新機動武闘伝 GガンダムSEED Destiny   作:カンナム

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 みなさん、前回のお話でデビルガンダムの自我であり生身の肉体であったDという青年が命を落としました。

 しかし、追撃の手は未だにやむことはありません。

 その場に駆け付けたのは、マスターとチャップマン。

 彼らの言葉にミーアが闘う覚悟を決め、深紅の球を掲げるではありませんか!!

 それでは!
 
 ガンダムファイト!!

 レディイイイイイ、ゴォオオオオオッ!!!



第85話 ミーアの声 出ろ、デビルガンダム

 あいつに初めて会ったのは、ラクス様の姿になった時だ。

 

 

 

 議長が私の顔を見てラクスだと、言ってくれたその横にあいつは立っていた。

 

 

 

 背が高くて燃えるような赤い髪で、無駄な肉のない屈強そうな体をした野性味溢れる整った顔立ち。

 

 

 

「彼のことはDと呼んであげてくれ。しばらくは君のボディガードをしてもらうことになるだろう。色々な常識が欠けているのが玉に瑕だが、それも君が教えてあげてくれれば良い」

 

 

 

「ボディガード、ですか?」

 

 

 

 未だ飲み込めず見上げてしまう。

 

 

 

 ボディガードなら数名、すでにマネージャーから紹介されていたからだ。

 

 

 

「D、挨拶をしたまえ」

 

 

 

 議長が告げるとそいつは私を見下ろしてきた。

 

 

 

 無感情な紅の瞳が私の目に合った時、胸が鳴った。

 

 

 

「好きに呼べ、我に名は無い。ところで、デュランダル。何故こんな小娘に我の教育をさせる?」

 

 

 

 小娘という言葉に腹が立った。

 

 

 

 もっと私を見なさいよ!

 

 

 

 何故か、私はそう言いそうになった。

 

 

 

「彼女は、様々な教育をこれから受ける。君も共に受けておけば一石二鳥だよ、D」

 

 

 

「……ふん」

 

 

 

 議長にも普通に話すそいつに、私は目を丸くした。

 

 

 

 まるで自分と議長は対等だとでも言いたいのだろうか。

 

 

 

 思えば、これがこいつとの出会いだった。

 

 

 

 弱音も吐いた。

 

 

 

 いろんなことを話したような気がする。

 

 

 

 どうしてだろう?

 

 

 

 こいつは最初から私をラクスとしてでも、ミーアとしてでもなく。

 

 

 

 ただの小娘としか扱わなかった。

 

 

 

 だからなのかな?

 

 

 

 どうせ言っても気にもしないって思ってた。

 

 

 

 だからーー何を言っても振り向かせられないんだってーー。

 

 

 

 でもーー!

 

 

 

ーー ミーア・キャンベルは不要な者ではない。我にとってかけがえない存在だった。命をかけるに値する程にはな貴様は言ったな? ラクスとして認められたいと。ミーアは誰にも必要とされないと。だが貴様はラクスに認められているではないか。必要とされているではないか --

 

 

 

 卑怯だーー!

 

 

 

 だってーー!

 

 

 

 だって貴方、私に興味ないって顔してたじゃない!!

 

 

 

 興味ないから私が話しかけてもつまらなそうにしてたじゃない!!

 

 

 

 なのにーー!

 

 

 

 最後の最後で!!

 

 

 

 何も聞かずに、何も言わずに!!

 

 

 

 私の目の前でーー!!

 

 

 

「D--! 私、貴方を許さない!!」

 

 

 

 

 

 

 

 転がった深紅の球をそっとミーアは拾い上げる。

 

 

 

 涙を流しながら。

 

 

 

 両手でしっかりと掴んで。

 

 

 

「ミーア!」

 

 

 

 ラクスの声が遠い。

 

 

 

 皆の声が遠い。

 

 

 

 感覚がまるでーーない。

 

 

 

 心がマヒしてしまったかのように、痛みも何も感じない。

 

 

 

 あるのはーー喪失感だけ。

 

 

 

「おい、レイ・ザ・バレル! 今はこの場から脱出することを先決したい!! 彼女を連れていけるか!?」

 

 

 

「わかりました!!」

 

 

 

 レイがイザークの言葉に頷いて、ミーアの腕をつかむ。

 

 

 

 それを彼女はあっさりと振り払った。

 

 

 

