新機動武闘伝 GガンダムSEED Destiny   作:カンナム

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 みなさん。

 大変なことになって来ました。

 なんと、ウルベが。

 あのウォンが、ついにデュランダルとの最終決戦に臨んだのです。

 はたして、勝つのは聖剣の名を冠する男か?

 異世界から蘇った悪魔の如き2人の男か?

 それともーー!

 それでは、ガンダムファイト!!

 レディイイイ、ゴォォォオオオッ!!




第90話 命散る戦場

 地獄。

 

 

 

 古今東西、悪行を重ねた人が落ちると言われる奈落の底。

 

 

 

 今、月という地球の重力に囚われる衛星で。

 

 

 

 不毛の大地で。

 

 

 

 暗闇の中、無数に輝く星が灯る中。

 

 

 

 MSと呼ばれる人型の機体が、互いに共食いをしていた。

 

 

 

 その行為は余りにも残酷で凄惨。

 

 

 

 顔をビーム剣で突き刺し、動かなくなった敵に執拗に攻撃を繰り返す。

 

 

 

 互いに互いに。

 

 

 

 それは人の所業とは思えず、月面は正に地獄絵図のようだった。

 

 

 

 倒されたMSは動きを止め、爆発すると同時に光の球となって倒した相手に吸収されている。

 

 

 

 DG細胞同士による戦いは正に蠱毒の様相を呈している。

 

 

 

 彼らは本能的に知っているのだ。

 

 

 

 敵を倒せば己の力となることに。

 

 

 

 そうやって大勢の人であった人ならざる者たちが殺し合う光景をモニターで見据えながらデュランダルは笑った。

 

 

 

「この力ーーDG細胞とデスティニープランがあれば、世界は統一される。異端の存在は省かれ、正しき同士の血肉となるーー。素晴らしい! よくぞ、よくぞ私の手に落ちてくれた、DG細胞よ!!」

 

 

 

 全てを手に入れるまでもう少しだと、彼は笑った。

 

 

 

 

 

 

 

 今まで慎重だったデュランダルが良く言えば大胆に、悪く言えば強引に展開してきたデスティニープラン。

 

 

 

 その変化に確実にDG細胞の影響を感じ、ウォンは嗤う。

 

 

 

「愚かな。自分の意志がいつの間にか、力の塊であるDG細胞の影響を受けていることにも気付けていないのか」

 

 

 

 阿鼻叫喚の地獄絵図を見据えながら、ウォンは嗤う。

 

 

 

 どれだけ力を得ようとも、己の目的を忘れては意味がない。

 

 

 

 かつての自分やウルベもそうだった。

 

 

 

 強大過ぎるDG細胞の力に人格を破壊され、目的を挿げ替えられていた。

 

 

 

 ならば、今のデュランダルはーー。

 

 

 

「…交渉は無意味かもしれませんねぇ」

 

 

 

 冷たい瞳に冷酷に吊り上がる口元。

 

 

 

 嘲り、嗤い、蔑視、そんなものがウォンの顔に浮かんでいる。

 

 

 

「哀れなものだ、デュランダル…。全てが己の欲望の果てに沈むことを知るがいい」

 

 

 

 人類の絶望の協奏曲が流れている。

 

 

 

 彼らの血肉、涙の一つ一つが繋がるのだ。

 

 

 

 ささげられているDG細胞に。

 

 

 

 この場にいる全ての命は強力な一つのDG細胞の塊となろうと互いに食い合っている。

 

 

 

 正気を保っていられるのは自分やウルベのようにDG細胞そのものから復元された存在か、DG細胞を持たない者かのどちらかだろう。

 

 

 

 事実、ジブリールも自分たちの細胞があるからまだあの程度で済んでいるが、影響が出ている。

 

 

 

 ジブリールは本来、臆病とも言われるほどに慎重な性格だ。

 

 

 

 たとえ勝てる勝負であっても自分が前線に出ずに済むなら出ない。

 

 

