッドガンダムのコクピットからドモン・カッシュはそう告げた。

 

 

 

「なら最初は俺から、行かせてもらう!!」

 

 

 

 言うともう一機のトリコロールの機体、シャイニングガンダムがキョウジの言葉と共に踏み込む。

 

 

 

 右拳を互いに合わせると同時、離れる。

 

 

 

 ドモンは左手を曲げて顔の横に右手を腰に置いて拳を握り、両膝を曲げて腰だめに構え足裏をしっかりと地面に着ける。

 

 

 

 対するキョウジはガードするように両腕を曲げて、目の高さに左右の拳を持ってくると斜に構えるスタンダードなファイティングスタイルを取る。

 

 

 

 つま先立ちになり、どのようにでも動けるようにステップを軽く刻んでいる。

 

 

 

 これをシュバルツの駆るガンダムシュピーゲルが腕を組んで見ている。

 

 

 

 ゴッドガンダムが動いた。

 

 

 

 凄まじい踏み込みで一気にシャイニングガンダムの懐に入り込んで来たのだ。

 

 

 

「聖拳突き!!」

 

 

 

 シャイニングガンダムは、軽く首を横に逸らして右に避ける。

 

 

 

 同時に右のフックをゴッドガンダムの側面に放っている。

 

 

 

 しかし、それをゴッドガンダムは膝を屈んで下に避けると同時に右の回し蹴りをシャイニングガンダムの顔に放ってきている。

 

 

 

 上体を後ろに反らして鼻先で回し蹴りを見切るシャイニングガンダム。

 

 

 

 しかし、その蹴りの軌跡をかき消すように続けざまに放たれたゴッドガンダムの鋭い左の拳がシャイニングガンダムの目先に来ている。

 

 

 

 それ以上は体を反らせない。

 

 

 

 バックステップしながら避けようとするシャイニングガンダムの顔面が、それよりも速く踏み込んで来たゴッドガンダムの左拳に跳ね上げられた。

 

 

 

「ーーぐッ!」

 

 

 

「疾風突き!!」

 

 

 

 ドモンの技名を叫ぶ声が響き渡り、同時にゴッドガンダムがシャイニングガンダムの懐に入り込んでいる。

 

 

 

(やばい!!)

 

 

 

 咄嗟にキョウジがそう思ったときには、嵐のような連撃がゴッドガンダムから放たれてきた。

 

 

 

「肘打ち! 裏拳、正拳! とぉおおおおりゃぁあああ!!」

 

 

 

 鋭い拳と蹴りの雨あられに、シャイニングガンダムは両腕を使って捌くことしかできない。

 

 

 

 いや、捌き切れずに何発かもらいながらも必死に攻撃を払っていた。

 

 

 

(スピードの次元が違うのか!?)

 

 

 

 キョウジが拳を放とうとするときには、ドモンは拳を5発返してくる。

 

 

 

 圧倒的なスピードと手数、そして固い拳だ。

 

 

 

 DG細胞の力抜きでは話にならない。

 

 

 

 キョウジが覚悟を決め、続けざまに放たれるドモンの連撃から右拳を選んで掴み止めた。

 

 

 

「……力を使う気になったのかい、兄さん?」

 

 

 

「ああ。でないと話にならんみたいだからな」

 

 

 

 言うとキョウジのシャイニングガンダムは腕、肩、胸、足のパーツを展開し、金色の冷却粒子を展開する。

 

 

 

 同時に圧倒的な凶気がキョウジからはなたれ、それをシャイニングガンダムのエネルギーマルチプライヤーが何倍にも増幅して放つ。

 

 

 

「……いくぞ、ドモン!!」

 

 

 

「……!!」

 

 

 

 次の瞬間、両者の機体は姿を消す。

 

 

 

 島のあちこちで地面がせり上がり、空中で火花や衝撃波が散る。

 

 

 

 互いに鋭い拳と蹴りをぶつけ合っている。

 

