新機動武闘伝 GガンダムSEED Destiny   作:カンナム

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 みなさん。

 ついにウルベが、ジブリールが。

 巨悪の権化が次々とキラ達によって倒されていきます。

 しかし、悪はまだ全て滅んではいないのです。

 はたしてシンのデスティニーガンダムは、名のとおり運命を変えることができるのか!?

 それでは、ガンダムファイト!!

 レディイイイ、ゴォォォオオオ!!




第94話 因果は報い応じる

 

 ブラックホールに飲み込まれていったヴァニシングガンダムとウルベを呆然と見送って固まっていたキラとアスラン。

 

 

 

 そんな二人に小気味良い拍手が通信を介して届いた。

 

 

 

「お見事でしたわ。未来世紀における怪物。あのウルベ・イシカワを二人だけで倒すなんて」

 

 

 

「…君は。そうか、その姿はラクスの。じゃあ、フレイはもう?」

 

 

 

 キラが気落ちした顔のまま、ファムに向き直る。

 

 

 

 その何もかもを理解しているような表情にファムが少しだけ驚きの顔になる。

 

 

 

「…どうして分かったの? 私の中にフレイ・アルスターがいるって」

 

 

 

「分かるさ…っ! 彼女は僕の…っ!!」

 

 

 

 悲痛な顔になるキラにファムがラクスは顔で、声で告げた。

 

 

 

「キラ・ヤマト。貴方、ラクス・クラインの恋人じゃないの? 貴方が欲しいのはフレイ・アルスター? それともラクス・クライン?」

 

 

 

 問いかけにキラは静かな表情で告げる。

 

 

 

「…両方だ。僕には選べない。どちらも大切な人だから」

 

 

 

「へぇ? 私を前に良く言えたわね?」

 

 

 

 嗜虐的な笑みを浮かべるラクスの顔をしたファム・ファタール。

 

 

 

「君がラクスだったとしても、フレイだったとしても。僕は同じだ。今の僕の気持ちは、どちらも好きなんだ。だけど…」

 

 

 

「消去法ね。フレイは消えてラクスは残った。だから、貴方はラクスを自動的に選べる訳だ。フフフ、フレイの言ってた意味がようやく分かった」

 

 

 

「…え?」

 

 

 

「フレイは自分は弱くて、貴方が優しいと言ってたわ。だから会えないと。泣いて欲しくないから、汚い自分を見せたくないから、ってね?」

 

 

 

 ファムの言葉にキラが目を見開く。

 

 

 

「キラ・ヤマト。貴方に会えば、あの子はこの仮初めの体を使ってでも生きたがったでしょうね。だから、彼女は貴方に会わなかった。貴方が自分を受け入れてくれることを知っているから。自分もそれを望んでしまうから」

 

 

 

「どうしてだ!? どうして、フレイは!? 僕は…!」

 

 

 

「貴方が好きだからよ、キラ」

 

 

 

「……僕は傷付けただけだ」

 

 

 

「そう。それが貴方の中の真実なのね。でもあの子は、そう思ってなかった。キラ・ヤマト、貴方は優しいけれど残酷な男ね」

 

 

 

 そのファムの言葉にキラが縋るように目を向ける。

 

 

 

「貴方が望めばフレイはDG細胞で作られた、この体で生きて行くことになるわ。限りなく生身に近付けた肉体。だけど、所詮は仮初めの体。老いはしない。髪の長さや色、顔の形や体型に身長も思いのままに変えられる」

 

 

 

「……何が言いたい」

 

 

 

「貴方はフレイに化け物として生きろって言うのね、キラ?」

 

 

 

 その言葉にキラは真正面から向き合う。

 

 

 

 そして、告げた。

 

 

 

「…生きてさえいれば、希望はある! フレイを生身に戻すことも。諦めさえしなければ出来る!! ドモンさんやキョウジさん。シュバルツさんやマスターアジアみたいに、想いを貫けば。叶うまでやり続ければいい!! 寿命が足りないなら、僕は喜んでDG細胞に感染する!! そして、必ず彼女を生身に戻す!!!」

 

 

 

 覚悟だった。

 

 

 

 己の身を変えてでも。

 

 

 

 全てを捨てても、キラはフレイを生身に戻すだろう。

 

 

 

 だが、ファム・ファタールは穏やかに首を横に振る。

 

 

 

