新機動武闘伝 GガンダムSEED Destiny   作:カンナム

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 さて、皆さん。
 
 わたくしの世界で第13回ガンダムファイトにて初めて行われた試合。

 それがネオジャパンのドモン・カッシュとネオイタリアのミケロ・チャリオットとのファイトでした。

 彼らのファイトからガンダムファイト大会が始まったのです。

 そんな彼らの因縁に決着を付ける今回の対決。

 果たして、どのようなファイトを見せてくれるのか!?

 それでは、ガンダムファイト!!

 レディイイイイイ、ゴォオオオオオオオッ!!


第87話 因縁の決着 ゴッドガンダム対ネロスガンダム

 

 ガンダムと呼ばれる角とデュアルアイ、マスクを持つ顔の機体。

 

 

 

 青き翼と自由の名を持つそのガンダムのコクピットに、キラ・ヤマトは座っていた。

 

 

 

「これが……明鏡止水の境地。やっと君の力の全てを使えるようになったね、フリーダム」

 

 

 

 キラの呟きに応えるように黄色のデュアルアイが光る。

 

 

 

 それにキラも頷いた。

 

 

 

 同時、ビームソードを腰から居合斬りのように引き抜くフリーダム。

 

 

 

 瞬間、空に火花が散る。

 

 

 

 桃色の光の刀身がぶつかり合う。

 

 

 

 目の前には紅いガンダム。

 

 

 

 インフィニットジャスティスが居た。

 

 

 

「いくぞ、キィイイイラァアアアアアアッ!!」

 

 

 

「ア、ス、ラァアアアアアアアアアアンッ!!」

 

 

 

 強烈な大気のぶつかり合い。

 

 

 

 ソニックブームを巻き起こしながら、二機のガンダムはその場から姿を消す。

 

 

 

「どうした、キラ!! こんな動きでウルベが倒せるかぁああああっ!!」

 

 

 

「アスラァァアアアアンッ!! 僕は、二度と負けない!! そう誓ったんだぁああああっ!!!」

 

 

 

 次の瞬間には青い空に赤と青の光の筋が何度も何度もぶつかり合う。

 

 

 

「……ありゃ、人間の動きじゃねえな」

 

 

 

 それを静かに見上げて、ネオは呟いた。

 

 

 

 アークエンジェルの発進準備まで、後数時間。

 

 

 

 最後の仕上げだとキラとアスランが、互いの機体を再調整している。

 

 

 

 ぶつかり合う斬撃。

 

 

 

 放たれる無数の砲撃。

 

 

 

 互いの影を互いに追いかけるように、常に高速機動で動き合う。

 

 

 

 ヒートアップする二人の少年。

 

 

 

 それに比例するように火花が無数に散るオーブの空にネオがため息をついていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一方でミネルバは先に宇宙に進出していた。

 

 

 

「これから、私たちは月面基地アルザッヘルを攻めることになるわ。私の処分もそれからと言うことになったから、もう少しだけ時間を稼げそうね」

 

 

 

 タリア艦長の言葉にアーサー副長も頷く。

 

 

 

「シンとルナマリアだけでなく、オーブの三人の少年たちまで味方になってくれるとは心強いですね」

 

 

 

「その分、抜けた戦力も大きいわ。シュバルツ殿にレイ。二人の穴を何とかして埋めないとね」

 

 

 

「はいーー!」

 

 

 

 ミネルバは後方に地球を拝しながら、月面基地に向かって飛び立って行った。

 

 

 

 しばらくの休息を取る少年たちに微笑みを浮かべながら、タリア艦長はそう言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 宇宙空間。

 

 

 

 漆黒の闇に広がる無数の星空。

 

 

 

 その中を光の翼を生やした天馬が神の名を冠する機体を背に乗せて駆けている。

 

 

 

 風雲再起とゴッドガンダムであった

 

 

 

 彼らを真ん中に、左にガンダムシュピーゲル、右にシャイニングガンダムが随伴している。

 

 

 

「確か、ラクス達に指定された宙域はこのあたりだったよな?」

 

 

 

「そろそろのはずだ。気を付けろ、キョウジ。マスターアジアのことだ、素直に出会って終わりとはいくまい」

 

 

 

「あのオッサン、ホントにめんどくさいな」

 

 

 

 シュバルツからの忠告にキョウジがあからさまに表情を歪める。

 