 

 

「こ、これってーー!」

 

 

 

 そこへガンダムに乗って来たシンやルナマリア達が目の前の光景に呆然としていた。

 

 

 

「な、何て力と力のぶつかり合いだよ!」

 

 

 

「迂闊に近づいたら、余波だけでふっ飛ばされんぞ」

 

 

 

 スティングとアウルの言葉どおりのぶつかり合いが目の前で行われている。

 

 

 

「やっぱり、キョウジの力はウルベ達の力と同じ。でも、何かが違うーー! シャイニングガンダムの光のおかげなのかな?」

 

 

 

「分かんないわね。でも、あの力が味方なら心強いわ」

 

 

 

 ステラの言葉にルナも応える。

 

 

 

「キラさん、これってーー」

 

 

 

「うん、僕達に見せるためかもしれないね」

 

 

 

「こんなとんでもない動きを見せられても、参考になるのか?」

 

 

 

 シンとキラ、アスランも目の前で展開されている光景にあきれながらも声を上げた。

 

 

 

 シュバルツがそんな少年たちに気付いて振り返る。

 

 

 

「よく来たな、お前たち」

 

 

 

「シュバルツさん、この戦いは?」

 

 

 

 シンの問いかけを目で制すると静かにシュバルツは、島のあちこちでぶつかり合う二機の兄弟機を見据える。

 

 

 

「よく見ておけ。力だけではどうあっても越えられぬ壁をな」

 

 

 

 その言葉に、少年たちは激戦を繰り広げる二機に目をやるのだった。

 

 

 

 対峙するキョウジは驚いていた。

 

 

 

 自分の力とスピードは、マスターアジアと対等に渡り合うレベルで強化されたものだ。

 

 

 

 それにドモンは平然とついてくる。

 

 

 

 強いなどというレベルではない。

 

 

 

 スーパーモードの能力とDG細胞の恩恵で時間を無視して今の状態を維持できるとはいえ、自分と違いドモンはハイパーモードを展開していないのだ。

 

 

 

 通常の能力値だけでドモン・カッシュはキョウジのシャイニングガンダムに優っているのだ。

 

 

 

 今までの敵ならば、この力とスピードに追いつくことができずに一方的に蹂躙できた。

 

 

 

 ところが、ドモンはその更に上のレベルで動いてくるのだ。

 

 

 

 自分が先読みした動きを更に越えてーー。

 

 

 

「打ち破るのは、半端な苦労ではなさそうだな」

 

 

 

「どうした、兄さん? 力だけじゃ俺には勝てないぜ」

 

 

 

 言いながらも拳と蹴りをぶつけ合う兄弟。

 

 

 

 ドモンは挑発しながらも理解している。

 

 

 

 兄は、正しく今の自分に足りないものを理解し始めている、と。

 

 

 

 次元覇王流の動きは散々と見せた。

 

 

 

 そして、兄は次元覇王流の源である東方不敗を学び、その基本動作を几帳面な程に繰り返す男だ。

 

 

 

 ならばーーどうなる?

 

 

 

 もし、キョウジ・カッシュが自分の動きを真似たら?

 

 

 

 ドモンは不敵な笑みを浮かべている。

 

 

 

 それはキョウジのちぐはぐな能力を完璧に嚙合わせるためだ。

 

 

 

 独学で兄はマスターアジアと戦えるレベルにまで成長した。

 

 

 

 その兄にきちんと技を教えれば?