 

 なのに今、彼は自分の意志で前線に出ると言った。

 

 

 

 彼もまたDG細胞の力の影響で存在を統一されようとしているのだろう。

 

 

 

 力の影響でジブリールがDG細胞に食われるなら、それまでだ。

 

 

 

「C.E.の人類が全て滅亡し、強力なDG細胞の塊となれば、それを得たものが覇権を握ると言うこと。デュランダル、貴方が本当に世界を導く担い手か否か、試してあげましょう」

 

 

 

 ウォンの紅の瞳が静かに闇に煌いた。

 

 

 

 

 

 

 

 一方でクライン派のアジト・廃棄コロニー。

 

 

 

 モニターでこの争いを険しい顔で見据えているラクス達一行。

 

 

 

 その中で、レイが血相を変えている。

 

 

 

「このままじゃ、ギル達とシン達が闘うことになる。それは、止めなければならない」

 

 

 

「…なんでだ? 奴らだって闘う理由がある。それを奪うのか?」

 

 

 

 ミケロは腕を組んで静かな表情で問いかける。

 

 

 

 レイは強い瞳で言った。

 

 

 

「俺がギルを止めると決めたからだ!」

 

 

 

 その言葉にミケロが目を見開いて笑みを浮かべる。

 

 

 

「ククク。言う様になりやがったじゃねえか、レイ!!」

 

 

 

「一緒に来てくれるか、ミケロ」

 

 

 

「いいぜぇ! 付き合ってやる!!」

 

 

 

 闘気を全身から溢れさせ、ミケロがレイの言葉に頷いた。

 

 

 

 レイは、ラクスを見る。

 

 

 

「ラクス・クライン、今までありがとうございました。俺はこれで」

 

 

 

「…待ってください」

 

 

 

 頭を下げて去ろうとするレイにラクスが話しかける。

 

 

 

「あの場所は強力な狂気に支配されています。心を戦いに染められてはなりません」

 

 

 

 言うとラクスは己の懐から銀細工のイルカのアクセサリーを取り出し、レイに手渡した。

 

 

 

 その銀細工から放たれるエネルギーに覚えがあるレイは思わず目を見張る。

 

 

 

「こ、これはーー!」

 

 

 

 そのレイの反応にラクスは微笑んだ。

 

 

 

「やはりDさんは、わたくしやミーアを護るためにこのアクセサリーを」

 

 

 

 そう囁いた後、ラクスはレイを真正面に見据えて言う。

 

 

 

「どうかお気をつけて。そのアクセサリーがあれば、あの場に渦巻く狂気に取り込まれたりはしないはずです」

 

 

 

 レイは静かに頭を下げた。

 

 

 

「ありがとう、ラクス。貴女に出会えて良かった」

 

 

 

「どうか、貴方の未来が拓かれんことを。わたくしも祈っておりますわ」

 

 

 

 レイは頷くとミケロと共に去ろうとする。

 

 

 

「待ってよ、レイ!!」

 

 

 

 メイリンの声が彼の背を呼び止める。

 

 

 

 ミケロが静かにレイの肩を掴むとくるりと彼をメイリンの方に向けた。

 

 

 

「! ミケロ」

 

 

 

「これが最期になるかもしれねぇんだ。ちゃんと嬢ちゃんと話せよ」

 

 

 

 真剣な目で言われ戸惑うレイにミケロは静かに笑うと先に行くと手を振ってレセップス級に乗り込むために管制室から出て行こうとする。

 

 

 

 これにメイリンが深々と頭を下げた。

 

 

 

「嬢ちゃん。その鈍感野郎は、なにも気づいちゃいねえ。伝えてやってくれや」

 

 

 

 背中を向けたままミケロはそれだけを言って扉を閉めた。

 

 

 

 レイが訝し気にミケロを見送った後、メイリンに向き直る。

 

 

 

「…何だ? メイリン?」

 

 

 

 メイリンの左右にはラクスとミーアがいる。

 