「バカね。それこそが、フレイが最も恐れたことよ。そして望んでもいた。キラ、貴方がフレイを望むようにフレイも貴方を望んでいた。許嫁だったサイ・アーガイルへの想いは好意。だけど、キラ・ヤマトへの想いはーー」

 

 

 

 ファムは囁く。

 

 

 

 甘い毒のように。

 

 

 

 キラの胸に染み渡り、彼の動きを止めて行く。

 

 

 

「愛憎だった。妄執だった。あの子なりの精一杯の愛し方。おままごとしか知らない稚拙な愛し方。だから、素直になればあの子は言いなり。自分を嫌いになっていくでしょうね。貴方に頼るしかない自分が嫌いだった。でも、今貴方に受け入れてもらえたら。先のような事をしてもらえたら」

 

 

 

 ファムは笑う。

 

 

 

 花が咲くように可憐に。

 

 

 

「フレイは自分を許せないでしょうね。自分を愛してくれたが為に化け物になってしまった貴方を見て。幸せを感じる自分を許せないでしょう。憎むでしょう、懺悔するでしょう。それは生身に戻っても変わらない。一生の話。だって貴方は最初から許してるものね、キラ」

 

 

 

「分からない。君は、何が言いたい?」

 

 

 

「そう。分からなくていいのよ、キラ。つまらない感傷だもの。それに既に消えた女の話。もう、戻りはしない」

 

 

 

 静かにファム・ファタールは中破していたデスクイーンを立たせる。

 

 

 

 機体を見下ろし、自己再生が済んでいる事を確認した上でバーニアをふかして飛翔する。

 

 

 

「…一応、聞いておく。お前は俺たちの敵か?」

 

 

 

「その質問はナンセンスだわ、アスラン・ザラ。私はファム・ファタール。あなた方にとって運命の女よ。あなた方にとって、敵というのは何を指すのかしら? デュランダルは人間の抹殺や支配を望んではいない。こちらから敵対する意思も無いのにーー」

 

 

 

「ふざけるな! その理想で何人死んだ!? 今もだ!! 今も多くの兵士が命を落としてる!!」

 

 

 

「管理するには、数は少ない方がいいわ。間引かなければ雑草はただ不規則に生い茂る。管理されなければ人は滅びるだけ」

 

 

 

「人間を何だと思っている!?」

 

 

 

「自分の巣を汚す愚かな鳥。力を少し持つと振るわずにはいられない獣以下の生命体。力を振るうにしても、お利口な理由をつけるか、そうでないかだけ。コーディネーターとナチュラルの戦争は政治や外交手段でさえない、ただの同族嫌悪」

 

 

 

 ファムの気配にキラは覚えがある。

 

 

 

 不吉な気配だ。

 

 

 

 自分は、コレを知っている。

 

 

 

「気づいたの、キラ? そう、私はラウ・ル・クルーゼと同じく世界に希望を持たないもの。ギルバート・デュランダルの理想の為だけに生み出された存在」

 

 

 

「さっきのジェネシスも、君の指示なのか?」

 

 

 

「アレはついでね。私を失っても代わりは、データがあればDG細胞で幾らでも作れるもの。アルザッヘルの施設を破壊して、あわよくばウルベを倒し。一気に戦局を傾けるつもり、だったみたいだけど。すでに基地はスクラップ同然。悪趣味なDG細胞のゾンビ兵士とデスアーミーシリーズが飛び立った後とはね」

 

 

 

 肩をすくめるファムにキラが睨みつける。

 

 

 

「そうやって多くの犠牲を払った上で、遺伝子による支配を行うと?」

 

 

 

「そ! DG兵士とゾンビ兵の争いは凄惨なものよ。映像を世界に出して。コレを繰り返したいのか、と人類に問いかけるわ。もちろん、DG細胞の件は内緒よ」

 

 

 

 可愛らしく微笑みながら、ウインクする様は無邪気な天使のようだった。

 

 

 

「そうか。なら、僕は君を倒す!! これ以上、世界を君たちの好きにはさせない!!」

 

 

 

「俺もだ。ファム・ファタール! 悪いがお前はここで倒させてもらうぞ!!」

 

 

 

 これにファムは静かに微笑みながら、デスクイーンの光の翼ーーヴォワチュールルミエールを展開する。

 

 

 

「ついて来なさい。あなた方の墓場までね」

 

 

 

 そう言って光を纏い、光速で移動するデスクイーン。

 

 

 

 コレにアスランとキラが互いに頷きながら、一気に加速して追いかけるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ザフト移動要塞メサイア。