 

 

 

 ぶつかり合う。

 

 

 

 ドモンの右ストレートを左に見切り、同じようにカウンターの左フックを放つキョウジ。

 

 

 

 違うのは鈍い音が響き渡り、拳が掌で受け止められていることだろう。

 

 

 

「……さすがだな、兄さん!」

 

 

 

「……なるほどな。こういうことか」

 

 

 

 一つ頷き合い、拳と拳を三合交換する。

 

 

 

 ドモンの動きに先ほどまでは付いていけなかったが、今のキョウジは見えている。

 

 

 

 自然と体が動くようになっている。

 

 

 

 何が足りないのか、どう動けばよいのか、まるで真綿に水がしみわたるように吸収されていく。

 

 

 

 そして、両者の拳がぶつかり合った時、シャイニングガンダムが黄金の光を纏った。

 

 

 

「……なるほどな。これが、シャイニングガンダムの戦い方か」

 

 

 

 拳を二、三回握りしめて己の感覚を見据える。

 

 

 

 そして鋭い瞳でドモンのゴッドガンダムを見据えた。

 

 

 

「そう。それが俺の分身であるシャイニングガンダムの戦い方さ。そして、兄さんが目指す領域でもある」

 

 

 

「……ドモン」

 

 

 

「今度は守れるよ。兄さんは無力なんかじゃない。そうだろ?」

 

 

 

 言いながらドモンもゴッドガンダムをハイパーモードにし、黄金の光を纏う。

 

 

 

 胸のカバーと背中の六枚の羽根が展開し、日輪を背負う。

 

 

 

「さあ、思い切り来い!!」

 

 

 

 その言葉にキョウジは血に飢えた獣のような目を向けると、鋭く踏み込んで拳を放つ。

 

 

 

 ドモンは紙一重で捌きながら、次々と繰り出される拳を避けていく。

 

 

 

 シャイニングガンダムの右ボディブローがゴッドガンダムに突き刺さった。

 

 

 

「ーーぐぅ!」

 

 

 

 ドモンが苦悶の声を上げる、同時に右の前蹴りが追撃で入り、後方に弾き飛ばされるゴッドガンダム。

 

 

 

 そこへ間髪入れずにシャイニングガンダムが踏み込んでくる。

 

 

 

 人が変わったように暴力的な動き。

 

 

 

 野性的なスピード。

 

 

 

 だが、冷静にドモンの動きを先読みして先回りし的確にガードの隙間を狙って拳を放り込んでくる。

 

 

 

 迂闊な攻撃は全てカウンターを浴びせてくる。

 

 

 

 情け容赦ない獣の野性と狩人の知性。

 

 

 

 キョウジ・カッシュの本領発揮と言った動きにドモンが思わず笑みを浮かべて拳を返す。

 

 

 

「……楽しいな、そうだろ? キョウジ兄さん!!」

 

 

 

 何度目かの相打ちの後、ドモンの拳がキョウジを押し返した。

 

 

 

 それに静かに棒立ちになり、キョウジはシャイニングガンダムのコクピットで口の端を釣り上げる。

 

 

 

「くくく、はははは! はぁーはははあっはあはは!!」

 

 

 

 哄笑が響く中、ドモンも不敵な笑みを口元に刻み、燃える漆黒の瞳を兄に見据える。

 

 

 

「お前は、凄いよドモン。これだけやって、まるで勝てる気がしない。本来ならそれは怖いことなんだ。なのに、お前と拳を交えるとドンドン自分が自分じゃなくなるような気がする。強くなれる自分もそうだが、恐怖なんて飛んで行ってしまう程に熱い何かが、俺の心をつかんで離さない」

 

 

 

 キョウジが鋭いながらも熱い炎を宿した瞳でドモンを見据えて笑う。

 

 

 

「それがガンダムファイターさ。どんなに苦しくても闘う熱きファイターの拳だ!! 兄さんも持っているだけだよ、ガンダムファイター魂を!!」

 

 

 

 ドモンはそれに拳を握って答えた。

 

 

 

「さあ、仕上げだ!! 兄さんとシャイニングガンダムの力を俺にぶつけて来い!! 俺とゴッドガンダムの最高の力で正面から打ち破ってやる!!!」

 

 

 

 ドモンのその言葉に応えるようにゴッドガンダムのデュアルアイが輝く。

 

 

 

 同時にシャイニングガンダムのデュアルアイも輝いた。

 

 

 

