新機動武闘伝 GガンダムSEED Destiny   作:カンナム

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 みなさん。

 未来世紀における悪の塊。

 ウルベ・イシカワとウォン・ユンファの起こしたコズミック・イラでの悲劇。

 その悲しみを繰り返させんと、この世界の少年達はガンダムを駆り挑みます。

 そう!

 あのガンダムファイター達のように。

 それでは、ガンダムファイト! ウルベ最終決戦に!!

 レディイイイ、ゴォォォオオオッ!!


第93話 少年の慈悲と梟雄の意地

 

 

 

 

 黄金の気を纏い、ストライクフリーダムガンダムが腰だめに構える。

 

 

 

 対峙するヴァニシングガンダムもまた、拳を握り構えた。

 

 

 

「来るが良い、キラ君」

 

 

 

「なら、行くぞ!!」

 

 

 

 そんなやり取りの後、フリーダムが光の翼を広げて一気に加速した。

 

 

 

 ホールを生み出し、テレポートするヴァニシングガンダム。

 

 

 

 現れたのはフリーダムの側面。

 

 

 

 右の拳を振り抜くウルベ。

 

 

 

 しかし、キラは素晴らしい反応速度でこれを左に見切ると右の前蹴りをカウンターでヴァニシングガンダムの胸に決める。

 

 

 

「! ぬう!?」

 

 

 

「転移すると分かっていたら、現れた瞬間に気配を感じ取ればいい。貴方が亜空間から姿を現し、僕を攻撃してくる瞬間こそが、僕が攻撃するチャンスだ!!」

 

 

 

「こざかしい!! そんな当てずっぽうで。いつまでも凌げると思うなよ!!」

 

 

 

 超高速で動きながら、亜空間移動を織り交ぜてくるウルベに対し、超反応と技で反撃する。

 

 

 

「連続ヴァニシングホール・ショット!!」

 

 

 

 右手をかざし、前方に向かって青黒いエネルギーを放つ。

 

 

 

 一秒間に数十の弾丸を放つその技をキラは機体を左右にジグザグに動いて避けていく。

 

 

 

 キラが躱すことは織り込み積みだったウルベは、放った先にホールを出現させてエネルギーを亜空間に放り込み、空間をつなげてキラの周りに現れさせて、多重方向からのビーム砲を散弾で放つ。

 

 

 

 逃げ場のない状態で打ち込まれた強烈なエネルギーの弾丸。

 

 

 

 だが爆発が晴れたとき、フリーダムの姿は其処に無い。

 

 

 

(攻撃がヒットして爆発する瞬間、ビットを使って多方向からの攻撃を打ち返して無効化し、空間歪曲の高速移動を使ったか)

 

 

 

 頭でそれを整理していると、ウルベは突如反応する。

 

 

 

 右手側に向かって左の正拳を放ったのだ。

 

 

 

 鈍い音と共にたしかな手応えを感じる。

 

 

 

 仰け反るフリーダムがいた。

 

 

 

「まだだ!」

 

 

 

「なんだと!?」

 

 

 

 瞬間、仰け反りながらも左の横蹴りがウルベの腹にヒットし、後方へ蹴り飛ばされる。

 

 

 

「ハイマットフルバースト!! 多方向からのビーム砲だ……!! 貴方に防げるか!!?」

 

 

 

 無数に放たれるビーム砲。

 

 

 

 これをウルベは右拳を握ってエネルギーを溜めると前方に掌を正拳突きのようにして放つ。

 

 

 

「そんな豆鉄砲など、幾百・幾千束ねようと無意味だと教えてやるわ!!!」

 

 

 

 ヴァニシングフィンガー。

 

 

 

 青黒い光の壁が掌から発生し、全ての光線を防ぎきる。

 

 

 

 思わずキラが、チッと舌打ちするとともに右側面の空間に蹴りを繰り出す。

 

 

 

 そこに肘を置いていたかのようにヴァニシングガンダムのひじ打ちがぶつかる。

 

 

 

「やるじゃないかーー! 私の動きを読むとはな!!」

 

 

 

「貴方とは、これで二度目だ。二度も闘って何も学習しないわけがない!!」

 

