新機動武闘伝 GガンダムSEED Destiny   作:カンナム

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前回のシュバルツとミネルバ隊の活躍で、難を逃れた地球。

ですが、アスラン・ザラは古き友との会話により、何をするべきかを示されていくのです。

それでは、ガンダムファイト、レディー、ゴー!!!




第9話 オーブに満ちる光とプラントの若き戦士達

 

宇宙にて完全破壊が成功したユニウスセブン。

 

 

 

しかし、その衝撃波は地上ーー海洋国家オーブには、少し大きな津波として、現れていた。

 

 

 

ユニウスセブン破壊成功の報せで避難しているシェルターから出てきたキョウジやキラ達にも、その津波は容赦なく迫り来る。

 

 

 

「ユニウスセブンの破砕は成功しても、その衝撃波が津波を起こすなんて!!」.

 

 

 

「キラーー、急ぐんだ!!」

 

 

 

子供たちを連れて高台に走るキラとキョウジ。

 

 

 

ラクスが高台から顔を出す。

 

 

 

「キラ、キョウジさん! 急いで!!」

 

 

 

その時、走る2人の背から、音が響いてきた。

 

 

 

ーー津波だ。

 

 

 

それは、孤児達の遊んでいた広間などを一気に蹂躙し、何も残さない。

 

 

 

「僕らの遊び場がーー! ラクス様!!」

 

 

 

子どもたちが泣き始める。

 

 

 

「キラーー!!」

 

 

 

「キョウジ兄ちゃん!!」

 

 

 

抱えている子ども達もこの異常な光景に恐怖し、泣いていた。

 

 

 

迫り来る津波、成すすべなく消される街。森、湖。

 

 

 

(子ども達が遊んで来た思い出さえ、喪われるというのか)

 

 

 

その瞬間だったーー。

 

 

 

キョウジの胸から拳大の緑に光る球が出てきたのは。

 

 

 

「ーーなんだ、これは?」

 

 

 

「あの光ーー!」

 

 

 

キョウジが首を傾げる中、キラはその光に見覚えがあった。

 

 

 

あの時、キョウジやシュバルツと出会った時に見た光ーー。

 

 

 

光る球の中央には、白い文字で「光」と一文字が書かれていたーー。

 

 

 

光は強烈になり、やがてその場にいた人々が目を伏せなければならないほど、強くなる。

 

 

 

光が収まった時、前方には一機のトリコロールのガンダムが津波に向かって立っていた。

 

 

 

迫り来る津波に対し、ガンダムはマスクを中央から分割して、左右に展開。右手を緑色に輝かせると、正拳突きのように掌を突き出した。

 

 

 

同時に、光の壁が掌から発生し、津波を真っ二つに割ってみせる。

 

 

 

「ーーわあーー!!」

 

 

 

子ども達が歓声を上げた。

 

 

 

光の壁に弾かれた波は、日差しを浴びて虹を作っている。

 

 

 

 

 

「なんて、力なんだーー」

 

 

 

「そうですわね、キラ」

 

 

 

キラにそう答えながら、ラクスはガンダムを見上げる。

 

 

 

「ーー貴方はとても優しい方ですのね。そして、とても強い方」

 

 

 

「ラクスーー?」

 

 

 

キラが棒立ちになる横で、ラクスはまるでガンダム自身に語りかけるかのように微笑みながら、話した。

 

 

 

「貴方は、キョウジさんやこの子達の為に出てきてくれたのですね?」

 

 

 

ラクスとて、このガンダムの正体など分かるはずもない。だが、彼女は一目で見抜いたのだ。

 

 

 

このガンダムーーシャイニングガンダムの本質を。

 

 

 

「うわあああああああ!!!!」

 

 

 

その時、キョウジが叫びを上げた。キラが咄嗟にキョウジに駆け寄る。

 

 

 

だが、彼は錯乱していた。

 

 

 

あのキョウジが、恐怖で我を喪っていたのだ。原因は、先ほど街を津波から救ったガンダムーー。

 

 

 

「何故ーー? キョウジさん、あなたは一体?」

 

 

 

「やめてくれ!! 私は、何も壊したくなどない!! もうやめてくれ!!!!」

 

 

 

「キョウジさん、しっかりしてください!!」

 

 

 

キラやラクスの呼び声も虚しく、キョウジは錯乱状態のまま、意識を喪った。

 

 

 

「どうしてーー? ラクス、あのガンダムは」

 