 

 

 

 他のDG細胞に感染させた施設と同様。

 

 

 

 此処も無人のまま、デュランダルの指示で動く自動防衛要塞と化していた。

 

 

 

「…なんと凄惨な戦場だ。だが、この犠牲を得たからこそ。より良き個体が生まれるのだろう。彼らの血肉の全てをまとめ上げた究極のガンダムが。人は遺伝子により管理され、そのシステムを未来永劫に保たねばならない」

 

 

 

 たとえ全ての人間にデスティニープランを立ち上げ、その正しさを示しても、人は変わらない。

 

 

 

 進んでデスティニープランに賛同する者は居るだろう。

 

 

 

 しかし、全てではない。

 

 

 

 その相容れぬ分子を抑える力がいる。

 

 

 

 そして、それを抑えても更に先に、新たな問題が起こるであろうとデュランダルは考えた。

 

 

 

 ならば、朽ちぬ者がいる。

 

 

 

 不変にしてシステムを精査する者がいる。

 

 

 

 それは人類ではなく、更に上位の存在でなければならない。

 

 

 

 そう。

 

 

 

 DG細胞により生み出された最初から人ではない存在。

 

 

 

 それがデビルガンダムことDであり。

 

 

 

 最初デュランダルは、彼を王にしようと考えた。

 

 

 

 しかし、ミーア・キャンベルとの日々の語らいやドモンとのやり取りで確信する。

 

 

 

 Dは自ら、人間に近づこうとしていた、と。

 

 

 

 これではダメだ。

 

 

 

 人間を管理する者が、人に近い考えでは意味がない。

 

 

 

 人の思考を理解し、しかし共感せずに与えられたプログラムを遂行する存在が必要だった。

 

 

 

 Dの肉体を作り上げたノウハウで、プロヴィデンスガンダムの残骸から作り出す。

 

 

 

 自分の協力者になるであろう男ーーラウ・ル・クルーゼの復活。

 

 

 

 そして彼に問う。

 

 

 

 如何なる存在が、運命の女神に相応しいかを。

 

 

 

「君はラクス・クラインを考えているのだろ? ならば人の弱さを学ばせるのに打ってつけの存在がある。私が殺した少女だが、残骸から作り上げられるのだろう?」

 

 

 

「よろしく頼むよ、ラウ。ところで、その少女は何者なんだい?」

 

 

 

「…フレイ・アルスター。キラ・ヤマトの想い人だ」

 

 

 

 クルーゼの言葉にデュランダルは笑う。

 

 

 

 それはいい、と。

 

 

 

 回想を止め、目の前に広がる戦場を見据える。

 

 

 

「魔王は死に。ガンダムファイターとラクス・クラインは行方不明か。この状態でケリをつけたいものだな」

 

 

 

 笑いながら、メサイアにある情報が流れてくる。

 

 

 

「ファムからのメッセージか。…ジブリールが死んだか。予定通り、アルザッヘルに放ったジェネシスはウルベに消された。そのウルベも自らの力で自滅した、か。現在、こちらに向かってキラ・ヤマトとアスラン・ザラを連れて来ている…。ふふ、魔のチェス盤を使うとしよう。デビルズ・サンクチュアリの準備をね」

 

 

 

 ゆったりと椅子に腰かけ、デュランダルは待つ。

 

 

 

 運命の歯車が回りだす時を。

 

 

 

「…なるほど。そうやって、自分が舵を取る自信が無い為に機械人形に全てを託そうとする、ですか。お粗末な話ですね」

 

 

 

 背後からかけられた肉声にデュランダルは親しげな笑みを浮かべて告げた。

 

 

 

「ようこそ、未来世紀のかつての支配者。ウォン・ユンファ殿。歓迎しますよ」

 

 

 

「…これはご丁寧にどうも。単刀直入に言いましょう、今すぐに私に貴方の持つDG細胞のコアを渡しなさい。私が貴方の育てた人形達を有効利用してあげましょう。この世界を支配してね」

 

 

 

 笑いながら告げるウォンにデュランダルも笑みを返す。

 

 

 

「申し訳ないが、貴方では役者不足だ。世界は支配者を求めてはいない。支配者や独裁者が居たから、多くの人が犠牲になっていった。人間の欲を持ち、基本が人間である貴方や私は、人の上に立ってはならない。人に余計な執着や感情を持たない存在こそが、今必要なのだよ」

 

 

 