 

 

 ドモンは二人の兄のやり取りに苦笑をしていると、静かに表情を引き締める。

 

 

 

 前方の小隕石の塊から、桃色の光を放つビームクロスが伸びてきたのだ。

 

 

 

「ゴォッドスラッシュ!」

 

 

 

 目の前に迫りくるビームクロスを腰から抜き放ったビームソードで切り捨てる。

 

 

 

 静かにビームソードを腰に戻すとゴッドガンダムは浮雲再起の背から跳躍し、宇宙空間にその身を浮かせた。

 

 

 

「わぁっはははははは!」

 

 

 

 強烈な高笑いと共に、漆黒のボディと赤い羽根を持ったガンダム。

 

 

 

 そう、マスターガンダムがゴッドガンダムに殴りかかる。

 

 

 

「喝ぁつっ! 応えよ、ドモン!! 流派、東方不敗はぁ!!」

 

 

 

 マスターガンダムの右ストレートに対して右腕で捌きながら左のストレートを顔面に放つゴッドガンダム。

 

 

 

「王者の風よぉ!!」

 

 

 

 これを顔の右横に左手を構えて受け、マスターガンダムがゴッドガンダムが同時に無数の拳と蹴りを繰り出しあう。

 

 

 

 互いに秒間数十発の打撃の交換は、見ていて凄まじいものだ。

 

 

 

「全新!!」

 

 

 

「系裂!!」

 

「「天破侠乱!!」」

 

 

 

 語り合いながら右のショートストレートを互いの中央でぶつけ合い、前蹴りを相殺し、左の肘をぶつけ合って一歩後ろに下がる。

 

 

 

 同時にゴッドガンダムが左の拳をマスターガンダムが右の拳を相手に向けて放ちあった。

 

 

 

「「見よーー!!」」

 

 

 

 中央でぶつかり合う両者の拳。

 

 

 

 そこから互いの機体を真っ赤に燃える炎が纏う。

 

 

 

「「東方はぁ!! 赤、か、く、燃えているぅううううううぁあああっ!!」」

 

 

 

 衝撃が発生し、両者同時に相手より離れる。

 

 

 

 マスターガンダムが片足立ちになり、右手を前方に突き出し、左手を顔の横に持ってきて両の掌を天にむけ構える。

 

 

 

 対するゴッドガンダムは両足をしっかりと開き、左足と左手を前に右の拳を腰に持ってきて膝を曲げて構えを取る。

 

 

 

 互いの両脇には仲間であるガンダムが二体、それぞれ立っている。

 

 

 

「久しぶりだな、ドモンーー! ワシが認めし、真のキングオブハートよ!! こうして、また貴様と出会えようとは、何たる僥倖!!」

 

 

 

「俺もです…! この4年で鍛え上げた拳を貴方にぶつけられるとは……! マスターアジア東方不敗ーーいや、師匠!!」

 

 

 

「フフ、それほどの腕になり己の流派を立ち上げてなお、ワシを師と呼んでくれるか」

 

 

 

「俺の師匠は貴方しかいませんよ。たとえ、貴方が人類の敵となったとしても!!」

 

 

 

 不敵な笑みと共に気を高めるドモンにマスターアジアも笑みを強くする。

 

 

 

 そしてネロスガンダムが静かにゴッドガンダムの前に立った。

 

 

 

「久しぶりだなぁ、ドモン・カッシュぅううう!!」

 

 

 

 怒りと憎しみ。

 

 

 

 その凶暴な気によって、ネロスガンダムは禍々しい光に包まれる。

 

 

 

 対するドモンは静かにゴッドガンダムの胸部エネルギーマルチプライヤーと背中の六枚のフィンを展開し、日輪を背負う。

 

 

 

「余計な言葉は要らん。ガンダムファイトォオオオオオッ!!」

 

 

 

「上等だぁ! レディイイイイイッ!!」

 

 

 

「「ゴォオオオオオオオッ!!」」

 

 

 

 真紅の炎と紫暗の光が宇宙空間でぶつかり合った。

 

 

 

 燃え上がる宇宙の闇。

 

 

 

 その中心で拳と蹴りが互いに向けて次々と放たれる。

 

 

 

 

 

 

 

 それをエターナルとヴォルテールの2隻が見守っている。

 

 

 

「ドモンさんーー!」

 