 

 

「ええーー。あの機体には、邪念など感じられなかった。ただ、キョウジさんや子どもたちを守ろうとする意思を感じました」

 

 

 

「悪い機体じゃないんだよね? なのに、どうして。キョウジさんはーー」

 

 

 

「分かりません。ただーー、このガンダムが何らかの鍵を握っているようですわね」

 

 

 

キラとラクスがもう一度機体に向き直ると同時に、光の粒子となってシャイニングガンダムは、姿を消したーー。

 

 

 

キラ達の 後方から、二人の男女が、こちらに向かって走ってきていた。

 

 

 

1人は野暮ったい髪型にアロハシャツを着た、壮年の男性。

 

 

 

もう1人は、背中まで伸ばしたウェーブのかかった濃い茶髪の美しい女性。

 

 

 

男は先の大戦で亡命したザフトの軍人ーーアンドリュー・バルドフェルド。

 

 

 

女は、地球連合に所属していた浮沈艦『アークエンジェル』の艦長、マリュー・ラミアス。

 

 

 

どちらも、元軍人である。

 

 

 

二人は油断なく倒れたキョウジを見据える。

 

 

 

「キラ、今の機体はこの青年が?」

 

 

 

「どういう原理なのかしら。いきなり消えたり現れたりするのは」

 

 

 

初めて見る現象、津波をも割る機体。

 

 

 

謎だらけの青年だと、二人の男女は思った。

 

 

 

「彼は、記憶を喪っているのです」

 

 

 

「記憶をーー?」

 

 

 

「ですから、世界のことや国の情勢など全く分かりません。ですがーー」

 

 

 

ラクスは一度、言葉を切るとバルドフェルド達を正面から見据えた。

 

 

 

「彼はわたくし達の家族ですわ。マリューさん、バルドフェルドさん」

 

 

 

その真っ直ぐな視線と強い微笑みに、マリューは一瞬気圧され、バルドフェルドは苦笑した。

 

 

 

「ラクスがそこまで言うなら一応は信用するが、監視だけはさせてもらうぞ?」

 

 

 

「分かっておりますわ。いつも、ありがとうございます」

 

 

 

ラクスの言葉に、折れる気がないことを確信したバルドフェルドは、ため息を一つ吐いた後、譲歩案を示した。

 

 

 

それにラクスも納得し、頷く。

 

 

 

その様子を伺いながら、キラは静かに自分が支えている青年の顔を見る。

 

 

 

「どれだけ、キョウジさんは苦しんだんだろうーー。こんな優しくて穏やかな人が、どうしてーー」

 

 

 

「ーーキラ」

 

 

 

先ほどの脅え方は普通じゃない。

 

 

 

「壊したくないーー、か。僕のようにキョウジさんも」

 

 

 

誰かを殺めなければならなかったのだろうか、戦争のない世界にいると聞いていたが、そこは平和ではないのか。

 

 

 

キラは、ここへ来て初めて、キョウジという青年の生い立ちを聞いていなかったことに気づいた。

 

 

 

「ーーならば、聞けば良いのですわ、キラ。キョウジさんは、必ず答えてくれますわ」

 

 

 

「ーーそうだね、ラクス。僕も、そう思う」

 

 

 

いつものように自分の思考を読まれたようなラクスの言葉を穏やかに聞きながら、キラはキョウジに向かって頷くのだったーー。

 

 

 

 

 

ーーーーーー

 

 

 

「ここは、変わっていないなーー」

 

 

 

ニコルが眠る墓の前で、静かに笑いかけながら、花を添えるアスランの横で、仏頂面をしながらも、丁寧に花を手向けるイザーク。

 

 

 

ディアッカは、墓の周りについたコケを掃除していた。

 

 

 

3人とも、協力して墓を掃除した後、改めて墓の前に並び黙祷する。

 

 

 

どれだけ、そうしていただろうか。

 

 

 

やがて、アスランにイザークから、声がかかってきた。

 

 

 

「アスランーー、ザフトに戻る気はないか?」

 

 

 

率直な意見に、アスランは苦笑いを浮かべながら、イザークを見る。

 

 

 

彼は真っ直ぐにアスランを見ていた。

 

 

 

「貴様が、オーブに居たのは知っている。だが、オーブではできることは限られているはずだ。

 

真に世界を変える気があるなら、貴様は家の力が影響するザフトに戻るべきだ。

 

ニコルの為にもな」

 

