新機動武闘伝 GガンダムSEED Destiny   作:カンナム

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 みなさん。

 ついにこのコズミック・イラの覇権を巡り、魔の力に魅入られた二つの勢力がぶつかりました。

 そんな中、ネオ・ロアノークとエクステンデッド3人に皮肉な運命の再会が待ち受けていたのです。

 それでは、ガンダムファイト!!

 レディイイイ、ゴォォォオオオッ!!





第91話 悲しき運命

 

 宇宙という闇が支配する世界で。

 

 

 

 次々とMSが火花を生んで散っていく。

 

 

 

 物量は互角。

 

 

 

 だが、防衛を強いられるはずのダイダロス基地は既に防衛ラインなどない。

 

 

 

 なぜか?

 

 

 

 既に戦略など無いのだ。

 

 

 

 ただただ、目の前にいる美味そうな餌を喰らいたい。

 

 

 

 彼らDG細胞のゾンビ兵は、思考もなく。

 

 

 

 金棒型のビームライフルを振り回しながら、敵のDG兵士の乗るMSに襲いかかる。

 

 

 

 そんな光景を目の当たりにしながら、ガーティ・ルーの指揮官席に座るロード・ジブリールは笑っていた。

 

 

 

「どうかね、イアン? 君たちもDG細胞の一部となる気分は? 人間としての正気を失えば楽になれるのだよ」

 

 

 

 副官席に座る艦長の金髪の男に告げる。

 

 

 

 言われた彼は未だに人の姿を保った数少ない人間の一人。

 

 

 

 いや。

 

 

 

 この艦にいる人間たちは誰一人、人としての姿を辞めてはいなかった。

 

 

 

 それを嘲り笑うのはジブリールだ。

 

 

 

「答えるだけの力も残されてはいないか。ほとんど脳を侵されて。自我を失くして尚、支配に抗うとはな。何がしたいのやら」

 

 

 

 肩を竦めるジブリール。

 

 

 

 その時、彼の目の前に高速移動しながら周囲の敵を葬り去る4機のガンダムが現れた。

 

 

 

「ほほう。これはこれは、ようこそ少年少女たちよ。この地獄へ」

 

 

 

 優雅に手招くジブリールの横で首元から頬にまでDG細胞が広がっているイアンが、死人の顔で真紅に染まった瞳を向ける。

 

 

 

 一瞬、イアンの表情が変わったようにジブリールには見え、微かに目を細める。

 

 

 

 だが、それも前方のガンダム達からの通信で止まる。

 

 

 

「テメエの悪行もここまでだ、ロード・ジブリール!!」

 

 

 

 白と青、そして赤を基調とするトリコロールの機体ーーヤマトガンダムのファイターであるアウルが告げる。

 

 

 

 同じく隣にいるトリコロールのフォースシルエット装備のインパルスガンダムがビームライフルを構える。

 

 

 

「悪いけど、今のアンタが大人しく投降するとは思えない。その戦艦ごと落とさせてもらうわ!!」

 

 

 

 ルナマリアの言葉にシャッフルハートを駆るステラも一歩前に出る。

 

 

 

 だが、彼女の瞳は大きく見開かれていた。

 

 

 

「待って、ルナ! アウル!! あの船はーー!!」

 

 

 

「……ガーティ・ルー! イアン艦長! みんな!!」

 

 

 

 ステラに続いてクーロンガンダムを駆るスティングも思わず声を出す。

 

 

 

 その時、ジブリールはこれ以上ないほどに厭らしい笑みを浮かべていた。

 

 

 

「く…っ、くくく、ははははは! まさか、エクステンデッドの連中だったか!! これは傑作だ!!!」

 

 

 

「黙れ! みんなに何をした!!?」

 

 

 

 スティングの声にジブリールは大笑いする。

 

 

 

 しばらく笑い続けた後、ジブリールはモニター越しに映る少年たちを見据えた。

 

 

 