 

 

 ミーアが思わず声をかける。

 

 

 

 いきなり目の前でドモンが戦いを始めたのだ。

 

 

 

 普通は止めようとするだろう、しかしラクスがそれを手で制した。

 

 

 

「ガンダムファイターならば、拳で語り合う。わたくし達には理解できない、踏み込めない。けれどその領域は確かにあるのです。この戦いは彼らにとって必要な事ーー止めてはなりません、ミーア」

 

 

 

「ーーラクス様」

 

 

 

 真剣な表情のラクスにミーアもおとなしくなる。

 

 

 

 一方ヴォルテールにいるレイもまた、静かに見据えている。

 

 

 

「ミケローー。お前は何故、そこまでドモン・カッシュにこだわるんだ?」

 

 

 

 その問いに応えるものはない。

 

 

 

 ただモニターに映ったミケロの駆るネロスガンダムはこれまで以上に猛々しく、荒々しくゴッドガンダムに挑んでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 ドモンとミケロが所狭しと駆け回る中、静かにマスターガンダムとジョンブルガンダムが両腕を組んで見ている。 

 

 

 

「ミケロ。お前が挑み、目指した高みがその男だーー。越えてみろ…!」

 

 

 

 チャップマンの静かな言葉にマスターも頷く。

 

 

 

「うむ。この勝負、もはや物言いは無用、男の意地を賭けた戦いよ」

 

 

 

 そんな二人の間に静かにシュバルツも並ぶ。

 

 

 

「あのミケロから邪気が消えている。一体何があったのだ?」

 

 

 

「ただ高めただけだ。ファイターとしての力をな」

 

 

 

 チャップマンの答えにシュバルツが彼の方を向く。

 

 

 

「奴は才能はあった、問題はその性格だ。実力がなまじ高かったばかりに挫折を知らなかった。初めての敗北は奴にとって許しがたいものだったのだろう。悪魔に身を捧げる程にはな」

 

 

 

「……」

 

 

 

「だが、この世界に来て奴は変わりつつある」

 

 

 

「ほう?」

 

 

 

 覆面の下でシュバルツの瞳が鋭く細まる。

 

 

 

「奴の意地が奴のコンプレックスを上回ったのだ…。そして、この世界で出会った少年たちが奴を変えた」

 

 

 

「……なるほど。ならば見せてもらうとしよう!! ミケロ・チャリオットーー貴様の意地とやらを!!」

 

 

 

 シュバルツの宣言に静かにチャップマンが頷き、マスターアジアが笑う。

 

 

 

 シャイニングガンダムを駆るキョウジは彼らの後方からドモンとミケロのファイトを窺っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 無数の打撃の応酬を繰り返す。

 

 

 

 ネロスガンダムの左足が上段、中段、下段にそれぞれ放たれる。

 

 

 

「むぅ!」

 

 

 

 ドモンが唸ると共に右手を拳に握りしめ、軽く受け流していく。

 

 

 

 捌かれているのを見て取ると、ミケロが軸足に使用していた右脚に気を纏わせた。

 

 

 

「くらぇ! 銀色のぉ、脚ぃいいいいいいっ!!」

 

 

 

 右足から紫の光を放ち、上段回し蹴りを放ってくるミケロに対し、ドモンは咄嗟に上体を反らして鼻先で蹴りを見切る。

 

 

 

 だが、ミケロの上段回し蹴りは途中で軌道を変え、槍のように中段蹴りを放ってきた。

 

 

 

「ちぃっ!」

 

 

 

 舌打ちしながらドモンは右の肘で蹴りを受け、自ら後方へバックステップすることで威力を殺す。

 

 

 

 それでもガードした腕が痺れた。

 

 

 

「腕を上げたな、ミケロ」

 

 

 

 静かに痺れる手を見つめ、拳を握りしめるドモン。

 

 

 

 対するミケロは静かにドモンを見据えた。

 

 

 

「こんなもんかよ、ドモン・カッシュ? ハイパーモードを使ってこの程度の力なのか? それとも金色にならなきゃ話にもならねえのかよ!?」

 

 

 

 ミケロの挑発にドモンも不敵な笑みを浮かべて応じる。

 

 

 

「その前に聞かせろ。何故これほどの腕になった? 今までのお前とは桁違いの強さだ。技、重み、何より今まで感じられなかった力ーー込められた魂が違う」

 