 

 

「……私、私も連れて行ってくれないかな?」

 

 

 

「ダメだ。危険すぎる」

 

 

 

 はっきりとレイはメイリンの目を見て告げる。

 

 

 

 ここから先は、メイリンを巻き込むような場所ではない。

 

 

 

「私は、私ーー! レイが好きだから!!」

 

 

 

「! ーーえ? あ?」

 

 

 

 言われて頭が真っ白になるレイにメイリンが真っ赤な顔になったまま告げる。

 

 

 

「一緒にいたいの! ずっと一緒に!!」

 

 

 

 健気なその表情と言葉に込められた想いにレイの頭が理解していき、顔を真っ赤にする。

 

 

 

 混乱するレイの方へいざなう様に、ラクスとミーアがメイリンの肩を左右から押す。

 

 

 

「もう一息ですわ」

 

 

 

「頑張って!」

 

 

 

「ファイト!」

 

 

 

 最後の言葉はミリアリアが両拳を作って頷きながら言ってくれた。

 

 

 

 彼女達に後押しされ、メイリンは精一杯の勇気と共にレイの懐に抱き着くと、呆然としている彼の頬にキスをした。

 

 

 

 柔らかい匂いと温かな感触に、レイの瞳に正気が戻り始める。

 

 

 

 同時に壊れてしまいそうな存在を自分の両腕に感じた。

 

 

 

「メ、イ、リン…!」

 

 

 

「レイが死ぬのはイヤだよ。私じゃダメかな? 私じゃ、議長の代わりになれないかな? 私じゃ、レイの帰る場所になれないかな?」

 

 

 

 涙を浮かべながら、必死に言う。

 

 

 

 一緒に居たいと願う少女の健気な涙にレイは瞳を大きく見開く。

 

 

 

「……何故だ? 俺は、もうーー充分すぎる程、色んなものを得たのに。どうしてーー?」

 

 

 

 頬に伝わる涙にレイは呆然としている。

 

 

 

 儚げな少女を抱きしめながら、レイは言う。

 

 

 

 そして

 

 

 

「メイリンーー! メイリン!!」

 

 

 

 人目をはばからずに強く強く抱きしめた。

 

 

 

 それをイザークとディアッカが微笑ましそうに見つめている。

 

 

 

「死ぬなよ、レイ。貴様は死ねんだろう?」

 

 

 

「そうだぜ? それにな。充分過ぎるなんて、生きてる限りあり得ねえよ。だから生きろ。生きてそれ以上の幸せをメイリンと育めよ」

 

 

 

 二人の青年からの言葉にレイは静かに彼らを見上げる。

 

 

 

 涙にぬれた顔を見ながら、イザーク達は苦笑を浮かべていた。

 

 

 

「あ、あの…! こんな時になんだけど」

 

 

 

 と言いづらそうにしながらもミーアが話しかけてくる。

 

 

 

 それにレイが彼女を見ると、ミーアは自分の懐から銀細工のイルカのアクセサリーを取り出した。

 

 

 

「きっと、メイリンさんに必要だと思うから。それとーーゴメンなさい!」

 

 

 

「! 何故? 貴女が俺に謝る必要などない。ミーア、俺は貴女をギルに選ばせた人間だ」

 

 

 

「Dが殺されたとき……貴方が、必死で議長と戦っているのを私は知らなかった。知ろうともしなかった! だけど、貴方は何も言わずにーー! ごめんなさい、貴方だって。議長の犠牲者なのにーー!」

 

 

 

 本当に申し訳なさそうに、心の底からすまなそうに謝るミーアにレイは微かに目を細めた後、ミーアからアクセサリーを受け取りながら言った。

 

 

 

「…ありがとう、ミーア」

 

 

 

 ミーアが頭を上げて見たレイの表情は、これ以上ないほどに美しい笑みだった。

 

 

 

「ううん。それにね、レイ。貴方が議長に私を選ばせてくれたからみんなと出会えた。Dに会えたの。だから、ありがとうは私のセリフよ!」

 

