新機動武闘伝 GガンダムSEED Destiny 作:カンナム
デビルガンダムの子。
デビルガンダムJr・がアウル達に戦いを挑んできました。
その悪魔の子を黄金と化したヤマトの名を冠するガンダムが迎え撃ちます。
そしてーーファム・ファタールことフレイ・アルスターとウルベ・イシカワの前に!
ついに自由と正義が降り立つのです!!
それでは、ガンダムファイト!!
レディイイイイ、ゴォオオオオオオオッ!!!
禍々しい気の塊。
力の奔流を受けながら、3人の少年達が真っ向から向かい合う。
「ちょっと、スティング! アウル! ステラ!! 3人とも明鏡止水のハイパーモード使ったら気がすぐに尽きるじゃない!!」
ルナマリアのもっともな指摘。
黄金の気を纏うガンダムは強力無比な反面、消費気力が多くガス欠になりやすい。
ここぞという時に使うべきだと言いたげなルナマリア。
だがそんなもっともな指摘すら、今の3人には聞こえていない。
「悪いな、ルナマリア。もう我慢できねぇんだよ!!」
言うと同時にスティングのクーロンガンダムが黄金の気を爆ぜさせると同時に消えた。
瞬間、デビルガンダムJr.の目の前に移動し、拳を繰り出す。
強烈なエネルギーフィールドを発生させたJr.はクーロンガンダムの気を纏った拳を目に見えない力の壁で受け止める。
「四天王ビットーー」
放たれた花弁4枚。
それら一つ一つが、デビルガンダム四天王の力を持つ。
雷を纏いしグランドホーン。
炎を纏いしヘブンズダード。
光を放つウォルターテンタクル。
そして闇を放つダークネスフィンガー。
四天王ビットは、それぞれの技を放つ機関に擬態して襲い来る。
コレをルナマリア含むスティング達四人が迎え打った。
「上等じゃないの!!」
「各個撃破するぞ、続けぇ!!」
ルナマリアとスティングの叫びにアウル、ステラが追従する。
マスターガンダムの上半身を模るビットが放つダークネスフィンガーをルナマリアが、インパルスのツインエクスカリバーで手首から切り捨てる。
「マスターアジアに比べたら、雑魚もいいとこね!!」
中央で分割させ、左右にエクスカリバーを握ると網の目のように斬閃を繰り出し、細切れにしてしまった。
傍らではスティングのクーロンガンダムが黄金の気を纏った状態で右ストレートを繰り出し、雷を纏った角を殴り砕く。
羽根を放つビットには、アウルのヤマトガンダムが腰のビームサーベルを一閃して切り捨て。
ビーム砲を放ってくる球体には、ステラのシャッフルハートが蹴りを繰り出して粉砕する。
「アウル、お前の力で消し飛ばせ!!」
「私達が雑魚を蹴散らす!!」
「しっかり、やんなさいよ!!」
3人からの言葉に頷き、アウルのヤマトガンダムがデビルガンダムJr.に一気に近づいた。
「ーーなるほど。出力が違うようだ。不思議だな。ベルリンの時とは雲泥の差だ」
「機械じゃ分からねえよな。僕たちが、強くなる理由はさ!!」
黄金のヤマトガンダムが、右ストレートを逆さまになったデビルガンダムJr.の顔に繰り出す。
凄まじい音と火花を放ちながら、右掌で止められる。
「ーー興味深いものだ。人の子よ、お前達が我々を上回るというのか?」
「馬鹿野郎が。世界がどちらを選ぶかって言ったよな、お前!!」
「如何にも。世界が真に望みしは我々か、人類か」
「世界はな、誰のものでもないんだよ!!!」
言い放ちながら、アウルは左拳を繰り出す。
左手で捌きながら拳を繰り出してくるJr.