「何をした、だと? 簡単なことだ。余計な知恵を捨てさせ、代わりに力を与えてやったのだよ。DG細胞という圧倒的な力をな!!」

 

 

 

 その言葉にルナマリアの眉がしかめられる。

 

 

 

「この、外道!!」

 

 

 

「何処がだ? 偉大なるDG細胞の恩恵を与えてやったのだ! むしろ感謝してもらいたいものだ!!」

 

 

 

 恍惚とした表情で告げるジブリールにアウルが叫ぶ。

 

 

 

「ふざけんなぁあああああ!! そんなこと、その人達は望んじゃいなかった!! 優しい人たちだった、温かい人たちだった、それを! それをーーー!! てめええええええええええええええッ!!!」

 

 

 

 涙を目じりから浮かばせて、アウルが怒りにその身を震わせる。

 

 

 

 ヤマトガンダムの両目から白い光の涙が流れ、強烈な気を全身から発生させる。

 

 

 

 ジブリールはこれを余裕の笑みを浮かべて笑った。

 

 

 

「人間など、滅びればよいーー! 残されるのは圧倒的な力を持つDG細胞という個体のみだ!! 貴様らも取り込んでやろう!!!」

 

 

 

 ジブリールの言葉に反応するように、無数のデスバットが現れる。

 

 

 

 音速を越えて、雨に群がるアリの様に。

 

 

 

 獲物を駆るピラニアのように。

 

 

 

 むさぼるように突っ込んでくる。

 

 

 

「……ぶち切れたぜ。この、クソ野郎がぁあああああああああっ!!!」

 

 

 

 普段冷静なスティングが本気で叫ぶ。

 

 

 

 瞬間、クーロンガンダムが強烈な気を纏ってビームクロスを抜き、薙刀にして振り回す。

 

 

 

「一発、ぶん殴らなきゃ気が済まないーー! 覚悟しなさいよ!!」

 

 

 

 インパルスガンダムの腰に帯剣させていたエクスカリバーを抜き放ち、ルナマリアも叫ぶ。

 

 

 

「返せーー! みんなを返せぇええええええっ!!!」

 

 

 

 シャッフルハートもステラの言葉に応えるように気を纏い、ビームクロスを抜いて薙刀にする。

 

 

 

 強烈な気を纏った4機のガンダムが、無数のデスバットとガンダムヘッドを前に一歩も退くことなく、真正面からぶつかり合う。

 

 

 

 ヤマトガンダムが姿を消し、デスバットの前に現れると強烈な右のボディを繰り出してアッサリと胴体を真っ二つにしてしまう。

 

 

 

 それが合図であったかのように、ヤマトガンダムの両手足に気が纏わり、次々と拳と蹴りだけで敵を葬っていく。

 

 

 

 クーロンガンダムは、ビームクロスを巧みに扱いある時は鞭のようにしなやかに、ある時は剣の様に鋭く切り裂いて敵を葬る。

 

 

 

 インパルスガンダムもまた、エクスカリバー二刀流を柄頭同士を組み合わせて双身にすると、この大剣を頭上で回転させながら敵を切り捨てていく。

 

 

 

 シャッフルハートは薙刀状にしたビームクロスを回転させて敵の攻撃を防ぎつつ、桃色に光る右手を前方に突き出した。

 

 

 

「流派、東方不敗! ハァアアアアアトフル、フィィンガァアアアア!!!」

 

 

 

 一撃で全てを飲み込む桃色の光線が掌から放たれ、スティング達が葬ったデスバットやガンダムヘッドの残骸を飲み込んで行く。

 

 

 

 気付けば、まるでドーナツのように彼ら4人の周りだけデスバットの姿は完全に駆逐されていた。

 

 

 

 この光景にジブリールは笑みすら浮かべている。

 

 

 

「素晴らしいーー! 君たちを取り込めば、更なる力を我らDG細胞は手に入れることができるーー! ありがとう。よくぞ、それ程までに育ってくれたものだ」

 