 

 

「…そうか。そうだな」

 

 

 

 微笑み合う2人。

 

 

 

 こうしてメイリンがレイと共にレセップス級に乗り込むことになった。

 

 

 

 

 

 

 

 この光景を訓練場から見るマスターアジア、チャップマン、シュバルツ、キョウジ。

 

 

 

「ふふ、ミケロめ。中々やりおるわ」

 

 

 

「ああ。欲を言えばレイの命、永らえさせてやりたいものだ」

 

 

 

 マスターが、チャップマンが互いに語る。

 

 

 

「私の見立てでは。鍛え抜かれた今のキラ達ならば、ウルベやウォンが相手だとて遅れは取るまい。残された当面の問題は、レイの命か」

 

 

 

「全てを解決させるなら、切っては切れない所だからな。Dの体を再生できたなら。そのデータを使って次はレイ君のテロメアの短さをどうするか。髪の毛や皮膚の一部を採取してDG細胞に取り込ませ、一度原子にまでばらした後にテロメアを長くするよう再構成させる」

 

 

 

 シュバルツとキョウジが互いに見合う。

 

 

 

「その細胞をレイに移植し、全身に染み渡らせればテロメアの問題は解決できる、か。言葉にしてみれば簡単だが、実行に移すとなると様々な問題がある。全身に染み渡らせた後にDG細胞のみが自滅する仕掛けが必要だな。下手をすれば不老などになりかねん」

 

 

 

「自滅する加減が難しい上に人の体だ。肉体の調整も簡単ではないだろうな。そりゃDにも言えるが」

 

 

 

「…これは時間がかかるな」

 

 

 

「ああ。ニ対二のガンダムファイトをしてる場合じゃないくらいにはな」

 

 

 

 このキョウジの言葉にシュバルツがくわっ、と覆面の下で目を見開き叫ぶ。

 

 

 

「馬鹿者! ファイターにとって拳を交えることは、千の言葉を交わすよりも意味があるのだ!!」

 

 

 

「だからって非効率極まりないだろ! どうせ倒れる寸前までやりあおうってんだろうからな!!」

 

 

 

「互いに全力を尽くし合う。そこに意味があるのだ!!」

 

 

 

「分かるように噛み砕いて説明しろよ、この野郎!!」

 

 

 

 また揉め出す同じ声をした2人であった。

 

 

 

 

 

 

 

 そんな彼らを尻目にレイ・ザ・バレルとミケロ・チャリオットが最終決戦地に出撃した。

 

 

 

 

 

 

 

 月面基地ダイダロス。

 

 

 

 最前線で争うデュランダル軍とジブリール軍を見据え、ウルベは静かにダイダロスの近くにあるもう一つの月面基地アルザッヘルを制圧していた。

 

 

 

 ウルベの奇襲でDG細胞に感染した兵士は更に増えた。

 

 

 

 ゾンビ兵は次々に生産され、デスバットへとMSは変化していく。

 

 

 

「膠着状態か、こちらがやや不利な状況かな? どちらにせよ、ここで終わらせるには絶好の機会だ」

 

 

 

 ヴァニシングガンダム。

 

 

 

 虚無を司るその名のとおり、このガンダムには力があった。

 

 

 

 ゴッドガンダムには、エネルギーフィールドを発生させて空間を歪曲させ、加速する技がある。

 

 

 

 エネルギーマルチプライヤーを得たウルベの機体も例外ではなく、ガンダムの声を聞くというドモンの言葉を聞いてウルベが試み、ガンダムが応えた結果得た新たな力だ。

 

 

 

 これをウルベは、空間歪曲という現象に留めるだけでなく亜空間移動を可能とする技に昇華した。

 

 

 

 平たく言えば今の彼はガンダムに乗っているという前提ではあるが、人類の夢の境地テレポーテーションを使えるのだ。

 

  

 