「故に世界が選ぶのだ、人類か我々DG細胞かをな」
「違う! 世界は選んでなんかいない! 世界は等しく全てに与えられてるんだ!!」
「ならば証明せよ。お前達が、勝たねば全ては我々が支配する」
「上等だぁあああ!!!」
アウルの叫びに応えるようにヤマトガンダムの右拳が烈火を纏う。
「僕のこの手が唸りを上げる!! 炎と燃えて全てを砕くぅうう!!」
ヤマトガンダムの烈火の炎を受けて炙られJr.の右手が消滅する。
「ーー!」
理不尽とも言える攻撃力に、ジブリールの瞳が見開かれた。
「灼ぁああく熱!! サァンシャァアアイィン!! フィンガァアアアッ!!!」
ケーキにでもナイフを入れるかのようにサクッと胸に突き刺さる灼熱の右掌。
「ーーなんだと?」
無感情なジブリールの目が見開かれたと同時、アウルの叫びが響いた。
「爆発っ!!」
瞬間、デビルガンダムJr.の内部から強烈な爆発が生じ、跡形もなく吹き飛ばすのだった。
「ーーお前なんか、僕のヤマトガンダムの敵じゃねえ」
粉々になり、火花と散る残骸に向けて、アウルが静かに告げた。
「…見事だ、人の子よ。されど場にはまだ我々が存在する。全てを屠れねばそなた等に明日はない…」
ジブリールの無機質で不気味な声だけが辺りに響いていた。
一方、ダイダロス基地の近くにあるアルザッヘル基地周辺で。
二機の同じ顔をした機体が凌ぎあっている。
傍目から見れば、両者は姿を消しては現れて、ぶつかり合っている。
両者のぶつかり合いによって生じる余波で周りのMS達が次々と落ちていく。
壊されたMS達は光の粒子となってファム・ファタールの機体ーー運命の羽と神の顔を持ったデスクイーンに取り込まれていく。
「フフフ。アハハハハハハハハ! 楽しいわ!! みぃんなゴミに見えるもの!! 貴方もそう思うでしょ!?」
「稚拙な憎悪だ……!! その程度の意志で私に挑むか、人形め!!!」
次々と力を吸収し、その感覚に高揚し笑うフレイ・アルスターの姿をした少女にウルベが不快さを隠すことなく告げる。
左の肘鉄と対艦刀アロンダイトがぶつかり合う。
火花を散らすビームと気。
ファムの両手打ちの唐竹の一撃をウルベは肘で跳ね上げ、右ストレートを放つ。
正面に捉えたデスクイーンは残像。
ヴォワチュールルミエールと呼ばれる光の翼を広げて空間を歪曲し、加速する。
この原理はゴッドガンダムのフィールドダッシュに酷似している。
「もらったわよ、ウルベ!!」
完全に背後を捉えたデスクイーンがヴァニシングガンダムの胴を薙いだ。
だが、その一撃は空を切る。
目の前で青い光を纏ったヴァニシングガンダムが空間を歪曲させ、残像を残しながらの高速移動で避けたのだ。
DG細胞の記憶でファムにはそれが何かわかる。
「エネルギーフィールドを利用した空間移動? 生憎だけれど、その技の弱点は分かってるわ」
呟くように言いながら、デスクイーンがデータから予測した移動位置に向かってビームライフルではなく背中のオルトロスを構える。
「ーー落ちなさい!!」
紅と蒼の多重ビーム砲が光を纏って移動していたヴァニシングガンダムの手前にまで迫る。
「ほう……」
ウルベは笑いながら、そのビームを片手で払う。
「バカね! 砲撃が効かないのは分かってるわよ!!」
弾かれたビーム砲の脇を通り抜けてデスクイーンがヴァニシングガンダムの頭上を取った。
「さようなら!」
アロンダイトを両手持ちで振り下ろす。
瞬間、ウルベも反応し右の拳で受ける。
強力な力と力のぶつかり合い。
ひびが入ったのは、アロンダイトの方だった。
「……っ!」
目を見開くファムにウルベが笑う。