 

 

「たった二度の戦いで私の全てを把握したとでも言うのかね? 笑わせるな!!」

 

 

 

 超高速で移動する二機。

 

 

 

 光を纏い、闇に線を描くその様は神秘的だ。

 

 

 

 拳と拳。

 

 

 

 ウルベの武技とキラの武装がぶつかり合う。

 

 

 

 互いの動きを能力や技、武装で防ぎ合う様は先読みの早い方が有利だ。

 

 

 

 両者の実力が拮抗している以上、先に根を上げた方が負ける。

 

  

 

「ドラグーンシステムとか言うビット攻撃を破られてなお、まだ粘るか!?」

 

 

 

「僕があの人達ーーガンダムファイターの兄弟から学んだのは不撓不屈の精神と、この技だ!!」

 

 

 

 フリーダムが右手を顔の横に掲げて、拳を握る。

 

 

 

 紅蓮の炎が右手から噴き出し、キラの手を真っ赤に燃やす。

 

 

 

「…爆熱ゴッドフィンガー、か。面白い、にわか仕込みの技で私のヴァニシングガンダムを討てるか、試してみるがいい!」

 

 

 

「…勝負! 爆ぁく熱!! ゴォッドフィンガァアアアアアッ!!!」

 

 

 

「紛い物の神の炎など、私の無の力で消してくれる! くらえ、ヴァニシングフィンガァアアアッ!!」

 

 

 

 青い光の翼を広げ、黄金の気を纏いし自由の剣が神の炎を右手に宿して前方に突き出せば。

 

 

 

 神の顔を模した魔神の機体は、青黒い禍々しい力を右手に溢れさせて突き出す。

 

 

 

 組み合う両者の右手。

 

 

 

 相容れぬ力は反発し、雷が奔る。

 

 

 

 瞬間、星の海が浮かぶ闇の世界は吹き溢れる炎と力によって別たれた。

 

 

 

「…なんだと?」

 

 

 

 右手を抑えながら、ウルベが目の前にいる光の翼を広げた黄金のガンダムを見据える。

 

 

 

「…紛い物かどうか、貴方なら分かるはずだ。ウルベ」

 

 

 

 キラもまた、痛みをこらえるように。

 

 

 

 だが不敵に笑いながら、右手を抑えて告げる。

 

 

 

 人機一体の境地ーー明鏡止水。

 

 

 

 ガンダムとファイターの最高の境地。

 

 

 

 MSであろうとMFであろうと、ナチュラルだのコーディネーターだの。SEEDでさえ、この境地に達すればそんな差など小さな問題だ。

 

 

 

 両者の技は互角。

 

 

 

 互いの放った技によって、互いの右手の握力が一時的にゼロになっている。

 

 

 

 互いに睨みつけあった後、ウルベが肩で笑い出した。

 

 

 

「…くくく、はははははははは!! そうか、ドモン・カッシュ! こんな小僧に託したのか、私との決着を!! バカめ、この程度の小僧に私が倒せると思うのか!?」

 

 

 

 哄笑するウルベ。

 

 

 

 キラはそれを淡々と鋭い瞳で見据える。

 

 

 

「笑えばいい」

 

 

 

「…なんだと?」

 

 

 

 ウルベが訝しげに少女と見紛うばかりの少年を見据える。

 

 

 

 彼の瞳はSEEDを発動させた証で光が一切ない。

 

 

 

 だが、その瞳の奥には確かにある。

 

 

 

 自分がーーウルベ・イシカワが。

 

 

 

 DG細胞が忌み嫌い、望まぬ力が。

 

 

 

 魂の炎が、キラ・ヤマトにも確かにある。

 

 

 

「そうやって笑って、誰かを見下していればいい。僕は、そうやって立ち止まっている貴方を今日! 超えていく!!」

 

 

 

「…不愉快だ。貴様の物言い、私が最も嫌うあの兄弟に良く似ている」

 

 

 

「…嬉しいな。僕は、あの人達に憧れた。そして成りたいと思ってる。あの人達に肩を並べる自分に!!」

 

 

 