「そうかーー。だったら兄貴として、弟の挑戦は受けなきゃな!! そうだろ、シャイニングガンダム!!!」

 

 

 

 右手を掲げる二機のガンダムは、祝詞を高々と告げる。

 

 

 

「「流派! 東方不敗の名の下に!!」」

 

 

 

「俺のこの手が光って唸る! お前を倒せと輝き叫ぶ!!」

 

 

 

「俺のこの手が真っ赤に燃える! 勝利を掴めと轟き叫ぶ!!」

 

 

 

 キングオブハートがゴッドガンダムの右手に宿り、真紅に爆熱した炎は黄金の気と共に右手に集中する、全身を黄金からトリコロールに戻しながら右手だけは白金色に輝く。

 

 

 

 シャイニングガンダムもまた同じように白金色に右手を輝かせ、全身をトリコロールの状態に戻していた。

 

 

 

 極限の気が両者の右手に宿っている。

 

 

 

「必ぃいいい殺っ! シャァアアアイニングゥウ!!」

 

 

 

「爆ぁああく熱っ! ゴォオオッドォ!!」

 

 

 

 同時に相手に向かって一気に駆ける。

 

 

 

 音速を越えた動きで互いに目にも映らぬスピードで相手に向かい、掲げた右手を正拳突きのように打ち出す。

 

 

 

「「フィンガァアアアアアア!!」」 

 

 

 

 中央で組み合う両者の一撃。

 

 

 

 踏ん張っていた大地はひび割れてクレーターとなり、二機のガンダムは身にまとう気によって宙に浮かびながらその場に留まり、気を高めあう。

 

 

 

 同時に天が祝福するかのように、白金色の光の柱を島の中央に突き立てていた。

 

 

 

 

 

 

 

 月面都市コペルニクス。

 

 

 

 デュランダルの工作員として派兵されている情報屋の一角で、Dは静かに報告を聞いていた。

 

 

 

「と言うわけでして、ラクス・クラインは何名かの者と共に買い物をしているようなのです」

 

 

 

 弱り切った顔をした男の言葉を構わずに続けろとDは先を促す。

 

 

 

 隣ではマスターアジアが、豪快に笑っていた。

 

 

 

「何と! 胆の据わった少女よ!! 敵地の真ん中で堂々と買い物をするとはな!!」

 

 

 

 腹を抱えているマスターを尻目にチャップマンは冷静に葉巻に火をつける。

 

 

 

「……ふむ。同行者の特徴から言えば、ミケロとレイもいるようだな。狙いはなんだ?」

 

 

 

 葉巻を吸いながら、男の報告を客観的に見ている。

 

 

 

 Dがそれを横目に見ながら告げた。

 

 

 

「そいつは本物のラクス・クラインだ。ダコスタの慌てぶりが目に浮かぶ」

 

 

 

 淡々とした言葉にチャップマンが「ほう」と相槌を打つ。

 

 

 

「本物に偽物か。にわかには信じられんな。年端も行かぬ少女にコロニーを纏めるだけの力がある等」

 

 

 

「それがコーディネーターの危うさよ、チャップマン」

 

 

 

「というと?」

 

 

 

「能力があるがゆえに、奴らはあまりにも早く技術力を高め過ぎてしまった。本来人間の能力は段階を積んでいくことにより、開花する。しかし、奴らは段階を積むことをせずに結果を出すことができるようになっておる。この世界の人間であるナチュラル共は、表向きの能力にしか目が行っておらんから知る由もなかろうが」

 

 

 

 嘆かわしいと言わんばかりに東方不敗マスターアジアは表情を歪ませている。

 

 

 

「遺伝子をいじったが故に、初めから「そうなる」ことを宿命づけられてしまった人間。だがその人間にも心がある。当然よな? そやつもまた命なのだから」

 

 

 

「……確かにな。子は親の道具ではない。そして、親を越えるためには道具であってはならない」

 

 

 