「私もまた進化した。更なる強さと力を得たのだ。負ける訳がない」

 

 

 

 高らかに笑うウルベは、自らに迫り来るガンダムの気配を感じ嘲る。

 

 

 

「さあ、来い! コズミックイラの戦士よ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 シン達が月面基地ダイダロスに向かう途中で、キラとアスランが合流した。

 

 

 

「DG細胞の気配が、そこいらから感じるぜ」

 

 

 

「どーするよ、シン?」

 

 

 

 スティングとアウルの言葉にシンがキラとアスランを見る。

 

 

 

 すると2人は頷きながら、シンに先を促す。

 

 

 

「手を分けよう。感じる気配はヤバそうなのが、4つくらいあるか。みんなの力を考えたら3箇所に分けられそうだな」

 

 

 

 これにステラとルナマリアが頷く。

 

 

 

「行けると思う!」

 

 

 

「割り振りよね。どうするの?」

 

 

 

 宇宙図を確認しながら、ルナマリアが問う。

 

 

 

「キラさんとアスランは、一番厄介なのを頼めますか?」

 

 

 

 この言葉にアスランが眦を鋭くし、キラが微笑む。

 

 

 

「ウルベ、だね?」

 

 

 

 キラの言葉に頷きながら、アスランを見るシン。

 

 

 

「いいのか? ウルベを俺たちが倒して」

 

 

 

「凄え自信ですね、アスラン。だけど、今は私情を挟む暇はありません。俺は直接議長を叩きます」

 

 

 

 シンの言葉に皆が目をみはる。

 

 

 

「シン! あんたまさか、一人で!?」

 

 

 

「無理だよ! いくらシンでも、危険だよ!!」

 

 

 

 ステラとルナマリアの反対の声が響く中、シンは冷静に笑う。

 

 

 

「乱戦だろ? なら、勝機はある! 俺とデスティニーならやれるさ!!」

 

 

 

 圧倒的な自信。

 

 

 

 燃える瞳はもはや、迷いなどない。

 

 

 

「じゃあ、まさか俺たち4人で行動するのか?」

 

 

 

「それなら。ルナだけでもシンに着いて行った方がいいんじゃないか?」

 

 

 

 スティングとアウルの言葉にシンが首を横に振る。

 

 

 

「デスティニーガンダムの最大稼働を使いたい。味方がいると巻き込んじまう。それに、多分ダイダロスにはウォンとジブリールが居るはずだ。こっちに一番手数を割いておいた方がいい。議長はただの政治家だし、ゼウスガンダム級ならデスティニーの敵じゃない!」

 

 

 

 大胆にして不敵な言葉にアスランが頭を押さえ、キラが頼もしそうに笑う。

 

 

 

 アウルやスティングもシンの言葉に頷いた。

 

 

 

「決着はついてないんだ。死ぬなよ、シン?」

 

 

 

「分かってる。あの時の続き。必ずやろうぜ、アウル!!」

 

 

 

 拳を軽くぶつけ合うヤマトガンダムとデスティニーガンダム。

 

 

 

「シン!」

 

 

 

 瞬間、ステラのシャッフルハートがデスティニーガンダムに飛び付いた。

 

 

 

「うおっ!?」

 

 

 

「無茶しちゃダメだよ? 私もジブリール倒したら、すぐに向かうから!」

 

 

 

「あ、ああ。大丈夫だよ、ステラ」

 

 

 

 シンは不安気なステラの頭を撫でてやってるつもりだが、デスティニーガンダムがシャッフルハートの頭を撫でる姿は傍目からはとてもシュールであった。

 

 

 

「もう! さっさと行くわよ!!」

 

 

 

 そんなシャッフルハートとデスティニーガンダムをインパルスガンダムが引きはなす。

 

 

 

「ガンダム同士の痴話喧嘩って…」

 

 

 

「それ以上言うなよ、スティング」

 

 

 

「けどよ、アスラン」

 

 

 

「やぶ蛇にしかならない」

 