「ミーア・キャンベル!?」

 

 

 

「……貴方、確かレイーーだったわよね? どうして?」

 

 

 

「え?」

 

 

 

「貴方が殺したの?」

 

 

 

「違う! D様は!!」

 

 

 

 言おうとしてミーアの憎しみに染まったアイスブルーの瞳に睨みつけられ、思わずレイは口を閉ざした。

 

 

 

 彼女をデュランダルに選ばせたのは、自分だったからだ。

 

 

 

「議長の秘書だったわよね。あの女ーー! 貴方も議長のーー!!」

 

 

 

 思わずたじろぐレイの前に現れたのはラクスだった。

 

 

 

「ミーア! 聞いてください!! 彼はーー!」

 

 

 

「どうして殺したの? なんで、Dを殺したの!!?」

 

 

 

「ミーア!!!」

 

 

 

 流れる涙をそのままにしてミーアが詰め寄ろうとするのをラクスが両肩を掴んで止めた。

 

 

 

「彼は議長の行いがおかしいと思ったから、わたくし達と行動を共にしているんです! ミーア!!」

 

 

 

「ミーア・キャンベル。確かに俺は議長のーーギルバート・デュランダルの片腕だった。だからこそ、俺は間違った道を歩む彼を止めなければならない。その為にD様の力を利用したと言うなら、そうなのだろうな」

 

 

 

「レイさん!」

 

 

 

 静かにレイは、ラクスを横にどかしミーアの瞳を正面から見据える。

 

 

 

 ミーアはその瞳を睨みつけた。

 

 

 

 そしてーー両手持ちにしていた深紅の球を左手に持ちかえると右手で拳銃を構える。

 

 

 

「! ミーア!!」

 

 

 

「レイ!!」

 

 

 

 ラクスとメイリンの悲鳴が響く。

 

 

 

 ミーアの目はそれほどまでに憎しみに彩られている。

 

 

 

「おいおいおい! こんな状況で仲間割れしてる場合かよ!!」

 

 

 

「……ミーアさん、だったわよね? 悪いけど、今は仲間内で揉めてる暇はないわ」

 

 

 

「ここを無事に逃げ延びなければDとやらが命を懸けたことが無駄になる。君はそうしたいのか?」

 

 

 

 ディアッカ、ミリアリア、イザークの言葉にミーアの目がいよいよ何の感情も映さなくなる。

 

 

 

「ラクス様、私どうしたらいいの?」

 

 

 

「わたくしと共に来てください。一緒にーー!」

 

 

 

 ラクスの真摯な声に、ミーアは笑みを浮かべた。

 

 

 

 涙をぬぐいもせず。

 

 

 

 瞬きもせずに。

 

 

 

 狂ったように、壊れたように彼女は笑っている。

 

 

 

「色が無いのーー。みんな白黒に見えるーー。なんにも考えられない。ただねーー、私。私、どうしても許せないの。何でDが死んで、アンタが生きてるのよ!?」

 

 

 

 言いながらミーアの眦が吊り上がる。

 

 

 

「Dは死んだのに、何でアンタが此処に居るのぉおっ!!」

 

 

 

 その言葉を聞いたミリアリアの表情が大きく歪んだ。

 

 

 

 今のミーアは、あの時の自分。

 

 

 

 トールが殺されて、ディアッカに出会ったあの時の。

 

 

 

「ディアッカ、イザーク!!」

 

 

 

 2人はミリアリアの言葉に反応し、機関銃を捨て護身用の銃でミーアの腕を狙う。

 

 

 

 レイは静かに瞳を閉じた。

 

 

 

(すまない。シン、ルナマリア。俺はーー!)

 

 

 

「アンタも殺してやる!! 死ねえぇえええええ!!」

 

 

 

「やめなさい、ミーア!!」

 

 

 

 止めようと腕を掴むラクスの制止の声が響く。

 

 

 

 イザークとディアッカが同時に銃を構える。

 

 

 

 それよりも早くメイリンがレイの前に両手を広げて立った。

 

 

 

 レイがメイリンの肩を掴んで下がらせようと手を伸ばす。

 

 

 

「! メイリンッ!!」

 

 

 

 3人の引き金が引かれようとした時ーーミーアの左手に握られた紅の球が輝きだした。

 

 

 

ーー うるさい奴め、我はオチオチ寝てもいられんのか。何をとち狂った真似をしている、ミーア ーー

 