「然り。だが、何を持って越えるかとなれば話は違う。親と比べて何を優ると言う? 職業か? 階級か? 給料か? そもそも比べることすら無意味なことだ。何故ならば同じ環境には無いのだからな、親と子は」

 

 

 

 チャップマンは静かにマスターアジアを見据える。

 

 

 

 マスターアジアは続ける。

 

 

 

「しかし、比べてしまう。それは人が故よ。比べる必要が無い程に自信を持つためにはあらゆる障害を乗り越えていかねば悟れぬ。容姿や能力、確かに人と比べれば良いにこしたことはあるまい。だが、それが全てではない。その最たるものが出会いよ。その魂に影響を与える出会いがあれば、人はどうとでも変わる。遺伝子が全てではないと言うことだ、それをこの世界の者は誰も言わぬ」

 

 

 

 悲し気なマスターアジアの言葉は、怒りも混じっている。

 

 

 

 能力に打ち勝つためだけに、薬を使って体を作り変えてしまうナチュラルを想って。

 

 

 

「……能力が全てではない、か」

 

 

 

 静かにDがマスターアジアを見ながら告げる。

 

 

 

「Dよ、真の強さとは力ではない。力に屈すること無き魂こそが、真の強さと知るがいい」

 

 

 

「その強さは、一朝一夕で身につくものではない、か」

 

 

 

「如何にも!!」

 

 

 

 腕を組みいつものように咆哮するマスターアジアにDは静かに邪悪にして不遜な笑みを浮かべる。

 

 

 

「面白い…! 手に入れてやるぞ、その強さを!!」

 

 

 

「はたして、そう上手く行くかな? 楽しみに見させてもらうぞ、Dよ!!」

 

 

 

 マスターアジアからの挑戦状とも言える言葉にDは笑みを強めるのだった。

 

 

 

(もっとも、貴様は既にその強さを手に入れておる。問題はそれに気付くか否か、よ)

 

 

 

 笑みを浮かべてマスターアジアも見下ろしながら、心の中でそうつぶやいた。

 

 

 

 

 

 

 

 コペルニクスのデパートで

 

 

 

 ラクス・クラインとメイリン・ホークは堂々と服屋での買い物をしていた。

 

 

 

 これに付き従うのは、レイ・ザ・バレルとミケロ・チャリオットである。

 

 

 

「…確かに、ラクス・クラインが買い物をすれば敵をおびき出せると案を出したのは俺だ。だが、何もここまで堂々と買い物しなくてもよくはないか?」

 

 

 

「俺様にごちゃごちゃ言うんじゃねえよ。本人たちに言え」

 

 

 

「…………いや、無理だ」

 

 

 

 先ほどのラクスの迫力とメイリンへの後ろめたさが、レイの口を閉ざさしてしまう。

 

 

 

 それにミケロが呆れた顔をしながら言う。

 

 

 

「おめえ、初めて会った時は可愛げのないガキだと思ったが。ちゃんとガキだったみてえだな」

 

 

 

「……皮肉か」

 

 

 

「ま、いんじゃねえか? ガキはガキらしい方が好みだぜ」

 

 

 

「……意外だ。貴方は俺のような奴が嫌いだと思っていたが」

 

 

 

「スカしたガキは嫌いだってだけよ」

 

 

 

 へっと笑うミケロにそれはそれでどうなのだ、と顔を歪めるレイだが口には出さない。

 

 

 

 後ろのほうではイザーク達三人が服を吟味するふりをしながらこちらを尾行している。

 

 

 

「…お前は服を買わねえのか?」

 

 

 

「俺たちは護衛だからな。それに服なんて興味はない」

 

 

 

「ダメダメだな、おめえ。良いか? 元はそれなりの顔をしてんだ。惚れた女にアピールするんなら、服にも気を使いやがれ」

 

 

 

「…何の話だ?」

 

 

 

「メイリンて嬢ちゃんが、気に入ってんだろ?」

 

 