 

 

 微笑むジブリールをアウルは忌々しそうに睨みつける。

 

 

 

「……クソッ、みんなをどうしたら助けられる!?」

 

 

 

「焦っちゃダメよ。やるなら、気取られないようにしないとーー!」

 

 

 

 拳を握りしめて悔しそうにするアウルの肩をルナマリアが掴み止める。

 

 

 

 そういう彼女もいい案などありはしない。

 

 

 

 ジブリールの乗る艦は、あのガーティ・ルーなのだ。

 

 

 

 イアン達がアレに乗っている以上、ジブリールを倒すということは彼らを巻き込むことだ。

 

 

 

「……どうしたらいいのよ」

 

 

 

 思わず、そう呟いてしまう。

 

 

 

 スティングもステラも同じだ。

 

 

 

 現時点で、彼らとガンダムの力はデスバットやガンダムヘッド等、物の数に入らない程に強い。

 

 

 

 それくらいにまで鍛え抜かれた。

 

 

 

 このまま、何も考えなくても正面からジブリールを倒すことは容易だろう。

 

 

 

 彼らに誤算があるとすれば、イアン・リー達が未だにジブリールの下に居たことだ。

 

 

 

 これはジブリールも狙っていたわけではない。

 

 

 

 たまたま、オーブ侵攻作戦の失敗と指揮官であるネオ・ロアノークと三体のエクステンデッドの損失といった多大なる責任の処分を受け、地球から月面のダイダロス基地にまで左遷されてきただけなのだ。

 

 

 

 彼らもまた、己の守る者のためにロゴスを離れることができなかったのだ。

 

 

 

 葛藤するアウル達の後方からオーブ軍からの援軍として参戦していたアークエンジェルが現れた。

 

 

 

 発進カタパルトが開かれ、黄金のMSが二機現れる。

 

 

 

「ネオ・ロアノーク! アカツキ、出るぞ!!」

 

 

 

「アンドリュー・バルトフェルド! ガイア、発進する!!」

 

 

 

 二人の男の名乗りがあった後、二機のMSは真っ直ぐにスティング達と並び立った。

 

 

 

「どうした? らしくねえな、スティング! いい調子だったのに途中で辞めるなんてよ!?」

 

 

 

「……ネオ」

 

 

 

「…ん?」

 

 

 

 深刻な表情のスティングにネオも軽口を辞めて、敵を見据える。

 

 

 

「あれは、あの戦艦はまさか! ガーティ・ルー!?」

 

 

 

 ネオ・ロアノークの出現にジブリールは手を叩いた。

 

 

 

「これはこれは、生きていたのか。ネオ・ロアノーク大佐」

 

 

 

「……てめえ。俺の部下をどうした!?」

 

 

 

「これはおかしなことを。君は既にオーブに亡命したのだろう? 彼らは指揮官に見捨てられた可哀想な軍人達だよ」

 

 

 

 わざとらしく悲し気な表情を作ると、ジブリールはせせら笑う。

 

 

 

「やはり、記憶を失わせて書き換えても。裏切り者は裏切り者のようだね」

 

 

 

「どういうことだ?」

 

 

 

 問いかけるネオにジブリールは静かに告げた。

 

 

 

「エンディミオンの鷹ーー。ムウ・ラ・フラガよ、君はまだ記憶が戻っていないのか? まあ、どのみち君はここで我々に吸収される。記憶が戻ろうが戻るまいが、変わらんか」

 

 

 

 嘲るジブリールをそっちのけでネオは目を見開いた。

 

 

 

「何だとーー!?」

 

 

 

「本当に気付いていなかったのか? ククク、よく考えれば疑問などいくらでも湧いたものを。存外鈍いんだな」

 

 

 

「ムウ・ラ・フラガ、だとーー! なら、俺はーー!!」

 

 

 

 混乱する。

 

 

 

 頭の中にモノクロの光景が映り出す。

 