 

 

 その声にミーアだけではなく、この場にいる全ての人の動きが止まった。

 

 

 

「……D……!?」

 

 

 

 思わず首を左右にやり、周囲を見回すミーア。

 

 

 

 その隙にレイが彼女の目前に立ち、右手から拳銃を取り上げた。

 

 

 

 ミーアの足から力が抜け、腰を地面に下す。

 

 

 

 イザーク達が警戒しながら自分に近づいてくるのを無視して、彼女は左手の球に語りかけた。

 

 

 

「D、なの…?」

 

 

 

 瞬間、紅の球が輝きその中に赤い髪の青年が顔を出す。

 

 

 

ーー ふん。どうやら自我の破壊までには至らなかったようだな。不幸中の幸いってやつか -- 

 

 

 

 自嘲じみた笑みを浮かべている彼は正にミーアの求めた青年だった。

 

 

 

「D、さまーー! ご無事だったのですか!?」

 

 

 

 メイリンを後ろにかばいながら、思わず告げるレイにDは憮然とした表情で見返す。

 

 

 

ーー 無事に見えるか? 文字通り手も足も出ぬわ --

 

 

 

 言いながらDはレイに向かって語り掛ける。

 

 

 

ーー とりあえずマスターアジア達と合流するぞ。とっとと我の肉体を新調せねばならん --

 

 

 

「分かりました、それでは俺とD様はここで?」

 

 

 

 後ろでメイリンの眉が険しくなっているのを知らずにレイは淡々と準備を始める。

 

 

 

ーー ああ。世話になったな、ラクス。ドモンへの伝言は無用のようだ。我は必ず復活する --

 

 

 

 邪悪に笑って言うとDの顔を映し出す球はミーアの手を離れ、宙に浮かびあがり、レイの下へ行こうとして。

 

 

 

 失敗した。

 

 

 

ーー ぬ!? --

 

 

 

 思わず目を見開くDとレイ。

 

 

 

 しっかりと球体を捕まえる白い両手がある。

 

 

 

 そのままDはミーアの豊かな胸元へ抱きかかえられていた。

 

 

 

ーー 何のつもりだ? 我は遊んでる暇はない。さっさと体を取り戻してデュランダルを倒し、ドモンとーー否ゴッドガンダムとの決着を付けねばならんのだ。分かったら、手をはな……っ! --

 

 

 

 いつもどおりに淡々とした口調で言おうとしてDは何か悪寒を感じ、思わず口を閉ざした。

 

 

 

 レイやイザーク達を見れば、悪寒を感じたのはDだけではないようだ。

 

 

 

「言いたいことは、それだけ? D--?」

 

 

 

 口元が穏やかな笑みを刻んでいる。

 

 

 

 先ほどまであった憎しみの光は瞳から消え、ただただーー光が失せた瞳がDを見下ろしている。

 

 

 

ーー な、何だよ……! --

 

 

 

 思わずそんな口調になったDをレイは責められない。

 

 

 

「何だ、ですってーー!?」

 

 

 

 ミーアの眦が吊り上がり、口が開いた瞬間だった。

 

 

 

 会場の頑強なコンクリートフェンスをぶち抜いて、拳法着を纏った壮年の男とトレンチコートを羽織った紳士が無数の敵を殴り飛ばしながら現れた。

 

 

 

「マスターアジア! チャップマン!」

 

 

 

 レイの言葉に無数のゾンビ兵を薙ぎ倒しながら、マスターとチャップマンがこちらを振り向く。

 

 

 

「何だ? まだこの辺りをうろついておったのか、レイよ」

 

 

 

「? デビルガンダムは何故ガン玉になっている?」

 

 

 

 マスターがレイに、チャップマンが球の状態になったDに向かって話しかける。

 

 

 

ーー ちょうど良いところに来た。手を貸せ、貴様ら。今すぐに我をこの女から救い出せ!! -- 

 

 

 

 Dの淡々とした表情に似合わない結構必死な感じの言葉にマスターとチャップマンが訝し気にミーアと彼を見比べる。

 

 

 

「……D、私から逃げられると思ってるの?」

 

 

 

ーー 貴様、いつからそのようなプレッシャーを放つようになった? --

 

 

 

 鬼のような形相で睨み下ろしてくるミーアにDが思わず言う。

 

 

 