「自己進化を得たとはいえ、技術レベルで圧倒的に劣るこの世界のMSを基によくぞ、ここまで戦った。だが、ここまでのようだな」
ウルベが冷酷に笑いながら、右拳に力を込めあっけなくへし折る。
まるでガラス細工のように砕け散る大剣を無視して、左掌に青黒い光を放たせる。
「虚無と成れーー! ヴァニシングフィンガァアアアアアア!!」
胴体をまともに貫く左掌。
にやりと笑みを浮かべるウルベだが、捉えたデスクイーンはまたしても残像だった。
「ここまでなのは、貴方のようね」
右手から青白い光を放ちながら、デスクイーンのパルマフィオキーナが顔面に放たれた。
咄嗟に上体を後ろに倒しながら避けようとするも間に合わない。
ファムの口元が嗜虐的な笑みを浮かべた。
キラとアスランの二人は、強大な二つの力がぶつかり合っているのを感じていた。
その力のぶつかり合いに近づくにつれ、余波は大きくなっていく。
「この力ーー危険だ」
「ああ。どちらも凶悪な気配を出しているが、これはーー!」
ダイダロス基地からそう離れていない強大な連合の主力基地。
それがアルザッヘル基地だ。
だが、様子がおかしいのはすぐに見て取れた。
これだけ基地に近づいているのに、MSが一機も出撃してこないのだ。
原因はすぐに判明する。
次々と気配が取り込まれていくのだ。
強大な力を放つ片方に。
止めなければ、際限なくパワーが上がるであろうことは明白だった。
彼らーーフリーダムとジャスティスが修羅の巣食う戦場に現れたのは、それからしばらくしての事だった。
「こ、これはーー!」
そこで彼らが見たものは。
左掌を青黒く輝かせてデスクイーンの胴体を貫き掲げ上げたヴァニシングガンダムの姿だった。
「ウルベとーーもう一人!?」
同じ力を放っているデスシリーズの法則性によって作り出されたであろう機体。
アスランが混乱していると、通信がモニターを通じて入った。
赤い髪に灰色の瞳をした少女が、額から赤い血を流しながらこちらを見ている。
「……キラ……?」
瞬間だった。
キラのフリーダムの気が爆発した。
「ウ、ル、ベェエエエエエエエエエエエエッ!!!」
その場から消え、ヴァニシングガンダムの目の前に現れる。
「!? キラ・ヤマトだと!?」
目を見開くウルベを遥か後方に蹴り飛ばし、ファムの機体を抱きとめる。
「フレイ! フレェエエエエエイッ!!」
モニター越しに必死に呼びかけると返事があった。
「聞こえてるわ、キラ」
微かに笑いながら、ファムーーフレイは答えた。
それにホッとするキラにフレイは笑顔のまま告げる。
「大丈夫よ、私はーー幻じゃないわ」
「フレイ…っ! フレイ……っ!!」
涙ながらに顔をクシャクシャにするキラをあやすようにフレイは微笑む。
そんな彼らの前にゆっくりと月面の岩山に突っ込んだヴァニシングガンダムが立ち上がった。
首を左右に倒しながら、ウルベが微笑む。
「不意打ちとはやってくれるじゃないか、キラ君。まあいい、諸君らを皆殺しにすることに変わりはない。多少順番が変化するだけだ」
冷酷な笑みを浮かべてウルベがファイティングポーズを取る。
瞬間、キラがアスランに告げた。
「アスラン。彼女をーー!」
「お、おい! キラ!! 彼女はーー!!」
「分かってる!! だけど、助けたいんだ!!!」
アスランの言葉を遮り、キラはビームソードを抜き放つ。
そしてヴァニシングガンダムに向き合う。
「フフフ、中々楽しめそうだな」
ヴァニシングガンダムも腰からビームソードを抜いて構えた。
互いに静かに、しかし油断なく相手の隙を窺っている。
先に動くのは、キラかウルベか。
どちらかの隙を見つけた方が動くだろう。
青眼に構えたウルベと対照的にキラは右手にビームソードを一振り持ち、左の逆手でもう一振りを抜いている。