「ククク、笑わせますね。己の力不足と自信の無さ、失敗を恐れ、責任逃れをする臆病さを言い換え、自分の作った人形に管理させる、とは」

 

 

 

「…君に説明したところで理解できないだろうね。私は心から世界に平和が欲しいのだよ」

 

 

 

 デュランダルは穏やかな笑顔でウォンに告げる。

 

 

 

「…誰もが幸せになれば良い。争いをせずに、裏切られることなく。互いに互いの存在を脅かすことなく、だ。知恵があり、理性がありながら。欲望という邪なものがあるから、人は滅びるのだよ」

 

 

 

 静かに告げるデュランダルにウォンがサングラスをかけなおして告げる。

 

 

 

「言い換えましょう。滑稽が過ぎて哀れだ」

 

 

 

「…何?」

 

 

 

「デュランダルよ、あなたは否定しましたが。人の欲望こそが力なのですよ。人から欲望を取れば、何も残りはしない。理性も本能も知恵もね」

 

 

 

 哀れみを浮かべて、口元には嘲笑を貼り付けて。

 

 

 

 ウォンは告げた。

 

 

 

「綺麗事しか言わない。いや、見えていない貴方には理解できないでしょうか? 動物はね、欲望があるから進化するのですよ。欲の無い存在は、ただ生きているだけの人形です。自意識。理性、知性。これらの全ては本能であり欲があるからこそ生まれた。根源をはき違えている」

 

 

 

 目を見開くデュランダルにウォンは告げる。

 

 

 

「貴方は、自分の理解の範疇が及ぶ者としか付き合わない人間でしょう? 頭の中で全てを予測し行動し、計算する。相手を理解したがり、支配したがる。当ててあげましょうか? 貴方がこんなご大層なデスティニープランを立ち上げたきっかけを。身近な者が自分よりも誰かを選んで去った。もしくは唯一、本心を語れる相手が離れた。そんな所じゃありませんか?」

 

 

 

 ウォンは笑う。

 

 

 

 冷酷に吊りあげる口元。

 

 

 

「綺麗事を述べたがる人間は、大抵おのれの醜さから目を背けるもの。デュランダルよ、遺伝子だの人形に頼るのも自分の醜い欲望から目を背けたいだけ。お利口な言葉をいくら並べても、結局貴方の本質は、都合の悪いことに蓋をし、思い通りにならないからと癇癪を上げる赤ん坊だ」

 

 

 

 デュランダルの唇は真一文字に結ばれた。

 

 

 

 

 

 

 

 ハイネ・ヴェステンフルスは、肩で息をしていた。

 

 

 

 溢れ出るエナジーに、理性のタガが緩んでいる。

 

 

 

 自我は消え、ハイネの姿をしただけの生ける人形になりつつある。

 

 

 

「…嫌だ。俺が、なくなる…!!」

 

 

 

 涙を流しながら、反射的に迫り来る敵を切り捨てる。

 

 

 

 そして、更に吸収され溢れるエナジー。

 

 

 

「…た、助けてくれ。誰か……っ!」

 

 

 

 その時だった。

 

 

 

 赤紫の光の翼を広げたトリコロールのガンダムが目の前に現れたのだ。

 

 

 

「救難信号を送っていたのは、アンタか? どうした?」

 

 

 

 パイロットは黒髪に燃えるような赤い瞳の少年。

 

 

 

「助けてくれ。力が溢れる。俺が俺じゃなくなる。MSが、勝手に敵を殺して、奪っていくんだーー」

 

 

 

「DG細胞か。待ってろ! その機体から引きずり出してやる!!」

 

 

 

 言うと少年ーーシン・アスカはデスティニーガンダムの翼を広げて、一気にデスナイトの懐に入り込む。

 

 

 

 右手を広げ、青白い光を放ちながら胴体に突き出した。

 

 

 

「はぁあああっ!!」

 

 

 

 気により制御されたビームは、見事に機体の外側を破壊し、コクピットをマニュピレーターが握りしめる。

 

 

 

 デスナイトは、生体コアを抜かれまいと右に持ったテンペストソードをつき出そうとして。

 

 

 

「機体は邪魔だ! 失せろ、ガンダム擬き!!」

 

 

 

 左の足底で顎を蹴り上げられ、右の回し蹴りで後方へ吹き飛ばされた。

 

 

 

 右手にオレンジ色のノーマルスーツを着た男がいる。

 

 

 