 

 

「ああ? 嫌味か!?」

 

 

 

 吐き捨てる。

 

 

 

 反吐が出るとばかりにミケロはドモンを睨みつけた。

 

 

 

「俺様がどう変わろうが、俺様は俺様だ! ドモン・カッシュ、てめえをぶっ殺すのに変わりはねえ!!」

 

 

 

 そう告げながらミケロは気を高める。

 

 

 

 しかし、ドモンは構えを取らない。

 

 

 

 これを見るやミケロはしばらくドモンを睨みつけた後、構えを解いた。

 

 

 

 そして今までの彼にはなかった静かな表情でドモンに語り掛ける。

 

 

 

「なあ、ドモン・カッシュよぉ? 寿命が短いってのはどんな気分なんだろうな?」

 

 

 

「……」

 

 

 

 静かな声にドモンも表情を真剣なものに変える。

 

 

 

「俺様はスラム育ちだった。荒廃した地球のイタリアのスラムで俺様は親に捨てられて生きてきた。力がなけりゃ生きていけない世界だった」

 

 

 

 自分のことをミケロが語るのは初めてのことだ。

 

 

 

 静かにレイは目を見開いている。

 

 

 

 それをモニター越しに流し目で見ながら、ミケロはドモンを向く。

 

 

 

「俺様は望んでマフィア共の狗になった。時には、マフィアのボス共の顔色を窺って泥を舐めたりしてな? だけどよ、俺様は強かった。誰にも負けない強さを持っていた。だから、ストリートに屯してる馬鹿どもを集め、腕っぷしだけで纏め上げられた」

 

 

 

 静かにドモンはミケロを見つめている。

 

 

 

 ミケロの目は遠い何かを想うように、静かだ。

 

 

 

「その実力を認められ、俺様はガンダムファイターになった。テメエとあったのは、やっとこさイタリアンマフィアどもを支配下に置いて悠々自適に過ごせると思ってた時だ」

 

 

 

 ドモンは静かにミケロを見る。

 

 

 

「やっと俺様は平穏に生きられると思ったーー。それを崩しに来たガンダムファイター。血祭りに上げてほかのファイターが二度とこの国に近づかねえようにしてやろう、そう思っていた。結果はテメエに惨敗し、国から見限られ俺様は警察に逮捕された」

 

 

 

 ミケロの表情が憎しみに彩られ、拳を握ってドモンを見据える。

 

 

 

「監獄の中で俺様は、テメエへの復讐しか考えなかった…! ようやく手に入れた地位も名誉も全て奪ったテメエだけは、この手で殺してやるってなぁ!!」

 

 

 

 男の信念、生涯をかけた復讐だった。

 

 

 

 人を捨てた彼の覚悟の表れだった。

 

 

 

 だがーー。

 

 

 

「だが、俺様はテメエを倒すどころかテメエの仲間の二人に邪魔された挙句、倒された。この世界で目を覚ました時はそれこそ、テメエへの憎しみで気が狂いそうだったぜ」

 

 

 

「……ならば、何故? 今のお前から感じるのは憎しみの気だけではない。悲しみも感じる。そして確かな信念を」 

 

「信念だの、悲しみだの。そんな綺麗事に興味はねえな」

 

 

 

 力を抜いたように笑みを浮かべたミケロにドモンは目を見開く。

 

 

 

 その笑みは、初めてドモンがミケロを倒したあの時のように、疲れ切った廃人のような気配のする笑みだった。

 

 

 

「ドモン・カッシュよぉ。テメエは親に愛されて生きてきたんだろ? 兄弟にも仲間にも恵まれたんだろ? だから、俺様はテメエが気に入らなかった。羨ましかったんだろうな」

 

 

 

「……っ!」

 

 

 

 ドモンの顔が悲し気に一瞬歪んだ。

 

 

 

 ミケロの言葉は、何よりもドモンの心に響いたのだ。

 

 

 

「俺様は不幸だと思っていた。満たされやし無かった。何を得ても、何を成しても。だけどよ、この世界に来て分かったことがあった」

 

 

 

「ミケロ…っ!」

 

 

 

「俺様は甘えてたんだ。ああ、間違いねえ。自分の境遇が不幸だからって理由で言い訳してた。自分にな。だからテメエを憎むと同時に自分の弱さを見ようとしなかった。簡単に力を得られるDG細胞の力を得て、強くなったと思っちまってた。だがよ…」