キラの瞳からハイライトが消え、フリーダムが瞳を輝かせると同時に機体は地面を蹴り、消えた。
瞬間、ウルベのヴァニシングガンダムも同時に地面を蹴って消えるように高速移動する。
現れたのは互いの正面。
ウルベの両手持ちからの唐竹割りとキラの独特な二刀流からの十字斬りが真っ向からぶつかる。
飛び散る火花。
同時にすれ違う両者。
互いの左腕が微かに斬られている。
「ーーふふん」
「いける!」
互いに手ごたえを感じ、振り向きざま高速移動で斬撃を放ちあう。
ウルベの一撃は両手、片手、順手、逆手と様々な剣技を使ってくる。
少しでも見誤れば、一瞬で網の目の様に走った斬閃に機体をバラバラにされるだろう。
だが、キラも負けてはいない。
それほどの斬閃の嵐をかいくぐり、両手に持った左右のサーベルで切りつける。
互いに演武のような動きで円を描きながら斬撃を放ち、避ける。
その戦いはコンマ数秒が命取りの正に、剣の達人同士の立会いだった。
ウルベの袈裟懸けの一撃を右順手の剣で止め、身を翻し左逆手の剣で横薙ぎを返す。
だがヴァニシングガンダムの右手が光り、ビームソードを受け止める。
「……クッ!!」
「虚無と散れーー! ヴァニシングゥウフィンガァアアアアアアッ!!」
咄嗟にビームソードを手放して後方へダッシュして避ける。
光る掌はビームソードを破壊すると光線を放ってくる。
咄嗟にキラはバックパックに付けられたスーパードラグーンを使って八角形の光のシールドを作り、更に両腕のビームシールドを展開して受け止める。
光の壁と光の線がぶつかり、爆発した。
キラのフリーダムが、そのまま左脇にスライドするように滑空し、ドラグーンと全てのビーム砲をヴァニシングガンダムに向ける。
「ハイマットーーフルバーストォオオオ!! 当たれェええええええ!!!」
両手のビームライフル、胸部の陽電子ビーム砲、腰の二門のレールガンと宙に浮かべた無数のドラグーンを同時に放つ。
瞬間、ウルベも両腰からビームソードを二刀抜き、その場で大回転する。
「必殺! ヴァニシングスラッシュ・タイフゥウウウン!!」
無数のビームを竜巻と化したガンダムが全て弾く。
瞬間、キラがそのまま突っ込む。
「うぉおおおおお!!」
「来るか!!」
同時に斬りつける両者。
竜巻が消え、両者の斬撃が辺りに衝撃波を放ちながら止まる。
互角の斬り合い。
どちらもまったく譲らない好勝負を繰り広げている。
「……おのれ! ここまで私に食らいついてくるか!!」
「まだまだぁああああ!!」
「調子に乗るなよ、小僧ぉおおおお!!」
両者互いに気を纏い、宇宙を所狭しと駆け回る二機のガンダム。
その様子をデスクイーンに乗るフレイを助け起こしながら見つめ、アスランが拳を握る。
「行けるぞ、キラ!!」
「……駄目よ」
「何ーー?」
「アンタも行きなさい」
強い目で言われ、アスランが思わず反論する。
「俺だってそうしたいが、キラがお前を助けろと言ったんだ。ならーー」
「それでキラが殺されたら、元も子もないでしょ?」
軽く告げるフレイにアスランの目つきが変わった。
「お前の目的が分からない。お前は一体何がしたいんだ?」
「さあ? 少なくとも今のあたしはフレイ・アルスターの意識が強いみたいね」
「何だとーー?」
訝し気に問いかけるアスランに微笑みかけるとフレイは告げた。
「ここであの子が死ぬなら、それも運命かも知れない。でも、食い止められる運命なら止めて上げてもいいんじゃない? アンタはあの子の親友なんでしょ?」
何を考えているか分からない。
だが、この女の言うことも一理ある。
ウルベのガンダムからアスランも、そして恐らくはキラも感じているはずだ。