 

「違うと言ってるだろ」

 

 

 

「ああ? どう見ても……!」

 

 

 

「違う」

 

 

 

 表情を消し、静かに告げるとミケロは肩をすくめて言った。

 

 

 

「ああ、そうかい。ま、それで良いなら良いんじゃねえか?」

 

 

 

「真面目に聞け、ミケロ!」

 

 

 

 真剣に抗議するレイにミケロは静かに返す。

 

 

 

「おい、レイ。嬢ちゃんたちが先に行こうってよ」

 

 

 

「……お前な!!」

 

 

 

 ミケロは、頬を微かに染めて真剣な顔で言ってくる反応を楽しんでいるだけなのだが、それに気付かないレイであった。

 

 

 

 そんな一行の下に変化が訪れた。

 

 

 

 それは、一つの丸い球だった。

 

 

 

 ハンドボールくらいの大きさの赤色をしたマスコット型ロボットが現れたのだ。

 

 

 

「ハロ!ハロ!Excuse me!Do understand?」

 

 

 

「ハロ?」

 

 

 

 突如登場した赤いロボットにこちらのピンク色の同型ロボットが反応する。

 

 

 

「これは、ミーアのアカちゃん!」

 

 

 

 手を叩いて出迎えるラクス。

 

 

 

 その広げられた両手の中に赤い球型ロボットーーハロが飛び込む。

 

 

 

「……」

 

 

 

 その口に挟まれた手紙を見たとき、ラクスの目が鋭く細まった。

 

 

 

「ラクス・クライン! 迂闊に触らないでください!!」

 

 

 

 思わず駆け寄るレイにラクスは静かに手紙を手渡す。

 

 

 

「ーー?」

 

 

 

「どうやら、動いてくれたようですわね」

 

 

 

 怪訝に思いながらも手紙に目をやり、見開くレイの反応を見てラクスは微笑む。ミーアの手紙には 『助けて殺される!ラクス様!』 とだけ記されていた。

 

 

 

「…思いっきり罠ですね」

 

 

 

「マジかよ。いっそ清々しいな」

 

 

 

 メイリンの言葉にミケロも確認して、肩をすくめる。

 

 

 

 隣ではピンクハロと赤ハロが追いかけっこを始めていた。

 

 

 

 それを見るラクスの口元は穏やかな笑みを刻み、その瞳は激しい怒りの炎を燃やしている。

 

 

 

「ミーアを罠に使うなんて……。分かってはいても、腹が立ちました」

 

 

 

「………っ!!!」

 

 

 

 その怒り方に思わず身を引くレイ。何気にミケロも一歩、ラクスから距離を取る。

 

 

 

 それほどの迫力だった。

 

 

 

 ここまでの話でメイリンが思わずラクスに問いかける。

 

 

 

「ラクス様、ミーアさんて言うのが?」

 

 

 

「わたくしのせいで人生を議長に利用された女性です」

 

 

 

 強い瞳で言うラクスに思わずメイリンが目を見開く。

 

 

 

「ミーア・キャンベル、議長のラクスだ。ラクス・クライン、貴女とメイリンはイザーク達と共に帰還してください。ここからは我々のーー!」

 

 

 

「……メイリンさん、イザーク隊長たちと共に行動してください。ここからは危険ですから」

 

 

 

「…いや、ラクス? 貴女もーー!」

 

 

 

 そう告げようとするレイにそれ以上言わせないように胸を張り、肩で風を切るようにして車に歩き出すラクス。

 

 

 

 その顔はもう、誰の言葉も聞かないとはっきり分かるほどに強烈な意志が張り付いている。

 

 

 

「仕方がない、メイリン。お前は早くーー!」

 

 

 

「一緒に行くよ、レイ」

 

 

 

「お前まで何を言ってるんだ! 危険なんだぞ!!」

 

 

 

 気負いも何もない口調に思わず、肩を掴んで言うレイ。

 

 

 