 

 

 

 ミケロはドモンを見つめて真剣な表情で、まなじりを吊り上げて言った。

 

 

 

「俺様なんかより、はるかに苦しんでるガキが此処に居やがったんだ!!」

 

 

 

 ドモンもこれまで以上に真剣な表情でミケロを見据える。

 

 

 

 男と男が互いに真剣に相手の魂と向かい合っていた。

 

 

 

「そのガキは、自分が生み出された存在だったとか吐かしやがった! スカした面して自分には未来がないと吐かしてなぁ!! 甘ったれてイキがったクソガキの戯言だと思ってりゃテロメアが短いだと!? クローンだと!? あんなガキが、死ぬってのか!!? 俺様よりも早く!!?」

 

 

 

 ミケロの怒りと咆哮が場に満ちる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その言葉を聞いて静かにシュバルツは目を驚きと戸惑いの表情を浮かべているレイに向けた。

 

 

 

 チャップマンは瞳を閉じ、マスターアジアは神妙な顔で静かにミケロの言葉を聞いている。

 

 

 

 メイリンの目が大きく見開かれた。

 

 

 

「何? それ…? レイ……っ!」

 

 

 

 ミーアの表情が驚愕と罪悪感で歪む。

 

 

 

「……っ! 私……」

 

 

 

 そして静かにラクスが凛とした目でミケロとドモンの二人を見据えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ドモンが静かに口を開いた。

 

 

 

「何処の神様も、皮肉な運命がお好きなことだ」

 

 

 

「違いねぇ」

 

 

 

 ミケロが頷きながら、静かにドモンに拳を握り構える。

 

 

 

 ドモンもまた拳を握って告げた。

 

 

 

「ミケロよ、お前は本当の仲間を得たのだな」

 

 

 

「……あんな根暗のガキがか? 笑わせやがる。…だがよ」

 

 

 

 ミケロの目が鋭くなる。

 

 

 

 その瞳の色は、明らかに今までのモノとは違う。

 

 

 

「少なくとも、そのガキは俺様よりは強かった。それだけだ」

 

 

 

 そう告げて自己嫌悪の表情になって吐き捨てる。

 

 

 

「マスターアジアやチャップマンのせいか。俺様も随分と甘ちゃんになったもんだ」

 

 

 

「……甘いか」

 

 

 

「ああ?」

 

 

 

 ドモンは静かに誠実な態度で拳を構える。

 

 

 

「ミケロ・チャリオット。俺は貴様を見誤っていたようだ」

 

 

 

 そして告げた。

 

 

 

「今、目の前にいる男は俺の知るミケロ・チャリオットではない。本物のガンダムファイターのようだ」

 

 

 

「……ほう?」

 

 

 

「ミケロよ、一つ教えてやる。お前は今の自分が甘いと言ったが、それは間違いだ」

 

 

 

「何?」

 

 

 

「それはお前が長い道のりと勝負の果てに見出した、お前が知らない強さだ……!」

 

 

 

 そのドモンの言葉にミケロは目を大きく見開いた後、静かに顔をうつむかせた。

 

 

 

 肩が大きく上下し始め、右手を額にやってミケロは天を仰いだ。

 

 

 

「ククク……ハハハハハハッハハ!!!!」

 

 

 

 よく見れば瞳から涙がこぼれる程に、邪気のない笑いだった。

 

 

 

 少し笑って落ち着いた後、ミケロは静かにドモンを見据える。

 

 

 

「そうかよ。これも俺様が求めていた力。強さの一つってわけか」

 

 

 

「ああ。その強さーー想いがあるから、俺たちは強くなれる。前へと進むことができる! 何かを護るために闘う力ーーそれこそが本当の強さだ!!」

 

 

 

 力強いドモンの宣言。

 

 

 

「…今まで、テメエらシャッフル同盟やシュバルツを否定し続けていたってのによぉ。認めちまえば、楽なもんだな」

 

 

 

 ミケロも静かに腰を落としながら言った。

 

 

 

「はじめてテメエに感謝するぜ、ドモン・カッシュよぉ」 

 

 

 

「ならば、礼は貴様の拳で返してもらうぞーー! その新たな強さの宿った拳で!!」

 

 

 