「…ふん、夢を見るのは構わない。未来と希望に溢れた若者の目を暗く閉ざすのは、私にとって最高の悦楽だからねぇ!!」

 

 

 

「やってみればいい。僕は負けない。絶対に貴方にーー貴方のような人間に、負けてたまるかぁあああ!!!」

 

 

 

 際限なく高まる気をキラは纏う。

 

 

 

 明鏡止水のハイパーモード、黄金のガンダムの最大の弱点である気力消費。

 

 

 

 エネルギー切れが一向に来ない。

 

 

 

「…なるほど。そのガンダムを完全に己のモノにしたか。大したものだよ、本当に。ドモン・カッシュを倒す為に取っておいたが、まさか君に使わねばならないとはな」

 

 

 

 構えを取るヴァニシングガンダム。

 

 

 

 キラの脳裏に浮かんだのは自分やアスラン、シンを相手にして退けた黄金のガンダム。

 

 

 

 もう一つの人機一体。

 

 

 

 二律背反の境地。

 

 

 

 キョウジ・カッシュが目覚めた明鏡止水とは異なるもの。

 

 

 

 それは力と知、暴力と技術、相反する二つの力を同時に引き出すガンダムとファイターの究極の境地。

 

 

 

 だが、ウルベはそれを使わない。

 

 

 

「…どうした? 怖気付いたかね?」

 

 

 

 分かりやすい挑発だが、キラは受けて立った。

 

 

 

 気を溢れさせ、一気に距離を潰す。

 

 

 

 ぶつかり合う両機。

 

 

 

 ウルベは黄金のガンダムにならずとも、その両手足に青黒い力を纏うことでキラの攻撃を無効化している。

 

 

 

 虚無の力、ヴァニシングガンダムとウルベの見切りがあるからこそできる芸当だ。

 

 

 

 彼はオーブでのゴッドガンダムとの戦いで学んだのだ。

 

 

 

 己の技の有用性を。

 

 

 

 そして、このガンダムこそはウルベの技に併せて進化してきたウルベ専用機。

 

 

 

 わざわざハイパーモードにならずとも、キラのフリーダム一機ならば受けるくらいは造作もない。

 

 

 

 高速移動から、秒間数十発の打撃の応酬。

 

 

 

 フリーダムがドラグーンシステムや腰のレールガンを絡めてくれば、ウルベは空間に穴を開けて受ける。

 

 

 

 そして、穴をフリーダムの周囲に開いて包囲し、撃ち返す。

 

 

 

 フリーダムが光の翼ーーヴォワチュールルミエールの出力を上げ、一気に空間を歪曲させて加速。

 

 

 

 ウルベの懐に飛び込んだ。

 

 

 

「…終わりだ、ウルベ!!」

 

 

 

 右手に炎が宿り、それを突き出す。

 

 

 

 だが、フリーダムの右手はヴァニシングの脇腹に届く前に止まっていた。

 

 

 

「…? これは!?」

 

 

 

 フリーダムの全身を纏っていた黄金の気と背に背負った青い光の翼が消えている。

 

 

 

 それだけではない。

 

 

 

 機体が全く動かない。

 

 

 

 気はまだ充分にある。

 

 

 

 何かをされたのだ、だが。

 

 

 

 何をされたか、キラにも分からない。

 

 

 

「…ふふ。どうかね? 虚無の鎖は」

 

 

 

「何だって?」

 

 

 

 キラが機体を見下ろせば、よく目を凝らせば分かる。

 

 

 

 宇宙空間に潜ませていた穴。

 

 

 

 フリーダムがその青黒い穴に囚われていた。

 

 

 

「この力はただ、空間を繋ぐだけではない。対象の力、動き、全てを無とする事も可能だ。このようにね」

 

 

 

 ウルベが視線を背後に向けると、そこにはキラと同じようにホールに囚われたアスランの姿があった。

 

 

 

「アスラン!!」

 

 

 

「…クッ、動けない、だと!?」

 

 

 

 キラが負けると悟ったアスランは間髪入れずに明鏡止水を発動させ、ジャスティスに黄金の気を纏わせると一気にウルベの背後を取り、ビームソードを抜いて斬りかかっていたのだ。

 

 

 