「レイよ、説明せぃ。何故、Dはガン玉の状態になっておる?」

 

 

 

 マスターの言葉に一つ頷き、レイが淡々と説明した。

 

 

 

「……彼女を庇ってDG細胞を殺す弾丸を受けた為だと思います。肉体がそれにより崩壊した為、D様はとっさにガン玉になることで自我の崩壊を防いだのではないかと」

 

 

 

「ほう? つまり、その娘を庇ったが故に攻撃を受け、そのような体たらくをさらしておるわけか?」

 

 

 

 マスターアジアの言葉にDが睨みつける。

 

 

 

ーー 何が言いたい? マスターアジア ーー

 

 

 

「何、簡単なことよ。自分の惚れた娘1人守れんで人類すべてを相手取るなど、笑止千万!! 腕前はともかく、人間としては未熟も未熟よ!!」

 

 

 

 マスターの力強い宣言にぐうの音も出ないDである。

 

 

 

ーー 成長する為にも、さっさと肉体を新調させたいから助けろと言っているんだ ーー

 

 

 

 何処か拗ねたようなDの言葉にマスターがふん、と鼻で笑う。

 

 

 

「Dよ、貴様はまず惚れた女子を説得することからせねばならんな」

 

 

 

ーー なんだと? ーー

 

 

 

 完全に面食らっているDに更なる追い討ちがチャップマンからかけられる。

 

 

 

「俺たちならば、確かにそこのお嬢さんから貴様を奪うのは容易い。だが、自分の女も守れん甲斐性なしが俺たちの大将ではつまらん」

 

 

 

「然り。世界全てを相手取ると言うのであれば、まずは己の守るべきものを守り抜く覚悟と器量を見せよ! 女子一人守れんでなぁにが、人類の敵ぞ!! 凡人が出来ぬことをやり遂げてこそ、真の王ではないか!!」

 

 

 

 無茶な論理にレイが思わず反論する。

 

 

 

「いや、流石にそれは危険過ぎる。何より、人類の敵になる俺たちに民間人とも言える彼女を巻き込むなんて真似をーー!」

 

 

 

「レイよ。だぁからお前は、アホなのだ!!」

 

 

 

「ーーなっ!?」

 

 

 

 理屈と見解を説明しようとして、あっさりと砕かれる。

 

 

 

「良いか、貴様ら! 身の丈を己で決めてどうする!?」

 

 

 

「ーー限界とは自分で線を引くものではない。まして己の命を賭して守るべき相手を迎えられぬ小さな男に、何かを成し遂げることができるか? 増上慢になれとは言わん。彼女たちの願いとその重さを理解し、困難であることを覚悟した上で正面から受け止めろと言っている」

 

 

 

「仮に娘たちを手元から遠ざけ、本懐を成し遂げたとしてその後はどうする!? 貴様らを待つ健気な娘を置いて勝手にのたれ死ぬか!? 彼女らを不幸にするか!? そんなことで何とする!? 見事娘たちを手に入れ、幸せにしてみせんか、この馬鹿者ども!!」

 

 

 

 チャップマンとマスターの言葉に、一同何も言えずに固まる。

 

 

 

 イザークやラクスは、何処か関心しているようだった。

 

 

 

「ーーたとえ、その時は辛くても。生きてさえいれば、違う形の幸せがある。俺がシュバルツさんに出会えたように、だ」

 

 

 

「レイよ、そのような当たり前の話をわざわざする時点で貴様は己の限界を決めているのだ」

 

 

 

「ーー!」

 

 

 

「良いか、者共!! ワシらが歩むは鬼道。そのような危険極まりない道に大切な者を巻き込みたくないという貴様らの気持ちは分かる!! だが、そのような初めから後ろ向きな事で何になる!? 守るべき者が傍に居るからこそ、どのような道も突き進む事ができると知れい!!」

 

 

 

 マスターの力強い言葉にレイは呑まれていた。

 

 

 

 彼の語る言葉は、理屈じゃない。

 

 

 

 正に理屈じゃないから話せるのだ。

 

 

 

 だが何故だろう?