 

 

 爆発する寸前のストライクガンダム。

 

 

 

 シールドを構え、光の中に消えて行く自分。

 

 

 

「ロアノーク大佐!!」

 

 

 

 突如、アークエンジェルのブリッジからマリュー・ラミアスの通信が入る。

 

 

 

「惑わされないで! 今、貴方がしなければならないことを優先してください!! ここをしくじれば、我々人類に後はありません!!!」

 

 

 

 強い眦。

 

 

 

 鋭く美しい美貌。

 

 

 

 その顔が昔、涙でクシャクシャになっていたのをネオは知っていた。

 

 

 

「……っ!」

 

 

 

「たとえ記憶があろうとそうで無かろうと、貴方は貴方のはずよ!! 貴方が譲れない闘う理由や誇り、仲間まで失わないで!!!」 

 

 

 

 瞬間、前触れも無くアークエンジェルに放たれるガーティ・ルーの主砲。

 

 

 

 それをネオは無意識にアカツキの背中にセットしていた黄金のドラグーンを使って幕を張り、ビーム砲を消し飛ばした。  

 

 

 

「バルトフェルド、マリュー。待たせたな」

 

 

 

 その声は、昔の調子を取り戻していた。

 

 

 

 その表情は、ハッキリと自信に満ちていた。

 

 

 

「フラガ、でいいんだな?」

 

 

 

 バルトフェルドの言葉にネオーーいや、ムウが不敵な笑みを刻む。

 

 

 

「こんな色男、他にいるかよ? 砂漠の虎」

 

 

 

「くくく、それでこそ俺の親友だ。鷹よ!」

 

 

 

 笑みを浮かべ合い、鷹と虎は迫りくるデスバットを交差攻方気味に切り捨てる。

 

 

 

「マリュー! 俺はもうどこにも行かない!! 部下達を助けたら、必ずお前の下に戻る!!!」

 

 

 

「……ムウ」

 

 

 

 どこか寂しげな微笑みを浮かべて、マリューは静かに彼のかつての名を、取り戻した彼自身の名を呼んだ。

 

 

 

 

 

 これを見据えてジブリールは手を叩く。

 

 

 

「なるほど。愛というものかーー。かつて異世界で、我らDG細胞を打ち破った一組の男女が居た。彼らは確かに互いを愛し、その溢れる力で我らを駆逐してみせた。その時の輝きが人間の可能性だと、デビルガンダムは考えた」

 

 

 

 独白のようなセリフだが、ジブリールの瞳はどこか悟りを得たかのような表情だった。

 

 

 

「だが、我々はそうは思わない。人間などは所詮、何も変わりはしない、この体の器であるジブリールもそうだ」 

 

 

 

 スティングが目の前の敵を切り捨てながら問う。

 

 

 

「どういう意味だ!? てめえが、ロード・ジブリールだろうが!! 惚けんな!!」

 

 

 

「…そうだな。私はジブリールであったものだ。今は、そうこの場にいる全てでもある」

 

 

 

 アウルがコレに吐き捨てる。

 

 

 

「何を訳わかんないことをベラベラと!!」

 

 

 

 ジブリールは右手を掲げた。

 

 

 

 そして囁く。

 

 

 

「…この場にいる全てのDG細胞。それらは強力な1になる為に互いに貪り合っている。明鏡止水とやらでガンダムと一体化できる君たちなら、何となく分かるのではないか?」

 

 

 

 ジブリールの問いかけに皆が表情を硬くする。

 

 

 

 理解できた。

 

 

 

 理屈ではない。

 

 

 

 力と力が惹かれ合い、互いに一つになろうとしている。

 

 

 

 その流れをガンダムを通して理解できる。

 

 

 

「…まさか、お前は」

 

 

 

 スティングが冷や汗をかきながら問いかける。

 

 

 