 明鏡止水を発動させ、ハイパーモードから黄金へと変化するゴッドガンダム。

 

 

 

「そして俺も改めて全力で挑ませてもらう。新たな友ーーライバル(好敵手)よ!!」

 

 

 

 一瞬でゴッドガンダムはネロスガンダムの前に現れ、強烈な右ボディを入れる。

 

 

 

「ぐぅ!?」

 

 

 

 うめき声を上げて前のめりになるネロスガンダムの顎にゴッドガンダムの左上段回し蹴りが決まった。

 

 

 

 後方へ弾き飛ぶネロスガンダム。

 

 

 

 これに更にゴッドガンダムがダッシュして追いかける。

 

 

 

「銀色のぉ、脚ぃいいいいいい!!」

 

 

 

 咄嗟に体勢を整え、ネロスガンダムが右足から紫の気を散弾にさせて放つ。

 

 

 

 絶妙なカウンターにドモンも反応する。

 

 

 

「ゴッドフィールド・ダァアアアッシュ!!」

 

 

 

 日輪の炎がエネルギーフィールドを形成し、ゴッドガンダムを護りながら加速する。

 

 

 

 目の前に来たゴッドガンダムに目を輝かせ、ネロスガンダムが右足を軸にして左脚を側頭に放つ。

 

 

 

 強烈な炸裂音と衝撃波が生じながら、ゴッドガンダムの右腕が防いでいる。

 

 

 

 返しの左ストレートをネロスガンダムは右手で受けていなしながら、右脚でゴッドガンダムの顎を蹴り上げた。

 

 

 

「ぐぅっ!」

 

 

 

 体を垂直に跳ね上げられたゴッドガンダムのボディに強烈な左の前蹴りを放つネロスガンダム。

 

 

 

 ゴッドガンダムはこれを体を左に回転しながら紙一重で避けると右後ろ回し蹴りを放つ。

 

 

 

「ちぃ!」

 

 

 

 避けられないと悟るやネロスガンダムも左蹴りを上段に切り替える。

 

 

 

 鈍い音が再び響いて互いの蹴りが相手の顔面に炸裂し、後方へ弾き飛ぶ。

 

 

 

 凄まじい威力の一撃にお互いに意識を半分飛ばしながら、顔を元の位置に戻す。

 

 

 

 それぞれのファイターの目は闘志を燃やし、口元には笑みを貼り付けて。

 

 

 

「必殺、虹色の脚ぃいいいいいい!!」

 

 

 

 距離が開いたのを皮切りにネロスガンダムが七色の気を放つ散弾ビームを放ってきた。

 

 

 

 同時に放たれる散光弾は、先のフィールドダッシュでは破れない。

 

 

 

「ならば、次元覇王流! 旋風! 竜巻蹴りぃいいいいいっ!!」

 

 

 

 ゴッドガンダムは気を右足に纏わせるとその場で大回転しながら回し蹴りを放つ。

 

 

 

 同時に巨大な竜巻が発生し、七色の光の散弾は弾き飛ばされる。

 

 

 

「やるなぁ! ならば、ハイパァア銀色の脚ぃ! スペシャァアアアアアアルッ!!」

 

 

 

 クラウチングスタートの構えから、右足に全気力を溜めて蒼銀の光を放ちながら、ネロスガンダムは文字通り彗星となって突っ込んでくる。

 

 

 

「次元覇王流ーー! 聖槍蹴りぃいいいいいっ!!」

 

 

 

 対峙するゴッドガンダムもまた、右足に紅蓮の炎を纏わせ、全身から黄金の気を放ちながら、迎え撃った。

 

 

 

 ぶつかり合う蒼銀と紅蓮。

 

 

 

 互いの気が相殺し合い、お互いの影が蹴りを放った姿勢で交差する。

 

 

 

 すぐさま互いに向き直りあい、拳と蹴りの応酬を繰り広げる。

 

 

 

「野郎ぉっ!! しばらく見ない間に俺様の銀色の脚と蹴り合えるだけの技を持ってやがるとはな! また腕を上げやがったな!!」

 

 

 

「何、お前ほどじゃないさ」

 

 

 

 不敵な笑みを浮かべて告げるドモンにミケロも笑みを返す。

 

 

 

「妙な気持だぜ。テメエが憎くて仕方がなかった、殺したくて仕方なかったのによ……」

 

 