 

 

 

 彼が言う事が正しいような気になる。

 

 

 

( 俺が間違えているとは思わない。あれは強者の論理だ。力ある者だからこそ、言うことができるものだ。俺とは違う)

 

 

 

 頭の中でそのように整理しているとDが叫んだ。

 

 

 

ーー 今は、そんなどうでも良い話をしている時ではないはずだ!! さっさとこの場を脱出するぞ!! ーー

 

 

 

 その言葉に皆がそう言えばと気を取り直す。

 

 

 

 あまりにもマスターやチャップマンのインパクトが強過ぎて色々と吹き飛んでしまったのだ。

 

 

 

 同時に闘場と化していた廃コンサート会場が、音を立てて崩れる。

 

 

 

「銀色の、脚ぃいいいっ!!」

 

 

 

 裂帛の気合いと共に青い光が足先から放たれ、サラを取り込んだザクを弾き飛ばす。

 

 

 

 軽々と上半身を消しとばされるザクだが、すぐさま再生を始める。

 

 

 

 見れば黒と赤のザクは下半身の足裏からコードを伸ばし、プラントと一体化していた。

 

 

 

 倒されても倒されても、ビデオの逆再生のように復元されていくザクの姿。

 

 

 

「ーーああ、ウンザリするぜ! 何回も何回も復活しやがって!! おまけにザクどもを召喚する能力までありやがる!!!」

 

 

 

 ミケロの駆るネロスガンダムは、今の所苦戦らしい苦戦はしていない。

 

 

 

 全てにおいてサラであった異形のMS達を上回っている。

 

 

 

 ただし、敵の再生力と増殖力に辟易してはいたが。

 

 

 

「ほう? ミケロが手こずるとはな」

 

 

 

「実力差は歴然としておるが、やはりDG細胞は侮れんか。力を暴走させることでかつてランタオ島で現れたデビルガンダムと同等の自己再生と増殖を繰り返しておる」

 

 

 

 チャップマンが鋭い光を讃えた瞳で言えばマスターアジアが炎を瞳に宿して言う。

 

 

 

「テメエら、まだ居やがったのか!? とっとと離れねぇと俺様の一撃に巻き込まれて死ぬぜ?」

 

 

 

 そう告げるミケロにガン玉と化したDが呟く。

 

 

 

ーー その様でよく吠える。大方、敵の再生力を侮ってそこまでの能力を持つほどに自己進化を許したのだろう? --

 

 

 

「デビルガンダム? 何だぁ、テメエ。何でガン玉になってやがる? まさか、やられやがったのか?」

 

 

 

ーー だったら何だ? --

 

 

 

 憮然とした表情になるDにミケロが大笑いを始めた。

 

 

 

「テメエこそ、何だそのザマは!? 笑わしやがる!!」

 

 

 

ーー やはり貴様から殺すか --

 

 

 

 などとDと語り合うミケロに触手やロングライフルーーオルトロスの一撃が迫る。

 

 

 

「けっ!」

 

 

 

 吐き捨てると同時に右足を掲げ、光を放って消し飛ばした。

 

 

 

 同時に扇状に放たれた光は、無数のザクを貫いて爆発させる。

 

 

 

 しかし、残骸はすぐにその場で新しいザクに精製されていく。

 

 

 

「キリがねえ!!」

 

 

 

 思わず毒づくミケロにチャップマンが目を細めながら言う。

 

 

 

「DG細胞の生体ユニットとして、女性というのは素晴らしい相性らしいからな」

 

 

 

「ミケロよ、手を貸そうか?」

 

 

 

 マスターアジアがその隣から告げるとミケロの眦が吊り上がった。

 

 

 

「ナメんなよ? この程度の雑魚、俺様一人で叩き潰す!! テメエらはさっさとそこの役立たずのデビルガンダムと女庇って動けないレイを連れて失せろ!!」

 

 

 

 そう言い捨てるミケロにマスターアジアは面白いものを見たように目を細めた。

 

 

 

「ふん。あのミケロが誰かを庇うとはな」

 

 

 

 にやりとするマスターアジアの横でミーアが警戒したように睨みつけている。

 

 

 

「娘ーー確か、ミーアと言うたか?」

 

 

 

「な、何よ!」

 

 

 

「ワシ等としてはお前たちを守りながらの戦いと言うのは性に合わん。おぬしの持つ球、それを使ってこの場を切り抜けてくれぬか?」

 

 

 

「……どういうこと?」

 

 

 

 マスターアジアの言葉にチャップマンがニヤリとした後、紳士的な表情になってミーア達に告げる。

 

 

 