「そうだ。スティング君、私は既にジブリールであってジブリールではない。この場にいるのはDG細胞の塊たる我々だけだ。未だなり得ていない数名の者も。ウルベ・イシカワやウォン・ユンファも。いずれは力の流れに取り込まれ、我々と同じになる」

 

 

 

 機械のような無機質な声だ。

 

 

 

 プログラムされたような言葉だ。

 

 

 

 彼もブルーコスモスの例に漏れず。

 

 

 

 かつて、ナチュラルとしてコーディネイターにコンプレックスを植え付けられた人間の一人だ。

 

 

 

 そんな彼がウルベやウォンの甘言を受け、強烈な、強大な力を求め、DG細胞を得るのは自明の理だった。

 

 

 

 だが、今の彼は圧倒的な力を放ちながら、誇りながら、ジブリールの心はない。

 

 

 

 因果応報というべきか。

 

 

 

 力を求めた臆病な彼の心は既に、完膚なきまでDG細胞に食われていた。

 

 

 

「…狂ってる。もう、戻れないくらいに」

 

 

 

 ステラが悲しそうな表情でつぶやいた。

 

 

 

 確かに悪党だった。

 

 

 

 人間とは思えない真似も平然とできる奴だった。

 

 

 

 だが、それでも人間だったのだ。

 

 

 

 言い知れぬやるせなさに、この場にいた人の心を持つ彼らの表情が歪んだ。

 

 

 

「…面白いな。この男を憎みながらも、哀れに思うのか。

 

不思議なプログラムだ。どのような状況に陥れば、そのような思考になる?」

 

 

 

 問いかけてくるジブリールにムウが静かに返す。

 

 

 

「てめえには分からねえよ。てめえは、人の心を理解しようとはしてねえからな」

 

 

 

「…興味はある。ただし、それを第一に優先する必要性を感じないだけだ」

 

 

 

「そうかよ、機械人形が!!」

 

 

 

 言いながらムウはアカツキの右手に持っていたビームライフルを構える。

 

 

 

「どうした? そのままブリッジを射抜けば、もしかしたらジブリールの個体は死ぬかもしれない。何故撃たない?」

 

 

 

「…るせえんだよ」

 

 

 

 苦虫を噛んだような表情で固まるムウを狙い、ガンダムヘッドが牙を剥いて襲いかかる。

 

 

 

 これをバルドフェルドがガイアをMAに変えて、両翼に備わったビームブレードで顔を真っ二つに切り裂いた。

 

 

 

「焦るなよ、フラガ! 何か手があるはずだ!!」

 

 

 

「…バルトフェルド、すまん!」

 

 

 

 仕切り直しだ、とばかりに距離を取ろうとするムウとバルドフェルド。

 

 

 

 スティング達も群がってくる敵を葬りながらガーティ・ルーを見つめる。

 

 

 

「未来世紀のガンダムファイターの機体を使いこなし、この世界のガンダムで未来世紀のファイターと変わらない強さを叩き出すとは。素晴らしい強さだ」

 

 

 

 自らをDG細胞であると言い切るジブリールは、無機質な光を宿した瞳でスティング達やルナマリアを見つめる。

 

 

 

 その時だった。

 

 

 

「…ロアノーク大佐。スティング、アウル、ステラ」

 

 

 

 それまで無表情だったイアンが何かに苦しむように表情を歪めて、息も絶え絶えになりながら語りかけてきた。

 

 

 

「奇跡だな。最期に貴方達に会えるとは…」

 

 

 

 通信兵達が声を上げる。

 

 

 

 ガーティ・ルーの兵士達の目に正気の光が宿っている。

 

 

 

「…驚きだ。何故、お前達にそれだけの精神力がある? デュランダルさえも取り込んだ我々の力を浴びて、まだ理性があるとは」

 

 

 

 実験中の虫が意外にも長生きしている、と言いたげなくらいに無感情な言葉をジブリールは告げる。

 

 

 

 イアンはそんな彼を無視して、ネオ・ロアノークーーいやムウ・ラ・ブラガに告げた。

 