 

 

「ーー イザーク…」

 

 

 

かつてのイザークならば、問答無用で戻れと言っていたはずだが、この数年でイザークは冷静な判断力を手に入れていたようだ。

 

 

 

「ーーそれは、どうかな、アスラン」

 

 

 

「ーー!? 心を読むなよ、ディアッカ」

 

 

 

「貴様ら、何か失礼なことを考えていないか?」

 

 

 

イザークの視線が鋭くなり、思わず首を横に振る2人。ザフト軍にいた頃は、ここまで、息のあった連中ではなかったな、と詮無いことを考えながら、イザークはアスランに向き直る。

 

 

 

「イザーク、お前の言いたいことはわかる。もっともだとも思う。だが、俺はカガリを支えたい」

 

 

 

「カガリ・ユラ・アスハ、か。正直に言えば、彼女には失望している」

 

 

 

「ーーな!?」

 

 

 

「彼女の能力と意志の強さならば、必ずオーブを立て直したはずだと思っていたが、最近はセイラン家などに実権を握られているらしいな」

 

 

 

イザークの言葉はまぎれもない真実であった。カガリの民衆や軍からの支持は高い。

 

 

 

しかし、政治の世界では、カガリのような真っ直ぐな考え方は、通らないのだ。

 

 

 

「イザーク、彼女に何かアドバイスできないか?」

 

 

 

「それをする為にも、貴様は戻れと言っている。何の権力も後ろ盾もない、貴様の言葉など誰が聞くか。おまけに経験もない。そんな貴様に、オーブの古だぬき共を説得できるわけないだろ、政治をなめるな」

 

 

 

「ザフトに戻り、アスラン・ザラになれば、カガリの力になれる、っていうのか?」

 

 

 

「パイプさえ繋いでおけばな。貴様がプラントでラクス様や俺と組み、政治力を持てば、オーブの古だぬき共も、発言を黙殺できまい。その為の裏回しができるくらいは、貴様、働いていたんだろ? 今のままでは、彼女を嫁にさえもらえん。そんなザマでは、ディアッカのようにふられるぞ」

 

 

 

「ディアッカ、ミリアリアに?」

 

 

 

「何、サラッとバラしてんだ、この野郎!!!」

 

 

 

アッサリとミリアリアにふられた事を告げるイザークにディアッカが掴みかかる。

 

 

 

「いや、すまん。毎日毎日、未練たらしく電話をかける貴様が、面白ーーいやいや、鬱陶しくてかなわんのでな」

 

 

 

「うるせえよ。今は、ミリアも頑固だけど、あいつを落とせるのは、俺だけだ!」

 

 

 

「…アスラン、貴様もこれぐらいできれば、大分変わったと思うんだがな、彼女との関係も」

 

 

 

半分、呆れ気味になりながら、イザークはアスランに告げる。アスランは、苦笑いを浮かべながら、それに応えた。

 

「善処する。だが、イザーク。真面目な話、ザフトに俺が入隊した上でオーブにも影響を持たせるというのは、できるのか?」

 

 

 

「ザフトは軍じゃない、言わば義勇兵だ。極論を言えば、オーブに籍と役職を持ったままでも、希望すれば通る」

 

 

 

「だが、板挟みになる可能性もあるな」

 

 

 

「当然だ。ここからは、独自に掴んだ情報だが、アーモリーワンを襲った連中は、地球連合の面子の中で、ブルーコスモスの息がかかった部隊のようだ。

 

さらに、セイラン家は独自にブルーコスモスとつながりを持っているらしい」

 

 

 

「なんだと!? オーブの政治家が、ブルーコスモスと!?」

 

 

 

「おいおい、イザーク。それ、ヤバいネタじゃねーか?」

 

 

 

ディアッカの言うように、下手をすればオーブはブルーコスモスと癒着し、ザフトと完全に敵対する可能性が出てきたのだ。

 

 

 

「どこからの情報かは、言えんが、きちんと裏付けを取ったものだ。セイラン家やその周辺の金の周りが良くてな、最近」

 

 

 

「アスラン。お前、完全に後手じゃねーの? あちらさんは、ウズミのオッサンが亡くなってから後ろ盾に使えるもんは使えとばかりに癒着しちまってるじゃん」

 

 

 

「政治に対して、貴様らは素人だからな。欺くのもたやすかろう」

 

 

 

状況は、思った以上に悪い。まさか、ブルーコスモスとセイラン家が繋がっていたとは。

 