 

 

 ジャスティスとクーロンも顔を寄せて話している。

 

 

 

「ぷっ、なんだよ! みんな、緊張感持とうぜ!!」

 

 

 

「そう言うアウルも笑ってるよ? ね、みんな?」

 

 

 

 おどけるアウルに、普段は真面目なキラが珍しく笑いながら言う。

 

 

 

 全員が声を上げ、笑う。

 

 

 

 楽し気に、親し気に。

 

 

 

 先に地獄が待っているのに、笑っている。

 

 

 

 彼らの笑顔は、この絶望さえも笑い飛ばしてしまうかのようだった。

 

 

 

 一通り笑い終え、少年少女たちは互いに頷きあう。

 

 

 

 

 

 

 

ーー さあ! 最後の闘いだ!! ーー

 

 

 

 

 

 

 

 その気合いの言葉は奇しくも、未来世紀でドモン達シャッフル同盟が言い放った言葉と同じだった。

 

 

 

 こうして、キラとアスランがアルザッヘルを壊滅させたウルベの下へ。

 

 

 

 スティング達が、ロゴス軍の中核へ。

 

 

 

 シンが議長の乗るヴォルテールへと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 一方、ウルベの下へ降り立つ一機の影があった。

 

 

 

 ゴッドガンダムを模した胸から頭。

 

 

 

 全体の造りはデスティニーのソレだが、背中の翼を模したバックパックにドラグーンが仕込まれている。

 

 

 

「…なるほど、君が先に現れたか。人形のお姫様」

 

 

 

 ヴァニシングガンダムで優雅に右手を垂らしながらの一礼。

 

 

 

 対峙するデスクイーンと呼ばれた機体は肩をすくめてみせる。

 

 

 

 紅の髪に灰色の瞳をした色気のある少女だった。

 

 

 

「フレイ・アルスターよ。異世界の負け犬さん」

 

 

 

「…近頃の若者は目上に対する口の利き方を知らんようだね、フレイ君」

 

 

 

 冷酷な笑みに冷たい殺意を乗せて、ウルベは笑った。

 

 

 

 これにフレイと名乗った少女も笑う。

 

 

 

「ふ、ふふふふ。あはははははっ!! 笑わせないでよ。可哀想な負け犬さん」

 

 

 

「……」

 

 

 

「異世界からわざわざ逃げ延びて。新天地で得たものは、シュバルツやキング・オブ・ハートからの手痛い敗北。さぞや無駄に高いプライドが傷ついたでしょう? それとも、自分の底も分からないくらいボロボロにされたのかしら?」

 

 

 

 嘲り笑う少女にウルベの瞳に宿る冷たい光が獰猛な焔へと変化した。

 

 

 

「人形風情め…! この私を舐めると痛い目を見るということを教えてあげよう」

 

 

 

「わからない? そう言う態度が小物の負け犬さんってことよ」

 

 

 

「すぐに分かる。どちらが身の程知らずの小物かはね」

 

 

 

 ヴァニシングガンダムが右手を、デスクイーンが素早く右手に腰から抜いたライフルを構え、互いに向けて光弾を放ちあった。

 

 

 

 

 

 

 

 ゼウスガンダムのパイロット。

 

 

 

 マーキロット・キュロノス達は強かった。

 

 

 

 並み居る敵を皆殺しにして、そのエネルギーを奪い取っていく。

 

 

 

 まさに悪魔の所業だった。

 

 

 

「ぐははは! 力が漲るぞおぉ!!」

 

 

 

「最高よ、最高の気分だわ!!」

 

 

 

「もっと血肉をください、わたくしの為に!!」

 

 

 

 マーキロットを筆頭に、シジーマもロマリオも嗤う。

 

 

 

 哄笑をしながら、数々のザクやウィンダムという敵を葬り去る。

 

 

 

 彼らはもはや、人の皮を被った魔物だった。

 

 

 