どこか不気味な力を感じる。
得体の知れない、不吉な力があのガンダムからは放たれている。
「……そういえば、お前はあと少しで負けそうだったんだな。奴は何をした?」
「分からない」
「何だと……?」
思わず目を見開いてフレイの顔を見ると彼女は表情を一切なくして答えた。
「あたしの一撃は確かにウルベの首を取ったはずだった。だけど、背中を向けていたウルベの左手の方があたしの機体を貫くのが速かった」
「……」
「ほとんど同じスピードで動いていたのに。たとえば、奴があたしのスピードに合わせて動きを遅くしていたとするなら、ヴォワチュールルミエールと同じエネルギーフィールドを展開した高速移動の中でそんなことができる? そんなはずないわ。からくりがあるはずなのよ」
空間を歪曲させエネルギーフィールドを発生させて、摩擦熱を起こすことなく加速する。
その加速移動の中からさらに加速した。
確かにあり得ない。
ならばウルベは何をした。
アスランの瞳が鋭く細まる。
再三にわたる打撃の応酬。
フリーダムの蹴りにヴァニシングガンダムは右の肘を合わせて止める。
返しの右拳をウルベが繰り出すとキラは右手一本で機体を地面に逆立ちし、強烈な蹴りを相手の顎にぶつけた。
「ぐぅ!?」
思わず後ろに下がるウルベ。
目の前に高速移動で現れたフリーダムの右膝が顔面に叩き込まれる。
「ぐはぁ!」
悲鳴を上げるも、なんとかその場に踏みとどまる。
だが、ダメージ硬直ですぐには動けない。
さらにキラは高速移動でヴァニシングガンダムの背後を取ると、フリーダムの右手を真っ赤に燃やす。
「これで決める! 爆熱! ゴッドフィンガァアアアア!!」
爆熱ゴッドフィンガー。
ゴッドガンダムの必殺技であり、シャイニングフィンガーの強化技である。
これをキラはドモンとの修行により身に付けていたのだ。
完璧なタイミングだった。
事実、ウルベは目を見開いて自分に迫る炎の右掌を見つめるしかできていない。
だがーー。
「ーー何!?」
キラが思わず目を見開いた。
ヴァニシングガンダムの後方に青黒い穴のようなものが現れ、その中に身を潜ませるように消えたのだ。
思い切り空を切るフリーダムガンダムのゴッドフィンガー。
その右側に小さな青黒い穴が現れ、そこからヴァニシングガンダムの右腕が伸びた。
「な!?」
ふり切った姿勢で振り返りながら、青黒い光を放つ右手を見据える。
まともにその手から放たれた光に撃たれ、フリーダムガンダムは後方へ弾き飛ばされた。
「ぐああああ!」
悲鳴を上げながらもキラは体勢を空で整え、着地する。
その目の前に青黒い穴が生じ、ヴァニシングガンダムが闇の空間から一歩外に踏み出すようにして出てきた。
「こーーこれは!?」
咄嗟にキラの頭の中に生まれた仮説はミラージュコロイドだった。
レーダーや目視モニターを攪乱させる粒子を放って己を風景の一つに擬態する地球連合が開発したシステムだ。
「いやーーー違う!!」
だがその考えをキラ自身が否定した。
今のキラはフリーダムガンダムと一心同体になっている。
空間が少しでもずれれば感知できる程に明鏡止水の感度は上がっているはずだ。
ならばそれを感じられなかったということはーー。
「まさかーー空間転移!?」
空間を歪曲させる加速移動のさらに上位互換に位置する。
空間に穴を空け別の次元から移動してくる。
亜空間移動。
「バカな! ドモンさんとゴッドガンダムでさえ、元の世界からこちらに来るのに相当のエネルギーを必要としたのに!! それをーーあなたはガンダム単騎でできるって言うのか!?」
「素晴らしい。100点の回答だ、キラ・ヤマト君。流石は優秀なスーパーコーディネイターだな」