 ウルベは完全にキラを捉え、油断していたはずだった。

 

 

 

 だが、それはアスランの大きな勘違いだった。

 

 

 

 ウルベは油断していたのではない。

 

 

 

 アスランに隙を見せて誘っていたのだ。

 

 

 

「君たちは最初から2人いたのだ。どちらかが、やられそうになれば助太刀に来ると分かっていた。そちらの人形さんはまだ動けないだろうから、警戒するには値しない。アスラン君の方を警戒すればいいだけだからね」

 

 

 

 この力だけで、ウルベの戦闘力は一気に桁が違うものになった。

 

 

 

 対象を問答無用でしばりつける力。

 

 

 

 しかも無力化した状態で、だ。

 

 

 

「…こいつ。これほどの力を!!」

 

 

 

「ドモン君のお陰でね。彼がガンダムの声を聞け、と私に言わなければ、この力は手に入らなかった」

 

 

 

 皮肉な笑みを浮かべて告げるウルベにキラが叫ぶ。

 

 

 

「何故だ!? これほどの力を得て、ガンダムと一心同体になって、何故!? あなたは全てを憎むんだ!?」

 

 

 

「…下らんな。私は私の技と能力が全てだ。それ以外は何一つ信じてなどいない。ウォンもだ。お互いに利用し合う体の良いビジネス相手だ。だがね、キラ君」

 

 

 

 その笑みは狂気を孕んでいる。

 

 

 

 DG細胞さえも支配する圧倒的な憎悪と狂気。

 

 

 

 ウルベの本質だ。

 

 

 

「力を持てば持つほどに許せなくなるのだよ。力がないと私を侮蔑した連中全てに復讐せねば気が済まないくらいにねぇ!!」 

 

 

 

 未来世紀。

 

 

 

 故郷のネオジャパンを思い出す。

 

 

 

 何だ、こいつらは?

 

 

 

 何故、こんな才能も何もないクズどもが、私よりも幸せなのだ?

 

 

 

 何故、私だけ奪われねばならない?

 

 

 

 教えてやる。

 

 

 

 優しさや愛などという幻想に、綺麗事束ねるしか能のない連中に教えてやる。

 

 

 

 弱肉強食の理を。

 

 

 

 そして味わえ。

 

 

 

 私と同じ絶望を。

 

 

 

 私が、その世界を支配してやる。

 

 

 

「感じる。これが貴方の憎しみか…!!」

 

 

 

「なんて、深く暗い炎なんだ…!!」

 

 

 

 キラとアスランがガンダムを通して、ウルベの憎悪を感じる。

 

 

 

 ウルベはそのまま、虚数の彼方へと2人をガンダムごと送ろうと穴を広げる。

 

 

 

「さらばだ、キラ君。アスラン君。これが力だ。君たちは確かに強い。その強さは2人がかりなら確かに私を倒せただろう。だが、これまでだ。異世界に飛ぶのか、亜空間の狭間で飲み込まれるかは知らんがーー。君たちは、今日。この世界から居なくなる」

 

 

 

 高笑いするウルベにキラが、アスランが、それでもと目を見開く。

 

 

 

「フリーダム。僕は僕を。そして君を信じる…!!」

 

 

 

「ジャスティスよ。父の託した願いを、俺に叶えさせてくれ…!!」

 

 

 

 祈る。

 

 

 

 その言葉に、想いに、願いに応えるように。

 

 

 

 ガンダムが再び黄金の気を纏う。

 

 

 

 力が生じる。

 

 

 

 フリーダムとジャスティス。

 

 

 

 二つのガンダムを縛る闇が黄金の気で弾け飛ぶ。

 

 

 

「…! 何だと!?」

 

 

 

 見開くウルベの目の前で、黄金と太陽の如き神炎が、二機のガンダムに宿る。

 

 

 

「何故だ!? 何故、心が折れない!? 何故、絶望しない!? 貴様ら、一体何故諦めないんだ!?」

 

 

 

 どれだけ追い詰めても。

 

 

 

 どれだけ叩き伏せても。

 

 

 

 何度でも立ち上がってくる。

 

 

 

 自分が感じた絶望を、こいつらは感じていない。

 