 

 右の正拳突きを回し蹴りで相殺しながら、ミケロは力強く吠える。

 

 

 

「今は、テメエとの勝負が楽しくて仕方ねえっ!!!」

 

 

 

「俺もだ、ミケロ。以前の憎しみに彩られたお前となら、ここまでのファイトはできなかった。だが!」

 

 

 

 互いに拳と蹴りを放ちあいながら、ドモンは熱く滾るように笑う。 

 

 

 

「今のお前となら。全てを出し切り、限界以上の力で戦える!!」

 

 

 

「なら見せろ!! この俺様に!! テメエとゴッドガンダムの限界を超えた力ってヤツを!! 次元覇王を名乗るが所以って奴をなぁあああああっ!!」

 

 

 

 言いながら、ミケロとネロスガンダムの気が天井知らずに上昇していく。

 

 

 

「俺様も見せてやる!! この俺様とネロスガンダムの最強の最高の技をぉおおおおおおっ!!」

 

 

 

「いいだろう……! その熱き魂に応えてやる、ミケロ・チャリオットぉおおおおおおおっ!!」

 

 

 

 互いに咆哮する神と戦士。

 

 

 

 太陽よりも熱き二人の闘志が燃え上がる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 これを見ていたミーアの目に涙が流れていた。

 

 

 

「あ、あれ? なんで?」

 

 

 

 魂と魂のぶつかり合い。

 

 

 

 その美しさと壮大さ。

 

 

 

 感動や昂奮を越えた何かが、ミーアの胸の中に響いている。

 

 

 

 そしてそれは、彼女の周りにいるもの達も同じだった。

 

 

 

「ディアッカよ、俺はこれほどの戦士と共に戦えていたのだな」

 

 

 

「……認めるよ。こいつは、すげえや」

 

 

 

「何なんだろうね。どうして、ここまで人の心に訴えてくるのかな。この人たちの叫びってさ」

 

 

 

 イザークとディアッカ、ミリアリアもそうつぶやく。

 

 

 

「これがーーお姉ちゃんやシン。そしてレイが目指しているガンダムファイター、か。凄いな」

 

 

 

 メイリンもまた、このファイトに涙を流す一人だ。

 

 

 

「もはや、二人の体力は限界」

 

 

 

「ならば、最後の一撃は互いの死力を尽くしたものとなるであろう!」

 

 

 

「さあ、見せてみよ! ドモン・カッシュ! ミケロ・チャリオット!! お前たちの魂の輝きをぉおお!!」

 

 

 

 チャップマン、マスターアジア、シュバルツがこの熱戦に、心をたぎらせながら見据える。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 互いに同時に目を見開く。

 

 

 

 互いのガンダムが同時に目を輝かせる。

 

 

 

 ゴッドガンダムが右手を大きく頭上に掲げて叫ぶ。

 

 

 

「うぉおおおおおおっ! キング・オブ・ハートよ!!」

 

 

 

 胸のクリスタルに浮かび上がる紋章が、ゴッドガンダムの右手に宿る。

 

 

 

 アームカバーが展開され、真紅に燃え上がる右手。

 

 

 

 全身を黄金に染め上げていた気が右手に凝縮されていく。

 

 

 

 ゴッドガンダムの全身がトリコロールに戻り、右手のみ輝く。

 

 

 

 あらゆる色を放ちながら、白金色の光となって。

 

 

 

 

 

 

 

 マスターアジアが思わず叫ぶ。

 

 

 

「ぬぅ! あれは究極の一撃!! 心・技・体の全てを極限にまで練り上げた正に極みの一撃!! 天驚拳ではなくゴッドフィンガーにてそれを放つか、ドモンよ!!!」

 

 

 

 チャップマンも静かに頷く。

 

 

 

「両手にあの極限の気を凝縮して放てば、ミケロには避ける以外に術がない。ドモン・カッシュの勝利は揺るがないだろうに、その気を敢えて接近戦に利用するか」

 

 

 

 シュバルツが応える。

 

 

 

「そのような弱腰では、ミケロの真の一撃を破れるわけがあるまい! 正面から打ち破ってこそ、真の勝利!! よくぞ悟った、ドモン!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ミケロが笑う。

 

 

 

「嬉しいぜ。付き合ってくれんのかよ、ドモン・カッシュ!!」

 

 

 