拍手しながらウルベは余裕を持ってキラを見据える。
今のウルベは最悪だった。
実力ならばほとんど互角の戦いを展開していた。
だが、空間移動ができるなら動きを予備動作から予測することが難しい。
「そうだ。例えばこういうこともできる。ヴァニシングホール!」
ウルベは自分の右側面にノーモーションで軽いジャブを放つ。
すると右腕は途中で青黒い穴「ホール」の中に消え、次の瞬間には。
「ぐは!!」
強烈な衝撃をガンダムの右頬に感じ、吹き飛ばされるフリーダム。
見ればフリーダムの目の前に「ホール」が出現し、ヴァニシングガンダムの右手がそこから伸びている。
「空間にホールを発生させ、別の空間へとつなげられるのか!!?」
咄嗟にキラは距離を稼ごうとドラグーンを放つ。
それらは無数の空間に生じた細かいホールに飲み込まれた。
「ーーまさか!?」
勘のいいキラは咄嗟に自分の周囲に気を配る。
小さいホールはフリーダムを囲むように周囲に現れ、そこからキラが放った緑色のビームが網の目の様に放たれた。
「ーーくっ!」
咄嗟にジグザグに機体を高速移動させて避ける。
その目の前にヴァニシングガンダムがホールを使って転移していた。
「しまーー!?」
「隙だらけだよ、キラ君!!」
右ストレートをまともに浴び、弾き飛ばされるフリーダム。
その吹き飛ばされた先にホールが現れ、両腕を組んで頭上に掲げるヴァニシングガンダムが出てくる。
「この程度でしまいかね!?」
振り下ろされた一撃は、フリーダムを月面に叩きつけ、巨大なクレーターを生まれさせた。
その光景に思わずアスランが目を見開く。
「キラァアアアアアアッ!!」
互角の戦いだった。
なのに、一気に勝負の天秤がウルベに傾いてしまった。
あの力は危険すぎる。
空間を繋げることで、自分の攻撃を敵に届けたり。
敵の攻撃を相手に返す能力。
おまけに転移までできる。
あまりにも理不尽な能力だった。
ヴァニシングガンダムは両腕を組んだまま静かにフリーダムを見下ろす。
「どうした、キラ君。君の力はこんなものではないのだろう? まあ、出し惜しみをして死にたいのなら止めんがね」
ウルベには分かっていた。
オーブでの戦闘で、キラ・ヤマトとアスラン・ザラの二人は明鏡止水の境地。
黄金のハイパーモードを使用できる。
ゴッドフィンガーまで放てるようになったのだ、ハイパーモードを使えないわけがない。
ウルベはそう考え、静かに立ち上がって来たキラを見据える。
「……できれば、この後の戦いも考えて体力は温存しておきたかった。だけど、そんな余裕はないみたいだ」
「この私を相手に本気を出さずに勝つつもりとは。笑わせてくれる」
鼻で嘲笑うウルベにキラは静かにフリーダムに拳を握らせると気合を入れた。
「ーーはぁああああ!!」
黄金の柱が漆黒の天に向かって立ち、フリーダムガンダムが神々しい黄金の気を纏う。
「出したか。明鏡止水の境地ーーハイパーモードを!!」
これにウルベもニヤリと笑い、構えを取る。
キラが静かにSEEDを発動させた瞳で、黄金となった髪をなびかせてウルベに告げた。
「僕は負けないーー。もう、誰にもだ!!」
キラの気高い魂に応えるように、黄金と化したフリーダムガンダムの目が輝いた。
みなさん、お待ちかね~!!
黄金の気を纏い神の右手を受け継いだ自由の翼。
これに対するは空間をつなげる無の権化。
はたして、キラはこの戦いに勝利することができるのか?
そして、DG細胞の人形とされるファム・ファタールは何を企んでいるのか!?
次回、機動武道伝Gガンダム SEED Destiny 第93話に!!
レディー、ゴー!!