「…つっても。この状況じゃワクチンも打てねえし。そもそも、このパイロットを回収する船がーー」

 

 

 

 そう言いかけたところで、通信が入ってきた。

 

 

 

「シン! 聞こえているか!?」

 

 

 

「その声、レイか!?」

 

 

 

 通信を開くとモニターに金髪の美少年がいる。

 

 

 

「パイロットを回収したのは、見た。こちらの船から輸送艇を出す。そこにワクチンも入れてある、彼に打ったらガンダムに乗れ。時間が無い!」

 

 

 

 見れば砂漠の虎が使用していた陸用の戦艦レセップスを宇宙用に改修した船がある。

 

 

 

 シンは静かにレイを見据えた。

 

 

 

「…聞きたいこと、言いたいこと、ぶん殴ってやりたいこと、一杯あるけどさ。今は全部後回しだ。それでいいんだろ!?」

 

 

 

 シンの言葉にレイは苦笑を浮かべながら言った。

 

 

 

「…すまん。シン」

 

 

 

「ったく。早く、輸送艇を!!」

 

 

 

「ああ。ミケロ、頼めるか?」

 

 

 

 レイの言葉に赤髪の派手なファイター、ミケロがボタンを押す。

 

 

 

「オラよ」

 

 

 

 輸送艇が宇宙に発進したのを確認したシンは一度MSのコクピットから出るとハイネを担ぎ、輸送艇に乗り込む。

 

 

 

 席にハイネを着かせるとテーブルにある注射器を取り、腕に刺してワクチンを投入した。

 

 

 

「…う、うう」

 

 

 

 ハイネは呻き声を上げながら、意識を失う。

 

 

 

 左腕に鱗状に浸透していた銀色の六角形の金属片が、徐々に分解されていくのが確認できた。

 

 

 

「…これでヨシ、と」

 

 

 

 プラントの非戦闘区画に行き先を設定し、輸送艇をリモートで5分後に出発させる。

 

 

 

 そのまま、シンはデスティニーのコクピットに乗り移った。

 

 

 

「…なるほどな。確かに時間はねえな」

 

 

 

 乗り込むと同時に鋭敏な感覚は、敵の位置を捕捉する。

 

 

 

 モニターに映せば、デスナイトとレジェンドを足して割った様な機体ーーデスビショップが、ドラグーンシステムを展開して、凶暴な三体のガンダムを相手に鬩ぎあっていた。

 

 

 

「ゼウスガンダムにジェスターガンダム、コブラガンダムもか! MF3機を同時に一人で相手にできるなんて、何もんだ!?」

 

 

 

 驚くシンのデスティニーの左横にレイのレジェンドとミケロのネロスガンダムが来る。

 

 

 

「…ラウ・ル・クルーゼ。彼の相手は俺がする。ミケロ、他の3機を頼めるか?」

 

 

 

「いいのか? ここでチンタラしてたら、デュランダルって野郎がやられるかもしれねえぞ?」

 

 

 

「…彼も、俺にとって掛け替え無い人なんだ。頼む」

 

 

 

 真剣なレイの頼みにミケロは、居心地悪そうに舌打ちすると、シンに告げた。

 

 

 

「…ちっ。おい、派手な羽のガンダム!」

 

 

 

「なんだよ、トサカ野郎!」

 

 

 

「威勢がいいじゃねえか! デュランダルは、この先に気配を感じる! 譲ってやっから、さっさと行け!!!」

 

 

 

 ミケロの言葉にシンが腹立ち半分に言う。

 

 

 

「敵に指図すんなよ、トサカ野郎! …レイを頼む」

 

 

 

 言うと一気にクルーゼとゼウスガンダム達の間に突っ込む。

 

 

 

「…! デスティニーガンダム!?」

 

 

 

 戦っていたクルーゼが仮面の奥の瞳を見開く。

 

 

 

 ゼウスガンダムとコブラガンダムが反応した。

 

 

 

「新手か! オーブとか言う国で会ったな、小僧!!」

 

 

 

「あらぁ、可愛いお嬢ちゃん達はどうしたのぉ、坊や!」

 

 

 

 マーキロットとシジーマの叫びを聞き流し、肩のビームブレードに手をやる。

 

 

 

 ゼウスガンダムはハンマーを。

 

 

 

 コブラガンダムは片手のビーム槍を抜き放つ。

 

 

 

 すれ違う3機のガンダム。

 

 

 

「…なんだと!?」

 

 

 