 

 

「申し訳ありません、大佐。部下を預かりながら、私は誰一人守れませんでした」

 

 

 

「辞めろ! 俺のせいなんだな? 俺がお前らを連合に、ロゴスに返したばかりに、こんなーー!!」

 

 

 

 詫びようとするイアンを止め、ムウは泣きそうな顔になりながら告げる。

 

 

 

 コレにイアンは首を横に振った。

 

 

 

「隊長。私は隊長の判断を間違えたとは思いません。あの時、確かに私達が戻らねば。私達の家族にまで、その責任が及んだでしょうから。悔いはありません」

 

 

 

「馬鹿野郎…! この、大馬鹿野郎が!! 何故、責めてくれないんだ!? 恨み言の一つでも、言ってくれりゃあ!!!」

 

 

 

「…恨まないわけではありません。だけど、我々には他に選択肢がありませんでした。これは仕方のないことだ」.

 

 

 

「イアン……!!!」

 

 

 

 涙は悲しみと懺悔から来るものだった。

 

 

 

 イアンは静かに、スティング、アウル、ステラを見る。

 

 

 

「よく。よく、無事だったな。最期に会えて良かったよ」

 

 

 

 アウルがたまらず叫んだ。

 

 

 

「止めてよ! なんで、諦めんだよ!? 帰ろうよ、僕たちと!! 艦長!!!」

 

 

 

 その言葉にステラも涙を流す。

 

 

 

「ヤダよ、ヤダよ! 艦長、みんな!! 死んじゃ、ダメだよ!!!」

 

 

 

「艦長、諦めんなよ! 必ず、必ず何とかするから!! だから、頼むよ!!!」

 

 

 

 冷静なスティングも必死に頼み込む中で、イアンは静かに首を横に振った。

 

 

 

「現実を見ろ、3人とも。私達はもう、人じゃない。この先はDG細胞の支配下に置かれるだけだろう」

 

 

 

「ワクチンが、あるわ!! キョウジさんから預かってるのよ!! だから!!」

 

 

 

「ありがとう、ザフトの少女よ。ワクチンは、DG細胞に体を作り変えられる前までなら効いただろうな。だが、この体はもう、手遅れなんだ」

 

 

 

「…どういうこと?」

 

 

 

 ルナマリアの問いに答えたのは、ジブリールの姿をした個体だった。

 

 

 

「こいつらは既に脳までも我々に作り変えられた。辛うじて残っている理性もあと僅かだ。それが消えればゾンビ兵となる。今ワクチンを打たれれば、こいつらの体は朽ち果てるだけだ」

 

 

 

 冷たい双眸、無感情な声。

 

 

 

 鉄のような無表情でジブリールは告げた。

 

 

 

 淡々と絶望的な事実をだ。

 

 

 

 イアンは静かにムウの駆るアカツキに目をやる。

 

 

 

「…罪を感じてくださるなら、貴方が私達にトドメを刺してください」

 

 

 

「…イアン」

 

 

 

「スティング達には頼めません。だからと言って、オーブのアークエンジェルやザフトの少女に頼むのも筋違いだ」

 

 

 

 静かに穏やかな、死を覚悟した表情で。

 

 

 

 イアンは、そしてクルー達はムウを見た。

 

 

 

「他の誰でもない。貴方に倒されたい。それが我々クルーの最期の願いだ」

 

 

 

「……すまねえ」

 

 

 

「謝罪は要りません。こちらこそ、自爆装置を使えずに申し訳ありません。既にジブリール卿にこの艦は支配されているので」

 

 

 

 静かにムウはアカツキのビームライフルをブリッジに向ける。

 

 

 

「…恨んでくれ、俺を」

 

 

 

「ええ。貴方が私達を撃たなければ、私達は貴方を許さないでしょう。まして、スティングやアウル達に私達を殺させれば、私は絶対に貴方を許さない!!!」

 