 ドモンも笑う。

 

 

 

「ああ。これが俺たちの最後の一撃だ!!!」

 

 

 

 互いに極限の奥義を持って決着を付けようと言うのだろう。

 

 

 

 クラウチングスタイルから、ミケロも更に気を高める。

 

 

 

 七色の光の気を凝縮し、更に銀色の脚の気を高める。

 

 

 

 すべての技をこの一撃に込める。

 

「くぁあああああっ! 見ぃせてやるぅうううう!! この俺様と! ネロスガンダム! そしてヘブンズソード(天剣絶刀)が作り上げた、究極の一撃をぉおおおおおおお!!!」

 

 

 

「流派東方不敗の名の下に! 俺のこの手がぁ! 真っ赤に燃えるぅううう!! 」

 

 

 ドモンの祝詞に応えるようにミケロが続きを叫んだ。 

 

 

「勝利を掴めとぉおお! 轟きぃ叫ぶぅううううッ!!!」

 

 

 

「爆ぁああああく熱ッ!!」

 

 

 

 掲げていた右手を祝詞を読みながら、大きく振りかぶる。

 

 

 

 対するミケロもその場で大きく上に跳躍する。

 

 

 

「ゴォオオオオッドォ・フィィンガァアアアアッ!!!!!!」

 

 

 

「ハイパァアア虹色の脚ぃ・スペシャァアアアアアアルッ!!」

 

 

 

 技名を叫んでより高く気を膨張させる。

 

 

 

 互いに向かって放たれる掌と脚。

 

 

 

 二つの技は真っ向からぶつかり合った。

 

 

 

 超新星の爆発。

 

 

 

 その比喩しか思い浮かばない程の強烈な力と力のぶつかり合い。

 

 

 

 爆発の中心点から後方へはじけ飛んだのは、ネロスガンダムだった。

 

 

 

 そのまま行けば後方にあるデブリに突っ込む。

 

 

 

「ミケロぉおおおお!!」

 

 

 

 思わずレイが叫ぶ。

 

 

 

 だが、ゴッドガンダムの左手がネロスガンダムの腕をつかんで引き留めていた。

 

 

 

 その右腕から火花を散らしながらも、ゴッドガンダムは五体満足でそこに居る。

 

 

 

「……ケッ、ここまでやって勝てねえとはな。流石だぜ、ドモン・カッシュ」

 

 

 

「いや。お前の蹴りが先に当たっていれば、こうなっていたのは俺の方だ。良い勝負だったぞ、ミケロ」

 

 

 

「……ドモン」

 

 

 

 目を見開くとドモンは穏やかな笑顔でミケロに告げてきた。

 

 

 

「何度でもやり合えばいい。俺とお前がいる限り」

 

 

 

「……ケッ」

 

 

 

 ミケロはネロスガンダムを動かし、自分の左腕をつかむゴッドガンダムの手を振り払う。

 

 

 

「! ミケロさん!?」

 

 

 

 メイリンが思わず叫んだとき、ネロスガンダムの右手がゴッドガンダムの右手首を掴むと天に掲げた。

 

 

 

「……ミケロ」

 

 

 

「勘違いするなよ。今回は俺様の負けだ、だが俺様は強くなる。その時までテメエに勝ちは譲ってやる」

 

 

 

「ああ。待っているぞ、友よ!!」

 

 

 

 こうして長きにわたるドモンとミケロの勝負はこの異世界において決着を見たのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 静かにDと呼ばれた青年はガン玉となった状態で彼らの勝負を見据えて言った。

 

 

 

「フン、ミケロに先を越されたか」

 

 

 

 涙をぬぐって勝敗を見ていたミーアがいたずらな笑みを浮かべてみせる。

 

 

 

「Dったら。悔しいの?」

 

 

 

「ーーああ」

 

 

 

 憮然とした表情になるDにミーアは優しく微笑みを浮かべた。 

 

 

 

 

 

 




みなさん、お待ちかね~!

 ついにDの復活の為にデビルガンダムのコクピットに乗るドモン。

 調整相手として名乗りを上げるべく、マスターアジア、チャップマン、シュバルツが立候補します。

 しかし、ドモンの相手は一人ということで、彼らはあっと驚く方法で調整相手を決めるのです。

 次回、機動武道伝GガンダムSEED Destiny 第88話に!

 レディー、ゴー!!

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