「今の動き、何なのよ」

 

 

 

 驚愕に目を見開きながら、肩や腕を切り捨てられるゼウスガンダムとコブラガンダム。

 

 

 

 そのまま、デスティニーは光の翼を広げて一気に加速する。

 

 

 

 その背を狙い撃とうとロマリオのバルーンビットが浮かぶも。

 

 

 

「必殺ぁつ! 虹色の脚ぃいいいっ!!」

 

 

 

 ネロスガンダムから放たれた七色の気弾が、全てのバルーンを撃ち落とした。

 

 

 

「どういうつもりだ、ミケロ? 貴様、まさか。あんなガキ共の味方するってんじゃねえだろうな?」

 

 

 

「本当なの? 散々悪党の限りを尽くした貴方が? 今更、正義に目覚めてあたし達を攻撃するってわけ?」

 

 

 

「ミスター・チャリオット。どうか、其処をお退きください。わたくし達と来られた方が楽しいですよ?」

 

 

 

 3人からの言葉にミケロは嫌悪感丸出しで告げた。

 

 

 

「笑わせんな! 死に損ないな上に自我までDG細胞に取り込まれやがって!! 情けねえ。それでもガンダムファイターか、てめえら!!!」

 

 

 

 ミケロの言葉に3人は笑みを返す。

 

 

 

「「「我々は、力を得た。意思を得た。もはや、我々が人間に屈する道理なし」」」

 

 

 

「吐かせ、阿呆が」

 

 

 

「「「何故我々と来ない、ミケロ?」」」

 

 

 

「てめえらの様なカスと一緒になれだと? 笑わせんなよ、雑魚どもがぁあ!!」

 

 

 

 一気に気が爆発し、ネロスガンダムとミケロの全身を白い光が覆う。

 

 

 

「かかって来いよ、マーキロット! 冥土の土産だ。てめえらと俺様の格の違いを見せてやらぁ!!」

 

 

 

 これを静かに見据え、デスティニーガンダムを見送り。

 

 

 

 クルーゼは自分に相対する、この機体の前身・プロヴィデンスによく似たガンダムを見据える。

 

 

 

「来たか、レイ。君は私にはなり得ない。その答えは見つかったかね?」

 

 

 

「…俺には、仲間がいる」

 

 

 

 静かに告げるレイにクルーゼは弟子を見守る師のようにあるいは、子を見守る親のような慈愛に満ちた笑顔で告げた。

 

 

 

「…聞かせてくれ、レイ。君の歩んだ道を、この戦いで見せてくれ」

 

 

 

「…ラウ。どうしても、やるの?」

 

 

 

「ああ。頼むよ、レイ」

 

 

 

「…分かった」

 

 

 

 短いやり取りの後、ついにレイが明鏡止水の境地に至る。

 

 

 

 黄金の気を纏い、金色に燃えるレジェンドガンダム。

 

 

 

「…ラウ。初めから全力でいくよ」

 

 

 

「結構。散々、雑魚の力を食らってよかった。これはいい勝負になりそうだよ」

 

 

 

 両手を広げ、打ち込んで来いとデスビショップ。

 

 

 

 ラウ・ル・クルーゼは告げる。

 

 

 

 瞬間、黄金の気が弾き、目の前にレジェンドガンダムが現れた。

 

 

 

「これは、これは…!」

 

 

 

 ビームソードを抜いて斬りつけるレジェンドに対し、ビショップが左に仕込んだ盾の先からビームソードを具現させ、切り結ぶ。

 

 

 

「…素晴らしい腕だ。迷いなく、前に進む。綺麗だよ、レイ」

 

 

 

「…貴方が、俺を育ててくれたからだ。だから、出会えた。掛け替えのない、人達に」

 

 

 

「…そうか。その言葉に救われたよ、レイ」

 

 

 

 剣を互いに弾き、距離を置いて構え合う。

 

 

 

 同じ男のクローンとして生み出された二人の人間の。

 

 

 

 最後の戦いが始まろうとしていた。

 

 

 

 

 




 皆さん、お待ちかね〜!

 ついにぶつかり合うレイとラウ。

 悲しい覚悟を決めたラウの言葉にレイの心は揺らぎます。

 一方、デビルガンダムとドモン・カッシュの方はついに。

 新たなカッシュの男が、生誕しようとしているではありませんかぁ!!

 次回、機動武道伝GガンダムSEED Destiny 第95話に。

 レディー、ゴー!!
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