 だから、目の前に美味そうな獲物が現れたのを彼らは舌舐めずりしながら喜んだ。

 

 

 

「落ちろーー!」

 

 

 

 突如、ジェスターが展開していたバルーンビットが一斉にビームのシャワーを浴び撃ち落とされる。

 

 

 

「! わたくしのバルーンビットを!?」

 

 

 

「ーーそこね?」

 

 

 

 シジーマが笑いながら吹き矢を飛ばす。

 

 

 

 その先には一機のMSがあった。

 

 

 

 忌々しいゴッドガンダムに似せて作られた胸から顔。

 

 

 

 左腕には菱形の細長い先端に砲身のついた盾を装備し、背中には巨大な円盤のようなバックパックを付けている。

 

 

 

 フィルム・ノワールの駆るデスビショップである。

 

 

 

 コブラガンダムのビーム吹き矢は、対象の関節を射抜くことで致命打を与える武器だ。

 

 

 

 ほぼ初見殺しの技で、シジーマには相手を打ち取れる絶対の自信があった。

 

 

 

 だが。

 

 

 

 突然、目の前からデスビショップが消えた。

 

 

 

「ーーなんですって!?」

 

 

 

 ガンダムファイターである自分の反応速度で捉えられない、そんな馬鹿な。

 

 

 

 刹那の拍子に様々な思考を巡らせるシジーマ。

 

 

 

 彼の目の前に、デスビショップは現れた。

 

 

 

「愚かだな。自分だけがDG細胞で生み出された特別な存在だと勘違いするとは」

 

 

 

「バカな、あたしの吹き矢を!!」

 

 

 

 左腕に装着された菱形の盾の先端から伸びる巨大なビームサーベル。

 

 

 

 寸分違わず、シジーマのコクピットを串刺しにする。

 

 

 

「存外、つまらんものだ。ガンダムファイターにもピンからキリまであるようだな」

 

 

 

 言いながら、顔まで切り上げて真っ二つにしてしまう。

 

 

 

 巨大な爆発が起こり、コブラガンダムが大破した。

 

 

 

「まだ生きているようだな。素晴らしい生命力だ」

 

 

 

 自分に吸収されていないということは、敵が生きているということ。

 

 

 

 分かりやすいものだ、と笑うクルーゼの背後からゼウスガンダムがハンマーを片手に振り上げ、落雷と共に振り下ろしてきた。

 

 

 

「喰らえ、裁きの雷ぃいい!!」

 

 

 

「素晴らしいパワーだが、いかんせん大振りだ」

 

 

 

 呟きながら、ハンマーを切り払い返しに右手の大型ビーム砲を放つ。

 

 

 

 3発立て続けに放たれた光弾は、ゼウスガンダムの胴体を3回射抜いた。

 

 

 

 爆発と共に翼を広げ、距離を置くゼウスガンダム。

 

 

 

 その左右にマーキロットのジェスターガンダム。

 

 

 

 シジーマのコブラガンダムが並び立つ。

 

 

 

「さて。では始めようか? 絶望へのプレリュードを!」

 

 

 

 余裕の笑みを浮かべる仮面の男に、マーキロットはニヤリと返す。

 

 

 

「面白い! 我らに逆らう愚か者よ。神の雷に打たれ焼き落ちるがいい!!」

 

 

 

「神、か。かつては信じてはいなかった。今は信じてみても良い気がするよ…」

 

 

 

 三体の不死身の怪物と化したガンダムを相手に死を司るビショップが肩に担いだ巨大なビーム砲を向けて構えた。

 

 

 

 

 

 

 




 皆さん、お待ちかね〜!

 激戦を繰り広げるデュランダル軍とジブリール軍。

 この凄惨な争いを終わらせるため、運命の光が。

 自由の翼が。

 正義の剣が。

 そして、彼らに負けず劣らず輝く四つの星が戦場に舞い降りるのです。

 次回、機動武道伝Gガンダム SEED Destiny 第91話に!

 レディー、ゴー!!
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