 

 

「分からないのか? ウルベ」

 

 

 

 アスランが静かな面立ちで告げる。

 

 

 

「あなたは、負けられない戦いを知らないんだ。どんな理由があっても守りたい。守らなきゃいけない。そんな想いが、貴方には無い」

 

 

 

「自分の為だけに拳を振るってきたお前には、其処が限界なんだ。ガンダムとお前の力は凄まじい。だけど、それだけじゃ俺たちには勝てない」

 

 

 

 2人の少年の瞳に。

 

 

 

 そこに宿る魂の炎に、ウルベは知らぬ間に一歩。

 

 

 

 また一歩と、後ろに下がる。

 

 

 

「なんだ!? なんなんだ、貴様らは!!?」

 

 

 

 恐怖が彼を支配した。

 

 

 

 あの時、己を倒した。

 

 

 

 あの5人と同じ力を、2人の少年から感じるのだ。

 

 

 

「…違う!! 負けるはずが無い!! 私が、負けるはずが無いんだ!! こんな小僧共に、この私が!!!」

 

 

 

 叫ぶウルベに2人の少年のガンダムが、右手を掲げる。

 

 

 

「僕たちは負けない。守りたい人、世界があるから!! みんなで笑いながら選び取る。そんな明日が欲しいから!!」

 

 

 

「俺たちは勝つ!! 果たしたい約束がある!! 無念のまま散った父と母のような人を増やさない為に。俺のような人間が、家族と笑いあえる未来の為に!!!」

 

 

 

「「それが僕ら(俺たち)の戦いだぁああああっ!!!」」

 

 

 

 右手に宿りし神の炎が爆発し、2人は同時に全身の気を集約させて放つ。

 

 

 

「爆ぁあく熱っ!!」

 

 

 

「ダブル!!」

 

 

 

「「ゴォッドフィンガァアアアッ!!!」」

 

 

 

 強烈な真紅の炎が。

 

 

 

 熱線がウルベに放たれる。

 

 

 

「ふざけるな! ふざけるなぁあああっ!!」

 

 

 

 ヴァニシングガンダムも黄金の気を纏う。

 

 

 

 胸部カバーを展開し、両手に青黒い力を集約させて前方に突き出す。

 

 

 

「負けるものか! 負けてなるものか!! 貴様らなどに、私が敗れるものか!!! 全ての人間に私と同じ苦しみを刻むまで、止められてなるものか!!!」

 

 

 

 ぶつかり合う。

 

 

 

 螺旋を描いて絡み合う真紅の炎と。

 

 

 

 野太い強烈な青黒い力。

 

 

 

 黄金のガンダム3機の中央で、ぶつかり合う。

 

 

 

「くううう、ア、ス、ラァアアアアン!!」

 

 

 

「どうした、キラ! こんなもんじゃ無いだろ!? 俺たちの魂の炎は、こんなもんじゃない!!!」

 

 

 

「そうだ、僕らは与えられたんだ! 信念を貫く強さと力を!! あのガンダムファイター達から!!!」

 

 

 

「そうだ、負けるものか!! この想いが! 願いが、俺たちの胸にある限り!!」

 

 

 

「僕たちの胸に! この熱い想いがある限り!!!」

 

 

 

「「右手は轟き叫ぶ!! お前を倒せとなぁあああ!!」」

 

 

 

 自由の翼が、正義の剣が。

 

 

 

 右手に宿る炎を更に高めていく。

 

 

 

「ほざけ! ほざけほざけほざけほざけほざけほざけぇえええっ!!!」

 

 

 

 男は耐える。

 

 

 

 それは意地だ。

 

 

 

 倒されても倒されても、譲れない意地だ。

 

 

 

「許せるものか! 守る願いだと!? 未来だと!? 貴様らは何故、許せる!? 貴様らだって、理不尽な目に遭ったんだろうが!!? 綺麗事の世界なんぞに、何故騙される!?? セイランの記憶から知っているぞ!!!」

 

 

 

 力が増していく。

 

 

 

 互いに力が際限なく高まる。

 

 

 

「だからだ!! だから、他の人には味あわせたくない! 僕のエゴだとしても!!!」

 