「簡単なことだ。その球は我々の王ーーデビルガンダムが変化したもの。それを召喚し、君たちはデビルガンダムのコクピットに乗って船に向かえばいい。君たちが脱出してくれれば、俺たちも本気をだすことができるからな」

 

 

 

 この言葉にディアッカが皆の顔を確認しながら言った。

 

 

 

「……どうする? 人類の敵の言うことを聞くか?」

 

 

 

「この場で敵対するつもりなら、とっくに戦っているだろう。おそらくは大丈夫だと思うが」

 

 

 

「問題はそれを使って脱出した後、よね?」

 

 

 

 イザークとミリアリアが応える。

 

 

 

「どういうことですか?」

 

 

 

「簡単なことです。わたくし達が無事に脱出できたとしても、コペルニクスにDG細胞がある限り宇宙にまであの触手は追いかけてきます」

 

 

 

 メイリンの疑問にラクスが応えた。

 

 

 

 ミーアがジッと強い目でマスターアジアを見据える。

 

 

 

「デビルガンダムってDのことよね? あいつの力なら、この場を切り抜けられるの?」

 

 

 

「そのとおりだ。物分かりが良い。球を持ち、天に掲げよ」

 

 

 

「……分かった。皆、私の周りにいて!」

 

 

 

 マスターアジアの言葉に頷いてミーアが深紅のガン玉を右手に持って掲げる。

 

 

 

ーー ま、待て!! 我の機体(からだ)をどうするつもりだ!? --

 

 

 

「生体コアが無ければデビルガンダムは動かん。ならば、ミーアという娘をコアとして認識させれば貴様も動けよう? この場くらいつべこべ言わずに載せてやらんか」

 

 

 

ーー ふざけるな! 我が何故ただのガンダムと同じような真似をせねばならん!! --

 

 

 

「そのような戯言は、ミーア達を守り抜いてからほざかんか!! この役立たずめがぁ!!!」

 

 

 

 マスターの一喝の後、チャップマンが呟く。

 

 

 

「そもそも、ガン玉になったのは誰の落ち度であったか?」

 

 

 

ーー 覚えていろよ、貴様らぁあああああっ!! --

 

 

 

 この動きにDGザクの相手をしていたミケロが気付き笑う。 

 

 

 

「良いザマじゃねえか!! 傑作だぜ、デビルガンダムよぉ!!」

 

 

 

 四天王たちからの仲間ーーいや、部下とは思えない辛辣な言葉を受けてDはガン玉の中で歯ぎしりする。

 

 

 

 そんなDに向かってミーアが周りのザク達を見回しながら催促する。

 

 

 

「D! 早く何とかしてよ!!」

 

 

 

ーー ならば、呼べ --

 

 

 

「え? 呼ぶって?」 

 

 

 

 にべもなく告げるDの言葉に要領が得ず、思わず問い返すと隣からラクスがミーアに耳打ちをした。

 

 

 

「ーーですわ」

 

 

 

「え? そ、そんなのでできるんですか?」

 

 

 

 困惑するミーア。

 

 

 

 その周りを次々とデビルザクが包囲していく。

 

 

 

「ええ。さ、ミーア。早く!」

 

 

 

「わ、分かりました!!」

 

 

 

 眦をキリリと引き締めて、コホンと一つ咳払いすると迷っている暇はないとミーアは天に向かって叫んだ。

 

 

 

「出てちょうだいっ! ガンダァアアアアアムッ!! --で、いいのかしら?」

 

 

 

 瞬間、血のように紅い光がガン玉から発せられ、辺りを照らし出す。

 

 

 

 光が晴れたと同時にミーア達が見たものは、コクピットの中だった。

 

 

 

 外部モニターにて自分の機体を確認すれば、20メートルを優に越えるMSにしては強大な体格。

 

 

 

 仏像を思わせる丸みのある白い顏。

 

 

 

 巨大な赤い翼を持った機体ーーデビルガンダムそのものだ。 

 

 

 

「な、何だ? この操作体系は? どうやって動かす!?」

 

 

 

 イザークが思わず360度と上下を見回して言う。

 

 

 

 すべてが肉眼で確認できるコクピット。

 

 

 

 操作パネルもペダルもない。

 

 

 

 ただ広いだけのコクピットスペースは、MS乗りであるイザークとディアッカ、軍所属であるメイリンには驚愕のシステムだった。

 

 

 

『フン。どうやら全員コクピットに転送できたようだな』

 