 

 

だが、イザークが嘘を吐くような男でないのは、アスランが一番知っている。

 

 

 

「だけどよ、イザーク。アスランが仮にザフトに戻っても、ザフトの指揮下になったら意味ないぜ? アレックス・ディノのままじゃ、ただのボディガードだけど。ザフトなら、完全に無関係か、下手したら敵対関係にされちまうんじゃないか?」

 

 

 

「そうならん為に、2つの方法がある。一つは、オーブのキラ・ヤマトをオーブ軍に加入させ、それなりの地位を与える。その副官として、アレックス・ディノではなく、アスラン・ザラの席を用意させる。これで、アスランは完全にオーブの人間だ」

 

 

 

「いや、キラはーー」

 

 

 

止めようとするアスランを無視して、イザークは話を続けた。

 

 

 

「更に、ラクス様と共にクライン派とザラ派を纏めれば、貴様のザフトの地位も確立されるはずだ。それまでの案としては、フェイスという方法がある」

 

 

 

「フェイス?」

 

 

 

「貴様も聞いた事くらいはあるだろ? 自分の独断で行動することを許されたザフトの免罪符だ」

 

 

 

「だが、いくらフェイスとは言え、ザフトに所属しながら、オーブの軍にいるというのは、前例がーー」

 

 

 

「無ければ、作れ。いつまでも、ウダウダ言ってる場合か!!!」

 

 

 

ついにイザークが爆発した、それまで冷静に見えていたが、導火線に火がついていたようだ。

 

 

 

ここまで、よくもった方か? 等と考えながら、ディアッカが間に入り、助け舟を出す。

 

 

 

「待てよ、イザーク。その話に一つ難点があるぜ。土台無茶な話だがーー」

 

 

 

と前置きした上で、ディアッカは、聞いた。

 

 

 

「お前さ、フェイスの任命権限無いだろ。まだ新入り議員なんだから」

 

 

 

「デュランダル議長を使う」

 

 

 

『ーーえ?』

 

 

 

2人揃って間抜けな顔を晒しているな、と満足気に笑いながら、イザークは告げた。

 

 

 

「デュランダル議長は、やたらとアスランがお気に入りらしい。ザフト復隊時に、相談してみたら、どうだ? 喜んでフェイスの権限を与えてくれるだろうさ」

 

 

 

底意地の悪そうな顔ーー、ああ、そう言えばニコルや自分をいじめてきた時、こんな顔をしてたなーーのイザークを見据え、アスランは待ったをかける。

 

 

 

「イザーク、デュランダル議長は信用できるのか?」

 

 

 

「俺は、綺麗事しか吐かないで、自分の手を汚そうとしない奴は信用しない。しかし、命を救われたことは感謝している」

 

 

 

「ーー自分が信用してないのに、頼めって言うのか?」

 

 

 

「つうか、俺たち、あの人に命を救われたのに、信用してないのかよ」

 

 

 

半目になりながら、胸を張って応えるイザークにふたりが告げると真面目な態度に戻り、言われた。

 

 

 

「感謝するのと信用するのは別の話だ。ーー使えるものは、使う。どこまで信用できるか、できないか、を考えるのも政治だ。デュランダル議長とて、全くの善意で俺たちを救ったわけじゃない。貴様ら、簡単に善と悪に見切り過ぎなんだよ」

 

 

 

2年前のイザークにはない、狡猾さというか、したたかさを垣間見、アスランは内心関心していた。

 

 

 

「それはそうだがーー。これでザフトに戻れば、俺はオーブを弾き出される」

 

 

 

「問題あるまい。どのみち今のままでは、内部にいても何の権限もない。カガリ姫の盾にもなれんわ、役立たずの甲斐性なしめが」

 

 

 

鋭く切り捨てられ、胸を抑えるアスラン。何故か、後ろでディアッカも、胸に手を当てていた。

 

 

 

こうして、アスラン・ザラはアレックス・ディノの偽名を捨て、ザフトに戻ることになるのであった。

 

 




みなさん、おまちかねー!

オーブへかがりを送り届けたミネルバ隊。

カガリは彼らに、3日間の休息と艦の補給を約束します。

オーブに帰ったシンは、そこに建てられた慰霊碑のまえで運命の出会いを果たすのです。

次回、機動武道伝GガンタムSEED DESTINY 第10話に。

レディー、ゴー!!!
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