 

 

 最期の人としての意地だった。

 

 

 

 これを受け、ムウはビームライフルの引き金に指をかける。

 

 

 

「ネオ、待ってくれよ!!」

 

 

 

「みんなを助けようよ!!」

 

 

 

 そんなアウルとステラをスティングが抑えた。

 

 

 

「ネオ、頼む!!」

 

 

 

「…スティング、あんた」

 

 

 

 ルナマリアが彼を見たとき、涙を流しながら彼も必死で二人を止めていた。

 

 

 

「俺じゃ、助けらんねえ。だけど、撃てねえんだ。頼むよ、ネオ!!」

 

 

 

「…ああ。分かった」

 

 

 

 瞳を開け、ムウはビームライフルから光弾を放った。

 

 

 

 目を逸らさない。

 

 

 

 イアンは、クルー達は満足そうな笑顔を浮かべていた。

 

 

 

 光弾がブリッジを直撃し、無表情なジブリールも笑顔を浮かべていたクルー達も光の中に消えていく。

 

 

 

ーー ありがとう。フラガ大佐 ーー

 

 

 

 爆発するガーティ・ルーの向こうから、そんな声が光と共にムウ達に届いた。

 

 

 

「馬鹿野郎…! ありがとう、なんて。最期の言葉くらい、恨み言の一つでも聞かせてくれよ!! こんな、こんな不甲斐ない隊長があるかよ!!!」

 

 

 

 涙交じりに悔む言葉を口にするムウ。

 

 

 

 そのアカツキの肩をガイアが掴み、下がらせる。

 

 

 

「…今は泣け。だが、泣き終えたらすぐに行動しろ。あいつらの死を犬死にさせない為にな」

 

 

 

「ああ。すまん、バルトフェルド」

 

 

 

 真剣な表情で告げるバルトフェルドに涙ながらにムウは応えた。

 

 

 

「…スティング。気付いてる?」

 

 

 

 ルナマリアが静かに表情を鋭いものに変えている。

 

 

 

 これにクーロンガンダムを構えさせて、スティングが応えた。

 

 

 

「ああ。生きてんだろ? いや、もともと死んでんのか。どっちにしろ、もう許さねえがな」

 

 

 

 ルナマリアとスティングの言葉に皆が目の前の爆発する戦艦だったものを見据えた。

 

 

 

 宇宙に飛び散り浮かんだ鉄くずは意思を持って互いに集まり。

 

 

 

 巨大な花、もしくは種のような姿を一瞬取り、四つ足の逆さまになった上半身が特徴的な異形の機体へと進化した。

 

 

 

「…デビルガンダムJr.か!!」

 

 

 

 アウルの言葉にジブリールが静かに告げる。

 

 

 

「その通り。我々はデビルガンダムの子だ、人の子よ。我々もまた、君たちに問わねばならない。始めよう、真なる世界は我々か人類。どちらを選ぶかを、決めようではないか」

 

 

 

 厳かにジブリールーー否、デビルガンダムJr.は告げた。

 

 

 

 その言葉に、アウル、ステラ、スティングの気が膨れ上がった。

 

 

 

「お前は、死ねよ!!」

 

 

 

「お前を、倒す!!」

 

 

 

「ケリを、着ける!!」

 

 

 

 3人の機体が明鏡止水の境地に至り、黄金の気を全身に纏う。

 

 

 

「「「一気に終わらせてやる、このガラクタがぁあああああああっ!!!」」」

 

 

 

 3機の黄金の気を放つガンダムが、悪魔の子に挑みかかった。

 

 

 

 

 

 




 みなさん、お待ちかね〜!

 DG細胞に支配され、完全に自我を無くしたジブリール。

 彼の駆る悪魔の子を名乗るガンダムは、その圧倒的な力でスティング達に挑むのです。

 次回、機動武道伝Gガンダム SEED Destiny 第92話に!

 レディー、ゴー!!
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