 

 

「こんな想いは、俺たちだけで充分だ!!!」

 

 

 

 二人の少年の想いが。

 

 

 

 独りの男の意地が。

 

 

 

 互いに押し迫り合う。

 

 

 

 

 

 

 

 この光景を月面にMSを座り込ませながら、見上げる少女が一人。

 

 

 

「絶望を知るが故に、希望の未来を願う二人の少年。絶望と裏切りの果てに人々に苦しみを刻もうとする男」

 

 

 

 少女ーーファムがこの光景に、うっとりとなりながら言う。

 

 

 

「私は語り部。絶望を奏でる歌。希望を願う想い。その運命を見届ける役割ーー。全てが終わった後、遺伝子による支配があなた方の未来なのだから。その子達による語りましょう。あなた方の命をかけたおとぎ話を」

 

 

 

 役割を果たす時は近い。

 

 

 

 ファム・ファタールの役割を。

 

 

 

(それでいいの? あなたは?)

 

 

 

 また幻聴が聞こえた。

 

 

 

「うるさいわね。キラに会えたからって、はしゃぎ過ぎなんじゃないの?」

 

 

 

(…そうね。でも、私は伝えたもの)

 

 

 

 微笑む幻は、憎しみや猜疑心に彩られた彼女とは思えない。

 

 

 

 澄み切った慈愛と優しさに満ち溢れた笑顔。

 

 

 

「伝えた? どうかしら? キラには貴女の本当の想いが伝わったのかしらね、フレイ・アルスター?」

 

 

 

(ええ。伝わってる。それが分かったから、もういいの。キラはもう、私に囚われてはいけないから)

 

 

 

 幻はファム・ファタールと瓜二つの赤い髪の少女。

 

 

 

 否、ファムが似せている少女だ。

 

 

 

「…理解できないわね。寂しい気持ち、あるじゃない? 忘れて欲しくないって言ってんじゃない。ずっと自分を見てて欲しいんでしょ? どうして、そうしないの?」

 

 

 

(…クス。ねえ、ファム。このまま、私が消えてあげるから、貴女に最後に伝言をお願いしていいかな?)

 

 

 

「何かしら?」

 

 

 

 微笑む幻は、ファムに静かに告げた。

 

 

 

(泣かないでねってーー。泣き虫な貴方は、もう居ないみたいだから。だから、泣かないでってーー言ってね?)

 

 

 

「…自分で言ってあげたら?」

 

 

 

(ゴメンね。私、弱いから。だから、無理なの。キラは優しいから)

 

 

 

「…バカな女」

 

 

 

 冷たい声で告げると幻は寂しげに笑った。

 

 

 

(そうね。でも、消えてまでキラに嫌われたくないの。消える時くらい、綺麗なあたしで居たいの)

 

 

 

 ファムは静かに冷たく、邪悪に笑う。

 

 

 

「ふふ、良いわよ。その浅はかで弱いから逃げる所。私は好きだったわ、フレイ。だから、貴女が消えることを選ぶなら見送ってあげるわ」

 

 

 

(貴女に、そんなこと言われるなんて思わなかったわ。ファム、貴女も自分の未来を選んでねーー)

 

 

 

 それだけを告げて、フレイの気配が胸の中から消えていく。

 

 

 

 彼女は最後まで、キラ・ヤマトの前に現れることはしなかった。

 

 

 

「バカね、フレイ。私の望む未来は人類の管理のみよ」

 

 

 

 そのファムの言葉に幻は返すことはなかった。

 

 

 

 ファムの姿が変化し、桃色の髪の少女になる。

 

 

 

「さあ、フィナーレですわ。皆様方の最後の健闘をお祈りします」

 

 

 

 切実な願いを込めて。

 

 

 

 ラクス・クラインを象るファム・ファタールはその時を待つ。

 

 

 

 

 

 

 

 押し合う炎と光。

 

 

 

 願いと意地がぶつかり合う。

 

 

 

 その時だった。

 

 

 

 3機の黄金のガンダムに迫る強大な光。

 

 

 

「!? これは、戦略級兵器!? レクイエムじゃない!?」

 

 

 