 

 

 Dの声が響き渡る。

 

 

 

「これがーーシュバルツ殿と同じMFのコクピットか」

 

 

 

 レイが思わず感慨深げに言葉を口にした。

 

 

 

「おい、ちょっと待て! MSに狙われてるぞ!!」

 

 

 

「え? うそ!?」

 

 

 

 ディアッカの言葉に思わずミーアがそちらを向くと、オルトロスライフルを構えたデビルザクが数機、こちらに向かって砲撃を放ってきた。

 

 

 

 思わず目をつむり両手で顔をガードするミーア。

 

 

 

 同時にデビルガンダムもミーアの動きをトレースして顔を庇う。

 

 

 

 光をあっさりと防ぐ両腕。

 

 

 

 衝撃はあるが、それほどのものでもない。

 

 

 

 ダメージは軽微であると脳裏に直接データが流れた。

 

 

 

「こ、これってーー私の思う通りに動くの!?」

 

 

 

 虫でも払うように手を動かすと、ビーム砲は弾かれてそのまま放ってきたザク達を貫いた。

 

 

 

ーー ああ。そのようだな。何ということだ。このデビルガンダムが、素人同然の小娘に操作権を奪われているなんてな。くくく --

 

 

 

 絶望したようなDの声が響いている。

 

 

 

 何気にここまでDがショックを受けているのは初めての事なのだが、状況が状況だけにミーアも気づいていない。

 

 

 

 目の前に敵のMSが迫っている。

 

 

 

「うそ!!」

 

 

 

ーー おい、さっさと蹴散らせ! --

 

 

 

 Dの声にミーアの頭の中に何かがひらめく。

 

 

 

「! 暴ぅううう裂っ! デビィイイイイルフィィンガァアアアアッ!! --でいいのよね?」

 

 

 

 そう叫んだと同時にデビルガンダムが勝手に動き出す。

 

 

 

 右手が蒼紫の炎を纏って燃え、胸部カバーが開いてエネルギーマルチプライヤーが深紅に輝く。

 

 

 

 それを正拳突きの様にして前方に突き出したとき、目の前に迫っていたザクは跡形もなく消えて行った。

 

 

 

「な、何てでたらめな威力だよ…っ!!」

 

 

 

 ディアッカが思わずそう漏らす。

 

 

 

 あまりの力にイザーク達が黙っていると、ミーアの口元に笑みが浮かんでいた。

 

 

 

「ふ~ん。そうなんだ。これなら、私。戦えるわね」

 

 

 

ーー おい、ミーア? 貴様何を? --

 

 

 

 Dの言葉を無視して、ミーアは言った。

 

 

 

「いい加減、この訳のわかんない状況にいらついてきたのよ!! 悪いけど、D! 力を借りるわよ!!」

 

 

 

ーー おい!! --

 

 

 

 素人なりに何故かサマになるファイティングポーズを取ってミーアは言った。

 

 

 

「デュランダル議長に目にモノ見せてやるんだからっ!!」

 

 

 

「ミーア。敵をある程度殲滅できれば、わたくし達のドックにむかってくださいね」

 

 

 

「了解です、ラクス様!!」

 

 

 

 二人の少女の心強過ぎる言葉にこの場にいたほとんどの者は呆然としている。

 

 

 

「……これくらい強引な方がいいのかな?」

 

 

 

「相手にもよると思うわよ、メイリンちゃん」

 

 

 

 真剣な表情で二人の桃色の髪の少女を見据えて、つぶやくメイリンに思わずミリアリアが告げた。

 

 

 

 圧倒的な力を前に、サラであったDG細胞の塊は跡形もなく燃やし尽くされていった。

 

 

 

「……俺様がせっかく巻き込まねえようにと、加減してたってのに。こいつらぁ」

 

 

 

 後にミケロがネロスガンダムのコクピットで誰に知られることもなく、そんなことをつぶやいていたそうである。

 

 

 

 

 




 みなさん、お待ちかね~!!

 デビルガンダムの力で場を強引に乗り切ったラクス達。

 Dの復活を行うには、デュランダルの持っている廃墟コロニー・メンデルへと向かう必要があります。

 しかし、ラクスはそれよりも確実な方法があるとオーブに対して連絡を取るのです。

 次回!

 機動武道伝GガンダムSEED Destiny 第86話に!

 レディー、ゴー!!
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