 メイリンは大切なミネルバの仲間だ。

 

 

 

 ルナマリアの妹だ。

 

 

 

 レイにとってのミネルバとは、彼女も含めたクルー達全てなのだ。

 

 

 

「頼む、メイリン!! 戻ってくれ!!」

 

 

 

 今にも泣き出しそうな、そんな顔で言うレイの手を掴んでメイリンは微笑む。

 

 

 

「レイ、ごめんね? でも、レイだって私の言うこと聞いてくれないんだもの。私だけ聞いてって言うのはおかしいよ?」

 

 

 

「メイリン…!!」

 

 

 

 優しい目で温かい微笑みで、しかしメイリンはレイの申し出を却下する。

 

 

 

「ねえ、レイ。どうして、私に来てほしくないの? 私が大切だから?」

 

 

 

「当たり前だ!! お前は、俺の大事な仲間だ!!!」

 

 

 

 頬を赤く染め、潤んだ瞳で問いかけるメイリンにはっきりと力強く宣言したレイ。

 

 

 

 その後のメイリンの変化は劇的だった。

 

 

 

 先まで可愛らしい表情ながらも女を感じさせていた表情が一変して能面のような無表情に変わるとしっかりとレイの袖をつかんだのである。

 

 

 

「え? え?」

 

 

 

 メイリンの表情の変化の意味が分からず戸惑うレイ。彼にかまわず、力づくでメイリンは車に戻るとラクスと顔を合わせ頷き合い、助手席に座りなおすラクスに軽く頭をさげた後、レイを後部座席に連行した。

 

 

 

「ど、どうしてこうなる?」

 

 

 

 最初とまったく同じ座席位置だが、メイリンのほうは頬を膨らましてレイから顔をそむけてしまう。

 

 

 

 ただしその両腕はレイの左腕をガッチリと掴んで離さない。

 

 

 

 その様を半分あきれながらも面白そうにバックミラー越しに見据え、ミケロは車を走らせる。

 

 

 

 その後ろをイザーク達の車が付いてきていた。

 

 

 

 ミーアの手紙と共にあったのは簡単な手書きの地図。

 

 

 

 それは持ち主の分からない今は閉鎖されたコンサート会場だった。

 

 

 

 建物の前に車を止め、ラクスたちがおりる。

 

 

 

 そのすぐ後ろにイザーク達も付いてきた。

 

 

 

「ここまで来たら尾行の必要もあるまい」

 

 

 

「とっとと、助けちまおうぜ!」

 

 

 

「油断は禁物よ! 相手はデュランダル議長なんだから!」

 

 

 

 イザーク、ディアッカ、ミリアリアの言葉に頷き、ラクスはレイ、メイリン、ミケロを見据える。

 

 

 

「力を貸してください。わたくしの妹を助けるためにーー!!」

 

 

 

 場にいる皆が頷いた。

 

 

 

 

 

 一方でこれを確認した工作員の男が車に向かって走る。

 

 

 

 車載用無線機で連絡したのは、つい先日に三人の化け物に占拠されてしまったピザ屋のアジトだ。

 

 

 

 ラクス・クラインを見つけたはいいが、ただならぬ雰囲気で廃墟と化した会場に向かっていくのを確認した彼はこのままだと手遅れになると判断し、急いで通信を入れながら告げた。

 

 

 

「こちらアルファ! 目標が廃墟になったプラントドームに入っていった! 繰り返す!!」

 

 

 

 男の無線が路地裏に響き渡っていた。

 

 

 

 




 ついに再会をはたすラクスとミーア。

 ミーアにかけられた催眠術は強力で執拗にラクスを殺そうと狙ってくるのです!

 ミケロとレイ、イザークとディアッカによってなぎ倒される工作兵達。

 しかし、倒された彼らは悪魔の細胞によって作り変えられていくではありませんか!!

 次回、機動武道伝GガンダムSEED Destiny 第84話に!

 レディー、ゴー!!

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