「ジェネシスか!? ダメだ、間に合わない!!」

 

 

 

 キラとアスランが叫ぶ中、自身に脇から迫る強大な光にウルベは怒りを燃やした。

 

 

 

「邪魔をするなぁあああ!!!」

 

 

 

 空間転移を使い、ウルベはダブルゴッドフィンガーから逃れると迫り来るビームに正面から向かい合う。

 

 

 

「ヴァニシング・ホール!!!」

 

 

 

 目の前に強大な次元の穴を作る。

 

 

 

 虚数の彼方へと誘う虚無の空間を。

 

 

 

 まともにぶつかり合う光とブラックホール。

 

 

 

「ドモン・カッシュに。ゴッドガンダムにできて、私とヴァニシングガンダムができないわけが無い!! 消えて失せろぉおおおおおっ!!!」

 

 

 

 光の大きさが余りに強大な為、ヴァニシングガンダムの力をフル稼働して穴を広げる。

 

 

 

 宇宙空間に現れた極々小規模のブラックホール。

 

 

 

 それは見事にガンマ線の塊であるジェネシスを飲み込んだ。

 

 

 

「…ウルベ。なぜだ?」

 

 

 

「どうして、僕たちを助けたんだ?」

 

 

 

 アスランとキラは自分が助かった喜びよりも、助けられた驚きに目を見開いていた。

 

 

 

 だがウルベのヴァニシングガンダムは、文字どおり力尽きたように黄金の気を消して。

 

 

 

 動きを止め、自らが作り上げたブラックホールに吸い込まれていく。

 

 

 

「ウルベ!!」

 

 

 

「お、おい、キラ!!」

 

 

 

 咄嗟に無抵抗に飲み込まれていくヴァニシングガンダムの手を掴み、フリーダムが引っ張る。

 

 

 

 ジャスティスが、そのフリーダムの手を掴んで更にブラックホールから引き離そうとする。

 

 

 

 それをウルベはボンヤリと見上げた。

 

 

 

「ウルベさん、しっかりしてください!!」

 

 

 

「おい、ウルベ!! このままじゃ、お前も落ちるぞ!! 早く穴を消すか、自力で動いてくれ!!」

 

 

 

 キラとアスランの必死の声もウルベには聞こえていないようだ。

 

 

 

 ただ、ウルベには見えていた。

 

 

 

 見たくもない、あの時の子どもが。

 

 

 

 自分の腕を掴み、必死にご機嫌取りに来ているのを。

 

 

 

「父さん! 僕も母さんも父さんが大好きだよ!! 行かないでよ、父さん!!!」

 

 

 

 必死に泣いていた少年。

 

 

 

 声を殺して泣いていた妻だった女。

 

 

 

 自分はーー裏切られたのではない。

 

 

 

 裏切ったのはーーーー。

 

 

 

「嘘だ…!」

 

 

 

 その声にキラが目を見開く。

 

 

 

「ウルベさん!!」

 

 

 

「気がついたか!?」

 

 

 

 だが、彼の目は別の者を見るかのように見開かれ、やがて睨み付けて叫んだ。

 

 

 

「嘘だぁあああああああああっ!!!」

 

 

 

 少年の腕をあの時と同じように払い、ヴァニシングガンダムは己の作り出したブラックホールに消えていった。

 

 

 

「! そ、そんな!!」

 

 

 

「なんて、バカなことを!!」

 

 

 

 キラとアスランには、その光景を見送るしかできない。

 

 

 

 力を放った主であるウルベを飲み込んだからか。

 

 

 

 ブラックホールは急激に小さくなり消えていった。

 

 

 

「どうして、分かり合えないんだ。どうして…!」

 

 

 

 キラは無念そうに拳を握り、コンソールパネルに殴りつけた。

 

 

 

 




 みなさん、お待ちかね〜!

 次々と落ちていくDG細胞に侵された両軍の兵士達。

 ゼウスの名を冠するガンダム達が、フィルム・ノワールの仮面を被る男と戦う乱戦の中、運命の翼が降り立つのです! 

 次回、機動武道伝Gガンダム SEED Destiny 第94話に!

 レディー、ゴー!!
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